説明

メモリカード用ソケット

【課題】コストアップや大型化を招くことなく通信距離を延ばすことができるメモリカード用ソケットを提供する。
【解決手段】ソケット1には、主平面に沿う平面内でループ状に形成された内蔵アンテナ100を有し、内蔵アンテナ100を介して外部と非接触通信によりデータを授受するメモリカードMCが挿抜自在に装着される。このソケット1は、メモリカードMCが挿入されるカード挿入口2aおよびカード挿入口2aを通してメモリカードMCの少なくとも一部を挿抜自在に受け入れるカード収容部を具備したケース2を備えている。ケース2においてメモリカードMCの主平面に対向する面で、且つ、リーダライタ装置側の面を導電材料又は磁性材料の何れかで形成されたカバーシェル4で構成してあり、このカバーシェル4と一体に、メモリカードMCの主平面の法線方向において内蔵アンテナ100の少なくとも一部と重なる2次アンテナ部10aを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDメモリカードやマルチメディアカード(MMCカード)のようなメモリカードに非接触通信によって外部とのデータ授受を行うICカード機能を持たせたメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカード用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラや携帯電話機などの電子機器におけるデータ記憶手段として、カード型のハウジングにフラッシュメモリのような不揮発性メモリを内蔵したメモリカード、例えばSDメモリカード(登録商標)やマルチメディアカード(登録商標)が急速に普及してきた。そして、かかるメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカード用ソケットとして、前方に開口したカード挿入口を通してメモリカードが内部に挿入されるハウジングと、ハウジング内に設けられメモリカードが有する接続端子に接触導通する複数のコンタクトと、ハウジング内でメモリカードの挿抜方向にスライド自在に設けられカード挿入口から挿入されるメモリカードに連動してハウジング内をスライド移動するスライド部材と、ハウジングに対してカード挿入口に向かう向きにスライド部材を付勢する付勢ばねと、メモリカードの接続端子がコンタクトに接触する保持位置よりも奥のロック位置までスライド部材が押し込まれるとスライド部材のカード挿入口へ向かう向きへの移動を禁止するとともに、スライド部材がロック位置よりも奥まで一旦押し込まれた状態で押力が解除されるとスライド部材を解放するプッシュオン・プッシュオフ型のロック機構とを備えたものが従来より提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようにプッシュオン・プッシュオフ型のロック機構を備えたメモリカード用ソケットにメモリカードを接続する際は、メモリカードをハウジングに挿入して押し込むと、スライド部材がメモリカードを介して押力を受け、メモリカードの接続端子がコンタクトに接触する保持位置よりもやや奥のロック位置まで移動したときに、カード挿入口へ向かう向きへのスライド部材の移動がロック機構によって禁止され、メモリカードへの押力を除去した後にもメモリカードが保持位置に留まることになる。一方、メモリカードを抜く際には、ロック位置よりも少し奥にメモリカードを一旦押し込んでからメモリカードへの押力を除去すると、ロック機構がスライド部材を解放し、メモリカードがスライド部材を介して付勢ばねのばね力を受け、ハウジングから押し出される。
【0004】
ところで、非接触通信によって外部との間でデータを授受するICカード機能を持たせたメモリカード(例えば、「SmartSD」)が今後普及すると予測される。かかるICカード機能付きのメモリカードには非接触通信用のアンテナが内蔵されているが、メモリカード自体が小型であるために内蔵アンテナも必然的に小型になり、通信距離の確保が重要な課題となる。例えば特許文献2には、アンテナを内蔵したクレジットカード型のアダプタにICカード機能付きメモリカードを装着することで通信距離を確保する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−26016号公報
【特許文献2】特開2002−279377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されている従来例のようにクレジットカード型のアダプタを使用した場合、従来のメモリカード用ソケットには装着することができず、専用のソケットを新たに設計し直す必要があり、ソケットが大型化するとともにコストが大幅に増大するという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、コストアップや大型化を招くことなく通信距離を延ばすことができるメモリカード用ソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、
主平面に沿う平面内でループ状に形成された内蔵アンテナが一方の主平面に近接して配置され、内蔵アンテナを介してリーダライタ装置との間で非接触通信によりデータを授受するメモリカードが挿抜自在に装着されるメモリカード用ソケットであって、
メモリカードが挿入されるカード挿入口および当該カード挿入口を通してメモリカードの少なくとも一部を挿抜自在に受け入れるカード収容部を具備したケースを備え、当該ケースにおいてメモリカードの一方の主平面に対向する面で、且つ、リーダライタ装置側の面に、磁性材料又は導電材料の何れかで形成され、内蔵アンテナの少なくとも一部と重なる位置に配置される2次アンテナ部を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、内蔵アンテナは平面視の形状が略ロ字形に形成されており、2次アンテナ部が、内蔵アンテナの少なくとも1つの辺と重なる位置に配置されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、2次アンテナ部が、内蔵アンテナの2辺以上と重なる位置に配置されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの発明において、ケースにおいてメモリカードの一方の主平面に対向する面で、且つ、リーダライタ装置側の面を、磁性材料又は導電材料の何れかで形成された金属シェルで構成し、2次アンテナ部を金属シェルと一体に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、
ケースにおいてメモリカードの一方の主平面に対向する面で、且つ、リーダライタ装置側の面に配置された2次アンテナ部が、メモリカードの内蔵アンテナの少なくとも一部と重なっているので、メモリカードの一方の主平面に対向する面で、リーダライタ装置側の面に磁界(磁束)が集まりやすくなり、リーダライタ装置の磁界(磁束)が引き込まれることによって、メモリカードの内蔵アンテナに対してブースターアンテナ(2次アンテナ)の役割を果たし、その結果メモリカードとリーダライタ装置との間の非接触通信の性能が向上して、通信距離を延ばすことができるという効果がある。しかも2次アンテナ部は、メモリカードの内蔵アンテナと重なる位置に設けられているので、ソケットが大型化することはなく、したがってソケットを新たに設計し直す必要がないからコストアップを招くことがないという効果もある。
【0012】
請求項2の発明によれば、2次アンテナ部が、略ロ字形に形成された内蔵アンテナの少なくとも1つの辺と重なる位置に配置されているので、この2次アンテナ部が、請求項1の発明と同様、メモリカードの内蔵アンテナに対してブースターアンテナ(2次アンテナ)の役割を果たし、その結果メモリカードとリーダライタ装置との間の非接触通信の性能が向上し、通信距離を延ばすことができるという効果がある。
【0013】
請求項3の発明によれば、2次アンテナ部が、略ロ字形に形成された内蔵アンテナの2辺以上と重なる位置に配置されているので、メモリカードの内蔵アンテナに対するブースターアンテナ(2次アンテナ)の役割がさらに大きくなり、メモリカードとリーダライタ装置との間の非接触通信の性能が向上し、通信距離をさらに延ばすことができるという効果がある。
【0014】
請求項4の発明によれば、2次アンテナ部が、ケースを構成する金属シェルと一体に設けられているので、部品点数を減らして、組立作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明に係るメモリカード用ソケットの実施形態を、電子機器等(図示せず)に設けられ、内蔵したアンテナを介した非接触通信により外部のリーダライタ装置との間でデータを授受するICカード機能付きのSDメモリカード(登録商標)のようなメモリカードが挿抜自在に装着されるソケットを例に、図1〜図4を参照して説明する。尚、以下の説明では図1における上下の向きをそれぞれ上向き及び下向きと規定し、左斜め上方の向きを左向き、右斜め下方の向きを右向き、左斜め下方の向きを前向き、右斜め上方の向きを後向きと規定して説明を行う。
【0017】
図3に示すように、本実施形態で用いるメモリカードMCは従来周知のSDメモリカード(登録商標)に内蔵アンテナ(ループコイル)100並びに内蔵アンテナ100を介した非接触通信により外部とのデータ授受を行う集積回路(IC)を内蔵してなり、外周形状が略矩形状であって、後側の上面に複数個(8個)の接続端子101が左右に並べて設けられている。内蔵アンテナ100はメモリカードMCの主平面に沿う平面内でループ状に形成され、平面視の形状が略ロ字形に形成されており、メモリカードMCの内部空間においてメモリカードMCの一方の主表面(リーダライタ装置側の面であって図1の上面)に近接させて配置されている。またメモリカードMCの内部には、他方の主表面に近接させて上述の集積回路などを実装した回路基板(図示せず)が配置されており、この回路基板と内蔵アンテナ100の間には磁性シート(図示せず)が配置されている。
【0018】
また、メモリカードMCの後部(挿入側)の一方の角(左後ろの角)を落として逆差し防止用の傾斜カット部102を形成してあり、メモリカードMCの左側縁には、傾斜カット部102よりもやや前側の部位に矩形状に陥没したロック用切欠(図示せず)が設けられている。さらにメモリカードMCの右側縁には、手操作で摘みを前後にスライドさせることでデータの書き込み可能・禁止を切り替えるライトプロテクトスイッチ103が設けられている。
【0019】
次に本実施形態のメモリカード用ソケット(以下、ソケットと略称する。)1について詳細に説明する。このソケット1は、非接触通信機能を持たない従来のソケットとほぼ同様の構成及び機能を有しており、メモリカードMCをカード挿入口2aを通してカード収容部2b内部に挿入し押し込むことで、当該メモリカードMCが所定のロック位置に保持され、その後ロック位置よりも奥まで一旦押し込んだ状態で押力を解除すると、メモリカードMCのロックが解除されてメモリカードMCがカード挿入口2aから押し出されるようになっている。すなわちソケット1は所謂プッシュオン・プッシュオフ機能を有している。
【0020】
図1及び図3は本実施形態の外観斜視図、図4は本実施形態の分解斜視図であり、このソケット1は、一側面(挿入方向手前側の前面)に細長い帯状のカード挿入口2aが開口した扁平な箱状のケース2と、ケース2の内部にカード挿入口2aに連通して設けられたカード収容部2b内でカード挿入口2a側と奥側との間で進退自在に配置されたスライダ5と、スライダ5をカード挿入口2a側に付勢するコイルスプリング6と、カード収容部2bの奥側に左右方向に並べて配列され、メモリカードMCの接続端子101にそれぞれ電気的に接続される複数本(9本)の接触端子7とを備えている。
【0021】
ケース2は、絶縁性を有する合成樹脂成型品からなるベースシェル3と、導電材料又は磁性材料の何れかで、且つ、熱伝導性の良好な金属薄板(本実施形態では例えばステンレススチール)により形成されたカバーシェル4とを相互に結合して構成されている。
【0022】
ベースシェル3は、平板状であって前縁の中央部に切欠3bを設けることによって平面視の形状が略コ字形に形成された底板部3aと、底板部3aの後部から上側に向かって立設されカード収容部2bのカード挿入方向奥側端を閉塞する奥壁部3cと、底板部3aの左右両側部からそれぞれ上側に向かって立設されカード収容部2bの左右の壁をなす一対の側壁部3d,3eとを一体に備えており、各側壁部3d,3eの外側面には、後述するカバーシェル4の係止孔4dにそれぞれ係止する係止爪3fが複数個突設されている。
【0023】
またカバーシェル4は、平板状であって前縁の中央部に切欠4bを設けることによって平面視の形状が略コ字形に形成された天板部4aを備え、天板部4aの幅方向両側辺からそれぞれ側方に延長形成された突出部分を略直角に折り曲げて複数の係止片4cを形成してあり、各係止片4cにはベースシェル3の係止爪3fが係止する係止孔4dをそれぞれ形成してある。ここにおいて、天板部4aの切欠4bが設けられた部位の前縁は、カード収容部2b内にメモリカードMCを収容した状態で、メモリカードMCに内蔵されたロ字形の内蔵アンテナ100の後側の辺100aよりも前側に位置しており、内蔵アンテナ100の後側辺100aは天板部4aの一部(2次アンテナ部10a)によって覆われている。
【0024】
而してカバーシェル4は、左右両側部に設けた係止片4cの係止孔4dをベースシェル3に設けた係止爪3fと係止させることで、ベースシェル3の上側開口を覆うように取り付けられるのである(図1および図3参照)。そして、ベースシェル3とカバーシェル4とを結合して一体化することによりケース2が形成される。この時、ベースシェル3において奥壁部3cと反対側の端部がカード収容部2bの入口(つまりカード挿入口2a)となり、メモリカードMCはカード挿入口2aを通してカード収容部2b内に挿入されるのである。
【0025】
スライダ5は、カード収容部2bの内部に、カード挿入口2a側と奥側との間(つまり前後方向)に進退可能な状態で取着されている。このスライダ5は、メモリカードMCの先端面104に当接する奥壁部5aと、傾斜カット部102に当接する角壁部5bと、メモリカードMCの左側部に当接する側壁部5cとを一体に備えて、平面視の形状が略L字状に形成されている。そして、カード挿入口2aを通してカード収容部2bにメモリカードMCが挿入されると、メモリカードMCの先端面104および傾斜カット部102が、それぞれ奥壁部5aおよび角壁部5bの内壁に衝合するとともに、その状態でメモリカードMCが図示しない係止機構によってスライダ5に係止され、保持されるようになっており、この保持状態でメモリカードMCはスライダ5とともにカード収容部2b内を前後方向に進退するのである。なお、カバーシェル4の天板部4aの奥側部分には、スライダ5がメモリカードMCとともにカード収容部2b内の奥側に移動して、メモリカードMCの接続端子101に対応する接触端子7が弾接した際に、メモリカードMCと反対側に撓められた接触端子7がケース2(すなわち天板部4a)と干渉するのを避けるための逃がし孔9が各接触端子7に対応して複数個(本実施形態では8個)形成されている。
【0026】
ここにおいて、カード収容部2b内におけるスライダ5の位置は、図示しないハートカム機構と、スライダ5をカード挿入口2a側に付勢するコイルスプリング6とを含む従来周知のプッシュオン・プッシュオフ機構によって制御される。ハートカム機構は、一例としてスライダ5又はケース2(ベースシェル3)のうち何れか一方にガイド溝を設けるとともに、スライダ5又はケース2の他方にガイド溝内に案内される案内子を設けることによって構成される。ハートカム機構を構成するガイド溝は、その所定区間をスライダ5の前後動に応じて案内子を一方向に案内する経路とし、その経路によって囲まれる部位に平面視ハート形のハートカムを設けてあり、ロック位置においてハートカムの凹部に案内子を係止させることで、スライダ5をロック位置に保持し前方への移動を規制するようになっている。
【0027】
またコイルスプリング6は、本実施形態では引張ばねとして機能し、ベースシェル3の側壁部3dにおけるカード挿入口2a側の部位に設けた突起3gと、スライダ5の側壁部5cに設けた突起5dとの間に懸架され、スライダ5に対してカード収容部2bの入口側(つまりカード挿入口2a側)に付勢する付勢力を作用させている。
【0028】
接触端子7は、それぞれ弾性および導電性を有する金属材料により短冊状に形成されて、ベースシェル3の奥壁部3cに固定されており、カード収容部2bの内部で、その奥側からカード挿入口1b側に向かって延出している。各接触端子7のカード挿入口2a側の端部7aは略く字形に折曲されており、カード収容部2b内に挿入されたメモリカードMCの接続端子101に弾接する。一方、各接触端子7の反対側の端部7bは、奥壁部3cの後面から突出し、その先端側はベースシェル3の下面と平行な方向に延出しており、この先端側が電子機器に設けられた回路基板等に半田付けされる端子となっている。なお、接触端子7は、ベースシェル3の奥壁部3cにインサート成形によって固定しても良いし、圧入などの方法で固定しても良い。
【0029】
ところで、メモリカードMCは内蔵アンテナ100および集積回路を内蔵し、外部のリーダライタ装置との間で非接触通信によりデータを授受する機能を備えているが、本実施形態のソケット1では、メモリカードMCの通信性能を向上させ、通信可能距離を延ばすために、メモリカードMCをカード収容部2b内に収容するケース2において、メモリカードMCの主平面(すなわち内蔵アンテナ100が近接して配置された側の主表面(上面))に対向する面であって、リーダライタ装置側の面(上面)を導電材料又は磁性材料の何れかで形成されたカバーシェル4で構成し、このカバーシェル4と一体に、メモリカードMCの主平面の法線方向において内蔵アンテナ100の後側辺100aと重なる2次アンテナ部10aを設けている。
【0030】
したがって、ソケット1のカード収容部2b内にメモリカードMCが収容された状態では、カバーシェル4と一体に設けた2次アンテナ部10aが、メモリカードMCの内蔵アンテナ100の後側辺100aとメモリカードMCの主平面(上面)の法線方向において重なるので、メモリカードMCの主平面に対向する面で、リーダライタ装置側の面に磁界(磁束)が集まりやすくなり、リーダライタ装置の磁界(磁束)が引き込まれることによって、メモリカードMCの内蔵アンテナ100に対してブースターアンテナ(2次アンテナ)の役割を果たし、その結果メモリカードMCとリーダライタ装置との間の非接触通信の性能が向上し、通信距離を延ばすことができる。
【0031】
ところで、上記実施形態のソケット1では、メモリカードMCが内蔵する内蔵アンテナ100の1つの辺100aと上下方向(つまりメモリカードMCの主表面の法線方向)において重なり合う2次アンテナ部10aをカバーシェル4と一体に設けているが、内蔵アンテナ100の少なくとも一部と重なる部位に2次アンテナ部を設けることで、非接触通信の通信性能を向上させることができる。
【0032】
例えば図5および図6(a)に示すように内蔵アンテナ100の左右の辺100b,100cと上下方向において重なり合う2次アンテナ部10b,10cをカバーシェル4と一体に設けても良い。この場合は、天板部4aの切欠4bが設けられた部位の前縁は、カード収容部2b内にメモリカードMCを収容した状態で、メモリカードMCの内蔵アンテナ100の後側辺100aよりも後側に位置し、且つ、切欠4bが設けられた部位の左右の側縁は、内蔵アンテナ100の左右の辺100b,100cよりも内側に位置しており、内蔵アンテナ100の後側辺100aは露出する一方、左右両側辺100b,100cが2次アンテナ部10b,10cによって覆われているので、図1のソケット1に比べて、内蔵アンテナ100に対するブースタアンテナの役割がより大きくなり、メモリカードMCとリーダライタ装置との間の通信距離をさらに延ばすことができる。
【0033】
また、図6(c)に示すように内蔵アンテナ100の後側の辺100aと左右の辺100b,100cとにそれぞれ上下方向において重なり合う2次アンテナ部10a,10b,10cをカバーシェル4と一体に設けても良い。この場合、天板部4aの切欠4bが設けられた部位の前縁は、カード収容部2b内にメモリカードMCを収容した状態で、メモリカードMCの内蔵アンテナ100の後側辺100aよりも前側に位置し、且つ、切欠4bが設けられた部位の左右の側縁は、内蔵アンテナ100の左右の辺100b,100cよりも内側に位置しており、内蔵アンテナ100の後側辺100aと左右両側辺100b,100cとがそれぞれ2次アンテナ部10a,10b,10cによって覆われているので、図1のソケット1に比べて、内蔵内蔵アンテナ100に対するブースタアンテナの役割がより大きくなり、メモリカードMCとリーダライタ装置との間の通信距離をさらに延ばすことができる。
【0034】
ここで、2次アンテナ部の効果を検証するために、内蔵アンテナ100と法線方向において重なる部位がないカバーシェル3を用い、2次アンテナ部をカバーシェル3と一体に形成する代わりに、2次アンテナ部の役割を果たす銅テープ20(幅が約6mm)がカバーシェル3’に貼着されていない場合と、カバーシェル3’においてメモリカードMCの主平面(内蔵内蔵アンテナ100が近接配置された側の主平面)に対向する面の所定位置に銅テープ20を貼り付けた場合とで、リーダライタ装置との間の通信距離を測定した結果を以下の表1、表2に示す。なおこの場合は銅テープ20とカバーシェル3’との間に粘着層が介在するため、銅テープ20とカバーシェル3’とは電気的に絶縁されている。また表1,表2において上段のデータは、ケース2の上面のみが金属シェルで構成された本実施形態のソケット1(このようなソケット1をAタイプと言う。)のデータであり、下段のデータは、ケース2の上面および下面が金属シェルで構成されたソケット1(このようなソケット1をBタイプと言う。)のデータである。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1中のデータaは、カードシェル3’に銅テープを貼り付けていない場合のデータを示しており、この場合、Aタイプのソケット1では通信距離が66mm、Bタイプのソケット1では通信距離が62mmであった。一方、表1のデータb〜eは、ロ字形の内蔵アンテナ100の1つの辺に重なる部位に銅テープ20を貼り付けた場合のデータであり、Aタイプのソケット1では通信距離が72〜74mm、Bタイプのソケット1では通信距離が67〜69mmとなっており、何れのタイプのソケットでも通信距離が延びている。
【0038】
また表2のデータf,gは、内蔵アンテナ100の2つの辺に重なる部位に銅テープ20を貼り付けた場合のデータであり、Aタイプのソケット1では通信距離が76mm、Bタイプのソケット1では通信距離が69〜70mmとなっており、何れのタイプのソケット1でも銅テープを貼り付けていない場合(データa)や1つの辺に重なる部位のみに銅テープ20を貼り付けた場合(データb〜e)に比べて通信距離が延びている。
【0039】
また表2のデータh,iは、内蔵アンテナ100の3つの辺に重なる部位に銅テープ20を貼り付けた場合のデータであり、Aタイプのソケット1では通信距離が76〜77mm、Bタイプのソケット1では通信距離が71mmとなっており、何れのタイプのソケット1でも銅テープを貼り付けていない場合(データa)や、1つの辺又は2つの辺に重なる部位のみに銅テープ20を貼り付けた場合(データb〜g)に比べて通信距離が延びている。
【0040】
また更に表2のデータjは、内蔵アンテナ100の4辺全てに重なる部位に銅テープ20を貼り付けた場合のデータであり、Aタイプのソケット1では通信距離が76mm、Bタイプのソケット1では通信距離が70mmとなっており、何れのタイプのソケット1でも銅テープを貼り付けていない場合(データa)や、1つの辺に重なる部位のみに銅テープ20を貼り付けた場合(データb〜g)に比べて通信距離が延びている。なお2つの辺又は3つの辺に重なる部位に銅テープ20を貼り付けた場合と比較すると通信距離は同程度であった。
【0041】
以上の測定結果より内蔵アンテナ100の少なくとも一部と重なる部位に2次アンテナ部10a…を設けることで、ソケット1の通信距離を延ばすことができ、また内蔵アンテナ100の2辺以上と重なる部位に2次アンテナ部10a…を設けることで、1辺のみに重なる部位に2次アンテナ部10a…を設けた場合に比べて、通信距離をさらに延ばすことができる。なお本実施形態では2次アンテナ部10a…をカバーシェル3と一体に設けているので、部品点数を少なくして組立作業性が向上するという利点があるが、表1、表2で説明したように導電材料又は磁性材料の何れかによりカバーシェル3’と別体に形成された2次アンテナ部(表1、表2の例では銅テープ20)を、カバーシェル3’の所定位置に貼着などの方法で固定しても良く、2次アンテナ部10a…をカバーシェル3と一体に設けた場合と同様に絶縁距離を延ばすことができる。
【0042】
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態のメモリカード用ソケットにメモリカードを装着した状態の外観斜視図である。
【図2】同上にメモリカードを装着した状態の平面図である。
【図3】同上にメモリカードを装着する前の状態の外観斜視図である。
【図4】同上の分解斜視図である。
【図5】同上の他の形態を示し、メモリカードを装着した状態の外観斜視図である。
【図6】(a)(b)は同上にメモリカードを装着した状態の平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ソケット(メモリカード用ソケット)
2 ケース
2a カード挿入口
2b カード収容部
3 ベースシェル
4 カバーシェル(金属シェル)
10a 2次アンテナ部
100 内蔵アンテナ
MC メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主平面に沿う平面内でループ状に形成された内蔵アンテナが一方の主平面に近接して配置され、内蔵アンテナを介してリーダライタ装置との間で非接触通信によりデータを授受するメモリカードが挿抜自在に装着されるメモリカード用ソケットであって、
メモリカードが挿入されるカード挿入口および当該カード挿入口を通してメモリカードの少なくとも一部を挿抜自在に受け入れるカード収容部を具備したケースを備え、当該ケースにおいてメモリカードの前記一方の主平面に対向する面で、且つ、リーダライタ装置側の面に、磁性材料又は導電材料の何れかで形成され、前記内蔵アンテナの少なくとも一部と重なる位置に配置される2次アンテナ部を設けたことを特徴とするメモリカード用ソケット。
【請求項2】
前記内蔵アンテナは平面視の形状が略ロ字形に形成されており、前記2次アンテナ部が、前記内蔵アンテナの少なくとも1つの辺と重なる位置に配置されたことを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
【請求項3】
前記2次アンテナ部が、前記内蔵アンテナの2辺以上と重なる位置に配置されたことを特徴とする請求項2記載のメモリカード用ソケット。
【請求項4】
前記ケースにおいてメモリカードの前記一方の主平面に対向する面で、且つ、リーダライタ装置側の面を、磁性材料又は導電材料の何れかで形成された金属シェルで構成し、前記2次アンテナ部を金属シェルと一体に設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のメモリカード用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−83867(P2008−83867A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261493(P2006−261493)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】