説明

メンテナンス装置及び画像形成装置

【課題】量的にばらつきを持つ液滴が付着したブレード及びキャップであっても、簡略的かつコンパクトな機構で効率よく除去することが可能なメンテナンス装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド1のノズル面2を覆う移動可能なキャップ手段8と、ノズル面2をワイピングする移動可能なブレード手段11と、キャップ手段8及びブレード手段11と接触してキャップ手段8及びブレード手段11に付着した液滴13を除去するクリーニング手段33と、記録ヘッド1からの液滴13の吐出回数及び吐出量をそれぞれ異ならせた複数のメンテナンスモードの何れかを選択するメンテナンスモード選択手段とを有するメンテナンス装置5において、メンテナンスモード選択手段により選択されたメンテナンスモードに応じてキャップ手段8及びブレード手段11とクリーニング手段33との接触状況を制御する制御手段71を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置に使用可能な現像装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する記録ヘッドのノズル面をメンテナンスするメンテナンス装置として、ブレードにより記録ヘッドのノズル面をワイピングするものが知られている。しかし、この装置ではノズル面をブレードにてワイピングするとブレードに拭き取った液滴が付着して汚れ、このままの状態で次のワイピングを行うとノズル面に液滴が再転移して吐出不良が発生する虞がある。この不具合を防止すべく、ブレード清掃手段を設けてブレードに付着した液滴を掻き取る技術が既に知られている。しかし、上述のブレード清掃手段では、ブレードとブレード清掃手段に設けられた掻き取り手段との接触が不均一である場合に、十分に液滴を掻き取れないという問題があった。また、掻き取り手段によって掻き取られた液滴が掻き取り手段に堆積し、これを除去する手段が必要となり構成が複雑化すると共に除去手段作動のために作業効率が悪化するという問題があった。
【0003】
また、ノズル面の他のメンテナンス装置として、記録ヘッド内のインクの増粘を防止すべく定期的に予備吐出を行うものや、加圧手段により記録ヘッド内のインクをノズルから排出させて回復動作を行うもの、キャップを記録ヘッドのノズル面に当接させて吸引手段により記録ヘッド内のインクを吸引して回復動作を行うもの等が知られている。キャップにより吸引されたインクは全てキャップ内に流れ込み、吸引手段の作用により廃液タンク部に排出される。このキャップは、記録ヘッド内インクの乾燥防止としても働き、ノズル面に当接してノズル面を保湿させる。このときノズル面に当接するキャップ面にインクが付着した状態でキャッピングが行われると、ノズル面にキャップ痕としてインクが付着してしまい、このインクが増粘あるいは乾燥して次のワイピング時にキャップ痕を引きずり適正なワイピングができずに吐出不良が発生する虞がある。
【0004】
上述した不具合を解消すべく、キャップワイパーによりキャップをクリーニングし、キャップワイパーに付着したインクを清掃部材により除去する技術が、たとえば「特許文献1」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録ヘッドから吐出される液滴は環境によって粘度が変化し、高温環境においては低くなり低温環境においては高くなる。このため、メンテナンス装置のブレードやキャップに付着する液滴の量及び質には、環境条件に応じたばらつきが生じるため、環境条件によってはメンテナンス装置によって記録ヘッドの液滴を除去しきれず、不具合が発生してしまうという問題点がある。
【0006】
また、メンテナンス装置におけるメンテナンスモードとして、特定の色が出力されなかったりかすれたりする場合に行われる通常モード、通常モードを繰り返し行っても不具合が回復しない際に行われるリフレッシュモード、リフレッシュモードを行っても不具合が回復しない際に行われるエマージェンシーモード等の複数のモードを備えたメンテナンス装置が知られている。このようなメンテナンス装置においても、各モード時にブレード及びキャップに付着する液滴量にばらつきが生じ、全てのモードにおいて液滴を十分に除去しきれずに不具合が発生してしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決し、量的にばらつきを持つ液滴が付着したブレード及びキャップであっても、簡略的かつコンパクトな機構で効率よく除去することが可能なメンテナンス装置及びこれを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、記録媒体に液滴を吐出する記録ヘッドのメンテナンス装置であって、前記記録ヘッドのノズル面を覆う移動可能なキャップ手段と、前記ノズル面をワイピングする移動可能なブレード手段と、前記キャップ手段及び前記ブレード手段と接触して前記キャップ手段及び前記ブレード手段に付着した液滴を除去するクリーニング手段と、前記記録ヘッドからの液滴の吐出回数及び吐出量をそれぞれ異ならせた複数のメンテナンスモードの何れかを選択するメンテナンスモード選択手段とを有するメンテナンス装置において、前記メンテナンスモード選択手段により選択されたメンテナンスモードに応じて前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触状況を制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のメンテナンス装置において、さらに前記キャップ手段及び前記ブレード手段は前記クリーニング手段と接離する方向に往復移動可能であり、前記制御手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触時間を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のメンテナンス装置において、さらに前記キャップ手段及び前記ブレード手段は前記クリーニング手段と接離する方向に往復移動可能であり、前記制御手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触回数を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のメンテナンス装置において、さらに前記キャップ手段及び前記ブレード手段は前記クリーニング手段と接離する接離方向及び前記接離方向と直交する直交方向にそれぞれ往復移動可能であり、前記制御手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段が前記クリーニング手段に接触した状態での前記直交方向への移動回数を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載のメンテナンス装置において、さらに前記制御手段は環境条件に応じて前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触状況を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載のメンテナンス装置において、さらに前記クリーニング手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段に接触して前記キャップ手段及び前記ブレード手段に付着した液滴を除去するクリーニング部材を有し、前記クリーニング部材は前記キャップ手段及び前記ブレード手段と接触する部位を更新可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載のメンテナンス装置を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の画像形成装置において、さらに前記記録ヘッドが記録媒体の幅方向に複数配列されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液滴で汚れたキャップ手段及びブレード手段をクリーニング手段によりクリーニングする際に、メンテナンスモードに応じてキャップ手段及びブレード手段とクリーニング手段との接触状況(接触時間、接触回数、往復移動回数、ハウジング往復移動回数)を制御するので、キャップ手段及びブレード手段に付着した液滴を確実にクリーニングすることができ、クリーニング後に良好な記録動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に適用可能な記録ヘッドの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる記録ヘッド及びメンテナンス装置の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のメンテナンス動作を説明する概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のメンテナンス動作を説明する概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のメンテナンス動作を説明する概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置の移動機構を説明する概略図である。
【図7】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置の移動機構を説明する概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置の移動機構を説明する概略図である。
【図9】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置の移動機構を説明する概略図である。
【図10】本発明の一実施形態に用いられるクリーニング手段を有するメンテナンス装置を説明する概略図である。
【図11】本発明の一実施形態に用いられるクリーニング手段を有するメンテナンス装置を説明する概略図である。
【図12】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のクリーニング動作を説明する概略図である。
【図13】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のクリーニング動作を説明する概略図である。
【図14】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のクリーニング動作を説明する概略図である。
【図15】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のクリーニング動作を説明する概略図である。
【図16】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置のクリーニング動作を説明するフローチャートである。
【図17】本発明の一実施形態におけるメンテナンスモード及び環境条件とクリーニング動作との関係を示す図表である。
【図18】本発明の一実施形態の変形例に用いられるクリーニング手段を有するメンテナンス装置を説明する概略図である。
【図19】本発明の一実施形態の変形例に用いられるメンテナンス装置のクリーニング動作を説明するフローチャートである。
【図20】本発明の一実施形態の変形例に用いられるメンテナンス装置のクリーニング動作におけるクリーニング部材の状況を示す模式図である。
【図21】本発明の一実施形態の変形例に用いられるクリーニング手段を有するメンテナンス装置を説明する概略図である。
【図22】本発明の一実施形態に用いられるクリーニング手段を有するメンテナンス装置を搭載した画像形成装置の概略図である。
【図23】本発明の一実施形態に用いられる記録ヘッドを示す概略図である。
【図24】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置を説明する概略平面図である。
【図25】本発明の一実施形態に用いられるメンテナンス装置を説明する概略正面図である。
【図26】本発明の一実施形態に用いられるクリーニング手段を有するメンテナンス装置を搭載した画像形成装置の制御ブロック図である。
【図27】本発明の一実施形態における各メンテナンスモード及び各空吐出実施時でのクリーニング動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、記録媒体に対して液滴を吐出して画像形成を行う画像形成装置に用いられる記録ヘッド1を示しており、記録ヘッド1の液滴吐出面であるノズル面2には液滴を吐出するノズル3が複数個並設されている。この記録ヘッド1は、図2に示すように記録ヘッドホルダ4に支持されており、記録ヘッドホルダ4は図2において左右方向及び上下方向に移動自在に構成されている。
【0019】
図2において記録ヘッドホルダ4の下方近傍には、記録ヘッド1のメンテナンスを行うメンテナンス装置5が配設されている。メンテナンス装置5は、記録ヘッド1のノズル面2を覆うキャップ6及びこれを支持するキャップホルダ7を有するキャップ手段8、ノズル面2をワイピングするブレード9及びこれを支持するブレードホルダ10を有するブレード手段11を有しており、キャップ手段8及びブレード手段11はメンテナンス装置5のハウジング12にそれぞれ図2において上下方向に移動可能に支持されている。またキャップ6の下部には、記録ヘッド1から吐出された液滴を吸引する図示しない吸引手段が設けられている。
【0020】
次に、このメンテナンス装置5を用いた記録ヘッド1のメンテナンス動作について説明する。先ず、図3に示すように記録ヘッドホルダ4がメンテナンス装置5に接近すると共にキャップ手段8が後述するキャップ移動手段の作動により記録ヘッド1に接近し、キャップ6により記録ヘッド1のノズル面2を覆う。そして、図示しない吸引手段が作動することにより、記録ヘッド1内の液滴や気泡等を排出してメンテナンスが行われる。本実施形態では吸引手段を使用して吸引によりメンテナンスを行う方法を示したが、吸引手段を使用せずに図示しない加圧手段を使用し、記録ヘッド1内の液滴や気泡等を排出する構成でもよい。排出された廃液はキャップ6内に排出されて吸引手段により吸引される。キャップ6には記録ヘッド1内の液滴の乾燥を防止するための保湿機能もあり、記録ヘッド1のノズル3を覆うようにノズル面2に当接してキャッピングすることで記録ヘッド1内の液滴の乾燥を防止することができる。さらに、キャッピングされた状態で予備吐出(空吐出)を行うことにより記録ヘッド1内の乾燥がさらに防止される。予備吐出された液滴はキャップ6内に排出され、吸引手段により吸引される。なお、予備吐出はキャップ6をノズル面2に当接させた状態で行っても離間させた状態で行ってもよい。
【0021】
図4は、吸引(加圧)動作終了後に記録ヘッド1のノズル面2に液滴13が付着している状態を示している。この状態において、ブレード手段11によりノズル面2のワイピングを行う。ここで、ノズル面2とブレード9との間にはある程度の食い込み量が必要であるため、キャップ6の上面とブレード9の上面9aとの間には高低差hが設けられている。図5は、ワイピング後の状態を示している。メンテナンス装置5のハウジング12が後述する機構により図に矢印Aで示すワイピング方向に移動され、ノズル面2に付着していた液滴13がブレード9によって拭き取られる。このとき、ブレード9にはその上面9aと払拭面9bとの双方に液滴13が付着しており、この状態で次のワイピングを行うとブレード9に付着している液滴13がノズル面2に再転移してメンテナンス不良が発生する虞がある。また、ノズル面2と当接したキャップ6の上面にも記録ヘッド1から排出された液滴13が付着しており、この状態で次のキャッピングを行うとノズル面2にキャップ痕が付着し、キャップ痕の液滴が増粘乾燥して次のメンテナンス時でのワイピングにてキャップ痕を引きずり、適正なワイピングが行えずに吐出不良が発生する虞がある。そこで、クリーニング手段によりブレード9及びキャップ6に付着した液滴13を除去する必要がある。
【0022】
図6、図7、図8は、キャップ手段8及びブレード手段11を上下方向に移動させる移動機構を説明する図である。キャップ手段8のキャップホルダ7にはカムピン14が、ブレード手段11のブレードホルダ10にはカムピン15がそれぞれ取り付けられており、各ホルダ7,10はそれぞれハウジング12に設けられた図示しないスライドレールによって図の上下方向に移動可能に支持され、バネ18によって下方に付勢されている。キャップホルダ7の下方にはカムピン14と当接するカム16が支軸16aを中心としてハウジング12に回転自在に支持されており、ブレードホルダ10の下方にはカムピン15と当接するカム17が支軸17aを中心としてハウジング12に回転自在に支持されている。支軸16aの一端にはプーリ19が、支軸17aの一端にはプーリ20がそれぞれ取り付けられており、プーリ19にはタイミングベルト21が、プーリ20にはタイミングベルト22がそれぞれ掛けられている。各タイミングベルト21,22は、2個のプーリを同軸上に有しハウジング12に回転自在に支持されたダブルプーリ23にそれぞれ掛けられており、ダブルプーリ23の支軸には図示しないウォームホイールが設けられ、このウォームホイールには正逆転可能なモータ24の出力軸に取り付けられたウォーム25が噛合している。ダブルプーリ23の内部にはワンウェイクラッチが介装されており、たとえばモータ24が正転した際にカム16が回転してキャップ手段8が上下動し、モータ24が逆転した際にカム17が回転してブレード手段11が上下動するように構成されている。モータ24はハウジング12に支持されたステッピングモータであり、パルス制御により回転制御されている。
【0023】
図9は、ハウジング12を図9に矢印Bで示すワイピング方向に移動させる移動機構を説明する図である。同図においてハウジング12には2個のスライダ26が固定されており、各スライダ26にはタイミングベルト27が固定されている。タイミングベルト27はその一端をプーリ28に掛けられており、他端は2個のプーリを同軸上に有するダブルプーリ29の一方に掛けられている。ダブルプーリ29の他方にはタイミングベルト30の一端が掛けられており、タイミングベルト30の他端は正逆転可能なモータ31の出力軸に固定されたプーリ32に掛けられている。モータ31はステッピングモータであってパルス制御により回転制御されており、モータ31が正逆転することによりハウジング12が矢印B方向に往復移動される。
【0024】
図10は、メンテナンス動作を行って図5に示す状態のように液滴13によって汚れたキャップ6及びブレード9のクリーニングを行うクリーニング手段を示している。同図においてクリーニング手段33は、ガイド部34と吸収体35とを有している。ポリエチレンタレフタラート等の液滴13を吸収可能な不織布からなる吸収体35はガイド部34に沿って配設されており、吸収体35にはブレード9の上面9a及びキャップ6をクリーニングする水平面35aと、ブレード9の払拭面9bをクリーニングする垂直面35bとが形成されている。吸収体35の、図10における奥行き方向の長さL1はキャップ6及びブレード9の長さL2よりも大きくなるように形成されており、キャップ6及びブレード9の全長を一度にクリーニング可能となるように構成されている。
【0025】
上述のクリーニング手段33によるメンテナンス動作後におけるメンテナンス装置5の基本的なクリーニング動作を図12ないし図15に示す動作図及び図16に示すフローチャートを用いて説明する。
記録ヘッド1のメンテナンスが終了した信号が図示しない制御手段に入力される(ST01)と、液滴13が付着したキャップ6及びブレード9のクリーニングに移行する。メンテナンス動作終了後、キャップ6とブレード9とは図10に示すようにほぼ同じ高さに保たれている。先ず、ブレード9の払拭面9bをクリーニングするためにモータ24が逆転してブレード9が図12に矢印Cで示すように上昇する(ST02)。次にモータ31が作動してハウジング12が図12に矢印Dで示す方向に移動され(ST03)、払拭面9bが吸収体35の垂直面35bに接触して払拭面9bに付着していた液滴13が吸収体35によって除去される。この払拭面9bと垂直面35bとが当接した状態において、本実施形態ではこの状態を所定時間維持させ、この間に液滴13を吸収体35に吸収させている(ST04)。この所定時間については後述する。
【0026】
次に、モータ24が逆転してブレード9が図10に示す位置まで戻された後(ST05)、モータ31が作動してハウジング12がさらに矢印D方向に移動され(ST06)、キャップ6及びブレード9が吸収体35の水平面35aの下方に位置するとモータ31の作動が停止される。モータ31の停止後にモータ24が逆転し、図13に矢印Eで示すようにブレード9が上昇して(ST07)ブレード9の上面9aが水平面35aに接触する。この上面9aと水平面35aとが当接した状態においても本実施形態ではこの状態を所定時間維持させ、この間に液滴13を吸収体35に吸収させている(ST08)。ここでブレード9の上昇量は、先の払拭面9bのクリーニング時よりも低くキャップ6の上面よりも高い中間地点である。所定時間が経過するとブレード9の上面9a及び払拭面9bに付着した液滴13のクリーニングが完了する。
【0027】
ブレード9のクリーニングが完了すると、モータ24が逆転してブレード9が図10に示す位置まで戻された後(ST09)、モータ24が正転して図14に矢印Fで示すようにキャップ6が上昇して(ST10)キャップ6の上面が水平面35aに接触する。この上面と水平面35aとが当接した状態においても本実施形態ではこの状態を所定時間維持させ、この間に液滴13を吸収体35に吸収させている(ST11)。所定時間が経過して液滴13が吸収体35に吸収されてキャップ6のクリーニングが完了する。キャップ6のクリーニングが完了すると、モータ24が正転して図15に矢印Gで示すようにキャップ6が下降し(ST12)、キャップ6が図10に示す位置まで戻されてメンテナンス装置5のクリーニングが完了する。上述の説明ではブレード9をクリーニングした後にキャップ6をクリーニングしているが、この順に限られることはなく両者を同時にクリーニングしてもよい。
【0028】
上述した構成では、メンテナンス装置5のハウジング12をモータ31によってワイピング方向に移動させクリーニング手段33を固定した構成としたが、クリーニング手段33にワイピング方向への移動手段を搭載し、キャップ6及びブレード9を吸収体35に当接させた状態でクリーニング手段33を移動させてクリーニングを行う構成としてもよい。
【0029】
次に、クリーニング手段33によるクリーニング動作までの一連の動作について説明する。キャップ6及びブレード9のクリーニング動作は、基本的にはメンテナンス動作後に実施される。メンテナンス動作には、上述したように記録ヘッド1内の液滴13を吸引(あるいは加圧)して排出し、ノズル面2に付着した液滴13をブレード9で拭き取るワイピング動作があり、また記録ヘッド1内の液滴13の乾燥を防止するために定期的に行われる予備吐出(空吐出)がある。吸引により記録ヘッド1内から液滴13が排出されたときにはキャップ6に液滴13が付着して汚れ、その後ブレード9にてノズル面2をワイピングするとブレード9の上面9a及び払拭面9bが汚れる。予備吐出はキャップ6内に行われるが、予備吐出により記録ヘッド1から吐出される液滴13の量は微量であるためキャップ6は激しく汚れることはなく、本実施形態の構成ではクリーニング動作は行われないが、キャップ6のクリーニング性を向上させるために予備吐出後にもキャップ6のクリーニング動作を行ってもよい。本実施形態では、メンテナンス動作→クリーニング動作→メンテナンス動作という順序となる。メンテナンス動作完了後には記録媒体に対する液滴吐出が可能であり、メンテナンス動作完了後にすぐ記録動作を行い、その間にクリーニング動作を行ってもよく、クリーニング動作完了後に記録動作を行ってもよい。
【0030】
本実施形態では、メンテナンス動作を行うメンテナンスモードとして、2種類のモードを選択可能に構成されている。このモードの選択は、メンテナンス装置5に設けられている図示しないメンテナンスモード選択手段により選択される。1つは通常時のメンテナンスを行うモードであって記録ヘッド1から一定量(たとえば0.2cc)のインク吸引量を得るため一定時間吸引動作を行う通常モードであり、もう1つは通常モードよりも吸引量を増加させる(たとえば1cc)リフレッシュモードである。このとき、記録ヘッド1から吐出される液滴13の量が異なることからメンテナンス動作によりキャップ6及びブレード9に付着する液滴13の量も異なる。また、環境条件の変化に応じて液滴13の粘度も変化するため、キャップ6及びブレード9に付着する液滴13の量が変化する。このような液滴13の量的変化に対応するため、本実施形態では上述したクリーニング動作において、図16のステップST04,ST08,ST11において吸収体35とキャップ6及びブレード9の接触時間を変化させ、より確実にキャップ6及びブレード9のクリーニングを行っている。液滴13の量が多い場合には接触時間(所定時間)を長く設定し、吸収体35への液滴13の吸収量を多くさせる。さらにキャップ6及びブレード9を上下方向に往復移動させて吸収体35との接触回数を変化させる構成、接触時間と接触回数とを併用する構成を採用してもよい。さらに、図13に矢印Hで示すように、ブレード9(あるいはキャップ6)を吸収体35に当接させた状態でモータ31を正逆転させ、ハウジング12を往復移動させる構成等を採用してもよい。
【0031】
上述のクリーニング動作の具体例を説明する。通常モードではキャップ6及びブレード9の吸収体35との接触時間を1秒とし、キャップ6及びブレード9の往復移動は行わない。リフレッシュモードではキャップ6及びブレード9に付着している液滴13の量が多いことから、確実なクリーニングを実施するために吸収体35との接触時間を通常モードよりも長く2秒とし、さらにキャップ6及びブレード9を往復移動させて吸収体35に複数回接触させ、吸収体35に液滴13を確実に吸収させてクリーニングを行う。
【0032】
図17にメンテナンスモード及び環境条件に応じたクリーニング動作時におけるキャップ6及びブレード9と吸収体35との接触状況を示す。本実施形態において、通常モードで環境条件が常温あるいは高温の場合、キャップ6及びブレード9と吸収体35との接触時間を1秒として往復移動は行わない。環境条件が低温である場合には、液滴13の粘度が増加するため吸収体35への吸収性を向上させるべく接触時間を2秒としている。リフレッシュモードで環境条件が常温あるいは高温の場合には、リフレッシュモードにより記録ヘッド1から吐出される液滴13の量が増加するため接触時間を2秒として往復移動は行わない。環境条件が低温である場合には、より確実なクリーニングを実施するために往復移動を行っている。なお、ここで挙げた数値は一例であり、液滴13の性状や環境条件等に応じて適宜変更可能である。また、キャップ6及びブレード9あるいはハウジング12の往復移動との組み合わせも適宜変更可能である。この例ではハウジング12を往復移動させているが、クリーニング手段33を往復移動させる機構を設け、ハウジング12を固定させてクリーニング手段33を往復移動させる構成としてもよい。
【0033】
上述の構成によれば、液滴13で汚れたキャップ手段8及びブレード手段11をクリーニング手段33によりクリーニングする際に、メンテナンスモード及び環境条件に応じてキャップ手段8及びブレード手段11とクリーニング手段33との接触状況(接触時間、接触回数、往復移動回数、ハウジング往復移動回数)を制御するので、キャップ6及びブレード9に付着した液滴13を確実にクリーニングすることができ、クリーニング後に良好な記録動作を行うことができる。
【0034】
図18は、本発明の一実施形態で示したクリーニング手段33の変形例を示している。このクリーニング手段36は、ガイド部34を覆うように数メートルあるいは数十メートルの長尺のクリーニング部材としての不織布37を配置し、不織布37の一端側を供給ローラ38に巻成して他端側を巻取ローラ39に固着させ、巻取ローラ39をモータ40によって回転させる構成としている。
【0035】
クリーニング手段33の吸収体35では、キャップ6及びブレード9に付着した液滴13を繰り返し吸収させるとやがて吸収可能な許容量を超え、クリーニング不良及びワイピング不良等の不具合が発生してしまう。これを防止するためにクリーニングする領域の吸収体35を更新する必要があり、クリーニング手段36では巻取可能な不織布37によって液滴13を吸収する。クリーニング手段36は、予め設定された所定回数のクリーニングを実施して不織布37の液滴吸収許容量が一杯になったと判断されると、モータ40が作動して巻取ローラ39が図18に矢印Iで示す方向に回転し、一定量の不織布37が巻き取られて新たな不織布がクリーニング領域に配置される。この構成により、次のクリーニング時には更新された不織布37によりクリーニングを行うことができ、常にキャップ6及びブレード9のクリーニング性を維持することができる。
【0036】
上述したクリーニング手段36のクリーニング動作を図19に示すフローチャートに基づいて説明する。
記録ヘッド1のメンテナンスが終了した信号が図示しない制御手段に入力される(ST21)と、液滴13が付着したキャップ6及びブレード9のクリーニングに移行する。メンテナンス動作終了後、ブレード9の払拭面9bをクリーニングするためにモータ24が逆転してブレード9が上昇する(ST22)。次にモータ31が作動してハウジング12が図18の右方に移動され(ST23)、払拭面9bが不織布37の垂直面に接触して払拭面9bに付着していた液滴13が不織布37によって除去される。この払拭面9bと垂直面とが当接した状態を所定時間維持させ、この間に液滴13を不織布37に吸収させる(ST24)。
【0037】
次に、モータ24が逆転してブレード9が下降された後(ST25)、モータ31が作動してハウジング12がさらに右方に移動され(ST26)、キャップ6及びブレード9が吸収体35の水平面35aの下方に位置するとモータ31の作動が停止される。モータ31の停止後にモータ24が逆転し、ブレード9が上昇して(ST27)ブレード9の上面9aが不織布37の水平面に接触する。上面9aと水平面とが当接した状態を所定時間維持させ、この間に液滴13を不織布37に吸収させる(ST28)。所定時間が経過するとブレード9の上面9a及び払拭面9bに付着した液滴13のクリーニングが完了する。
【0038】
ブレード9のクリーニングが完了すると、モータ24が逆転してブレード9が下降された後(ST29)、モータ24が正転してキャップ6が上昇して(ST30)キャップ6の上面が不織布37の水平面に接触する。この上面と不織布37の水平面とが当接した状態を所定時間維持させ、この間に液滴13を不織布37に吸収させる(ST31)。所定時間が経過して液滴13が不織布37に吸収されるとキャップ6のクリーニングが完了する。キャップ6のクリーニングが完了すると、モータ24が正転してキャップ6が下降し(ST32)、キャップ6が初期位置まで戻されてメンテナンス装置5のクリーニングが完了する。クリーニング完了後、モータ40が作動し巻取ローラ39が図18に矢印Iで示す方向に回転し(ST33)、不織布37が巻取ローラ39に所定量巻き取られてクリーニング領域の不織布37が更新される。上述の説明ではブレード9をクリーニングした後にキャップ6をクリーニングしているが、この順に限られることはなく両者を同時にクリーニングしてもよい。
【0039】
上述の構成では、モータ40が作動し巻取ローラ39が図18に矢印Iで示す方向に回転して不織布37が巻取ローラ39に所定量巻き取られる構成であるが、キャップ6及びブレード9を不織布37に接触させた状態でモータ40を作動させ、キャップ6及びブレード9を不織布に摺擦させてクリーニングを行う構成を採用してもよい。
【0040】
上記実施形態ではハウジング12を往復移動させているが、クリーニング手段36を往復移動させる機構を設け、ハウジング12を固定させてクリーニング手段36を往復移動させる構成としてもよい。また、クリーニング手段36を往復移動させる代わりにモータ40を正逆転させ、不織布37のみを往復移動させる構成としてもよい。これにより、リフレッシュモードが選択されて記録ヘッド1からのインクの吐出量が増大してキャップ6及びブレード9に多量の液滴13が付着しても、不織布37が更新されることにより確実なクリーニングを行うことができる。不織布37を往復移動させる際の模式図を図20に示す。
【0041】
図21はメンテナンス装置が複数個並んだ場合のクリーニング手段の概略図であり、この形態では2個のメンテナンス装置5−1,5−2をクリーニングする場合を示している。クリーニング手段41はクリーニング手段36とほぼ同様に構成されており、ガイド部34に代えて全てのキャップ6―1,6−2及びブレード9−1,9−2をクリーニング可能となるように領域が拡大されたガイド部42を用い、このガイド部42に沿って不織布37を配置している点においてのみクリーニング手段36と相違している。
【0042】
クリーニング手段41によるクリーニング動作は上述と同様であり、各メンテナンス装置5−1,5−2に対して順番にクリーニングを行う。最初にメンテナンス装置5−1のブレード9−1の払拭面、上面、キャップ6−1の順でクリーニングを実施し、次にメンテナンス装置5−2のブレード9−2の払拭面、上面、キャップ6−2のクリーニングを実施する。なおクリーニング動作の順序はこれに限られることはなく、最初に各ブレード9−1,9−2の払拭面をそれぞれクリーニングし、その後に各メンテナンス装置5−1,5−2をガイド部42の下方に位置させてから各ブレード9−1,9−2の上面、各キャップ6−1,6−2をクリーニングしてもよい。また、不織布37の巻き取りは全てのクリーニング動作が完了した後に行っても、1つのメンテナンス装置のクリーニングが完了した後にそれぞれ行ってもよい。不織布37の吸収力が衰えなければ同じ領域で複数回のクリーニング動作を実施してもよい。
【0043】
図22は、上述したクリーニング手段33を有するメンテナンス装置55を搭載した画像形成装置を示している。同図において画像形成装置43は、図23に示すように記録ヘッド1が記録媒体44のほぼ全幅にわたり複数列配列されてライン構成されている。図示しない前後側板及びステーにより構成された装置本体45の右方には記録媒体44を積載する給紙トレイ46が配設されており、記録媒体44は分離ローラ47及び給紙ローラ48の作動により分離給送される。
【0044】
給紙トレイ46の左方には、記録媒体44を搬送する搬送部49が配設されている。搬送部49は搬送駆動ローラ50、搬送従動ローラ51、各ローラ50,51に掛け渡された無端ベルト52等を有しており、無端ベルト52には複数の孔が形成されている。無端ベルト52の下方には記録媒体44を吸引する吸引ファン53が配設されており、無端ベルト52上の記録媒体44が吸引ファン53の吸引力により無端ベルト52に吸着された状態で左方へと搬送される。各ローラ50,51の上方にはそれぞれ搬送ガイドローラ54が配設されており、各ガイドローラ54は図示しないガイド部材によって支持され自重により各ローラ50,51に当接している。搬送駆動ローラ50が図示しない駆動手段の作動により回転駆動されると、無端ベルト52が走行して記録媒体44が搬送される。無端ベルト52として、孔を有さず静電吸着により記録媒体44を吸着するものを用いてもよい。
【0045】
搬送部49の上方には、記録媒体44に対して液滴を吐出するヘッド部56が配設されている。ヘッド部56は記録媒体44の搬送方向と直交する図において上下方向に移動自在であり、記録ヘッド1のノズル面2のメンテナンス時にメンテナンス装置55がヘッド部56の下方に進入可能となるスペースを確保すべく上昇する。
【0046】
ヘッド部56には、図23に示すように液滴を吐出する記録ヘッド1が記録媒体44のほぼ全幅にわたるように配置されている。記録ヘッド1は、千鳥状となるように4列(1a,1b,1c,1d)配置され、各列5個(1a1〜1a5,1b1〜1b5,1c1〜1c5,1d1〜1d5)配置されている。本形態では、記録ヘッド1aと記録ヘッド1bにはイエロ(Y)とマゼンタ(M)が、記録ヘッド1cと記録ヘッド1dにはシアン(C)とブラック(K)がそれぞれ割り付けられ、千鳥状に配列されることにより150dpiの画像1ラインを形成している。各色のライン構成はこれに限られず、各色の配置もこれに限定されない。記録ヘッド1の構成もこれに限られず、記録ヘッドを2個並設して各記録ヘッドに1色のインクを入れた構成とし、画像解像度を向上させてもよい。ヘッド部56には、各記録ヘッド1a1〜1d5にインクをそれぞれ供給する分岐管が各色毎に配列され、分岐管の上部にはサブタンクが配設されている。サブタンクとヘッドとの水頭差により、記録ヘッド1のノズル3のメニスカスを保持するために適切な負圧が形成される。サブタンクの上流側には、インクを貯容するインクタンクが配設されている。
【0047】
搬送部49の左方には、記録媒体44を排紙する搬送ガイド部57が配設されており、搬送ガイド部57にて搬送された記録媒体はその左方に配設された排紙トレイ58上に排出される。排紙トレイ58には、記録媒体44の幅方向の揃えを行う1対のサイドフェンス59及び記録媒体44の搬送方向の揃えを行う1つのエンドフェンス60が設けられている。
【0048】
搬送部49の上方であってヘッド部56の右方には、記録ヘッド1のノズル面2をメンテナンスするメンテナンス装置5とほぼ同様に構成されたメンテナンス装置55が配設されている。メンテナンス装置55は、図24及び図25に示すように、各記録ヘッド1a1〜1d5に対応したキャップ手段8と同様のキャップ手段8a1〜8d5を有しており、各キャップ手段8a1〜8d5は各記録ヘッド1a1〜1d5と同様に千鳥状に5個4列配置されている。各キャップ手段8a1〜8d5は各記録ヘッド1a1〜1d5のノズル面2を覆うキャップ6をそれぞれ有しており、各キャップ手段8a1〜8a5―8b1〜8b5間及び8b1〜8b5−8c1〜8c5間にはブレード手段11と同様のブレード手段11a1〜11b5が配設されている。各キャップ手段8a1〜8d5は、キャップ6によりノズル面2を密閉した状態で図示しない吸引手段により液滴を吸引し、記録ヘッド1の吐出性能を回復させる。各キャップ手段8a1〜8a5,8b1〜8b5の下部には図示しない流路、吸引手段、圧力室等が配置されているが、これ等の配置はこれに限られず、コンパクト化を図るべくハウジング12の後側板の外側に配置し、チューブ等の経路を介して接続する構成等を採用してもよい。
【0049】
メンテナンス装置55には、メンテナンス装置5におけるキャップ手段8及びブレード手段11を上下動させる機構と同様の昇降機構部72が配置されており、この昇降機構部72の作動により各キャップ手段8a1〜8d5及び各ブレード手段11a1〜11b5が上下動される。また、メンテナンス装置55はメンテナンス装置5と同様にハウジング12が用紙搬送方向に沿ってスライド移動可能であり、記録ヘッド1のメンテナンス時にはハウジング12がヘッド部56の下方に位置し、記録動作時にはハウジング12は図22に示す位置に退避する。
【0050】
ハウジング12が退避位置を占めた際の上方にはクリーニング手段36が配設されている。記録ヘッド1のメンテナンス動作が完了してハウジング12が退避位置に位置した状態において、メンテナンス装置5と同様のキャップ手段8a1〜8d5及びブレード手段11a1〜11b5を上下動させる昇降機構部72が作動し、各キャップ手段8a1〜8d5及び各ブレード手段11a1〜11b5を上下動させてクリーニングを行う。クリーニング手段36には液滴を除去するための不織布37が設けられ、この不織布37はメンテナンス装置55の各キャップ手段8a1〜8d5及び各ブレード手段11a1〜11b5が用紙幅方向である主走査方向に複数並べられていることに対応し、全領域以上の長さを有するように構成されている。
【0051】
上述のメンテナンス装置55では、各記録ヘッド1a1〜1d5に対応して各キャップ手段8a1〜8d5が配置されており、ノズル面2をキャッピングして保湿している。また、メンテナンス動作時には、先ず記録ヘッド1a1〜1a5,1b1〜1b5をメンテナンスするためにキャップ手段8a1〜8a5,8b1〜8b5が記録ヘッド1a1〜1a5,1b1〜1b5と対応する位置までハウジング12が移動し、次に昇降機構部72が作動してキャップ手段8a1〜8b5が上昇してキャッピングを行い、吸引動作に移る。その後、ブレード手段11a1〜11b5が上昇した後にハウジング12がワイピング方向に移動してノズル面2のワイピングが行われる。その後、クリーニング手段36側にハウジング12が移動し、上述と同様にクリーニング動作が行われる。クリーニング動作後、記録ヘッド1c1〜1c5,1d1〜1d5のメンテナンス動作を行うべくキャップ手段8a1〜8a5,8b1〜8b5が記録ヘッド1c1〜1c5,1d1〜1d5と対応する位置までハウジング12が移動し、上述と同様にメンテナンス動作が行われた後にクリーニング動作が行われる。
【0052】
図26は、画像形成装置43の制御部を示すブロック図である。制御部61は、画像形成装置全体の制御を行うCPU62、CPU62が実行するプログラムやその他の固定データ等を格納するROM63、画像データ等を一時的に格納するRAM64、画像形成装置43の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)65、その他装置全体を制御するための入出力を処理するASIC66、ホスト側とのデータ及び信号の受信を行うためのホストI/F67、各ヘッドを駆動制御するためのヘッド駆動制御部及びヘッドドライバ、ヘッドアレイユニットを駆動するためのヘッドアレイユニット移動駆動部、搬送ベルト駆動モータを駆動するための搬送ベルト駆動部、吸引ファンモータを駆動するための吸引駆動部、メンテナンス装置移動モータ31を駆動するためのメンテナンス装置移動駆動部68、ブレード手段及びキャップ手段の昇降移動モータ24を駆動するためのブレード/キャップ昇降移動駆動部69、クリーニング装置巻取モータ40を駆動するためのクリーニング装置巻取駆動部70、環境温度及び湿度を検出する環境センサからの検知信号を入力するためのI/O等を備えている。これ等のうち、メンテナンス装置移動駆動部68及びブレード/キャップ昇降移動駆動部69及びクリーニング装置巻取駆動部70等により制御手段71が構成される。
【0053】
上述した実施形態において、メンテナンス動作を行うメンテナンスモードとして、通常時のメンテナンスを行う通常モードと、通常モードにおいて回復しない場合に行われ通常モードよりも吸引量を増加させるリフレッシュモードとを示したが、リフレッシュモードでも回復しない場合に行われさらに吸引量を増加させる緊急メンテナンスのエマージェンシーモード等も存在する。このエマージェンシーモードは最終手段のモードであり、ユーザ操作では行うことができない。
【0054】
さらに記録ヘッドのメンテナンス動作には上記した各モードの他、記録ヘッドから定期的にインクを吐出させる予備吐出(空吐出)モードがある。この予備吐出にもいくつかの種類があり、記録媒体に記録を行う前に増粘インクを吐出させる印字前空吐出モード、印字中に記録媒体間に吐出する印字中空吐出モード、印字終了後のデキャップ状態(記録ヘッドがキャップによってキャッピングされない状態)からキャッピングするまでの間に吐出する印字後空吐出モード、記録が終了し放置された後に再び印字をするための吐出を行う放置後空吐出モード等がある。これ等空吐出モードは環境条件や放置時間等の諸条件により異なり、それぞれメンテナンス装置のキャップ内に吐出することとなる。ただし、印字中空吐出モードに関しては記録媒体に対して印字中であるため、印字動作を中断させることなく記録媒体の搬送時の媒体間に空吐出を行う。つまり、搬送手段に開口されたベルト孔に吐出して搬送手段内部に設けられた空吐出受けに空吐出を行うこととなる。キャップ内に空吐出を行う場合にはキャップをできるだけノズル面に近付けた状態で空吐出が行われ、さらに空吐出と同時にキャップ下部に配置された吸引手段によりキャップ内に溜まるインクを吸引することができる。そのため記録ヘッドのノズル面を覆うキャップ面にはインクがほとんど付着しない状態であるため、全ての空吐出モード時にはキャップのクリーニング動作は実施しないこととする。ただし、設定条件を可変できるモードを搭載して空吐出時にもキャップクリーニングを実施可能としてもよい。さらに、長期間にわたって装置未使用の場合には、放置クリーニングモードとして通常モードに加えて空吐出を実施する。この場合は通常モードが実施されるためキャップ及びブレードのクリーニング動作は実施される。また、連続で印字を行うと帯電ミストや記録媒体の粉体等によりノズル面が汚染されてしまうため、定期的にメンテナンス動作が行われる。このときは通常モードで行われ、キャップ及びブレードのクリーニングは実施される。上述した各メンテナンスモード及び各空吐出実施時におけるクリーニング動作のフローチャートを図27に示す。
【符号の説明】
【0055】
1 記録ヘッド
2 ノズル面
5,55 メンテナンス装置
8 キャップ手段
11 ブレード手段
13 液滴
33,36,41 クリーニング手段
37 クリーニング部材(不織布)
43 画像形成装置
44 記録媒体
71 制御手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特許第3276493号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を吐出する記録ヘッドのメンテナンス装置であって、前記記録ヘッドのノズル面を覆う移動可能なキャップ手段と、前記ノズル面をワイピングする移動可能なブレード手段と、前記キャップ手段及び前記ブレード手段と接触して前記キャップ手段及び前記ブレード手段に付着した液滴を除去するクリーニング手段と、前記記録ヘッドからの液滴の吐出回数及び吐出量をそれぞれ異ならせた複数のメンテナンスモードの何れかを選択するメンテナンスモード選択手段とを有するメンテナンス装置において、
前記メンテナンスモード選択手段により選択されたメンテナンスモードに応じて前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触状況を制御する制御手段を有することを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
請求項1記載のメンテナンス装置において、
前記キャップ手段及び前記ブレード手段は前記クリーニング手段と接離する方向に往復移動可能であり、前記制御手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触時間を制御することを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項3】
請求項1記載のメンテナンス装置において、
前記キャップ手段及び前記ブレード手段は前記クリーニング手段と接離する方向に往復移動可能であり、前記制御手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触回数を制御することを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項4】
請求項1記載のメンテナンス装置において、
前記キャップ手段及び前記ブレード手段は前記クリーニング手段と接離する接離方向及び前記接離方向と直交する直交方向にそれぞれ往復移動可能であり、前記制御手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段が前記クリーニング手段に接触した状態での前記直交方向への移動回数を制御することを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載のメンテナンス装置において、
前記制御手段は環境条件に応じて前記キャップ手段及び前記ブレード手段と前記クリーニング手段との接触状況を制御することを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載のメンテナンス装置において、
前記クリーニング手段は前記キャップ手段及び前記ブレード手段に接触して前記キャップ手段及び前記ブレード手段に付着した液滴を除去するクリーニング部材を有し、前記クリーニング部材は前記キャップ手段及び前記ブレード手段と接触する部位を更新可能に構成されていることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載のメンテナンス装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
前記記録ヘッドが記録媒体の幅方向に複数配列されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2011−136466(P2011−136466A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297346(P2009−297346)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】