説明

メモリ素子及び画像処理方法

【課題】 本発明は、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくいメモリ素子及び該メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくともフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルを含有する記録層を支持基板上に形成したメモリ素子であって、電子受容性化合物は、ルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック化合物を記録材料として用いたフォトンモードの光メモリ素子に関し、詳しくは、光照射により記録、再生及び消去を繰り返し行うことが可能な書き換え型の光メモリ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度大容量メモリ素子への要望が高まる中、光磁気メモリ素子や相変化型メモリ素子の開発に加え、フォトクロミック材料を記録材料として用いたものについても研究開発が行われている。フォトクロミック光メモリ素子は、一般に、ガラス、プラスチック等からなる基板上に、例えば、スピロピラン誘導体、フルギド誘導体、ジアリールエテン誘導体等のフォトクロミック材料を含む有機薄膜からなる記録層が形成され、必要に応じて、記録層の上又は記録層と支持基板との間に、例えば、アルミニウム、金等の金属反射膜からなる反射層が形成された構成である(図1参照)。
【0003】
図1(A)のメモリ素子の場合には、例えば、透明基板側から、図1(B)のメモリ素子の場合には基板表面から、記録信号を読み取ることができ、この関係は、図4及び図5に示されるメモリ素子の場合にも同様に当てはまる。フォトクロミック材料は、一般的に、紫外光等の短波長光を照射することで、消色状態から可視光領域に吸収を持つ発色状態に変わり、可視光照射により、再び消色状態に戻り、この変化は可逆的に生じる。ここで、消色状態とは、上述の2つの状態のうち、短波長側に吸収を持つ状態のことを指し、吸収帯の一部が可視光領域にあって、若干の着色を持つような場合を含むものである。
【0004】
フォトクロミック光メモリへの記録、再生、消去も、上述のような現象を利用して行われ、紫外光を全面照射して記録層を発色状態にしておいて、可視光を照射して情報を記録するか、又は可視光を全面照射して記録層を消色状態にしておいて、紫外光を照射して情報を記録する。前者では、記録部分が消色状態、それ以外の部分が発色状態となり、後者では、記録部分が発色状態、それ以外の部分が消色状態となるので、いずれの場合も、適当な波長の光を照射して、記録部分と、それ以外の部分との反射光強度によるコントラスト差として情報を読み取ることができる。消去については、前者では、紫外光を照射して記録部分を発色状態に戻すことで、後者では、可視光を照射して記録部分を消色状態に戻すことで行われる。
【0005】
しかしながら、記録の読み出し時に、フォトクロミック化合物が吸収を持つ波長領域の光を照射する必要があり、この光は、前述のコントラスト差を減少させ、ひいては記録を破壊してしまう可能性が高いという実用上の大きな問題点があり、この問題を防ぐためにいくつかの提案がなされてきている。
【0006】
特許文献1では、フォトクロミック化合物の吸光度変化以外の変化として、光吸収の無い長波長での旋光度変化を読み出しに用いる方法が提案され、非特許文献1では、屈折率異方性を生じさせ、これを用いて光吸収の無い長波長域の光で読み出しを行う方法が提案されているが、これらの方法では、光学的性質の変化が小さいために実用化が困難であるという問題がある。
【0007】
非特許文献2では、液晶材料にキラルなフォトクロミック化合物を混合し、光異性化により、コレステリック液晶相を変化させる方法が提案されているが、時間の経過と共に液晶が流動し、メモリが不明確になり、さらに、メモリの熱安定性及び繰返し耐久性に問題がある。
【0008】
特許文献2では、液晶の流動性に伴う経時的劣化を防止するために、液晶材料として、高分子液晶を用いる方式が提案されているが、記録の完全な消去が難しい等の問題点がある。
【0009】
さらに、以下に示すような提案もなされている。
【0010】
特許文献3には、フォトクロミック化合物を一成分とする側鎖型高分子液晶膜における、フォトクロミック化合物の光異性化に伴う屈折率の変化を用いて、フォトクロミック化合物が吸収を持たない波長領域の光で記録を再生することが記載され、特許文献4には、酸化/還元剤(四酢酸鉛、トリプロポ水素化ホウ素カリウム等)や、水素結合物質等の外部刺激により、コンフォメーションを可逆的に規制する部位と、フォトクロミック反応する部位を同一分子内に併せ持つフォトクロミック化合物を用い、光反応を制御することが記載され、特許文献5には、フォトクロミック化合物を含む記録層に隣接して色素分散高分子膜あるいは色素蒸着膜からなる光吸収層を設けることにより、記録光が照射されると、光吸収層が発熱し、記録層の高分子バインダーが軟化し、反応収率が向上することが記載されている。
【0011】
しかし、これらの提案についても、実際の性能上の問題点、構成上の問題点があり、結局は、実用化されていない。
【特許文献1】特開平1−246538号公報
【特許文献2】特開平1−251344号公報
【特許文献3】特開平5−216183号公報
【特許文献4】特開平6−49443号公報
【特許文献5】特開平6−102616号公報
【非特許文献1】日本化学会第58回春期年会1989年講演予稿集31H30
【非特許文献2】日本化学会第52回春期年会1986年講演予稿集
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくいメモリ素子並びに該メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、少なくともフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルを含有する記録層を支持基板上に形成したメモリ素子であって、前記電子受容性化合物は、ルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、少なくともフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルを含有する記録層を支持基板上に形成したメモリ素子であって、前記電子受容性化合物は、ルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上であるので、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくいメモリ素子を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のメモリ素子において、前記フォトクロミック化合物は、フルギド系化合物であることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、前記フォトクロミック化合物は、フルギド系化合物であるので、電子受容性化合物の酸性基部位との相互作用の程度を制御しやすい芳香族部位を有する化合物を得ることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のメモリ素子において、前記フルギド系化合物は、一般式
【0018】
【化1】

(ただし、R01及びR02は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わす)
で表される構造を有することを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、前記フルギド系化合物は、上記一般式で表される構造を有するので、電子受容性化合物の酸性基部位との相互作用の程度を制御しやすい芳香族部位を有する化合物を得ることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のメモリ素子において、前記フォトクロミック化合物は、ジアリールエテン系化合物であることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、前記フォトクロミック化合物は、ジアリールエテン系化合物であるので、電子受容性化合物の酸性基部位との相互作用の程度を制御しやすい芳香族部位を有する化合物を得ることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のメモリ素子において、前記ジアリールエテン系化合物は、一般式
【0023】
【化2】

(ただし、R03及びR04は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わす)
で表される構造を有することを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、前記ジアリールエテン系化合物は、上記一般式で表される構造を有するので、電子受容性化合物の酸性基部位との相互作用の程度を制御しやすい芳香族部位を有する化合物を得ることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のメモリ素子において、前記ルイス酸化合物は、ホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物及びフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、前記ルイス酸化合物は、ホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物及びフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも一種であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のメモリ素子において、前記ホスホン酸化合物は、一般式
−PO(OH)
(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
で表されるホスホン酸化合物であることを特徴とする。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、前記ホスホン酸化合物は、上記一般式で表されるホスホン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載のメモリ素子において、前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
−CH(OH)−COOH
(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、前記脂肪族カルボン酸化合物は、上記一般式で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項6又は7に記載のメモリ素子において、前記脂肪族カルボン酸化合物は、炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物であって、その少なくともα位又はβ位の炭素にハロゲン基を持つ脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、前記脂肪族カルボン酸化合物は、炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物であって、その少なくともα位又はβ位の炭素にハロゲン基を持つ脂肪族カルボン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、請求項6又は7に記載のメモリ素子において、前記脂肪族カルボン酸化合物は、炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物であって、その少なくともα位、β位又はγ位の炭素がオキソ基となっている脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする。
【0034】
請求項10に記載の発明によれば、前記脂肪族カルボン酸化合物は、炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物であって、その少なくともα位、β位又はγ位の炭素がオキソ基となっている脂肪族カルボン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0035】
請求項11に記載の発明は、請求項6又は7に記載のメモリ素子において、前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【0036】
【化3】

(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わし、Xは、オキシ基又はチオ基を表わし、Xがオキシ基の場合、nは1であり、Xがチオ基の場合、nは1又は2である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする。
【0037】
請求項11に記載の発明によれば、前記脂肪族カルボン酸化合物は、上記一般式で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0038】
請求項12に記載の発明は、請求項6又は7に記載のメモリ素子において、前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【0039】
【化4】

(ただし、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは、炭素数12以上の長鎖構造である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする。
【0040】
請求項12に記載の発明によれば、前記脂肪族カルボン酸化合物は、上記一般式で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0041】
請求項13に記載の発明は、請求項6又は7に記載のメモリ素子において、前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【0042】
【化5】

(ただし、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは、炭素数12以上の長鎖構造である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする。
【0043】
請求項13に記載の発明によれば、前記脂肪族カルボン酸化合物は、上記一般式で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0044】
請求項14に記載の発明は、請求項6又は7に記載のメモリ素子において、前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【0045】
【化6】

(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わし、nは0又は1であり、nが0の場合、mは2又は3であり、nが1の場合、mは1又は2である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする。
【0046】
請求項14に記載の発明によれば、前記脂肪族カルボン酸化合物は、上記一般式で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0047】
請求項15に記載の発明は、請求項6乃至14のいずれか一項に記載のメモリ素子において、前記フェノール化合物は、一般式
【0048】
【化7】

(ただし、Yは、チオ基、オキシ基、−CONH−又は−COO−を表わし、R10は、炭素数12以上の長鎖構造を表わし、lは1、2又は3である)
で表わされるフェノール化合物であることを特徴とする。
【0049】
請求項15に記載の発明によれば、前記フェノール化合物は、上記一般式で表わされるフェノール化合物であるので、記録層の材料設計の自由度を大きくすることができる。
【0050】
請求項16に記載の発明は、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のメモリ素子において、前記支持基板の上又は前記記録層と前記支持基板との間に反射層を設けたことを特徴とする。
【0051】
請求項16に記載の発明によれば、前記支持基板の上又は前記記録層と前記支持基板との間に反射層を設けたので、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくいメモリ素子を得ることができる。
【0052】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のメモリ素子において、前記記録層よりも表面の近くに設けられた前記反射層の界面及び前記表面の少なくとも一方に第一の保護層を設けたことを特徴とする。
【0053】
請求項17に記載の発明によれば、前記記録層よりも表面の近くに設けられた前記反射層の界面及び前記表面の少なくとも一方に第一の保護層を設けたので、光メモリ素子としての耐久性が向上した優れた効果を奏することができる。
【0054】
請求項18に記載の発明は、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のメモリ素子において、前記記録層は、少なくとも前記マイクロカプセルとバインダー材からなることを特徴とする。
【0055】
請求項18に記載の発明によれば、前記記録層は、少なくとも前記マイクロカプセルとバインダー材からなるので、バインダーによる電子受容性化合物の酸性基部位とフォトクロミック化合物の芳香環部位の相互作用に対する悪影響が少なく、消色感度の可逆制御の阻害を抑制し、しかも耐久性のある記録層を得ることができる。
【0056】
請求項19に記載の発明は、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のメモリ素子において、前記記録層は、前記マイクロカプセル中に赤外吸収剤を含むことを特徴とする。
【0057】
請求項19に記載の発明によれば、前記記録層は、前記マイクロカプセル中に赤外吸収剤を含むので、赤外吸収剤の発熱により効率的な熱処理が可能となり、光照射処理のみで消色感度の可逆制御ができる。
【0058】
請求項20に記載の発明は、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のメモリ素子において、前記記録層は、少なくとも前記マイクロカプセルとバインダー材と赤外吸収剤からなることを特徴とする。
【0059】
請求項20に記載の発明によれば、前記記録層は、少なくとも前記マイクロカプセルとバインダー材と赤外吸収剤からなるので、赤外吸収剤の発熱により効率的な熱処理が可能となり、光照射処理のみで消色感度の可逆制御ができる。
【0060】
請求項21に記載の発明は、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のメモリ素子において、前記支持基板上に赤外吸収剤を含む発熱層を有することを特徴とする。
【0061】
請求項21に記載の発明によれば、前記支持基板上に赤外吸収剤を含む発熱層を有するので、赤外吸収剤の発熱により効率的な熱処理が可能となり、光照射処理のみで消色感度の可逆制御ができる。
【0062】
請求項22に記載の発明は、請求項21に記載のメモリ素子において、前記記録層よりも表面の近くに設けられた前記発熱層の界面に第二の保護層を設けたことを特徴とする。
【0063】
請求項22に記載の発明によれば、前記記録層よりも表面の近くに設けられた前記発熱層の界面に第二の保護層を設けたので、光メモリ素子としての耐久性が向上した優れた効果を奏することができる。
【0064】
請求項23に記載の発明は、メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、前記記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記所定の領域に前記紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことを特徴とする。
【0065】
請求項23に記載の発明によれば、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、前記記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記所定の領域に前記紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すので、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくくすることができる。
【0066】
請求項24に記載の発明は、メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させた後、前記紫外光照射部分を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記記録層の一部又は全面を前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を前記所定の領域に照射して消色させた後、少なくとも前記加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とする。
【0067】
請求項24に記載の発明によれば、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させた後、前記紫外光照射部分を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記記録層の一部又は全面を前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を前記所定の領域に照射して消色させた後、少なくとも前記加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すので、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくくすることができる。
【0068】
請求項25に記載の発明は、メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、請求項19乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、赤外光を照射して前記記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、前記赤外光を照射して前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記所定の領域に前記紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことを特徴とする。
【0069】
請求項25に記載の発明によれば、請求項19乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、赤外光を照射して前記記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、前記赤外光を照射して前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記所定の領域に前記紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すので、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくくすることができる。
【0070】
請求項26に記載の発明は、メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、請求項19乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、赤外光を照射して記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させた後、前記赤外光を照射して前記紫外光照射部分を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記赤外光を照射して前記記録層の一部又は全面を前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を前記所定の領域に照射して消色させた後、前記赤外光を照射して少なくとも前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とする。
【0071】
請求項26に記載の発明によれば、請求項19乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、赤外光を照射して記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させた後、前記赤外光を照射して前記紫外光照射部分を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、前記赤外光を照射して前記記録層の一部又は全面を前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を前記所定の領域に照射して消色させた後、前記赤外光を照射して少なくとも前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すので、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくくすることができる。
【発明の効果】
【0072】
本発明によれば、記録の読み出し光の照射によっても記録情報が失われにくいメモリ素子並びに該メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
本発明の課題は、本発明の第1のカテゴリーの技術、第1のカテゴリーの技術がさらに改善された本発明の第2のカテゴリーの技術により解決される。
(第1のカテゴリーの技術)
本発明の特徴の一つは、(1)少なくともフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルを含有する記録層を支持基板上に形成したメモリ素子であって、電子受容性化合物が炭素数12以上の脂肪族基を持つルイス酸化合物とすることである。必要に応じて、さらに記録層の上又は記録層と支持基板との間に反射層を設けることができる。また、本発明のもう一つの特徴は、(2)記録層が、少なくともマイクロカプセルとバインダー材からなることである。ルイス酸化合物は、ホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物及びフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。
【0074】
本発明のさらにもう一つの特徴は、(3)メモリ素子(1)及び(2)に対し、少なくとも全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことにより、メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法を提供することである。
【0075】
これにより、消色感度の可逆制御が可能となり、紫外光を全面照射して記録層を発色状態にしておいて、可視光を照射して情報を記録する方式においては、一時的に消色感度が大きな状態にして記録し、その後、感度が小さな状態に切り替えて読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されにくいようにすることが可能となる。これは、次のように説明される。
【0076】
フォトクロミック化合物の消色感度は、消色反応量子収率(φCE)に直接的に依存するものであり、消色感度の変化を扱うことは、ほぼφCEの変化を扱うことに他ならない。以下では、φCEの変化が消色感度の変化であるとして、記述する。
【0077】
フォトクロミック化合物として、まず、フルギド化合物を例にとると、一般に、フルギド化合物の消色感度は、一般式(I)、
【0078】
【化8】

(ただし、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香環、複素芳香環等であり、R11、R12、R13及びR14のうち、少なくとも一つは、芳香環又は複素芳香環を含む構造とする)
一般式(II)
【0079】
【化9】

(ただし、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香環、複素芳香環等であり、R15、R16、R17及びR18のうち、少なくとも一つは、芳香環又は複素芳香環を含む構造とする)
及び後述する芳香環部位の化学構造に基づく電子的性状(電子供与性・受容性)により大きく異なる。具体的には、芳香環部位の電子供与性が大きい構造ほど、消色感度は小さく、電子供与性が小さい構造ほど、消色感度は大きい傾向がある。そして、ある特定の構造の化合物についても、その分子を取り囲む媒体の電子的性状によって消色感度は変化し得る。つまり、媒体との相互作用により、芳香環部位の電子的性状が見かけ上変化するということであり、媒体中の電子受容性部位とフルギド化合物の芳香環部位との電子授受の相互作用の程度が大きくなれば、芳香環部位の電子供与性が減少して消色感度は増大する。逆に、相互作用の程度が小さくなれば、芳香環部位の電子供与性が増大して消色感度は減少する。したがって、相互作用の程度を制御すれば、消色感度の制御が可能となる。これが(1)に記載した構造の電子受容性化合物とフォトクロミック化合物とを含む記録層に対し、(3)に記載した工程を施すことで可能となり、以下のように説明できる。
【0080】
メモリ素子の記録層中のフルギド化合物は、紫外光照射によって発色する。その後、記録層を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱することにより、電子受容性化合物がある程度規則的に集合した状態が形成され、電子受容性化合物の酸性基部位がフルギド化合物の芳香環部位と密に相互作用を持った状態で安定化する(以下では、この状態を「状態A」と呼ぶ)。この状態のモデル図を図2に示す。これは、消色感度が大きい状態であり、この状態において可視光を照射することにより、少ないエネルギーで短時間に記録工程が行われる。さらに、この後、記録層を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(II)に一時的に加熱することにより(電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱して徐冷してもよい)、電子受容性化合物の酸性基部位同士が密に集合し、フルギド化合物の芳香環部位との相互作用が小さい状態で安定化する(以下では、この状態を「状態B」と呼ぶ)。この状態のモデル図を図3に示す。これは、消色感度が小さい状態であり、したがって、読み出し光による消色が起こりにくい、記録保持性が高い状態となる。これまで消色感度について説明してきたが、発色感度については、状態A及び状態Bによる変化は、ほとんどない。
【0081】
状態Aを得るべく、電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱する工程においては、フルギド化合物の溶融温度が電子受容性化合物の溶融温度よりも高い場合は、フルギド系化合物の溶融温度以上の温度に加熱することが好ましいが、電子受容性化合物の溶融温度より高ければ問題はない。加熱後は、急冷することが好ましい。徐冷すると、状態Bに変化する確率が増えてくる。これは、状態Aを得るための加熱温度領域よりも低温の領域に状態Bを得るための加熱温度領域が存在するためである。したがって、状態Aにある記録層を特定の温度領域に加熱することにより、状態Bを得ることができる。状態Aを得るために、電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱する工程及び状態Bを得るために、電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(II)に一時的に加熱する工程における加熱温度の設定は、用いるフルギド化合物と電子受容性化合物及びバインダー材の種類や組み合わせに応じて、適切に設定されることになる。
【0082】
本発明のもう一つの特徴は、(4)上述のような構成のメモリ素子に対し、少なくとも、記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させた後、紫外光照射部分を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、少なくとも上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことにより、メモリ素子の初期化、記録及び消去を行うことである。
【0083】
これにより、消色感度の可逆制御が可能となり、可視光を全面照射して記録層を消色状態にしておいて、紫外光を照射して情報を記録する方式においては、記録後に、その記録部分を含む領域を感度が小さな状態に切り替えて、読み出し時の可視光照射によって記録が破壊されないようにし、消去時には、一時的に消色感度が大きな状態にして、可視光を照射して情報を消去することが可能となる。
【0084】
フォトクロミック化合物と電子受容性化合物の相互作用と消色感度の関係、相互作用を切り替えるための熱処理に関しては、(3)に関する上述の説明と同様である。
(第2のカテゴリーの技術)
本発明のさらに改良されたもう一つの特徴は、(5)少なくともフォトクロミック化合物、電子受容性化合物及び赤外吸収剤を含むマイクロカプセルを含有する記録層を支持基板上に設け、必要に応じて、さらに記録層の上又は記録層と支持基板との間に反射層を設けたメモリ素子であって、電子受容性化合物が炭素数12以上の脂肪族基をもつルイス酸化合物であるメモリ素子を提供することである。
【0085】
本発明のさらにもう一つの特徴は、(6)少なくともフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルと、バインダー材及び赤外吸収剤を含有する記録層を支持基板上に形成し、必要に応じて、さらに記録層の上又は記録層と支持基板との間に反射層を設けたメモリ素子であって、電子受容性化合物が炭素数12以上の脂肪族基を持つルイス酸化合物とすることである。
【0086】
本発明のさらにもう一つの特徴は、(7)少なくともフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルを含有する記録層と、赤外吸収剤を含む発熱層とを支持基板上に設け、必要に応じて、さらに記録層の上又は記録層と支持基板との間に反射層を設けたメモリ素子であって、電子受容性化合物が炭素数12以上の脂肪族基を持つルイス酸化合物であるメモリ素子が提供されることである。
【0087】
また、本発明のさらにもう一つの特徴は、(8)上述のようなメモリ素子(5)、(6)又は(7)のメモリ素子に対し、少なくとも全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、赤外光を照射して記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を、所定の領域に照射して消色させた後、赤外光を照射して、上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、所定の領域に紫外光を照射して、フォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことにより、メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法を提供することである。
【0088】
本発明のさらにもう一つの特徴は、(9)上述のようなメモリ素子(5)、(6)又は(7)のメモリ素子に対し、少なくとも、赤外光を照射して、記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して、記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、所定の領域に紫外光を照射してフォトクロミック化合物を発色させた後、赤外光を照射して、紫外光照射部分を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、赤外光を照射して、記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、赤外光を照射して、少なくとも上述の加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とするメモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法を提供することである。
【0089】
状態Aを得るために、電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱する工程及び状態Bを得るために、電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(II)に一時的に加熱する工程は、赤外光を照射することにより、(5)及び(6)の記録層に含まれる赤外吸収剤又は(7)の発熱層に含まれる赤外吸収剤が発熱することで可能となる。
【0090】
赤外吸収剤としては、赤外吸収色素等を用いることができ、特に、700nm以上の赤外域に吸収を持つナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、金属錯体系色素等の色素を好適に用いることができる。
【0091】
赤外光を照射する光源としては、赤外ランプと不要な波長域の光をカットするための光学フィルターを組み合わせた構成の光源を用いてもよいし、LED、LD等の特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよい。メモリ素子全面を照射するような場合は、照射サイズの大きな光源を用いたり、光源素子を並べてアレイ状に構成したり、適当な光学系を用いて所定の照射サイズに調整してもよい。また、メモリ素子の微小な特定箇所を照射する場合は、同様に適当な光学系を用いて所定の照射サイズに調整すればよい。
【0092】
記録層の加熱温度は、赤外光の照射強度や照射時間を調整することによって制御できる。
【0093】
本発明の他の特徴は、(10)記録層の構成要素として用いるフォトクロミック化合物として、フルギド系化合物を用いることである。フルギド系化合物は、よく知られているように、発色状態が熱的に安定な「熱不可逆型」のフォトクロミック材料であり、本発明におけるメモリ素子の記録層の構成要素として、以下に示すように好適である。
【0094】
本発明において用いられるフルギド系化合物としては、一般式(I)で示すフルギド化合物や、一般式(II)で示すフルギド化合物を始めとして、これらの化合物を構造中に含みフォトクロミック性を示す化合物が挙げられる。
【0095】
上述したように、フルギド系化合物においては、消色感度に関する支配因子である消色反応量子収率(φCE)は、芳香環部位の化学構造に基づく電子的性状(電子供与性・受容性)により大きく異なり、芳香環部位の電子供与性が大きい構造ほど、消色感度は小さく、電子供与性が小さい構造ほど、消色感度は大きい。そして、ある特定の構造の化合物についても、その分子を取り囲む媒体の電子的性状によって、その相互作用により芳香環部位の電子的性状が見かけ上変化し、媒体中の電子受容性部位とフルギド系化合物の芳香環部位との相互作用の程度が大きくなれば、芳香環部位の電子供与性が減少して消色感度は増大する。逆に、相互作用の程度が小さくなれば、芳香環部位の電子供与性が増大して消色感度は減少する。したがって、相互作用の程度を制御すれば、消色感度の制御が可能となる。
【0096】
本発明において、フルギド系化合物が一般式(III)
【0097】
【化10】

(ただし、R01及びR02は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わす)
で示す構造を有する場合に、特に有効に芳香環部位の電子的性状(電子供与性・受容性)を大きく変化させることが可能となる。また、一般式(III)で示す構造を2つ以上有する場合に、電子的性状を特に大きく変化させることが可能となる。これにより、有効な消色感度の制御が可能となる。
【0098】
このようなフルギド系化合物の具体例としては、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−オキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−3−p−ジメチルアミノフェニル−4−イソオキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−チアゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−オキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−3−p−ジメチルアミノフェニル−4−イソオキサゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−チアゾリル)−2−トリフルオロメチルエチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−チアゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノスチリル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−(4−p−ジメチルアミノフェニル)ブダジエン−1−イル)−4−オキサゾリル]エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−チアゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノスチリル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−(4−p−ジメチルアミノフェニル)ブダジエン−1−イル)−4−オキサゾリル]エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(2,5−ジメチル−1−p−ジメチルアミノフェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−1−フェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(1,2−ジメチル−5−ジメチルアミノ−3−インドリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(p−ジメチルアミノスチリル)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(2,5−ジメチル−1−p−ジメチルアミノフェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−1−フェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[1−(1,2−ジメチル−5−ジメチルアミノ−3−インドリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド、2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(p−ジメチルアミノスチリル)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド等が挙げられる。
【0099】
本発明のさらに他の特徴は、(11)記録層の構成要素として用いるフォトクロミック化合物として、ジアリールエテン系化合物を用いることである。ジアリールエテン系化合物は、よく知られているように、発色状態が熱的に安定な「熱不可逆型」のフォトクロミック材料であり、フルギド化合物と同様、本発明におけるメモリ素子の記録層の構成要素として好適である。
【0100】
本発明において用いられるジアリールエテン系化合物としては、一般式(IV)
【0101】
【化11】

(ただし、R20、R21、R22、R23、R24及びR25は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香環、複素芳香環等である。また、X及びYは、それぞれ独立して酸素原子、硫黄原子又は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香環、複素芳香環等が結合している窒素原子である)
で示す化合物を始めとして、これらの化合物を構造中に含みフォトクロミック性を示す化合物が挙げられる。
【0102】
ジアリールエテン系化合物においては、消色感度に関する支配因子である消色反応量子収率(φCE)は、一般式(IV)における2つの5員環と、それぞれR21、R22及びR24、R25を含む部位の化学構造に基づく電子的性状(電子供与性・受容性)により大きく異なり、それらの部位の電子供与性が大きい構造ほど、消色感度は小さく、電子供与性が小さい構造ほど、消色感度は大きい。そして、ある特定の構造のジアリールエテン化合物についても、その分子を取り囲む媒体の電子的性状によって、その相互作用により前述の部位の電子的性状が見かけ上変化し、媒体中の電子受容性部位との相互作用の程度が大きくなれば、前述の部位の電子供与性が減少して消色感度は増大する。逆に、相互作用の程度が小さくなれば、前述の部位の電子供与性が増大して消色感度は減少する。したがって、相互作用の程度を制御すれば、消色感度の制御が可能となる。
【0103】
本発明において、ジアリールエテン系化合物が、一般式(V)
【0104】
【化12】

(ただし、R03及びR04は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わす)
で示す構造を有する場合に特に有効に芳香環部位の電子的性状(電子供与性・受容性)を大きく変化させることが可能となり、有効な消色感度の制御が可能となる。
【0105】
このようなジアリールエテン系化合物の具体例としては、1,2−ビス(2−メチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−エチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−イソプロピル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−t−ブチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−エチル−4−メチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−イソプロピル−4−メチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−t−ブチル−4−メチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−メチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−オキサゾリル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−エチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−オキサゾリル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−イソプロピル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−オキサゾリル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−t−ブチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−オキサゾリル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン等が挙げられる。
【0106】
本発明において用いられる電子受容性化合物としては、基本的に分子内に、フルギド系化合物又はジアリールエテン系化合物の芳香環部位と相互作用して芳香環部位の電子的性状に変化を与えうる構造と、分子間の凝集力をコントロールする長い、例えば、脂肪族鎖状構造部分等を含む長鎖構造部位を合わせ持つルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上のホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物及びフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。長鎖構造部位には、直鎖状又は分枝状のアルキル基、アルケニル基が包含され、ハロゲン基、アルコキシ基、エステル基等の置換基を有していてもよい。
【0107】
ホスホン酸化合物としては、一般式(VI)
−PO(OH) (VI)
(ただし、Rは、脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
で表わされるホスホン酸化合物が用いられる。
【0108】
一般式(VI)で表わされるホスホン酸化合物の具体例としては、例えば、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、ヘキサコシルホスホン酸、オクタコシルホスホン酸等が挙げられる。
【0109】
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(VII)
−CH(OH)−COOH (VII)
(ただし、Rは、脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物が用いられる。
【0110】
一般式(VII)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物としては、例えば、α−ヒドロキシドデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等が挙げられる。
【0111】
脂肪族カルボン酸化合物としては、ハロゲン基で置換された脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物で、その少なくともα位又はβ位の炭素にハロゲン基を持つものが用いられる。このようなカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモヘプタデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、2−ブロモテトラコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモエイコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸等が挙げられる。
【0112】
脂肪族カルボン酸化合物としては、炭素鎖中にオキソ基を持つ脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物で、その少なくともα位、β位又はγ位の炭素がオキソ基となっているものが用いられる。このようなカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、2−オキソドデカン酸、2−オキソテトラデカン酸、2−オキソヘキサデカン酸、2−オキソオクタデカン酸、2−オキソエイコサン酸、2−オキソテトラコサン酸、3−オキソドデカン酸、3−オキソテトラデカン酸、3−オキソヘキサデカン酸、3−オキソオクタデカン酸、3−オキソエイコサン酸、3−オキソテトラコサン酸、4−オキソヘキサデカン酸、4−オキソオクタデカン酸、4−オキソドコサン酸等が挙げられる。
【0113】
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(VIII)
【0114】
【化13】

(ただし、Rは、脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造を表わし、Xは、オキシ基又はチオ基を表わし、Xがオキシ基の場合は、nは1、Xがチオ基の場合は、nは1又は2を表わす)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物が用いられる。
【0115】
一般式(VIII)で表わされる脂肪族カルボン酸化合物の具体例としては、例えば、2−(ドデシルオキシ)コハク酸、2−(テトラデシルオキシ)コハク酸、2−(ヘキサデシルオキシ)コハク酸、2−(オクタデシルオキシ)コハク酸、2−(エイコシルオキシ)コハク酸、2−(ドコシルオキシ)コハク酸、2−(テトラコシルオキシ)コハク酸、2−(ドデシルチオ)コハク酸、2−(テトラデシルチオ)コハク酸、2−(ヘキサデシルオキシ)コハク酸、2−(オクタデシルチオ)コハク酸、2−(エイコシルチオ)コハク酸、2−(ドコシルチオ)コハク酸、2−(テトラコシルチオ)コハク酸、2−(ドデシルジチオ)コハク酸、2−(テトラデシルジチオ)コハク酸、2−(ヘキサデシルジチオ)コハク酸、2−(オクタデシルジチオ)コハク酸、2−(エイコシルジチオ)コハク酸、2−(ドコシルジチオ)コハク酸、2−(テトラコシルジチオ)コハク酸等が挙げられる。
【0116】
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(IX)
【0117】
【化14】

(ただし、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わし、このうち、少なくとも1つは、脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物が用いられる。
【0118】
一般式(IX)で表わされる脂肪族カルボン酸化合物の具体例としては、例えば、ドデシルコハク酸、トリデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ペンタデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、エイコシルコハク酸、ドコシルコハク酸、2,3−ジヘキサデシルコハク酸、2,3−ジオクタデシルコハク酸、2−メチル−3−ドデシルコハク酸、2−メチル−3−テトラデシルコハク酸、2−メチル−3−ヘキサデシルコハク酸、2−メチル−3−ドデシルコハク酸、2−エチル−3−ドデシルコハク酸、2−プロピル−3−ドデシルコハク酸、2−オクチル−3−ヘキサデシルコハク酸、2−テトラデシル−3−オクタデシルコハク酸等が挙げられる。
【0119】
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(X)
【0120】
【化15】

(ただし、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わし、このうち、少なくとも1つは、脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物が用いられる。
【0121】
一般式(X)で表わされる脂肪族カルボン酸化合物の具体例としては、例えば、ドデシルマロン酸、テトラデシルマロン酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、テトラコシルマロン酸、ジドデシルマロン酸、ジテトラデシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジエイコシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、メチルエイコシルマロン酸、メチルドコシルマロン酸、メチルテトラコシルマロン酸、エチルオクタデシルマロン酸、エチルエイコシルマロン酸、エチルドコシルマロン酸、エチルテトラコシルマロン酸等が挙げられる。
【0122】
脂肪族カルボン酸化合物としては、一般式(XI)
【0123】
【化16】

(ただし、Rは、脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造を表わし、nは0又は1であり、nが0の場合、mは2又は3であり、nが1の場合、mは1又は2である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物が用いられる。
【0124】
一般式(XI)で表わされる脂肪族カルボン酸化合物の具体例としては、例えば、2−ドデシルグルタル酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、2−ドコシルグルタル酸、2−ドデシルアジピン酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸等が挙げられる。
【0125】
フェノール化合物としては、一般式(XII)
【0126】
【化17】

(ただし、Yは、チオ基、オキシ基、−CONH−又は−COO−を表わし、R10は、脂肪族基等を含む炭素数12以上の長鎖構造を表わし、lは1、2又は3である)
で表わされるフェノール化合物が用いられる。
【0127】
一般式(XII)で表わされるフェノール化合物の具体例としては、例えば、p−(ドデシルチオ)フェノール、p−(テトラデシルチオ)フェノール、p−(ヘキサデシルチオ)フェノール、p−(オクタデシルチオ)フェノール、p−(エイコシルチオ)フェノール、p−(ドコシルチオ)フェノール、p−(テトラコシルチオ)フェノール、p−(ドデシルオキシ)フェノール、p−(テトラデシルオキシ)フェノール、p−(ヘキサデシルオキシ)フェノール、p−(オクタデシルオキシ)フェノール、p−(エイコシルオキシ)フェノール、p−(ドコシルオキシ)フェノール、p−(テトラコシルオキシ)フェノール、p−ドデシルカルバモイルフェノール、p−テトラデシルカルバモイルフェノール、p−ヘキサデシルカルバモイルフェノール、p−オクタデシルカルバモイルフェノール、p−エイコシルカルバモイルフェノール、p−ドコシルカルバモイルフェノール、p−テトラコシルカルバモイルフェノール、没食子酸ヘキサデシルエステル、没食子酸オクタデシルエステル、没食子酸エイコシルエステル、没食子酸ドコシルエステル、没食子酸テトラコシルエステル等が挙げられる。
【0128】
上述のメモリ素子の記録層における、フルギド系化合物、ジアリールエテン系化合物等のフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルの形成方法としては、界面重合法、in−situ重合法、コアセルベーション法等の従来のよく知られている方法でよく、特に制限はなく、例えば、以下のような手順で形成できる。
【0129】
上述のフォトクロミック化合物と電子受容性化合物の熱溶融物又は共通溶媒に溶解させた溶液を、カプセルのシェル(皮膜)形成材料と、必要に応じて、界面活性剤、保護コロイド、pH調整剤、電解質等を含有させた水又は有機溶媒中に加え、高速攪拌により乳化又は分散させて所望のサイズの微粒子とし、上述のような一般的な方法で微粒子と水又は有機溶媒との界面においてシェルを形成すればよい。シェル形成材料としては、例えば、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ゼラチン、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル等の高分子化合物が挙げられる。また、シェル(皮膜)形成後に、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アルデヒド系化合物、イソシアネート系化合物等で処理して架橋してもよい。架橋によって、シェルをより強固にでき、耐熱性を向上することができる。さらに、その表面を、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アマイド、スチレン−無水マレイン酸共重合物、エチレン−無水マレイン酸共重合物等の親水性高分子化合物により被覆すれば、シェルは、より一層強固なものになる。
【0130】
フォトクロミック化合物と電子受容性化合物の混合比については、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり、一概には言えないが、フォトクロミック化合物:5〜30質量%、電子受容性化合物:20〜80質量%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
【0131】
上述のように得られたマイクロカプセルは、不要な水又は有機溶媒を除いた後、さらに、必要に応じて、加熱又は減圧する等してマイクロカプセル中の溶媒を除去し、適当な分散媒に分散させて、例えば、印刷法、スピンコート法、ブレード法等の塗布法に類する方法で支持基板上に置き、記録層を形成することができる。
【0132】
支持基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート等のような透明材料及びこれらに白又は他の色に着色した材料、紙等の不透明材料が挙げられる。
【0133】
マイクロカプセルのサイズとしては、粒子径が0.1〜50μm程度であることが好ましい。
【0134】
このようにマイクロカプセル化することで、フォトクロミック化合物と電子受容性化合物との相互作用を疎外し得る他の媒体構成要素の影響を抑制し、熱処理による両化合物の相互作用の確実な制御が可能となり、消色感度の確実な可逆切り替えが可能となる。
【0135】
加熱手段としては、ヒートローラー、サーマルヘッド、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーター等を始めとする従来のヒーター類を用いることができ、ヒーター類の加熱温度、メモリ素子との近接距離と時間、当接圧と時間等の条件により、記録層の加熱温度、加熱時間等を調整できる。
【0136】
また、上述のメモリ素子の中で記録層の形成において用いられるバインダー材としては、成膜可能であり、硬化後の透明性に優れる樹脂材料を用いることが好ましい。このような樹脂材料として、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。また、この他に、フェノキシ樹脂、芳香族ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることもできる。これらのようなバインダー材を適当な溶媒に溶解させた溶液にマイクロカプセルを分散させ、例えば、印刷法、スピンコート法、ブレード法等の塗布法で支持基板上に成膜することができる。これにより、マイクロカプセル相互及びマイクロカプセルと支持基板との付着性が向上し、膜としての物理強度が大きな記録層、そしてメモリ素子が得られる。
【0137】
赤外吸収色素としては、700nm以上の赤外域に吸収を持つナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、金属錯体系色素等を用いることができる。(5)のメモリ素子におけるように赤外吸収剤をマイクロカプセル中に含ませる場合、フォトクロミック化合物、電子受容性化合物及び赤外吸収色素の混合比については、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり、一概には言えないが、フォトクロミック化合物:5〜30質量%、電子受容性化合物:20〜80質量%、赤外吸収色素:5〜30質量%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
【0138】
赤外光を照射することにより、マイクロカプセル中に含まれる赤外吸収色素が発熱することで、(1)及び(2)において、状態Aを得るために、電子受容性化合物の溶融温度以上の温度(I)に一時的に加熱する工程及び状態Bを得るために、電子受容性化合物の溶融温度未満の温度(II)に一時的に加熱する工程が可能となる。赤外吸収色素がフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物と共にマイクロカプセル中に存在するため、赤外吸収色素の発熱により効率的な熱処理が可能となる。
【0139】
赤外光を照射する光源としては、赤外ランプと不要な波長域の光をカットするための光学フィルターを組み合わせた構成の光源を用いてもよいし、所定の領域のみを加熱する場合はLED、LD等の特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよい。
【0140】
記録層の形成において、バインダー材を用いて成膜する方法について上述したが、(6)のメモリ素子におけるように、赤外吸収剤をバインダー材中に含ませる場合には、上述の方法において、予めバインダー材と赤外吸収色素を共に適当な溶媒に溶解させておくことにより、バインダー材部分に赤外吸収色素が均一に分散した記録層が得られる。マイクロカプセル中ではなく、バインダー材部分に赤外吸収色素を含有させるものであり、マイクロカプセルの形成の自由度は大きい。感光層中のバインダー材は、重量でマイクロカプセルの0.1〜100倍とすることが好ましい。赤外光を照射することで加熱工程を行うことが可能となる。
【0141】
(1)、(2)、(5)、(6)のメモリ素子の構成としては、支持基板上の記録層の上に反射層を設けたものであって、この場合、所望により設けられる保護層は、記録層と反射層の間又は反射層上に設けられていてもよく(図4)、支持基板上に、順に反射層、記録層、保護層を設けたもの(図5)でもよい。図4に示すメモリ素子の場合には、照射光を支持基板側から照射するのが好適であり、図5に示すメモリ素子の場合には、照射光を逆に支持基板上に設けられた層の上から照射するのが好適である。
【0142】
(7)のメモリ素子のように、赤外吸収剤を含む発熱層を設ける場合、発熱層を構成する材料としては、赤外吸収剤の他に、必要に応じて、バインダー材を用いてもよく、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。また、この他に、フェノキシ樹脂、芳香族ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を用いることもできる。発熱層は、赤外吸収剤を、用いるバインダー材と共に適当な溶媒に溶解させて塗布法等で形成すればよい。
【0143】
発熱層の構成要素となる赤外吸収剤及びバインダー材の混合比についても、用いる各材料の組み合わせにより適切な混合比が異なる場合があり、一概には言えないが、赤外吸収剤:20〜80%、バインダー材:20〜80%の範囲で混合した場合に好ましい結果が得られることが多い。
【0144】
発熱層は、赤外光を照射することで、(1)、(2)、(5)、(6)のメモリ素子の場合と同様に加熱工程を行うことが可能となる。
【0145】
(7)のメモリ素子の構成としては、支持基板上に、順に記録層、発熱層、反射層を設け、さらに所望により、保護層を、例えば、記録層と発熱層の間、発熱層と反射層の間又は反射層上に設けてもよいし(図6参照)、支持基板上に、順に発熱層、記録層、反射層を設け、さらに所望により、保護層を、例えば、記録層と反射層の間又は反射層上に設けてもよいし(図7参照)、支持基板上に、順に反射層、記録層、発熱層を設け、さらに所望により、保護層を、例えば、記録層と発熱層の間又は発熱層上に設けてもよいし(図8参照)、支持基板上に、順に反射層、発熱層、記録層を設け、さらに所望により、保護層を、例えば、記録層上に設けてもよい(図9参照)。
【0146】
図6及び図7に示すメモリ素子の場合には、照射光を支持基板側から照射するのが好適であり、図8及び図9に示すメモリ素子の場合には、照射光を逆に支持基板上に設けられた層の上から照射するのが好適である。
【0147】
記録層及び発熱層を形成する方法としては、印刷法、スピンコート法、ブレード法等の塗布法に類する方法の他に、蒸着法を用いることができる。記録層及び発熱層の厚みについては、0.5μm〜10μm程度が好ましい。
【0148】
紫外光を照射する光源としては、水銀ランプ、キセノンランプ等に光学フィルターを組み合わせて所望の波長域の紫外光を取り出して用いてもよいし、LED、LD等の特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよく、また、メモリ素子全面を照射する場合あるいは所定の領域のみ照射する場合等で適宜選択すればよい。
【0149】
可視光を照射する光源としては、白色光光源に光学フィルターを組み合わせた構成のランプ類を用いてもよいし、LED、LD等の特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよく、また、メモリ素子全面を照射する場合あるいは所定の領域のみ照射する場合等で適宜選択すればよい。
【0150】
記録層を、電子受容性化合物の溶融温度以上の温度又は溶融温度未満の温度に一時的に加熱する方法としては、所定の領域のみを加熱する場合は、長波長領域の可視光又は赤外光を発するLED、LD等の発光素子を用いることができ、また、全面を加熱する場合には、前述の発光素子に加え、ヒートローラー、サーマルヘッド、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーター等を始めとするヒーター類を用いることができる。
【0151】
本発明のもう一つの特徴は、上記のように、メモリ素子の表面(図4〜9参照)、反射層の界面(図5〜7参照)又は発熱層の界面(図8参照)に保護層を設けることである。保護層の材料としては、透明性が高く、硬度が高い点で、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)等が好適に用いられる。反射層の界面に保護層を設ける場合は、保護層の透明性が高くなくてもよい。保護層を形成することにより、記録層は、水分、特定のガス等による、記録層を構成する化合物の、必要な機能の発現に関わる反応に対する悪影響を低減することが可能となり、また、機械的損傷からも有効に保護されて耐久性が向上する。反射層の厚みは、500〜3000Å程度が好ましい。
【実施例】
【0152】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
フォトクロミック化合物として、2−[1−(1、2−ジメチル−5−ジメチルアミノ−3−インドリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下、PC1と呼ぶ)を用い、電子受容性化合物として、ドコシルホスホン酸を用いた。1重量部のPC1と9重量部のドコシルホスホン酸をテトラヒドロフランに溶解させ、界面活性剤を含む水溶液中に加え、高速攪拌して乳化させた。これをメラミン−ホルムアルデヒドプレポリマーを含む水溶液中に投入し、さらに酢酸を加えてpHを4.5に調整した後、低速で攪拌しながら70℃で反応させることにより、分散液界面でプレポリマーが重合し、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の皮膜を形成し、粒子径が約3μmのマイクロカプセルが得られた。この分散液をPES(ポリエーテルサルフォン)基板上にキャストしてマイクロカプセルが配列した膜を形成し、減圧下で乾燥させて記録層を形成した後、PVAによる保護層(2μm)及びアルミニウムによる反射膜(1000Å)を形成し、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、記録層は、青色を呈した。この状態の記録層の一部に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC1が消色し、ほぼ無色に変化した。次に、記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、半導体レーザー照射部は、薄黄色を呈し、それ以外の部分は、シアン色を呈した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、薄黄色を呈していた部分がシアン色に変化したため、全体が一様にシアン色を呈した状態になった。
【0153】
上述の記録、再生及び消去の各工程を何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例2)
フォトクロミック化合物として、PC1を用い、電子受容性化合物として、ドコシルホスホン酸(溶融温度108℃)を用いた。1重量部のPC1と9重量部のドコシルホスホン酸をテトラヒドロフランに溶解させ、保護コロイド水溶液中に加え、高速攪拌して乳化させた。炭酸ナトリウムを加えてpHを9とした後、尿素−ホルムアルデヒドプレポリマーを加え、さらに酢酸を加えてpHを4に調整した後、60℃で反応させることにより、分散液界面でプレポリマーが重合して、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の皮膜を形成し、粒子径が約5μmのマイクロカプセルが得られた。この分散液からマイクロカプセルを取り出して減圧下で乾燥させ、ポリカーボネート溶液に分散させてPES(ポリエーテルサルフォン)基板上にキャストして記録層(2μm)を形成した後、PVAによる保護層(2μm)及びアルミニウムによる反射膜(1000Å)を形成し、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、記録層は青色を呈した。この状態の記録層の一部に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC1が消色し、ほぼ無色に変化した。次に、記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、半導体レーザー照射部は薄黄色を呈し、それ以外の部分は、シアン色を呈した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、薄黄色を呈していた部分がシアン色に変化したため、全体が一様にシアン色を呈した状態になった。
【0154】
上述の記録、再生及び消去の各工程を何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例3)
実施例2と同様に、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この光メモリ素子に対し、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理し、赤色のランプ光源を用いて全面を基板側から照射したところ、PC1が消色してほぼ無色になった。
<記録工程>
次に、この状態の記録層の一部に紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色して青色を呈した。さらに、照射部を含む領域の記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、照射部はシアン色に、それ以外の部分は、薄黄色に変化した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、シアン色だった部分は、青色に、薄黄色だった部分は、ほぼ無色に変化した。次に、両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、ほぼ無色だった部分は、変化がなく、青色を呈していた部分が、ほぼ無色に変化したため、両部分が同様の状態になった。さらに、記録層が一時的に80℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、ほぼ無色の部分は、薄黄色を呈した。
【0155】
上述の記録、再生及び消去の各工程を何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例4)
フォトクロミック化合物として、2−[1−(2、5−ジメチル−1−p−ジメチルアミノフェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸−N−p−ジメチルアミノフェニルイミド(以下、PC2と呼ぶ)を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC2が発色して青色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、記録層は、紫色を呈した。この状態の記録層の一部に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC2が消色し、ほぼ無色に変化した。次に、記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、半導体レーザー照射部は、無色のまま変わらず、それ以外の部分は、青色を呈した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、無色の部分が青色に変化したため、全体が一様に青色を呈した状態になった。
【0156】
上述の記録、再生及び消去の各工程を何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例5)
フォトクロミック化合物として、1,2−ビス(2−メチル−5−(4−ジメチルアミノ)フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(以下、PC3と呼ぶ)を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC3が発色して青色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層が一時的に110℃に達する条件で全面を反射層側からヒートローラーで加熱処理したところ、記録層は、紫色を呈した。この状態の記録層の一部に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC3が消色し、ほぼ無色に変化した。次に、記録層が一時的に80℃に達する条件で全面をヒートローラーで加熱処理したところ、半導体レーザー照射部は、無色のまま変わらず、それ以外の部分は、青色を呈した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分にレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、無色の部分が青色に変化したため、全体が一様に青色を呈した状態になった。
【0157】
上述の記録、再生及び消去の各工程を何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例6)
電子受容性化合物として、α−ヒドロキシテトラデカン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例2の場合よりも若干多くの時間を要した以外は、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例7)
電子受容性化合物として、2−フルオロオクタデカン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例2の場合の2倍弱の時間を要した以外は、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例8)
電子受容性化合物として、2−オキソオクタデカン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例2の場合の2倍弱程度の時間を要した以外は、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例9)
電子受容性化合物として、2−(オクタデシルチオ)コハク酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例10)
電子受容性化合物として、オクタデシルコハク酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例2の場合よりも若干多くの時間を要した以外は、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例11)
電子受容性化合物として、オクタデシルマロン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例12)
電子受容性化合物として、2−オクタデシルグルタル酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例13)
電子受容性化合物として、p−(オクタデシルチオ)フェノールを用いた以外は、実施例2と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例2と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例2の場合の2倍程度の時間を要した以外は、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例14)
フォトクロミック化合物として、PC1を用い、電子受容性化合物として、ドコシルホスホン酸を用い、赤外吸収色素として、Ni金属錯体系色素:三井化学PA−1006(以下、D1と呼ぶ)を用いた。1重量部のPC1と9重量部のドコシルホスホン酸と1重量部のD1をテトラヒドロフランに溶解させ、保護コロイド水溶液中に加え、高速攪拌して乳化させた。炭酸ナトリウムを加えてpHを9とした後、尿素−ホルムアルデヒドプレポリマーを加え、さらに酢酸を加えてpHを4に調整した後、60℃で反応させることにより、分散液界面でプレポリマーが重合して、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の皮膜を形成し、粒子径が約5μmのマイクロカプセルが得られた。この分散液からマイクロカプセルを取り出して減圧下で乾燥させ、ポリカーボネート溶液に分散させてPES(ポリエーテルサルフォン)基板上にキャストして記録層(2μm)を形成した後、PVAによる保護層(2μm)及びアルミニウムによる反射膜(1000Å)を形成し、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色してシアン色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mmの照度で1ミリ秒照射したところ、記録層が一時的に110℃に達し、記録層は、青色を呈した。この状態の記録層の一部に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC1が消色し、ほぼ無色に変化した。次に、記録層に、発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mmの照度で20ミリ秒照射したところ、記録層が一時的に80℃に達し、消色部は薄黄色を呈し、それ以外の部分は、シアン色を呈した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分に、発光波長650nmのレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、薄黄色を呈していた部分がシアン色に変化したため、全体が一様にシアン色を呈した状態になった。
【0158】
上述の記録、再生及び消去の各工程は、何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例15)
実施例2と同様に、マイクロカプセルを作製した。次に、ポリカーボネート溶液にD1を添加し、これに、さらにマイクロカプセルを分散させて、PES(ポリエーテルサルフォン)基板上にキャストして記録層(2μm)を形成した後、PVAによる保護層(2μm)及びアルミニウムによる反射膜(1000Å)を形成し、光メモリ素子を作製した。
【0159】
実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例14と同様の結果が得られた。
(実施例16)
実施例2と同様にして、PES(ポリエーテルサルフォン)基板上に記録層を形成した後、その上に、D1とポリカーボネートを同重量部含む発熱層(2μm)を形成し、さらにPVAによる保護層(2μm)及びアルミニウムによる反射膜(1000Å)を形成し、光メモリ素子を作製した。
【0160】
実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例14と同様の結果が得られた。
(実施例17)
実施例14と同様に、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この光メモリ素子に対し、基板側から全面に発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mmの照度で1ミリ秒照射し、続いて赤色のランプ光源を用いて照射したところ、PC1が消色して、ほぼ無色になった。
<記録工程>
次に、この状態の記録層の一部に紫外光を照射したところ、照射部のPC1が発色して青色を呈した。さらに、照射部を含む領域の記録層に発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mmの照度で20ミリ秒照射したところ、照射部は、シアン色に、それ以外の部分は、薄黄色に変化した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分に、発光波長650nmのレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
光メモリ素子の全面に、発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mmの照度で1ミリ秒照射したところ、シアン色だった部分は、青色に、薄黄色だった部分は、ほぼ無色に変化した。次に、両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、ほぼ無色だった部分は、変化がなく、青色を呈していた部分が、ほぼ無色に変化したため、両部分が同様の状態になった。さらに、発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mmの照度で20ミリ秒照射したところ、ほぼ無色の部分は、薄黄色を呈した。
【0161】
上述の記録、再生及び消去の各工程は、何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例18)
フォトクロミック化合物として、PC2を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。
<初期化工程>
この記録層全面に、基板側から紫外光を照射したところ、照射部のPC2が発色して青色を呈した。
<記録工程>
次に、記録層に、発光波長825nmの半導体レーザーを50W/mmの照度で1ミリ秒照射したところ、記録層は、紫色を呈した。この状態の記録層の一部に、発光波長650nmの半導体レーザーを照射したところ、照射部のPC2が消色し、ほぼ無色に変化した。次に、記録層に、発光波長825nmの半導体レーザーを0.5W/mmの照度で20ミリ秒照射したところ、発光波長650nmの半導体レーザー照射部は、無色のまま変わらず、それ以外の部分は、青色を呈した。
<再生工程>
両部分に、発光波長650nmの半導体レーザーをそれぞれ照射したところ、反射光の強度には、両者で著しい差異が認められた。引き続き、両部分に、発光波長650nmのレーザー光を長時間照射したが、両部分とも全く変化は見られなかった。
<消去工程>
次に、両部分に紫外光を照射したところ、無色の部分が青色に変化したため、全体が一様に青色を呈した状態になった。
【0162】
上述の記録、再生及び消去の各工程は、何度も繰り返し行うことができ、その場合の各工程における挙動は、上述の通りであった。
(実施例19)
電子受容性化合物として、α−ヒドロキシテトラデカン酸を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例14の場合よりも若干多くの時間を要した以外は、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例20)
電子受容性化合物として、2−フルオロオクタデカン酸を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例14の場合の2倍弱の時間を要した以外は、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例21)
電子受容性化合物として、2−オキソオクタデカン酸を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例14の場合の2倍弱程度の時間を要した以外は、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例22)
電子受容性化合物として、2−(オクタデシルチオ)コハク酸を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例23)
電子受容性化合物として、オクタデシルコハク酸を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例14の場合よりも若干多くの時間を要した以外は、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例24)
電子受容性化合物として、オクタデシルマロン酸を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例25)
電子受容性化合物として、2−オクタデシルグルタル酸を用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
(実施例26)
電子受容性化合物として、p−(オクタデシルチオ)フェノールを用いた以外は、実施例14と同様にして、光メモリ素子を作製した。実施例14と同様に、初期化工程、記録工程、再生工程及び消去工程を実施したところ、記録工程における発光波長650nmの半導体レーザー照射部のPC1の消色に、実施例14の場合の2倍程度の時間を要した以外は、実施例14とほぼ同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】一般的な光メモリ素子の構成を示した図である。
【図2】電子受容性化合物の酸性基部位とフォトクロミック化合物の芳香環部位との状態を示す図である。
【図3】電子受容性化合物の酸性基部位とフォトクロミック化合物の芳香環部位との状態を示す他の図である。
【図4】本発明の光メモリ素子の構成を示した図である。
【図5】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図6】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図7】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図8】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。
【図9】本発明の光メモリ素子の構成を示した他の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフォトクロミック化合物及び電子受容性化合物を含むマイクロカプセルを含有する記録層を支持基板上に形成したメモリ素子であって、
前記電子受容性化合物は、ルイス酸化合物であり、ルイス酸部位を除く長鎖構造部位の炭素数が12以上であることを特徴とするメモリ素子。
【請求項2】
前記フォトクロミック化合物は、フルギド系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のメモリ素子。
【請求項3】
前記フルギド系化合物は、一般式
【化1】

(ただし、R01及びR02は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わす)
で表される構造を有することを特徴とする請求項2に記載のメモリ素子。
【請求項4】
前記フォトクロミック化合物は、ジアリールエテン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のメモリ素子。
【請求項5】
前記ジアリールエテン系化合物は、一般式
【化2】

(ただし、R03及びR04は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わす)
で表される構造を有することを特徴とする請求項4に記載のメモリ素子。
【請求項6】
前記ルイス酸化合物は、ホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物及びフェノール化合物からなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項7】
前記ホスホン酸化合物は、一般式
−PO(OH)
(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
で表されるホスホン酸化合物であることを特徴とする請求項6に記載のメモリ素子。
【請求項8】
前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
−CH(OH)−COOH
(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わす)
で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載のメモリ素子。
【請求項9】
前記脂肪族カルボン酸化合物は、炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物であって、
その少なくともα位又はβ位の炭素にハロゲン基を持つ脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載のメモリ素子。
【請求項10】
前記脂肪族カルボン酸化合物は、炭素数12以上の長鎖構造を持つカルボン酸化合物であって、
その少なくともα位、β位又はγ位の炭素がオキソ基となっている脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載のメモリ素子。
【請求項11】
前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【化3】

(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わし、Xは、オキシ基又はチオ基を表わし、Xがオキシ基の場合、nは1であり、Xがチオ基の場合、nは1又は2である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載のメモリ素子。
【請求項12】
前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【化4】

(ただし、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは、炭素数12以上の長鎖構造である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載のメモリ素子。
【請求項13】
前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【化5】

(ただし、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも1つは、炭素数12以上の長鎖構造である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載のメモリ素子。
【請求項14】
前記脂肪族カルボン酸化合物は、一般式
【化6】

(ただし、Rは、炭素数12以上の長鎖構造を表わし、nは0又は1であり、nが0の場合、mは2又は3であり、nが1の場合、mは1又は2である)
で表わされる脂肪族カルボン酸化合物であることを特徴とする請求項6又は7に記載のメモリ素子。
【請求項15】
前記フェノール化合物は、一般式
【化7】

(ただし、Yは、チオ基、オキシ基、−CONH−又は−COO−を表わし、R10は、炭素数12以上の長鎖構造を表わし、lは1、2又は3である)
で表わされるフェノール化合物であることを特徴とする請求項6乃至14のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項16】
前記支持基板の上又は前記記録層と前記支持基板との間に反射層を設けたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項17】
前記記録層よりも表面の近くに設けられた前記反射層の界面及び前記表面の少なくとも一方に第一の保護層を設けたことを特徴とする請求項16に記載のメモリ素子。
【請求項18】
前記記録層は、少なくとも前記マイクロカプセルとバインダー材からなることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項19】
前記記録層は、前記マイクロカプセル中に赤外吸収剤を含むことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項20】
前記記録層は、少なくとも前記マイクロカプセルとバインダー材と赤外吸収剤からなることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項21】
前記支持基板上に赤外吸収剤を含む発熱層を有することを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載のメモリ素子。
【請求項22】
前記記録層よりも表面の近くに設けられた前記発熱層の界面に第二の保護層を設けたことを特徴とする請求項21に記載のメモリ素子。
【請求項23】
メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、
請求項1乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、
前記記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、
前記所定の領域に前記紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことを特徴とする画像処理方法。
【請求項24】
メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、
請求項1乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、
所定の領域に紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させた後、前記紫外光照射部分を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、
前記記録層の一部又は全面を前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を前記所定の領域に照射して消色させた後、少なくとも前記加熱部を含む領域を電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とする画像処理方法。
【請求項25】
メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、
請求項19乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、全面に紫外光を照射して記録層に含有されるフォトクロミック化合物を発色させる初期化工程、
赤外光を照射して前記記録層の一部又は全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を所定の領域に照射して消色させた後、前記赤外光を照射して前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、
前記所定の領域に前記紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させる消去工程を施すことを特徴とする画像処理方法。
【請求項26】
メモリ素子の初期化、記録及び消去を行う画像処理方法において、
請求項19乃至22のいずれか一項に記載のメモリ素子に対し、少なくとも、赤外光を照射して記録層全面を電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を全面に照射して前記記録層に含有されるフォトクロミック化合物を消色させる初期化工程、
所定の領域に紫外光を照射して前記フォトクロミック化合物を発色させた後、前記赤外光を照射して前記紫外光照射部分を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する記録工程、
前記赤外光を照射して前記記録層の一部又は全面を前記電子受容性化合物の溶融温度以上の温度に一時的に加熱し、前記発色したフォトクロミック化合物の吸収帯に対応した波長域を含む可視光を前記所定の領域に照射して消色させた後、前記赤外光を照射して少なくとも前記加熱部を含む領域を前記電子受容性化合物の溶融温度未満の温度に一時的に加熱する消去工程を施すことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−91824(P2006−91824A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47791(P2005−47791)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】