説明

メラノコルチン受容体に特異的なペプチド

、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびzが明細書において定義される式で表されるメラノコルチン受容体特異的環状ペプチド、前述の式で表されるペプチドを含む組成物および製剤、ならびにメラノコルチン受容体により仲介される疾病、徴候、状態、および症候群を阻止、寛解、または治療するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月8日に提出された「メラノコルチン受容体に特異的なペプチド(Melanocortin Receptor−Specific Peptides)」と題される米国仮出願第61/184,929号に基づく優先権および利益を請求するものであり、その明細書および請求項は参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
本発明は、メラノコルチン受容体により仲介される疾病、徴候、状態、および症候群の治療に使用され得るメラノコルチン受容体特異的環状ペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
以下の考察は、単数または複数の著者による幾つかの出版物および出版年を参照しており、特定の出版物の出版年は最近であることから、本発明に対する先行技術とはみなされない。本明細書におけるこのような出版物についての考察は、さらに完全な背景のために与えられるものであり、このような出版物が、特許性の判定を目的とした先行技術であることの承認として解釈されてはならない。
【0004】
正常ヒトメラニン細胞およびメラノーマ細胞に発現するメラノコルチン−1受容体(MC1−R)、副腎の細胞に発現するACTH(adrenocorticotropin:副腎皮質刺激ホルモン)に対するメラノコルチン−2受容体(MC2−R)、主に視床下部、中脳、および脳幹の細胞に発現するメラノコルチン−3およびメラノコルチン−4受容体(MC3−RおよびMC4−R)、ならびに末梢組織に広く発現するメラノコルチン−5受容体(MC5−R)を含む、メラノコルチン受容体の型および亜型のファミリーが同定されてきた。MC1−Rは毛髪および皮膚の色素形成ならびに炎症に関連することが示唆されており、MC2−Rはステロイド産生を仲介すると考えられており、MC3−Rはエネルギー恒常性、食物摂取量、および炎症に関連することが示唆されており、MC4−Rは摂食行動、エネルギー恒常性、および性機能(例えば勃起機能)を制御すると考えられており、MC5−Rは外分泌腺系に関連することが示唆されている。
【0005】
受容体をコードする核酸配列および受容体を構成するアミノ酸配列の両方を含む、メラノコルチン受容体の構造決定についての重要な研究が行われてきた。MC4−Rは、主に脳に発現すると考えられている、Gタンパク質共役型の7回膜貫通型受容体である。
【0006】
MC4−Rの不活性化により肥満がもたらされることが示された(Hadley,1999,Ann N Y Acad Sci,885:1−21)。アグーチ関連タンパク質(AgRP)は、MCアンタゴニストまたはMC4−Rのインバースアゴニストであることが示唆される内在性化合物である。α−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)は、主な内在性MC4−Rアゴニストであると考えられている。
【0007】
末梢に位置するMC4−R受容体もまたエネルギー恒常性の制御に関連することが示唆されており、迷走神経におけるMC4−Rシグナル伝達の役割ならびに肥満および糖尿病治療のためのその妥当性について、Gautron et al,The Journal of Comparative Neurology,518:6−24(2010)により考察されている。
【0008】
MC4−Rに特異的なペプチド、および第2に、MC3−Rに特異的なペプチドは、食物摂取量および体重増加を減衰させる薬剤としての使用を含む、哺乳類のエネルギー恒常性の調節に有用であると考えられている。MC4−Rアゴニストペプチドは、男性の勃起不全を含む性的機能不全治療のため、ならびに食物摂取量および体重増加を減少させるため、例えば肥満治療のために有用であると考えられている。このようなペプチドはまた、自主的なエタノール消費の減少のため、および薬物依存症の治療などにも用いられてよい。MC4−RアゴニストペプチドおよびMC3−Rアゴニストペプチドはさらに、循環性ショック、虚血、出血性ショック、炎症性疾患、ならびに関連する疾病、徴候、状態、および症候群の治療に用いられてよい。対照的に、MC4−Rアンタゴニストペプチドは、悪液質、サルコペニア、消耗性症候群または消耗性疾患、および食欲不振症の治療における使用のような、体重増加の補助に有用であると考えられている。このようなペプチドはまた、うつ病および関連する疾患の治療にも用いられてよい(Wikberg et al,Nature Reviews,Drug Discovery,7,307,(2008);Adan et al,British J.Pharm.,149,815−827(2006);Nogueiras et al,J.Clin.,Invest,117(11):3475−3488(2007);Maaser et al,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1072,123−134(2006);Giuliani et al,British J.Pharm.,150,595−603(2007);Balbani,Expert Opin.Ther.Patents,17(3),287−297(2007);and Navarro et al,Alcohol.Clin.Exp.Res.,29(6),949−957(2005))。
【0009】
メラノコルチン受容体特異的環状ペプチドには、Ac−Nle−シクロ(−Asp−His−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−NH(米国特許第5,674,839号および5,576,290号を参照)およびAc−Nle−シクロ(−Asp−His−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−OH(米国特許第6,579,968号および6,794,489号を参照)のような、環状α−メラニン細胞刺激ホルモン(「α−MSH」)類似体ペプチドが含まれる。これらおよびその他のメラノコルチン受容体特異的ペプチドには、一般に未変性α−MSHの中心のテトラペプチド配列であるHis−Phe−Arg−Trp(配列番号:1)、またはPheのD−Pheによる置換のような、その模倣物または変型が含まれる。1以上のメラノコルチン受容体に特異的であることが確立されているその他のペプチドまたはペプチド様化合物については、米国特許第5,731,408号、6,054,556号、6,350,430号、6,476,187号、6,600,015号、6,613,874号、6,693,165号、6,699,873号、6,887,846号、6,951,916号、7,008,925号、7,176,279号、および7,517,854号;米国特許出願公開公報第2001/0056179号、2002/0143141号、2003/0064921号、2003/0105024号、2003/0212002号、2004/0023859号、2005/0130901号、2005/0187164号、2005/0239711号、2006/0105951号、2006/0111281号、2006/0293223号、2007/0027091号、2007/0105759号、2007/0123453号、2007/0244054号、2008/0004213号、2008/0039387号、および2008/0305152号;ならびに国際公開第98/27113号、99/21571号、00/05263号、99/54358号、00/35952号、00/58361号、01/30808号、01/52880号、01/74844号、01/85930号、01/90140号、02/18437号、02/26774号、03/006604号、2004/046166号、2004/099246号、2005/000338号、2005/000339号、2005/000877号、2005/030797号、2005/060985号、2006/012667号、2006/048449号、2006/048450号、2006/048451号、2006/048452号、2006/097526号、2007/008684号、2007/008704号、2007/009894号、2008/025094号、および2009/061411号に開示される。上に開示したメラノコルチン受容体特異的環状ペプチドは、典型的にはAsp(アスパラギン酸)およびLys(リジン)の側鎖によって形成されるラクタム橋を通して、または代わりに2つのCys(システイン)もしくはその他の反応性チオール含有残基の側鎖によって形成されるジスルフィド橋を通して環化される。
【0010】
メラノコルチン受容体特異的ペプチドへの強い科学的および薬剤的な興味にもかかわらず、多数の科学文献における記事ならびに多数の特許出願および付与された特許は、メラノコルチン受容体特異的ペプチドがいずれの治療指標に対する薬物としても承認されたと証明していない。実際に、進展した第2相臨床試験を終えた、いずれの治療指標に対するいずれのメラノコルチン受容体特異的ペプチドも報告されていない。医薬品への応用に用いるためのメラノコルチン受容体特異的ペプチドはなお深刻に、かつ実質的に必要とされている。このことが、本発明がなされた背景である。
【発明の概要】
【0011】
一態様によれば、本発明は構造式(I):

で表される環状ペプチドであって、ここで:
がH−またはCないしCアシル基であり、ここでCないしCは直鎖もしくは分岐アルキルまたはシクロアルキル、または直鎖アルキルおよびシクロアルキルの両方であり;
が−N(R15a)(R15b)、−NH−(CH−N(R15a)(R15b)、NH−C(=NH)−N(R15a)(R15b)、C(=O)−N(R15a)(R15b)、またはNH−C(=O)−N(R15a)(R15b)であり;
が−H、−CH、または−CH−であり、−CH−である場合にはRと共に

で表される一般構造の環を形成し;
が−H、Rが−CH−の場合には−(CH−であり、−(CH−である場合、R11がHではないという条件でRと共に環を形成する際にR11が結合する炭素原子は−CH−であり、またはRが−(CH−R12−(CH−R13であり、ここで各(CHのいずれのHも、−(CH−CHにより任意に置換されるが、RがCH−(C=O)−の場合には、Rは非置換フェニル、RはH、Rは−(CH−NH−C(=NH)−NH、Rはインドール、RはC(=O)−OHまたはC(=O)−NHであり、次に:
が−CH−であり、Rと共に非置換ピロリジン環を形成し、かつR10が−CH−C(=O)−NH−(CH、−(CH−C(=O)−NH−(CH、または−(CH−NH−C(=O)−(CHである場合のみに−(CH−が除外され、
10が−CH−C(=O)−NH−(CH、−(CH−C(=O)−NH−(CH、または−(CH−NH−C(=O)−(CHである場合のみに

が除外され、かつ
10が−CH−C(=O)−NH−(CH、−(CH−C(=O)−NH−(CH、−CH−C(=O)−NH−(CH、または−(CH−C(=O)−NH−(CHである場合のみに

が除外され;
が非置換フェニルまたはナフチルであり;
が−H、−CH、または−CH−であり、−CH−である場合にはRと共に

で表される一般構造の環を形成し;
が−CH−の場合にRが−(CH−であり、−(CH−である場合にはRと共に環を形成し、またはRは−(CH−R14であり;
が、1以上の環置換基によって任意に置換される

であり、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールであり;
がH、−C(=O)−OH、−C(=O)−N(R15a)(R15b)、−C(=O)−(CH−シクロアルキル、または−C(=O)−R16であり;
10
−(CH−C(=O)−NH−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−(CH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−NH−C(=O)−(CH−、または
−(CH−NH−C(=O)−NH−(CH−であり;
11が−Hまたは−R12−(CH−R13であり;
12は任意に存在するが、存在する場合には
−O−、
−S−、
−NH−、
−S(=O)−、
−S(=O)−、
−S(=O)−NH−、
−NH−S(=O)−、
−C(=O)−、
−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−、
−NH−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−NH−、
−NH−C(=O)−、または
−C(=O)−NH−であり;
13がH、−CH、−N(R15a)(R15b)、−NH−(CH−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=NH)−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=O)−N(R15a)(R15b)、−O(R15a)、−(R15a)(R15b)、−S(=O)(R15a)、−C(=O)−O(R15a)、

であり、ここでR13のいずれの環も1以上の環置換基によって任意に置換され、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、−O−アリール、C(=O)−OH、またはC(=O)−N(R15a)(R15b)であり;
14がH、−N(R15a)(R15b)、−NH−(CH−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=NH)−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=O)−N(R15a)(R15b)、−O(R15a)、直鎖または分岐CないしC17アルキル鎖、−C(=O)−N(R15a)(R15b)、−S(=O)(R15a)、

であり、ここでいずれの環も1以上の環置換基によって任意に置換され、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アラルキル、O−アラルキル、または−O−アリールであり;
15aおよびR15bがそれぞれ独立してHまたはCないしCの直鎖もしくは分岐アルキル鎖であり;
16

であり、
17がH、−C(=O)−OH、または−C(=O)−N(R15a)(R15b)であり;
wがそれぞれの場合に独立して0ないし5であり;
xが1ないし5であり;
yが1ないし5であり;かつ
zがそれぞれの場合に独立して1ないし5である環状ペプチド、その鏡像異性体、立体異性体、ジアステレオ異性体、またはこれらのいずれの薬剤的に許容される塩にも関する。
【0012】
別の態様によれば、式(I)で表され、R10が−(CH−C(=O)−NH−(CH−、ここでxは4およびyは3、xは3およびyは2、またはxは2およびyは1である環状ペプチドが提供される。代わりとなる態様によれば、式(I)で表され、R10が−(CH−NH−C(=O)−(CH−、ここでxは1およびyは2、xは2およびyは3、またはxは3およびyは4である環状ペプチドが提供される。
【0013】
別の態様によれば、式(I)で表され、zが3およびRがNH−C(=NH)−NHである環状ペプチドが提供される。
【0014】
別の態様によれば、式(I)で表され、R16

である環状ペプチドが提供される。
【0015】
別の態様によれば、式(I)で表され、R16

である環状ペプチドが提供される。
【0016】
このような環状ペプチドにおいて、R17は任意に−C(=O)−OHまたは−C(=O)−NHであってよい。
【0017】
別の態様によれば、式(I)で表され、RがRと共に、一般構造

で表される環を形成し、ここでzは3である環状ペプチドが提供される。
【0018】
別の態様によれば、式(II)
Z−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Y(II)
で表される環状ヘプタペプチドであって、ここで:
ZがHまたはN末端基であり;
Xaaが、少なくとも1の1級アミン、グアニジン、または尿素基を含む側鎖を有するアミノ酸であり;
XaaおよびXaaが、その側鎖がラクタムを含む環状橋を形成するアミノ酸であり;
Xaaが、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アルキル−アリール、アルキル−O−アリール、アルキル−O−アルキル−アリール、もしくは−O−アリールにより任意に置換されるProであるか、またはXaaが、少なくとも1の1級アミン、2級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、もしくはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸であり;
Xaaが、非置換フェニルまたはナフチルを含む側鎖を有するアミノ酸であり;
XaaがProであるか、またはXaaが、少なくとも1の1級アミン、2級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはエーテルを含む側鎖を有するアミノ酸であり;
Xaaが、1以上の置換基により任意に置換される、少なくとも1のアリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であり、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールであり;かつ
YがC末端基であるが;
ZがAcであり、XaaがArgであり、XaaおよびXaaが共にGlu...Orn、Orn...Glu、またはAsp...Lysであり、XaaがProまたはSer(Bzl)であり、XaaがD−Pheであり、XaaがArgであり、XaaがTrpであり、Yが−OHまたは−NHである環状ペプチドが除外される環状ヘプタペプチド、またはその薬剤的に許容される塩が提供される。
【0019】
別の態様によれば、式(II)で表され、XaaがDap、Dab、Orn、Lys、Cit、またはArgである環状ペプチドが提供される。
【0020】
別の態様によれば、式(II)で表され、XaaがD−Pheである環状ペプチドが提供される。
【0021】
別の態様によれば、式(II)で表され、XaaおよびXaaの一つがAsp、hGlu、またはGluであり、その他のXaaおよびXaaがLys、Orn、Dab、またはDapである環状ペプチドが提供される。
【0022】
別の態様によれば、式(II)で表され、N末端基がCないしCアシル基、直鎖もしくは分岐CないしC17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖、またはN−アシル化された直鎖もしくは分岐CないしC17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖である環状ペプチドが提供される。
【0023】
別の態様によれば、式(II)で表され、Yがヒドロキシル、アミド、1もしくは2の直鎖または分岐CないしC17アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖により置換されたアミドである環状ペプチドが提供される。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、メラノコルチン受容体により仲介される疾病、徴候、状態、および症候群の治療において使用するための、メラノコルチン受容体特異的ペプチドに基づく医薬組成物を提供する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、性的機能不全およびその他のMC4−R関連疾患の治療において使用するための、ペプチドが選択的なMC4−Rリガンドである、該ペプチドに基づくメラノコルチン受容体特異的医薬品を提供する。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、メラノコルチン受容体MC4−Rに特異的であり、かつアゴニストであるペプチドを提供する。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、肥満の治療、摂食行動の調節、およびその他のエネルギー恒常性疾患において使用するための、ペプチドに基づくメラノコルチン受容体特異的医薬品を提供する。
【0028】
別の態様によれば、本発明は、有意な用量範囲にわたって有効である、特異的なMC4−R環状ペプチドを提供する。
【0029】
その他の態様および新規な特色、ならびに本発明の適用性のさらなる範囲については、以下の詳細な説明で部分的に説明されることになり、かつ以下の試験によって部分的に当業者に明らかになり得るか、または本発明の実施によって学ばれ得るであろう。本発明の態様は、添付の請求項で特に指摘される手段および組み合わせを用いて理解され、かつ達成されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.0 定義
本発明について記載を進める前に、特定の語をここに説明するものとして定義する。
【0031】
本発明に従うペプチドの所与の配列におけるアミノ酸残基は、Manual of Patent Examining Procedure、第8版の第2400章に示される、それらの従来の意味をもつ。従って、「Ala」はアラニン、「Asn」はアスパラギン、「Asp」はアスパラギン酸、「Arg」はアルギニン、「Cys」はシステイン、「Gly」はグリシン、「Gln」はグルタミン、「Glu」はグルタミン酸、「His」はヒスチジン、「Ile」はイソロイシン、「Leu」はロイシン、「Lys」はリジン、「Met」はメチオニン、「Phe」はフェニルアラニン、「Pro」はプロリン、「Ser」はセリン、「Thr」はスレオニン、「Trp」はトリプトファン、「Tyr」はチロシン、および「Val」はバリン、などである。「D」異性体は、三文字のコードまたはアミノ酸名の前の「D−」によって命名され、例えばD−PheはD−フェニルアラニンであることが理解されるべきである。前記に包含されないアミノ酸残基は、以下の定義を有する:
【0032】



【0033】
「α,α−二置換アミノ酸」とは、α位にさらなる置換基を有するいずれのα−アミノ酸も意味し、この置換基はα−アミノ酸の側鎖部分と同じかまたは異なってよい。α−アミノ酸の側鎖部分に加えて、適切な置換基にはCないしCの直鎖または分岐アルキルが含まれる。Aibはα,α−二置換アミノ酸の一例である。α,α−二置換アミノ酸には従来のL−およびD−異性体の基準が使用できるが、このような基準は便宜的なものであり、α位における置換基が異なる場合に、このようなアミノ酸は、指定されたアミノ酸側鎖部分を有する残基の、適切なL−またはD−異性体に由来するα,α−二置換アミノ酸であると互換的にみなされることが理解されなければならない。従って、(S)−2−アミノ−2−メチル−ヘキサン酸は、L−Nle由来のα,α−二置換アミノ酸、またはD−Ala由来のα,α−二置換アミノ酸のいずれかであるとみなすことができる。同様にAibは、Ala由来のα,α−二置換アミノ酸とみなすことができる。α,α−二置換アミノ酸が存在するどのような場合にも、その(R)および(S)立体配置の全てが含まれることが理解されなければならない。請求項または明細書において「アミノ酸」に言及するどのような場合にも、これが意味するものには「α,α−二置換アミノ酸」が含まれるが、限定されるものではない。
【0034】
「N−置換アミノ酸」は、アミノ酸の側鎖部分が骨格アミノ基に共有結合するいずれのアミノ酸も意味し、Hを除いてα−炭素位に置換基が存在しない場合も任意に含まれる。サルコシンはN−置換アミノ酸の例である。例として、サルコシンは、サルコシンおよびAlaのアミノ酸側鎖部分が同じメチルであることから、AlaのN−置換アミノ酸誘導体とみなすことができる。請求項または明細書において「アミノ酸」に言及するどのような場合にも、これが意味するものには「N−置換アミノ酸」が含まれるが、限定されるものではない。
【0035】
「アルカン」の語には、直鎖または分岐飽和炭化水素が含まれる。直鎖アルカン基の例には、メタン、エタン、プロパンなどが含まれる。分岐または置換アルカン基の例には、メチルブタンまたはジメチルブタン、メチルペンタン、ジメチルペンタン、またはトリメチルペンタンなどが含まれる。一般には、いずれのアルキル基もアルカンの置換基であり得る。
【0036】
「アルケン」の語には、1以上の炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素が含まれる。このようなアルケン基の例には、エチレン、プロペンなどが含まれる。
【0037】
「アルケニル」の語には、少なくとも1の二重結合を含む、2ないし6個の炭素原子の直鎖一価炭化水素ラジカル、または3ないし6個の炭素原子の分岐一価炭化水素ラジカルが含まれ;その例にはエテニル、2−プロペニルなどが含まれる。
【0038】
本明細書で特定される「アルキル」基には、直鎖または分岐いずれかの立体配置である、指定された長さのアルキルラジカルが含まれる。このようなアルキルラジカルの例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、三級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが含まれる。
【0039】
「アルキン」の語には、少なくとも1の三重結合を含む、2ないし6個の炭素原子の直鎖一価炭化水素ラジカル、または3ないし6個の炭素原子の分岐一価炭化水素ラジカルが含まれ;その例にはエチン、プロピン、ブチンなどが含まれる。
【0040】
「アリール」の語には、6ないし12個の環原子の、単環式または二環式芳香族炭化水素ラジカルが含まれ、これはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択される1以上の置換基により、独立して任意に置換される。アリール基の例には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル、および2−ナフチル、それらの誘導体などが含まれる。
【0041】
「アラルキル」の語には、ラジカル−Rが含まれ、上で定義したようにRはアルキレン(二価アルキル)基、およびRはアリール基である。アラルキル基の例には、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどが含まれる。
【0042】
「脂肪族」の語には、炭化水素鎖を有する化合物、例えばアルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの誘導体が含まれる。
【0043】
「アシル」の語にはR(C=O)−基が含まれ、ここでRは有機基、例えばアルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル(carbocyclyl)、またはヘテロシクリルである。従って、本明細書で置換アシル基について言及する際には、前記の有機基(R)が置換されることを意味する。本明細書で「Ac」と称されるアセチル基CH−C(=O)−は、限定されないアシルの例である。
【0044】
上で定義したアルキルまたは置換アルキル基が1以上のカルボニル{−(C=O)−}基を通して結合する際、ペプチドまたは脂肪族部分は「アシル化」される。ペプチドは、N末端において最も普通にアシル化される。
【0045】
「オメガアミノ脂肪族鎖」には、末端アミノ基を有する脂肪族部分が含まれる。オメガアミノ脂肪族鎖の例には、アミノヘプタノイルならびにオルニチンおよびリジンのアミノ酸側鎖部分が含まれる。
【0046】
「ヘテロアリール」の語には、窒素、酸素、および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含む、単環式および二環式芳香族環が含まれる。5または6員環のヘテロアリールは単環式芳香族複素環であり;この例には、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、イソキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどが含まれる。二環式芳香族複素環には、ベンゾチアジアゾール、インドール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、イソキノリン、プリン、フロピリジン、およびチエノピリジンが含まれるがこれらに限定されない。
【0047】
本明細書で用いられる「アミド」の語には、カルボニル基に結合した三価の窒素を有する化合物、すなわち−C(=O)−NH(すなわち一級アミド)、−C(=O)−NHR、および−C(=O)−NRが含まれ、ここでRおよびRはそれぞれ独立して有機基を表す。本明細書で置換アミド基について言及する際には、前記有機基(RおよびR)のうちの少なくとも1が置換されることを意味する。アミドの例には、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドなどが含まれる。
【0048】
「アミン」には、アミノ基(−NH)、−NHR、および−NRが含まれ、ここでRおよびRはそれぞれ独立して有機基を表す。本明細書で置換アミン基について言及する際には、前記有機基(RおよびR)のうちの少なくとも1が置換されることを意味する。
【0049】
「イミド」には、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)を含む化合物が含まれる。
【0050】
「ニトリル」には、有機基に結合する(−CN)基を含む化合物が含まれる。
【0051】
「ハロゲン」の語には、ハロゲン原子であるフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素、ならびに1以上のハロゲン原子を含む基、例えば−CFなどを含むことが意図される。
【0052】
医薬組成物としての「組成物」の語には、単数または複数の有効部分、および担体を構成する単数または複数の不活性成分を含んでなる産物、ならびに2以上のいずれの成分の組み合わせ、複合体形成、もしくは集合から、または1以上の成分の解離から、またはその他の反応形式もしくは1以上の成分の相互作用から、直接もしくは間接的に得られるいずれの産物も包含することが意図される。従って、本発明で利用される医薬組成物は、有効部分および1以上の薬剤的に許容される担体を混合することによって作られるいずれの組成物も包含する。
【0053】
メラノコルチン受容体「アゴニスト」は、メラノコルチン受容体と相互作用して、アデニルシクラーゼの活性化、メラノコルチン受容体の特性を含むがこれらに限定されない薬理学的応答を開始することができる、内在性物質、原薬、または本発明のペプチドのような化合物を含む化合物を意味する。本発明に関しては、メラノコルチン−4受容体(MC4−R)におけるアゴニストであるメラノコルチン受容体アゴニストが好ましいが、特定の応用のためには、MC4−Rおよびメラノコルチン−1受容体(MC1−R)の両方におけるアゴニストであるメラノコルチン受容体アゴニストが好ましく、かつその他の応用のためには、MC1−R、メラノコルチン−3受容体(MC3−R)、MC4−R、およびメラノコルチン−5受容体(MC5−R)のうちの1以上におけるアゴニストであるメラノコルチン受容体アゴニストが好ましい。
【0054】
「α−MSH」は、ペプチドAc−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH(配列番号:2)ならびにその類似体および相同体を意味し、NDP−α−MSHを含むがこれに限定されない。
【0055】
「NDP−α−MSH」は、ペプチドAc−Ser−Tyr−Ser−Nle−Glu−His−D−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NHならびにその類似体および相同体を意味する。
【0056】
「EC50」は、部分的アゴニストを含むアゴニストに可能な最大応答の50%を起こす、そのアゴニストのモル濃度を意味する。例として、72nMの濃度の試験化合物が、MC4−Rの細胞発現系におけるcAMPアッセイによりその化合物に可能な最大応答の50%を起こすと判定されると、EC50は72nMである。他に特定されない限り、EC50の決定に関連するモル濃度は、リットル当たりのナノモル数(nM)である。
【0057】
「Ki(nM)」は平衡阻害剤解離定数(equilibrium inhibitor dissociation constant)を意味し、これは放射性リガンドまたはその他の競合物が存在しない平衡状態で、受容体の結合部位の半数に結合する競合化合物のモル濃度を表す。一般に、Kiの数値は受容体に対する化合物の親和性に逆相関し、Kiが低い場合には親和性は高い。KiはChengおよびPrusoff(Cheng Y.,Prusoff W.H.,Biochem.Pharmacol.22:3099−3108,1973)の方程式:

を用いて決定されてよく、ここで「リガンド」は放射性リガンドの濃度であり、Kは、放射性リガンドによって50%の受容体占有が起こる、放射性リガンドに対する受容体親和性の逆の基準である。他に特定されない限り、Kiの決定に関連するモル濃度はnMである。Kiは特異的な受容体(例えばMC1−R、MC3−R、MC4−R、またはMC5−R)および特異的なリガンド(例えばα−MSHまたはNDP−α−MSH)に関して表現され得る。
【0058】
「阻害」は、既知の標準物質に比較する競合阻害アッセイにおける、受容体結合のパーセント減衰、または減少を意味する。従って「1μM(NDP−α−MSH)における阻害」は、試験される化合物の決定された量、例えば以下に述べるアッセイ条件下における、例えば1μMの試験化合物の添加によるNDP−α−MSHの結合のパーセント減少を意味する。例として、NDP−α−MSHの結合を阻害しない試験化合物は0%の阻害を有し、NDP−α−MSHの結合を完全に阻害する試験化合物は100%の阻害を有する。典型的には、以下に述べるように、I125標識NDP−α−MSHのような放射性アッセイ、またはEu−NDP−α−MSHを用いるようなランタニドキレート蛍光アッセイが競合阻害試験に用いられる。しかしながら、放射性同位元素以外の標識またはタグシステムの使用を含む、競合阻害を試験するためのその他の方法も知られており、一般には、競合阻害を試験するための当該技術分野において公知であるいずれの方法も、本発明において用いられてよい。従って「阻害」は、試験化合物がα−MSHのメラノコルチン受容体への結合を減衰させるか否かを判定するための一つの基準であると考えることができる。
【0059】
「結合親和性」は、化合物または薬物がその生物学的標的へ結合する能力を意味し、本明細書ではKi(nM)として表現される。
【0060】
「固有活性」は、特定のメラノコルチン受容体発現細胞系において化合物により達成できる最大機能活性、例えばアデニリルシクラーゼの最大刺激を意味する。α−MSHまたはNDP−α−MSHにより達成できる最大刺激は、1.0(または100%)の固有活性とされ、α−MSHまたはNDP−α−MSHの最大活性の半分を刺激できる化合物は、0.5(または50%)の固有活性を有するとされる。本明細書に記載されるアッセイ条件下での本発明の化合物はアゴニストとして分類される0.7(70%)以上の固有活性を有し、0.1(10%)ないし0.7(70%)の固有活性を有する化合物は部分的アゴニストとして分類され、0.1(10%)未満の固有活性を有する化合物は不活性として、または固有活性をもたないとして分類される。一態様によれば、本発明の環状ペプチドは、一般にMC4−Rにおいて、α−MSHまたはNDP−α−MSHについての部分的アゴニストとみなされ得る。
【0061】
一般に「機能活性」は、メラノコルチン受容体、特にMC4−RまたはhMC4−Rのような受容体の、化合物による活性化に伴うシグナル伝達の基準、または受容体に関連するシグナル伝達の変化の基準である。メラノコルチン受容体は、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化を通してシグナル伝達を開始する。一態様によれば、メラノコルチン受容体のシグナルは、アデニリルシクラーゼによるcAMPの産生を触媒するGαを通している。従って、アデニリルシクラーゼの刺激の決定、例えばアデニリルシクラーゼの最大刺激の決定は機能活性の一基準であり、かつ本明細書で例証する第一基準である。しかしながら、本発明の実施には機能活性の別の基準が用いられてよく、これは特に意図され、本発明の範囲内に含まれることが理解されなければならない。従って一例によれば、Mountjoy K.G.et al.,Melanocortin receptor−medicated mobilization of intracellular free calcium in HEK293 cells.Physiol Genomics 5:11−19,2001、またはKassack M.U.et al.,Functional screening of G protein−coupled receptors by measuring intracellular calcium with a fluorescence microplate reader.Biomol Screening 7:233−246,2002によって報告され、開示される方法を用いるように、細胞内遊離カルシウムが測定されてよい。例えば放射性アッセイの使用による、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸からのイノシトール三リン酸またはジアシルグリセロール産生の測定によって、活性化を測定することも可能である。機能活性のさらに別の測定は、Nickolls S.A.et al.,Functional selectivity of melanocortin 4 receptor peptide and nonpeptide agonists:evidence for ligand specific conformational states.J Pharm Exper Therapeutics 313:1281−1288,2005に開示される方法を用いるような、調節性経路の活性化によりもたらされる受容体の内部移行である。機能活性のさらに別の測定は、Gタンパク質受容体の活性化に関連するヌクレオチド交換、および交換率、例えばGタンパク質αサブユニットにおけるGDP(グアノシン二リン酸)のGTP(グアノシン三リン酸)との交換であり、これはManning D.R.,Measures of efficacy using G proteins as endpoints:differential engagement of G proteins through single receptors.Mol Pharmacol 62:451−452,2002に開示されるような、グアノシン5’−(γ−[35S]チオ)−三リン酸を用いる放射性アッセイを含むいずれの方法を用いて測定されてもよい。Chen W.et al.,A colorimetric assay from measuring activation of Gs− and Gq−coupled signaling pathways.Anal Biochem 226:349−354,1995;Kent T.C.et al.,Development of a generic dual−reporter gene assay for screening G−protein−coupled receptors.Biomol Screening,5:437−446,2005;またはKotarsky K.et al.,Improved receptor gene assays used to identify ligands acting on orphan seven−transmembrane receptors.Pharmacology&Toxicology 93:249−258,2003に開示されるように、様々な遺伝子に基づくアッセイが、Gタンパク質共役型受容体の活性化を測定するために開発されてきた。Hruby V.J.et al.,Cyclic lactam α−melanocortin analogues of Ac−Nle−cyclo[Asp,D−Phe,Lys10]α−melanocyte−stimulating hormone−(4−10)−NH with bulky aromatic amino acids at position 7 shows high antagonist potency and selectivity at specific melanocortin receptors.J Med Chem 38:3454−3461,1995に開示されるように、Chen et al.の比色アッセイが、メラノコルチン受容体の活性化を測定するために適応されている。一般に機能活性は、Gタンパク質共役型受容体の活性化および/またはシグナル伝達を判定する方法を含み、かつ今後開発されるかまたは報告され得る方法をさらに含む、いずれの方法によっても測定され得る。前述のそれぞれの論文およびそれらに開示される方法は、全体が説明されるかのように、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0062】
本明細書で用いられる「治療する」、「治療している」、および「治療」の語は、患者が特定の疾病または疾患を患う間に生じる、疾病または疾患の重症度を減少させる行為を企図する。
【0063】
本明細書で用いられる「薬理学的に有効な量」(「治療上有効な量」を含む)の語は、望まれる治療上の、または生物学的な効果を誘導するために十分な、本発明によるペプチドの量を意味する。
【0064】
本明細書で用いられる「治療上有効な量」の語は、医師またはその他の臨床医により治療される哺乳類に生物学的または医学的な応答を誘発し得る、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0065】
本明細書で用いられる「予防的に有効」または「阻止的な」の語は、患者が特定の疾病または疾患を患い始める前に、医師もしくはその他の臨床医が阻止、阻害、または軽減しようとする医学的状態を有する哺乳類の苦痛を阻止もしくは阻害し得るか、または苦痛を軽減し得る、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0066】
「肥満」の語は、例として、成人のための米国立衛生研究所による連邦肥満臨床ガイドライン(National Institutes of Health Federal Obesity Clinical Guidelines)に従い、キログラムによる体重をメートルによる伸長の二乗で割ることによって算出される肥満度指数が25以上であることを含む過剰な体脂肪(脂肪組織)の状態を意味し、かつ過体重状態ならびに小児における同等の肥満および過体重状態をさらに含む。
【0067】
「糖尿病」の語には、空腹時の血漿グルコース濃度がデシリットルあたり126ミリグラムであり、その主要な原因が膵臓ベータ細胞の破壊であるという、糖尿病診断および分類における専門家委員会の報告書に公表される基準(Diabetes Care,Vol.24,Supp.1,January 2001)に従って診断される、インスリン依存性の糖尿病である1型糖尿病、および空腹時の血漿グルコース濃度がデシリットルあた126ミリグラムであり、成人潜在性自己免疫性糖尿病(latent autoimmune diabetes mellitus of adults:LADA)であるという、糖尿病診断および分類における専門家委員会の報告書に公表される基準に従って診断される、インスリン非依存性の糖尿病である2型糖尿病が含まれる。
【0068】
「メタボリック症候群」の語は、インスリン抵抗性および膵臓ベータ細胞による不完全なインスリン分泌を含む代謝性疾患、特にグルコースおよび脂質の調節性疾患を指し、腹部肥満、脂質代謝異常、高血圧症、グルコース不耐性、または血栓形成促進性の状況のような状態および状況をさらに含んでよく、これは高脂血症、肥満、糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、高血糖症、および高血圧症のような疾患をさらにもたらし得る。
【0069】
「性的機能不全」は、性交を含む正常な性的機能を阻害または損なういずれの状態も意味する。この語は生理的な状態に限定されず、病状または疾患の正式な診断がない、心因性の状態または認知された障害を含む。性的機能不全には、雄性哺乳類における勃起不全、および雌性哺乳類における雌性の性的機能不全が含まれる。
【0070】
「勃起不全」は、雄性哺乳類が、機能的な勃起、射精、または両方を達成できないことに関する疾患である。従って勃起不全はインポテンスと同義であり、性交のために十分な硬さである勃起の達成または持続の不能を含む。勃起不全の症状には、勃起の達成または維持の不能、射精障害、早漏、またはオルガズム達成の不能が含まれる。勃起不全の増大はしばしば年齢に関連するか、または身体的な疾病によるかもしくは薬物治療の副作用として引き起こされ得る。
【0071】
「女性の性的機能不全」は、性的興奮障害を含む疾患である。「性的興奮障害」の語には、性的行動の完了までに性的興奮による潤滑−膨張応答を達成または維持することについての、持続性または反復性の障害が含まれる。女性における性的機能不全には、オルガズムの抑制、および有痛性または困難な性交である性交疼痛症も含まれてよい。女性の性的機能不全には、性的欲求低下障害、性的快感消失症、性的興奮障害、性交疼痛症、および膣痙を含む、疾病、状態、および疾患の幾つかの部類が含まれるがこれらに限定されない。性的欲求低下障害には、顕著な苦悩または対人困難の原因となる、性的行動に対する性的空想および欲求が持続性または反復性に減少するかまたは喪失する疾患が含まれる。性的欲求低下障害は、長期にわたる関係における倦怠もしくは不幸感、うつ病、アルコールもしくは向精神薬への依存、処方薬物の副作用、またはホルモン欠乏によって引き起こされ得る。性的快感消失症には、性的行動における満足の減少または喪失が含まれる。性的快感消失症は、うつ病、薬物、または対人性の因子によって引き起こされ得る。性的快感消失症は、エストロゲンの減少、病気、または利尿薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、もしくは降圧薬による治療によって引き起こされ得る。性交疼痛症および膣痙は、貫通からもたらされる疼痛によって特徴付けられ、かつ、例えば潤滑を減少させる薬物療法、子宮内膜症、骨盤の炎症性疾患、炎症性腸疾患、または尿路の問題によって引き起こされ得る性交疼痛障害である。
【0072】
「循環性ショック」は、ヒトまたは動物であってよい被験体の、身体の臓器および/または組織が十分な血流を受けていない一般身体疾患を意味する。循環性ショックには、血液量減少性ショック、心原性ショック、血管拡張性ショックなどの状態が含まれる。循環におけるこれらの状態または機能障害は、細菌性の血液感染症(敗血症性ショックまたは感染性)、重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)、外傷(外傷性ショック)、重篤な出血または血液の喪失(出血性ショック)、血管の異常な開口を引き起こす神経機能障害(神経原性ショック)、または内分泌関連(内分泌性ショック)のような異なる原因を有し得る。循環性ショックは、身体臓器、組織、細胞、または部分に虚血および虚血性の損傷をさらにもたらし得る。血流の再灌流または回復により、身体臓器、組織、または細胞に損傷をもたらす虚血再灌流傷害も起こり得る。
【0073】
ときおり「炎症性状態」とも呼ばれる「炎症性疾患」は、炎症性細胞、およびサイトカインを含むがこれに限定されない内在性の媒介化学物質を動員する、特異的なTリンパ球反応または抗体−抗原相互作用のような炎症性機構によって部分的に特徴付けられる疾病または状態を意味し、この媒介化学物質には、NF−κB活性を増大するもの、TNF−α産生を増大するもの、IL−1産生を増大するもの、およびIL−6産生を増大するもののうち1以上が含まれるがこれらに限定されない。
【0074】
ときおり「代償性ショック」または「非進行性ショック」とも呼ばれる「ステージIショック」は、身体が血流または灌流の減少を検出し、最も重要な身体臓器への灌流または直接の血流を回復させるための幾つかの反応機構のうち1以上の活性化を開始する際に起こる状態を意味する。ステージIショックは無症状であり得るが、不十分な血流または灌流、速い、すなわち増加した心拍数、浅い、すなわち不規則な呼吸、低血圧、高血圧、蒼白、およびチアノーゼのような症状も含んでよく、しかしこれらに限定されない。
【0075】
ときおり「非代償性ショック」または「進行性ショック」とも呼ばれる「ステージIIショック」は、身体の代償性機構が衰え始め、臓器灌流が正常に回復しないかまたは維持できない場合に起こる状態を意味する。ステージIIショックの症状には、脳への酸素の不足、胸痛、心拍数の増加、乏尿、多臓器障害、血圧の低下(低血圧)、速い呼吸、脱力、および瞳孔拡張を示す、錯乱、不安症、見当識障害、ならびにその他の精神障害が含まれるがこれらに限定されない。
【0076】
ときおり「不可逆性ショック」とも呼ばれる「ステージIIIショック」は、灌流または血流減少の状況が、身体の臓器および組織が持続的に影響される程度にまで存在した後に起こる状態を意味する。このような症状には、多臓器不全症、腎不全、昏睡、四肢の血液貯留、および死が含まれるがこれらに限定されない。
【0077】
2.0 臨床への適用および有用性
本明細書に開示される組成物および方法は、医学的応用および畜産または獣医学的応用の両方に使用できる。典型的には、この方法はヒトにおいて使用されるが、その他の哺乳類において使用されてもよい。「患者」の語は、哺乳類個体を意味することが意図され、明細書および請求項を通してそのように用いられる。本発明の主要な応用はヒトの患者に関するものであるが、本発明は、実験室の、農場の、動物園の、野生の、ペットの、競技用の、またはその他の動物にも応用されてよい。臨床への適用および特異的な有用性には以下のものが含まれる:
【0078】
2.1 肥満および関連するメタボリック症候群
式(I)および(II)で表されるペプチドは、MC4受容体のリガンドであることが見出された。このようなペプチドは、MC4−R機能の調節、さらに詳細にはMC4−Rの活性化に応答性である疾病、疾患、および/または状態、すなわちMC4−Rにおけるアゴニズム(完全または部分的なアゴニズムを含む)から利益を得る可能性のある、エネルギー恒常性および代謝関連の(例えば糖尿病、特に2型糖尿病;脂質代謝異常;脂肪肝;高コレステロール血症;高トリグリセリド血症;高尿酸血症;耐糖能の障害;空腹時血糖の障害;インスリン抵抗性症候群;およびメタボリック症候群)、食物摂取量関連の(例えば多食症;むちゃ食い;大食症;および過食症)および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾病、疾患、および/または状態、さらに詳細には過剰な体重および/または過剰な食物摂取量によって特徴付けられるこのような疾病、疾患、および/または状態を含む、疾病、疾患、および/または状態の治療に有用であると考えられている。
【0079】
このようなペプチドは特に、肥満および過体重を含む過剰な体重(体重減少の促進、体重減少の維持、および/または薬物療法により誘導される体重増加もしくは喫煙休止に続く体重増加を含む体重増加の阻止による)によって特徴付けられる、体重に関連する疾病、疾患、および/または状態、ならびに肥満および/または過体重に関連する疾病、疾患、および/または状態、例えばインスリン抵抗性;耐糖能の障害;2型糖尿病;メタボリック症候群;脂質代謝異常(高脂血症を含む);高血圧症;心疾患(例えば、冠動脈心疾患、心筋梗塞);循環器疾患;非アルコール性脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎を含む);関節疾患(二次性変形性関節症を含む);胃食道逆流;睡眠時無呼吸;アテローム性動脈硬化症;脳卒中;大および小血管疾患;脂肪肝(例えば肝臓における);胆石;および胆嚢疾患の治療に有用であると考えられている。
【0080】
肥満および過体重の医学的に許容される定義のあることが理解されるであろう。患者は例えば、キログラムによる体重をメートルによる伸長の二乗で割ることによって算出される肥満度指数(BMI)を測定し、結果を定義に比較することによって同定され得る。成人の過体重および肥満の同定、評価、および治療の専門委員会(Expert Panel on the Identification,Evaluation and Treatment of Overweight and Obesity in Adults)によって採択され、健康専門家の主要な組織によって承認された、ヒトにおけるBMIの推奨される分類は以下の通りである:低体重<18.5kg/m、正常体重18.5〜24.9kg/m、過体重25〜29.9kg/m、肥満(クラス1)30〜34.9kg/m、肥満(クラス2)35〜39.9kg/m、極度の肥満(クラス3)≧40kg/m(Practical Guide to the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight and Obesity in Adults,The North American Association for the Study of Obesity(NAASO)and the National Heart,Lung and Blood Institute(NHLBI)2000)。特定の民族群に対しては、この分類の改変が用いられてよい。過体重および肥満を評価するための別の選択肢は、腹囲の測定である。民族群に基づくカットオフには、幾つかの提案される分類および相違が存在する。例えば、国際糖尿病連合(International Diabetes Federation)の分類によれば、腹囲が94cmを超える男性(白色人種についてのカットオフ)および腹囲が80cmを超える女性(白色人種についてのカットオフ)は、過剰な腹部脂肪のために、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧症、および循環器病の高い危険性を有する。別の分類は成人治療委員会(Adult Treatment Panel)IIIの推奨に基づき、ここで推奨されるカットオフは、男性について102cm、女性については88cmである。しかしながら、式Iで表されるペプチドは、自己診断による過体重を減少させるため、ならびに生活習慣、遺伝的な考慮、遺伝、および/またはその他の因子のために肥満となる危険性を減少させるためにも用いられてよい。
【0081】
2.2 性的機能不全
本発明のペプチド、組成物、および方法は、男性の勃起不全および女性の性的機能不全の両方を含む性的機能不全の治療に用いられてよい。特定の一実施形態によれば、本発明のペプチド、組成物、および方法は、男性患者における、膣性交が可能となるような勃起機能の増大を含むがこれに限定されない勃起機能の増大のために使用される。別の特定の実施形態によれば、本発明のペプチド、組成物、および方法は、性的興奮の成功率、欲求の成功率、性的興奮および欲求の水準の増大を含むがこれらに限定されない女性の性的機能不全の治療のために使用される。女性の性的機能不全について、エンドポイントは、女性の性的苦悩の尺度(Female Sexual Distress Scale)、女性の性的接触のプロファイル(Female Sexual Encounter Profile)、女性の性的機能指数(Female Sexual Function Index)、および全体的評価のための質問を含むがこれらに限定されない、幾つかの確認された手段のいずれを用いても決定されてよいが、必要ではない。女性の性的機能不全を治療される患者は、閉経前の女性または閉経後の女性であってよい。
【0082】
2.3 循環性ショック、ならびに関連する疾病、徴候、状態、および症候群
本発明のペプチド、組成物、および方法は、被験体の循環性ショックの治療のために用いられてよい。本明細書に提供される組成物および方法は、ステージIショック、ステージIIショック、またはステージIIIショックを治療するために用いられてよい。特定の一実施形態によれば、本発明の方法はショックの初期段階を治療するために用いられてよく、ショックの初期段階は、著しい症状を提示するほど低くはないが、身体の代謝が必要とするには不十分な心拍出量によって特徴付けられる。患者の呼吸は増大し、不安な警戒状態であり得る。
【0083】
本発明は使用のための組成物および患者の出血性ショックを治療または阻止するための方法を提供し、これは失血と診断された患者に、1以上の本発明のペプチドを含む組成物を投与することを含む。失血は、例えば全血量の約15%よりも多い、または被験者の全血量の20%、25%、30%、35%、40%、もしくは50%よりも多い失血というように、被験体の血液量のパーセンテージとして測定されてよいが、必要ではない。あるいは失血は、例えばヒト被験体における、約750ml、1000ml、約1500ml、もしくは約2000ml、またはそれを超える失血というように、特定の被験体に出血性ショックを引き起こすために十分ないずれの量でもある血液量の低下の点から測定されてよいが、必要ではない。失血はまた、例えば被験体の正常収縮期血圧よりも約20mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、60mmHg、70mmHg、80mmHg、90mmHgもしくは100mmHg、または100mmHgを超えて低い、収縮期血圧における低下というように、収縮期血圧の低下の点から測定されてもよい。特定の実施形態によれば被験体は、外科手術、輸血、または出産のような、しかしこれらに限定されない医学的処置を受けているかまたは受けていた。他の特定の実施形態によれば、被験体は、例えば自動車事故、労働の傷害、または銃撃の創傷によるが、これらに限定されない外傷性の傷害を患う。
【0084】
本発明のさらなる実施形態によれば、本組成物および方法は、それぞれが前述のいずれのショックのステージであってもよい、心原性ショック、血液量減少性ショック、および血管拡張性ショックを治療するために用いられる。本発明の特定の一実施形態によれば、本方法は心原性ショックを治療するために用いられる。心原性ショックは、一般的に言えば、心臓が十分な血液を送り出すことのできない、心臓の機能不全により引き起こされる低い血流または灌流である。原因には、塞栓症、虚血、逆流症、および弁の機能不全のような、しかしこれらに限定されない、心室の充満または排出を妨げるいずれの状態も含まれてよい。本発明の別の特定の実施形態によれば、本方法は血管拡張性ショックを治療するために用いられる。血管拡張性ショックは、不十分な血流をもたらす重度の静脈または細動脈の拡張によって引き起こされる。血管拡張性ショックの一因となる幾つかの既知の原因には、脳の外傷、薬物または毒物の毒性、アナフィラキシー、肝不全、菌血症、および敗血症が含まれるがこれらに限定されない。本発明の別のさらなる特定の実施形態によれば、本方法は、敗血症または菌血症からもたらされるショックを治療するために用いられる。さらなる特定の実施形態によれば、本組成物および方法は、ステージI、II、もしくはIIIの敗血症性ショックまたは菌血症性ショックを治療するために用いられる。さらに別の実施形態によれば、本発明の組成物および方法は、血液量減少性ショックを治療するために用いられる。血液量減少性ショックは、一般的に言えば減少した血管内容量であり、この血管内容量の減少は相対的または絶対的であってよい。潰瘍、胃腸の傷害、外傷、事故、外科手術、および動脈瘤のような、しかしこれらに限定されない状態からの出血が血液量減少性ショックを引き起こし得るが;その他の体液の減少もまた血液量減少性ショックを引き起こし得る。例えば、腎の体液減少、血管内の体液減少、水またはその他の腹水の減少が血液量減少性ショックの一因となり得る。本発明の特定の一実施形態によれば、本組成物、および1以上の本発明のペプチドの投与を含む方法が、血液量減少性ショックを治療するために用いられる。さらなる特定の実施形態によれば、本組成物および方法は、ステージI、II、またはIIIの血液量減少性ショックを治療するために用いられる。
【0085】
出血性ショックを含む循環性ショックは、患者の1以上の内部臓器または血管内の、部分的に制御されるかまたは制御されない出血にも起因し得る。出血は、例として動脈瘤破裂、解離した大動脈、潰瘍、外傷またはその他の胃腸の出血を含むいずれの原因からも由来し得る。ある例として、患者は低血圧を含み得る循環性ショックまたは血液量減少の徴候を示すが、内部出血の源は不明である。
【0086】
一実施形態によれば、本発明は、患者の心臓、脳、またはその他の臓器を循環性ショックにより引き起こされる傷害から保護するため、1以上の本発明のペプチドを用いる方法に方向付けられる。循環性ショックに対する保護効果は、1以上の本発明のペプチドを含んでなる組成物の投与後瞬時に、または短時間内に、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、さらに好ましくは1〜20分以内に、さらに好ましくは1〜15分以内に、最も好ましくは約1〜10分以内に起こる。
【0087】
2.4 虚血、ならびに関連する疾病、徴候、状態、および症候群
虚血は、いずれの身体の臓器、組織、細胞、または部分、特に血液供給の減少または停止が身体の臓器、組織、細胞、もしくは部分への虚血性の損傷を導くか、または導くと思われる場所への、血液供給のいずれの減少または停止も指す。「虚血性エピソード」は、一過性または持続性の期間のいずれの虚血も指す。虚血は、脈管構造のいずれの狭窄もしくは閉塞にも起因し得るか、または出血性ショック、血液量減少性ショックなどのような循環性ショックに起因し得る。血流の減少または欠乏は、身体の影響される部位への酸素の減少または欠乏をもたらし、また様々なサイトカインおよびその他の物質のような炎症性疾患の媒介化学物質の増大ももたらし得る。心臓手術および臓器移植のような特定の外科的行為の間に、血流は一時的に停止され、次に再開されて(再灌流)、虚血再灌流傷害がもたらされる。心臓発作の間に心臓の血液供給は停止し、梗塞を発生し得る虚血もまたもたらされる。心臓発作を軽減する現在の治療には、例えば血栓溶解薬の使用または冠動脈の血管形成術によって、心臓の虚血性領域の再灌流が必要とされる。
【0088】
本発明は、腎虚血の二次的な肺傷害を含む、腎虚血による傷害の阻止、心筋梗塞に続く虚血性心傷害の予防または制限、心筋梗塞、脳卒中などを含むがこれらに限定されない、心血管傷害に続く虚血性脳傷害の予防または制限に、特に応用される。本発明の組成物の投与により、脳虚血または脳卒中の患者、特に同時に低血圧である患者に神経保護が提供される。さらに本発明は、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、または小腸の移植を含む、臓器移植における虚血性の臓器損傷の予防または制限に特に応用される。一態様によれば、本発明の医薬組成物は移植臓器の灌流に利用されてよく、この灌流は臓器移植の前、その間、またはその後に行われてよい。
【0089】
一実施形態によれば、本発明は、患者の心臓、脳、またはその他の臓器を虚血により引き起こされる傷害から保護するため、1以上の本発明のペプチドを用いる方法に方向付けられる。虚血に対する保護効果は、1以上の本発明のペプチドを含んでなる組成物の投与後瞬時に、または短時間内に、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、さらに好ましくは1〜20分以内に、さらに好ましくは1〜15分以内に、最も好ましくは約1〜10分以内に起こる。
【0090】
虚血は様々な疾病または状態のいずれにも起因する可能性があり、本発明の一実施形態は、患者の臓器を疾病または状態により引き起こされる虚血からもたらされる傷害から保護するために、1以上の本発明のペプチドを使用する方法に方向付けられる。このような疾病または状態には、例として、血栓症を伴うアテローマのような動脈硬化性疾患、心臓またはいずれの臓器からの血管にも由来する塞栓症、血管攣縮、心疾患による低血圧症、感染またはアレルギー反応を含む全身性疾患による低血圧症、または、1以上の有毒化合物もしくは薬物の投与、摂取、またはその他の曝露からもたらされる低血圧症が含まれてよいが、これらに限定されない。虚血はまた、二次的虚血であってもよく、別の実施形態によれば本発明は、患者の臓器を二次的虚血に起因する傷害から保護するために、1以上の本発明のペプチドを使用する方法に方向付けられる。このような二次的虚血は、糖尿病、高脂血症、高リポタンパク血症、脂質代謝異常、閉塞性血栓血管炎とも呼ばれるバージャー病、高安動脈炎、側頭動脈炎、リンパ節症候群とも呼ばれる川崎病、皮膚粘膜リンパ節病、乳児結節性多発性動脈炎、心血管梅毒、ならびに様々な結合組織の疾病および疾患のような、疾病または状態に対する二次的なものであってよい。
【0091】
2.5 虚血再灌流傷害、ならびに関連する疾病、徴候、状態、および症候群
虚血再灌流は、身体組織への血流の中断、およびそれに続くしばしば急激な組織への血流の回復である。虚血に続く血流の回復は機能的な組織の維持に必須であるが、灌流そのものは組織に有害であることが知られている。虚血および灌流の両方は、組織の壊死に大きく寄与することが知られている。幾つかの機構が、虚血再灌流傷害に関連する組織損傷の生成の原因となる役割を果たしていると考えられる。
【0092】
低体温の誘導、再灌流の制御、および虚血の前処理のような、再灌流傷害を制限するための様々な方法が記載されている。低体温の誘導は、再灌流傷害に関連する化学反応の多くを抑制すると考えられている中程度の低体温の誘導である。再灌流の制御は、高浸透圧であり、アルカローシスであり、かつ基質が濃縮されるように改変された血液を用いて低圧において組織を再灌流することによる、再灌流の初期段階の制御を指す。虚血の前処理は、より長い虚血現象の間に細胞の代謝を遅くすることによって保護効果を得るために、目的を持って短い虚血現象を起こすことである。これらの処置は、外科的な設定(例えば計画された心臓手術の前または後)では有用であり得るが、これらは緊急の設定においては不可能である。
【0093】
本発明は、腎の再灌流の二次的な肺傷害を含む、腎の再灌流傷害の阻止または重症度の制限、心筋梗塞に続く再灌流心傷害の阻止または制限、心筋梗塞、脳卒中などを含むがこれらに限定されない、心血管傷害に続く再灌流脳傷害の阻止または制限に、特に応用される。さらに本発明は、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、または小腸の移植を含む、臓器移植における再灌流による臓器損傷の阻止または制限に特に応用される。一態様によれば、本発明の医薬組成物は移植臓器の灌流に利用されてよく、この灌流は臓器移植の前、その間、またはその後に行われてよい。
【0094】
一実施形態によれば、本発明は、患者の心臓、脳、またはその他の臓器を、再灌流によるかまたは再灌流の間に引き起こされる傷害を含む虚血再灌流傷害により引き起こされる傷害から保護するため、1以上の本発明のペプチドを用いる方法に方向付けられる。虚血再灌流傷害に対する保護効果は、1以上の本発明のペプチドを含んでなる組成物の投与後瞬時に、または短時間内に、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、さらに好ましくは1〜20分以内に、さらに好ましくは1〜15分以内に、最も好ましくは約1〜10分以内に起こる。
【0095】
2.6 サイトカイン発現の増大に関連する疾病、ならびに関連する疾病、徴候、状態、および症候群
様々なサイトカインの発現は、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに対する二次的な炎症過程を含む炎症過程の間に増大する。TNF−αは、主にマクロファージ、およびその他の型の細胞からも産生される多面的なサイトカインである。循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに対する二次的な炎症過程を含む炎症過程の間に増大するその他のサイトカインには、IL−1およびIL−6が含まれる。TNF−αのようなサイトカインは多くの場合に有益な効果を有するが、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに対する二次的状況のような著しく増大したレベルでは、病的効果も有し得る。一態様によれば、循環性ショックに対する二次的な低酸素性のような、低酸素性または虚血性組織の再灌流により、サイトカイン発現の増大を含む炎症性応答がもたらされる。
【0096】
一実施形態によれば、本発明は、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに対する二次的な炎症誘発性サイトカインの産生および発現を減少させることを含む、炎症誘発性サイトカインの産生および発現を減少させるための、1以上の本発明のペプチドを用いる方法に方向付けられる。TNF−α、IL−1、およびIL−6のうち1以上を含むがこれらに限定されない炎症誘発性サイトカインの産生および発現減少は、1以上の本発明のペプチドを含んでなる組成物の投与後瞬時に、または短時間内に、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、さらに好ましくは1〜20分以内に、さらに好ましくは1〜15分以内に、最も好ましくは約1〜10分以内に起こる。
【0097】
関連する実施形態によれば、本発明は、抗炎症性サイトカインの産生および発現を増大させるための、1以上の本発明のペプチドを用いる方法に方向付けられる。IL−10を含むがこれに限定されない抗炎症性サイトカインの産生および発現増大は、1以上の本発明のペプチドを含んでなる組成物の投与後瞬時に、または短時間内に、好ましくは投与後少なくとも約40分以内に、さらに好ましくは1〜20分以内に、さらに好ましくは1〜15分以内に、最も好ましくは約1〜10分以内に起こる。
【0098】
2.7 血液透析の使用
本発明の組成物および方法は、過剰な細胞外液の除去による血液透析治療の間に高血圧を安定させるため、ならびに類似のおよび関連する徴候のために、過剰な液体の除去に対する二次的な低血圧を阻止するかまたは最小にすることによる、血液透析の間の過剰な細胞外液の除去における補助として、被験体が血液透析を受けている間の低血圧を阻止するために用いられてよい。血液透析では、血液は透析装置の血液区画を通し、半透膜に曝露されて送られる。浄化された血液は、次に身体への回路を通して戻される。一般には透析装置の透析液区画へ陰圧を適用することにより、透析装置の膜にわたって静水圧が上昇することで限外濾過が起こる。この圧力勾配によって水および溶解した溶質が血液から透析液へ移動し、典型的な3ないし5時間の治療の間に数リットルまでの細胞外液の除去が可能になる。
【0099】
長期的な血液透析における被験体の過剰な細胞外液の除去は、過剰な液体の慢性的な量の増大によって高血圧がもたらされることから危機的である。しかしながら、透析時(透析の間の)低血圧のため、血液透析の間に蓄積した全ての過剰な液体を除去することはしばしば不可能である。透析時低血圧は、≧20mmHgの収縮期血圧の低下、または10mmHg以上の平均動脈圧の低下として定義される。透析時低血圧は、腹部不快感、悪心、嘔吐、筋肉痙攣、浮動性めまいまたは失神、および不安症のような症状に関連する。透析時低血圧は心不整脈を誘導する可能性があり、かつ被験体に冠動脈の虚血性事象および脳の虚血性事象を起こしやすくする。
【0100】
透析時低血圧は、全ての血液透析活動の約25%ないし50%に起こると推定される。透析時低血圧の主要な原因は、血行動態の不安定さをもたらす、血液透析の間の循環量の迅速な除去であると考えられている。透析時低血圧のための最も一般的な現在の治療は、液体の除去率または注入する液体のいずれかを減少させることであるが、両方法は不十分な透析をもたらし、かつ量における過負荷の結果となる。αアドレナリン作動薬であるミドドリンの使用のような、薬理学的な介入が考慮されてきた。しかしながらこれには、仰臥位の収縮期高血圧の誘導を含む幾つかの副作用が付随する。加えて、2007年2月27日に公開された米国特許第7,183,255号に開示されるように、この徴候については様々なバソプレシン受容体アゴニストが考慮される。
【0101】
2.8 外科手術に対する二次的な急性失血、ならびに関連する徴候、状態、および症候群
本発明の医薬組成物および方法は、外科手術の間に起こる急性失血の被験体に用いられてよい。一実施形態によれば、被験体は急性失血を起こし得る外科手術を受けていてよい。別の実施形態によれば、被験体は急性失血を起こし得る外科手術を受けることが予定されていてよい。別の実施形態によれば、被験体は、遺伝的因子(例えば家族歴)および/または環境因子(例えば食事)の結果として、急性失血を起こし得る外科手術を必要としやすいか、または必要とする高い危険性があってよい。
【0102】
本明細書で用いられる「外科手術」の語は、「手術」の語と互換的に用いられてよい。急性失血を引き起こす外科手術は、いずれの型の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)、および/または臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、消化管)にも関連してよい。急性失血を引き起こす外科手術の例には待機手術が含まれるが、これに限定されない。
【0103】
外科手術には多くの異なる型があり、任意または待機手術、必要な外科手術、および至急または緊急手術が含まれるがこれらに限定されない。多くの外科的手順には、出血または失血の高い危険性が付随する。これらには心臓手術、冠動脈バイパス移植術、腹式子宮摘出術、脳アミロイド血管症、脳動脈瘤の修復術、動静脈奇形のための放射線手術、後方循環動脈瘤の血管内治療、増殖性硝子体網膜症、脂肪腫の切除、および洞手術が含まれる。このように被験体は、前述の外科的手順のうちの一つ、または出血もしくは失血の高い危険性を有するその他のいずれの外科的手順、または手術中もしくは手術後の出血、失血、血液量減少、または低血圧を有するその他の外科的手順を受けているか、受ける予定であるか、または受けた者であってよい。
【0104】
一態様によれば、本発明の組成物および方法は、冠動脈バイパス移植術のような心臓手術へ特に応用される。米国では年に50万を超えるバイパス手術が行われているが、手術後の心血管事象を減少させるための認可された心保護薬は存在しない。加えて、バイパス患者の大部分は手術前または手術中に低血圧であり、現在は従来の昇圧剤を投与されている。
【0105】
被験体には、手術前、手術中、および/または手術後に、本発明の方法によって1以上の本発明のペプチドを含む組成物が投与されてよい。患者に1以上の本発明のペプチドを含む組成物を投与するタイミングおよび量は、当業者により、考慮される通常の技能、例えば被験体における失血の程度を用いて選択されてよい。
【0106】
2.9 外傷に対する二次的な急性失血、ならびに関連する徴候、状態、および症候群
本発明の医薬組成物および方法は、外傷に由来する急性失血の被験体に用いられてよい。一実施形態によれば、被験体は急性失血を起こし得る外傷を被っているかまたは診断されていてよい。別の実施形態によれば、被験体は、遺伝的因子(例えばトリプルX症候群)および/または環境因子(例えば犯罪多発地域における居住)の結果として、急性失血を起こす外傷を被りやすいか、または被る危険性があってよい。
【0107】
本明細書で用いられる「外傷」の語は、「傷害」の語と互換的に用いられてよい。急性失血を引き起こす外傷は、いずれの型の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)、および/または臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、消化管)にも関連してよい。急性失血を引き起こす外傷の例には、火傷、銃撃の創傷、および刺し傷の創傷が含まれるがこれらに限定されない。
【0108】
外傷には多くの異なる型があり、事故による傷害および犯罪による傷害が含まれるがこれらに限定されない。事故による傷害は、いずれの型の事故(例えば、自動車事故による傷害、むち打ち、溺水、落下、スポーツによる傷害、火傷、機械による事故、窒息、自然事故、事故による眼の傷害、業務上の傷害、玩具に関連する傷害)においても被る傷害である。犯罪による傷害は、犯罪的行動(例えば、児童虐待、暴行)により引き起こされる傷害であり、特に銃撃の創傷および刺し傷の創傷である。
【0109】
外傷には戦場での外傷が含まれる。戦場での外傷には、ロケット弾、迫撃砲、地雷、即席の爆破装置などを含むがこれらに限定されない、銃撃または爆破装置に対する二次的な外傷が含まれる。制御できない出血が、回避可能な戦闘に関連する死の主な原因である。これらの死の大多数は、負傷者が治療施設に輸送され得る前に戦地で起こる。戦場における回避可能な死の、最も一般的な単一の原因は、四肢の創傷からの出血によるものであると推定されてきた。胴体の創傷からの出血は、回避可能な死のもう一つの原因である。戦場での外傷には、貫通する頭部の創傷および傷害も含まれる。
【0110】
被験体は、1以上の本発明のペプチドを含む組成物を本発明の方法により投与されてよく、投与は血液量減少性ショック、外傷性ショック、または出血性ショックのような状態の、症状の発生前、または症状の発生後に行われてよい。組成物を投与するタイミングおよび量は、当業者により、考慮される通常の技能、例えば被験体における失血の程度を用いて選択されてよい。
【0111】
2.10 眼疾患、徴候、状態、および症候群
ドライアイ疾患は、人口のおおよそ10〜20%に発症する眼疾患である。この疾病は、年齢に伴ってより高いパーセンテージの人口に進行性に発症し、これらの患者の多くは女性である。加えて、ほとんど全員が眼の刺激もしくは症状、および/または長時間の視覚的な作業(例えばコンピュータによる仕事)、乾燥した環境にいること、眼の乾燥をもたらす薬物療法の使用などのような特定の環境下における、時々の状態としてのドライアイの徴候を経験する。ドライアイを患う個体は、通常眼の表面を保護している涙による保護層が、1以上の涙成分の不十分または不健康な産生の結果として損なわれる。このことにより眼の表面の曝露が誘導され、最終的には乾燥および表面細胞の損傷が促進される。ドライアイの徴候および症状には、角膜炎、結膜および角膜の着色、発赤、ぼやけた視覚、涙膜崩壊時間の減少、涙産生、涙量、および涙流量の減少、結膜発赤の増大、涙膜内の過剰な細片、眼の乾燥、眼のざらつき、眼の灼熱感、眼の中の異物感、過剰な涙、羞明、眼の刺痛、屈折障害、眼の過敏症、および眼の刺激が含まれるがこれらに限定されない。患者はこれらの症状の1以上を経験し得る。過剰な涙応答は反直感的であると考えられ得るが、これはドライアイにより引き起こされる刺激および異物感覚に対する自然な反射応答である。何人かの患者は、眼のアレルギーとドライアイ症状の組み合わせによる目のかゆみもまた経験し得る。
【0112】
患者のドライアイの徴候または症状に影響を及ぼし得る多くの可能な変化が存在し、これには循環ホルモン濃度、様々な自己免疫疾患(例えばシェーグレン症候群および全身性エリテマトーデス)、PRKまたはLASIKを含む眼の手術、多くの薬物療法、環境の状態、コンピュータの使用のような視覚的な作業、眼の疲労、コンタクトレンズの装着、および角膜の過敏症のような機械的影響、まぶたの部分的な閉鎖、表面の不規則さ(例えば翼状片)、およびまぶたの不規則さ(例えば眼瞼下垂、眼瞼内反/眼瞼外反、瞼裂斑)が含まれる。霜取り装置を作動させている車内にいること、または乾燥気候地帯に住むことのような脱水が原因となるような低湿度環境により、ドライアイ症状が悪化し得るかまたは引き起こされる。加えて、視覚的な作業は症状を悪化させ得る。症状に大きく影響し得る作業には、まばたき率が低下する、長時間のTV観賞またはコンピュータの使用が含まれる。
【0113】
ぶどう膜炎は、眼の中間層またはぶどう膜の炎症に関わる眼疾患であり、眼の内部に関わるいずれの炎症性過程も含むと理解されてよい。ぶどう膜炎には、前部、中間部、後部、および全型が含まれ、大多数のぶどう膜炎の症例は虹彩および前房の炎症に関わる前部の位置にある。この状態は単一のエピソードとして起こってよく、適切な処置によって鎮静するか、または反復性もしくは慢性の性質となり得る。症状には、目の充血、うっ血した結膜、疼痛、および視覚の減少が含まれる。徴候には、毛様体血管の拡張、前房内の細胞および紅斑の存在、および角膜の後部表面における角膜後面沈着物が含まれる。中間部ぶどう膜炎には、硝子体腔における炎症および炎症性細胞の存在が含まれ、後部ぶどう膜炎には、網膜および脈絡膜の炎症が含まれる。ぶどう膜炎は、急性後部多発性小板状色素上皮症、強直性脊椎炎、ベーチェット病、散弾状脈絡網膜炎、ブルセラ症、、単純ヘルペス、帯状疱疹、炎症性腸疾患、若年性関節リウマチ、川崎病、レプトスピラ症、ライム病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、ライター症候群、サルコイドーシス、梅毒、全身性エリテマトーデス、トキソカラ症、トキソプラズマ症、結核、フォークト・小柳・原田症候群、ウィップル病、または結節性多発動脈炎を含む、いずれの数の疾病および疾患に対して二次的であり得る。
【0114】
2.11 炎症性疾患、徴候、状態、および症候群
本発明のペプチド、組成物、および方法は、被験体の炎症性疾患および炎症性状態の治療にさらに方向付けられる。そのように治療されるべき幾つかの炎症性疾患および炎症性状態が存在する。一態様によれば、炎症性状態は、変形性関節症、関節リウマチ、化膿性関節炎、痛風および偽痛風、若年性特発性関節炎、スチル病および強直性脊椎炎、同様に、紅斑性狼瘡、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ヘモクロマトーシス、肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、脈管炎症候群、ライム病、家族性地中海熱、回帰熱を伴う高IgD血症、TNF受容体関連周期熱症候群、ならびにクローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患に対して二次的な関節炎のような、その他の疾病に対して二次的な関節炎を含むがこれらに限定されない、関節炎の形を含む疾病からもたらされる。別の態様によれば、炎症性状態は、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン形成大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎、および確定できない大腸炎のような、炎症性腸疾患の形を含む疾病からもたらされる。別の態様によれば、炎症性状態は、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、関節リウマチ、および多発性筋炎のような全身性の症候群、または内分泌系(1型糖尿病、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚系(尋常性天疱瘡)、血液系(自己免疫性溶血性貧血)、または神経系(多発性硬化症)のような局所的身体系のみに影響を及ぼす症候群を含むが、これらに限定されない自己免疫疾患からもたらされる。従って自己免疫疾患には、上に述べた一般的な症候群に加えて、急性散剤性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、川崎病、紅斑性狼瘡、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、天疱瘡、悪性貧血、、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、シェーグレン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、自己免疫性溶血性貧血、およびウェゲナー肉芽腫症のような疾病ならびに状態も含まれる。
【0115】
別の態様によれば、炎症性状態は、例えば慢性気管支炎、肺気腫、塵肺症、肺腫瘍、およびその他の肺疾患のような、完全に可逆的ではない気道内気流の病的な制限により特徴付けられる疾病を含むがこれらに限定されない、慢性閉塞性気道疾患としても知られる慢性閉塞性肺疾患(COPD)からもたらされるか、またはこれに関連する。その他の炎症性状態には、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、アレルギー性結膜炎、非アレルギー性結膜炎などのような上気道または下気道の疾病および疾患、ならびに様々な型の塵肺症(炭鉱夫塵肺、石綿肺、珪肺症、ボーキサイト線維症、ベリリウム症、または鉄沈着症)、綿肺、または過敏性肺炎(農夫肺または鳥飼病)のような、外部の毒素もしくは物質に関連する気道疾患が含まれる。
【0116】
なお別の態様によれば、炎症性状態は、移植片対宿主病、超急性拒絶反応、急性拒絶反応、または慢性拒絶反応のような、移植に関連する状態もしくは症候群の幾つかの形からもたらされるか、またはこれに関連する。移植片対宿主病は同種骨髄移植の通常の合併症であるが、その他の移植、特に移植片に混入物として、または意図的に導入されたT細胞が存在するものに起こり得る。超急性、急性、または慢性の拒絶反応は、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、子宮、心臓、もしくは肺のような身体臓器、および骨、角膜、顔、手、陰茎、もしくは皮膚の移植でも起こり得る。一実施形態によれば、1以上の本発明のペプチドを含む医薬組成物は、体液、臓器、または部分の移植の直前、その間、またはその後のような、移植に関連する状態もしくは症候群を予防的に制限または阻止するために投与される。別の実施形態によれば、移植される体液、臓器、または部分は、1以上の本発明のペプチドを含む医薬組成物の溶液によって灌流される。なお別の実施形態によれば、1以上の本発明のペプチドは、例えばシクロスポリンまたはタクロリムスを含むカルシニューリン阻害剤、シロリムスまたはエベロリムスを含むmTOR阻害剤、アザチオプリンまたはミコフェノール酸を含む抗増殖剤、プレドニゾロンまたはヒドロコルチゾンを含む副腎皮質ステロイド、モノクローナル抗IL−2Rα受容体抗体、バシリキシマブもしくはダクリズマブ、またはポリクローナル抗T細胞抗体、例えば抗胸腺細胞グロブリンもしくは抗リンパ球グロブリンのような抗体を含む、移植片拒絶に対する1以上の他の薬剤との組み合わせまたは連続としての併用によって投与される。
【0117】
2.12 依存症に関連する疾病、徴候、状態、および症候群
一態様によれば、1以上の本ペプチドは、アルコール消費を阻止もしくはアルコール消費を減少させるため、またはアルコール依存を治療もしくは阻止するため、またはアルコール乱用を治療もしくは阻止するため、またはアルコール関連疾患を治療もしくは阻止するために用いられてよい。別の関連する態様によれば、1以上の本ペプチドは、乱用される薬物の消費を阻止するため、または乱用される薬物の消費を減少させるため、または薬物乱用を治療もしくは阻止するため、または薬物乱用関連疾患を治療もしくは阻止するために用いられてよい。乱用される薬物は、典型的には規制された物質である。これらには、ヘロイン、モルヒネ、アヘン、コカイン、マリファナなどのような規制された天然由来の薬物、ならびにVicodin(登録商標)、Lortab(登録商標)、Lorcet(登録商標)、Percocet(登録商標)、Percodan(登録商標)、Tylox(登録商標)、ハイドロコドン、OxyContin(登録商標)、メサドン、トラマドール、様々なメタンフェタミン、および乱用が知られているその他の精神安定剤、刺激薬、または鎮静剤のような合成された薬物、ならびにエクスタシー、LSD、またはPCPのような医薬としての有用性が確立されていない薬物が含まれる。
【0118】
3.0 特定の徴候に対する併用療法
本発明のペプチド、組成物、および方法は、前述のいずれの疾病、徴候、状態、または症候群、またはメラノコルチン受容体を介するいずれの疾病、徴候、状態、または症候群の治療にも、1以上のその他の薬剤的に有効な化合物と組み合わせて投与することにより使用されてよい。このような組み合わせによる投与には、本発明のペプチドおよび1以上のその他の薬剤的に有効な化合物の両方を含む単一の剤形が用いられてよく、このような単一剤形には、錠剤、カプセル、スプレー、吸入粉末、注射液などが含まれる。あるいは組み合わせによる投与には、一つの剤形が本発明のペプチドを含み、もう一つの剤形が別の薬剤的に有効な化合物を含む、二つの異なる剤形の投与が用いられてよい。この場合、剤形は同じであるかまたは異なってよい。併用療法を限定しようとするものではないが、以下に、用いられてよい特定の併用療法を例証する。
【0119】
3.1 肥満および関連するメタボリック症候群に対する併用療法
1以上の本発明のペプチドは、肥満および/または過体重のような、様々な体重および摂食関連疾患の治療に有用なその他の薬理学的に有効な薬剤、特にエネルギー消費、解糖、糖新生、グリコーゲン分解、脂肪分解、脂質生合成、脂肪吸収、脂肪貯蔵、脂肪排泄、空腹および/または満腹および/または欲求の機構、食欲/動機、食物摂取量、または胃腸運動に影響を及ぼすその他の抗肥満薬の1以上と組み合わせてよい。エネルギー摂取を減少させる薬物には、減量プログラムにおける行動療法の補助として用いられる、食欲低下薬と称される様々な薬理学的な薬剤が部分的に含まれる。
【0120】
一般に、以下に述べる肥満を制御する薬剤または薬物療法の全投薬量は、1以上の本発明のペプチドと組み合わせる際に、単回または2〜4に分割した用量において0.1ないし3,000mg/日、好ましくは約1ないし1,000mg/日、さらに好ましくは約1ないし200mg/日の範囲であってよい。しかしながら正確な用量は担当の医師により決定され、かつ投与する化合物の効力、患者の年齢、体重、状態、および応答のような因子に依存する。
【0121】
1以上の本発明のペプチドは、その他の抗糖尿病薬のような、糖尿病の治療において有用であるその他の薬理学的に有効な薬剤の1以上と組み合わせてよい。
【0122】
1以上の本発明のペプチドは、インスリン抵抗性;耐糖能の障害;2型糖尿病;メタボリック症候群;脂質代謝異常(高脂血症を含む);高血圧症;心疾患(例えば、冠動脈心疾患、心筋梗塞);循環器疾患;非アルコール性脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎を含む);関節疾患(二次性変形性関節症を含む);胃食道逆流;睡眠時無呼吸;アテローム性動脈硬化症;脳卒中;大および小血管疾患;脂肪肝(例えば肝臓における);胆石;および胆嚢疾患のような、肥満および/または過体重に関連する疾病、疾患、および/または状態の治療に有用である、その他の薬理学的に有効な薬剤の1以上に加えて、または代わりに、さらに組み合わせてよい。
【0123】
本発明のさらなる態様によれば組み合わせによる治療が提供され、該組み合わせによる治療は、薬理学的に有効な量の本発明のペプチド、またはその薬剤的に許容される塩と、任意に薬剤的に許容される希釈剤または担体とを、以下:
−インスリンおよびインスリン類似体;
−スルホニル尿素類(例えばグリピジド)およびメグリチニド類(例えばレパグリニドおよびナテグリニド)のような食事のグルコース制御因子(しばしば「短時間作用型の分泌促進剤」と呼ばれる)を含むインスリン分泌促進剤;
−インクレチンの作用を改善する薬剤、例えばジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−4)阻害剤(例えばビルダグリプチン、サクサグリプチン、およびシタグリプチン)、およびグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)アゴニスト(例えばエクセナチド);
−チアゾリジンジオン類(例えばピオグリタゾンおよびロシグリタゾン)のようなペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト、ならびにPPARアルファ、ガンマ、およびデルタ活性のいずれの組み合わせも有する薬剤を含むインスリン感作剤;
−肝臓のグルコースバランスを調節する薬剤、例えばビグアナイド類(例えばメトホルミン)、フルクトース1,6−ビスホスファターゼ阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グリコーゲン合成酵素キナーゼ阻害剤、およびグルコキナーゼ活性化剤;
−アルファグルコシダーゼ阻害剤(例えばミグリトールおよびアカルボース)のような、腸からのグルコース吸収を減少/遅延させるために設計された薬剤;
−アミリン類似体(例えばプラムリンチド)のような、グルカゴンの作用に拮抗するかまたはその分泌を減少させる薬剤;
−ナトリウム依存性グルコース輸送体2(SGLT−2)阻害剤(例えばダパグリフロジン)のような、腎臓によるグルコースの再吸収を阻止する薬剤;
−アルドース還元酵素阻害剤(例えばエパルレスタットおよびラニレスタット)のような、長期にわたる高血糖症の合併症を治療するために設計された薬剤;および微小血管障害に関連する合併症の治療に用いられる薬剤;
−HMG−CoA還元酵素阻害剤(スタチン類、例えばロスバスタチン)およびその他のコレステロール低下剤のような、抗脂質代謝異常剤;PPARαアゴニスト(フィブラート類、例えばジェムフィブロジルおよびフェノフィブラート);胆汁酸捕捉剤(例えばコレスチラミン);コレステロール吸収阻害剤(例えば植物ステロール類(すなわちフィトステロール類)、合成阻害剤);コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤;回腸胆汁酸輸送系の阻害剤(IBAT阻害剤);胆汁酸結合樹脂;ニコチン酸(ナイアシン)およびその類似体;プロブコールのような抗酸化剤;およびオメガ3脂肪酸類;
−ベータ遮断薬(例えばアテノロール)、アルファ遮断薬(例えばドキサゾシン)、および混合アルファ/ベータ遮断薬(例えばラベタロール)のようなアドレナリン受容体アンタゴニストを含む降圧剤;アルファ2アゴニスト(例えばクロニジン)を含むアドレナリン受容体アゴニスト;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えばリシノプリル)、ジヒドロピリジン類(例えばニフェジピン)、フェニルアルキルアミン類(例えばベラパミル)、およびベンゾジアゼピン類(例えばジルチアゼム)のようなカルシウムチャネル遮断薬;アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えばカンデサルタン);アルドステロン受容体アンタゴニスト(例えばエプレレノン);中枢性アルファアゴニスト(例えばクロニジン)のような、中枢性に作用するアドレナリン作動薬;および利尿薬(例えばフロセミド);
−線溶の活性化因子のような抗血栓薬を含む止血修飾薬;トロンビンアンタゴニスト;第VIIa因子阻害剤;ビタミンKアンタゴニスト(例えばワルファリン)、ヘパリンおよびその低分子量類似体、第Xa因子阻害剤、および直接トロンビン阻害剤(例えばアルガトロバン)のような抗凝固剤;シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばアスピリン)、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤(例えばクロピドグレル)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばシロスタゾール)、糖タンパク質IIB/IIA阻害剤(例えばチロフィバン)、およびアデノシン再取り込み阻害剤(例えばジピリダモール)のような抗血小板剤;
−ノルアドレナリン作動薬(例えばフェンテルミン)およびセロトニン作動薬(例えばシブトラミン)を含む食欲抑制剤(例えばエフェドリン)、膵臓リパーゼ阻害剤(例えばオルリスタット)、ミクロソーム転送タンパク質(MTP)修飾薬、ジアシルグリセロールアシル転移酵素(DGAT)阻害剤、およびカンナビノイド(CB1)受容体アンタゴニスト(例えばリモナバン)のような抗肥満薬;
−オレキシン受容体修飾薬およびメラニン凝集ホルモン(MCH)修飾薬のような摂食行動修正剤;
−グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)受容体修飾剤;
−ニューロペプチドY(NPY)/NPY受容体修飾剤;
−ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ(PDK)修飾剤;
−セロトニン受容体修飾剤;
−レプチン/レプチン受容体修飾剤;
−グレリン/グレリン受容体修飾剤;または
−選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(例えばフルオキセチン)、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NARI)、ノルアドレナリン−セロトニン再取り込み阻害剤(SNRI)、トリプルモノアミン再取り込み阻害薬(例えばテソフェンシン)、およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)(例えばトロキサトンおよびアミフラミン)のようなモノアミン伝達修飾薬、
から選択される薬剤、または薬剤的に許容される塩、溶媒和物、このような塩の溶媒和物またはそのプロドラッグの1以上と、任意に哺乳類、例えばヒトに対して薬剤的に許容される担体とを、このような治療上の処置に応じて、同時に、連続して、または別々に投与することを含んでなる。
【0124】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による薬理学的に有効な量の化合物、またはその薬剤的に許容される塩と、任意に薬剤的に許容される担体とを、超低熱量の食餌(VLCD)または低熱量の食餌(LCD)と同時に、連続して、または別々に投与することを含んでなる、組み合わせによる治療が提供される。
【0125】
3.2 性的機能不全に対する併用療法
本発明の環状ペプチドを、性的機能不全の治療に対するような、その他の薬物または薬剤と組み合わせて使用することも可能であり、かつ意図される。これらのその他の薬物および薬剤には、ホスホジエステラーゼ−5(PDE−5)阻害剤、テストステロン、プロスタグランジンなどを含む、勃起活性を誘導する薬剤が含まれてよい。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の環状ペプチドは、治療上有効な量の環状−GMP−特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤またはアルファアドレナリン受容体アンタゴニストとの組み合わせにおいて用いられる。「性的機能不全に対する多剤治療法(Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction)」と題する米国特許第7,235,625号の教示および開示は、その全体が説明されるかのように、参照により本明細書に取り込まれる。
【0126】
従って本発明は性的機能不全を治療するための方法を提供し、該方法は、性的機能不全を有するかまたは有する危険性がある患者に、治療上有効な量の本発明の環状ペプチドを、治療上有効な量の第2の性的機能不全医薬品と組み合わせて投与する工程を含んでなる。本発明の環状ペプチドは、治療上有効な量の第2の性的機能不全医薬品と同時に、その前またはその後に投与されてよい。好ましくは、本発明のペプチドは、治療上有効な量の第2の性的機能不全医薬品の投与から1時間以内、好ましくは30分未満に投与される。しかしながら、例えば治療上有効な量のホルモンまたはホルモン関連の性的機能不全医薬品との組み合わせのような、併用療法の特定の型については、ホルモンまたはホルモン関連の性的機能不全医薬品は独立した予定により投与されてよく、本発明のペプチドと、ホルモンまたはホルモン関連の性的機能不全医薬品の投与との間に設定、または特定の時間的な関連性はない。従って例えば、ホルモンまたはホルモン関連の性的機能不全医薬品は、患者が希望または必要とする際に、一日量またはその他の用量で、またはパッチもしくはその他の連続的な投与計画により、本発明のペプチドの投与と共に投与されてよい。
【0127】
従って本発明は性的機能不全を治療するための方法を提供し、該方法は、性的機能不全を有するかまたは有する危険性がある患者に、治療上有効な量の本発明の環状ペプチドを、性的機能不全の治療に有用な別の化合物と組み合わせて投与する工程を含んでなる。併用療法の好ましい実施形態によれば、性的機能不全は女性の性的機能不全である。併用療法の特に好ましい実施形態によれば、性的機能不全は勃起不全である。
【0128】
本発明はまた、本発明の環状ペプチドおよび性的機能不全の治療に有用な第2の化合物を含んでなる医薬組成物も提供する。組成物の実施形態によれば、性的機能不全の治療に有用な追加の化合物は、好ましくは、ホスホジエステラーゼ阻害剤;環状−GMP−特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤;プロスタグランジン;アポモルヒネ;オキシトシン修飾剤;α−アドレナリンアンタゴニスト;アンドロゲン;選択的アンドロゲン受容体修飾剤(SARM);ブプロピオン;血管作用性小腸ペプチド(VIP);中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEP);およびニューロペプチドY受容体アンタゴニスト(NPY)からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0129】
方法および組成物の一実施形態によれば、第2の性的機能不全医薬品はテストステロンである。
【0130】
併用療法の別の実施形態によれば、第2の性的機能不全医薬品はV型ホスホジエステラーゼ(PDE−5)阻害剤である。例えばPDE−5阻害剤は、シルデナフィルの商標であるViagra(登録商標)、バルデナフィル一塩酸塩の商標であるLevitra(登録商標)、またはタダラフィルの商標であるCialis(登録商標)であってよい。その他のPDE−5阻害剤については、参照により本明細書に取り込まれる、「性的機能不全に対する多剤治療法(Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction)」と題する、2007年6月22日に付与された米国特許第7,235,625号に開示されている。
【0131】
上記組成物の別の実施形態によれば、性的機能不全の治療に有用な化合物は、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストである。一実施形態によれば、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは(−)−シス−6−フェニル−5−[−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−オール(ラソフォキシフェンとしても知られる)、またはその光学異性体もしくは幾何異性体;その薬剤的に許容される塩、N−オキシド、エステル、四級アンモニウム塩;またはプロドラッグである。さらに好ましくは、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストはD−酒石酸塩の形である。
【0132】
上記組成物のさらに別の実施形態によれば、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、タモキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、セントクロマン、イドキシフェン、6−(4−ヒドロキシ−フェニル)−5−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−ベンジル]−ナフタレン−2−オール、{4−[2−(2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)−エトキシ]−フェニル}−[6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル]−メタノン、EM−652、EM−800、GW5368、GW7604、TSE−424、およびそれらの光学異性体または幾何異性体;ならびにそれらの薬剤的に許容される塩、N−オキシド、エステル、四級アンモニウム塩、およびプロドラッグからなる群より選択される。
【0133】
さらに別の実施形態によれば、本発明の環状ペプチドは、既知のいずれの機械的な補助物または装置とも組み合わせて使用してよい。
【0134】
本発明はまた、性的機能不全(勃起不全を含む)を治療するためのキットも提供し、該キットは:本発明の環状ペプチドを含む第1の医薬組成物;性的機能不全の治療に有用である第2の化合物を含んでなる第2の医薬組成物;ならびに第1および第2の組成物のための容器を含んでなる。
【0135】
4.0 投与および使用の方法
投与および使用の方法は、本発明の特定のペプチドの特性、治療される疾病、徴候、状態、または症候群、および当業者に公知であるその他の因子に依存して変動する。一般に、当該技術分野において公知であるかまたは今後開発される投与のいずれの方法も、本発明のペプチドによって使用されてよい。前述したことを限定しようとするものではないが、以下の投与および使用の方法は、指示される徴候に対する特定の応用を有する。
【0136】
4.1 肥満および関連するメタボリック症候群に対する投与ならびに使用の方法
1以上の本発明のペプチドを含む組成物は、肥満およびメタボリック症候群の、予防法を含む治療法に適したいずれの手段によっても投与されてよい。一態様によれば、組成物は皮下注射のために処方され、皮下注射は1日に1回以上、好ましくは食前、さらに好ましくは食前約1時間ないし約3時間に投与される。別の態様によれば、組成物は注射用の持続放出製剤として処方される。一実施形態によれば本発明のペプチドは、ポリエチレングリコール3350のようなポリエチレングリコール、および任意に、塩、ポリソルベート80、pH調整のための水酸化ナトリウムまたは塩酸などのような賦形剤を含むがこれらに限定されない、1以上のさらなる賦形剤および保存料と共に処方される。別の実施形態によれば本発明のペプチドは、重合体骨格中の乳酸がいずれの可変パーセンテージでもある自己触媒型ポリ(オルトエステル)であってよい、ポリ(オルトエステル)、および任意に1以上のさらなる賦形剤と共に処方される。一実施形態によれば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマー(PLGAポリマー)、好ましくはBoehringer Ingelheim,Inc.(インゲルハイム、独国)から市販されるPLGA RG502Hのような、親水性末端基を有するPLGAポリマーが用いられる。このような製剤は、例えば、本発明のペプチドをメタノールのような適した溶媒中でPLGAの塩化メチレン溶液と合わせ、反応器内で適切に撹拌しながら、そこへポリビニルアルコールの連続相溶液を加えることにより作られてよい。一般に、接着性ポリマーでもある幾つかの注射用および生分解性のポリマーのいずれも、持続放出注射剤に用いられてよい。米国特許第4,938,763号、第6,432,438号、および第6,673,767号の教示、ならびにそれらに開示される生分解性ポリマーおよび製剤方法は、参照により本明細書に取り込まれる。製剤は、ペプチドの濃度および量、ポリマーの生分解速度、および当業者に公知であるその他の因子に依存して、週1回、月1回、またはその他の定期的な基準で注射が必要とされてよい。
【0137】
1以上の本発明のペプチドを含む組成物は、錠剤またはカプセルのような個々の剤形によって経口投与されてよい。好ましい一態様によれば、個々の剤形には、腸溶コーティング、および任意に、取り込みの増大、プロテアーゼによる分解の減少、細胞透過性の増大などのための1以上の薬剤が含まれる。
【0138】
4.2 性的機能不全に対する投与および使用の方法
性的機能不全に対する好ましい態様によれば、1以上の本発明のペプチドは、予想される性的行動の前の、約1時間未満、2時間未満、または約4時間未満であるような、応需型に投与され得るように処方される。一実施形態によれば、組成物は皮下注射のために処方される。別の実施形態によれば、組成物は、頬への投与、経鼻投与、吸入投与などを含む、様々な経皮経路による投与のいずれのためにも処方される。特に好ましいのは、組成物が、透過性増強剤を含む様々なその他の薬剤のいずれも含む、約20ないし約200μLの量の水性組成物を送達する定量スプレー装置を用いるような、経鼻投与のために処方される実施形態である。
【0139】
4.3 循環性ショックならびに関連する疾病、徴候、状態、および症候群に対する、投与および使用の方法
さらに別の態様によれば、本発明は、1以上の本発明のペプチドを含む医薬組成物の投与前および投与後の両方に、被験体の循環性ショックの症状をモニターすることを任意に含む方法を含む。従って被験体は、循環性ショックを誘導すると思われるが、ステージI、ステージIl、またはステージIIIにおける循環性ショックが現れる前を含む、心血管性ショックの明らかな症状が現れる前である傷害を被った後に、本発明の方法のうちの一つによって、1以上の本発明のペプチドを投与されてよい。
【0140】
本明細書に記載される、ショックを治療または阻止するための方法は、治療上有効な量の1以上の本発明のペプチドを被験体に投与することを含んでなる。本明細書で用いられる「投与する」および「投与している」の語は、1以上の本発明のペプチドを患者に導入することを意味する。投与の目的が治療である際、1以上の本発明のペプチドは、ショック症状の発生時、またはその後に与えられる。1以上の本発明のペプチドの治療上の投与は、いずれの症状の源弱、または生じるさらなる症状の阻止にも役立つ。投与の目的がショックの阻止である際(「予防的投与」)、1以上の本発明のペプチドは、いずれの目に見えるかまたは検出できる症状の前に与えられる。1以上の本発明のペプチドの予防的投与は、続いて生じる症状の源弱、または一斉に生じる症状の阻止に役立つ。1以上の本発明のペプチドの投与経路には、外用、経皮、鼻腔内、膣、直腸、経口、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、骨内、腹腔内、硬膜外、および髄腔内が含まれるがこれらに限定されない。
【0141】
さらに、循環性ショックを治療または阻止する本発明の方法は、1以上の本発明のペプチドに加えて、1以上の物質を患者に同時投与することにも関する。「同時投与する」の語は、少なくとも二つの化合物のそれぞれを、生物学的活性または効果のそれぞれの期間が重複する時間枠の間に投与することを示す。従ってこの語には、一つの化合物が1以上の本発明のペプチドである化合物の連続投与および併用投与が含まれる。1を超える化合物が同時投与される場合には、2以上の化合物の投与経路が同じである必要はない。本発明の範囲は、同時投与され得る化合物の同一性によって限定されない。例えば1以上の本発明のペプチドは、アンドロステントリオール、アンドロステンジオール、もしくはそれらの誘導体、様々なバソプレシンアゴニスト、またはエピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、イソプロテレノール、バソプレシン、およびドブタミンを含むがこれらに限定されない、カテコールアミン、またはその他のαアドレナリンアゴニスト、αアドレナリンアゴニスト、βアドレナリンアゴニスト、もしくはβアドレナリンアゴニストのような、その他の薬剤的に活性のある物質と共に同時投与されてよい。あるいは、1以上の本発明のペプチドは、血液量減少性ショック、血管拡張性ショック、または心原性ショックを患い、それらの症状を呈するかまたはそれらを患う危険性がある被験体において、症状を緩和し、源弱し、阻止するか、もしくは除去することのできる液体またはその他の物質と共に同時投与されてよい。1以上の本発明のペプチドと共に同時投与できる液体の型は、ショックを患い、その症状を呈するかまたはそれを患う危険性がある特定の被験体を取り巻く環境に特異的でなければならない。例えば、1以上の本発明のペプチドと共に同時投与されてよい液体には、塩化ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムのような塩溶液、ならびに全血、代用の合成血液、血漿、血清、血清アルブミンおよびコロイド溶液が含まれるがこれらに限定されない。コロイド溶液には、ヘタスターチ、アルブミン、または血漿を含む溶液が含まれるがこれらに限定されない。本発明の特定の一実施形態によれば、塩溶液、コロイド溶液、全血、代用の合成血液、血漿、または血清のうち1以上のような液体が、1以上の本発明のペプチドと共に、出血性ショックのような血液量減少性ショックを患うか、またはその症状を呈する患者に投与される。
【0142】
本発明の同時投与法の特定の実施形態には、1以上の本発明のペプチドを含んでなる血液または代用の合成血液を被験体に供給することを含んでなる輸血方法による、被験体に輸血を行うための方法が含まれる。輸血方法に用いられる血液は、全血、代用の合成血液、または血漿、血清、もしくは赤血球のような、全血の分取された部分のいずれであってもよい。
【0143】
4.4 循環性ショック、ならびに関連する疾病、徴候、状態、および症候群の予防療法に対する、投与および使用の方法
本発明はまた、ショックの最初の症状が発生する前または発生時直ちに、被験者へ治療上有効な量の1以上の本発明のペプチドを投与することによる、ショックを患う危険性がある被験者におけるショックを阻止、またはショックの進行を阻止する方法にも関する。本明細書で用いられる「阻止」の語は、それがショックに関する場合、1以上のショックの症状が検出可能な程度に出現することを妨げるため、または1以上のショックの症状の効果を源弱させるために、本発明の物質を被験体に投与することを示す。「阻止」の語は、ショックまたはそれに関連するいずれの症状も、検出可能な程度に出現することを完全に妨げることもまた包含する。従って、生じるショックを阻止するために本発明の物質を用いることにより、外科的な設定における被験体のような被験体が「前処置」されてよい。「進行を阻止する」の句は、それがショックに関する場合、1以上のショックの症状を既に示している患者に、1以上のさらなる症状が検出可能な程度に出現することを妨げるために設計された手順を意味するために用いられ、かつ既に存在するショックの症状が、被験体において悪化することを妨げることを意味するためにも用いられる。本発明の阻止的方法に含まれるショックの症状には、頻拍、浅いかまたは不規則な呼吸、および死のような、本明細書で強調されるショックの症状が含まれるがこれらに限定されない。「ショックの危険性がある」被験体は、被験体を取り巻く特定の環境に基づいて認識され得る。例えば、手術を受ける患者、または傷を負って血液を失い始めている被験体はショックの危険性があり得る。同様に、細菌に感染して発熱または低血圧を示している患者もまた、ショックまたは炎症性疾患もしくは炎症性状態の危険性があり得る。
【0144】
本発明のさらなる実施形態によれば、本方法は、それぞれが前述の三つのいずれのショックのステージであってもよい、心原性ショック、血液量減少性ショック、および血管拡張性ショックを阻止するために用いられる。本発明の特定の一実施形態によれば、本方法は心原性ショックを阻止するために用いられる。本発明の別の特定の実施形態によれば、本方法は血管拡張性ショックを阻止するために用いられる。本発明の別のさらなる特定の実施形態によれば、本方法は、敗血症または菌血症からもたらされるショックを阻止するために用いられる。さらなる特定の実施形態によれば、本発明の方法は、ステージI、II、もしくはIIIショックの敗血症性ショックまたは菌血症性ショックを阻止するために用いられる。さらに別の実施形態によれば、本発明の方法は、血液量減少性ショックを阻止するために用いられる。本発明の特定の一実施形態によれば、本方法は、出血性ショックを阻止するために用いられる。さらなる特定の実施形態によれば、本方法は、ステージI、II、またはIIIの出血性ショックを阻止するために用いられる。
【0145】
本明細書に記載されるショックを治療するための方法と同じように、本発明のショックを阻止するための方法の一実施形態は、別の物質を1以上の本発明のペプチドまたはその誘導体と共に同時投与することを含んでなる。本発明の範囲は、ショックを阻止するために1以上の本発明のペプチドと共に同時投与され得る物質の同一性によって限定されない。例えば1以上の本発明のペプチドは、アンドロステントリオール、アンドロステンジオール、もしくはそれらの誘導体、様々なバソプレシンアゴニスト、またはエピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、イソプロテレノール、バソプレシン、およびドブタミンを含むがこれらに限定されない、カテコールアミン、またはその他のαアドレナリンアゴニスト、αアドレナリンアゴニスト、βアドレナリンアゴニスト、もしくはβアドレナリンアゴニストのような、その他の薬剤的に活性のある物質と共に、ショックを阻止するために同時投与されてよい。
【0146】
あるいは、1以上の本発明のペプチドは、血液量減少性ショック、血管拡張性ショック、または心原性ショックを患う危険性がある被験体において、症状を阻止するか、もしくは除去することのできる液体またはその他の物質と共に同時投与されてよい。ショックを阻止するために、1以上の本発明のペプチドと共に同時投与できる液体の型は、ショックを患う危険性がある特定の被験体を取り巻く環境に特異的でなければならない。例えば、1以上の本発明のペプチドと共に同時投与されてよい液体には、塩化ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムのような塩溶液、ならびに全血、代用の合成血液、血漿、血清、血清アルブミンおよびコロイド溶液が含まれるがこれらに限定されない。コロイド溶液には、ヘタスターチ、アルブミン、または血漿を含む溶液が含まれるがこれらに限定されない。本発明の特定の一実施形態によれば、塩溶液、コロイド溶液、全血、代用の合成血液、血漿、または血清のうち1以上を含む液体が、1以上の本発明のペプチドまたはその誘導体と共に、出血性ショックのような血液量減少性ショックを患う危険性がある被験体に投与される。
【0147】
4.5 炎症に関連する応用、疾病、徴候、状態、および症候群に対する、投与ならびに使用の方法
さらに別の態様によれば、本発明は、1以上の本発明のペプチドの投与前および投与後の両方に、被験体の炎症、炎症性疾患、または炎症性状態の徴候もしくは症状をモニターすることを任意に含む方法を含む。従って被験体は、炎症性応答を誘導すると思われるが、炎症、炎症性疾患、または炎症性状態の明らかな症状が現れる前である状態、疾病、または症候群の診断後に、本発明の方法のうちの一つによって、1以上の本発明のペプチドを投与されてよい。本明細書に記載される、炎症、炎症性疾患、または炎症性状態を治療または阻止するための方法は、治療上有効な量の1以上の本発明のペプチドを被験体に投与することを含んでなる。本明細書で用いられる「投与する」および「投与している」の語は、少なくとも1の化合物を被験体に導入することを意味する。投与の目的が治療である際、物質は、炎症、炎症性疾患、または炎症性状態の徴候または症状の発生時、またはその後に与えられる。この物質の治療上の投与は、いずれの症状の源弱、または生じるさらなる症状の阻止にも役立つ。投与が、炎症、炎症性疾患、もしくは炎症性状態の阻止または制限を目的とする予防的投与である場合、1以上の本発明のペプチドを含む医薬組成物は、いずれの目に見えるかまたは検出できる症状の前に与えられる。1以上の本発明のペプチドの予防的投与は、続いて生じる症状の源弱、または一斉に生じる症状の阻止に役立つ。1以上の本発明のペプチドの投与経路には、外用、経皮、鼻腔内、膣、直腸、経口、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、骨内、腹腔内、硬膜外、および髄腔内が含まれるがこれらに限定されない。
【0148】
4.6 眼疾患、徴候、状態、および症候群に対する、投与ならびに使用の方法
眼へ応用するための一態様によれば、1以上の本発明のペプチドは眼科用剤形に処方され、点眼剤、洗眼剤の形により、またはその他の眼科用送達系を用いて投与される。
【0149】
4.7 出血性または外傷性ショックに対する投与のための装置
特定の態様によれば、特別な装置が、1以上の本発明のペプチドを含む医薬組成物の送達および投与のために提供されてよい。従って一態様によれば、プレフィルドシリンジは、戦場での外傷の治療のような戦場における救急処置のための軍隊での応用における使用、または外傷の犠牲者に対処する救急救命士による使用に対して応用されてよい。プレフィルドシリンジには、医薬組成物が使用前に直ちに再構成され得るように、1以上の本発明のペプチドおよび水可溶化成分を含む凍結乾燥成分が含まれてよい。得られる再構成された医薬組成物は、等張溶液または高張溶液であり得る。関連する態様によれば、プレフィルドシリンジが実質的に分解することなく、室温のような周囲温度にて特定の期間保管され得るように、プレフィルドシリンジには、溶液中の1以上の本発明のペプチドと共に1以上の保存料または安定剤を含む医薬組成物が含まれてよい。
【0150】
5.0 作製方法
一般に本発明のペプチドは、固相合成によって合成され、当該技術分野において公知の方法に従って精製されてよい。様々な樹脂および試薬を用いる幾つかの公知の手順のいずれも、本発明のペプチドを調製するために用いられてよい。
【0151】
本発明の環状ペプチドは、アミノ酸間のペプチド結合形成のための公知の従来の手順によって容易に合成され得る。このような従来の手順には、例えば、そのカルボキシル基およびその他の反応基が保護されたアミノ酸またはその残基の遊離アルファアミノ基と、そのアミノ基もしくはその他の反応基が保護された別のアミノ酸またはその残基の第1遊離カルボキシル基との間の縮合を可能にする、いずれの溶液相手順も含まれる。好ましい従来の手順によれば、本発明の環状ペプチドは固相合成によって合成され、当該技術分野において公知の方法に従って精製されてよい。様々な樹脂および試薬を用いる幾つかの公知の手順のいずれも、本発明のペプチドを調製するために用いられてよい。
【0152】
環状ペプチド合成のための過程は、望ましい配列内の各アミノ酸を、一つずつ連続して別のアミノ酸またはその残基に加える手順によって、または、まず望ましいアミノ酸配列を有するペプチド断片を従来法で合成し、次に望ましいペプチドを得るために縮合する手順によって実行されてよい。得られたペプチドは、次に本発明の環状ペプチドを産生するために環化される。
【0153】
固相ペプチド合成法は、当該技術分野において公知であり、かつ実行されている。このような方法において、本発明のペプチドの合成は、固相法の一般的な原則に従って望ましいアミノ酸残基を一つずつ伸長しているペプチド鎖へ連続して取り込ませることにより行うことができる。このような方法は、Merrifield,R.B.,Solid phase synthesis(Nobel lecture).Angew Chem 24:799−810(1985)およびBarany et al.,The Peptides,Analysis,Synthesis and Biology,Vol.2,Gross,E.およびMeienhofer,J.,Eds.Academic Press 1−284(1980)を含む多数の参考文献中に開示される。
【0154】
ペプチドの化学合成において、様々なアミノ酸残基の反応性側鎖基は適切な保護基によって保護され、これにより、保護基が除去されるまでその場で起こる化学反応が阻止される。あるものがカルボキシル基と反応する間にアミノ酸残基または断片のアルファアミノ基を保護し、続いて次の反応がその場で起こることが可能になるように、アルファアミノ保護基を選択的に除去することもまた一般的である。固相合成法および溶液相合成法において特定の保護基が開示され、公知である。
【0155】
アルファアミノ基は、ウレタン型保護基、例えばベンジルオキシカルボニル(Z)ならびにp−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ビフェニル−イソプロポキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)およびp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)のような置換ベンジルオキシカルボニル、ならびに脂肪族ウレタン型保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルおよびアリルオキシカルボニル(Alloc)を含む、適切な保護基によって保護されてよい。アルファアミノ保護にはFmocが好ましい。
【0156】
グアニジノ基は、ニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルホニル(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)、およびBocのような適切な保護基によって保護されてよい。Argの保護基にはPbfおよびPmcが好ましい。
【0157】
本明細書に記載される本発明のペプチドは、固相合成を用いることにより、例えば製造者により提供されるプログラミングモジュールを用い、製造者の使用説明書に示されるプロトコルに従ってSymphony Multiplex Peptide Synthesizer(Rainin Instrument Company)自動ペプチド合成装置を用いることにより調製された。
【0158】
固相合成は、保護アルファアミノ酸を適切な樹脂にカップリングすることにより、ペプチドのC末端から開始される。このような出発物質は、アルファアミノ保護アミノ酸をエステル結合によってp−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂、2−クロロトリチルクロリド樹脂、またはオキシム樹脂へ結合させることによって、p−[(R,S)−α−[1−(9H−フルオレン−9−イル)−メトキシホルムアミド]−2,4−ジメチルオキシベンジル]−フェノキシ酢酸(リンクリンカー)のようなFmocリンカーの、ベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂へのアミド結合によって、または当該技術分野において公知のその他の手段によって調製される。Fmoc−リンカー−BHA樹脂支持体は市販されており、一般にそれが適している際に用いられる。樹脂は、アミノ酸を連続的に加えるため、必要に応じて反復するサイクルの間じゅう持ち越される。アルファアミノFmoc保護基は、基本的な条件下で除去される。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のピペリジン、ピペラジン、ジエチルアミン、またはモルホリン(20〜40%v/v)が、この目的のために用いられてよい。
【0159】
アルファアミノ保護基の除去後、次の保護アミノ酸を望ましい順序で段階的に結合させ、中間体である保護ペプチド−樹脂を得る。ペプチドの固相合成においてアミノ酸のカップリングに用いられる活性化剤は、当該技術分野において公知である。ペプチド合成後、必要に応じ、オルトゴナルに保護された側鎖保護基は、当該技術分野において公知の方法を用いて、ペプチドのさらなる誘導体化のために除去されてよい。
【0160】
典型的には、オルトゴナルな保護基は必要に応じて用いられる。例えば本発明のペプチドは、アミノ基含有側鎖を有する複数のアミノ酸を含む。一態様によれば、Allyl−Alloc保護のスキームが、それらの側鎖を通してラクタム橋を形成するアミノ酸、およびアミノ基含有側鎖を有するその他のアミノ酸の使用のために用いられる異なる反応条件下で切断可能である、オルトゴナルな保護基によって用いられる。従って例えば、Fmoc−Lys(Alloc)−OH、Fmoc−Orn(Alloc)−OH、Fmoc−Dap(Alloc)−OH、Fmoc−Dab(Alloc)−OH、Fmoc−Asp(OAll)−OH、またはFmoc−Glu(OAll)−OHアミノ酸は、環化によりラクタム橋を形成する位置に用いることができるが、アミノ基含有側鎖を有するその他のアミノ酸は、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Lys(Pbf)−OH、Fmoc−Dab(Pbf)−OHなどによる、異なるオルトゴナルな保護基を有する。その他の保護基も同様にもちいられてよく;限定はされないが、例として、Mtt/OPp(4−メチルトリチル/2−フェニルイソプロピル)が、環化によりラクタム橋を形成する側鎖に用いられ、Mtt/OPpの切断に適した条件では切断されないその他の位置にオルトゴナルな保護基が用いられる。
【0161】
ペプチド内の反応基は、固相合成の間かまたは樹脂の除去後に選択的に修飾することができる。例えばペプチドは、樹脂上にある間に、アセチル化のような末端の修飾を得るために修飾することができるか、または切断試薬を用いて樹脂から除去され、次に修飾されてよい。同様に、アミノ酸の側鎖を修飾する方法はペプチド合成の当業者に公知である。ペプチドに存在する反応基になされる改変の選択は、ペプチドに望まれる特性によって部分的に決定され得る。
【0162】
本発明のペプチドにおける一実施形態によれば、N末端基はN−アセチル基の導入によって改変される。一態様によれば、N末端の保護基を除去した後で、樹脂に結合したペプチドが、ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンのような有機基の存在下で、DMF中の無水酢酸と反応する方法が用いられる。溶液相アセチル化を含む、N末端アセチル化のその他の方法が当該技術分野において公知であり、用いられてよい。
【0163】
一実施形態によれば、ペプチドは、ペプチド樹脂から切断される前に環化されてよい。反応性の側鎖部分を通した環化のために、望ましい側鎖が脱保護され、ペプチドを適切な溶媒中に懸濁して環状カップリング試薬が添加される。適切な溶媒には、例えばDMF、ジクロロメタン(DCM)、または1−メチル−2−ピロリドン(NMP)が含まれる。適切な環状カップリング試薬には、例えば2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TATU)、2−(2−オキソ−1(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TPTU)、またはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)が含まれる。カップリングは、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、sym−コリジン、またはN−メチルモルホリン(NMM)のような適切な塩基を用いて、従来法により開始される。
【0164】
橋:
−(CH−NH−C(=O)−(CH−C(=O)−NH−(CH−、
(式中、x、y、およびzはそれぞれ独立して1ないし5を表す)を含むペプチドのような非ラクタム環状橋を有するペプチドに対しては、ペプチドは、環化される位置に側鎖が保護されたジアミンアミノ酸を用いる固相合成によって作製されてよい。このような位置には、好ましくはAlloc、Mtt、Mmt(メトキシトリチル)、Dde(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン))エチル)、ivDde(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチル)またはその他のオルトゴナルに切断される保護基のようなアミン保護基を有する、Dap、Dab、またはLysが特に好ましい。典型的には、ジクロロメタン中の2%TFAを用いるMttの除去のように、最初に側鎖保護基の一つが除去される。樹脂の洗浄に続き、得られた樹脂結合の無保護アミンを、例えば、ジクロロメタン/ピリジン1:1中の無水コハク酸またはグルタル酸無水物のような、環状無水物の0.5M溶液によりアシル化する。さらなる洗浄工程に続き、二番目のジアミノアミノ酸のオルトゴナルに切断される保護基が、例えば、ジクロロメタン中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)およびフェニルシランを用いるAllocの除去のように、切断される。ジクロロメタンおよびDMFによる洗浄後、樹脂に結合したペプチドを、TBTUおよび塩基のような標準のカップリング試薬を用いて環化する。あるいは、ivDde保護の樹脂結合ジアミノアミノ酸は、DMF中の5%ヒドラジン溶液を用いて脱保護することができ、DMFによる洗浄後に得られた樹脂結合アミンは、環状無水物によりアシル化できるか、または樹脂結合カルボン酸により環化することができる。
【0165】
環化されたペプチドは、次に、DCM中のエチルアミン、またはトリフルオロ酢酸(TFA)、トリ−イソプロピルシラン(TIS)、ジメトキシベンゼン(DMB)、水などのような薬剤の様々な組み合わせのような、いずれの適切な試薬を用いても固相から切断できる。得られた未精製のペプチドを乾燥させ、残りのアミノ酸側鎖保護基があれば、水の存在下での(TFA)、TIS、2−メルカプトエタン(ME)、および/または1,2−エタンジチオール(EDT)のような、いずれかの適切な試薬を用いて切断される。冷たいエーテルを加えて最終産物を沈殿させ、濾過により回収する。最終精製は、C18カラムのような適切なカラムを用いる逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によるか、またはペプチドの電荷の大きさに基づく方法のような、分離または精製のその他の方法も用いることができる。一旦精製すると、ペプチドは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アミノ酸分析、マススペクトロメトリーなどのような幾つかの方法のいずれを用いても特徴付けることができる。
【0166】
C末端の置換アミド誘導体またはN−アルキル基を有する本発明のペプチドのための合成は、保護アルファアミノ酸を適切な樹脂にカップリングすることにより、ペプチドのC末端から開始される固相合成により進行され得る。固相上で置換アミド誘導体を調製するためのこのような方法は、当該技術分野において記載されている。例えば、Barn D.R.et al.,Synthesis of an array of amides by aluminum chloride assisted cleavage on resin bound esters.Tetrahedron Letters,37:3213−3216(1996);DeGrado W.F.and Kaiser E.T.,Solid−phase synthesis of protected peptides on a polymer bound oxime:Preparation of segments comprising the sequences of a cytotoxic 26−peptide analogue.J.Org.Chem.,47:3258−3261(1982)を参照されたい。このような出発物質は、公知の手段を用いて、アルファアミノ保護アミノ酸をエステル結合によりp−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂またはオキシム樹脂へ結合させることによって調製できる。ペプチド鎖はアミノ酸の望ましい配列によって伸張し、ペプチドは環化され、ペプチド−樹脂は適切なアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミンなど)により処理される。p−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂を用いるペプチドは、DCM中の塩化アルミニウムによって切断される可能性があり、オキシム樹脂を用いるペプチドは、DCMによって切断され得る。
【0167】
合成については主に固相Fmoc化学に関して記載してきたが、本発明の環状ペプチド作製のためにはその他の化学および合成法、限定はされないが例として、Boc化学、溶液化学、ならびにその他の化学および合成法を用いる方法が用いられてよいことが理解されなければならない。
【0168】
6.0 製剤
望ましい投与経路に応じ、1以上の本発明の環状ペプチドを含む組成物の製剤は多様であってよい。従って製剤は、皮下注射、または静脈注射、外用、眼への使用、経鼻スプレーへの使用、吸入への使用、その他の経皮的使用などに対して適し得る。
【0169】
6.1 塩の形である本発明の環状ペプチド
本発明の環状ペプチドは、いずれの薬剤的に許容される塩の形であってもよい。「薬剤的に許容される塩」の語は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む、薬剤的に許容される無毒性の塩基または酸から調製される塩を指す。塩由来の無機塩基には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。アンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウム塩が特に好ましい。薬剤的に許容される有機無毒性塩基由来の塩には、一級、二級、および三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、およびアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどのような塩基イオン交換樹脂の塩が含まれる。
【0170】
本発明の環状ペプチドが塩基性である場合、酸付加塩は、無機および有機酸を含む、薬剤的に許容される無毒性の酸から調製されてよい。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが含まれる。本発明のペプチドの酸付加塩は、ペプチドおよび過剰の酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、またはメタンスルホン酸に適した溶媒中で調製される。酢酸塩、酢酸アンモニウム、およびトリフルオロ酢酸塩の形は特に有用である。本発明のペプチドが酸性部分を含む場合、適切な薬剤的に許容される塩には、ナトリウムもしくはカリウム塩のようなアルカリ金属塩類、またはカルシウムもしくはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩類が含まれてよい。式(I)で表される特定のペプチドは、遊離ペプチドの溶媒和物または化合物の塩の溶媒和物を含む溶媒和物の形、同様に非溶媒和物の形で存在してよいこともまた理解されなければならない。本明細書で用いられる「溶媒和物」の語は、本発明の化合物および1以上の薬剤的に許容される溶媒分子、例えばエタノールを含んでなる分子複合体を表す。「水和物」の語は、前記溶媒が水である場合に用いられる。異なる多形の混合物を含む全ての多形が、特許請求されるペプチドの範囲内に含まれることが理解されなければならない。
【0171】
6.2 医薬組成物
本発明は、本発明の環状ペプチドおよび薬剤的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。担体は液体処方であってよく、好ましくは緩衝化された等張の水溶液である。以下に記載するように、薬剤的に許容される担体には、希釈剤、担体などのような賦形剤、および安定化剤、保存料、可溶化剤、緩衝液などのような添加物もまた含まれる。
【0172】
本発明の環状ペプチド組成物は、少なくとも1の本発明の環状ペプチドを、所望により希釈剤、担体などのような賦形剤、および安定化剤、保存料、可溶化剤、緩衝液などのような添加物を含む、1以上の薬剤的に許容される担体と共に含む医薬組成物へ処方されるかまたは配合されてよい。製剤のための賦形剤には、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシルプロピルセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムが含まれてよい。注射剤またはその他の液体投与のための製剤には、少なくとも1以上の緩衝成分を含む水が好ましく、安定化剤、保存料、可溶化剤もまた用いられてよい。固体投与のための製剤には、デンプン、糖、セルロース誘導体、脂肪酸などのような、様々な増粘剤、注入剤、増量剤、および担体添加物のいずれも用いられてよい。局所投与のための製剤には、様々なクリーム、軟膏、ゲル、ローションなどのいずれも用いられてよい。ほとんどの医薬製剤では、調製品の重量または容量の大部分が非有効部分により構成され得る。医薬製剤については、本発明のペプチドがある期間にわたって送達されるような剤形が処方されるように、様々な標準放出(measured−release)、徐放、または持続放出製剤、および添加物のいずれもが用いられてよいことも意図される。
【0173】
一般に、患者に投与される本発明の環状ペプチドの実際の量は、投与の様式、用いられる製剤、および望まれる応答に依存してかなり広範囲に変動し得る。
【0174】
実際の使用において、本発明の環状ペプチドは、従来の医薬化合物技術に従い、医薬担体との混合物中の有効部分として組み合わせることができる。担体は、例えば経口、非経口(静脈内を含む)、尿道内、膣内、経鼻、頬、舌下などの投与に望ましい調製品の形に依存する様々な形であってよい。経口剤形のための組成物の調製においては、例えば懸濁液、エリキシル剤、および溶液のような経口用液体調製品の場合には、例えば水、グリコール、油、アルコール、香味料、保存料、着色料などのような通常の医薬用溶媒のいずれも;または例えば散剤、硬および軟カプセル、ならびに錠剤のような経口用固体調製品の場合には、デンプン、糖、結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのような担体が用いられてよい。
【0175】
それらの投与の容易さから、錠剤およびカプセルは、簡便な経口単位剤形を代表する。所望により、錠剤は標準的な水性または非水性の技術によってコートされてよい。このような、治療上有用な組成物中の有効なペプチドの量は、有効な投薬量が得られ得るような量である。別の単位剤形では、シート、オブラート、錠剤などのような舌下用コンストラクトが用いられてよい。
【0176】
錠剤、丸剤、カプセルなどは、ポビドン、トラガカント・ゴム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンのような結合剤;希釈剤;結晶セルロースのような注入剤;第二リン酸カルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、またはアルギン酸のような崩壊剤;保存料;着色剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;およびスクロース、ラクトース、またはサッカリンのような甘味料もまた含んでよい。単位剤形がカプセルである場合、上記の型の材料に加えて、脂肪油のような液体担体が含まれてよい。
【0177】
様々なその他の材料が、コーティングとして、または単位剤形の物理的な形を変更するために利用されてよい。例えば、錠剤はシェラック、糖、または両方によってコートされてよい。シロップまたはエリキシル剤は、有効部分に加えて、甘味料としてのスクロース、保存料としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、およびチェリーまたはオレンジ香味料のような香料を含んでよい。
【0178】
環状ペプチドはまた、非経口的に投与されてもよい。これらの有効なペプチドの溶液または懸濁液は、ヒドロキシ−プロピルセルロースのような界面活性剤が適切に混合された水中で調製することができる。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの油中の混合物中で調製することができる。これらの調製品は、微生物の増殖を阻止するための保存料を任意に含んでよい。
【0179】
注射での使用に適した医薬品の形には、無菌注射液または分散剤の即時調製のために、無菌水溶液または分散剤および無菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形は無菌でなければならず、かつシリンジで投与され得る程度まで流動性でなければならない。この形は製造および保管の状態下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌のような微生物の汚染作用に反して維持されなければならない。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、または液体ポリエチレングリコール、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散剤であってよい。
【0180】
本発明の環状ペプチドは、経鼻投与によって治療的に使用されてよい。「経鼻投与」は、いずれの本発明の環状ペプチドのいずれの形による鼻腔内投与も意味する。ペプチドは、生理食塩水、クエン酸塩、またはその他の一般的な賦形剤もしくは保存料を含む溶液のような水溶液中にあってよい。ペプチドはまた、乾燥または粉末製剤であってもよい。
【0181】
本発明の環状ペプチドは、薬物の鼻からの有効な吸収を増大させる、ペプチド薬を含む様々な薬剤のいずれにも処方されてよい。これらの薬剤は、粘膜への許容されない損傷なしに、鼻からの吸収を増大させなければならない。特に米国特許第5,693,608号、第5,977,070号、および第5,908,825号には、吸収促進薬を含む、用いられてよい幾つかの医薬組成物について教示されており、前述の各教示、ならびにそれらに引用される全ての参考文献および特許は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0182】
水溶液中にある場合、環状ペプチドは、一般には約pH4ないし約pH7の、いずれの生理的に許容されるpHであってもよい、生理食塩水、酢酸、リン酸、クエン酸、酢酸、またはその他の緩衝剤によって適切に緩衝化されてよい。リン酸緩衝食塩水、生理食塩水、および酢酸緩衝液などのような、緩衝剤の組み合わせもまた用いられてよい。生理食塩水の場合、0.9%生理食塩水溶液が用いられてよい。酢酸、リン酸、クエン酸などの場合、50mM溶液が用いられてよい。緩衝剤に加え、細菌およびその他の微生物の増殖を阻止または制限するために、適切な保存料が用いられてよい。用いられてよいこのような保存料の一つは、0.05%塩化ベンザルコニウムである。
【0183】
代替の実施形態によれば、本発明の環状ペプチドは肺内へ直接投与されてよい。肺内投与は、吸息の間に患者によって作動される際、本発明のペプチドの自己による定量ボーラス投与が可能になる装置である、定量吸入器を用いることによって行われてよい。この実施形態の一態様によれば、本環状ペプチドは乾燥した粒状の形であって、例えば肺表面に定着し、かつ吐き出されないために十分な質量を有しているが、肺に到達する前に気道表面に沈着しないような十分に小さい粒子である、約0.5ないし6.0μmの粒子である。微製粉、スプレードライ、および凍結乾燥後の急速凍結エアロゾルを含むがこれらに限定されない様々な異なる技術のいずれも、乾燥粉末微粒子作製のために用いられてよい。微粒子によってペプチドは肺の深い位置に沈着する可能性があり、これにより迅速かつ効率的な血流への吸収が提供される。さらに、経皮、経鼻、または口腔粘膜の送達経路の場合にはときおり、このような浸透促進剤のアプローチは必要とされない。噴霧剤を基にしたエアロゾル、噴霧器、単一用量の乾燥粉末吸入器、および複数用量の乾燥粉末吸入器を含む、様々な吸入器のいずれも用いることができる。現在使用されている一般的な装置には、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの治療のための薬剤送達に用いられる定量吸入器が含まれる。好ましい装置には、粒径が常に約6.0μm未満である微細な粉末の雲状物またはエアロゾルを形成するように設計された、乾燥粉末吸入器が含まれる。
【0184】
平均のサイズ分布を含む微粒子のサイズは、作製法により制御され得る。微製粉については、主軸頭の大きさ、ローター速度、工程時間などにより、微粒子のサイズが制御される。スプレードライについては、ノズルの大きさ、流速、乾燥器の熱などにより、微粒子のサイズが制御される。凍結乾燥後の急速凍結エアロゾルを用いた作製では、ノズルの大きさ、流速、エアロゾル溶液の濃度などにより、微粒子のサイズが制御される。これらのパラメータおよびその他が、微粒子のサイズを制御するために用いられてよい。
【0185】
本発明の環状ペプチドは、持続放出製剤の注射によって治療的に投与されてよい。一実施形態によれば、本発明の環状ペプチドは、臀部または三角筋内のような筋肉内の深い部分への注射のために、製剤については、ポリエチレングリコール3350のようなポリエチレングリコール、および任意に、塩、ポリソルベート80、pH調整のための水酸化ナトリウムまたは塩酸などのような賦形剤を含むがこれらに限定されない、1以上のさらなる賦形剤および保存料と共に処方される。別の実施形態によれば、本発明の環状ペプチドは、重合体骨格中の乳酸がいずれの可変パーセンテージでもある自己触媒型ポリ(オルトエステル)であってよい、ポリ(オルトエステル)、および任意に1以上のさらなる賦形剤と共に処方される。一実施形態によれば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーが用いられる。一般に、接着性ポリマーでもある幾つかの注射用および生体内分解性のポリマーのいずれも、持続放出注射剤に用いられてよい。あるいは、皮下注射が可能な製剤を含む、その他の持続放出製剤が用いられてよく、その他の製剤は、ナノ/ミクロスフェア(例えばPLGAポリマーを含む組成物)、リポソーム、乳剤(例えば油中水乳剤)、ゲル、不溶性の塩類、または油中懸濁液のうち1以上を含んでよい。製剤は、環状ペプチドの濃度および量、用いられる物質の持続放出率、および当業者に公知であるその他の因子に依存して、毎日、週1回、月1回、またはその他の定期的な基準で注射が必要とされてよい。
【0186】
6.3 本発明のペプチドの経口用製剤
一態様によれば、本発明のペプチドは経口送達のために処方される。ペプチドは、好ましくは腸内保護剤に包まれるように、さらに詳細には、錠剤またはカプセルが胃を通過するまで、かつ任意に小腸の一部をさらに通過するまで放出されないように処方され、作製される。この応用に関連して、腸溶コーティングまたは材料の語は、基本的には原形を保って胃を通過し得るが、有効な薬剤物質を放出するために小腸で迅速に崩壊し得る、コーティングまたは材料を指すことが理解されるであろう。使用されてよい一腸溶コーティングには、酢酸フタル酸セルロース、ならびに、任意にその他の成分、例えば水酸化アンモニウム、トリアセチン、エチルアルコール、メチレンブルー、および精製水が含まれる。酢酸フタル酸セルロースは、医薬品工業において錠剤およびカプセルのような個々の剤形を腸溶コーティングするために用いられているポリマーであり、これは約5.8未満のpHでは水に溶けない。酢酸フタル酸セルロースを含む腸溶コーティングによって胃の酸性環境に対する保護が提供されるが、十二指腸(pH約6〜6.5)の環境では溶解を始め、剤形が回腸(pH約7〜8)に達する時までには完全に溶解する。酢酸フタル酸セルロースに加え、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、およびメタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体を含むがこれらに限定されないその他の腸溶コーティング物質が公知であり、本発明のペプチドに用いられてよい。用いられた腸溶コーティングは、最初に胃以外の場で剤形の溶解を促進し、おおよそ少なくとも6.0のpH、さらに好ましくは約6.0ないし約8.0のpHにおいて腸溶コーティングが溶解するように選択され得る。好ましい一態様によれば、腸溶コーティングは回腸の近くで溶解し、崩壊する。
【0187】
腸溶コーティングの溶解による腸からの取り込みを増大させるために、様々な透過促進剤のいずれも用いられてよい。一態様によれば、透過促進剤は、傍細胞または経細胞輸送系のいずれかを増大させる。傍細胞輸送の増大は、細胞の密着結合を開放することによって達成することができ;経細胞輸送の増大は、細胞膜の流動性を増大することによって達成することができる。このような透過促進剤の代表的な、限定されない例には、カルシウムキレート剤、胆汁酸塩(例えばコール酸ナトリウム)、および脂肪酸が含まれる。本発明のペプチドは、傍細胞輸送を増大させるために、例えばオレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、カプリン酸ナトリウム、または共役リノール酸のような脂肪酸が腸溶コートされたカプセル内に含まれる、腸溶コートされた個々の剤形内にあってよい。
【0188】
一態様によれば、錠剤またはカプセルのような個々の剤形には、ポビドン、希釈剤、流動促進剤、結晶セルロースのような注入剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、クロスカルメロースナトリウムのような崩壊剤、保存料、着色剤などのような一般的な医薬結合剤が、それらの通常知られた大きさおよび量で、任意にさらに含まれる。幾つかの実施形態によれば、腸管内のプロテアーゼに対する基質として作用するペプチドまたはポリペプチドがさらに添加される。
【0189】
6.4 眼科用製剤
一実施形態によれば、例えばドライアイ病またはぶどう膜炎のような眼の疾患、徴候、状態、および症候群は、1以上の本発明のペプチドを含む眼科用剤形によって治療され得る。眼科用剤形には、1以上の本発明のペプチドに加えて、例えば人工涙成分、外用副腎皮質ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬、またはカルシニューリン阻害薬、例えばシクロスポリン−A(Restasis(登録商標)−Allergan)のような有効部分の1以上が含まれてよい。関連する実施形態によれば、1またはさらなる化合物は、人工涙成分、外用副腎皮質ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬、カルシニューリン阻害薬、例えばシクロスポリン−A、または前述のいずれの組み合わせも含む眼科用剤形を別に投与するように、1以上の本発明のペプチドとは別に投与されてよい。
【0190】
6.5 投与経路
1以上の本発明のペプチドを含む組成物を注射により投与する場合、注射は静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または当該技術分野において公知の他の手段であってよい。本発明のペプチドは、錠剤、カプセル、カプレット、懸濁液、散剤、凍結乾燥製剤、坐薬、点眼薬、皮膚パッチ、経口可溶性製剤、スプレー、エアロゾルなどとしての製剤を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知のいずれの手段によっても処方されてよく、緩衝液、結合剤、賦形剤、安定剤、酸化防止剤、および当該技術分野において公知のその他の薬剤と混合して処方されてよい。一般に、本発明のペプチドが細胞の表皮層を横断して導入される、いずれの投与経路も用いられてよい。従って投与手段には、粘膜を通した投与、頬への投与、経口投与、皮膚投与、吸入投与、経鼻投与、尿道内投与、膣内投与などが含まれてよい。
【0191】
6.6 治療上有効な量
一般に、患者に投与される本発明の環状ペプチドの実際の量は、投与の様式、用いられる製剤、および望まれる応答に依存してかなり広範囲に変動し得る。治療のための投薬量は、前述のいずれの手段、または当該技術分野において公知であるその他のいずれの手段によっても、望まれる治療上の効果をもたらすために十分な量の投与である。従って治療上有効な量には、患者の性的機能不全を治療的に軽減するためか、または性的機能不全の発症もしくは再発を阻止または遅延させるために十分な、本発明のペプチドまたは医薬組成物の量が含まれる。
【0192】
一般に、本発明の環状ペプチドは高度に有効である。例えば環状ペプチドは、選択した特定のペプチド、望まれる治療上の応答、投与経路、製剤、および当業者に公知のその他の因子に依存して、体重あたり約0.1、0.5、1、5、50、100、500、1000、または5000μg/kgにおいて投与することができる。
【0193】
7.0 本発明のペプチド
一態様によれば、本発明は、環状部分内のHis−Phe−Arg−Trpに由来するコア配列を含む環状ヘプタペプチドであって、第1の位置のアミノ酸が環状部分の外側にあり、かつ少なくとも1の一級アミン、グアニジン、または尿素基を含む側鎖を有する環状ヘプタペプチドを提供する。第1の位置にあり得る代表的なアミノ酸にはDap、Dab、Orn、Lys、Cit、またはArgが含まれるが、これらに限定されない。
【0194】
His−Phe−Arg−Trpに由来するコア配列は、Pheの位置に非置換D−Phe、D−Nal1、またはD−Nal2を含み得るが、典型的には、コア配列内の残りのアミノ酸には様々なアミノ酸が利用されてよい。一般にHisの位置は、置換または非置換Proであってよいか、または少なくとも1の一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、エーテル、スルフィド、スルホン、スルホキシド、カルボニル、またはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸であってよい。Argの位置は、置換または非置換Proであってよいか、または少なくとも1の一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはエーテルを含む側鎖を有するアミノ酸であってよい。Trpの位置は、少なくとも1の置換もしくは非置換アリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であってよい。
【0195】
式(I)および(II)の範囲内に包含されるペプチドは、式(I)の範囲内に包含されるペプチドが異なる立体異性体として存在できるように、立体中心、立体軸などのような非対称性エレメントを1以上含む。式(I)および(II)の範囲内に包含されるペプチドを含む、特異的かつ一般的に記載されるペプチドの両方について、鏡像異性体およびジアステレオマーを含む全てのキラル中心またはその他の異性体中心における異性体の全ての型が、本明細書に網羅されることが意図される。本発明のペプチドは、それぞれ複数のキラル中心を含んでおり、エナンチオピュアな調製品における本発明のペプチドの使用に加え、ラセミ混合物または鏡像異性体の豊富な混合物として使用されてよい。典型的には、本発明のペプチドは、特定のL−またはD−アミノ酸のようなキラルに純粋な試薬の使用によって合成されてよく、鏡像異性の純度が維持されるが、ラセミ混合物が作られ得ることが可能であり意図される試薬、条件、および方法を用いる。このようなラセミ混合物は、公知の技術を用いて任意に分離されてよく、個々の鏡像異性体が単独で使用されてよい。ペプチドが互変異性の形で存在し得る温度、溶媒、およびpHの特定の条件下では、互変異性の形のそれぞれは、平衡であるかまたは主に一つの形で存在するかによって、本発明に含まれることが意図される。従って、光学的に活性化型である、式(I)で表されるペプチドの単一の鏡像異性体は、非対称性の合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ体の分割によって得ることができる。
【0196】
本発明は、投与において、活性のある薬理学的ペプチドとなる前の代謝過程により化学変換を行う、本ペプチドのプロドラッグを含むことがさらに意図される。一般にこのようなプロドラッグは、in vivoにおいて式(I)または(II)で表されるペプチドへ容易に変換できる、本ペプチドの機能的な誘導体となり得る。プロドラッグは、活性のある、式(I)または(II)で表される親ペプチド薬をin vivoで放出する、いずれの共有結合性化合物でもある。適切なプロドラッグ誘導体を選択および調製するための従来の手順は、例えば、Design of Prodrugs,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載される。プロドラッグの典型的な例は、官能基部分に、例えばヒドロキシル、カルボキシル、またはアミノ官能基のエステル化によるような、生物学的に不安定な保護基を有する。従って、プロドラッグには例として、例えば式(I)のR基の低級アルキルエステル、例えばRが−OHである場合、この低級アルキルエステルがアルキルラジカルに1〜8の炭素を含んでよいか、またはアラルキルラジカルに6〜12の炭素を有するアラルキルエステルのような、エステルプロドラッグ型を用いる式(I)で表されるペプチドが含まれるが、限定されるものではない。大まかに述べると、プロドラッグには、活性のある、式(I)で表される親ペプチド薬をin vivoで産生するために、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、または脱リン酸化することのできる化合物が含まれる。
【0197】
対象発明はまた、式(I)に説明されるペプチドに同一であるが、式(I)に示される1以上の原子が、通常天然に見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換されるペプチドも含む。本発明の化合物内に取り込むことのできる同位元素の例には、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、および17Oのような、水素、炭素、窒素、および酸素の同位元素が含まれる。前述の同位元素および/またはその他の原子のその他の同位元素を含む前記化合物の、本発明のペプチド、および薬剤的に許容される塩または溶媒和物は、本発明の範囲内である。本発明の、特定の同位元素標識された化合物、例えばHおよび14Cのような放射性同位元素が取り込まれた化合物は、薬物および/または基質の組織分布アッセイのような、様々なアッセイにおいて使用され得る。より重い同位元素による置換、例えば1以上の水素原子の重水素(H)による置換は、代謝の安定性の増大を含む幾つかの例において薬理学的な利点を提供することができる。式(I)で表される同位元素標識されたペプチドは、一般に、同位元素標識されていない試薬を同位元素標識された試薬によって置換することにより調製される。
【0198】
8.0 本発明のペプチドの評価に用いられる試験およびアッセイ
メラノコルチン受容体特異的な本発明のペプチドは、結合、機能的状態、および有効性を判定するために、様々なアッセイ系および動物モデルによって試験されてよい。
【0199】
8.1 [I125]−NDP−α−MSHを用いる競合阻害アッセイ
組み換えhMC4−R、hMC3−R、またはhMC5−Rを発現するHEK−293細胞、およびB−16マウスメラノーマ細胞(内在性MC1−Rを含む)からの膜ホモジネート調製物を用いて、競合阻害結合アッセイを行った。幾つかの例においては、組み換えhMC1−Rを発現するHEK−293細胞を用いた。以下の実施例で、MC3−R、MC4−R、およびMC5−Rの値は全てヒト組み換え受容体に対するものである。MC1−Rの値は、値がヒト組み換えMC1−Rに対するものである「hMC1−R」の見出しが無い限り、B−16マウスメラノーマ細胞に対するものである。アッセイは、0.5%ウシ血清アルブミン(画分V)がプレコートされた96ウェルGF/B Milliporeマルチスクリーンフィルタープレート(MAFB NOB10)において行った。膜ホモジネートを、0.2nM(hMC4−Rに対して)、0.4nM(MC3−RおよびMC5−Rに対して)、または0.1nM(マウスB16MC1−RまたはhMC1−Rに対して)の[I125]−NDP−α−MSH(Perkin Elmer)および増加する濃度の本発明の試験ペプチドと共に、25mM HEPES緩衝液(pH7.5)を100mM NaCl、2mM CaCl、2mM MgCl、0.3mM 1,10−フェナントロリン、および0.2%ウシ血清アルブミンと共に含む緩衝液中でインキュベートした。37℃における60分のインキュベーション後、アッセイ混合物を濾過し、膜を氷冷した緩衝液で3回洗浄した。フィルターを乾燥させ、結合放射活性をガンマカウンターで計数した。非特異的結合は、1μM NDP−α−MSH存在下での[I125]−NDP−α−MSHの結合阻害によって測定した。最大特異的結合(100%)は、1μM NDP−α−MSHの非存在下および存在下で細胞膜に結合した放射活性(cpm)の相違として定義した。[I125]−NDP−α−MSH結合のパーセント阻害を決定するため、試験化合物の存在下で得られた放射活性(cpm)を、100%特異的結合に対して標準化した。各アッセイは三重に行い、実際の平均値は、0%未満の結果を0%とすることによって記載した。本発明の試験ペプチドに対するKi値は、Graph−Pad Prism(登録商標)カーブフィッティングソフトウェアを用いて決定した。
【0200】
8.2 Eu−NDP−α−MSHを用いる競合結合アッセイ
競合阻害結合アッセイを、代わりにEu−NDP−α−MSH(PerkinElmer Life Sciences カタログ番号AD0225)を用いて、ランタニドキレートの時間分解蛍光計測(TRF)による決定によって行った。[I125]−NDP−α−MSHとの比較試験においては、パーセント阻害およびKiに関し、実験エラーの範囲内で同じ値が得られた。典型的には、Ki値を決定するための競合実験は、25mM HEPES緩衝液を100mM NaCl、2mM CaCl、2mM MgCl、および0.3mM 1,10−フェナントロリンと共に含む溶液中で、組み換えhMC4−Rを発現するHEK−293細胞から調製した膜ホモジネートを、9通りの異なる濃度の興味ある試験化合物、および2nMのEu−NDP−α−MSHと共にインキュベートすることにより行った。37℃における90分のインキュベーション後、反応をAcroWell 96ウェルフィルタープレート(Pall Life Sciences)で濾過することにより停止させた。フィルタープレートを、200μLの氷冷したリン酸緩衝食塩水で4回洗浄した。各ウェルにDELFIA Enhancement溶液(PerkinElmer Life Sciences)を加えた。プレートを振盪機上で15分間インキュベートして、340nmの励起波長および615nmの発光波長にて読み取りを行った。各アッセイは二重に行い、平均値を利用した。Ki値は、Graph−Pad Prism(登録商標)ソフトウェアによるカーブフィッティングにより、1サイト固定勾配競合結合モデルを用いて決定した。
【0201】
8.3 [I125]−AgRP(83−132)を用いる競合結合アッセイ
[I125]−AgRP(83−132)を用いる競合結合試験は、hMC4−Rを発現する細胞から分離した膜ホモジネートを用いて行った。アッセイは、0.5%ウシ血清アルブミン(画分V)がプレコートされた96ウェルGF/B Milliporeマルチスクリーンフィルタープレート(MAFB NOB10)において行った。アッセイ混合物は、全量200μLに、25mM HEPES緩衝液(pH7.5)を、100mM NaCl、2mM CaCl、2mM MgCl、0.3mM 1,10−フェナントロリン、0.5%ウシ血清アルブミン、膜ホモジネート、放射性リガンド[I125]−AgRP(83−132)(Perkin Elmer)、および増加する濃度の本発明のペプチドと共に含んだ。結合は、0.2nMの放射性リガンド濃度において測定した。37℃で1時間インキュベートした後、反応混合物を濾過し、500mM NaClを含むアッセイ緩衝液で洗浄した。乾燥させたディスクをプレートから打ち抜き、ガンマカウンターで計数した。本発明の試験ペプチドに対するKi値は、Graph−Pad Prism(登録商標)カーブフィッティングソフトウェアを用いて決定した。
【0202】
8.4 アゴニスト活性に対するアッセイ
MC4−Rを発現するHEK−293細胞において機能的応答を誘発する本発明のペプチドの能力の基準として、細胞内cAMPの蓄積について試験した。組み換えhMC4−Rを発現するコンフルエントなHEK−293細胞を、酵素を含まない細胞剥離緩衝液中でのインキュベーションによって培養プレートから剥離した。分散した細胞を、10mM HEPES(pH7.5)、1mM MgCl、1mMグルタミン、0.5%アルブミン、およびホスホジエステラーゼ阻害剤である0.3mM 3−イソブチル−1−メチル−キサンチン(IBMX)を含むアール平衡塩類溶液に懸濁した。96ウェルプレートに、細胞をウェルあたり0.5x10細胞の密度でまき、10分間プレインキュベートした。アッセイの全量200μL中、0.05〜5000nMの濃度範囲でDMSO(DMSOの最終濃度は1%)に溶解した本発明のペプチドに、細胞を15分間37℃にて曝露した。基準アゴニストとしてNDP−α−MSHを用いた。cAMP濃度は、クリプテート標識した抗cAMPおよびd2標識したcAMPを利用する、Cisbio Bioassaysから市販されているHTRF(登録商標)cAMPセルベースアッセイシステムを用い、665および620nMにおけるPerkin−Elmer Victorプレートリーダーにおけるプレートの読み取りによって決定した。データ解析は、Graph−Pad Prism(登録商標)ソフトウェアによる非線形回帰分析によって行った。本発明の試験ペプチドの最大効力を、基準メラノコルチンアゴニスであるNDP−αMSHによって達成された最大効力と比較した。
【0203】
8.5 食物摂取量および体重の変化
食物摂取量および体重の変化を、静脈内(IV)または皮下の注射経路により投与した、選択されたペプチドについて評価した。雄のSprague−Dawleyラットを、Hilltop Lab Animals,Inc.(スコッツデール、ペンシルベニア州)から、またはその他の業者から得た。動物は従来のポリスチレンハンギングケージへ個別に収容し、制御された12時間のオン/オフ光サイクルにおいて維持した。水およびペレット飼料は自由に与えられた。ラットは、ビヒクルもしくは選択されたペプチド(0.3ないし1.0mg/kg)をIV投与されるか、またはビヒクルもしくは選択されたペプチド(30mg/kgまでの用量)を皮下投与された。投薬後24時間に体重および食物摂取量の変化を決定した。体重および食物摂取量の変化による効果の逆転がベースラインレベルへ戻ることを判定するため、投薬後48時間および72時間の体重および食物摂取量の変化もまた測定してよい。
【0204】
8.6 陰茎勃起の誘導
雄ラットに陰茎勃起(PE)を誘導する本発明のペプチドの能力について、選択されたペプチドを用いて評価した。体重250〜300gの雄Sprague−Dawleyラットを、12時間のオン/オフ光サイクルにおいて維持し、飼料および水を自由に与えた。全ての行動試験は午前9時から午後4時の間に行った。6〜8匹のラットの群に、IV経路を通して様々な用量のペプチドを投与した。行動の観察、典型的には遠隔ビデオモニターのために、投与後直ちにラットを個別のポリスチレンケージ(縦27cm、横16cm、および高さ25cm)内へ配置した。ラットを1時間観察し、何度かのあくび、身づくろい動作、およびPEを10分のビンにおいて記録した。
【実施例】
【0205】
9.0 実施例
本発明を以下の限定されない実施例によってさらに例証する:
【0206】
9.1 以下の構造のペプチドを上記の一般的方法によって合成し、表示するようにペプチドの平均MC4−R Ki値を決定した。Eu−NDP−α−MSHを用いてKi値を決定したことを示す「*」により標識されていない限り、全てのKi値は[I125]−NDP−α−MSHを用いて決定した。「ND」により標識される場合、Kit値は決定していない。
【0207】






















































【0208】
9.2 番号126ないし129のペプチドを、機能的アッセイにより試験した。番号126のペプチドは、MC4−Rにおける固有活性が、NDP−α−MSHを100%としたときに101%であり、かつEC50が0.047nMであったことから(3回の試験の平均)、MC4−Rのアゴニストであると決定した。番号127のペプチドは、MC4−Rにおける固有活性が、NDP−α−MSHを100%としたときに98%であり、かつEC50が0.06nMであったことから(2回の試験の平均)、MC4−Rのアゴニストであると決定した。番号128のペプチドは、MC4−Rにおける固有活性が、NDP−α−MSHを100%としたときに95%であり、かつEC50が0.073nMであったことから(3回の試験の平均)、MC4−Rのアゴニストであると決定した。番号129のペプチドは、MC4−Rにおける固有活性が、NDP−α−MSHを100%としたときに96%であり、かつEC50が0.065nMであったことから(2回の試験の平均)、MC4−Rのアゴニストであると決定した。従って一連の四つのペプチドにおいて、EC50値はKi値よりも1.5倍から2倍の桁で少なかった。
【0209】
9.3 Eu標識したNDP−α−MSHを用いる競合試験において、MC1−R、MC3−R、およびMC4−Rに対する番号1のペプチドの結合について評価し、MC4−Rにおいて4nMのKi値(6試験の平均)、MC1−Rにおいて4nMのKi値(4試験の平均)、MC3−Rにおいて103nMのKi値(5試験の平均)を有することが見出された。[I125]−NDP−α−MSHを用いる競合試験において、番号1のペプチドは、MC4−Rにおいて2nM(1試験)、MC3−Rにおいて25nM(1試験)、およびMC1−Rにおいて3nM(1試験)のKi値を有することが見出された。機能的試験において、番号1のペプチドは、MC4−Rにおける固有活性が、NDP−α−MSHを100%としたときに91%であり、かつEC50が1nMであったことから(3回の試験の平均)、アゴニストであると決定した。
【0210】
ブレメラノチド(bremelanotide:式、Ac−Nle−シクロ(Asp−His−D−Phe−Arg−Trp−Lys)−OHで表される、非特異的なMC4−Rアゴニスト)を陽性コントロールとして用いるラットの摂食試験において、番号1のペプチドは、食物摂取量を減少させ、かつ体重における変化率を減少させることが見出された。上記の方法を用い、8匹のラットの群において、各ラットは1mg/kgのブレメラノチド(bremelanotide)、0.3mg/kgの番号1のペプチド、1mg/kgの番号1のペプチド、またはビヒクルコントロールを投与された。0〜2、0〜4、および0〜20時間の間に、0.3または1mg/kgいずれかの番号1のペプチドを投与されたラットにおける摂食量の減少は、コントロールに比較して統計的に有意であった。体重における0〜20時間のパーセント変化もまた、1mg/kgの番号1のペプチドを投与された群で、コントロールに比較して統計的に有意であった。
【0211】
再びブレメラノチド(bremelanotide)を陽性コントロールとして用いるラットの陰茎勃起試験において、番号1のペプチドを0.3または1mg/kgの用量でIV投与した際、観察される自発性の勃起において、ビヒクルに比較して統計的に有意な増大がもたらされることが見出された。
【0212】
9.4 Eu標識したNDP−α−MSHを用いる競合試験において、MC1−R、MC3−R、およびMC4−Rに対する番号16のペプチドの結合について評価し、MC4−Rにおいて25nMのKi値(2試験の平均)、MC1−Rにおいて323nMのKi値(1試験)、MC3−Rにおいて1055nMのKi値(1試験)を有することが見出された。機能的試験において、番号16のペプチドは、MC4−Rにおける固有活性が、NDP−α−MSHを100%としたときに42%であり、かつEC50が40nMであったことから(5回の試験の平均)、部分的アゴニストであると決定した。
【0213】
ブレメラノチド(bremelanotide)を陽性コントロールとして用いるラットの摂食試験において、番号16のペプチドは、食物摂取量を減少させ、かつ体重における変化率を減少させることが見出された。上記の方法を用い、8匹のラットの群において、各ラットは1mg/kgのブレメラノチド(bremelanotide)、0.3mg/kgの番号16のペプチド、1mg/kgの番号16のペプチド、またはビヒクルコントロールを投与された。0〜2、0〜4、および0〜20時間の間に、1mg/kgの番号16のペプチドを投与されたラットにおける摂食量の減少は、コントロールに比較して統計的に有意であり、かつ0〜2および0〜4時間の間に、0.3mg/kgの番号16のペプチドを投与されたラットにおける摂食量の減少は、コントロールに比較して統計的に有意であった。体重における0〜20時間のパーセント変化もまた、1mg/kgの番号1のペプチドを投与された群で、コントロールに比較して統計的に有意であった。
【0214】
9.5 Eu標識したNDP−α−MSHを用いる競合試験において、MC1−RおよびMC4−Rに対する番号32のペプチドの結合について評価し、MC4−Rにおいて24nMのKi値(6試験の平均)、およびMC1−Rにおいて673nMのKi値(3試験の平均)を有することが見出された。[I125]−NDP−α−MSHを用いる競合試験において、番号32のペプチドは、MC4−Rにおいて13nM(2試験)、MC3−Rにおいて340nM(1試験)、およびMC1−Rにおいて133nM(2試験)のKi値を有することが見出された。機能的試験において、番号32のペプチドは、MC4−Rにおける固有活性が、NDP−α−MSHを100%としたときに98%であり、かつEC50が17nMであったことから(8回の試験の平均)、アゴニストであると決定した。
【0215】
再びブレメラノチド(bremelanotide)を陽性コントロールとして用いるが、番号32のペプチドを皮下投与するラットの陰茎勃起試験において、番号32のペプチドを1、3、または10mg/kgの用量で投与した際、観察される自発性の勃起を増大させることが観察されたが、IV投与した1.0mg/kgのブレメラノチド(bremelanotide)により観察された自発性の勃起ほどではなかった。
【0216】
本発明については、これらの好ましい実施形態を特に参照して詳述してきたが、その他の実施形態によっても同じ結果を達成することができる。本発明の変動および改変は当業者に明らかとなり得るものであり、このような改変および均等物の全てを網羅することが意図される。上に引用する全ての参考文献、出願、特許、および出版物の全体的な開示は、参照により本明細書に取り込まれる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):

で表される環状ペプチドであって、ここで:
がH−またはCないしCアシル基であり、ここでCないしCは直鎖もしくは分岐アルキルまたはシクロアルキル、または直鎖アルキルおよびシクロアルキルの両方であり;
が−N(R15a)(R15b)、−NH−(CH−N(R15a)(R15b)、NH−C(=NH)−N(R15a)(R15b)、C(=O)−N(R15a)(R15b)、またはNH−C(=O)−N(R15a)(R15b)であり;
が−H、−CH、または−CH−であり、−CH−である場合にはRと共に

で表される一般構造の環を形成し;
が−H、Rが−CH−の場合には−(CH−であり、−(CH−である場合、R11がHではないという条件でRと共に環を形成する際にR11が結合する炭素原子は−CH−であり、またはRが−(CH−R12−(CH−R13であり、ここで各(CHのいずれのHも、−(CH−CHにより任意に置換されるが、RがCH−(C=O)−の場合には、Rは非置換フェニル、RはH、Rは−(CH−NH−C(=NH)−NH、Rはインドール、RはC(=O)−OHまたはC(=O)−NHであり、次に:
が−CH−であり、Rと共に非置換ピロリジン環を形成し、かつR10が−CH−C(=O)−NH−(CH、−(CH−C(=O)−NH−(CH、または−(CH−NH−C(=O)−(CHである場合のみに−(CH−が除外され、
10が−CH−C(=O)−NH−(CH、−(CH−C(=O)−NH−(CH、または−(CH−NH−C(=O)−(CHである場合のみに

が除外され、かつ
10が−CH−C(=O)−NH−(CH、−(CH−C(=O)−NH−(CH、−CH−C(=O)−NH−(CH、または−(CH−C(=O)−NH−(CHである場合のみに

が除外され;
が非置換フェニルまたはナフチルであり;
が−H、−CH、または−CH−であり、−CH−である場合にはRと共に

で表される一般構造の環を形成し;
が−CH−の場合にRが−(CH−であり、−(CH−である場合にはRと共に環を形成し、またはRは−(CH−R14であり;
が、1以上の環置換基によって任意に置換される

であり、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールであり;
がH、−C(=O)−OH、−C(=O)−N(R15a)(R15b)、−C(=O)−(CH−シクロアルキル、または−C(=O)−R16であり;
10
−(CH−C(=O)−NH−(CH−、
−(CH−NH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−(CH−C(=O)−(CH−、
−(CH−C(=O)−NH−C(=O)−(CH−、または
−((CH−NH−C(=O)−NH−(CH−であり;
11が−Hまたは−R12−(CH−R13であり;
12は任意に存在するが、存在する場合には
−O−、
−S−、
−NH−、
−S(=O)−、
−S(=O)−、
−S(=O)−NH−、
−NH−S(=O)−、
−C(=O)−、
−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−、
−NH−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−NH−、
−NH−C(=O)−、または
−C(=O)−NH−であり;
13がH、−CH、−N(R15a)(R15b)、−NH−(CH−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=NH)−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=O)−N(R15a)(R15b)、−O(R15a)、−(R15a)(R15b)、−S(=O)(R15a)、−C(=O)−O(R15a)、

であり、ここでR13のいずれの環も1以上の環置換基によって任意に置換され、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、−O−アリール、C(=O)−OH、またはC(=O)−N(R15a)(R15b)であり;
14がH、−N(R15a)(R15b)、−NH−(CH−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=NH)−N(R15a)(R15b)、−NH−CH(=O)−N(R15a)(R15b)、−O(R15a)、直鎖または分岐CないしC17アルキル鎖、−C(=O)−N(R15a)(R15b)、−S(=O)(R15a)、

であり、ここでいずれの環も1以上の環置換基によって任意に置換され、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アラルキル、O−アラルキル、または−O−アリールであり;
15aおよびR15bがそれぞれ独立してHまたはCないしCの直鎖もしくは分岐アルキル鎖であり;
16

であり、
17がH、−C(=O)−OH、または−C(=O)−N(R15a)(R15b)であり;
wがそれぞれの場合に独立して0ないし5であり;
xが1ないし5であり;
yが1ないし5であり;かつ
zがそれぞれの場合に独立して1ないし5である環状ペプチド、その鏡像異性体、立体異性体、ジアステレオ異性体、またはこれらのいずれの薬剤的に許容される塩。
【請求項2】
10が−(CH−C(=O)−NH−(CH−、ここでxは4およびyは3、xは3およびyは2、またはxは2およびyは1である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
10が−(CH−NH−C(=O)−(CH−、ここでxは1およびyは2、xは2およびyは3、またはxは3およびyは4である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
zが3およびRがNH−C(=NH)−NHである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項5】
16

である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
16

である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項7】
17が−C(=O)−OHまたは−C(=O)−NHである、請求項6に記載の環状ペプチド。
【請求項8】
がRと共に、一般構造

で表される環を形成し、ここでzは3である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載の環状ペプチドおよび薬剤的に許容される担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
ヒトまたは非ヒト哺乳類において、メラノコルチン受容体により仲介される疾病、徴候、状態、および症候群を治療するための方法であって、請求項9に記載の医薬組成物を投与する工程を含んでなる方法。
【請求項11】
ヒトまたは非ヒト哺乳類において、メラノコルチン受容体機能の変化に応答性である状態を治療するための方法であって、請求項9に記載の医薬組成物を投与する工程を含んでなる方法。
【請求項12】
式(II)
Z−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Y(II)
で表される環状ヘプタペプチドであって、ここで:
ZがHまたはN末端基であり;
Xaaが、少なくとも1の1級アミン、グアニジン、または尿素基を含む側鎖を有するアミノ酸であり;
XaaおよびXaaが、その側鎖がラクタムを含む環状橋を形成するアミノ酸であり;
Xaaが、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アルキル−アリール、アルキル−O−アリール、アルキル−O−アルキル−アリール、もしくは−O−アリールにより任意に置換されるProであるか、またはXaaが、少なくとも1の1級アミン、2級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、もしくはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸であり;
Xaaが、非置換フェニルまたはナフチルを含む側鎖を有するアミノ酸であり;
XaaがProであるか、またはXaaが、少なくとも1の1級アミン、2級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはエーテルを含む側鎖を有するアミノ酸であり;
Xaaが、1以上の置換基により任意に置換される、少なくとも1のアリールまたはヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であり、1以上が存在する場合、それらは同じであるかまたは異なっており、かつ独立してヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、または−O−アリールであり;かつ
YがC末端基であるが;
ZがAcであり、XaaがArgであり、XaaおよびXaaが共にGlu...Orn、Orn...Glu、またはAsp...Lysであり、XaaがProまたはSer(Bzl)であり、XaaがD−Pheであり、XaaがArgであり、XaaがTrpであり、Yが−OHまたは−NHである環状ペプチドが除外される環状ヘプタペプチド、またはその薬剤的に許容される塩。
【請求項13】
XaaがDap、Dab、Orn、Lys、Cit、またはArgである、請求項12に記載の環状ペプチド。
【請求項14】
XaaがD−Pheである、請求項12に記載の環状ペプチド。
【請求項15】
XaaおよびXaaの一つがAsp、hGlu、またはGluであり、その他のXaaおよびXaaがLys、Orn、Dab、またはDapである、請求項12に記載の環状ペプチド。
【請求項16】
N末端基がCないしCアシル基、直鎖もしくは分岐CないしC17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖、またはN−アシル化された直鎖もしくは分岐CないしC17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖である、請求項12に記載の環状ペプチド。
【請求項17】
Yがヒドロキシル、アミド、または1もしくは2の直鎖または分岐CないしC17アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、またはアラルキル鎖により置換されたアミドである、請求項12に記載の環状ペプチド。


【公表番号】特表2012−529433(P2012−529433A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514221(P2012−514221)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/037589
【国際公開番号】WO2010/144344
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(510319982)パラティン テクノロジーズ,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PALATIN TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】