説明

モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器

【課題】システムの安全性が改善されたモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器及びそれを用いたモジュラー型高温ガス炉を提供することを目的とする。
【解決手段】 原子炉圧力容器部と、前記原子炉圧力容器部内に配置されるブロック型炉心部と、前記原子炉圧力容器部内で、前記ブロック型炉心部の上部に設置され、かつ、制御棒及び制御棒駆動装置を内包するスタンドパイプと、前記ブロック型炉心部に冷却材を流入及び/又は流出する第1の二重配管と、前記スタンドパイプ内から前記ブロック型炉心部へ冷却材を供給し、前記制御棒及び制御棒駆動装置を冷却する第1の冷却手段とを備えるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器を使用する。
その結果、スタンドパイプをモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器内に配置することができるので、システムの安全性をより改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモジュラー型高温ガス炉では、図3に模式的に示すように、ブロック型炉心を有する原子炉圧力容器(RPV)50は本体部51と本体部51に嵌合する上蓋部52に多数のスタンドパイプ53を外付けに設置している(例えば、非特許文献1〜3を参照)。スタンドパイプ53は定格運転時の原子炉出力制御や事故時の原子炉停止のために用いられる中性子を吸収する制御棒と燃料交換のための炉心への交換用スペースを有する。スタンドパイプ53は、原子炉圧力容器50(本体部51及び上蓋部52)と共に圧力境界を構成するため、その破損事故は原子炉にとって厳しい結果をもたらす(例えば、非特許文献1〜3を参照)。例えば、スタンドパイプ53の破断により、内包する制御棒が飛び出し、異常な核分裂を引き起こし、炉出力の暴走を引き起こす。従来はスタンドパイプ固定装置54を設置し(例えば、非特許文献4を参照)、スタンドパイプ破断による制御棒の飛び出しを防ぐ手法を取っているが、その装置の製造費用が莫大となる。
【0003】
また、スタンドパイプ53の破断は原子炉圧力容器(RPV)50内、さらには原子炉からの冷却材の喪失を引き起こす。この事象による影響は以下の通りである。初めに、原子炉圧力容器(RPV)50内(原子炉内)は急激に圧力が降下し、定格の除熱能力を失う。次に、冷却材中に存在する放射性物質が冷却材と共に環境に放出される。最後に、外部の空気がスタンドパイプ53の破断口から炉心に侵入し黒鉛酸化により燃料損傷を引き起こす。この事象に対する従来提案されている解決法のひとつとしては、原子炉圧力容器(RPV)50の外側に鋼鉄製の原子炉格納容器(RCV)を設置することにより、事故時においても冷却材を原子炉格納容器(RCV)内に留め、放射性物質の環境への放出を防ぐ方法がある(例えば、非特許文献1を参照)。また、別の方法として、原子炉建屋の空気漏洩量を建屋容量の10−20%/day以下に制限するものがある(例えば、非特許文献3を参照)。前者の課題としては鋼鉄製の巨大な原子炉格納容器(RCV)はその製造費が莫大となることである。また、後者については放射性物質の放出については、防ぐことができない。
【非特許文献1】MHTGR Development in the United States, J. of Progress in Nuclear Energy, Vol. 28, No.3, pp.265-346, 1994.
【非特許文献2】Design of High Temperature Engineering Test Reactor(HTTR), JAERI 1332, pp.240-244, Japan Atomic Energy Research Institute, 1994.
【非特許文献3】高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)の安全設計方針、日本原子力学会和文論文誌 Vol. 2, No.1, pp.55-67, 2003.
【非特許文献4】Reactor Pressure Vessel Design of the High Temperature Engineering Test Reactor, J. of Nuclear Engineering and Design 233, pp.103-112, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、システムの安全性がより改善されたモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器は、原子炉圧力容器部と、前記原子炉圧力容器部内に配置されるブロック型炉心部と、前記原子炉圧力容器部内で、前記ブロック型炉心部の上部に設置され、かつ、制御棒及び制御棒駆動装置を内包するスタンドパイプと、前記ブロック型炉心部に冷却材を流入及び/又は流出する第1の二重配管と、前記スタンドパイプ内から前記ブロック型炉心部へ冷却材を供給し、前記制御棒及び制御棒駆動装置を冷却する第1の冷却手段とを備えることを特徴とする。また、本発明の他の態様であるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器は、原子炉圧力容器部と、前記原子炉圧力容器部内に配置されるブロック型炉心部と、前記原子炉圧力容器部内で、前記ブロック型炉心部の上部に設置され、かつ、制御棒及び制御棒駆動装置を内包するスタンドパイプと、第1の二重配管及び第2の二重配管であって、該第1及び第2の二重配管の各二重配管内管は前記ブロック炉心部に冷却材を流入及び/又は流出し、かつ、該第1及び第2の二重配管の各二重配管外管は、前記スタンドパイプに冷却材を流入及び/又は流出する第1の二重配管及び第2の二重配管とを備えることを特徴とする。
【0006】
上記のモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器は、前記原子炉圧力容器部内の前記スタンドパイプの上部から冷却材を流入させる第2の冷却手段をさらに備えることができる。また、前記ブロック型炉心部と前記制御棒駆動装置を内包する前記スタンドパイプの上部との間に配置された断熱性部材をさらに備えることもできる。さらに、上記のモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器は、前記原子炉圧力容器部が本体部及び上蓋部から構成され、かつ、該本体部及び上蓋部を結合するフランジ部をさらに備えることもできる。また、上記のモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器は、前記原子炉圧力容器部が、本体部及び上蓋部から構成され、前記上蓋部で、前記スタンドパイプの上部にハッチ部をさらに備えることもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器によれば、スタンドパイプを内蔵しているので、システムの安全性を大幅に向上させることができる。また、スタンドパイプを原子炉圧力容器内蔵とすることにより、原子炉圧力容器の外側に原子炉格納容器(RCV)の設置等をする必要がないので大幅に設備コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器を、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態によるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器の構造概念を説明する図である。
【0009】
図1に示すように、モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器(以下、単に「原子炉圧力容器」とも称する。)1は、原子炉圧力容器部10、ブロック型炉心部11、コアバレル12、ブロック型炉心部11内を流れる冷却材16の流入及び流出を導く二重配管13、原子炉圧力容器1に内蔵され、ブロック型炉心11の上部に配置され、制御棒21a及び制御棒駆動装置21bを内包するコンテナ部20を有するスタンドパイプ19と、スタンドパイプ19内からブロック型炉心部11へ冷却材25を供給し、制御棒21a及び制御棒駆動装置21bを冷却する第1の冷却手段18とを備える。
【0010】
モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器を構成する原子炉圧力容器部10は、原子炉圧力容器部10内での高温度及び高圧力に耐え得る材質のものから製造され、例えば低合金鋼製である。また、原子炉圧力容器部10は、本体部10aと上蓋部10bとから構成され、フランジ部(容器フランジ)27にて、スタッドボルトにより固定される。
【0011】
ブロック型炉心部11は、燃料体、制御棒ガイドブロックおよび反射体17を含んで構成され、冷却材16が導入される。ここで、燃料体とは、いわゆるマルチホール型燃料体及び/又はピンインブロック型燃料体である。
【0012】
コアバレル12は、ブロック型炉心11を内包する。また、耐熱性及び耐圧性が要求されるので、その材質は、例えばニッケルクロム鉄合金である。
【0013】
二重配管13は、図1に示すように、ブロック型炉心11内を流れる冷却材16の流入を導く二重配管外管14及びブロック型炉心11内を流れる冷却材16の流出を導く二重配管内管15から構成される。接続用の二重配管13はコアバレル12に接続される。二重配管13を構成する二重配管外管14と二重配管内管15の管径は、それぞれの管内を流れる冷却材16の流量などに応じて適宜決められる。例えば、二重配管外管14の管径(外径及び内径)は、それぞれ約2.5m、2.3mであり、二重配管内管15の管径(外径及び内径)は、それぞれ約2.0m、1.8mである。また、二重配管13の材質は、耐熱性及び耐圧性の点から、例えば低合金鋼である。
【0014】
ブロック型炉心部11内を流れる冷却材16としては、例えば、ヘリウム、又はヘリウムとネオン、窒素若しくは炭酸ガスの混合物などが挙げられる。冷却材として混合物を使用する場合には各成分は任意の比率(体積比)で混合できる。これらの冷却材のうち、
希ガスであるヘリウムが不活性であり、物性が理想気体に近いため好ましい。なお、これらの組成物及び混合物は、好ましくは圧縮された状態、例えば約3〜9MPaの圧縮された状態で使用される。ブロック型炉心部11内を流れる冷却材16の流量は、使用される燃料の仕様等によって適宜決められる。例えば、ブロック型炉心部11の容積が約84mであり、その断面積が約10mである場合には、冷却材16の流速は約6〜27m/sと規定でき、その流量は、約100〜450kg(約60〜270m)/sである。
ブロック型炉心部11内で発生する核分裂により作り出された核熱はブロック型炉心部11内(反射板10内)を流れる冷却材16に伝えられ、冷却材16は燃料の仕様により決定される温度700〜1000℃まで上昇する。
【0015】
スタンドパイプ19は、図1に示されるように、原子炉圧力容器部10に内蔵され、燃料交換用機器用のチャンネル22、及び制御棒21aと制御棒駆動装置21bを内包するコンテナ20から構成される。制御棒21aは定格運転時における原子炉出力の制御や緊急時における原子炉停止に使用される。制御棒駆動装置21bは原子炉出力の制御のために制御棒21aを駆動し、コンテナ部20の上部に配置される。制御棒駆動装置21bは、スタンドパイプ19の外表面から原子炉圧力容器部10内表面への熱放射23および自然対流24により冷却される。
スタントパイプ19は、原子炉圧力容器部10内の本体部10aにおいて、ブロック型炉心部11の上部(上方部)に、例えばスタントパイプ19の上部の溶接部31で、例えば原子炉圧力容器部10内に配置されたノズル(図示せず)に溶接により設置される。スタンドパイプ19の材質は、耐熱性及び耐圧性を考慮すると、例えば低合金鋼である。
【0016】
コンテナ20の上方の側部、特には制御棒駆動装置21bを内包するコンテナ部20(の上部)の下方部には、冷却材25の導入のための空孔部20aが設けられている。一方、コンテナ部20の下方端部には、空孔部20bが設けられている。空孔部20a及び空孔部20bの管径(直径)は、冷却材25の流量等に応じて適宜決められる。冷却材25は、スタンドパイプ19を構成するコンテナ部20の上部の空孔部20aからコンテナ部20内に導入され、制御棒21a及び制御棒駆動装置21bを冷却し、ブロック型炉心11内へ流れる。
【0017】
スタンドパイプ19を流れる冷却材25としては、ヘリウム、又はヘリウムとネオン、窒素若しくは炭酸ガスの混合物などが挙げられる。冷却材として混合物を使用する場合には各成分は任意の比率(体積比)で混合できる。これらの冷却材のうち、希ガスであるヘリウムが不活性であり、物性が理想気体に近いため好ましい。なお、これらの組成物及び混合物は、好ましくは圧縮された状態、例えば約3〜9MPaの圧縮された状態で使用される。冷却材25は、図示しないが例えば、原子炉圧力容器部10の側面に接続された他の二重配管(図示せず)を用いて空孔部21aに供給することができる。
【0018】
スタンドパイプ19を流れる冷却材25の量は、ブロック型炉心部11内を流れる冷却材16の流量や流速、若しくはその温度、或いは使用される燃料の仕様等によって適宜決められる。例えば、上述のように、冷却材16の流量が約100〜450kg(約60〜270m)/sの場合には、スタンドパイプへ流入する冷却材25の流れは、スタンドパイプ流入冷却材25の流量は、約0.1〜1.0kg(約0.06〜0.6m)/hrとする。
このようにスタンドパイプへ流入する冷却材25の流量を規定し、スタンドパイプ内外の圧力を等しくすることで、高温の冷却材16のスタンドパイプ19への侵入を防ぐ。
【0019】
なお、燃料交換燃料交換用チャンネル22は、燃料交換燃料時に使用されるチャンネル(通路)であり、制御棒21aは前記高温ガス炉の核分裂を制御する。
【0020】
また、原子炉圧力容器1は、メンテナンスや燃料交換時に原子炉圧力容器部10内のスタンドパイプ19にアクセスするための容器フランジ27を備えることもできる。この容器フランジ27は、上述のように、原子炉圧力容器部10の本体部10aと上蓋部10bとを、スタッドボルトにより固定するように用いられるものである。このフランジ部の存在により、原子炉圧力容器部10の本体部10aから上蓋部10bを開閉できるので、メンテナンスや燃料交換時に原子炉圧力容器部10内のスタンドパイプ19にアクセスすることが可能になる。
【0021】
この原子炉圧力容器1は、モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器に用いることができる。また、上述のように、この実施形態による原子炉圧力容器1は、スタンドパイプ19内に配置された制御棒21a及び制御棒駆動装置21bを冷却材25により冷却する第1の冷却手段18を備えるので、制御棒駆動装置21bを、ブロック炉心部11の温度と比較して非常に低い温度、すなわち、制御棒駆動装置21bが正常に機能する上限温度である約150℃よりも低い温度、例えば約100℃に維持することができるので、スタンドパイプ19を原子炉圧力容器1内に内蔵することが可能になる。
【0022】
この実施形態によるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器によれば、スタンドパイプを内蔵しているので、システムの安全性を大幅に向上させることができる。すなわち、スタンドパイプを原子炉の圧力境界とする必要がなくなり、従来の安全評価で考慮する必要のあった制御棒飛び出し、放射性物質の放出及び空気侵入による炉心酸化の発生等の事故事象が発生しない。
また、スタンドパイプを原子炉圧力容器内蔵とすることにより、制御棒引き抜き事故、冷却材損失等の事故事象の発生を生じない原子炉圧力容器構造とすることができるので、事故事象のための対策である原子炉格納容器(RCV)の設置等を削減することができ、また、大幅に設備コストを削減することができる。
【0023】
次に、本発明の他の実施形態を図2を用いて説明する。図2は、本発明の他の実施形態によるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器の構造概念を説明する図である。
【0024】
図2に示すモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器は、図1に示すモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器の応用例であり、図1の構造概念と重複する点については、説明を省略する。
【0025】
この実施形態に係るモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器41は、第1の二重配管13と第2の二重配管43とを備える。
この実施形態に係るモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器41では、第1の二重配管13は、冷却材25をスタンドパイプ19内に流入させる第1の二重配管外管14と、ブロック炉心部11内からの冷却材16を流出させる第1の二重配管内管15とからなる。また、第2の二重配管43は、第1の二重配管外管14からスタンドパイプ19内に流入される冷却材25の余剰量を流出させる第2の二重配管外管44と、ブロック炉心部11内へ冷却材16を流入させる第2の二重配管内管45とからなる。
【0026】
この実施形態では、第1の二重配管内管15と第2の二重配管内管45はコアバレル12に接続される。第1の二重配管外管14と第2の二重配管外管44原子炉圧力容器部10内に接続され、スタンドパイプ19のコンテナ部20の空孔部21に冷却材25を供給する。
第1の二重配管13を構成する二重配管外管14と二重配管内管15の管径(外径及び内径)、及び第2の二重配管43を構成する二重配管外管44と二重配管内管45の管径(外径及び内径)は、それぞれの管内を流れる冷却材16及び冷却材25の流量などに応じて適宜決められる。例えば、第1の二重配管外管14の管径(外径及び内径)は、それぞれ、約2.5m、2.3mであり、第1の二重配管内管15の管径(外径及び内径)は、それぞれ、約2.0m、1.8mである。また、例えば、第2の二重配管外管14の管径(外径及び内径)は、それぞれ、約2.5m、2.3mであり、第2の二重配管内管15の管径(外径及び内径)は、それぞれ、約2.0m、1.8mである。また、第1二重配管13及び第2の二重配管43の材質は、耐熱性及び耐圧性の点から、例えば低合金鋼である。
【0027】
冷却材16及び冷却材25を供給する第1の二重配管13及び第2の二重配管43を上記のように構成することにより、冷却材16の流量及び冷却材25の流量の調整が容易となり、スタンドパイプ19内の制御棒21a及び制御装置21bのより安定した冷却を達成することが可能になる。
【0028】
また、この実施形態に係るモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器41は、さらに別の制御棒21a及び制御棒駆動装置21bの第2の冷却手段(冷却材供給手段)42、すなわち、前記原子炉圧力容器部10内の前記スタンドパイプ19の上部から冷却材48を流入させる第2の冷却材供給用配管46をさらに備えている。また、この実施形態に係るモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器41は、さらに断熱性部材29を備えることができる。
【0029】
図2に示されるように、第2の冷却手段42、すなわち、第2の冷却材供給用配管46を含んでなる冷却手段は、アクセス用容器ハッチ47を介してスタンドパイプ19の上部に接続され、第2のスタンドパイプ用冷却材48がスタンドパイプ19の上部から流入する。この第2のスタンドパイプ用冷却材48によりスタンドパイプ19内の制御棒21a及び制御棒駆動装置21bが冷却され、制御棒21a及び制御棒駆動装置21bをより低温度、例えば100℃に、より安定に維持することが可能となる。
【0030】
スタンドパイプ用冷却材48としては、例えば、ヘリウム、又はヘリウムとネオン、窒素若しくは炭酸ガスの混合物などが挙げられる。冷却材として混合物を使用する場合には各成分は任意の比率(体積比)で混合できる。これらの冷却材のうち、希ガスであるヘリウムが不活性であり、物性が理想気体に近いため好ましい。なお、これらの組成物及び混合物は、好ましくは圧縮された状態、例えば約3〜9MPaの圧縮された状態で使用される。また、冷却材48は、より好ましくは、ブロック型炉心を流れる冷却材16及びスタンドパイプを流れる冷却材25とは同一の組成の冷却材を使用する。
冷却材48の流量は、ブロック型炉心部11への冷却材16の流量、流速及び/又は温度、スタンドパイプへの冷却材25の流量、流速及び/又は温度、或いは使用される燃料の仕様等によって適宜決められる。例えば、上記のように、ブロック型炉心部11への冷却材16の流量が約100〜450(約60〜270m)kg/sであり、スタンドパイプへの冷却材25の流量は約1.0〜5.0kg(約0.6〜3.0m)/sである。また、冷却材48の流量は、約0.1〜1.0kg(約0.06〜0.6m)/sである。
【0031】
断熱性部材(内部断熱材)29は、ブロック型炉心部11と制御棒駆動装置21bを内包したスタンドパイプ19の上部19aとの間に配置される。断熱性部材29は、好ましくはブロック型炉心部11の上部の全面を覆うように配置される。断熱性部材29としては、例えばステンレス材やロックウール等より構成される金属保温材を使用することができる。断熱性部材29は、断熱材支持機構32、例えば、低合金鋼の網目状の部材(メッシュ)により原子炉圧力容器部10内に支持される。
この(内部)断熱性部材29により、ブロック型炉心部11からの熱影響、例えば、原子炉圧力容器部10内の熱放射及び/又はブロック炉心冷却材16による制御棒駆動装置21が加熱されるのを抑制することができ、制御棒21a及び制御棒駆動装置21bをより低温度、例えば100℃により安定に維持することが可能となる。
【0032】
なお、図示しないが、上記のこれらの冷却材16、25及び48は公知の方法、例えば熱交換器等を用いて冷却し、循環機等により原子炉圧力容器10内に供給することにより、再度、冷却材16、25及び48としてそれぞれ用いることができる。
【0033】
また、図2に示されるように、アクセス用容器ハッチ47は、原子炉圧力用容器部10の上蓋部10bに形成され、複数のスタンドパイプ19の頂上部に位置する空孔部と結合(接合)されるアクセス用容器ハッチ本体部47aと開閉可能な容器ハッチ蓋部47bとから構成される。このように、スタンドパイプ19の上部に配置されたアクセス用容器ハッチ47は開閉可能である。よって、第2のスタンドパイプ冷却材48をスタンドパイプ内に流入するたけでなく、アクセス用容器ハッチ47を開閉して、スタンドパイプ19の補修などのメンテナンス及び燃料交換を容易にすることができる。なお、原子炉圧力用容器41は、チャンネル用のアクセス用容器ハッチ47cを備えていてもよい。
【0034】
このように、第2のスタンドパイプ流入用冷却材48をスタンドパイプ19内のコンテナ部20上部から流入させることにより、制御棒21a及び制御棒駆動装置21bを冷却し、高温の冷却材16がスタンドパイプ内に侵入するのを防ぐと共に、制御棒駆動装置21bをより低温度に維持することが可能になる。さらに、原子炉圧力容器41は、断熱性部材29を内包しているので、制御棒駆動装置21へのブロック型炉心部11からの熱影響を防ぐことができる。
【0035】
この実施形態によるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器によれば、先の実施形態で説明した効果の他に、制御棒及び制御棒駆動装置を冷却する第2の冷却手段及び/又は
ブロック型炉心部と制御棒駆動装置を内包するスタンドパイプの上部との間に断熱性部材を配置しているので、制御棒駆動装置雰囲気温度を(より低温度の)100℃近傍により安定に抑えることができる。よって、スタンドパイプを圧力容器内により安定した状態で内蔵することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器は、スタンドパイプを内蔵するいわゆるスタンドパイプ内蔵型モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器であり、スタンドパイプを原子炉の圧力境界とする必要がなくなるので、システムの安全性がより改善されたモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器及びそれを用いたモジュラー型高温ガス炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態によるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器の構造概念を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態によるモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器の構造概念を示す図である。
【図3】従来のモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器の構造概念を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器、10…原子炉圧力容器部、10a…本体部、10b…上蓋部、11…ブロック型炉心部、12…コアバレル、13…第1の二重配管、14…第1の二重配管外管、15…第1の二重配管内管、16…(ブロック型炉心11内を流れる)冷却材、17…反射体および燃料体、18…第1の冷却手段、19…スタンドパイプ、19a…スタンドパイプの上部、20…コンテナ部、21a…制御棒、21b…制御棒駆動装置、22…燃料交換機用チャンネル、23…熱放射、24…自然対流、25…(スタンドパイプへ流入する)冷却材、27…容器フランジ、29…断熱性部材、30…アクセス用容器ハッチ、31…スタンドパイプ溶接部、32…断熱材支持機構、41…モジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器、42…第2の冷却手段、43…第2の二重配管、44…第2の二重配管外管、45…第2の二重配管内管、46…第2の冷却材供給用配管、47…アクセス用容器ハッチ、47a…アクセス用容器ハッチ本体部、47b…アクセス用容器ハッチ蓋部、47c…(チャンネル用)アクセス用容器ハッチ、48…(第2のスタンドパイプ用)冷却材、50…原子炉圧力容器(RPV)、51…本体部、52…上蓋部、53…スタンドパイプ、54…スタンドパイプ固定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器部と、
前記原子炉圧力容器部内に配置されるブロック型炉心部と、
前記原子炉圧力容器部内で、前記ブロック型炉心部の上部に設置され、かつ、制御棒及び制御棒駆動装置を内包するスタンドパイプと、
前記ブロック型炉心部に冷却材を流入及び/又は流出する第1の二重配管と、
前記スタンドパイプ内から前記ブロック型炉心部へ冷却材を供給し、前記制御棒及び制御棒駆動装置を冷却する第1の冷却手段と
を備えることを特徴とするモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器。
【請求項2】
原子炉圧力容器部と、
前記原子炉圧力容器部内に配置されるブロック型炉心部と、
前記原子炉圧力容器部内で、前記ブロック型炉心部の上部に設置され、かつ、制御棒及び制御棒駆動装置を内包するスタンドパイプと、
第1の二重配管及び第2の二重配管であって、該第1及び第2の二重配管の各二重配管内管は前記ブロック炉心部に冷却材を流入及び/又は流出し、かつ、該第1及び第2の二重配管の各二重配管外管は、前記スタンドパイプに冷却材を流入及び/又は流出する第1の二重配管及び第2の二重配管と
を備えることを特徴とするモジュラー型高温ガス炉用原子炉圧力容器。
【請求項3】
前記原子炉圧力容器部内の前記スタンドパイプの上部から冷却材を流入させる第2の冷手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載の原子炉圧力容器。
【請求項4】
前記ブロック型炉心部と前記制御棒駆動装置を内包する前記スタンドパイプの上部との間に配置された断熱性部材をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の原子炉圧力容器。
【請求項5】
前記原子炉圧力容器部が、本体部及び上蓋部から構成され、
該本体部及び上蓋部を結合するフランジ部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の原子炉圧力容器。
【請求項6】
前記原子炉圧力容器部が、本体部及び上蓋部から構成され、
前記上蓋部で、前記スタンドパイプの上部にハッチ部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の原子炉圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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