説明

メッセージ管理方法及びメッセージ管理プログラム

【課題】個人情報の特定を回避する必要のない利用者が特定されたグループ内でやりとりされるメッセージに、発言者を特定できる顔画像を表示させること。
【解決手段】システムは、メーリングリストサーバ10と複数のクライアント20とにより構成される。サーバのハードディスクには、メッセージ管理プログラム11、メーリングリストのユーザ情報を登録するユーザリスト12、ユーザの顔画像を登録する画像DB13が格納されている。プログラム11には、ユーザの顔画像の登録を受け付けて画像DB13に登録するのを受け付ける登録受付モジュール11a、やりとりされる電子メールメッセージの内容を解析して画像DB13に登録されたユーザの感情のステータスに対応する内容が含まれるか否かを判断するメッセージ解析モジュール11b、配信される電子メールに顔画像を埋め込む画像埋め込みモジュール11cが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メーリングリストや特定のコミュニティ内の掲示板やチャット等、テキストベースのメッセージのやりとりを管理するメッセージ管理方法、及びプログラムに関し、特に、メッセージに個人の顔画像を関連づけることができる方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を利用した電子メールシステムでは、電子メール内に絵文字を含ませることにより、テキストのみでは表現できないユーザの感情を表現することが一般的に行われている。ただし、利用できるのは携帯電話会社が用意した定型の絵文字のみであるためバリエーションが少なく、かつ、電子メールを発信するユーザが自分で選択して利用する必要があるため入力に手間がかかる。
【0003】
これに対して特許文献1には、複数の通信端末間での情報のやりとりの際に、各ユーザの感情に応じて変化するキャラクタデータ等を相手方に送信する画像コミュニケーションシステムが開示されている。特許文献1の要約書には、通信端末に設けられた感情解析部が音声データを解析して感情パラメータを検出し、予め記憶されていた各ユーザの感情による表情の変化を抽出して感情パラメータに応じた表情データを生成し、これを所定のキャラクタデータと合成して顔画像を生成することが開示されている。また、段落0080〜0089には、チャットシステムへの適用例として、入力されたテキストを解析して感情パラメータを検出し、上記と同様に顔画像を生成することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−330958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されるシステムでは、所定のキャラクタデータを感情パラメータに基づいて変形させることにより顔画像を形成しているため、ユーザ個人の特徴を表す顔画像を表示させることができない。このことは、不特定多数の利用者が閲覧できるチャットシステム等においては、個人情報の特定を回避する意味で有効であるが、個人情報の特定を回避する必要のない利用者が特定されたグループ内では無用な制限となる。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、個人情報の特定を回避する必要のない利用者が特定されたグループ内でやりとりされるメッセージに、発言者を特定できる顔画像を表示させることができるメッセージ管理方法及びメッセージ管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明によるメッセージ管理方法は、サーバを介して複数のクライアントにより構成されるグループ内でやりとりされるメッセージを管理する方法において、サーバに、グループに所属するユーザの識別情報と感情ステータスに応じた複数の顔画像とを登録する画像データベースを備え、各ユーザはクライアントを介して画像データベースにアクセスして自己の情報を登録可能であり、サーバは、クライアントから発信されたメッセージを受信すると、当該メッセージの内容を解析して画像データベースに登録されたユーザの感情ステータスに対応する内容が含まれるか否かを判断し、含まれる場合には、対応する顔画像が当該メッセージと共に表示されるよう関連付けること
を特徴とする。
【0008】
ユーザが複数のグループに所属可能である場合には、画像データベースには、各顔画像毎に、使用を許可するグループを指定するフィールドを備えることが望ましい。また、画像データベースには、顔画像としてユーザの写真、または、テンプレートを使用して作成したイラスト等の画像を登録することができる。
【0009】
やりとりされるメッセージが電子メールである場合には、サーバは、顔画像のファイルを電子メール内に埋め込んで配信することができる。あるいは、顔画像は、別ファイルとしてメッセージデータと共に配信されてもよい。
【0010】
一方、本発明によるメッセージ管理プログラムは、サーバを介して複数のクライアントにより構成されるグループ内でやりとりされるメッセージを管理するプロクラムにおいて、サーバに、各ユーザがクライアントを介して画像データベースにアクセスしてグループに所属するユーザの識別情報と感情ステータスに応じた複数の顔画像とを登録するのを受け付ける手順と、クライアントから発信されたメッセージを受信した際に、当該メッセージの内容を解析して画像データベースに登録されたユーザの感情ステータスに対応する内容が含まれるか否かを判断する手順と、メッセージに対応する内容が含まれる場合に、対応する顔画像が当該メッセージと共に表示されるよう関連付ける手順とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のメッセージ管理方法及びプログラムによれば、発言者を特定できる顔画像を、発言者の感情に応じた表情で表示させることができ、キャラクタデータを利用するよりも、直接的でインパクトの強いメッセージを配信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかるメッセージ管理方法及びメッセージ管理プログラムの実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態のメッセージ管理方法を実現するためのメーリングリストシステムの構成を模式的に示すブロック図である。このシステムは、メーリングリストサーバ10と、このサーバ10にインターネット等のネットワークNを介して接続された複数のクライアント20とにより構成されている。
【0013】
メーリングリストサーバ10は、汎用のコンピュータであり、図示はしていないが、CPU、メモリ、ハードディスク、キーボードやマウス等の入力装置、モニターを備えている。ハードディスクには、メッセージ管理プログラム11が格納されており、このプログラムを実行することにより、配信される電子メールに顔画像が埋め込まれる。また、メーリングリストサーバ10のハードディスクには、メーリングリストに参加するユーザに関する情報を登録するためのユーザリスト12と、ユーザの顔画像を登録するための画像データベース(DB)13とが格納されている。メーリングリストサーバ10は、一台で複数のメーリングリストサービスを提供することができる。なお、クライアント20は、パーソナルコンピュータ(PC)または携帯電話等のユーザ端末である。
【0014】
メッセージ管理プログラム11には、ユーザの顔画像を画像DB13に登録するのを受け付ける手順に相当する登録受付モジュール11aと、やりとりされる電子メールメッセージの内容を解析して画像DB13に登録されたユーザの感情のステータスに対応する内容が含まれるか否かを判断する手順に相当するメッセージ解析モジュール11bと、解析結果に基づいて顔画像がメッセージと共に表示させるよう関連付ける手順に相当する画像埋め込みモジュール11cとが含まれている。なお、この例では、画像埋め込みモジュール11cは、顔画像を電子メールメッセージに埋め込む機能を有している。
【0015】
ユーザリスト12にはメーリングリスト毎に1つのテーブルが備えられている。そして、各テーブルにはユーザ毎に1つのレコードを有しており、各レコードには、ユーザの識別情報(ユーザID)、名前、メールアドレスを格納するための各フィールドが備えられている。一方、画像DB13は、画像毎に1つのレコードを有しており、各レコードには、以下の表1に示すように、ユーザID、写真ファイル、ステータス、イラスト画像、使用許可ML(メーリングリスト)、追加キーワードの各フィールドが備えられている。
【0016】
【表1】

【0017】
ユーザIDのフィールドには、メーリングリストに登録されているユーザのユニークな識別情報が登録されている。写真ファイルのフィールドには、ユーザが登録した顔画像のファイル名が登録されている。ステータスのフィールドには、表情のステータスとして、「にっこり」、「しょんぼり」、「ぷんぷん」、「すやすや」等の感情を表す用語が登録されている。
【0018】
なお、このステータスは、システムにより登録された定型用語であり、ユーザはこれらのステータスに対応した表情の写真を当該レコードの写真ファイルとして登録することになる。また、メーリングリストサーバ10には、ステータスを表現する言葉として、上記の用語以外に、そのステータスを表すキーワードが登録されたキーワードテーブルを備えている。例えば「にっこり」のステータスに対応させて、「楽しい」、「うれしい」、「ハッピー」等のキーワードが登録されている。これらのキーワードは、メッセージ解析モジュール11bがメッセージの内容を解析する際に利用される。
【0019】
写真ファイルは、クライアント20から送信されるデータである。クライアントがカメラ付き携帯電話である場合には、このカメラで撮影した写真データを利用でき、クライアントがPCである場合には、デジタルカメラ等で撮影した写真データを読み込んで利用できる。ユーザは、各ステータスに応じた表情の写真を撮影しておき、これをメーリングリストサーバ10の画像DB13に登録する。
【0020】
イラスト画像のフィールドには、テンプレートを利用してユーザが作成した顔画像が登録される。イラスト画像は、写真が登録されていない場合に補助的に登録できる顔画像であり、写真が登録された場合には削除される。
【0021】
使用許可MLのフィールドには、そのレコードの顔画像を使用してよいメーリングリストの名称、または識別コードが登録される。前述のように、ユーザは複数のメーリングリストに参加可能であるが、メーリングリストの種類によって使用できる顔画像にも適、不適がある。例えば、職場や学会等のパブリックなメーリングリストでは、雰囲気をこわさないように比較的まじめな表情の顔画像のみを利用可能とし、趣味のサークルや友人の集
まり等のプライベートなメーリングリストでは、親密さをアピールするために比較的くだけた表情の顔画像も利用できるようにする、といった使い分けが可能である。
【0022】
追加キーワードのフィールドには、上記のキーワードテーブルに登録された一般的なキーワードには含まれない当該レコードのステータスを表すユーザに特有のキーワードが登録される。例えば、あるユーザが「にっこり」のステータスを表現する際に、「ふるふる」という用語をよく使用する場合には、この用語を追加キーワードとして登録しておく。
【0023】
次に、メーリングリストサーバ10が実行するメッセージ管理プログラム11の内容を図2及び図3に示すフローチャートに基づいて説明する。図2は、登録受付モジュール11aの内容、図3は、メッセージ解析モジュール11b及び画像埋め込みモジュール11cの内容をそれぞれ示している。
【0024】
登録受付モジュール11aが起動すると、メーリングリストサーバ10は、図2に示すように、いずれかのクライアント20から登録要求があるのを待ち(S001)、要求があると(S001, Yes)、要求元のクライアント20に登録画面のデータを送信して登録を促す(S002)。そして、クライアントで入力されたユーザID、写真または作成画像、使用許可ML
、追加キーワードを受け付ける(S003)。登録画面のデータには、イラスト画像作成用のテンプレート及びこれを表情に応じて加工するためのツールが付属しており、ユーザは写真を登録しない場合には、これらのテンプレートとツールとを利用してイラスト画像を作成することができる。
【0025】
そして、メーリングリストサーバ10は、受け付けたデータを画像DB13に登録し(S004)、登録受付モジュールによる処理を終了する。
【0026】
続いて、メーリングリストサーバ10がユーザからの電子メールによるメッセージを受信した際の作用について図3に基づいて説明する。メーリングリストサーバ10は、いずれかのクライアント20からメッセージを受信するのを待ち(S101)、受信すると(S101, Yes)、受信したメッセージからMLメンバーであるユーザの名前と感情表現とを含む文章
を抽出する(S102)。ユーザの名前については、ユーザリスト12に登録された名前から検索する。感情表現については、キーワードテーブルに規定されたキーワードと照らし合わせ、更に、画像DBの追加キーワードを検索する。
【0027】
ステップS102で抽出される文章は、メッセージの発信者が主語となった感情表現を含む文章のみでなく、グループに含まれる他のユーザの感情を表現した文章も含まれる。例えば、発信者を主語とした「私はとてもうれしいです。」という文章は、発信者の「にっこり」ステータスに該当し、他のユーザを伝聞の主語として「Aさんがうれしいと言っていました。」という文章は、ユーザAの「にっこり」ステータスに該当する。
【0028】
そして、該当文書があるか否かを判断し(S103)、存在する場合(S103, Yes)には、抽出
された文章を形態素解析してユーザIDとステータスとを特定する(S104)。ユーザIDは、ユーザの名前に基づいてユーザリスト12から検索して特定する。ステータスは、キーワードテーブルに規定されたキーワードと照らし合わせ、一致するキーワードが見つかった場合には、そのキーワードが表すステータスを特定する。そして、特定されたユーザIDとステータスとに一致するレコードを画像DB13から検索する(S105)。
【0029】
次に、メーリングリストサーバ10は、検索によりヒットしたレコードの使用許可MLフィールドを読み込み、受信したメッセージを配布するメーリングリストが使用許可MLに含まれるか否かを判断する(S106)。使用許可MLに含まれる場合(S106, Yes)には、ヒッ
トしたレコードから写真又はイラスト画像を読み込み(S107)、読み込んだ写真又はイラス
ト画像を受信したメッセージに埋め込み(S108)、ステップS103に処理を戻す。使用許可MLに含まれない場合(S106, No)には、ステップS107、S108をスキップしてステップS103に処理を戻す。
【0030】
上記のように、該当文書を全て処理するまでステップS104〜S108の処理を繰り返す。これにより、各文章に応じた顔画像がメッセージに埋め込まれることになる。そして、ステップS103で該当文書がないと判断された場合には、ステップS109に処理を進め、顔画像が埋め込まれたメッセージをユーザリストに基づいて送信する(S109)。
【0031】
なお、上記の実施形態では、本発明をメーリングリストシステムに適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られず、参加者が限定されるチャットシステムや、ソーシャルネットワークサービス等のコミュニティサービスにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るメッセージ管理方法を実現するためのシステム構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るメッセージ管理プログラムの一部を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るメッセージ管理プログラムの他の一部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
10 メーリングリストサーバ
11 メッセージ管理プログラム
11a 登録受付モジュール
11b メッセージ解析モジュール
11c 画像埋め込みモジュール
12 ユーザリスト
13 画像DB
20 クライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバを介して複数のクライアントにより構成されるグループ内でやりとりされるメッセージを管理するメッセージ管理方法において、
前記サーバに、前記グループに所属するユーザの識別情報と感情ステータスに応じた複数の顔画像とを登録する画像データベースを備え、
各ユーザは前記クライアントを介して前記画像データベースにアクセスして自己の情報を登録可能であり、
前記サーバは、クライアントから発信されたメッセージを受信すると、当該メッセージの内容を解析して前記画像データベースに登録されたユーザの感情ステータスに対応する内容が含まれるか否かを判断し、含まれる場合には、対応する顔画像が当該メッセージと共に表示されるよう関連付けることを特徴とするメッセージ管理方法。
【請求項2】
ユーザは、複数のグループに所属可能であり、前記画像データベースには、各顔画像毎に、使用を許可するグループを指定するフィールドを備えることを特徴とする請求項1に記載のメッセージ管理方法。
【請求項3】
前記画像データベースには、顔画像としてユーザの写真、または、テンプレートを使用して作成した画像が登録されていることを特徴とする請求項1または2に記載のメッセージ管理方法。
【請求項4】
前記メッセージは電子メールであり、前記サーバは、前記顔画像のファイルを電子メール内に埋め込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメッセージ管理方法。
【請求項5】
サーバを介して複数のクライアントにより構成されるグループ内でやりとりされるメッセージを管理するメッセージ管理プロクラムにおいて、
前記サーバに、
各ユーザが前記クライアントを介して画像データベースにアクセスして前記グループに所属するユーザの識別情報と感情ステータスに応じた複数の顔画像とを登録するのを受け付ける手順と、
クライアントから発信されたメッセージを受信した際に、当該メッセージの内容を解析して前記画像データベースに登録されたユーザの感情ステータスに対応する内容が含まれるか否かを判断する手順と、
前記メッセージに対応する内容が含まれる場合に、対応する顔画像が当該メッセージと共に表示されるよう関連付ける手順とを実行させることを特徴とするメッセージ管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−237996(P2009−237996A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84389(P2008−84389)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591117192)ニフティ株式会社 (144)
【Fターム(参考)】