説明

メモリカード用ソケット

【課題】コストアップや大型化を招くことなく通信距離を延ばすことができるメモリカード用ソケットを提供する。
【解決手段】メモリカード用ソケット1は、カード挿入口を通してカード収容部内にメモリカードMCを挿抜自在に受け入れるソケットブロック10と、カード収容部内に挿入されたメモリカードMCの内蔵アンテナ100の外側領域に少なくとも一部が配置される2次アンテナ21を有し、メモリカードMCの主表面の法線方向においてソケットブロック10に重ねて配置されたアンテナブロック20と、上記法線方向においてカード収容部内に挿入されたメモリカードMCの内蔵アンテナ100と2次アンテナ21との間に位置し、アンテナブロック20における内蔵アンテナ100およびその内側領域105にそれぞれ対応する領域以外の領域に対応して配置された磁性シート24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDメモリカードやマルチメディアカード(MMCカード)のようなメモリカードに非接触通信によって外部とのデータ授受を行うICカード機能を持たせたメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカード用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラや携帯電話機などの電子機器におけるデータ記憶手段として、カード型のハウジングにフラッシュメモリのような不揮発性メモリを内蔵したメモリカード、例えばSDメモリカード(登録商標)やマルチメディアカード(登録商標)が急速に普及してきた。そして、かかるメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカード用ソケットとして、前方に開口したカード挿入口を通してメモリカードが内部に挿入されるハウジングと、ハウジング内に設けられメモリカードが有する接続端子に接触導通する複数のコンタクトと、ハウジング内でメモリカードの挿抜方向にスライド自在に設けられカード挿入口から挿入されるメモリカードに連動してハウジング内をスライド移動するスライド部材と、ハウジングに対してカード挿入口に向かう向きにスライド部材を付勢する付勢ばねと、メモリカードの接続端子がコンタクトに接触する保持位置よりも奥のロック位置までスライド部材が押し込まれるとスライド部材のカード挿入口へ向かう向きへの移動を禁止するとともに、スライド部材がロック位置よりも奥まで一旦押し込まれた状態で押力が解除されるとスライド部材を解放するプッシュオン・プッシュオフ型のロック機構とを備えたものが従来より提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようにプッシュオン・プッシュオフ型のロック機構を備えたメモリカード用ソケットにメモリカードを接続する際は、メモリカードをハウジングに挿入して押し込むと、スライド部材がメモリカードを介して押力を受け、メモリカードの接続端子がコンタクトに接触する保持位置よりもやや奥のロック位置まで移動したときに、カード挿入口へ向かう向きへのスライド部材の移動がロック機構によって禁止され、メモリカードへの押力を除去した後にもメモリカードが保持位置に留まることになる。一方、メモリカードを抜く際には、ロック位置よりも少し奥にメモリカードを一旦押し込んでからメモリカードへの押力を除去すると、ロック機構がスライド部材を解放し、メモリカードがスライド部材を介して付勢ばねのばね力を受け、ハウジングから押し出される。
【0004】
ところで、非接触通信によって外部との間でデータを授受するICカード機能を持たせたメモリカード(例えば、「SmartSD」)が今後普及すると予測される。かかるICカード機能付きのメモリカードには非接触通信用のアンテナが内蔵されているが、メモリカード自体が小型であるために内蔵アンテナも必然的に小型になり、通信距離の確保が重要な課題となる。例えば特許文献2には、アンテナを内蔵したクレジットカード型のアダプタにICカード機能付きメモリカードを装着することで通信距離を確保する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−26016号公報
【特許文献2】特開2002−279377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されている従来例のようにクレジットカード型のアダプタを使用した場合、従来のメモリカード用ソケットには装着することができず、専用のソケットを新たに設計し直す必要があり、ソケットが大型化するとともにコストが大幅に増大するという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、コストアップや大型化を招くことなく通信距離を延ばすことができるメモリカード用ソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、主平面に沿う平面内でループ状に形成された内蔵アンテナを有し当該内蔵アンテナを介してリーダライタ装置との間で非接触通信によりデータを授受するメモリカードが挿抜自在に装着されるメモリカード用ソケットであって、メモリカードが挿入されるカード挿入口および当該カード挿入口を通してメモリカードの少なくとも一部を挿抜自在に受け入れるカード収容部を具備したソケットブロックと、カード収容部内に挿入されたメモリカードの内蔵アンテナの外側領域に少なくとも一部が配置されるループ状の2次アンテナを有し、メモリカードの主表面の法線方向においてソケットブロックに重ねて配置されたアンテナブロックと、上記法線方向においてカード収容部内に挿入されたメモリカードの内蔵アンテナと2次アンテナとの間に位置し、且つ、アンテナブロックにおける内蔵アンテナおよび内蔵アンテナの内側領域にそれぞれ対応する領域以外の領域に対応して配置された磁性シートとを備えて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、メモリカードの内蔵アンテナと2次アンテナとの間に、アンテナブロックにおける内蔵アンテナおよび内蔵アンテナの内側領域にそれぞれ対応する領域以外の領域に対応して磁性シートを配置しているので、磁性シートにより外部のリーダライタ装置の磁力線を引き込んで、2次アンテナの誘起電力を増大させて、通信距離を延ばすことができる。しかも磁性シートは、メモリカードの内蔵アンテナおよび内蔵アンテナの内側領域にそれぞれ対応する領域以外の領域に対応して配置されているので、磁性シートの存在によって内蔵アンテナに悪影響が発生することはない。さらに磁性シートは、アンテナブロックにおける内蔵アンテナおよび内蔵アンテナの内側領域にそれぞれ対応する領域以外の領域に対応して配置されており、磁性シートをアンテナブロックの大きさに収めることができるので、ソケットが大型化することはなく、したがってソケットを新たに設計し直す必要がないから、コストアップを招くこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
本発明に係るメモリカード用ソケットの実施形態を、電子機器等(図示せず)に設けられ、内蔵したアンテナを介した非接触通信により外部のリーダライタ装置との間でデータを授受するICカード機能付きのSDメモリカード(登録商標)のようなメモリカードが挿抜自在に装着されるソケットを例に、図1〜図4を参照して説明する。尚、以下の説明では図2における上下の向きをそれぞれ上向き及び下向きと規定し、左斜め上方の向きを左向き、右斜め下方の向きを右向き、左斜め下方の向きを前向き、右斜め上方の向きを後向きと規定して説明を行う。
【0011】
図2に示すように、本実施形態で用いるメモリカードMCは従来周知のSDメモリカード(登録商標)にループ状のアンテナ(内蔵アンテナ)100並びにアンテナ100を介した非接触通信により外部とのデータ授受を行う集積回路(IC)を内蔵してなり、外周形状が略矩形状であって、後側の上面に複数個(8個)の接続端子101が左右に並べて設けられている。アンテナ100はメモリカードMCの主平面に沿う平面内でループ状に形成され、平面視の形状が略ロ字形に形成されており、メモリカードMCの内部空間においてメモリカードMCの一方の主表面(リーダライタ装置側の面であって図1の上面)に近接させて配置されている。またメモリカードMCの内部には、他方の主表面に近接させて上述の集積回路などを実装した回路基板(図示せず)が配置されており、この回路基板とアンテナ100の間には磁性シート(図示せず)が配置されている。
【0012】
また、メモリカードMCの後部(挿入側)の一方の角(左後ろの角)を落として逆差し防止用の傾斜カット部102を形成してあり、メモリカードMCの左側縁には、傾斜カット部102よりもやや前側の部位に矩形状に陥没したロック用切欠(図示せず)が設けられている。さらにメモリカードMCの右側縁には、手操作で摘みを前後にスライドさせることでデータの書き込み可能・禁止を切り替えるライトプロテクトスイッチ103が設けられている。
【0013】
次に本実施形態のメモリカード用ソケット(以下、ソケットと略称する。)1について詳細に説明する。このソケット1は、メモリカードMCが挿抜自在に装着されるソケットブロック10と、2次アンテナ21を具備してソケットブロック10の上側に載置されるアンテナブロック20とで構成される。
【0014】
図4はソケットブロック10の外観斜視図であり、このソケットブロック10は非接触通信機能を持たない従来のソケットとほぼ同様の構成及び機能を有し、メモリカードMCをカード挿入口11aを通してカード収容部11b内部に挿入し押し込むことで、当該メモリカードMCが所定のロック位置に保持され、その後ロック位置よりも奥まで一旦押し込んだ状態で押力を解除すると、メモリカードMCのロックが解除されてメモリカードMCがカード挿入口11aから押し出されるようになっている。すなわちソケットブロック10は所謂プッシュオン・プッシュオフ機能を有している。
【0015】
ソケットブロック10は、図4に示すように一側面(挿入方向手前側の前面)に細長い帯状のカード挿入口11aが開口した扁平な箱状のケース11と、ケース11の内部にカード挿入口11aに連通して設けられたカード収容部11b内でカード挿入口11a側と奥側との間で進退自在に配置されたスライダ14と、スライダ14をカード挿入口11a側に付勢する付勢手段(図示せず)と、カード収容部11b内に配置されてメモリカードMCの接続端子101にそれぞれ電気的に接続される複数本(9本)の接触端子15をカード収容部11bの奥側に配置されるコンタクト支持部(図示せず)に左右方向に並べた状態で保持させたコンタクトブロック(図示せず)と、を備えている。
【0016】
ケース11は、導電性を有し且つ熱伝導性の良好な金属薄板(例えばステンレススチールなど)によりそれぞれ形成された上側(アンテナブロック20側)のベースシェル12と、下側のカバーシェル13とを結合して構成される。
【0017】
ベースシェル12は、平板状であって前縁側に開放された切欠12bを左右方向中央部に設けることで平面視の形状が略コ字形に形成された天板部12aと、この天板部12aの左右方向両側縁を略直角(下向き)に折り曲げてそれぞれ形成された帯状の側壁部(図示せず)とを有している。そして、カード挿入口11a側の角部には、天板部12a或いは側壁部(本実施形態では天板部12a)を切り起こすことによって、スライダ14がカード挿入口11aから前方に突出するのを規制するストッパ12cが形成されている。なお、上述の切欠12bは、カード収容部11b内にメモリカードMCを収容した状態で、メモリカードMCのアンテナ100およびこのアンテナ100の内側領域と上下方向(つまりメモリカードMCの主表面の法線方向)において重なる領域を少なくとも含む領域に形成されており、メモリカードMCに内蔵されたアンテナ100とアンテナブロック20に設けた2次アンテナ21との間に金属製のベースシェル12が介在しないようになっている。
【0018】
一方、カバーシェル13は、略平板状の底壁部13aと、底壁部13aの左右方向両側縁を略直角(上向き)に折り曲げてそれぞれ形成された帯状の側壁部13b,13bとを有しており、各側壁部13bには、ベースシェル12の側壁部に設けた係止孔(図示せず)とそれぞれ係止する複数個(例えば各3個)の係止爪13cが切り起こしによって形成されている。
【0019】
而して、ベースシェル12とカバーシェル13とを各々の凹部同士を互いに対向させた状態で、カバーシェル13の側壁部13bを外側、ベースシェル12の側壁部を内側にして各々の側壁部同士を重ね合わせることで、前後方向の両端が開口した扁平な略角筒状に形成し、一方(後側)の開口を、絶縁性の合成樹脂により左右方向に細長い直方体状に形成された上述のコンタクト支持部(図示せず)で閉塞することによって、ケース11内部にカード収容部11bを形成する。なお、ベースシェル12とカバーシェル13とを結合するに当たっては、ベースシェル12およびカバーシェル13の側壁部同士を重ね合わせた状態で、外側に位置するカバーシェル13の側壁部13bに設けた係止爪13cを内側に折り曲げ、ベースシェル12の側壁部に設けた係止孔に係止させることで、ベースシェル12とカバーシェル13とが一体に結合されるようになっている。
【0020】
スライダ14は、カード収容部11bの内部に、カード挿入口11a側と奥側との間(つまり前後方向)に進退可能な状態で取着されている。このスライダ14は、メモリカードMCの先端面104に当接する奥壁部14aと、奥壁部14aの左右方向両端部から前方に向かって突出しメモリカードMCの左右両側面を支持する一対の側壁部14bとを備え、平面視の形状が略コ字形に形成されている。また左側の側壁部14bと奥壁部14aとの連結部位には、メモリカードMCの傾斜カット部102に当接する角壁部14cが形成されている。そして、カード挿入口11aを通してカード収容部11bにメモリカードMCが挿入されると、メモリカードMCの左右両側縁がスライダ14の左右の側壁部14bの間にガイドされるとともに、メモリカードMCの先端面104および傾斜カット部102が、それぞれ奥壁部14aおよび角壁部14cの内壁に衝合する。この状態でメモリカードMCが図示しない係止機構によってスライダ14に係止され、保持されるようになっており、この保持状態でメモリカードMCはスライダ14とともにカード収容部11b内を前後方向に進退するのである。なお、奥壁部14aにおけるベースシェル12側の上面には、スライダ14がカード収容部11b内を奥側へ移動した際に接触端子15との干渉を避けるための凹部14dが、個々の接触端子15に対応して形成されている。
【0021】
ここにおいて、カード収容部11b内におけるスライダ14の位置は、図示しないハートカム機構と、スライダ14をカード挿入口11a側に付勢するコイルスプリングのような付勢手段(図示せず)とを含む従来周知のプッシュオン・プッシュオフ機構によって制御される。ハートカム機構は、一例としてスライダ14にガイド溝を設けるとともに、このガイド溝内を案内される案内子をケース11に設けることによって構成される。ハートカム機構を構成するガイド溝は、その所定区間をスライダ14の前後動に応じて案内子を一方向に案内する経路とし、その経路によって囲まれる部位に平面視ハート形のハートカムを設けてあり、ロック位置においてハートカムの凹部に案内子を係止させることで、スライダ14をロック位置に保持し前方への移動を規制するようになっている。なおスライダ14を付勢する付勢手段は、例えばケース11とスライダ14との間に懸架され、スライダ14に対してカード収容部11bの入口側(つまりカード挿入口11a側)に付勢する付勢力を作用させている。
【0022】
接触端子15は、それぞれ弾性および導電性を有する金属材料により細長い棒状に形成されて、カード収容部11bの奥側に配置されるコンタクト支持部(図示せず)に固定されており、カード収容部11bの内部で、その奥側からカード挿入口11a側に向かって延出している。各接触端子15のカード挿入口11a側の端部15aは略く字形に折曲されており、カード収容部11b内に挿入されたメモリカードMCの対応する接続端子101に弾接する。一方、各接触端子15の反対側の端部15bは、コンタクト支持部の後面から突出し、その先端側はカバーシェル13の下面と平行な方向に延出しており、この先端側が電子機器に設けられた回路基板等に半田付けされる端子となっている。なお、接触端子15は、コンタクト支持部にインサート成形によって固定しても良いし、圧入などの方法で固定しても良い。
【0023】
次にアンテナブロック20について説明する。アンテナブロック20は、図3に示すように、ループ状の2次アンテナ21が形成されたアンテナ基板22と、アンテナ基板22を上面側に保持するとともにソケットブロック10の上側に載置される支持基台23と、アンテナ基板22と支持基台23との間に介装される磁性シート24とで構成される。
【0024】
アンテナ基板22は例えば非導電性の樹脂材料によって矩形板状に形成され、その中央部には矩形の窓孔22aが形成されている。そして、アンテナ基板22には、窓孔22aの周りに、アンテナ基板22の各辺に沿って螺旋を描くようにループ状の2次アンテナ21が形成されている。ここに、2次アンテナ21はアンテナ基板22の表面上に導体パターンとして形成されているが、例えばアンテナ基板22に2次アンテナ21を構成する導電板をインサート成形するなど、その他の方法で形成しても良い。
【0025】
この2次アンテナ21は、メモリカードMCのアンテナ100よりも外径が大きく、図1に示すように、メモリカードMCをカード収容部11b内の奥側に保持させた状態(装着状態)では、前側の1辺のみがアンテナ100と重なった状態でアンテナ100に対向するように配置されている。すなわち本実施形態のソケット1では、メモリカードMCを装着した状態で、メモリカードMCの内蔵アンテナ100の挿入方向前方側(後側)が、2次アンテナ21のコイル内に配置されつつ、2次アンテナ21の左右のコイルパターンの内側に沿って内蔵アンテナ100の左右のコイルパターンが配置されるように構成されている。なお2次アンテナ21のループコイルの両端部は、アンテナ基板22に設けたスルーホール22b,22bを介して、アンテナ基板22の裏面側に配置したチップコンデンサなどの電子部品(図示せず)に電気的に接続され、この電子部品によって2次アンテナ21の周波数特性が調整されるようになっている。ここにおいて、支持基台23に凹部23eを設け、この凹部23eとアンテナ基板22とで囲まれる空間内に上記電子部品を収容することが好ましい。
【0026】
支持基台23は例えば非導電性の樹脂材料により形成され、略矩形の平板状であってアンテナ基板22と左右方向および前後方向の寸法が略同一寸法に形成された平板部23aと、この平板部23aの左右方向両側縁から下向きに突出する側壁部23b,23bとを一体に備えており、挿入方向(前側)から見た形状が略コ字形となっている。また平板部23aの上面には磁性シート24を収容する収納凹部23cが形成されている。さらに収納凹部23cにおいて、アンテナ基板22の窓孔22aに対向する部位には、窓孔22a内に挿入される平面視矩形状の突台部23dが形成されている。なお、左右の側壁部23b,23bの間隔は、ソケットブロック10の左右両側壁の外面の間隔と略同じか或いは僅かに広く形成してあり、支持基台23をソケットブロック10の上側に嵌着できるようにしてある。
【0027】
一方、磁性シート24は、ゴムや樹脂などの非導電性で且つ透磁性を有するバインダーと、フェライトなどの磁性粉又はフレークとを含んだ複合磁性シートからなり、比透磁率が比較的高く(例えば230〜300)、且つ、電気伝導性が実質的に無いものを用いるのが好ましい。この磁性シート24は、挿入方向の手前側(前方)に開放された切欠溝24aを形成することで平面視の形状が略コ字形に形成されており、上記の切欠溝24aは、メモリカードMCの装着状態において、メモリカードMCが内蔵するアンテナ100およびその内側領域105と上下方向において重なる領域に形成されている(図1参照)。
【0028】
而してアンテナブロック20は、支持基台23の上面に設けた収納凹部23c内に磁性シート24を収納した後、アンテナ基板22を支持基台23の上面に被せて、アンテナ基板22と支持基台23との間に磁性シート24を挟持した状態で、アンテナ基板22と支持基台23とを例えば接着等の方法により結合する。そして、このようにして組み立てたアンテナブロック20を、両側壁部23bを下向きにしてソケットブロック10の上面に載置した状態で、アンテナブロック20とソケットブロック10とを例えば接着等の方法により結合する。
【0029】
以上説明したように本実施形態のソケット1では、図1に示すようにメモリカードMCを装着した状態で、アンテナブロック20におけるメモリカードMCの内蔵アンテナ100および内蔵アンテナ100の内側領域105に対応する領域以外の領域に磁性シート24が配置され、この磁性シート24が上下方向においてアンテナブロック20の2次アンテナ21と重なり合い、上下方向において内蔵アンテナ100と2次アンテナ21との間に磁性シート24が配置されることになるので、図示しないリーダライタ装置の磁力線を引き込むことで2次アンテナ20Bの誘起電力を増大させることができ、リーダライタ装置との間の非接触通信の性能を向上させて、通信距離を延ばすことができる。
【0030】
また磁性シート24はアンテナブロック20の内部に配置されるので、磁性シート24の大きさがアンテナブロック20を超えることはなく、ソケット1の大きさを大きくすることなく通信性能を向上させることができ、またソケット1を新たに設計し直す必要がなく、従来と同様のソケット1を使用できるのでコストアップを招くこともない。さらに磁性シート24は、メモリカードMCの内蔵アンテナ100および内蔵アンテナ100の内側領域105と上下方向において重なる領域には配置されていないので、内蔵アンテナ100への磁性シート24の悪影響を防止することができる。
【0031】
ここにおいて、本発明者らは以下の4通りの条件a〜dで内蔵アンテナ100に発生する誘起電圧を解析したところ、表1に示すような結果が得られた。
【0032】
【表1】

【0033】
条件aは磁性シートを用いないモデルについて解析を行った場合で、この場合は誘起電圧の解析値が4.13Vとなった。条件bは内蔵アンテナ100に重ならない領域に幅が4.0mm、厚みが0.27mmのフェライトシートからなる磁性シート24を配置したモデルについて解析を行った場合で、この時の誘起電圧の解析値は4.99Vとなった。条件cはアンテナブロック20内において内蔵アンテナ100および内側領域105に重ならない領域の略全体に横辺の幅が4.5mm、縦辺の幅が12.4mmで厚みが0.27mmのフェライトシートからなる磁性シート24を配置したモデルについて解析を行った場合で、この時の誘起電圧の解析値は5.06Vとなった。さらに条件dは、ソケットブロック10のベースシェル12に設けた切欠12b以外の領域に横辺の幅が3.7mm、縦辺の幅が3.1mmで厚みが0.27mmのフェライトシートからなる磁性シート24を配置したモデルについて解析を行った場合で、この時の誘起電圧の解析値は5.00Vとなった。誘起電圧が高いほど通信距離が長くなるので、上記の解析結果より、アンテナブロック20において内蔵アンテナ100および内蔵アンテナ100の内側領域105にそれぞれ対応する領域以外の領域の略全体に磁性シート24を配置した場合が誘起電圧が最も大きくなり、通信距離が最も長くなることが判明した。
【0034】
すなわちアンテナブロック20において、内蔵アンテナ100および内蔵アンテナ100の内側領域105にそれぞれ対向する領域以外の領域に磁性シート24を配置すれば、通信距離を延ばすことができるが、内蔵アンテナ100および内蔵アンテナ100の内側領域105にそれぞれ対向する領域以外の領域に最大限の大きさの磁性シート24を配置すれば、通信距離を延ばすという効果が最も得られるのである。
【0035】
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態のメモリカード用ソケットにメモリカードを装着した状態の平面図である。
【図2】同上にメモリカードを装着する前の状態の外観斜視図である。
【図3】同上を構成するアンテナブロックの分解斜視図である。
【図4】同上を構成するソケットブロックの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ソケット(メモリカード用ソケット)
10 ソケットブロック
11a カード挿入口
11b カード収容部
15 接触端子
20 アンテナブロック
21 2次アンテナ
24 磁性シート
100 内蔵アンテナ
105 内側領域
MC メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主平面に沿う平面内でループ状に形成された内蔵アンテナを有し当該内蔵アンテナを介してリーダライタ装置との間で非接触通信によりデータを授受するメモリカードが挿抜自在に装着されるメモリカード用ソケットであって、
メモリカードが挿入されるカード挿入口および当該カード挿入口を通してメモリカードの少なくとも一部を挿抜自在に受け入れるカード収容部を具備したソケットブロックと、カード収容部内に挿入されたメモリカードの内蔵アンテナの外側領域に少なくとも一部が配置されるループ状の2次アンテナを有し、メモリカードの主表面の法線方向において前記ソケットブロックに重ねて配置されたアンテナブロックと、上記法線方向においてカード収容部内に挿入されたメモリカードの内蔵アンテナと2次アンテナとの間に位置し、且つ、アンテナブロックにおける前記内蔵アンテナおよび内蔵アンテナの内側領域にそれぞれ対応する領域以外の領域に対応して配置された磁性シートとを備えて成ることを特徴とするメモリカード用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−83868(P2008−83868A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261494(P2006−261494)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】