説明

メディア撹拌ミル

【課題】必要な分散力と分離能力を効率よく得ることができるメディア攪拌ミルを提供する。
【解決手段】本発明のメディア撹拌ミルにおいては、攪拌部材22とメディア分離部材32が、互いに干渉しないように軸方向に間隔を置いて配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア撹拌ミルに関する。本発明のメディア撹拌ミルは、インキ、塗料、顔料、セラミック、金属、無機物、フェライト、トナー、ガラス、製紙用コーティングカラー等の原料を微細粒子に粉砕または分散するための使用に特に適しているが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
遠心分離式メディア分離部材すなわち遠心セパレータを備えたメディア攪拌ミルは、種々開発されており、例えば、特許第3703148号公報(特許文献1)には、一軸に分散用の攪拌部材と遠心セパレータを取り付けたミルが開示されている。
ところで、原料の中には処理中に変質しまうものがあり、このような場合には分散力を低減しなければならない。分散力の低減は、一般的には攪拌部材の回転数を低減することによって行われるが、このように攪拌部材の回転数を低減すると、上記した特許文献1のミルにおいては、一軸に遠心セパレータも取り付けられているので、遠心セパレータの回転数も低減されてしまい、遠心力が小さくなり、分離能力が極端に小さくなってしまい、粉砕メディア流出の危険が生じてしまうという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するミルとして特開2006−212488号公報(特許文献2)に開示されたメディア攪拌ミルがある。このメディア攪拌ミルにおいては、攪拌部材と遠心セパレータが別々に駆動できるようになっており、分散力と分離能力を別々にコントロ−ルが可能であるが、分散力を弱め、分離能力を強力にすると、遠心セパレータの遠心力が分散力に影響してしまうことがある。
以上のように、遠心セパレータを備えたメディア攪拌ミルは、種々開発されているが、分散力と分離能力のバランスが難しく、効率的でないという問題を有している。
【特許文献1】特公平02−10699号公報
【特許文献2】特許第3400087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、必要な分散力と分離能力を効率よく得ることができるメディア攪拌ミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、下記(1)〜(6)の構成の本発明によるメディア攪拌ミルによって達成される。
(1)原料入口路を有する円筒形の粉砕タンク、この粉砕タンク内の一端側において回転自在に配置された攪拌部材、前記粉砕タンク内の他端側において回転自在に配置された遠心分離式メディア分離部材、前記攪拌部材から前記メディア分離部材とは反対方向に延び前記粉砕タンク外部に延びる第1駆動軸、前記メディア分離部材から前記攪拌部材とは反対側に延び前記粉砕タンク外部に延びる第2駆動軸、前記粉砕タンク内部に収容された粉砕メディア、および前記粉砕タンクの内周壁近傍に配置され、前記攪拌部材の回転により円周方向外方に向けられた前記原料と粉砕メディアの流れを、半径方向内方に転換する流れ転換部材を備え、前記攪拌部材とメディア分離部材が、互いの干渉が小さくなるように軸方向に間隔を置いて配置されており、前記第2駆動軸が中空軸で形成されており、この中空軸の内部が前記メディア分離部材の内部空間と連通され、原料出口路を形成していることを特徴とするメディア攪拌ミル。
(2)前記メディア分離部材が羽根車であることを特徴とする上記(1)に記載のメディア撹拌ミル。
(3)前記攪拌部材とメディア分離部材の間の間隔をSとし、前記攪拌部材の直径をdとしたとき、S/dが0.3以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のメディア攪拌ミル。
(4)前記粉砕メディアの総体積が、前記粉砕タンクの容積の60%以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のメディア攪拌ミル。
(5)前記攪拌部材は、5〜40m/sの範囲の回転速度で駆動が可能であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のメディア攪拌ミル。
(6)竪型であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のメディア攪拌ミル。
【発明の効果】
【0006】
本発明のメディア撹拌ミルにおいては、上記したように、粉砕タンク内部において攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材を十分に間隔をおいて配置したことにより、攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材は、それぞれ独自の性能が互いに干渉無く(あるいは極力小さい状態で)発揮できるようになる。
なお、攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材を間隔をおいて配置したことにより、粉砕タンク内部の粉砕メディアは回転力と遠心力を受けて、渦流になりやすくなるが、上記したような流れ転換部材を設けたことにより、スラリーとメディアに半径方向内方の流れを作り出し、回転流れと軸方向流れができるようにした。
以上により、粉砕メディアの流れは、あたかも混合機のような流れとなり、移動しながら接触しあい、原料の粉砕、分散が効率よく行われるようになった。
また、本発明のメディア攪拌ミルは、攪拌部材の回転速度を低減しても、メディア分離部材の遠心力が分散力にあまり影響しないので、上記したように、強い分散力を与えると変質してしまうおそれのある原料用として用いて好適である。
また、攪拌部材と遠心分離式メディア分離部材を間隔をおいて配置したことにより、粉砕メディアの動ける空間が大きくなり、自由度が大きくなるので、攪拌部材の回転速度を大きくしても、粉砕メディアのパック現象がなく運転できる。攪拌部材の回転速度を大きくした場合は、粉砕メディアおよび原料スラリーの流れが速くなり、循環流が大きく、原料スラリーのミルへの供給(排出)量に比して大きくなるので、ショートパスの確率が小さくなる。
以上、本発明のメディア攪拌ミルにおいては、幅広く条件を変更でき、極めて小さな粉砕メディア(マイクロビーズ)でのミル低周速運転での所謂マイルド分散が可能である一方で、高周速高効率運転が可能である。また、遠心分離式メディア分離部材は、小型、高速により大きな遠心力を発揮できるので、分離能力が大きく、粉砕メディアの流出が皆無である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態によるメディア撹拌ミルについて説明する。なお、以下の説明では、竪型のミルについて説明するが、本発明のミルは横型であってもよいことは勿論である。
図1は、本発明の実施の形態によるメディア撹拌ミル10を示すものであり、このメディア撹拌ミル10は、下端が閉じた円筒形のベッセル12と、このベッセル12の上端に固定された端板14と、この端板14に設けられた原料入口路16と有する粉砕タンク20を備えている。この粉砕タンク20の内部は、密閉された粉砕室Bとされている。上記ベッセル12の下部には、フレーム18が固定されている。スラリー状の原料は、上記原料入口路16を介して、粉砕タンク20の粉砕室B内に導入される。
【0008】
上記粉砕タンク20の粉砕室Bの内部下部には、攪拌部材22が回転自在に配置されている。攪拌部材22は、中心に配置されたハブ部22a、該ハブ部22aから十字状に延びるアーム22b、および該アーム22bの外周先端に支持されたほぼ歯車の歯の形をした攪拌部材主部22cを一体に備えている。上記アーム22b同士の間の空間は、複数の粉砕メディア循環用開口22dとされている。上記ハブ部22aには回転駆動軸24が固定されている。この回転駆動軸24は、上記端板14およびフレーム18を軸方向に貫通して延び、その端部は、図示しない周知の駆動機構を介して駆動源に接続されており、図に矢印で示す方向に回転駆動される。なお、上記回転駆動軸24には、軸封25(メカニカルシール等)が設けられている。メディア撹拌ミルにおいて周知のように、粉砕室Bの内部には、ビーズ状の粉砕メディア30(なお、図においては極めて拡大して示した)が収納されている。この粉砕メディア30は、その直径が0.02〜2mmのものを用いることができる。
【0009】
上記粉砕タンク20の粉砕室Bの内部上部には、上記該攪拌部材と軸方向に間隔をおいて配置され、スラリー状の原料内に分散したメディア30を該原料から分離するための遠心分離式メディア分離部材32が設けられている。このメディア分離部材32は、遠心羽根車式のものであって、上記該攪拌部材と同軸に配置されていることが好ましいが、軸がずれていてもよい。このメディア分離部材32には、中空の回転駆動軸34が固定されており。この駆動軸34は、端板14を貫通して上方に延び、その端部は、図示しない周知の駆動機構を介して駆動源に接続されており、図に矢印で示す方向に回転駆動される。なお、上記回転駆動軸34には、軸封36(メカニカルシール等)が設けられている。また、この駆動軸34の中空部は、メディア分離部材32の内部空間に連通し、原料出口路38を形成している。
【0010】
上記粉砕タンク20の粉砕室B内の内周壁近傍の上方には、流れ転換部材40(図1には一つのみを示した)が配置されている。この流れ転換部材40は、整流板の形をしていて、上記攪拌部材の回転により円周方向外方に向けられた原料スラリーと粉砕メディア30の流れを、半径方向内方に転換する作用をなす。この流れ転換部材40の作用により、攪拌部材22の回転速度が大きくなったとき、遠心力により粉砕メディア30がベッセル12の内周壁に貼り付いてしまうことを防止する。この流れ転換部材40は、粉砕室B内に少なくとも1つ配置されることが望ましく、通常は、1つから2つである。上記流れ転換部材40の下端は、攪拌部材22のほぼ上端以上にあり、その上端は、端板14近傍まで延びていることが好ましい。流れ転換部材40の水平断面形状は、図2に示したように、ベッセル12の内周壁に近づくにつれて厚さが薄くなったテーパー状のものであることが好ましい。
【0011】
上記流れ転換部材40の基部には、上端が粉砕タンク20外部に突出した棒状部材42が取り付けられており、粉砕タンク20外部から該流れ転換部材40の角度や高さ位置を調整できるようにしておくことが好ましい。
また、上記メディア分離部材32は、ハブ部32aおよび閉鎖板32b間に周方向(回転駆動軸34に同軸)に等間隔で配置された複数の羽根部材44を有している(図3(A)参照)。上記羽根部材44は、上記図3(A)に示したように完全に放射状に配置してもよいし、図3(B)に示したように傾斜して配置してもよい。上記羽根部材44は、あるいは、図3(C)に示したように断面が内方に向かって徐々に細くなる4角形状のものであってもよい。
【0012】
上記攪拌部材22とメディア分離部材32の間の間隔をSとし、前記攪拌部材の直径をdとしたとき、S/dが0.3以上、特に0.3〜0.6であることが好ましい。上記S/dの値が、0.3未満の場合には、攪拌部材とメディア分離部材の干渉の度合いが好ましくない状態となる。
上記粉砕メディア30の総体積は、上記粉砕タンク20(粉砕室B)の容積の60%以下、特に30〜50%であることが好ましい。粉砕メディア30の総体積が、上記粉砕タンク20(粉砕室B)の容積の60%を超えると、該粉砕メディア30の自由度がそこなわれ、粉砕メディア30のコントロールが困難になる。また、メディア分離部材32の高さ位置は、上記粉砕タンク20(粉砕室B)への粉砕メディア30投入水平高さより上にあることが望ましい。粉砕メディアの投入水平高さが、メディア分離部材の高さを超えると、メディア分離部材による粉砕メディアの分離能力が低下する。
本発明のメディア攪拌ミルにおいては、上記攪拌部材22は、5〜40m/sの範囲の回転速度で駆動が可能であり、メディア分離部材32は、10〜20m/sの範囲の回転速度で駆動が可能である。
【0013】
作動においては、原料入口路16から被粉砕粒子を含むスラリーである原料を導入しながら撹拌部材22を回転駆動する。粉砕室B内に導入されたスラリーは、粉砕室B内にすでに形成されているスラリーとメディア30の回転流れfに乗って攪拌部材22の方向に移動されて撹拌される。上記スラリーとメディア30の回転流れfは、攪拌部材22によって形成される半径方向外方への流れを転換部材40の作用によって半径方向内方に転換したことによって生じたものである。この粉砕メディアの回転流れfため、粉砕室B内においてはスラリー内の被粉砕粒子が粉砕ないしは分散される。このとき、攪拌部材22は、メディア分離部材32から十分に離隔されているので、該メディア分離部材32の干渉が極めて少ない。粉砕室Bの上部においては、スラリー及びメディアにはメディア分離部材32により回転運動が与えられる。この回転運動により、比重の大きいメディアは半径方向外向きに付勢され、スラリーから分離される。この場合、被粉砕粒子のうち、粉砕が不十分で粒子サイズが大きいものもメディアと同様に挙動する。一方、十分に粉砕されて質量が小さくなった粒子を含むスラリーは、メディア分離部材32の内部空間に入り、回転軸34内部の原料出口路38を介してメディア攪拌ミル外部へ排出される。この構成により、粒度分布幅の狭い粉砕を達成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施態様によるメディア撹拌ミルを示す断面図である。
【図2】攪拌部材と流れ転換部材の配置状態を説明する図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、それぞれ図1に示したメディア撹拌ミルに使用されているメディア分離部材の羽根部材の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
10 メディア撹拌ミル
12 ベッセル
14 端板
16 原料入口路
18 フレーム
20 粉砕タンク
22 攪拌部材
22a ハブ部
22b アーム
22c 攪拌部材主部
22d 粉砕メディア循環用開口
24 回転駆動軸
25 軸封
30 粉砕メディア
32 メディア分離部材
32a ハブ部
32b 閉鎖板
34 中空駆動軸
36 軸封
38 原料出口路
40 流れ転換部材
44 羽根部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料入口路を有する円筒形の粉砕タンク、この粉砕タンク内の一端側において回転自在に配置された攪拌部材、前記粉砕タンク内の他端側において回転自在に配置された遠心分離式メディア分離部材、前記攪拌部材から前記メディア分離部材とは反対方向に延び前記粉砕タンク外部に延びる第1駆動軸、前記メディア分離部材から前記攪拌部材とは反対側に延び前記粉砕タンク外部に延びる第2駆動軸、前記粉砕タンク内部に収容された粉砕メディア、および前記粉砕タンクの内周壁近傍に配置され、前記攪拌部材の回転により円周方向外方に向けられた前記原料と粉砕メディアの流れを、半径方向内方に転換する流れ転換部材を備え、前記攪拌部材とメディア分離部材が、互いの干渉が小さくなるように軸方向に間隔を置いて配置されており、前記第2駆動軸が中空軸で形成されており、この中空軸の内部が前記メディア分離部材の内部空間と連通され、原料出口路を形成していることを特徴とするメディア攪拌ミル。
【請求項2】
前記メディア分離部材が羽根車であることを特徴とする請求項1に記載のメディア撹拌ミル。
【請求項3】
前記攪拌部材とメディア分離部材の間の間隔をSとし、前記攪拌部材の直径をdとしたとき、S/dが0.3以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のメディア攪拌ミル。
【請求項4】
前記粉砕メディアの総体積が、前記粉砕タンクの容積の60%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメディア攪拌ミル。
【請求項5】
前記攪拌部材は、5〜40m/sの範囲の回転速度で駆動が可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のメディア攪拌ミル。
【請求項6】
竪型であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のメディア攪拌ミル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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