説明

メンテナンスフリーエアフィルタシステム

【課題】吸気口に設けられたフィルタで捕集した埃を自動的に除去し、フィルタ交換の手間を大幅に低減するとともに、フィルタの繰り返し使用を可能とする。
【解決手段】機器筐体(12)の内部に外気を導入するための吸気ファン(14)を備えた吸気口(16)をその一部で覆うように機器筐体に取り付けられた円盤状のフィルタ(18)と、吸気口を覆った状態を維持しつつ該フィルタを周方向に回転させるモータ(22)と、 前記フィルタで捕集した埃を吸気口と離隔した位置でフィルタから除去する埃除去手段(24)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転に伴う電子機器の過熱を防止するために機器筐体の内部に外気を導入するための吸気ファンを備えた吸気口に設けられるエアフィルタに関し、より詳細には、吸気口で捕集した埃をフィルタから自動的に除去することで、フィルタ交換の手間を大幅に低減したメンテナンスフリーエアフィルタシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にCPUなどの電子機器の多くはその稼動によって熱を発生することが多い。ここで機器の内部が高温となると、熱暴走など機器が正常に動作しない事態を招来する虞があるため、多くの場合電子部品を収容した機器筐体には吸気口と排気口が形成される。このとき機器筐体内部に外気を効率的に導入するために、吸気口には吸気ファンを設けることが一般化している。
【0003】
業務用の電子機器においては定期的にその保守・点検作業が行われるが、その主な項目に吸気口に取り付けたフィルタなどの消耗品の交換がある。これはCPUなどの電子部品の不具合への対応は多くの場合、リモートメンテナンスにより現地に出向かなくとも対応可能である一方、フィルタに付着する埃など、外部的要素に関連する不具合の発生を防止するためのメンテナンスはリモートメンテナンスが不可能であり、サービスマンが現地に出向いてフィルタ交換等の作業を行うしかないためである。
また個人用・一般用のパソコン等の電子機器においては、機器筐体の吸気口にフィルタが設けられる場合であっても、その交換は忘れられがちであるのが実情であり、フィルタに多くの埃が付着すると、吸気障害によって電子機器に不具合が生じる虞があった。
【0004】
消耗品であるフィルタの交換を容易化する発明としては、例えば特許文献1の「使捨フィルタを備えた空調装置」がある。この発明はフィルタロールを用い、汚染されたフィルタを簡易に切除すると同時にきれいなフィルタを吸気口に装着するものである。
【特許文献1】特開平10−62009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の発明によれば汚染されたフィルタの交換は容易化されるものの、フィルタが汚れたことを人が判断し、人の手によってフィルタロールからフィルタを引き出して切り取らなければならず、メンテナンスのためにサービスマンが現地に出向かなければいけないことに変わりはなかった。また汚れたフィルタは切り取って廃棄されるため二度と使用されることはなく、環境負荷増大の一因となっていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、機器筐体内部への埃の侵入を防止するために吸気口に設けられたフィルタで捕集した埃を自動的に除去し、フィルタ交換の手間を大幅に低減するとともに、フィルタの繰り返し使用を可能としたメンテナンスフリーエアフィルタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムは、機器筐体(12)の内部に外気を導入するための吸気ファン(14)を備えた吸気口(16)をその一部で覆うように機器筐体に取り付けられた円盤状のフィルタ(18)と、吸気口を覆った状態を維持しつつ該フィルタを周方向に回転させるモータ(22)と、前記フィルタで捕集した埃を吸気口と離隔した位置でフィルタから除去する埃除去手段(24)と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムは、請求項1に記載の発明において、前記フィルタ(18)をガイドするガイドレール(26)がさらに設けられ、該ガイドレールは、吸気口(16)が設けられた機器筐体(12)の面の全幅又は/および全高からフィルタが大きくはみ出すことがないようにこれを屈曲させて案内する、ことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムは、機器筐体(12)の内部に外気を導入するための吸気ファン(14)を備えた吸気口(16)をその一部で覆い、一のロール(28a)から送り出され他のロール(28b)に巻き取られるように機器筐体に取り付けられた帯状のフィルタ(18)と、吸気口を覆った状態を維持しつつ該フィルタをいずれのロールにも巻き取り可能な正逆回転の切り替えが可能なモータ(22)と、前記フィルタで捕集した埃を吸気口と離隔した位置でフィルタから除去する埃除去手段(24)と、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
ここで請求項4に記載のように、前記埃除去手段(24)は、機器筐体(12)の内部の空気を排気するための排気口(32)に備えられた排気ファン(24a)であり、前記吸気口(16)で捕集された埃は、埃が付着した部分のフィルタを前記排気ファンに被さるように移動させることで排気圧により外部に吹き飛ばされる、ことが好ましい。
【0011】
また請求項5に記載のように、前記埃除去手段(24)は、前記吸気口(16)で捕集され前記フィルタ(18)に付着した埃を掻き落とすように、フィルタに接触して配置されたブラシ(24b)である、ことが好ましい。
【0012】
ここで前記ブラシ(24b)は外周に植毛された円筒形状を有し、かつ、該ブラシはこれを軸回転させるモータおよびブラシの毛に接触した状態でブラシの軸と平行に配置・固定された棒材(25)を備え、前記ブラシの毛はブラシの軸回転に伴って前記棒材によって撓ませられ、その撓みが開放された際の反発力により前記フィルタ(18)の表面を叩く、ようにすることも好ましい。
【0013】
また前記ブラシ(24b)によって掻き取った埃を集塵するための集塵体(35)がブラシの近傍に備えられており、該集塵体は埃と反対の極に帯電することで埃を捕集する、ようにすることも好ましい。
【0014】
さらに請求項6に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムは、請求項5に記載の発明において、前記フィルタ(18)は、該フィルタの進行方向に伸びる複数の縦糸と該縦糸と直行する複数の横糸とから構成され、フィルタの外気側に向く面は主として前記縦糸のみからなるメッシュ構造を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムによれば、吸気口をその一部で覆う円盤状のフィルタとこれを回転させるモータを用い、自動で周期的にフィルタを周方向に回転させ、フィルタが吸気口を覆った状態を維持しつつ、フィルタの埃が付着していない面を吸気口上にずらすことで、フィルタ交換と同様の効果を自動的に達成することができる。
ここでフィルタで捕集した埃を、吸気口と離隔した位置で自動で除去するための埃除去手段を用いて除去することで、円盤状のフィルタを繰り返し使用することが可能となる。これによりフィルタのメンテナンスフリー化(メンテナンス頻度の低減)を実現することができ、また廃棄物の減少による環境負荷軽減にも貢献することができる。
【0016】
請求項2に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムでは、フィルタを屈曲させて案内するガイドレールを設けることで、そのままでは多くの場合、吸気口が設けられた機器筐体の面からはみ出してしまう円盤状のフィルタを、機器筐体の面の全幅又は/および全高から大きくはみ出さないようにすることができる。またこのガイドレールは、埃が付着したフィルタ部分を一度屈曲させるため、フィルタへの埃の密着度を低下させることができ、その後の埃除去手段による埃の除去を容易化するといった副次的効果も発揮する。
【0017】
請求項3に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムでは、2つのロール間でモータの動力を利用した自動的な送り出し・巻き取りが可能な帯状のフィルタを用いることで、請求項1に記載の発明と同様に、フィルタのメンテナンスフリー化を実現することができ、また廃棄物の減少による環境負荷軽減にも貢献することができる。また帯状のフィルタは、円盤状のフィルタに比べてその総フィルタ面積を大きくし易いため、ロール状のフィルタの交換頻度をより一層低減することができる。
【0018】
請求項4に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムでは、埃除去手段として機器筐体の内部の空気を排気するための排気口に備えた排気ファンを利用し、その排気圧によってフィルタに付着した埃を吹き飛ばすことで、フィルタの目詰まりを効率的に解消してその再利用を可能とすることができる。なお吸気ファンに加えて排気ファンを機器筐体に備えてやれば、機器筐体内部への外気の取り込みおよび取り込んだ空気の循環の効率が向上することは言うまでもない。
【0019】
請求項5に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムでは、埃除去手段としてフィルタの埃が付着した面に接触するようにブラシを配置することで、排気ファンがない機器筐体においてもフィルタに付着した埃を掻き落とすことができ、フィルタの目詰まりを効率的に解消してその再利用を可能とすることができる。なおこのブラシは排気ファンがある機器筐体においても利用することができることは当然である。
【0020】
請求項6に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムでは、外周に植毛された円筒形状のブラシをモータの動力によって軸回転させるとともに、ブラシの軸と平行に配置・固定した棒材によってブラシを一旦撓ませ、その撓みが開放された際の反発力によりフィルタの表面を叩くようにすることで、フィルタに付着した埃を効率的に叩き落すことができる。
【0021】
請求項7に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムでは、ブラシの近傍に集塵体を備えるとともに、この集塵体を埃と反対の極に帯電させることで、ブラシによりフィルタから除去した埃を効率的に捕集することができ、一旦除去した埃が吸気口部分でフィルタに再び付着することを防止することができる。
【0022】
請求項8に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステムでは、埃を捕集するフィルタを、フィルタの進行方向に伸びる縦糸とこれに直行する横糸から構成し、フィルタの外気側に向く面を主として縦糸のみからなるメッシュ構造とすることで、ブラシによる埃の掻き取り効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、業務用のサーバコンピュータや個人用・一般用のパソコンなどの電子機器を構成する電子部品の冷却のために、機器筐体に形成された吸気口から機器筐体内部に外気を強制的に導入するための吸気ファンとともに用いられ、機器筐体内部への埃の侵入を防止するためのフィルタに関するものであり、より詳細にはフィルタで捕集した埃を自動的に除去し、フィルタ交換の手間を大幅に低減するメンテナンスフリーエアフィルタシステムを提供するものである。
以下、代表的な電子機器の構造およびその大きさの一例をまず示し、続いてこの機器筐体に適用される本発明のメンテナンスフリーエアフィルタシステムについて説明する。
【0024】
図1(a)は一般的なサーバコンピュータを背面側から見た斜視図であり、図1(b)はサーバコンピュータの内部構造を示すための側面透視図である。図に示したサーバコンピュータは、縦×幅×奥行が40cm×10cm×40cm程度のほぼ直方体形状の機器筐体12の内部に、破線で示したCPUやメモリなどの電子機器を搭載したマザーボード(M/B)、ハードディスクドライブ(HDD)、電源装置などを収容した装置である。
機器筐体12の背面の下部には筐体内部に外気を強制的に取り入れるために吸気ファン14が取り付けられた多数のスリットから形成された直径7cm程度の吸気口16が形成されており、その上方には機器筐体内部の空気を排気するための直径7cm程度の排気口32が形成されている。吸気口16から取り入れられた外気は、機器筐体内部の電子部品を冷却して暖ためられた後に、吸気口から取り入れられた外気に押し出されるようにして排気口32から排気される。
【実施例1】
【0025】
図2は実施例1のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10を適用したサーバコンピュータを背面側から見た斜視図(図2(a))および内部構造を示すための側面透視図(図2(b))である。本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10は、概してフィルタ18、モータ22、ガイドレール26および埃除去手段24から構成されている。
【0026】
このサーバコンピュータの背面に設けられた吸気口上(吸気口外側)には、その一部で吸気口16を覆うように、半径10cm程度の円盤状のフィルタ18が取り付けられている。なお排気口上(排気口外側)には、フィルタは被せられておらず開放されている。
このフィルタ18には、外気中の埃を捕集しかつ外気の取り入れを妨げない程度の細かさの網目状の布や不織布など様々なものを用いることができるが、後述するブラシ24bによる埃の掻き取りを行いやすくするため、ここでは同心円状に伸びる複数の縦糸とこの縦糸と直行する径方向に伸びる横糸からなるメッシュ構造を有する布が用いられている。なおこのメッシュ構造のフィルタの外気側に向く面は主として縦糸のみからなっている。
またこのフィルタ18の中心部からは、柔軟性に富んだ細棒31が等間隔に6本放射状に伸長している。この細棒31の先端は、フィルタ18の外縁を縁取りする柔軟な環状の枠(ガイドレール26と重なり図面には表れていない)と連結されており、細棒31および枠はフィルタ18を支える骨材をなしている。なおフィルタ18は以下に説明するモータ22によって回転するようになっている。
【0027】
図2(b)に示したように、機器筐体12にはフィルタ18を周方向に回転させるためのモータ22が取り付けられており、このモータの回転軸先端はフィルタの中心に位置する骨材に固定されている。なおこのモータ22への電力の供給はマザーボードから行われ、例えば1週間に7/6回転だけ回転するように制御される。
また吸気効率を測定するセンサを吸気口16に設け、吸気効率が所定値よりも低くなった場合にフィルタ18を例えば7/6回転させるようにしてやってもよい。
【0028】
また上記フィルタ18は、その外縁の枠をガイドレール26に案内され、ガイドレールの形状に沿って周方向に回転される。このガイドレール26は、そのままでは機器筐体12の背面の全幅(左右)からはみ出すこととなる円盤状のフィルタ18の左右部分を後方(機器筐体12の背面から離れる方向)へ滑らかに屈曲させる平面形状が略コの字型形状の翼状枠である。すなわちフィルタ18は、この翼状枠に案内されることで、その一部で吸気口16を覆う一方、その左右が機器筐体背面の全幅からはみ出すことを防止されている。
【0029】
さらに吸気口16の上側位置には、吸気口で捕集されてフィルタ18に付着した埃を掻き落とすための埃除去手段24が設けられている。この埃除去手段24は、その長さが7cm程度の縦長のブラシ24bであり、その一端が機器筐体12に固定され他端がフィルタ18中心部に向かって伸長し、ブラシの毛の先端が外気側からフィルタ面に接触するように配置されている。ブラシ24bの毛は、フィルタ18が回転することでフィルタを構成する同心円状に並んだ複数の縦糸の目地に沿って、フィルタ面に付着した埃の多くを掻き落とす。
【0030】
以上に説明した本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10では、吸気ファン14の吸引力によって吸気口16から機器筐体12内に取り入れる外気中の埃を、フィルタ18によって捕集するのは勿論、円盤状のフィルタをモータ22によって定期的に回転させて埃の付着していないフィルタ面を吸気口上にずらすことで、フィルタ交換と同じ効果を自動的に達成することができ、サービスマンによる現地でのメンテナンスの頻度を低減させることができる。また、埃除去手段24を設けることにより、繰り返してフィルタ18を使用することが可能となるため、現地でのメンテナンスの頻度をより一層低減することができるとともに、廃棄物の減少による環境負荷軽減にも貢献することができる。なおブラシである埃除去手段24による埃の掻き落とし前に、フィルタ18はガイドレール26によって屈曲させされているため、フィルタ面への埃の密着度が低下し、ブラシ24bによるその掻き落としが容易化される。
【実施例2】
【0031】
本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10は、排気口32に強制排気用の排気ファン24aが設けられた機器筐体12に適用されるものである。なお排気ファン24aは上述した吸気ファン14と同様のものであり、そのファンを逆方向に回転させて利用される。
以下本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10について説明するが、実施例1と同様の構成については、図面に同様の番号を付することで重複する説明を省略する。
【0032】
図3に実施例2のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10を採用したサーバコンピュータを示した(図3(a)は背面側から見た斜視図、図3(b)は内部構造を示すための側面透視図)。本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10は、概してフィルタ18、モータ22、ガイドレール26および埃除去手段24とから構成されている。
【0033】
このサーバコンピュータの背面に設けられた吸気口16および排気口32の外側には、その一部で吸気口16および排気口32を覆うように、半径15cm程度の円盤状のフィルタ18が取り付けられている。
図に示した本実施例では、埃除去手段24として実施例1で用いたブラシ24bは採用されておらず、排気ファン24aが埃除去手段24となっている。なおこのことは排気ファン24aを備えた機器筐体12に本発明を適用する場合に、埃除去手段24としてブラシを採用することを禁止することを意味するものではなく、排気ファンおよびブラシを埃除去手段として併用することも勿論可能である。
【0034】
本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10では、吸気口上で埃を捕集したフィルタ面がモータ22によって定期的に回転させられ、埃の付着していないフィルタ面が吸気口上に来ることは実施例1と同様であるが、埃が付着したフィルタ面を排気口上に移動することで、排気ファン24aの排気圧によってフィルタ18から埃が引き剥がされるように吹き飛ばされる。これによりフィルタ18の繰り返し使用が可能となり、フィルタの交換頻度を低減することができる。
【実施例3】
【0035】
本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10も、実施例2と同様に排気口32に強制排気用の排気ファン24aが設けられた機器筐体12に適用することを主目的としているが、排気ファン24aが設けられていない機器筐体への適用も可能である。
【0036】
図4に実施例2のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10を採用したサーバコンピュータを示した(図4(a)は背面側から見た斜視図、図4(b)は内部構造を示すための側面透視図)。本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10は、概してフィルタ18、モータ22、埃除去手段24および集塵体35とから構成されている。
【0037】
このサーバコンピュータの背面に設けられた吸気口16および排気口32の外側には、吸気口16および排気口32を覆うように幅8cm程度の帯状のフィルタ18が配置される。
このフィルタ18は、図4(b)に示すように吸気口16の下側に配置された一のロール28aから送り出され、排気口32の上側に配置された他のロール28bに巻き取られるようにして機器筐体12に取り付けられており、2メートル程度の全長を有している。
またこのフィルタ18は、その進行方向に伸びる複数の縦糸と縦糸と直行する複数の横糸とから構成され、フィルタ18の外気側に向く面は主として縦糸のみからなるメッシュ構造を有している。
【0038】
ロール28bにはロール28aを回転させるためのモータ22が取り付けられ、また2つのロールはベルト33(または歯車)によって連動するようになっている。そのため、一のロール28aからのフィルタ18の送り出しと他のロール28bへのフィルタの巻き取りはモータ22の動力によって同時に行われる。ロールの回転は、例えば一週間に一回程度、吸気口上のフィルタ面が新たなフィルタ面となる長さ分だけ行われる。
ここでこのモータ22は正逆回転の切り替えが可能であり、一のロール28aから全てのフィルタ18が送り出され他のロール28bに全てのフィルタの巻き取られた後は、逆回転することでフィルタの往復運動が行われる。
【0039】
なお本実施例では実施例1や実施例2のようにガイドレールは設けられていないが、フィルタ18の両側をガイドする直線状のガイドレールを、2つのロール間に設けることも好ましい(図示せず)。
【0040】
また図5に概略を拡大して模式的に示したように、排気口32の手前には、フィルタ18に付着した埃を掻き落とすための毛が外周に植毛された長さが9cm程度の円筒形状の横長のブラシ24bが、毛の先端が外気側のフィルタ面に接触するようにフィルタを跨ぐように配置されている。またこのブラシはブラシの毛の先端に接触した状態でブラシの軸と平行に配置・固定された棒材25を備えており、ロール28aを回転させるためのモータの動力を利用して軸回転するようになっている。すなわちブラシの毛はブラシの軸回転に伴って棒材に側方から押し付けられることで撓み、その撓みが開放された際の反発力によりフィルタ18の表面を叩くようになっている。これによりフィルタの表面に付着した埃が叩き落されることとなる。なお図面は省略するが上記ブラシに替えてまたは上記ブラシとともに、フィルタに接触する振動子を用いフィルタの一部又は全部を振動させることで、フィルタに付着した埃を振るい落とす機構を設けてやることも好ましい。
【0041】
さらにブラシ24bの下方近傍には、ブラシによって掻き取った埃を集塵するための集塵体35が備えられている。この集塵体はブラシの軸方向長さとほぼ同じ長さの横長の金属板であり、埃と反対の極に帯電させられることでブラシが掻き落とした埃を効率的に捕集し、一旦除去した埃が吸気口部分でフィルタに再び付着することを防止する役割を有する。
【0042】
本実施例のメンテナンスフリーエアフィルタシステム10では、吸気口上で埃を捕集したフィルタ面を、モータ22によってロール28a,28bを定期的に回転させることでずらし、埃の付着していないフィルタ面が吸気口上に来るように移動させ、また、埃が付着したフィルタ面をブラシ24bで擦った後に排気口32上に移動することで、フィルタ18に付着した埃を効率的に吹き飛ばすことができる。これによりフィルタ18を繰り返し使用することが可能となる。また本実施例では帯状のフィルタ18を使用することで、円盤状のフィルタを使用するのと比べて、多くのフィルタ面を確保することができ、現地でのメンテナンスの頻度をさらにより一層低減することができるようになる。
【0043】
なお全ての実施例において1年に1回程度は、フィルタ交換や各種ファンの交換など現地でのメンテナンス作業が必要となる。そのため、機器筐体の背面を扉状に開閉可能な構造とし、この背面にワンタッチ式で着脱が可能なファンやフィルタ、モータ等を取り付けるようにすることで、メンテナンス作業の容易化を図ることも好ましい。
【0044】
以上に説明したように、本発明によれば、フィルタ交換の手間を大幅に低減することができるとともに、フィルタの繰り返し使用による廃棄物の減少をも達成することができる。
【0045】
なお、本発明の構成は上述したものに限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができるのは勿論である。例えば吸気口や排気口の位置が機器筐体の上面や側面、底面などにある場合や、フィルタを筐体内部に設ける場合にも、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一般的なサーバコンピュータを示した図である。
【図2】実施例1のメンテナンスフリーエアフィルタシステムを適用したサーバコンピュータを示した図である。
【図3】実施例4のメンテナンスフリーエアフィルタシステムを適用したサーバコンピュータを示した図である。
【図4】実施例3のメンテナンスフリーエアフィルタシステムを適用したサーバコンピュータを示した図である。
【図5】実施例3のブラシ等を拡大して模式的に示した概略図である。
【符号の説明】
【0047】
10 メンテナンスフリーエアフィルタシステム
12 機器筐体
14 吸気ファン
16 吸気口
18 フィルタ
22 モータ
24 埃除去手段
24a 排気ファン
24b ブラシ
25 棒材
26 ガイドレール
28a,28b ロール
31 細棒
32 排気口
33 ベルト
35 集塵体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器筐体(12)の内部に外気を導入するための吸気ファン(14)を備えた吸気口(16)をその一部で覆うように機器筐体に取り付けられた円盤状のフィルタ(18)と、
吸気口を覆った状態を維持しつつ該フィルタを周方向に回転させるモータ(22)と、
前記フィルタで捕集した埃を吸気口と離隔した位置でフィルタから除去する埃除去手段(24)と、
を有する、ことを特徴とするメンテナンスフリーエアフィルタシステム。
【請求項2】
前記フィルタ(18)をガイドするガイドレール(26)がさらに設けられ、該ガイドレールは、吸気口(16)が設けられた機器筐体(12)の面の全幅又は/および全高からフィルタが大きくはみ出すことがないようにこれを屈曲させて案内する、ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステム。
【請求項3】
機器筐体(12)の内部に外気を導入するための吸気ファン(14)を備えた吸気口(16)をその一部で覆い、一のロール(28a)から送り出され他のロール(28b)に巻き取られるように機器筐体に取り付けられた帯状のフィルタ(18)と、
吸気口を覆った状態を維持しつつ該フィルタをいずれのロールにも巻き取り可能な正逆回転の切り替えが可能なモータ(22)と、
前記フィルタで捕集した埃を吸気口と離隔した位置でフィルタから除去する埃除去手段(24)と、
を有する、ことを特徴とするメンテナンスフリーエアフィルタシステム。
【請求項4】
前記埃除去手段(24)は、機器筐体(12)の内部の空気を排気するための排気口(32)に備えられた排気ファン(24a)であり、前記吸気口(16)で捕集された埃は、埃が付着した部分のフィルタを前記排気ファンに被さるように移動させることで排気圧により外部に吹き飛ばされる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステム。
【請求項5】
前記埃除去手段(24)は、前記吸気口(16)で捕集され前記フィルタ(18)に付着した埃を掻き落とすように、フィルタに接触して配置されたブラシ(24b)である、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステム。
【請求項6】
前記ブラシ(24b)は外周に植毛された円筒形状を有し、かつ、該ブラシはこれを軸回転させるモータおよびブラシの毛に接触した状態でブラシの軸と平行に配置・固定された棒材(25)を備え、
前記ブラシの毛はブラシの軸回転に伴って前記棒材によって撓ませられ、その撓みが開放された際の反発力により前記フィルタ(18)の表面を叩く、ことを特徴とする請求項5に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステム。
【請求項7】
前記ブラシ(24b)によって掻き取った埃を集塵するための集塵体(35)がブラシの近傍に備えられており、該集塵体は埃と反対の極に帯電することで埃を捕集する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステム。
【請求項8】
前記フィルタ(18)は、該フィルタの進行方向に伸びる複数の縦糸と該縦糸と直行する複数の横糸とから構成され、フィルタの外気側に向く面は主として前記縦糸のみからなるメッシュ構造を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のメンテナンスフリーエアフィルタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−104895(P2008−104895A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287174(P2006−287174)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】