説明

モチーフ・グラフトされたハイブリッドポリペプチドおよびその使用

【課題】タンパク質凝集の疾患に関与するポリペプチドの疾患関連アイソフォームに特異的に結合するハイブリッドポリペプチドを提供する。
【解決手段】骨格となる抗体の全部または一部を含むポリペプチドと、PrPc形態のプリオンからの少なくとも1つのαヘリックスを含む残基を含むハイブリッドポリペプチドはかかる特定の態様において、感染性形態のプリオン(PrPSc)に特異的に結合し、疾患の診断および治療に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
助成金
本出願において提供する対象は、国立衛生研究所によって助成金番号HL63817の下で政府の援助を受けたものである。政府はかかる対象について一定の権利を有しうる。
【0002】
関連出願
2002年4月19日出願の、R. Anthony Williamson、Dennis R. Burton および Gianluca Moronciniの、米国仮出願第60/371,610号「細胞のプリオンポリペプチドの複製インターフェイスを含有し、その他のタンパク質凝集疾患からのモチーフ・グラフトされたハイブリッドポリペプチおよびその使用(MOTIF-GRANTED HYBRID POLYPEPTIDES CONTAINING THE REPLICATIVE INTERFACE OF CELLULAR PRION POLYPEPTIDE AND FROM OTHER DISEASES OF PROTEIN AGGREGATION AND USES THEREOF」からの優先権を主張する。
【0003】
本出願における主題は、本出願と同日出願の国際PCT出願(整理番号22908-1229PC)、「細胞のプリオンポリペプチドの複製インターフェイスを含有し、その他のタンパク質コンフォメーション疾患からのモチーフを含むモチーフ・グラフトされたハイブリッドポリペプチおよびその使用(MOTIF-GRANTED HYBRID POLYPEPTIDES CONTAINING THE REPLICATIVE INTERFACE OF CELLULAR POLYPEPTIDE AND MOTIFS FROM OTHER DISEASES OF PROTEIN CONFORMATION AND USES THEREOF)」の主題に関する。これら出願のそれぞれの主題を引用によりその全体を本出願に含める。許容される場合、これら出願のそれぞれの主題を引用によりその全体を本出願に含める。
【背景技術】
【0004】
感染性海綿状脳症、例えばヒトのクロイツフェルトヤコブ病(CJD)およびウシ海綿状脳症(BSE;狂牛病としても知られる)および動物のスクレイピーは、ウシ、ヒツジ、ヒトおよびその他の動物の密接に関連した痴呆疾患である。ウシ海綿状脳症 (BSE)、ヒツジのスクレイピー、ヒトのクルおよびクロイツフェルトヤコブ病(CJD)は、感染性海綿状脳症(TSE)と称される神経変性障害の一群のわずかな例にすぎない;それらは運動制御の欠陥、痴呆、麻痺、失明、萎縮病そして最終的に死によって特徴づけられる。これらの疾患は、遺伝性の場合も孤発性の場合もある。TSEにかかる危険性はヒトについては、BSEに感染したウシ由来の食品を介する。別の感染危険性はTSE に感染したドナーからのヒト血液および血液製剤を介する感染である可能性がある。シカおよびオオジカのこのファミリーのほとんど致命的な神経変性疾患および慢性萎縮病疾患 (CWD) はプリオンによって引き起こされる(Prusiner et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13363-13383)。
【0005】
プリオンタンパク質はヒトから魚までのすべての脊椎動物のゲノムに通常みられる遺伝子の産物に対応する。該遺伝子は典型的には、257アミノ酸をコードする約771ヌクレオチドによってコードされる。それはすべてではないが、多くは、動物の組織において、常に細胞膜表面の外側に発現する。89種を超える種からの遺伝子が配列決定されている:挿入および欠失およびその他の変化をともなうものを含む突然変異も同定され、配列決定されている。PrP関連核酸は、ショウジョウバエ、線虫であるシノラブディス・エレガンスおよび酵母などの生物において検出されている。
【0006】
プリオンタンパク質前駆体(PrPまたはPrPc) は正常なプリオンタンパク質の細胞のアイソフォームである。感染性プリオンタンパク質はPrPScと称され、正常プリオンタンパク質はPrPcである(「sc」はスクレイピーを示し、「c」は細胞性であることを示す)。切型および組換え形態も知られている。それゆえプリオンタンパク質には2種類のアイソフォームがあり、一方は正常に発現し他方は異常に存在する。PrPScはアミロイドプラークの主要成分であり、スクレイピーに感染したヒツジの脳およびプリオン疾患に感染したヒトその他の動物の脳にみられることがある。PrPcからPrPScへの変換は、タンパク質のαヘリックス領域のβシートへの変換を伴うと考えられている。家族性プリオン疾患に関連する突然変異は、変換の起こりやすさを上昇させる;異なる突然変異の結果、異なる疾患症状が起こる。CJDは痴呆、GSS (Gerstmann-Strassler-Scheinker Disease)は運動失調、FFI (fatal familial insomnia)は不眠である。
【0007】
遺伝形態のプリオン疾患がヒトにおけるすべてのケースのプリオン疾患、とりわけ GSS、家族性 CJDおよび FFI の約25%を構成する。それぞれの遺伝形態において、突然変異がPRNP遺伝子のORF(オープンリーディングフレーム)においてみられている。PRNP ORFの最初の半分は、約 170 bpを含み、ヌクレオチドとしてグアニジン (G)およびシチジン(C)の含量が高く(約 80%)、この配列のほとんどが24 bp (または27 bp)リピート中にて組み立てられている。これら配列間の差異はほとんど観察されず、その他の種においても同様であり、このことは、これらが進化の過程で高度に保存されていることを示唆する。該遺伝子は、神経細胞ならびに神経節および末梢神経系の神経において優勢に発現している。それは中枢神経系(CNS)および神経細胞に独占的に発現しているのではなく、その他の組織、例えば腎臓、心臓、肺および脾臓にも発現している。多数の突然変異がPRNP ORF中に同定されており、しばしば遺伝的に遺伝性プリオン疾患と関係している。PrPcタンパク質はグリコシルホスファチジルイノシトールにアンカーされた糖タンパク質として発現され、神経細胞の細胞膜の外側にみられ、程度は低いがリンパ球およびその他の細胞にもみられる。
【0008】
種間での伝染は、伝染速度が遅く、潜伏時間が長いことによって特徴づけられる。BSEは既に、マウス、ヒツジ、ブタおよびマーモセットに伝染している。伝染は、変化した形態の宿主遺伝子産物が誘導されることによって特徴づけられ、かかる誘導はその感染性物質の相同成分との相互作用を介する。マウスはヒトプリオンに感染せず、ヒトPrPのコピーを有するトランスジェニックマウスも同様である;しかし、ハイブリッド・マウス/ヒト PrPを有するトランスジェニックマウスはヒトプリオンに感染する。これは、宿主の因子とPrPとの間の相互作用が伝染に必要であり、マウス因子はヒトPrPと相互作用するためにはヒト因子に十分に類似していないことを示唆する。マウス配列を含めることにより、その他の点ではヒト由来であるPrPは相互作用を回復した。
【0009】
感染性プリオンの唯一の既知の成分は異常であり、疾患を引き起こすアイソフォームのプリオンタンパク質であってPrPScと称されている。正常の細胞のアイソフォーム(PrPc)と感染組織におけるPrPScとを区別するための標準的イムノアッセイは、PrPrのタンパク分解、次いで抗原的にはPrPcと区別できないプロテアーゼ耐性のPrPScコア(PrP 23-30と称される)の検出に依存するものである(例えば、Oesch et al. (1985) Cell 40:735-746; Prusiner (1999) in Prion Biology and Diseases (ed. S.B. Prusiner)、Cold Spring harbor Laboratory Pressを参照されたい)。
【0010】
ヨーロッパにおける新しい変異体形態のCJD (vCJD)の出現はBSE プリオンで傷んだ肉の摂食に密接に関連しており、プリオンが食品および血液製剤にもたらす脅威に対する関心が高まってきた(Bruce et al. (1997) Nature 389:498-501; Hill et al. (1997) Nature 389:448-450)。ヒトおよびウシのPrPを有するトランスジェニックマウスにおける研究は、BSEに感染したウシからのプリオンがvCJDを引き起こすという証拠を提供する(Scott et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96:15137-15142; Scott et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94: 14279-14284; および Hill et al. (1997) Nature 389:448-450)。CWDとBSEプリオンとが類似の系統(株)特性を有するか、また、CWDがヒトに対する種の障壁を超えることができるかは、主要な公衆衛生上の問題である(Horiuchi et al. (1999) Structure 7:R231-R240; Raymond et al. (1997) Nature 388:285-288)。プリオン感染についての感度の高い診断試験が存在しないため、BSE プリオンに曝された多くの個人のうちどれほどが現在疾患の潜伏期にあるのかの正確な評価が出来ないでいた(Aguzzi et al. (2001) Nat. Med. 7:289-290)。
【0011】
プリオン診断において使用可能性があるプロトタイプアッセイが開発されている(例えば、Safer et al. (1998) Nat. Med 4:1157-1165を参照されたい)。例えば、コンフォメーション-依存性イムノアッセイが開発されており、これは抗体を変性および未変性形態のPrPへ同時に結合させることによりをPrPScを定量する。このアッセイ(Safar et al. (2002) Nature Biotechnology 2002年3月20日発行を参照されたい;同時係属米国特許出願第09/627,218号も参照されたい)では、検出のためにウシ PrPの残基 95-105と反応する組換え抗体フラグメント (recFab)を用い、捕捉のために残基 132-156と反応する第二のrecFabを用いる。
【0012】
PrPcとPrPScを識別する抗体は、プリオン複製の特異的機構やプリオン感染診断の研究に有用である。PrPc を認識するモノクローナル抗体は入手可能であるが (Williamson et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:7279-7282; Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413-9418; Zanusso et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8812-8816; Demart et al. (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 265:652-657)、非変性PrPScまたはPrP 27-30を特異的に認識する抗体は入手可能ではない。正常またはPrP-ヌル動物の、広範なPrP抗原、例えば、感染性プリオン、PrPc、そしてαヘリックスまたはβシートに富むコンフォメーションに再フォールディングされた組換えおよび合成PrP分子による免疫化による、PrPの疾患関連形態のみを認識する高アフィニティーの抗体の誘発は何度も失敗してきた (Williamson et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:7279-7282; Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413-9418;およびPeretz et al. (1997) J. Mol. Biol. 273:614-622)。かかる抗体の報告(例えば、Korth et al. (1997) Nature 390:74-77を参照されたい)は発展途上である(Fischer et al. (2000) Nature 408:479-483; Heppner et al. (2001) Science 294:178-182も参照されたい;係属中米国特許出願第09/627,218号も参照されたい)。大きなネイティブな一本鎖抗体ファージディスプレーライブラリーから特異的結合体を選択するために、精製感染性プリオンを用いて免疫化を回避する試みも同様に成功していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
プリオンの変異体形態の出現、プリオンによる疾患の長い潜伏期間および種間伝染の可能性により、汚染された食品および体内組織および体液を検出するためのアッセイの開発の必要性、ならびに感染性形態のプリオンを特異的に標的化する治療薬の開発の必要性が指摘されている。それゆえ、本出願においてはとりわけ、感染性プリオンに特異的に反応する試薬、かかる試薬を用いる診断アッセイおよび、感染性および疾患誘発性形態のその他のアミロイドタンパク質ならびにその他の疾患関連コンフォメーション依存性タンパク質を同定するための試薬の調製方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明において、タンパク質凝集の疾患に関与するポリペプチドの疾患関連アイソフォームに特異的に結合するハイブリッドポリペプチドが提供される。ハイブリッドポリペプチドはかかる疾患の診断および治療に利用できる。特定の態様において、感染性形態のプリオン(PrPSc)に特異的に結合するハイブリッドタンパク質が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本出願においてはとりわけ、感染性プリオンに特異的に反応する試薬、かかる試薬を用いる診断アッセイおよび、感染性および疾患誘発性形態のその他のアミロイドタンパク質ならびにその他の疾患関連コンフォメーション依存性タンパク質を同定するための試薬の調製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1Aは、マウス Prp 89-112、Prp 136-258および、Fab b12 HCDR3 配列を置換し、PrP-Fab 121-158を得るPrP 121-158 ペプチドの模式図を示す。元のb12 HCDR3のN-末端 Val 残基および4つのC-末端残基 (Tyr-Met-Asp-Val)は保持されている;2つのGly残基がグラフトされた PrP 配列の各隣に付加される;
【図1B】そして図1Bは、マウス PrP 124-158 のNMR構造 (Riek et al. (1997) FEBS Lett. 413:282-288)を IgG1 b12の結晶構造 (Ollmann Saphire et al. (2001) Science 293:1155)にグラフトすることによって作成されるFab 121-158のモデル構造である。PrP 残基 121-123およびGG リンカーの配置はTOM/FRODO (Jones (1982) In Computational Crystallography (Sayre、D.、ed.)、pp. 303 Oxford University Press))を用いてモデリングし、より精巧にした。可能性のあるb12 重鎖による立体障害を軽減するためにPrP 残基 130-134のねじれ角においてわずかに変動を導入した。Fab D18 (Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413-9418により記載される;配列番号33-36参照)と称され、αヘリックス(残基 145-155)の存在下においてのみPrPの133-157領域を認識する抗体は、PrP-Fab 121-158に良好に結合し、示されたPrP ペプチドが、少なくとも精製Fab 121-158 分子のフラクションにおいてPrPc-様のコンフォメーションをとるであろうことが示される。上述のように、残基の番号付けはシリアンハムスター PrP (配列番号5)に対応する; マウスPrPを配列番号9に示す; 89-112は、マウス配列番号9の88-111に対応する; 136-158は配列番号9の135-157に対応し、121-158は配列番号9の120-157に対応する。
【図2】図2は、シリアンゴールデンハムスター (上)と例示的な配列とのアラインメントである;アミノ酸位置はシリアンハムスター残基番号による。番号は逐次的なものである:配列番号は以下の通りである: 配列番号5 シリアンハムスター 配列番号6 アルメニアハムスター 配列番号7 チャイニーズハムスター 配列番号8 ヒト 配列番号9 マウスA型 配列番号10 マウスB型 配列番号11 ヒツジ 図において示す配列番号12は、ヒツジ R171Q変異体 配列番号13 ウシ
【図3】図3はイムノブロットにて同定された濃度の関数としてしてのPrPScおよびPrP 27-30バンドの濃度測定を示し、本明細書において提供するポリペプチドのPrPScおよびPrP 27-30に対する高いアフィニティーを示す (Kd 約 10-9 mol/l; Ka 約 109 mol/l); 値は濃度測定単位(DU)として示し、ここで100%は抗体濃度10μg/mlにて免疫沈降されたバンドの強度に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願において、標的ポリペプチドに特異的に反応する試薬を提供し、かかる標的ポリペプチドは、タンパク質凝集の疾患(コンフォメーションが変化したタンパク質が関与する疾患)、例えば、アミロイド疾患に関連する感染性形態のポリペプチドである。そのような特異性を有するハイブリッド分子、例えばハイブリッドポリペプチドを提供する。該ハイブリッドポリペプチドは、結果として得られるハイブリッド分子があるコンフォメーションのタンパク質に特異的に結合し、その他のコンフォメーションのタンパク質には結合しないように、標的ポリペプチドと特異的に相互作用し、骨格(例えば、抗体または酵素またはその他のレシピエントの一部など)に挿入されたポリペプチドモチーフを含む。典型的には、標的とされるコンフォメーションは、疾患に関与するコンフォメーションである。ポリペプチドモチーフは、骨格のあらゆる所望の機能が保持され、挿入されるモチーフがその標的に対して特異的に結合する能力を保持するように、骨格に挿入される。選択される骨格はモチーフと標的ポリペプチドの複合体の検出を助け、あるいは可能にするようにその活性または結合部位を利用されうる。コンフォメーション特異性を有するポリペプチドの調製方法も提供する。
【0018】
コンフォメーションが変化したタンパク質による疾患の検出または診断用の試薬の製造方法およびその治療薬のスクリーニング方法を提供する。かかる疾患には、限定されるものではないが、以下が含まれる:プリオン疾患(例えばこれらに限定されないが、クロイツフェルトヤコブ病(変異体、孤発性および医原性を含む)、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症);アルツハイマー病;II型糖尿病(島アミロイドペプチド); ハンチントン病; 免疫グロブリンアミロイド症;慢性炎症性疾患をともなう反応性アミロイド症(例えば、炎症性関節炎、肉芽腫腸疾患、結核およびハンセン病); 変異体トランスサイレチン(プレアルブミンとしても知られている)遺伝子の常染色体優性遺伝を伴う遺伝性全身性アミロイド症; ALS;ピック病;パーキンソン病;前頭側頭骨痴呆;II型糖尿病;多発性骨髄腫;形質細胞悪液質;家族性アミロイド神経障害; 甲状腺髄様癌;慢性腎不全;うっ血性心不全;老人性心臓および全身性アミロイド症;慢性炎症;アテローム性動脈硬化症;家族性アミロイド症およびその他のこのような疾患。
【0019】
ハイブリッドポリペプチドは、サンプル、例えば、体液、組織または器官あるいはそれらに由来する調製物中の標的ポリペプチドの存在を検出する試薬として利用でき、また、標的ポリペプチドの活性をアンタゴナイズまたはアゴナイズする(即ち、変調する)化合物またはPrPScなどの感染性または疾患誘発性形態の標的ポリペプチドとの相互作用を競合的に阻害する化合物を同定するための薬剤スクリーニングアッセイにおいて利用できる。ハイブリッド分子は治療薬として利用することも出来る。それらは標的ポリペプチドに特異的に結合するため、例えば、感染性の阻害または減少などのその活性の阻害に利用することが出来、または有害な効果を導くタンパク質凝集またはコンフォメーション変化をもたらす活性の阻害に利用することが出来る。例えば、タンパク質凝集の疾患の治療薬として、ハイブリッドポリペプチドは疾患の病原の特徴である重合または凝集を阻害することが出来る。
【0020】
例示的な態様において、感染性形態のプリオン(PrPSc)に特異的に反応するハイブリッドポリペプチドを提供する。疾患関連コンフォメーションのPrPに特異的に結合するモチーフ-グラフトされたポリペプチドを提供する。例示的な態様において、PrP配列の残基119-158 (シリアンハムスター命名法による)を含む一連のポリペプチドを用いて、HIV-1のエンベロープ糖タンパク質に特異的なIgG抗体Fabの伸長(extended)重鎖-相補性決定領域3(HCDR3)を置換した(かかる抗体を提供する米国特許第5652138号を参照されたい)。その結果得られた操作された、PrP-Fabフラグメント(またはPrP-IgG分子)は、PrPScおよびそのプロテアーゼ耐性コアに特異的に結合するがPrPc、その他の細胞成分またはHIV-1エンベロープには結合しない。119-158 セグメント内の残基、例えば、PrPcの残基 89-112および136-158はPrPc-PrPSc 複合体の一方の側面の鍵となる成分である。残基 136-158のスクランブルによって反応性が無くなることが観察された。
【0021】
本明細書において例示するPrPSc-特異的ポリペプチドなどのグラフトされた分子、および本明細書において提供するアプローチによって産生されるその他の分子は、かかる分子の生物学の研究に、また診断および治療薬の開発のために利用できる。例えば、本明細書において記載し提供する非変性 PrPSc-プリオンに特異的なポリペプチドは、生物学および複製の研究およびヒトや動物の物質における感染性プリオンの検出に利用できる。
【0022】
疾患に関連するまたはその原因であるポリペプチドの同定方法またはかかる粒子またはかかる粒子の複合体による感染またはコンタミネーションの試験方法を提供する。該方法は、本明細書において提供する試薬ハイブリッドポリペプチドと被験サンプルを接触させ、感染性試薬の存在を示す、試薬ハイブリッドポリペプチドとサンプル中の粒子または複合体との間に形成される複合体を検出または同定することによって行われる。該方法は、同種または異種アッセイとして行うことが出来る。異種アッセイにおいて、試薬は固体支持体に直接または間接的に付着または結合させ、サンプルと接触させるとよい。あるいは、サンプルまたはサンプルの成分を支持体に結合させ、試薬と接触させてもよい。試薬とサンプル中の目的分子の間の複合体が同定される。試薬は簡便な同定を可能にするようにさらに、例えば第2の検出可能部分の結合により、第2の結合部位を含むように設計してもよい。
【0023】
例示的な態様において、サンプル、例えば動物の体液、組織または器官におけるPrPScの検出方法を提供する。該方法は、溶液相中で、あるいは、固体支持体に直接または間接的に結合した試薬またはサンプルを提供することにより行われる。本明細書において提供する試薬とサンプル中の標的ポリペプチドの複合体が検出される。
【0024】
タンパク質凝集の疾患に関与する疾患-誘発性または感染性配座異性体(conformer)のポリペプチドを含むか発現する個々の細胞、例えば非感染細胞のバックグラウンドにおけるプリオン-感染細胞の同定方法も提供する。該方法は、細胞、例えば血液細胞と、本明細書において提供する検出可能に標識された疾患-誘発性または感染性配座異性体に特異的に結合するポリペプチドとを接触させ、標識された細胞を検出することによって行う。例えば、細胞が少量しか存在しない場合(典型的には1:10,000未満の頻度)プリオン感染細胞の検出方法は、本明細書において提供する非変性PrPScに結合し、検出可能に標識された(例えば蛍光標識)ハイブリッドポリペプチドまたはその複数を用い、例えば、珍しい事象を検出するためのスキャニングサイトメトリー法により標識されたポリペプチドを含む細胞を検出する。該方法は、既知のサイトメトリー法 (例えば、Bajaj et al. (2000) Cytometry 39:285-294を参照されたい)およびそのための装置(例えば、米国特許出願第09/123564号(US2002018674として発行、Q3DM、LLC、San Diegoによって市販されている)を参照されたい)によって行うことが出来る。非常に低濃度の感染細胞をかかる方法によって検出することが出来る。
【0025】
本明細書において提供するハイブリッドポリペプチドおよび固体支持体の組み合わせも提供する。該組み合わせは任意に標的ポリペプチド検出のアッセイを行うための指示書を含んでいてもよいキットとして提供することが出来る。
【0026】
抗-イディオタイプ抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)は、好適な動物をPrPの約89-112および/または136-158領域を認識するポリペプチドまたは抗体あるいはそのフラグメント、例えば、D13 (例えば、Matsunaga et al. (2001) Proteins 44:110-118;Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413-9418; D13 軽鎖、配列番号29および30; D13 重鎖、配列番号31および32を参照されたい);またはD18 (例えば、Peretz et al. (2001) Nature 412:739-743; Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413-9418; D18 軽鎖、配列番号33および34; D18 重鎖、配列番号35および36)を参照されたい)モノクローナル抗体Fab フラグメントまたはその他の阻害性抗体によって免疫することによって産生される。阻害性抗体またはFab、例えばD18またはD13の結合部位(combining site)に対する抗-イディオタイプ抗体により、ネイティブなPrPScを認識する抗体を作成することが出来る。かかる抗-イディオタイプ抗体は、本明細書において提供するハイブリッドポリペプチドの使用されるあらゆる診断、予防、治療及びスクリーニング方法に用いることが出来る。かかる抗-イディオタイプ抗体の調製方法も提供され、それは、PrPの約89-112および/または136-158領域を認識するポリペプチドまたは抗体あるいはそのフラグメント、例えばD13またはD18 モノクローナル抗体Fabフラグメント(D13 軽鎖については、配列番号29および30;D13 重鎖については、配列番号31および32を参照; D18 軽鎖については、配列番号33および34、D18 重鎖については、配列番号35および36を参照)によって免疫することによる。
【0027】
詳細な説明
A.定義
B.ハイブリッド分子
1.疾患関連ポリペプチド
a.プリオン
1)プリオンおよびプリオン疾患
2)プリオン含有ハイブリッドポリペプチド
3)プリオンのソース
4)突然変異
b.その他のポリペプチド
c.ハイブリッドポリペプチドの調製
2.骨格
a.抗体
b.その他の分子
3.例示的ハイブリッド
C.核酸分子、ベクター、プラスミド、細胞およびハイブリッドポリペプチド、プラスミド、ベクターおよび細胞の調製方法
D.ペプチド疑似体(mimetics)
E.診断、治療薬、アッセイおよびその他のハイブリッドポリペプチドの使用
1.診断および治療薬
2.薬剤スクリーニングアッセイ
3.固定化およびそのための支持体または基体
4.標準化プリオン調製
F.組み合わせおよびキット
G.実施例
【0028】
A.定義
特にことわりのない限り、本明細書において用いるすべての技術用語および科学用語は本発明者が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書の開示において参照されるすべての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、Genban 配列、ウェブサイトおよびその他の公知材料は、特にことわりのない限り、その内容が引用により本明細書に含まれる。本明細書における用語について複数の定義がある場合、それらはこの分野で一般的なものとする。URLその他の識別語やアドレスを参照する場合、かかる識別語は変化する可能性があり、目的の特定の情報は移りかわる可能性があるが、同様の情報がインターネットを検索することによって見いだすことが出来る。それに対する参照はかかる情報の入手可能性および公知性の証拠となる。
【0029】
本明細書において用いる場合、PrPにおけるアミノ酸残基はシリアンハムスター配列(図2を参照)による。その他の種における目的の配列は配列をアラインさせて対応する残基を同定することにより決定出来る(例えば図2参照)。図2は例示的なアラインメントを提供する。この命名法は当業者に一般に理解されている。
【0030】
本明細書において用いる場合、プリオン遺伝子はいずれのプリオンタンパク質 (PrPc)の形態をコードするいずれの種のいずれの遺伝子でもよい。
【0031】
本明細書において用いる場合、PrP 90-231とは、PrPSc (残基 23-231からなる)が部分的にプロテイナーゼ Kによって消化され、PrP 27-30 (残基 90-231にほぼ対応する)が生じた後の残りのPrP部分を意味する。PrP 27-30調製物はプリオン感染性を保持しているため、PrPSc コンフォメーションにおける90-231配列はPrPの感染性コアと考えられる。PrP 27-30と称される精製感染性プリオンの主要成分は、より大きなネイティブなタンパク質 PrPScのプロテイナーゼ K耐性コアであり、遍在的な細胞のタンパク質PrPcの疾患誘発性形態である。PrPScはスクレイピー感染細胞においてのみみられる; 一方PrPcは感染および非感染細胞に存在し、これはPrPScが感染性プリオン粒子の成分の唯一ではないとしても主要な成分であることを意味する。PrPScとPrPcとを識別する特性には以下のものが含まれる:低い溶解性、低い抗原性、プロテアーゼ耐性およびPrP 27-30の超微細構造的および組織化学レベルでスクレイピーに冒された脳にみられるPrP アミロイドプラークに類似する棹状の凝集体への重合。プロテイナーゼ Kを用いることにより、PrPcを変性させることが出来るが PrPScを変性させることは出来ない。PrPcおよびPrPScは同じ分子の立体配座異性体である。
【0032】
本明細書において用いる、プリオン複製とは、PrPcが PrPScへと変換される工程を指す。PrPcのPrPSc への結合は、PrPcがコンフォメーション的にPrPSc分子へと変換される経路において必須である。
【0033】
本明細書において用いる、プリオン複製インターフェイスは、プリオン複製の過程でPrPScに結合するPrPcの領域である。
【0034】
本明細書において用いる場合、プリオンにはあらゆる動物においてプリオンによって引き起こされるあらゆる疾患を引き起こすすべての形態のプリオンが含まれる。ここで動物は特にヒトおよび家畜、有蹄類、シカおよびオオジカなどである。プリオンに感染するまたはプリオン疾患や類似の疾患を示すあらゆる種の動物からのプリオンが試薬の調製および検出および薬剤スクリーニングの標的に使用されうる。動物には、有蹄類、霊長類、げっ歯類および有袋類が含まれる。種には以下のものが含まれるがこれらに限定されない:ヒト、ハムスター、マウス、ラット、シカ、ヒツジ、ヤギ、オオジカ、クドゥ、ウマ、ラクダ、ラマ、ブタ、有袋類およびプリオン感染が注目されるか考えられるその他の種。ヒトPrP遺伝子には多数の公知の変異体がある。さらに、かかる遺伝子には公知の多型があり、ヒト、ヒツジおよびウシPrP遺伝子におけるものが含まれる。
【0035】
本明細書において用いる、「PrP ペプチド」の語は、天然または組換え PrPScあるいはPrP 変異体に接触させると、β−シート形成促進、不溶性の上昇および/またはプロテアーゼ耐性の上昇、即ち、PrPScの性質の存在によって同定されるコンフォメーション変化を誘発するあらゆるペプチドのことである。したがって、PrP ペプチドとは、例えば、90-145、121-158またはその他の部分などの90-231 (配列番号5) またはその部分に対応する残基を含む天然プリオンタンパク質配列の一部と実質的に類似の (例えば、70%、80%、85%、90% またはそれ以上の相同性) 配列を有し、PrPScに結合してプリオンタンパク質複合体を作りPrPScの1以上の特性を有するポリペプチドを生じさせることが出来る天然、組換え、または合成ポリペプチドである。PrP ペプチドは少なくとも1つのαヘリックスドメインを有し、および/または水溶液中でランダムコイルコンフォメーションをとる。さらに、PrP ペプチドは水溶液中で実質的にβ−シートコンフォメーションがないコンフォメーションをとることによって特徴づけられる。PrP ペプチドのコンフォメーションは円二色性(CD)を含む当該技術分野で公知のあらゆる方法によって決定できる。
【0036】
PrP ペプチドは典型的には1-4のαヘリックスドメインを有し、PrPScに結合してプリオンタンパク質複合体を形成する。PrP ペプチドは配列番号5-13のいずれかに示すものなどのあらゆる種のかかるアミノ酸配列を有する。PrP ペプチドはかかるアミノ酸配列の改変を含み得、例えば、これらに限定されないが、それは1以上のアミノ酸変化、1以上のアミノ酸欠失および/または1以上のアミノ酸挿入などであるが、ただし、少なくとも1つのαヘリックスドメインおよび/または水溶液中でのランダムコイルコンフォメーション、そしてより重要なことにPrPScに結合してプリオンタンパク質複合体を形成するという特徴を保持するものに限られる。しかし本明細書において示すように、1つのαヘリックスドメインは必要ではない。変化、欠失、挿入およびその他の改変は一般にアミノ酸90-145の配列にあるが89-112も含む。例えば、PrP ペプチド 90-145 (A117V)は、アミノ酸 残基 117において病原性突然変異(アラニンからバリン)を含み、終脳および失調性形態のGSS 疾患を引き起こす。
【0037】
本明細書において用いる、コンフォメーションが変化したタンパク質疾患(または、タンパク質凝集の疾患またはタンパク質コンフォメーションの疾患)は、疾患関連コンフォメーションを有するタンパク質またはポリペプチドが関与する疾患である。異常なタンパク質コンフォメーション、例えば、誤った折り畳みおよび凝集は、生物活性の欠失または変化を導きうる。異常なタンパク質コンフォメーション、例えば誤った折り畳みおよび凝集は多くの哺乳類の疾患の原因(または寄与因子)である。かかる疾患にはこれらに限定されないが以下のものが含まれる:嚢胞性線維症、アルツハイマー病、プリオン海綿状脳症、例えば、ウシ海綿状脳症、ヒツジのスクレイピーおよびヒトのクルおよびクロイツフェルトヤコブ病(変異体、孤発性および医原性を含む)ならびに筋萎縮性側索硬化症(ALS) (下表参照)。かかる疾患および関連する2以上のコンフォメーションをとることがあり、少なくともその1つのコンフォメーションがコンフォメーションが変化したタンパク質であるものには、以下の表1に示すものが含まれる。
【0038】
【表1】

【0039】
本明細書において例示する疾患関連コンフォメーションのプリオンポリペプチドに特異的に結合するハイブリッド分子の調製方法は、その他のコンフォメーションが変化したタンパク質疾患、例えばアミロイド疾患に関連する疾患関連コンフォメーションのポリペプチドに特異的なハイブリッド分子の調製に用いることが出来る。
【0040】
本明細書において用いる良性の配座異性体は、疾患に関与しない、即ち疾患またはその症状をひきおこさない、タンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患のタンパク質の形態をいう。
【0041】
本明細書において用いるアレイは、要素、例えば抗体の集合であって、3以上のメンバーを含むものをいう。アドレス可能なアレイとは、アレイのメンバーが典型的には固相支持体上の位置によって同定可能なものをいう。したがって一般にアレイのメンバーは固相表面上の離れた同定可能な位置に固定化される。
【0042】
本明細書において用いる、標的タンパク質とは、複数の配座異性体を有し、タンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関与または関連するタンパク質である。
【0043】
本明細書において用いる場合、支持体(マトリックス支持体、マトリックス、不溶性支持体または固体支持体とも称される)はあらゆる固体または半固体または不溶性支持体であり、目的の分子、例えば本明細書において提供するハイブリッド分子が結合または接触するものである。かかる材料には、化学または生物学的分子合成および分析のためのアフィニティーマトリックスまたは支持体として使用されるあらゆる材料が含まれ、例えばこれらに限定されないが以下のものが含まれる:ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、ガラス、デキストラン、キチン、砂、軽石、アガロース、多糖類、デンドリマー、バッキーボール、ポリアクリルアミド、シリコン、ゴム、およびその他の固相合成、アフィニティー分離および精製、ハイブリッダイゼーション反応、イムノアッセイおよびその他のかかる用途のための支持体として用いられる材料。本明細書においてマトリックスは粒状でもよいし連続平面形態でもよく、例えばマイクロタイターディッシュまたはウェル、ガラススライド、シリコンチップ、ニトロセルロースシート、ナイロンメッシュ、またはその他のそのような材料であってよい。粒状の場合、典型的には粒子は少なくとも5-10mmの範囲またはそれ以下の大きさである。「ビーズ」と総称するかかる粒子は球状であることが多いがその必要はない。しかしマトリックスの形態は制限されず、いかなる形態であってもよく、ランダム形状、針状、繊維状、および伸長状などが含まれる。液相で利用できるほぼ球形の「ビーズ」、特にミクロスフィアも考慮される。「ビーズ」はさらなる成分、例えば磁性または常磁性粒子を(例えば、Dyna beads (Dynal、Oslo、Norway)を参照されたい)磁石を用いた分離のために含んでいてもよいが、ただし、さらなる成分は本発明の方法および分析に影響を与えないものとする。
【0044】
本明細書において用いる、マトリックスまたは支持体粒子は離れた粒子の形態のマトリックス材料をいう。粒子はいかなる形態でも大きさでもよいが、典型的には少なくとも100 mm以下、50 mm以下、10 mm以下、1 mm以下、100μm以下、50μm以下の寸法であり典型的には100 mm3以下 50 mm3以下、10 mm3以下、および1 mm3以下、100 μm3以下の大きさであり、μm3のオーダーであってよい。かかる粒子を「ビーズ」と総称する。
【0045】
本明細書において用いるアレイは、要素の集合を意味し、例えば、3以上のメンバーを含むハイブリッドポリペプチドである。アドレス可能なアレイは、アレイのメンバーが典型的には固相支持体の位置により、あるいは同定可能または検出可能な標識により同定可能なものである。かかる標識としては、色、蛍光、電気信号(即ち、RF、マイクロ波またはその他の分子または生物学粒子の相互作用を実質的に変化させない周波数)、バーコードその他のコード、化学物質その他の標識が挙げられる。したがって一般に、アレイのメンバーは固相表面の離れた同定可能な位置に固定化されるか同定可能な標識に直接または間接的に結合あるいは付着され、例えば、ミクロスフィアかその他の粒状の支持体に固定され(ビーズと称される)、溶液中に懸濁されるか表面に塗布される。したがって例えば、位置的にアドレス可能なアレイは基体、例えば顕微鏡用スライドを含むガラス、紙、ナイロンまたはその他のタイプの膜、フィルター、チップ、ガラススライド、またはその他の好適な固体支持体上に並べるとよい。所望の場合は基体表面を官能化、誘導体化または結合パートナーへの結合を可能にするよう変化させてもよい。場合によっては、当業者はマイクロアレイを好適とする。マイクロアレイは位置的にアドレス可能なアレイであり、例えば、固体支持体上のアレイであって、アレイの位置が高密度のものである。例えば、典型的な表面に形成されるアレイであって標準的な96サイズでプレートあたり約1550位置以上の密度のものがマイクロアレイと考えられる。本明細書において提供する分子が固体支持体に結合されるアッセイにおいて、それらはアドレス可能なアレイを含むアレイとして、特にハイスループットスクリーニングプロトコール用に提供されうる。
【0046】
本明細書において用いる、ポリペプチドに特異的に結合する分子は、典型的には結合アフィニティー (Ka)が少なくとも約 107 l/mol、108 l/mol、109 l/mol、1010 l/mol あるいはそれ以上であって特定の配座異性体のポリペプチドに対して別の配座異性体と比較して少なくとも約.5、1、5、10-倍、一般的には 100-倍以上のKaにて結合する。したがって例えば、PrPScに結合する例示的なハイブリッド分子は、少なくとも 約 108 l/molのアフィニティーまたはアッセイにおいて結合したPrPScの検出が可能な十分なアフィニティーにて相互作用する;そして一般にPrPScに対するアフィニティーがPrPcと比較して少なくとも 10-倍、100-倍またはそれ以上のアフィニティーで相互作用する。
【0047】
本明細書において用いる動物はあらゆる動物を含み、例えばこれらに限定されないが、ヤギ、ウシ、シカ、オオジカ、クドゥ、ウマ、ラクダ、ラマ、ヒツジ、げっ歯類、ブタおよびヒトが挙げられる。非-ヒト動物は考えられる動物からヒトを除いたものである。
【0048】
本明細書において用いる抗体は、免疫グロブリンであり、天然または部分的または完全に合成により産生されたものでもよく、抗体の特異的結合能力を保持するそのあらゆる誘導体を含む。したがって抗体には免疫グロブリン結合ドメインと相同的または実質的に相同的な結合ドメインを有するあらゆるタンパク質が含まれる。抗体にはあらゆる免疫グロブリンクラスのメンバーが含まれ、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEが含まれる。
【0049】
本明細書において用いるハイブリッドポリペプチドは、少なくとも2つのソースからの領域を含むポリペプチドであり、例えば、抗体または酵素あるいはその他のレシピエントとなりうる骨格からのものと、プリオンタンパク質からのポリペプチドなどの結合モチーフを含む。その結果得られる本明細書において提供するハイブリッドポリペプチドは、感染性コンフォメーションまたは疾患を示すコンフォメーションのポリペプチドに結合し、該ポリペプチドは2以上のアイソフォームにて存在しうるものであり、少なくとも1つのアイソフォームが疾患または疾患プロセスに関与するものである。レシピエント骨格はモチーフポリペプチドが標的ポリペプチドへの結合能力を保持することを拘束または可能にするよう選択される。レシピエント骨格はまた、ハイブリッドポリペプチドに、レポーターとして作用する能力またはレポーター部分を捕捉する能力などのさらなる特性を与え得るものである。本明細書の態様による感染性プリオンへの結合はモチーフを含めることによるものであり、かかるモチーフはプリオンからの少なくとも5 残基、一般的に10から50またはそれ以上の実質的に全長プリオンまでの残基を含みPrPScまたはPrPcと複合体形成したPrPScに結合することができるポリペプチドである。
【0050】
本明細書において用いるポリペプチドモチーフは、変化した、一般的に異常な(即ち疾患-誘発性の)コンフォメーションを認識し、特異性を保持するが全タンパク質のアフィニティーが減少してもよいタンパク質由来のアミノ酸配列をいう。コンフォメーションが変化したタンパク質は感染性、例えばプリオンのPrPSc形態でもよい。ポリペプチドモチーフは骨格(典型的にはポリペプチド)にグラフト(即ち挿入)される。本明細書において示すように、モチーフは凝集反応に関与する標的ポリペプチドからの残基由来であってもよいし、コンフォメーション変化を誘導またはそれに関与するものに由来するものであってもよい。挿入の際、追加的なアミノ酸、例えばGly および/または Serを含む中性アミノ酸をいずれかの端に典型的には1から数残基含めてもよい。モチーフは別のポリペプチドに挿入してもよいし、モチーフより大きい、小さいあるいはほぼ同じサイズのその部分と置換してもよい。
【0051】
本明細書において用いる骨格は、グラフトされたモチーフを受容するレシピエント分子を意味する。骨格はグラフトされるモチーフが所望の活性を保持するように選択される。骨格は結合アフィニティーまたは酵素活性などの活性を有していてもよいし、活性を有さなくてもよいし、活性を失うよう改変されたのでもよい。骨格にはこれらに限定されないが、酵素または結合および/または触媒活性を保持するその部分、蛍光タンパク質または活性を保持する、および/またはグラフトされた部分に活性を保持させる、および/またはグラフトされた部分に活性を保持させる、その部分、抗体または結合活性を保持する、および/またはグラフトされた部分に所望の活性を保持させるその部分が含まれる。骨格には、タンパク質凝集の疾患の感染性または疾患誘発性形態の物質上のエピトープに結合するポリペプチドモチーフがグラフトされてタンパク質凝集の疾患の感染性または疾患誘発性形態の物質に、良性の形態と比べてより高いアフィニティーで結合するハイブリッド分子が生じる(あるいは逆も同様)。
【0052】
本明細書において用いる、「レポーター」または「レポーター部分」は、目的の分子、例えばタンパク質または本明細書において提供するハイブリッドポリペプチドの検出を可能とする部分をいう。レポーター分子は、好適な基質または検出手段と好適な条件下で接触した際に検出可能なシグナル(例えば、比色分析、化学発光、生物発光、蛍光または電位差測定手段による)を生成することが出来る分子、例えば、酵素または指示薬である。例示的なレポーター酵素にはこれらに限定されないが以下が含まれる:アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼおよび発光タンパク質、例えば、エクオラ(aequora)およびウミシイタケ(renilla)種のルシフェラーゼ/発光タンパク質、ホタルルシフェラーゼ (deWet et al. (1987) Mol. Cell. Biol. 7:725-737);細菌ルシフェラーゼ (Engebrecht and Silverman (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:4154-4158; Baldwin et al. (1984) Biochemistry 23:3663-3667); その他の酵素、例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ;アルカリホスファターゼ (Toh et al. (1989) Eur. J. Biochem. 182:231-238、Hall et al. (1983) J. Mol. Appl. Gen. 2:101); 化学発光生成酵素、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アリールエステラーゼ、スルファターゼおよびウレアーゼ。その他のレポーター分子には例えば、発光部分、例えば蛍光タンパク質(FP)が挙げられ、これらに限定されないが、赤色、青色および緑色蛍光タンパク質およびその変異体を含む。
【0053】
本明細書において用いる発光標識は、EM照射を放射または吸収する標識である。発光標識の例としてはこれらに限定されないが例えば、蛍光タンパク質を含むフルオロフォア、蛍光および生物発光およびその他の化学発光生成系のクエンチャーが含まれる。
【0054】
本明細書において用いる、「蛍光」は、1つの波長における照射の吸収(「励起」)により引き起こされ、そのほぼ直後に通常は異なる波長での再照射(「発光」)をともない、入射光が止まるとほぼ同時に終止する発光(光の放出)である。分子レベルでは、蛍光は一定のフルオロフォアとして知られる化合物が、光エネルギーによって基底状態からより高い励起状態となることにより起こる;分子がその基底状態へと戻る際に、典型的には異なる波長の光が放射される (Lakowicz、J. R.、Principles of Fluorescence Spectroscopy、New York:Plenum Press (1983); Herman、B.、Resonance energy transfer microscopy、in: Fluorescence Microscopy of Living Cells in Culture、Part B、Methods in Cell Biology、vol. 30、ed. Taylor、D. L. & Wang、Y. -L.、San Diego: Academic Press (1989)、pp. 219-243; Turro、N.J.、Modern Molecular Photochemistry、Menlo Park: Benjamin/Cummings Publishing Col、Inc. (1978)、pp. 296-361)。一方、「リン光」は1つの波長での照射の吸収、そして異なる波長での遅れた再照射によって起こり、入射光が停止してからもある程度の時間持続する発光のことをいう。
【0055】
本明細書において用いる化学発光は、化学反応の結果起こる発光を意味する。
【0056】
本明細書において用いる生物発光は、化学発光の一種であり、生物分子、特にタンパク質による光の発光を意味する。生物発光に必須の条件は、オキシゲナーゼであって基質であるルシフェリンに作用する、ルシフェラーゼの存在下での結合型または遊離型の分子酸素の存在である。生物発光は、オキシゲナーゼであって基質であるルシフェリン(生物発光基質)に分子酸素の存在下で作用して基質を励起状態に変換し、その基質が低エネルギー状態に戻る際に光の形態でエネルギーを放出するような、酵素またはその他のタンパク質(ルシフェラーゼ)によって生じる。
【0057】
本明細書において用いる生物発光をもたらす生物分子を、一般にそれぞれルシフェリンおよびルシフェラーゼと総称する。その特定の種に言及する場合、各総称はそれが由来する生物の名前と共に用いる。例えば、細菌ルシフェリンまたはホタルルシフェラーゼなどという。
【0058】
本明細書において用いるルシフェラーゼは、光放射反応を触媒するオキシゲナーゼをいう。例えば、細菌ルシフェラーゼは、フラビンモノヌクレオチド(FMN)および脂肪族アルデヒドの酸化を触媒し、かかる反応により光が生じる。別のクラスの海洋節足動物にみられるルシフェラーゼは、ウミホタル (Vargula)ルシフェリンの酸化を触媒し、さらに別のクラスのルシフェラーゼは、甲虫(Coleoptera)ルシフェリンの酸化を触媒する。
【0059】
したがって、ルシフェラーゼは生物発光反応(その反応が生物発光を生じる)を触媒する酵素または発光タンパク質を意味する。例えば、ホタルおよびガウシアン(Gaussia)およびウミシイタケルシフェラーゼなどのルシフェラーゼは、触媒的に作用し、生物発光生成反応の際に変化しない酵素である。ルシフェラーゼ発光タンパク質、例えば、ルシフェリンが非共有結合により結合しているエクオリン発光タンパク質は、生物発光生成反応の際に例えばルシフェリンの放出により変化する。ルシフェラーゼは、生物またはその変異体または突然変異体、例えば突然変異により生じ、1または複数の天然タンパク質とは異なる特性、例えば熱安定性、を有する変異体などにおいて天然に存在するタンパク質である。ルシフェラーゼおよび改変されたその突然変異体または変異体形態は周知である。本発明の目的のために、ルシフェラーゼと言及する場合、発光タンパク質またはルシフェラーゼのいずれも含む。ルシフェラーゼは、感染性または疾患誘発性形態のタンパク質凝集の疾患の物質のエピトープに結合するポリペプチドをグラフトするための骨格として機能しうる。かかるグラフトにより良性の形態と比較して感染性または疾患誘発性形態のタンパク質凝集の疾患の物質により強いアフィニティーで結合するハイブリッド分子が生じる(または逆も同様)。
【0060】
ルシフェラーゼおよびルシフェリンならびにその活性化物質を、生物発光生成試薬または成分と称する。したがって、本明細書において用いる成分である、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびその他の因子、例えば、O2、Mg2+、Ca2+ も生物発光生成試薬(または試薬または成分)と称される。すべてのかかる成分の組み合わせは生物発光生成系である。同様に化学発光を生成する系のすべての成分は化学発光生成系である。
【0061】
本明細書において用いる、ハイブリッド抗体は、本明細書において提供するハイブリッドポリペプチドなどの、非免疫グロブリン-由来の1または複数の部分を含み、免疫グロブリンまたはFabの一部が、タンパク質凝集の疾患に関与する標的ポリペプチドに結合する別のポリペプチドによって置換されている抗体またはそのフラグメントをいう。本明細書において簡便化のため、ハイブリッド分子をFab'または免疫グロブリン、例えばIgGと称するが、かかるハイブリッド分子はFab'またはIgそれ自体ではなく、特異性を付与するグラフトされた部分も含むことを理解されたい。
【0062】
本明細書において用いる抗体フラグメントは、全長より短く、全長の抗体の特異的結合能力の少なくとも一部を保持しているあらゆる抗体の誘導体をいう。抗体フラグメントの例としてはこれらに限定されないが、Fab、Fab'、F(ab)2、一本鎖 Fv (scFV)、FV、dsFV二重特異性抗体(diabody)およびFd フラグメントが挙げられる。フラグメントは例えばジスルフィド結合などにより互いに結合した複数の鎖を含んでいてもよい。抗体フラグメントは、一般的に少なくとも約 50 アミノ酸、典型的には少なくとも 200 アミノ酸を含む。
【0063】
本明細書において用いるFv 抗体フラグメントは、非共有結合相互作用により結合している1つの可変重鎖ドメイン (VH)と1つの可変軽鎖ドメインから構成される。
【0064】
本明細書において用いるdsFV は、VH-VL の対を安定化させる操作された分子間ジスルフィド結合を有するFvをいう。
【0065】
本明細書において用いるF(ab)2 フラグメントは、pH 4.0-4.5でのペプシンによる免疫グロブリンの消化によって生ずる抗体フラグメントである;組換え発現によって等価なフラグメントを産生させることも出来る。
【0066】
本明細書において用いるFab フラグメントは、パパリンによる免疫グロブリンの消化によって生ずる抗体フラグメントである;組換え発現によって等価なフラグメントを産生させることも出来る。
【0067】
本明細書において用いるscFVは、任意の順序でポリペプチドリンカーにより共有結合により結合した可変軽鎖 (VL)および可変重鎖 (VH)を含む抗体フラグメントである。リンカーの長さは2つの可変ドメインが実質的に影響を受けることなく架橋されるようにする。リンカーの例としては、(Gly-Ser)n 残基中にいくらかのGluまたはLys 残基が可溶性を上昇させるために分散されたものが挙げられる。
【0068】
本明細書において用いるヒト化抗体は、ヒトに投与しても免疫応答を起こさないように、ヒトアミノ酸配列を含むように改変された抗体である。かかる抗体の調製方法は公知である。例えば、かかる抗体を産生するには、モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたはその他の真核細胞または原核細胞、例えば大腸菌やCHO細胞を組換えDNA技術によって改変して非可変領域のアミノ酸組成がヒト抗体に基づくような抗体を発現するようにする。かかる領域を同定するためのコンピュータプログラムが設計されている。
【0069】
本明細書において用いる二重特異性抗体は、二量体のscFVである;二重特異性抗体は典型的にはscFvより短いペプチドリンカーを有し、それらは一般的に二量体化する。
【0070】
本明細書において用いるhsFv は、Fab フラグメントに通常存在する定常ドメインがヘテロダイマーコイルドコイルドメインに置換された抗体フラグメントである(例えば、Arndt et al. (2001) J Mol Biol. 7:312:221-228を参照されたい)。
【0071】
本明細書において用いるサンプルは、分析物のアッセイが望まれる分析物を含み得るあらゆるものをいう。サンプルは生物サンプル、例えば、生体液または生物組織であってもよい。生体液の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、精子、羊水などが挙げられる。生物組織は通常特定の種類の細胞の凝集体であり細胞内物質も含み、生物の構造材料を形成する。生物の構造には、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルスの構造が含まれ、組織としては、結合、上皮、筋肉および神経組織が含まれる。生物組織の例としては例えば、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞も含まれる。
【0072】
本明細書において用いる生物サンプルは、生物またはウイルス源から得られ、核酸またはタンパク質またはその他の高分子が得られる対象のあらゆる細胞型または組織を含むあらゆるサンプルをいう。生物サンプルにはこれらに限定されないが、体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、動物および植物由来の組織および器官サンプルが含まれる。土壌および水系サンプルおよびその他の環境サンプル、ウイルス、細菌、真菌、藻類、原生動物およびそれらの成分も含まれる。細菌、ウイルスその他の食品および環境の汚染も評価できる。本発明の方法は生物サンプルを用いて行われ、プロファイリングなどの態様においてはサンプルの試験用にも利用できる。
【0073】
本明細書において用いる、本発明において提供するスクリーニング方法によって同定される薬物は、治療用化合物または治療薬の設計のためのリード化合物として使用するための候補であるあらゆる化合物をいう。かかる化合物は低分子であってもよく、例えば、低有機分子、ペプチド、ペプチド疑似体、アンチセンス分子またはdsRNA、例えば、RNAi、抗体、抗体フラグメント、組換え抗体およびその他の薬物候補またはリード化合物として機能しうる化合物が挙げられる。
【0074】
本明細書において用いる、ペプチド疑似体は、特定のペプチドの生物活性形態のコンフォメーションと一定の立体化学特性をまねた化合物である。一般に、ペプチド疑似体は化合物の特定の、生物活性コンフォメーションが失われたり結合が崩壊したりする望ましくない特性ではなく、望ましい特性(例えば可動性)をまねるように設計される。ペプチド疑似体は生物活性化合物から、バイオイソスター(bioisosteres)により望ましくない特性に寄与している特定の基または結合を置換することにより調製できる。バイオイソスターは当業者に周知である。例えば、メチレンバイオイソスターであるCH2Sはエンケファリンアナログにおけるアミド置換として使用されている (例えば、Spatola (1983) pp. 267-357 in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids、Peptides、and Proteins、Weistein、Ed. volume 7、Marcel Dekker、New Yorkを参照されたい)。経口投与できるモルヒネは、ペプチドエンドルフィンのペプチド疑似体化合物である。本明細書において、環状ペプチドもペプチド疑似体に含める。
【0075】
本明細書において用いる高分子は、分子量数百から数百万のあらゆる分子をいる。高分子には、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、およびその他の一般的に生物体によって合成される分子が含まれる。かかる分子は、合成によっても組換え分子生物学手法によっても調製できる。
【0076】
本明細書において用いる、「バイオポリマー」の語には、生物分子を意味し、2以上の単量体サブユニットから構成され、結合または高分子によって連結している高分子またはその誘導体が含まれる。バイオポリマーは例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、または脂質、あるいはそれらの誘導体または組み合わせであってよく、例えば、ペプチド核酸部分を含む核酸分子や糖タンパク質であってもよい。バイオポリマーにはこれらに限定されないが、核酸、タンパク質、多糖類、脂質その他の高分子が含まれる。核酸にはDNA、RNA、およびそれらのフラグメントが含まれる。核酸はゲノムDNA、RNA、ミトコンドリア核酸、葉緑体核酸およびその他の別々の遺伝物質を有するオルガネラのいずれの由来のものでもよい。
【0077】
本明細書において用いる生物分子は、あらゆる天然にみられる化合物またはその誘導体である。生物分子にはこれらに限定されないが以下が含まれる:オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ペプチド核酸(PNA)、オリゴ糖および単糖。
【0078】
本明細書において用いる、「核酸」の語は、一本鎖および/または二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸 (DNA)、およびリボ核酸 (RNA)ならびにRNAまたはDNAのアナログや誘導体をいう。「核酸」の語には、核酸アナログ、例えば、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエートDNA、およびその他のかかるアナログおよび誘導体またはそれらの組み合わせも含まれる。
【0079】
かかる用語はヌクレオチドアナログから作られるRNAまたはDNAの均等物、誘導体、変異体およびアナログ、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドも含むよう理解すべきである。デオキシリボヌクレオチドにはデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシンおよびデオキシチミジンが含まれる。RNAについては、ウラシル塩基はウリジンである。
【0080】
ポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドアナログは例えば以下のものであってよい:ポリヌクレオチドの質量による識別を可能にする質量修飾したヌクレオチド; ポリヌクレオチドの検出を可能にする蛍光、放射性、発光または化学発光標識などの検出可能な標識を含むヌクレオチド;または固体支持体へのポリヌクレオチドの固定化を容易にする、ビオチンまたはチオール基などの反応性基を含むヌクレオチド。ポリヌクレオチドは例えば、化学的、酵素的、または光分解的に、選択的に切断可能な1以上の骨格結合を含んでいてもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、1以上のデオキシリボヌクレオチド、次いで1以上のリボヌクレオチドを含んでいてもよく、さらに1以上のデオキシリボヌクレオチドを含んでいてもよく、かかる配列は塩基性加水分解によってリボヌクレオチド配列において切断され得る。ポリヌクレオチドはまた、切断に対して比較的耐性の1以上の結合を含んでいてもよく、例えば、キメラオリゴヌクレオチドプライマーは、ペプチド核酸結合によって結合したヌクレオチドおよび少なくとも1つの3'末端におけるヌクレオチドを含んでいてもよく、それはホスホジエステル結合またはその他の好適な結合によって結合しており、ポリメラーゼによって伸長させることができる。ペプチド核酸配列は周知方法により調製できる(例えば、Weiler et al.、Nuclic Acids Res. 25:2792-2799 (1997)を参照されたい)。
【0081】
本明細書において用いるオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、核酸アナログ、例えばPNA、およびそれらの組み合わせを含むポリマーをいう。本明細書において、プライマーおよびプローブは一本鎖オリゴヌクレオチドであるか部分的に一本鎖オリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」の語は、少なくとも2つの結合したヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を含むオリゴマーまたはポリマーをいい、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、および例えば、ヌクレオチドアナログまたはホスホジエステル結合以外の「骨格」結合、例えば、ホスホトリエステル結合、ホスホラミダート結合、ホスホロチオエート結合、チオエステル結合、またはペプチド結合(ペプチド核酸)を含むDNAまたはRNA誘導体をいう。当業者はオリゴヌクレオチド、例えば、PCRプライマーは一般的に約15-100ヌクレオチド長未満であると認識しているが、本明細書において「オリゴヌクレオチド」の用語はまた「ポリヌクレオチド」と実質的に同意としても用いる。
【0082】
本明細書において用いる被験物質 (または被験化合物)は、化学的に規定された化合物 (例えば、有機分子、無機分子、有機/無機分子、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、脂質、多糖類、糖、またはこれらの分子のハイブリッド、例えば糖タンパク質など)または化合物の混合物(例えば、被験化合物のライブラリー、天然抽出物または培養上清など)であってSPに対する効果が、特にプロテアーゼドメインまたは活性を含むに十分なその部分を含む一本鎖形態がインビトロ方法、例えば本明細書において提供するアッセイで判定して試験されるものである。被験化合物はかかる化合物のライブラリー(集団)として提供してもよい。
【0083】
本明細書において用いる、ハイスループットスクリーニング(HTS)は、標的に対して多数の様々な化学物質 (化合物のライブラリー)を「ヒット」を同定するために試験するプロセスをいう(Sittampalam et al.、Curr. Opin. Chem. Biol.、1:384-91 (1997))。HTS 操作は自動化できコンピュータ化してサンプル調製物、アッセイ手順およびそれに続く多量のデータの加工を行うことが出来る。
【0084】
本明細書において用いる、組換え DNA法を用いる組換え手段による産生は、クローニングされたDNAによってコードされるタンパク質を発現するための分子生物学の周知方法の使用を意味する。
【0085】
本明細書において用いる、産物に実質的に同一とは、産物の代わりに実質的に同一な産物を用いることが出来るのに十分に注目される性質が変化していないほど十分に類似であることを意味する。
【0086】
本明細書において用いる均等は、2つの核酸配列に言及する場合、問題の2つの配列が同一のアミノ酸配列または均等なタンパク質をコードすることをいう。「均等」を2つのタンパク質またはペプチドに言及して用いる場合、2つのタンパク質またはペプチドが実質的に同一のアミノ酸配列を有し、タンパク質またはペプチドの活性または機能を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換のみを有することをいう(例えば上記表1参照)「均等」を性質に関して用いる場合、性質は同程度に存在する必要はないが、その活性が一般的に実質的に同一であることをいう。「相補的」とは、2つのヌクレオチド配列について用いる場合、2つのヌクレオチド配列がハイブリダイズでき、対応するヌクレオチドの間のミスマッチが一般的に25%未満、15%未満、5%未満または全くないことをいう。一般的に本明細書において相補的と考えられるのは高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする2つの分子である。
【0087】
「実質的に」同一または相同的または同種の語は、当業者に理解されているとおりであり、少なくとも70%、典型的には少なくとも 80%、90%、もっとも一般的には少なくとも95%の同一性を意味する。必要な場合同一性のパーセンテージを特記する。
【0088】
本明細書において用いる相同的とは、約25%を超える、例えば、25% 40%、60%、70%、80%、90%または95%の核酸配列の同一性を意味する。相同性パーセンテージは必要な場合は特記する。「相同性」および「同一性」の語は、しばしば互換的に用いられる。一般に、配列を最高のオーダーマッチが得られるようにアラインする (例えば: Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.、ed.、Oxford University Press、New York、1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.、ed.、Academic Press、New York、1993; Computer Analysis of Sequence Data、Part I、 Griffin、A.M.、and Griffin、H.G.、eds.、Humana Press、New Jersey、1994; Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje、G.、Academic Press、1987; および Sequence Analysis Primer、Gribskov、M. and Devereux、J.、eds.、M Stockton Press、New York、1991; Carillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073を参照されたい)。
【0089】
配列同一性によって、保存アミノ酸の数が標準的アラインメントアルゴリズムプリグラムによって決定され、製造者が確立したデフォールト・ギャップ・ペナルティが用いられる。実質的に相同的な核酸分子は典型的には中程度のストリンジェンシーまたは高いストリンジェンシーにて、核酸全体または少なくとも全長核酸分子の約 70%、80% または90% がハイブリダイズする。ハイブリダイズする核酸分子中のコドンの代わりに縮退コドンを含む核酸分子も考慮される。
【0090】
2つの核酸分子が少なくとも例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99% 「同一」のヌクレオチド配列を有するか否かは公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定できる。かかるアルゴリズムは例えば「FAST A」プログラム、これは例えば、Pearson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444に記載のデフォールトパラメーターを用いる (その他のプログラムとしては、GCG プログラムパッケージ (Devereux、J.、et al.、Nucleic Acids Research 12(I):387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul、S.F.、et al.、J Molec Biol 215:403 (1990); Guide to Huge Computers、Martin J. Bishop、ed.、Academic Press、San Diego、1994、およびCarillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073)が含まれる)。例えば、 National Center for Biotechnology Information データベースのBLAST の機能を用いて同一性を決定できる。その他の市販または公共のプログラムとしては、DNAStar 「MegAlign」プログラム (Madison、WI) およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group (UWG) 「Gap」 プログラム (Madison WI))が含まれる。タンパク質および/または核酸分子のパーセント相同性または同一性は、例えば、GAP コンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することによって決定できる(例えば、Needleman et al. (1970) J. Mol. Biol. 48:443、Smith and Watermanにより改訂 ((1981) Adv. Appl. Math. 2:482)。簡単に説明すると、 GAP プログラムは、類似であるアラインされた記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を、2つの配列の短い方における記号の総数で割ることにより類似性を決定する。GAP プログラムのデフォールトパラメーターには以下が含まれうる:(1)単項比較マトリックス (同一に付き値1 および非同一に付き値0を含む)およびGribskov et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス、Schwartz and Dayhoff、eds.、ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE、National Biomedical Research Foundation、pp. 353-358 (1979)に記載; (2)各ギャップに付きペナルティ3.0 およびさらに各ギャップにおける各記号に付き0.10 ペナルティ;そして(3) 末端ギャップに付きペナルティ無し。それゆえ、本明細書において用いる、「同一性」の語は、被験および参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチド間の比較を表す。
【0091】
本明細書において用いる、少なくとも「90% 同一」の語は、参照ポリペプチドに対するパーセント同一性が90から99.99であることをいう。90%以上のレベルの同一性は、例証として被験および参照ポリヌクレオチド長として100アミノ酸が比較されると仮定されるということを示す。被験ポリペプチドのアミノ酸の10%未満 (即ち、100のうち10未満)が参照ポリペプチドと異なるということになる。同様の比較を被験および参照ポリヌクレオチドについて行うことが出来る。かかる相違は、アミノ酸配列の全長に渡ってランダムに分布する点突然変異を表すか、1以上の位置で最大許容可能な例えば10/100 アミノ酸差(およそ90% 同一性)までの様々な長さでクラスターを形成していることを表す。相違は核酸またはアミノ酸の置換または欠失と定義される。約 85-90%を超えるレベルの相同性または同一性では、結果はプログラムおよびギャップパラメーターセットに依存しないはずである;かかる高レベルの同一性はソフトウェアに依存せずに容易に評価できる。
【0092】
本明細書において用いる、特定のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするというのは、2つの一本鎖DNAフラグメント間に形成されるハイブリッドの安定性を記載するために用い、また、かかるハイブリッドが洗浄され、その後に洗浄工程より低いまたは同程度のストリンジェンシーでの条件下でアニーリングされるイオン強度および温度条件をいう。典型的には高い、中程度、および低いストリンジェンシーは以下の条件またはそれと均等な条件をいう:
1)高いストリンジェンシー: 0.1 x SSPEまたはSSC、0.1% SDS、65℃
2)中程度のストリンジェンシー: 0.2 x SSPEまたはSSC、0.1% SDS、50℃
3)低いストリンジェンシー: 1.0 x SSPEまたはSSC、0.1% SDS、50℃
【0093】
均等な条件とは、結果として得られるハイブリッドにおけるミスマッチのパーセンテージが実質的に同じようになるように選択された条件をいう。成分、例えばホルムアミド、フィコール(Ficoll)およびデンハルト溶液(Denhardt's solution)の添加はハイブリダイゼーションが行われる温度などのパラメーター及び反応速度に影響を与える。したがって、5 X SSC、20% ホルムアミド中での42℃のハイブリダイゼーションは低いストリンジェンシーの条件下での上記のハイブリダイゼーション条件と実質的に同じである。SSPE、SSCおよびデンハルトのレシピおよび脱イオン化したホルムアミドの調製については例えば、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Chapter 8に記載されている; Sambrook et al.、vol. 3、p. B.13を参照されたい。また、一般の研究用の溶液について記載している数々のカタログも参照されたい。均等なストリンジェンシーが別のバッファー、塩および温度を用いることによって達成されることを理解されたい。
【0094】
本明細書において用いる組成物は、あらゆる混合物を意味する。それは溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性あるいはそれらの組み合わせのいずれでもよい。
【0095】
本明細書において用いる組み合わせは、2以上の事物のあらゆる混合をいう。組み合わせは2つの組成物または集団などの、2以上の別々の事象であってもよいし、その混合物、例えば2以上の事象の1つの混合物であってもよいし、それらのいかなる改変であってもよい。
【0096】
本明細書において用いるキットは、パッケージされた組み合わせをいい、所望により指示書および/または使用のための試薬を含むものでもよい。
【0097】
本明細書において用いる、「パッケージ」とは定められた限度にて試薬を保持する固形材料、例えば、ガラス、プラスティック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート)、紙、ホイルなどをいう。したがって例えば、パッケージはボトル、バイアル、プラスティックおよびプラスティックホイルを重ねたエンベロープでもよいし、目的の診断薬を含めるのに用いられる容器でもよいし、マイクログラム量の目的の診断薬が作動できるように固定された、即ち、ハイブリッドポリペプチドまたは標的ポリペプチドにより免疫学的に結合されうるようなマイクロタイタープレートウェルでもよい。
【0098】
本明細書において用いる流体は、流動しうるあらゆる組成物をいう。流体には半固体、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームの形態の組成物およびその他のかかる組成物が含まれる。
【0099】
本明細書において用いる、アミノ酸の好適な保存的置換は当業者に公知であり、その結果得られる分子の生物活性を一般的に変化させることなく作ることが出来る。当業者であれば一般に、ポリペプチドの非必須領域内の単一アミノ酸置換によっては実質的に生物活性は変化しないことを認識しているであろう (例えば、Watson et al. Molecular Biology of the Gene、4th Edition、1987、The Benjamin/Cummings Pub. co.、p.224を参照されたい)。
【0100】
かかる置換は以下の表2にしたがって行うことが出来る。
【0101】
【表2】

【0102】
その他の置換も許容可能であり、経験的にまたは公知の保存的置換にしたがって決定することが出来る。
【0103】
本明細書において用いる、本明細書において表れる様々なアミノ酸配列におけるアミノ酸は、周知の三文字または一文字表記によって表される。様々なDNA フラグメントにおけるヌクレオチドは、当該技術分野で通常用いられている標準的な一文字表記で表される。
【0104】
本明細書において用いる、保護基、アミノ酸およびその他の化合物の略号は特に断りのない限り通常の用法に従うかまたは IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature に基づく((1972) Biochem. 11:1726を参照されたい)。
【0105】
本明細書において用いるその他の略号はこれらに限定されないが以下を含む: CNS= 中枢神経系; BSE=ウシ海綿状脳症;CJD=クロイツフェルトヤコブ病; FFI=致死的家族性不眠症;GSS =ゲルストマン-ストラウスラー(Straussler)-シェインカー(Scheinker)疾患;Hu= ヒト;HuPrP=ヒトプリオンタンパク質(配列番号8);Mo=マウス;MoPrP= マウスプリオンタンパク質(配列番号9および10); SHa= シリアンハムスター; SHaPrP = シリアンハムスタープリオンタンパク質(配列番号5); Tg=トランスジェニック;Tg(SHaPrP)=シリアンハムスターPrP 遺伝子を含むトランスジェニックマウス;Tg(HuPrP) =ヒト PrP 遺伝子を含むトランスジェニックマウス;Tg(ShePrP)=全長ヒツジPrP遺伝子(配列番号11)を含むトランスジェニックマウス; Tg(BovPrP)=全長ウシPrP 遺伝子 (配列番号13)を含むトランスジェニックマウス; PrPSc=スクレイピーアイソフォームのプリオンタンパク質;PrPc=細胞の正常アイソフォームのプリオンタンパク質;そして MoPrPSc= スクレイピーアイソフォームのマウスプリオンタンパク質。
【0106】
B. ハイブリッド分子
タンパク質コンフォメーションの疾患については、プリオンタンパク質またはアミロイドタンパク質などの、同一のタンパク質 (またはその部分)が2以上のアイソフォーム(配座異性体)を示し、少なくとも1つの形態が疾患の原因であり、あるいは疾患に関与している。診断、予後、治療および/または薬剤スクリーニングの目的で、疾患関連配座異性体に対して良性の(非-疾患関連)配座異性体と比較してより特異的に相互作用する分子 (即ち典型的には少なくとも、2-、5- 10-倍、一般的に少なくとも 約 100-倍の、より大きいアフィニティーにて反応する分子)を得るのが有用である(あるいは逆もまた同様)。したがって、本明細書において、複数の配座異性体を有するタンパク質の1つの配座異性体に特異的に反応する分子を提供する。典型的にはかかる分子は疾患関連配座異性体と相互作用する。
【0107】
特に、本明細書において、ハイブリッドポリペプチドなどのハイブリッド分子を提供し、これは、結果として得られるハイブリッド分子が1つの配座異性体に特異的に相互作用するように、ポリペプチドモチーフまたはかかるモチーフを含むポリペプチドおよびさらなるアミノ酸残基(典型的には、5、10、15、20、30、40、50、100またはそれ以上)を含む。かかるポリペプチドは一般的にそのコンフォメーションを示すタンパク質からの連続するアミノ酸配列(モチーフ)を含む。モチーフは例えば特定のアミノ酸を置換することにより、または、指向性またはランダム進化法によって改変でき、よりアフィニティーが大きいモチーフを作ることが出来る。
【0108】
したがって本明細書において提供するハイブリッド分子のなかでも1つの分子からの結合モチーフを骨格(例えば、抗体またはそのフラグメントまたは酵素またはその他のレポーター分子)にグラフトすることにより得られる、ハイブリッド分子、特にハイブリッドポリペプチドを提供する。本明細書において提供するハイブリッドポリペプチドは、ハイブリッド免疫グロブリンであって抗体それ自体ではないが、該ポリペプチドはタンパク質凝集の疾患に関与するタンパク質に結合する能力を保持または獲得するように選択されたモチーフが別のポリペプチドに挿入されているハイブリッド分子である。ハイブリッドポリペプチドは抗体またはその他の骨格部分を含んでいてもよいが、グラフトされた非-免疫グロブリンすなわち非-骨格部分を含むものである。非-免疫グロブリン部分はその標的ポリペプチドアイソフォームに特異的に結合する能力によって決定される。ハイブリッドポリペプチドは単量体としての標的感染性または疾患関連性または選択されたアイソフォームのポリペプチドに十分なアフィニティーで特異的に結合することができ、その結果得られる複合体を検出し、標的ポリペプチドを沈降させうる。
【0109】
骨格はモチーフの挿入が実質的にモチーフの所望の結合特異性を変化させないように(即ち保持されるように)選択する。骨格はさらにその性質、例えばそのレポーターとしての能力について選択することも出来る。それは、その部分を削除して活性またはその結合特異性を除くことにより改変してもよい。骨格はまた、ポリペプチドを標的ポリペプチドとの反応性のためのその正しい三次元構造を保持させるためにも役立つ。
【0110】
タンパク質コンフォメーションの疾患に関与するかタンパク質凝集に関与するタンパク質の1つの形態の配座異性体に特異的に相互作用するハイブリッド分子の産生方法も提供する。かかる方法において、当該タンパク質からのポリペプチドモチーフが、その結果得られる分子が1つの配座異性体に対して別の配座異性体と比較してより特異的に結合するように骨格に挿入される。特に、ハイブリッド分子は良性の配座異性体に対するものと比較して疾患関連配座異性体または凝集性配座異性体に対してより特異的な結合性を示す。
【0111】
ハイブリッド分子、例えばハイブリッドポリペプチドの産生方法およびその結果得られるハイブリッド分子を、感染性形態のプリオンを標的として用い、そのエピトープおよび領域をモチーフとして用いて例証する。具多的に例示するいくつかのハイブリッドポリペプチドはネイティブな感染性形態(またはその感染性コア)のプリオンポリペプチドに対し、非感染性形態と比べて実質的により大きいアフィニティー(少なくとも10-倍大きい)にて相互作用する。本明細書において、少なくとも2種類のPrPポリペプチド上のエピトープがハイブリッドポリペプチド(本明細書において、グラフトされた抗体とも称する)により認識されることが示された。
【0112】
1.疾患-関連タンパク質またはポリペプチド
上述のように、本発明における方法およびハイブリッド分子は、タンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関与または関連するタンパク質を用いるものである。かかる疾患においては、少なくとも1つの形態のタンパク質は良性であり、別の形態が例えば疾患感染性試薬として、および/または凝集反応において、疾患に関与する。かかる疾患および2以上の異なるコンフォメーションにてアセンブリーする関連タンパク質(ここで少なくとも1つのコンフォメーションが変化したタンパク質である)は上記の表1に示すものを含む。
【0113】
a.プリオン
遍在性の細胞のプリオンタンパク質(PrPc)の異常な配座異性体であるPrPScは、感染性プリオン粒子の唯一の同定されている成分である。プリオン増殖の際に、新生のプリオン感染性の形成がPrPc のコンフォメーション再編成を引き起こすことによってPrPScが自己複製するテンプレート依存的プロセスを介して進行すると考えられている。プリオン複製複合体において正確にどのようにして異なるPrPcおよびPrPSc 配座異性体が互いに相互作用し、またおそらくその他の補助分子と相互作用するのか(Kaneko et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10069-10074; Zulianello et al. (2000) J. Virol. 74:4351-4360)は知られていない。異なるプリオン株がその特徴的な性質を複数の継代にわたって保持しているという観察は、プリオン増殖が高度に忠実なプロセスであることを示し、また、PrPcと PrPScとの分子相互作用が非常に特異的であることを示唆する (Prusiner et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13363-13383; Caughey (2001) T.I.B.S. 26:235-242)。
【0114】
1)プリオンおよびプリオン疾患
プリオン疾患、例えば、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症は、細胞のプリオンタンパク質(PrPc)の異常な配座異性体であるPrPScと密接に関係している。PrPcの第1のαヘリックスと結合するモノクローナル抗体、例えば、モノクローナル抗体D13またはD18は、PrPcとPrPScとのヘテロダイマー結合を妨げることによってプリオン増殖を阻害する(Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413-9418を参照されたい;同時係属米国特許出願第09/627,218号も参照されたい;これらFabのそれぞれの重鎖と軽鎖の核酸とコードされるタンパク質配列を示す配列番号29-36を参照されたい)。PrPcとPrPScとを識別する抗体またはその他の特異的結合分子はこの問題を解決するために有用である。正常またはPrP-ヌル動物の広範なPrP抗原(感染性プリオン、PrPc、およびαヘリックスまたはβ−シートに富むコンフォメーションに再フォールディングされた組換えおよび合成PrP分子を含む)での免疫化はしかし、くりかえし失敗しており、疾患関連形態のPrPをもっぱら認識する高-アフィニティー抗体を得ることはできていない(Williamson et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:7279; Peretz et al. (1997) J. Mol. Biol. 273:614; Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413)。かかる抗体についてのより最近の報告(Korth et al. (1997) Nature 390:74)も中途段階である(Fischer (2000) Nature 408:479)。プリオン増殖はテンプレート依存的プロセスであり、ここでPrPScがPrPcのコンフォメーション再編成を引き起こす(Prusiner et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:13363-13383)。 実際にどのようにしてこれらの2つのPrP配座異性体がプリオン複製複合体中で相互作用しているかは知られていない。
【0115】
スクレイピープリオンに感染した神経芽細胞腫系においてプリオン増殖を十分に阻害する様々なPrPc のエピトープと反応するモノクローナル抗体が報告されている(Peretz et al. (2001) Nature 412:739-743)。観察された阻害作用は、PrPSc テンプレートまたはPrPc から PrPScへの変換に必須の補因子の結合を妨げる細胞表面PrPc への抗体の結合の結果と考えられる。これら実験において使用された抗体の1つである、Fab D18は、特に強力な阻害効果を有する(Williamson et al. (1998) J. Virol. 72:9413-941’8)。本発明において示すように、残基 133-157にひろがるその不連続の PrPc エピトープがPrPScへの直接の結合に重要な役割を果たしている。D13 Fab も強力な阻害効果を有する。
【0116】
2)プリオンポリペプチドまたはそれ由来のモチーフを含むハイブリッドポリペプチド
本発明において、PrPScに特異的に結合するポリペプチドおよびかかるポリペプチドならにびその他のコンフォメーションが変化したタンパク質疾患(疾患はタンパク質凝集をともなう)の感染性または疾患誘発性配座異性体に結合するハイブリッドポリペプチドの調製方法を提供する。したがって、優先的に(特異的に)1つの配座異性体(一般的に疾患関連配座異性体)に別の配座異性体と比べてより強いアフィニティー、典型的には少なくとも 0.5、1、2、3、5、10-倍強いアフィニティーで結合するポリペプチドを提供する。1以上のアミノ酸欠失を含み、その結果得られる分子の構造の変化が生じるが1つの配座異性体、例えばPrPSc、に対する結合能力は有意に変化しておらず、プリオンタンパク質複合体を形成するか、1つの配座異性体におけるコンフォメーション変化を誘発する、例えば、PrPScにおけるコンフォメーション変化を誘発するペプチドも考えられる。
【0117】
本発明において、PrPc-PrPSc 複製インターフェイスの必須成分であるPrPcの領域を提供する。本発明において提供する方法によると、この領域に対応するPrP ポリペプチドが好適なキャリア分子、即ち骨格、例えば、抗体またはそのフラグメントにグラフトされて、疾患関連形態のPrPを特異的に認識する分子が生じる。本発明において提供する分子はハイブリッド分子、例えば免疫グロブリンまたはFabまたはその他の抗体フラグメントであって、領域がプリオン配列に置換されたものである。その結果得られる分子は多価、例えば、二価であるか、あるいは一価分子であって、PrPScに特異的に結合する。本発明における態様において、結合分子は領域、特にCD3R 領域などの領域にグラフトされた非免疫グロブリンポリペプチドを有し、グラフトされた PrPの適切な PrPコンフォメーションを保持している。ハイブリッド分子を作る方法およびその結果得られるハイブリッド分子は、凝集の疾患に寄与する複合体化したまたはコンフォメーションが変化した形態のポリペプチドに特異的に結合するため有用である。かかるハイブリッド分子は例えば、診断およびスクリーニングに利用できる。
【0118】
本発明においてPrPScと特異的に結合するか相互作用する分子を提供する。PrP配列モチーフが、レシピエント抗体骨格(IgGおよびFab)にグラフトされ、非変性PrPScおよびPrP27-30に結合することが示された(実施例参照)。ハイブリッドポリペプチドは正常形態ではなく感染性形態に特異的である。分子は二価または単量体分子として相互作用し、単量体結合部位として特異的に結合することができる。これらは一般的にプリオン由来部分および骨格、例えば、抗体またはそのフラグメントを含むハイブリッドポリペプチドである。
【0119】
プリオンまたはその部分は選択されたレシピエント骨格にグラフトされる。選択された部分は、分子全体およびその部分を系統的にグラフトし、PrPScに対する特異的な結合能力を試験することによって経験的に決定しうる。徐々に小さい領域が、結合アフィニティーが許容不可能なレベルまで減少するまで選択されうる(典型的には106 -107 l/mol未満)。
【0120】
本発明において提供する方法を用いて標的タンパク質(特にタンパク質凝集を伴う疾患や障害、例えばアミロイド障害、に関連するもの)に特異性を有する多様なハイブリッドポリペプチドを産生することが出来る。疾患関連形態の標的ポリペプチドに結合するポリペプチドの領域が好適な骨格に系統的にグラフトされ、その結果得られる特異的に結合するハイブリッドポリペプチド(即ち、そのアフィニティーが少なくとも約 107 l/mol および/または非疾患関連アイソフォームのタンパク質と比べて10-倍、100-倍またはそれ以上のもの)が同定される。
【0121】
例えば、単一の種に天然に存在するプリオンタンパク質にのみ結合し、その他の種に天然に存在するプリオンタンパク質には結合しないハイブリッドポリペプチドを産生することが出来る。さらに、ハイブリッドポリペプチドは感染性形態のプリオンタンパク質(例えば、PrPSc)にのみ結合し、 非感染性形態(例えば、PrPc)には結合しないように設計することも出来る。単一または複数をアッセイに用いて特定の標的タンパク質を同定または検出することが出来る。
【0122】
ハイブリッドポリペプチドは公知の技術を用いて精製および単離することが出来るし、公知の手法を用いて支持体に固定化させることが出来る。その結果得られる表面を用いてサンプル(例えば、血液またはその他の体液あるいは器官や組織からのサンプル)をインビトロでアッセイしてサンプルが1以上のタイプの標的タンパク質を含むか決定することができる。例えば、ヒトPrPScにのみ特異的に結合するハイブリッドポリペプチドを支持体表面に結合させ、材料表面に結合したハイブリッドポリペプチドとサンプルとを接触させるとよい。結合が起こらなければ、サンプルはヒト PrPScを含まないと推定できる。
【0123】
ハイブリッドポリペプチドはまた、プリオンを無力化する(即ちその感染性を除く)能力を有する。したがって、ハイブリッドポリペプチドを含む組成物を産物、例えば血液または食品、に添加して産物中の感染性プリオンタンパク質を無力化することができる。したがって、産物が感染性プリオンタンパク質を含んでいる可能性がある天然源から得られたものである場合、ハイブリッドポリペプチドを予防のために添加し、それによって感染性プリオンタンパク質による感染可能性をなくすことができる。例えば、それはプリオン複製および/または増殖を阻害するための治療薬として利用することが出来る。
【0124】
ハイブリッドポリペプチドはイムノアフィニティークロマトグラフィー技術と組み合わせて利用することが出来る。より具体的には、ハイブリッドポリペプチドをクロマトグラフィーカラム中の材料の表面に配置させるとよい。その後、精製させるべき組成物をカラムに通す。精製させるべきサンプルがハイブリッドポリペプチドに結合するタンパク質、例えば例示的な態様においてPrPScを含む場合、かかるタンパク質はサンプルから除去され、サンプルから精製あるいは除去される。
【0125】
ハイブリッドポリペプチドは哺乳類の治療に利用することが出来る。それらは予防的に投与してもよいし、すでに感染した動物に投与してもよい。投与すべき抗体の正確な量は数々の因子、例えば対象動物の年齢、性別、体重および症状に依存する。当業者であれば経験的に、例えば少量のハイブリッドポリペプチドを投与して効果を決定した後、用量を調整するなどして、適切な量を決定できる。用量は1日1回以上の投与用量で1から数日において0.01mg/kgから 約 300 mg/kg、好ましくは 約 0.1 mg/kgから 約 200 mg/kg、典型的には 約 0.2 mg/kg から約 20 mg/kgの範囲で変動しうる。一般的に2〜5〜10またはそれ以上の連続する日数の抗体の投与により標的タンパク質の「リバウンド」を避ける。
【0126】
3)プリオンのソース
多くの動物からのプリオンが同定され配列決定されている;例示的なプリオンを配列番号5-13に示す。あらゆる公知のプリオンタンパク質が本発明において考慮される;かかるプリオンの配列は公共のデータベースおよび刊行物から入手できる。例えば、ニワトリ、ウシ、ヒツジ、ラットおよびマウス PrP 遺伝子が Gabriel et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:9097-9101に開示され公表されている; シリアンハムスターについての配列はBasler et al. (1986) Cell 46:41-428lに公表されている; ヒツジPrP 遺伝子はGoldmann et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2476-2480に公表されている;ウシ PrP 遺伝子配列は Goldmann et al. (1991) J. Gen. Virol. 72:201-204に公表されている;ニワトリ PrP 遺伝子は Harris et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7664-7668に公表されている; マウスPrP 遺伝子配列は Locht et al. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:6372-6376に公表されている; ミンク PrP 遺伝子配列はKretzschmar et al. (1992) J. Gen. Virol. 73:2757-2761に公表されており、ヒト PrP 遺伝子配列はKretzschmar et al. (1986) DNA 5:315-324に公表されている。遺伝子ならびにコードされるタンパク質の突然変異および変異体形態も公知である (例えば、5,908,969を参照されたい)。
【0127】
4)突然変異
動物プリオンに加えて、その突然変異形態もポリペプチドモチーフのソースとして考えられる。多数の突然変異体形態が公知であり、ヒトにおいて特徴付けされている。それらには、コドン 102におけるプロリン (P)からロイシン (L)への突然変異(遺伝子的にLODスコアが3を超えるGSSの進展と関係していることが示された)が含まれる。この突然変異はPrPをコードする生殖系列DNAにおけるホスホジエステル結合を介してデオキシグアノシン (G)に結合したメチル化デオキシシトシン (C) (CpG)の脱アミノにより、その結果、デオキシシトシンとデオキシチミジン (T)の置換がおこったためであると考えられる。コドン 178におけるアスパラギン酸 (D)からアスパラギン (N)の置換を伴う突然変異がCJDの多くの家系で同定されている。D178N 突然変異はその浸透率が不完全あるが、不眠症の多くのイタリアの家系と関連している。同じ突然変異が、表現型的にはFFIとは異なり、CJDに類似しているが、ただし多くの場合、持続時間が長く鋭波脳波活動が欠如している疾患を患ういくつかの家系で報告された。同じ突然変異が2種類の表現型を与えるというこの知見は、この表現型的不均質の分子基礎を見いだす一連の研究を促した。15名のFFIおよび15名のCJD患者におけるPRNP 遺伝子型の詳細な分析により、D178N 突然変異に加えて、すべてのFFI患者が突然変異体アレルの位置129にメチオニンを有し、すべてのCJD患者がこの位置においてバリンを有することが示された。これらの結果はすべてのFFIおよび CJD症例について確認された。それゆえこれによって2種類のハプロタイプ、FFI における129M、D178N ハプロタイプ、そしてCJD における129V、D178N ハプロタイプが見いだされた。1つのFFI 家系が突然変異体アレルにおいてオクタペプチドリピート欠失を有していることから、すべての公知のFFI 家系が共通の起源を有するようではない。この知見は、表典型の差異はPRNP コドン 129以外の遺伝子的影響によって引き起こされるという可能性に強く問題を投げかけた。突然変異体アレルにおけるコドン 129 のメチオニンまたはバリンはそれぞれFFIおよびCJD178患者に必須であるが、正常アレルにおけるコドン129 がメチオニンやバリンであり得る。それゆえ、FFIおよびCJD 表現型はD178N 突然変異をともなう突然変異体アレルのコドン129により決定され、その結果、2種類のタイプのPrPが発現する。また、FFIは通常表現型においてCJDより早く表れるため、コドン 129は表現型の持続も調節している。
【0128】
2つのタンパク質に関連するPrPフラグメントの研究によるとこれらはサイズおよび3種のグリコシル化されたPrPアイソフォームの比において異なっている。サイズの変動はプロテアーゼによる異なるN-末端消化に起因し、この差はPrPが異なるコンフォメーション、即ち、特異的リガンド相互作用を有することを示す。しかし比の差は、2つの疾患におけるPrPの翻訳後プロセシングの相違を示し、これによって2種類の表現型が生じる。これらの症例において突然変異体アレルの異型接合型および同型接合型に関して潜伏期間が異なることも注目される。同型接合体の疾患持続時間は異型接合型より有意に短かった。同型接合体におけるCJD発症の平均年齢は39+/- 8歳であり、異型接合体では49+/-4歳であった。
【0129】
コドン 210におけるバリン (V)からイソロイシン (I)の置換により古典的な症状および徴候のCJDが生じ、D178N 突然変異のように、不完全な浸透度を示す。GSSはコドン105および114に突然変異を伴う。その他の点突然変異がコドン145、198、217そしておそらく232に示され、遺伝性プリオン疾患とともに分離する。興味深いことに、残基 109から122に近いかそれを含む合成ペプチドはそれぞれ容易にポリマーとなり、棹状構造をとる。この構造は、アミロイドの染色特性を有する。塩基置換以外に、オクタペプチド挿入も突然変異を引き起こす。コドン 53における6つのオクタリピートを含む144 bpの挿入はすべてイングランド南部に在住する4家族からのCJD患者に関して最初に記載された。ヒト PrP 遺伝子は5つのオクタリピートしか含まないため、単一の遺伝子組換えではこのさらなる挿入を生じさせることはできない。4家族は関係が遠いが、2世紀以上前に生まれた1名が起源であろう(LODスコアが11を超える)。いくつかの研究室からの研究により正常の5つに加えて、2,4,5,6,7,8または9のオクタリピートが遺伝性CJD 患者において示された。1つのオクタリピートの欠失も同定されたが神経疾患はともなわなかった。
【0130】
89-112グラフトに存在する3つのK 残基 (シリアンハムスター命名法による残基 101、104 および106、配列番号7の、100、103 および105に対応)の突然変異が本発明において提供するハイブリッドポリペプチドのPrPSc-反応性を失わせる。しがたってこれらの残基はとりわけPrPc-PrPSc 相互作用の鍵となる残基である。
【0131】
b. タンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関与するその他の例示的なタンパク質
タンパク質凝集の疾患、特にアミロイド疾患からの標的ポリペプチドの疾患関連アイソフォームに特異的に相互作用するハイブリッドポリペプチドの産生方法を本発明において提供する。標的ポリペプチドは疾患関連または疾患誘発性アイソフォームのポリペプチドであって、良性形態から、悪性の疾患誘発性または凝集性アイソフォームに変換したものである。
【0132】
標的ポリペプチドにはこれらに限定されないが以下が含まれる:APP、Aβ、α1-抗キモトリプシン、タウ(tau)、非-Aβ 成分、プレセニリン1、プレセニリン2、apoE、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および神経フィラメント、ピック体(Pick body)、α-シヌクレイン、原繊維におけるタウ(tau)、アミリン、IgGL-鎖、トランスサイレチン、プロカルシトニン、β2-ミクログロブリン、心房性ナトリウム利尿因子、血清アミロイドA、ApoAI、ゲルソリン、ハンチントンタンパク質およびその他のかかる標的タンパク質。良性の(または疾患誘発性)形態の標的ポリペプチドの部分、モチーフもハイブリッドポリペプチドに含まれる。
【0133】
c.ハイブリッドポリペプチドの調製
疾患に特異的なハイブリッド分子を調製するために、疾患関連コンフォメーションと相互作用するポリペプチドのコンフォメーションの部分を同定する。例えばこれは系統的に、ポリペプチドのフラグメントをコンフォメーション変化に関与する能力について試験することによって行う。例えば、異常(即ち疾患誘発性)配座異性体と相互作用するフラグメントの能力を試験する。所望の能力を有するポリペプチドのフラグメントは特異的試薬として用いることが出来、疾患配座異性体に特異的に相互作用する能力を保持するように骨格に挿入することが出来る。骨格は例えば、Fabまたは酵素またはその他の分子である。
【0134】
各タンパク質の別のアイソフォームとの相互作用のための部分または領域は経験的に同定される。これは、系統的に各タンパク質を、ポリペプチドを選択して完全な分子から開始して系統的に部分の除去および/または長さに沿った走査することで試験することによって行う。同定された領域を選択された骨格に挿入し、その結果得られる分子を目的の標的タンパク質に結合する能力について試験する。その結果得られるハイブリッドポリペプチドは診断試薬、薬剤スクリーニングアッセイ用試薬および候補治療薬として利用可能である。
【0135】
2.骨格
選択されたポリペプチドモチーフが挿入され(または結合され)、その結果得られるハイブリッドポリペプチドが所望の結合特異性を有するようなあらゆる分子、例えば、ポリペプチドは、本発明におけるハイブリッド分子の一部として使用するために考慮されうる。ポリペプチドは、標的ポリペプチドの結合のためのモチーフが正確に存在するのに少なくとも十分な数(10、20、30、50、100またはそれ以上のアミノ酸)を含むあらゆるアミノ酸配列に挿入されうる。骨格の目的は、それに結合する形態において標的ポリペプチドに対してモチーフを提示することである。骨格はさらなる特性(例えば検出可能なマーカーまたは標識として役立つ能力など)を有するように、またはさらなる結合特異性を備えさせることによりそのアッセイ(標的タンパク質の特定のアイソフォームを検出するアッセイまたは治療薬スクリーニングアッセイまたはその他のアッセイおよび方法)における使用を可能または容易にするように、設計または選択してもよい。
【0136】
骨格にはレポーター分子(例えば、蛍光タンパク質および酵素またはそのフラグメント)および結合分子(例えば、抗体またはそのフラグメント)が含まれる。骨格は、ポリペプチドモチーフ、例えば、PrP ポリペプチド部分を拘束または束縛または提示する機能を果たし、その特異的結合特性を保持または付与する。選択される骨格には抗体、酵素、例えば、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼおよびその他のシグナル生成酵素、化学発光生成因子、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ;周知の赤色、緑色および青色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質;および色素生産性タンパク質の全体または一部が含まれる。
【0137】
ポリペプチドモチーフは、所望の活性を阻害しない領域において骨格に挿入される。骨格はその他の機能性ドメイン、例えばさらなる結合部位、例えば検出のための第二の部分に特異的な部位を含んでいてもよい。
【0138】
a.抗体
抗体は本発明において考えられる骨格またはレシピエントポリペプチドの一例である。抗体およびそのフラグメントは、目的のポリペプチドモチーフを含むハイブリッドポリペプチドを作るための骨格として機能しうる。ポリペプチドモチーフは、ポリペプチドモチーフのコンフォメーションの保持およびその結果得られるハイブリッドポリペプチドの表面上への提示を可能とするいずれの好適な領域、例えばCDR3ループ(例えば、米国特許第5583202号および、米国特許第5568762号を参照されたい)に挿入してもよい。ポリペプチドモチーフを免疫グロブリン分子の重鎖または軽鎖可変ドメインに挿入すると、標的ポリペプチドに対して特異性を有するハイブリッド免疫グロブリンが生じる。
【0139】
基本的な免疫グロブリンまたは抗体の構造単位はよく理解されている。分子はジスルフィド結合により共有結合した重鎖および軽鎖を含む。重鎖はまた、ジスルフィド結合を介して細胞表面分子との相互認識を可能にする定常領域と称される基本部分内に共有結合している。定常領域には5つの主なクラスが知られており、これによって免疫グロブリン分子のクラスが決定され、それらはIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEと称される。重鎖のN末端領域は外向きに分枝しており、Y型構造として模式的に表される。軽鎖は2つの重鎖のY分枝に共有結合している。重鎖Y分枝領域に、特定の免疫グロブリン分子に偶発する特定の抗原性エピトープに特異的なおよそ100 アミノ酸長の可変なドメインが存在する。この領域は、例えば標的ポリペプチド(例えば、タンパク質凝集の疾患、例えばアミロイド疾患に関与するポリペプチドの感染性または疾患関連アイソフォームなど)に結合するためのポリペプチドモチーフと完全にまたは部分的に置換されうる。別の態様において、ポリペプチドモチーフは可変領域の1または複数のN-末端に挿入される(例えば、かかる変化を有する分子の調製方法については米国特許第5583202号を参照されたい)。CDR3と呼ばれる領域は、重鎖と抗原との結合性接触を担う部分である。したがってそれは本発明における方法に使用する標的ポリペプチドの検出のための本発明において提供するハイブリッドポリペプチド試薬の産生の際に置換される良好な領域である。その結果得られる分子は一般的に標的ポリペプチドに関して一価または二価である。それらを操作して、例えば、本発明において提供するアッセイにおける検出を補助するように異なる特異性を付与してもよい。
【0140】
b.その他の分子
上述のように、その他の分子、例えば、酵素および発光分子を骨格として用いることが出来る。これらには、触媒および/または結合活性に十分な酵素の全部または一部あるいは発光を提供するのに十分な発光分子の全部または一部が含まれる。骨格として使用される分子にはこれらに限定されないが以下が含まれる:ルシフェラーゼ(発光タンパク質を含む)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼおよびその他のシグナル生成酵素、化学発光生成因子、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ; 蛍光タンパク質、例えば、周知の赤色、緑色および青色蛍光タンパク質;および色素生産性分子、例えば、色素生産性タンパク質。
【0141】
3.例示的ハイブリッド
上述のように、プリオンタンパク質およびそれ由来のモチーフを含むハイブリッド分子は、本発明において提供するハイブリッド分子の一例である。ハイブリッド分子上に特異的結合を付与するのに十分な少なくとも1つのアミノ酸配列を含むプリオンタンパク質からのあらゆるモチーフが考慮されうる。モチーフには少なくとも5アミノ酸から全分子が含まれ、結合特性を保持するその変異体も含まれる。
【0142】
本発明において示すように、プリオンタンパク質は少なくとも2つの異なるモチーフを含み、1つはプリオンポリペプチドからの約89-112 領域 (シリアンハムスター命名法による)からのものであり、もう1つは約 136-141 領域からものもである。かかる領域の一方または両方を含むハイブリッドポリペプチドを例示する。
【0143】
例えば、残基 89-112、136-158および121-158 (図1、配列番号5を参照されたい;その他のプリオンポリペプチドにおける対応する残基は例えば配列番号5-13である)が骨格にグラフトされた。特に、Fab、F(ab')2およびIgG ハイブリッド(グラフトされた抗体とも称される)を例示する。少なくとも 残基 101-106または残基 約 136-150を含むハイブリッドポリペプチドも提供する。PrPScとの高アフィニティー (Ka 典型的には約 106-107 mol/l以上、一般的に107 mol/l以上)での相互作用のためのグラフトされたモチーフを提示するあらゆる好適な骨格またはアミノ酸配列またはその他の分子が利用できる。かかる骨格としては、酵素、レポーター分子、抗体、免疫グロブリンおよびそれらのフラグメントが含まれる。
【0144】
例えば、比較的長い認識配列が以前に抗体分子のHCDR3 領域にグラフトされ、所望の結合特性がもたらされている(McLane et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:5214-5218)。アミノ酸89-112、119-136、136-158、121-144および121-158に対応するマウス PrP 配列がHIV-1 gp120に特異的なヒト組換え抗体であるIgG Fab b12のHCDR3にオーバーラップポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)を用いてグラフトされた(Burton et al. (1994) Science 266:1024-1027;米国特許第5652138号参照; b12はA.T.C.C.受託番号 69079のMT12と称される細胞系から産生された抗体由来である)。寄託されたMT12 大腸菌細胞と称される細胞はb12 と称されるFabの発現のための発現ベクター pComb2-3 を含むものである(クローンb12) (米国特許第5639581号を参照されたい、これはこのクローンの完全な重鎖および軽鎖配列を提供する; 本発明における配列番号1-4も参照されたい)。
【0145】
Fab b12をグラフトされた PrP 配列のための例示的な骨格(レシピエント分子)として選択した。というのはこの親抗体は抗原結合部位の表面から垂直にのびた比較的長いHCDR3 (18 アミノ酸)を有するからである (Ollmann Saphire et al. (2001) Science 293:1155)。PrP 配列を抗体表面からできるだけ遠ざけるために、各グラフトは親 HCDR3の最初のN-末端残基と4つのC-末端残基の間に配置させた(図1)。さらに、2つのグリシン残基をPrP 配列の両端に組み込んだ。その結果得られたPrP-Fab(119-136、121-144および121-158)を大腸菌で発現させ均質となるまで精製した(Williamson et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:4141-4145)。
【0146】
本発明における例示的な態様において、b12と称される抗体のCDR3 ループ部分を(細胞系MT12、A.T.C.C.受託番号69079により産生)、グラフトされるポリペプチドモチーフと置換する。その結果得られるハイブリッドポリペプチドであるハイブリッド免疫グロブリンは、例示的態様において挿入されたPrP ポリペプチドモチーフであるモチーフの三次元構造を保持している。ハイブリッド免疫グロブリンは親免疫グロブリンの抗原結合特異性は有さない。
【0147】
後述の実施例は、マウスハイブリッドポリペプチドの調製方法を記載する(図1を参照)。ウシ PrPについての例示的なハイブリッドポリペプチドを調製するために、アミノ酸119-131 (配列番号4のGly Pro Tyr Ser Trp Asp Asp Ser Pro Gln Asp Asn Tyr)として示す、b12 抗体のCDR3 領域(完全なアミノ酸配列およびその説明について米国特許第5652138号を参照されたい;配列番号1-4も参照されたい) を除去し、PrPScに特異的に結合する標的 PrPの部分、例えば、両端にGly Glyを含むアミノ酸残基 121-158、89-112または36-158を(シリアンハムスター命名法による)(例えば、対応するウシ配列については配列番号13のアミノ酸132-169 を参照されたい;図1も参照されたい) IgG および/または Fabに挿入した(上述のように、本発明におけるすべての命名法はシリアンハムスター PrP 配列に対応し、これは参考のため共通に用いられる)。これらの配列をGly Pro Tyr Ser Trp Asp Asp Ser Pro Gln Asp Asn Tyrの代わりに挿入した(配列番号4および図1参照)。
【0148】
PrP一次配列の全長に沿って一連の15-35マーの PrPインサートも調製した。これは順次N末端からC末端へ10 アミノ酸ずつずらして行った。そしてPrPSc-様のコンフォメーションのタンパク質との相互作用に必要なPrP の部分を同定した。
【0149】
PrPc-PrPSc 相互作用における個々のPrPc 残基の相対的重要性を評価し、切型および突然変異PrP 配列を含むさらなるFabを産生した。骨格-グラフトされたPrP 配列のインサイチュランダム化、次いで感染性プリオン粒子に対する選択を利用することによりPrPScに対して非常に高アフィニティーを有する分子を生じる、Fab 分子が開発された。その結果得られるデータを実験的に用いて、新規PrP 導入遺伝子の使用を介して直接的にどのようにPrPc-PrPSc 相互作用の動力学的特性がインビボでプリオン病原を調節しているかを決定した。最後に、PrPScに対する結合についてハイブリッドポリペプチド(例えば、ハイブリッド IgGまたはFab 121-158、136-158 または89-112)と競合する低分子をスクリーニングすることにより、プリオン複製阻害および/またはプリオンを含むプリオン接種材料または流体または組織(肉を含む)の無力化が可能な候補薬物を見いだした。かかる候補薬物は治療薬および/または予防薬の候補である。
【0150】
PrPc、PrPScおよびPrP27-30に対するPrP-Fab 分子の反応性を研究するために、正常マウスおよび79A 株のスクレイピープリオンに感染したマウスから調製した脳ホモジネートを用いて免疫沈降実験を行った。沈降したPrPをウェスタンブロットにより検出した。陽性対照として、6H4 抗体 (Korth et al. (1997) Nature 390:74-77)およびD13 抗体を正常マウス脳ホモジネートからのPrPcを沈降させるのに用い(Fischer et al. (2000) Nature 408:479-483))、プラスミノーゲンをプリオンに感染した脳サンプルからのPrPScを沈降させるのに用いた。PrP Fabと PrPcとの正常マウス脳における反応は存在しないか非常に弱かった。
【0151】
これらFabはそれぞれpK-消化プリオン感染脳ホモジネートから3つのPrPバンドを免疫沈降させた。これらのバンドはサイズにおいてPrP27-30のジ−、モノ−および非グリコシル化形態に対応し、PrP27-30はPrPScのプロテイナーゼ耐性コアであり、PrPScのタンパク質のN-末端部分の残基 23-90が酵素により分解される。
【0152】
PrP27-30 を効率よく沈降させたFab 121-158 (図1b)を、次いで、全長 PrPScとの反応性について評価した。IgGおよび Fab89-112 および136-158についても評価した。Fab 121-158を用いると、例えば、未消化のプリオン感染脳組織ホモジネートからの全長 PrPScに対応する分子量 33-35 Kの3つのバンドが沈降した。同一実験条件下で、親 b12 FabはPrPc、PrPSc またはPrP27-30のいずれとも反応しなかった。
【0153】
IgGおよびFab89-112および136-158を用いても同様の結果が得られた。さらに、PrP 配列を含むFabはもはや親 b12 抗体の標的抗原であるgp120を認識せず、マウス脳ホモジネートのプローブウェスタンブロットを用いた場合いずれのその他のタンパク質とも結合せず、SDS 存在下での加熱によるPrPc-様のコンフォメーションへの変性の後、PrPScと全く反応しなかった(データ示さず)。したがって、残基 121-158、136-158または89-112から構成されるグラフトされた PrP 配列はPrPScの特異的抗体認識を付与し、この疾患関連エピトープはPrP27-30において保持される。グラフトされた残基 136-158はこれらの結合および認識特性を保持する。
【0154】
次ぎにFabまたはIgG 121-158 をスクレイピープリオン感染 SMB 細胞の溶解液からPrPを免疫沈降するのに用いる一連の免疫沈降実験を行った(Chandler (1961) Lancet i:1378-1379; Clarke et al. (1970) Nature 225:100-101)。この場合も、Fab 121-158 は未処理SMB 溶解液におけるPrPcには結合しなかったが、pK消化後のこれらサンプルにおいてPrP27-30を認識することが出来た。Fab 121-158 がプリオン感染脳ホモジネートからのPrPScを効率よく沈降させた以前の実験と異なり、この抗体を用いるとSMB 細胞から全長 PrPScは免疫沈降されなかった。SMB 細胞におけるPrPc:PrPSc比はおよそ 4:1であるが、疾患が進行したプリオン感染マウスの脳では1未満であると考えられるため(Safar et al. (1998) Nature Med. 4:1157-1165)、SMB 溶解液において、PrPSc は抗体の添加の前にPrPcと複合体化しているようである。かかる状況下で、PrPc に結合されるPrPSc エピトープを認識するように設計されたFab-IgG 121-158の結合は除外される。逆に、疾患脳組織において PrPSc 分子の一部が、これらの調製物においてはPrPc に対してPrPSc が化学量論的に過剰であるため複合体化していないようである。同様の実験 (実施例参照)をIgGまたはFab 136-158または89-112 ハイブリッドポリペプチドを用いて行った。これらの実験において、IgG、Fab 121-158、IgGまたはFab 136-158 または89-112は疾患関連PrP配座異性体に対して高いアフィニティーを有する。
【0155】
IgGまたはFab 121-158 または136-158 ポリペプチドはPrPc の最初のαヘリックス(残基 145-155)を構成する配列を含む (図1b)。Fab119-136 そして程度は低いが Fab121-144も、疾患関連形態のPrPに結合し、これはαヘリックスはPrPScまたはPrP27-30の特異的認識には必要でないことを示す。さらなる結果により、89-112が疾患関連形態のPrPに結合することが示された。別の結果により89-112 領域の約 100-106 残基部分が重要であることが示された。同様に、実験により136-141が結合に重要であることが示された。領域 89-112 および 136-158 (ならびにその部分)は異なるエピトープに結合する。
【0156】
上記のデータは、PrP 配列の残基 140から175を欠くトランスジェニックマウスがネイティブなマウスプリオンに感染しやすい(ただし、潜伏期間が有意に延長する)という研究と一致する(Supattapone et al. (1999) Cell 96:869-878)。インビボでは、内因性のPrPc「基質」に対するPrPScテンプレートの固有のアフィニティーがプリオン疾患の病的過程であるプリオン複製の効率を規定するパラメーターとなり得る。
【0157】
PrPc-PrPSc 相互作用における個々のPrPc 残基の相対的重要性を評価するためには、切型および突然変異PrP 配列を含むさらなるFabまたはIgの産生が必要である。さらに、抗体-グラフトされたPrP 配列のインサイチュでのランダム化、次いで感染性プリオン粒子についての選択、を用いてより高いアフィニティー(PrPScについてKa >109 mol/l)を有するハイブリッドポリペプチドを作ることが出来る。さらに、特定の残基の重要性の研究からのデータを用いて、実験的にPrP 導入遺伝子の使用を介して、インビボでどのようにPrPc-PrPSc 相互作用の動力学的特性がプリオン病原を調整しているのかを直接決定することが出来る。また、IgGまたは Fab 121-158、89-112 または136-158と、PrPScとの結合について競合する低分子をスクリーニングすることにより、プリオン複製の阻害および/またはプリオン接種材料の無力化が可能な候補薬を得ることが出来る。
【0158】
同様の結果が、対応するIg、例えばIgG(以下および実施例に記載する)によっても得られる。後述のように、ハイブリッド PrP IgGも調製した。その中には特に、IgG 121-158、IgG 89-112 および IgG 136-158およびそれらのフラグメントが含まれる。IgG 121-158、IgG 89-112 およびIgG 136-158 およびそれらの特定のフラグメントは、PrP配座異性体に対して高いアフィニティーを有する。これらの結果も同様に、αヘリックスはPrPSc またはPrP27-30の特異的認識に必須ではないことを示す。
【0159】
b12 骨格を用いてさらなるハイブリッドポリペプチドを調製した。マウスプリオンのアミノ酸86-111 (シリアンハムスター番号付けに基づく;配列番号9を参照) N-末端..GGWGQGGGTHNQWNKPSKPKTNLKHV...C-末端 、および位置86-117 N-末端...GGWGQGGGTHNQWNKPSKPKTNLKHVAGAAAA...C-末端 (配列番号9参照)を挿入し、感染性形態のプリオンに特異的に結合するハイブリッド分子が得られた。その他にはアミノ酸89-112が含まれる。実施例に示すように、残基 133-157、特に136-158および96-104、特に 89-112を認識するハイブリッドポリペプチド(抗体骨格に挿入されているので本発明において「抗体」とも称する)が特に強力であった。
【0160】
ハイブリッド IgG
アミノ酸89-112および136-158に対応するマウス PrP 配列を、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてHIV-1 gp120に特異的なヒト組換え抗体であるIgG1 b12のHCDR3にグラフトした(Burton et al. (1994) Science 266:1024-1207;配列番号1-4を参照されたい)。抗体 b12を移植されるPrP 配列に対するレシピエント分子として選択した。というのは、この親抗体は抗原結合部位の表面から垂直に延びた比較的長いHCDR3 (18 アミノ酸)を有するからである(Ollmann et al. (2001) Science 293:1155-1159)。抗体表面からPrP 配列をできるだけ遠ざけるために、各グラフトを親 HCDR3の最初のN-末端残基と4つのC-末端残基の間に配置した(図1参照)。さらに2つのグリシン残基をPrP 配列の各末端に組み込んだ。その結果得られたPrP-IgG(89-112 および 136-158) をCHO細胞で発現させ、均質となるまで精製した(Maruyama et al. (1999) J. Virol. 73:6024-6030)。
【0161】
PrPc、PrPScおよびPrP27-30に対するPrP-IgG 分子の反応性を研究するために、正常マウスおよびRMLまたは79A 株のスクレイピープリオンに感染したマウスから調製した脳ホモジネートを用いて実験を行った(実施例4に記載)。沈降したPrPをウェスタンブロットにより検出した。陽性対照として、Fab D13および IgG 6H4 (Korth et al. (1997) Nature 390:74-77)を正常マウス脳ホモジネートからのPrPcを沈降させるのに用い、プラスミノーゲンをプリオンに感染した脳サンプルからのPrPScを沈降させるのに用いた。PrP-IgG 89-112 または136-158と正常マウス脳におけるPrPcとの反応は、抗体の終濃度を10 μg/mlとした場合検出されなかった。同じまたはより低い濃度では、これらIgGのそれぞれは未消化およびpK-消化プリオン感染脳ホモジネートから3つのPrPバンドを免疫沈降させた。これらのバンドはサイズにおいてPrPScおよび PrP 27-30のジ−、モノ−および非グリコシル化形態に対応し、PrP27-30はPrPScのプロテイナーゼ耐性コアであり、PrPScのタンパク質のN-末端部分の残基 23-90が酵素により分解されたものである。
【0162】
同一実験条件下で、親 b12 IgGはPrPc、PrPSc またはPrP27-30のいずれとも反応しなかった。さらに、PrP 配列を含むIgGはもはや親 b12 抗体の標的抗原であるgp120を認識せず、マウス脳ホモジネートのプローブウェスタンブロットに用いた場合いずれのその他のタンパク質とも結合せず、SDS 存在下での加熱によるPrPc-様のコンフォメーションへの変性の後、PrPScと全く反応しなかった(データ示さず)。したがって、残基 89-112または136-158から構成されるグラフトされた PrP 配列はPrPScの特異的抗体認識を付与し、この疾患関連エピトープはPrP27-30において保持される。
【0163】
さらにPrPグラフトが疾患関連PrPコンフォメーションに対する特異性を付与することを確かめるために、136-158グラフトを含むアミノ酸がスクランブルされている分子を構築した。その結果得られるPrP 136-158ランダムと称される抗体は、終濃度10 μg/mlにて免疫沈降アッセイに用いた場合、PrPScおよびPrP 27-30との反応性はわずかであり、濃度3 μg/mlの場合は反応性は無かった。PrPScおよびPrP 27-30に対する特異性は、PrP 136-158 グラフトがN-末端切型されて残基 141-158kとなった時に失われ、これはPrP 配の残基 136から140 (すべてを含む)がPrPc-PrPSc 相互作用に重要であることを示す。実際、マウス PrPの位置138における単一のシリアンハムスター特異的置換は以前に有意にプロテイナーゼ K 耐性PrPの産生を阻害することが示されている (Priola et al. (1995) J. Virol. 69:7754-7758)。さらにヤギ PrPの均等な位置における天然二形性がその宿主のヒツジおよびウシプリオンによる感染に対する耐性の上昇と関連している(Goldmann et al. (1996) J. Gen. Virol. 77:2885-2891)。
【0164】
プラスミノーゲンおよびPrPScの特異的相互作用は膜ラフトを破壊するデタージェントの存在に依存する(Shaked et al. (2002) J. Neurochem. 82:1-5)。IgG 89-112 および 136-158 と PrPSc および PrP 27-30の結合相互作用がデタージェント条件によって影響を受けるかを調べるために、同様の免疫沈降実験を行った。この実験ではプリオン-感染マウス脳ホモジネートをNP-40 および デオキシコール酸ナトリウム (DOC) (膜ラフトを破壊する試薬)または Triton X-100 (ラフト構造を保存するデタージェント)のいずれかを用いて調製した。結果はPrP-グラフトされた抗体とPrPScとの反応性はデタージェント条件によって影響を受けず、PrP 27-30に対する結合は Triton X-100の存在下で有意に上昇することを示すものであった。同じ条件下で、IgG b12 は PrPScにもPrP 27-30にも結合しなかった。同様に、IgG89-112および136-158はTriton X-100の存在下で抽出された正常マウス脳におけるPrPc を認識しなかった。
【0165】
これらのPrP-グラフトされた抗体のなかで、IgG 89-112が疾患関連PrP配座異性体に対して最大のアフィニティーを有していた。この分子のPrPSc およびPrP 27-30に対するアフィニティーを評価するため、一連の免疫沈降実験を様々な濃度の抗体を用いて行った。各抗体濃度で沈降したPrPの相対量をイムノブロットで可視化し、濃度測定分析によって定量した。抗体濃度に対して濃度測定値をプロットすることにより、滴定曲線が得られ、これからPrPScおよびPrP 27-30に対する50% 最大結合シグナルを生じさせる抗体濃度が決定でき、これら抗原の結合定数を評価することが出来る。結果は、IgG 89-112 がPrP 27-30についてはおよそ2nM、PrPScについては7 nMのみかけのアフィニティーを有することを示した(図3参照)。
【0166】
これらのデータは、モチーフ-グラフト・アプローチによりPrPScとPrP 27-30にもっぱら観察されるエピトープに対する非常に高い固有の特異性とアフィニティーを有する少なくとも2つの独立のPrP 配列領域が同定されたことを示す。様々なPrP配列を含むさらなるハイブリッドポリペプチドを用いる同様の実験により、PrPc-PrPSc 相互作用における個々のPrPc 残基の相対的重要性を評価することが出来る。インサイチュでの抗体-グラフトされた PrP 配列のランダム化(あるいはその他の進化プロトコール)、次いで感染性プリオン粒子に対する選抜により、PrPScに対する非常に高いアフィニティーを有する分子を作ることが出来る。
【0167】
本発明において提供するハイブリッドポリペプチドを用いてPrPScに対する結合についてIgG (またはFab) 89-112および 136-158と競合する低分子をスクリーニングしてプリオン複製を強力に阻害することが出来る候補薬物を得ることが出来る。
【0168】
C.核酸分子、ベクター、プラスミド、細胞およびハイブリッドポリペプチドの調製方法
本発明において提供するあらゆるハイブリッドポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。かかる分子は好適な宿主細胞における発現のためにプラスミドおよびベクターに導入するとよい。
【0169】
プラスミド、ベクターおよび細胞
核酸分子を含むプラスミドおよびベクターも提供する。コードされるタンパク質を発現する細胞を含む、ベクターを含む細胞を提供する。細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞または動物細胞のいずれでもよい。ハイブリッドポリペプチドの産生方法、例えば、細胞がコードされるポリペプチドを発現する条件下で細胞を培養し、発現したタンパク質を回収する方法を本発明において提供する。細胞は、タンパク質の発現に用いられ、タンパク質は分泌されるか細胞質内に発現される。ハイブリッドポリペプチドは、タンパク質合成の標準方法を用いて化学的に合成することも出来る。
【0170】
適切な転写/翻訳制御シグナルおよびタンパク質をコードする配列を含むキメラ遺伝子を含む発現ベクターの構築には当業者に知られているあらゆるベクターへの核酸フラグメントの挿入方法を用いることが出来る。かかる方法には、インビトロ組換えDNAおよび合成技術およびインビボ組換え(遺伝子組換え)が含まれる。ハイブリッドポリペプチドをコードする核酸の発現は、遺伝子またはそのフラグメントが組換えDNA分子で形質転換された宿主にて発現するように第2の核酸配列によって制御されうる。例えば、タンパク質の発現は当該技術分野で公知のあらゆるプロモーター/エンハンサーによって制御されうる。使用可能なプロモーターにはこれらに限定されないが以下が含まれる:SV40初期プロモーター(Bernoist and Chambon、Nature 290:304-310 (1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端リピートに含まれるプロモーター(Yamamoto et al.、Cell 22:787-797 (1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1441-1445 (1981))、メタロチオネイン遺伝子の制御配列 (Brinster et al.、Nature 296:39-42 (1982)); 原核発現ベクター、例えば、β-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroff et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:3727-3731 1978))またはtacプロモーター(DeBoer et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25 (1983)); ”Useful Proteins from Recombinant Bacteria” Scientific American 242:79-94 (1980)も参照されたい);ノパリンシンゼターゼプロモーター(Herrar-Estrella et al.、Nature 303:209-213 (1984))またはカリフラワーモザイクウイルス 35S RNA プロモーター (Garder et al.、Nucleic Acids Res. 9:2871 (1981))、光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼプロモーター(Herrera-Estrella et al.、Nature 310:115-120 (1984))を含む植物発現ベクター、および酵母その他の真菌からのプロモーター要素、例えば、Gal4 プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および以下の組織特異性を示し、トランスジェニック動物に用いられている動物転写制御領域: 膵腺房細胞で活性なエラスターゼI 遺伝子制御領域 (Swift et al.、Cell 38:639-646 (1984); Ornitz et al.、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409 (1986); MacDonald、Hepatology 7:425-515 (1987));膵臓β細胞で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan et al.、Nature 315:115-122 (1985))、リンパ系細胞で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al.、Cell 38:647-658 (1984); Adams et al.、Nature 318:533-538 (1985); Alexander et al.、Mol. Cell Biol. 7:1436-1444 (1987))、精巣、乳房、リンパ系および肥満細胞で活性なマウス乳癌ウイルス制御領域(Leder et al.、Cell 45:485-495 (1986))、肝臓で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinckert et al.、Genes and Devel. 1:268-276 (1987))、肝臓で活性なアルファ-胎児タンパク質遺伝子制御領域 (Krumlauf et al.、Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648 (1985); Hammer et al.、Science 235:53-58 1987))、肝臓で活性なアルファ-1抗トリプシン遺伝子制御領域 (Kelsey et al.、Genes and Devel. 1:161-171 (1987))、骨髄細胞で活性なベータグロビン遺伝子制御領域 (Mogram et al.、Nature 315:338-340 (1985); Kollias et al.、Cell 46:89-94 (1986))、脳のオリゴデンドロサイト細胞で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al.、Cell 48:703-712 (1987))、骨格筋で活性なミオシン軽鎖-2 遺伝子制御領域(Sani、Nature 314:283-286 (1985))、および視床下部の性腺刺激ホルモン分泌細胞で活性な性腺刺激ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al.、Science 234:1372-1378 (1986))。
【0171】
特定の態様において、ハイブリッドポリペプチド、またはそのドメイン、フラグメント、誘導体またはホモログをコードする核酸に作動可能にリンクしたプロモーター、1以上の複製起点、および所望により1以上の選抜可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を含むベクターが用いられる。ハイブリッドポリペプチドをコードする配列またはその部分を含む発現ベクターは例えば、コード部分を3つのそれぞれのpGEXベクター(グルタチオンS-トランスフェラーゼ発現ベクター(Smith and Johnson、Gene 7:31-40 (1988))のEcoRI 制限部位にサブクローニングすることによって作られる。これによって正しい読み枠にて産物の発現が可能となる。例示的な発現ベクターおよびハイブリッドポリペプチドの発現系には特にコードされるタンパク質の分泌用に設計された周知のピチア(Pichia)ベクター(例えば、Invitorogen、San Diego、CAから市販されている)が含まれる。タンパク質は細胞質に発現させてもよく、例えばインクルージョンボディとする。
【0172】
大腸菌細胞の形質転換用プラスミドには、例えば、pET 発現ベクター(米国特許第4952496号を参照されたい; NOVAGEN、Madison、WIから市販されている;系について説明しているNovagenから発行されている文献も参照されたい)が含まれる。かかるプラスミドには以下が含まれる:pET 11a、これはT7lac プロモーター、T7 ターミネーター、誘導可能な大腸菌lac オペレーター、およびlac リプレッサー遺伝子を含む;pET 12a-c、これはT7プロモーター、T7ターミネーター、および大腸菌 ompT 分泌シグナルを含む;そしてpET 15bおよびpET19b (NOVAGEN、Madison、WI)、これらはHis カラムによって精製するためのHis-Tag(商標)リーダー配列およびカラムでの精製後の切断を可能とするトロンビン切断部位、T7-lacプロモーター 領域およびT7 ターミネーターを含む。
【0173】
ベクターは宿主細胞、例えば、ピチア細胞および細菌細胞、例えば大腸菌に導入され、そこでタンパク質が発現する。例示的なピチア株には例えば、GS115が含まれる。例示的な細菌宿主は、誘導可能なプロモーター、例えば、lacUV プロモーター(米国特許第4952496号を参照されたい)に作動可能にリンクしたT7 RNA ポリメラーゼをコードするDNAの染色体コピーを含む。かかる宿主にはこれに限定されないが溶原性大腸菌株BL21(DE3)が含まれる。
【0174】
D.ペプチド疑似体
ペプチドアナログは、テンプレートペプチドの性質と類似の性質を有する非ペプチド薬物として医薬業界で一般に使用されている。かかるタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド疑似体」(Peptide mimeticsまたはPeptidominetics)と呼ばれている(Luthman et al.、A Textbook of Drug Design and Development、14:386-406、2nd Ed.、Harwood Academic Publishers (1996); Joachim Grante (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、33:1699-1720; Fauchere (1986) J. Adv. Drug Res.、15:29; Veber and Freidinger (1985) TINS、p. 392; およびEvans et al. (1987) J. Med. Chem. 30:1229)。治療上有用なペプチドと構造的に類似したペプチド疑似体は、同等またはより高い治療または予防効果を得るために用いられる。ペプチド疑似体の調製およびその構造は当業者に公知である。ハイブリッドポリペプチドのペプチド疑似体を本発明において提供する。
【0175】
同じタイプのD-アミノ酸を有するコンセンサス配列の1以上のアミノ酸の系統的な置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を用いてより好適なペプチドを作ることが出来る。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変動を含む束縛されたペプチドを当該技術分野で公知の方法によって、例えば、ペプチドを閉環させる分子内ジスルフィド結合を形成することができる内部システイン残基を追加することによって、作ることが出来る(Rizo et al. (1992) An. Rev. Biochem.、61:387、引用によりその内容が本出願に含まれる)。
【0176】
当業者であれば、ペプチドおよび疑似体に、ペプチドの生理活性または機能活性に有害な効果を与えることなく修飾を行うことが出来ることが理解できよう。さらに当業者であればハイブリッドポリペプチドを模倣する三次元構造の非-ペプチドの設計方法を理解されるであろう(例えば、Eck and Sprang (1989) J. Biol. Chem.、26: 17605-18795を参照されたい)。
【0177】
診断用途で用いる場合、ペプチドおよびペプチド疑似体を検出可能な標識で標識すればよく、したがってかかる標識を有さないペプチドおよびペプチド疑似体は標識されたペプチドおよびペプチド疑似体の調製の中間体として役立ちうる。検出可能な標識は、ペプチドおよびペプチド疑似体に共有結合により結合し、ペプチドおよびペプチド疑似体の、インビボ(例えば、ペプチドまたはペプチド疑似体を投与した患者において)またはインビトロ(例えば、サンプルまたは細胞中)での検出を可能とするいずれの分子または化合物であってもよい。好適な検出可能な標識は当業者に周知であり、例えば、放射性同位体、蛍光標識(例えば、フルオレセイン)などが含まれる。使用する検出可能な標識の種類は重要ではなく、非毒性レベルにて検出可能なように選択するとよい。かかる標識の選択は当業者に周知である。
【0178】
検出可能な標識のペプチドまたはペプチド疑似体への共有結合は当該技術分野で周知の常套方法によって達成される。例えば、125I 放射性同位体を検出可能な標識として用いる場合、125Iのペプチドまたはペプチド疑似体への共有結合は、アミノ酸チロシンをペプチドまたはペプチド疑似体に導入し、ペプチドをヨウ素化することによって行うことができる(例えば、Weaner et al. (1994) Synthesis and Applications of Isotopically Labelled Compounds、pp. 137-140を参照されたい)。ペプチドまたはペプチド疑似体中にチロシンが存在しない場合、ペプチドまたはペプチド疑似体のNまたはC末端へのチロシンの導入は周知の化学的方法によって達成できる。同様に、32Pは、ペプチドまたはペプチド疑似体にホスフェート部分として、例えば、ペプチドまたはペプチド疑似体の水酸基を介して常套の化学的方法によって導入できる。
【0179】
ペプチド疑似体の標識には通常、定量的構造活性データおよび/または分子モデリングによって予測された、ペプチド疑似体上の非阻害位置への、直接またはスペーサー(例えば、アミド基)を介した1以上の標識の共有結合を伴う。かかる非阻害位置は一般的に、ペプチド疑似体が結合して治療効果を発揮する高分子と直接接触しない位置である。ペプチド疑似体の誘導体化(例えば標識)は、ペプチド疑似体の所望の生物活性または薬理活性を実質的に阻害しないように行うべきである。
【0180】
E. ハイブリッドポリペプチドの診断、治療薬、アッセイおよびその他の使用
本発明において提供するハイブリッド分子は様々な用途を有する。それらはサンプル中の1つの配座異性体の存在を検出するためのアッセイに用いることが出来る。サンプルとしては例えば、体液または組織サンプルあるいは食品サンプルまたは土壌サンプルその他のサンプルが挙げられる。これらは疾患の治療薬としても利用できる;それらは候補薬物スクリーニングおよび/または薬物および治療薬または診断薬の設計にも利用できる。
【0181】
1.診断および治療薬
本発明において提供するハイブリッドポリペプチドとタンパク質凝集の疾患(またはコンフォメーションの疾患)に関与する疾患誘発性(または疾患関連)または感染性形態のポリペプチドとの特異的相互作用に基づいて、サンプル、例えば食品または体液または組織サンプル中の疾患誘発性または感染性形態の標的ポリペプチドの存在を検出するためにかかるポリペプチドを利用することが出来る。例えば、PrPScに特異的に相互作用するハイブリッドポリペプチドを用いて血液およびその他の組織をスクリーニングすることが出来る。
【0182】
本発明において提供するハイブリッドポリペプチドは、診断および治療目的で利用することが出来る。診断薬は、血液供給および組織および移植レシピエントの試験および保護;食用動物の試験に利用することが出来る。ポリペプチドはまた、候補治療薬を同定するためのアッセイにも利用できる。
【0183】
特別の態様において、動物の組織、器官および体液サンプルにおける感染性プリオンの検出のための試薬およびアッセイが提供される。試薬は基体上であっても溶液中であってもよく、サンプルは病原性形態のプリオンタンパク質を含むかどうかアッセイされる。試薬は、プリオンタンパク質を処理(例えば変性)することなく、PrPSc形態のプリオンポリペプチドに結合するよう調製される。種-特異的試薬も本発明における方法によって調製される。同種および異種相のアッセイが提供される。
【0184】
タンパク質凝集の疾患に関連するアイソフォームのポリペプチドを検出する方法が提供される。かかる方法は、問題のアイソフォームを含むと予想されるサンプルとそのアイソフォームに特異的に結合するハイブリッドポリペプチドとを接触させる工程、およびポリペプチドの結合を検出する工程を含む。検出は当業者に公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、放射標識、色または蛍光検出、質量分析およびその他の検出方法が挙げられる。例えば、ハイブリッドポリペプチドに検出可能な標識をしてもよいし、1または複数の蛍光または色素生産性部分を含めてもよいし、蛍光または色素生産性ペプチドまたはその他のレポーターを含めてもよい。レポーターとしては例えば、酵素、例えばルシフェラーゼ(ウミシイタケ、エクオラおよびその他の深海生物由来、細菌または昆虫由来)またはその他の酵素標識が挙げられる。あるいはかかる標識、例えば蛍光タンパク質または酵素を骨格として、酵素活性または蛍光が保持されるようにその骨格にモチーフを挿入してもよい。また、ハイブリッドポリペプチドは抗体または核酸またはその他の検出可能な部分を捕捉するためのさらなる結合部位を含んでいてもよい。
【0185】
1つの態様において、細胞中の感染性または疾患誘発性形態の標的ポリペプチドを同定する方法を提供する。標的に特異的なハイブリッドポリペプチドは検出可能に標識され(例えば、蛍光標識されるか蛍光タンパク質またはルシフェラーゼに挿入される)、サンプル、例えば血液サンプルと接触される。標識された細胞は例えば、フローサイトメトリーおよびスキャニングサイトメトリー法によって同定される。標識されていない細胞のなかから非常に低濃度の標識された細胞を同定する方法および装置が利用可能である(例えば,Bajaj et al. (2000) Cytometry 39:285-294、公開特許出願第09/123564号、US2002018674として公開、および Q3DM、LLC、San Diegoから販売されている装置の説明を参照)。別の態様においては、異なるエピトープと相互作用するハイブリッドポリペプチド(例えば、残基136-158および89-112を含むハイブリッドポリペプチド)を異なる色素で標識する。その結果得られる標識されたハイブリッドポリペプチド、例えば2つのポリペプチドを被験細胞と同時または逐次に混合する。1つの細胞への両方の色素の結合により、自己確認アッセイが提供される。例えば、136-158および89-112 PrP モチーフ(またはエピトープと相互作用するのに十分なその部分、例えば、少なくともアミノ酸100-106または136-141)を別々の蛍光タンパク質(例えば発光スペクトルの異なる緑色蛍光タンパク質)にグラフトすると、1つの細胞の二重標識が達成される。
【0186】
アッセイは溶液中でも固相でも行うことが出来る。ハイブリッドポリペプチドは固体支持体(例えば、チップまたはマイクロウェルプレート)上に提供し、サンプルと接触させてもよい。別の態様において、それぞれアドレス可能な複数の異なるハイブリッドポリペプチドを用いて複数のポリペプチドの同定および/または検出を可能としてもよく、それによってタンパク質凝集の疾患に関連するポリペプチドの存在が示される。
【0187】
アッセイを利用して生物サンプル中のタンパク質凝集の疾患に関連するポリペプチドの存在を検出することによりかかる疾患を診断することができ、また、体液供給源、例えば、血液および移植用の器官および組織をモニターすることが出来、あるいは食品をモニターしてこれらポリペプチドに汚染されていないかを確認することが出来る。
【0188】
特別の態様において、PrPScまたはPrP 27-30形態のプリオンポリペプチドの検出方法が提供される。感染性アイソフォームのプリオンポリペプチドを含んでいると考えられるサンプルをPrPc形態のプリオンポリペプチドまたはその部分を含むハイブリッドポリペプチド、あるいはプリオンポリペプチドまたはその部分と接触させる;そしてサンプル中のハイブリッドポリペプチドとPrPScとの複合体を検出する。ハイブリッドポリペプチドはPrPc形態のプリオンポリペプチドの少なくとも約 20、25、30、35、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上の連続する全長までのアミノ酸残基を含むかそれ自体であってよい。プリオンは動物プリオン、例えば以下においてみられるプリオンであってよい:ヒトその他の霊長類、ハムスター、ラマ、有袋類、マウス、ラット、シカ、ヒツジ、ヤギ、オオジカ、クドゥ、ウマ、イヌ、ネコ、ラクダ、ブタ およびその他の家畜、野生または飼育動物。
【0189】
サンプルはタンパク質凝集の疾患に関連するタンパク質を含んでいると考えられるいずれの生物サンプルまたはその他のサンプルであってもよい。サンプルには体液、組織および器官が含まれる。体液にはこれらに限定されないが以下が含まれる:血液、尿、汗、唾液、血漿、血清、脳脊髄液、精子サンプルおよび滑液、食品及びその他の動物組織、体液および器官由来の産物、例えば、薬物および生理活性分子、例えば、ホルモン、サイトカインおよび成長因子、抗体および血液フラクション。
【0190】
診断または検出される疾患には以下が含まれる:アミロイド疾患、例えば、変異体、孤発性および医原性を含むクロイツフェルトヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症、アルツハイマー病、II型糖尿病、ハンチントン病、免疫グロブリンアミロイド症、慢性炎症性疾患を伴う反応性アミロイド症、例えば、炎症性関節炎、肉芽腫腸疾患、結核およびハンセン病、変異体トランスサイレチン遺伝子の常染色体優性遺伝を伴う遺伝性全身性アミロイド症、ALS、ピック病、パーキンソン病、前頭側頭骨痴呆、II型糖尿病、多発性骨髄腫、形質細胞悪液質、家族性アミロイド神経障害、甲状腺髄様癌;慢性腎不全、うっ血性心不全、老人性心臓および全身性アミロイド症、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症および家族性アミロイド症。
【0191】
例示的な態様において、アッセイは体液、例えば、血液、または組織サンプル、例えば、脳組織診または筋肉サンプル(所望により細胞を取り出してもよい)を1または複数のハイブリッドポリペプチドを含有する溶液に添加することによって行う。所望により複合体形成していない材料から複合体をハイブリッドポリペプチドを捕捉するなどによって分離する。ここでハイブリッドポリペプチドは、抗体などの選択的捕捉試薬に特異的な第2の結合部位を含んでいてもよい。次いで複合体を同定するとよい。
【0192】
固相アッセイのためには、表面をPrPcまたはハイブリッドポリペプチドで被覆するとよく、次いでサンプルと接触させ、サンプル中のPrPScが PrPcに結合するようにする。検出は複合体の異なる部位に結合する異なるPrPSc-特異的試薬を用いて行ってもよい;あるいは捕捉されたPrPScを変性させてもよく、その後PrPに再フォールディングさせ、検出用の標準的試薬を用いる。
【0193】
2.薬剤スクリーニングアッセイ
ハイブリッドポリペプチドへのPrPScの結合を阻害するかその量を減少させることができる被験化合物は、PrPSc媒介疾患のインビボでの予防または治療のための候補となる。PrPSc媒介疾患には、変異体、孤発性および/または医原性を含むクロイツフェルトヤコブ病 (CJD)、ゲルストマン-ストラウスラー-シェインカー疾患 (GSS)、致死性(fatal)家族性不眠症 (FFI)、クル、スクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)、およびその他のPrPScの形成を伴う疾患が含まれる。かかる方法によりハイブリッドポリペプチドとPrPScとのインビトロ相互作用を阻害または減少させることが出来るとして同定された被験化合物は、PrPSc 疾患の進行防止または治療の能力についてPrPSc疾患のインビボモデルにおいて試験するとよい。
【0194】
ライブラリー、例えば低分子ライブラリーにおける、標的ポリペプチドに対するハイブリッドポリペプチドの結合の阻害が同定される競合的スクリーニングも提供される。例えば、PrPSc-特異的ハイブリッドポリペプチドの非変性 PrPScまたはPrP 27-30への結合を調節、特に減少あるいは競合的に阻害する低分子ライブラリーのメンバーが同定される。このように同定されたライブラリーのメンバーはさらなるスクリーニングのための候補化合物となる。
【0195】
同様に、タンパク質凝集の疾患、例えばアミロイド疾患に関与するその他の標的ポリペプチドに対して特異的なハイブリッドポリペプチドもかかる疾患の候補治療薬を同定するために利用できる。ライブラリーは、ファルマコフォアまたは特定の疾患に特異的なその他の構造に基づいて設計すればよい。
【0196】
3.固定化および支持体またはその基体
アッセイが固体支持体、例えば常磁性ビーズで行われる特定の態様において、サンプルからのポリペプチド、あるいは、一般的には、ハイブリッドポリペプチドは、結合、例えばイオン結合または共有、非共有結合またはその他の化学的相互作用によって、支持体またはマトリックス材料の表面に結合される。固定化は直接行ってもリンカーを介してもよい。固定化はあらゆる好適な支持体上に行うことが出来、これらに限定されないが、シリコンチップ、および本明細書に記載するその他の支持体および当業者に周知の支持体が含まれる。複数のポリペプチドを支持体に結合させてもよく、例えばシリコンチップまたはその他のチップの表面のアレイ (即ち2以上のパターン)としてハイスループット・プロトコールおよび形式を含むアッセイに使用すればよい。
【0197】
本発明において考えられるマトリックス材料または固体支持体は一般的に、リガンド及びその他の分子を固定化させる当業者に公知のあらゆる不溶性材料のいずれでもよく、これらは多くの化学合成および分離に用いられているものである。かかる支持体は、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、生物活性材料の固定化および生物分子、例えば、タンパク質、アミノ酸およびその他の有機分子およびポリマーの化学合成に用いられている。支持体の調製および使用は当業者に周知である; 多くのかかる材料およびその調製が知られている。例えば、天然支持体材料、例えば、アガロースおよびセルロースはそれぞれのソースから単離でき、公知のプロトコールによって処理すればよく、合成材料も公知のプロトコールによって調製できる。
【0198】
支持体は典型的には不溶性材料であって、固体、多孔性、変形可能、あるいは剛性のものであり、あらゆる所望の構造および形状を有していてもよく、これらに限定されないが以下が含まれる: ビーズ、ペレット、ディスク、キャピラリー、中空糸、針、常磁性ビーズ、固体繊維、ランダム形状、薄膜および膜。したがって、これらはマトリックス材料またはその組み合わせから作ることが出来、例えば、表面または充填用粒子の全部または一部を被覆することによって作ることが出来る。
【0199】
典型的には、マトリックスが粒状の場合、粒子は少なくとも 約 10-2000 μmであるが、選択した用途に応じてこれより大きくても小さくてもよい。マトリックスの選択は少なくとも部分的にはその物理および化学特性、例えば、溶解性、官能基、機械的安定性、表面膨潤特性、疎水性または親水性およびその目的に支配される。
【0200】
必要であれば、支持体マトリックス材料を処理して適切な反応性部分を含めてもよい。場合によっては、最初から反応性部分を含む支持体マトリックス材料を購入することも出来る。反応性部分を含む支持体マトリックス材料はそれゆえその上に分子が結合するマトリックス支持体として機能しうる。反応性表面部分、例えばアミノシラン結合、ヒドロキシル結合またはカルボキシシラン結合を含む材料は周知の表面化学合成技術によって作ることが出来、例えば、シラン化(silanization)反応などが挙げられる。例示的な材料は、ガンマ-アミノプロピルシランに共有結合した表面シリコンオキシド部分を有する部分を含むもの、以下のようなその他の有機分子を含むものである; N-[3-(トリエチオキシシリル)プロピル]フテラミック酸;およびビス-(2-ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン。アミノ基反応性官能基を含む容易に入手できる材料の例はこれに限定されないが、パラ-アミノフェニルトリエチオキシシランである。誘導体化ポリスチレンおよびその他のポリマーも周知であり当業者が容易に入手できるものである(例えば、Tentagel(登録商標)樹脂は多数の官能基を有し、Rapp Polymere、Tubingen、Germanyから市販されている;米国特許第4908405号および米国特許第5292814号を参照されたい;Butz et al.、Peptide Res.、7:20-23 (1994);およびKleine et al.、Immunobiol.、190:53-66 (1994)も参照されたい)。
【0201】
これらマトリックス材料には目的の分子の結合のための支持体マトリックスとして作用しうるあらゆる材料が含まれる。かかる材料は当業者に公知であり、支持体マトリックスとして使用されているものが含まれる。かかる材料にはこれらに限定されないが、無機分子、天然ポリマーおよび合成ポリマーが含まれ、これらに限定されないが以下が含まれる:セルロース、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ガラス、シリカゲル、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ビニルおよびアクリルアミドのコポリマー、ジビニルベンゼンが架橋したポリスチレンなど(Merrifield、Biochemistry、3:1385-1390 (1964)を参照されたい)、ポリアクリルアミド、ラテックスゲル、ポリスチレン、デキストラン、ポリアクリルアミド、ゴム、シリコン、プラスティック、ニトロセルロース、セルロースおよび天然スポンジ。本発明において特に注目されるのは、高度に多孔性のガラス(例えば、米国特許第4244721号を参照されたい)およびホウケイ酸、アルコールおよび水を混合して調製されるその他のものである。
【0202】
合成支持体にはこれらに限定されないが以下が含まれる:アクリルアミド、デキストラン-誘導体およびデキストランコ-ポリマー、アガロース-ポリアクリルアミド混合物、様々な官能基を有するその他のポリマーおよびコ-ポリマー、メタクリレート誘導体およびコ-ポリマー、ポリスチレンおよびポリスチレンコポリマー(例えば、Merrifield、Biochemistry、3:1385-1390 (1964); Berg et al.、in Innovation Perspect. Solid Phase Synth. Collect. Pap.、Int. Symp.、1st、Epton、Roger (Ed)、pp. 453-459 (1990); Berg et al.、Pept.、Proc. Eur. Pept. Symp.、20th、Jung、G. et al. (Eds)、pp. 196-198 (1989); Berg et al.、J. Am. Chem. Soc.、111:8024-8026 (1989); Kent et al.、Isr. J. Chem.、17:243-247 (1979); Kent et al.、J. Org. Chem.、43:2845-2852 (1978); Mitchell et al.、Tetrahedron Lett.、42:3795-3798 (1976); 米国特許第4507230号;米国特許第4006117号;および米国特許第5389449号を参照されたい)。かかる材料にはポリマーおよびコ-ポリマーから作られたものが含まれ、例えば、ポリビニルアルコール、アクリレートおよびアクリル酸、例えば、ポリエチレン-コ-アクリル酸、ポリエチレン-コ-メタクリル酸、ポリエチレン-コ-エチルアクリレート、ポリエチレン-コ-メチルアクリレート、ポリプロピレン-コ-アクリル酸、ポリプロピレン-コ-メチル-アクリル酸、ポリプロピレン-コ-エチルアクリレート、ポリプロピレン-コ-メチルアクリレート、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル、ポリプロピレン-コ-酢酸ビニル、および酸無水物基を含むもの、例えば、ポリエチレン-コ-無水マレイン酸およびポリプロピレン-コ-無水マレイン酸が挙げられる。リポソームもアフィニティー精製のための固体支持体として用いられている(Powell et al. Biotechnol. Bioeng.、33:173 (1989))。
【0203】
多くの方法がタンパク質およびその他の生物分子の固体または液体支持体への固定化のために開発されている(例えば、Mosbach、Methods in Enzymology、44 (1976); Weetall、Immobilized Enzymes、Antigens、Antibodies、and Peptides、(1975); Kennedy et al.、Solod Phase Biochemistry、Analytical and Sunthetic Aspects、Scouten、ed.、pp. 253-391 (1983)を参照;一般に、Affinity Techniques. Enzyme Purification: Part B. Methods in Enzymology、Vol. 34、ed. W. B. Jakoby、M. Wilchek、Acad. Press、N.Y. (1974); およびImmobilized Biochemicals and Affnity Chromatography、Advances in Experimental Medicine and Biology、vol. 42、ed. R. Dunlap、Plenum Press、N.Y. (1974)を参照されたい)。
【0204】
もっともよく用いられている方法は、直接またはリンカーを介しての支持体への吸収および吸着または共有結合であり、例えば、多数のジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合、および当業者に公知の遊離の反応性基、例えばアミンおよびチオール基間の共有結合が挙げられる(例えば、PIERCE CATALOG、ImmunoTechnology Catalog & Handbook、1992-1993を参照されたい。これは、かかる試薬の調製と使用について記載しており、かかる試薬の販売元を提供する; Wong、Chemistry of Protein Conjugation and Cross Linking、CRC Press (1993); DeWitt et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、90:6909 (1993); Zuckermann et al.、J. Am. Chem. Soc.、114:10646 (1992); Kurth et al.、J. Am. Chem. Soc.、116:2661 (1994); Ellman et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、91:4708 (1994); Sucholeiki,tetrahedron Lttrs.、35:7307 (1994); Su-Sun Wang、J. Org. Chem.、41:3258 (1976); Padwa et al.、J. Org. Chem.、41:3550 (1971);およびVedejs et al.、J. Org. Chem.、49:575 (1984)も参照されたい。これらは光感受性リンカーについて記載する)。
【0205】
固定化を行うために、タンパク質またはその他の生物分子を含む組成物は支持体材料、例えば、アルミナ、カーボン、イオン交換樹脂、セルロース、ガラスまたはセラミックと接触される。フルオロカーボンポリマーが生物分子が吸着により結合する支持体として用いられている(米国特許第3843443号; 国際特許出願WO/8603840号を参照されたい)。
【0206】
4.標準的プリオン調製物
アッセイを試験するために標準的プリオン調製物を作り、アッセイの信頼性を高めることができる。標準的プリオン調製物の製造の詳細は公知である(例えば、米国特許第5639581号、米国特許第5908969号および米国特許第5792901号を参照)。調製物は例えば、被験動物のプリオンを含む脳材料を有する宿主動物など、あらゆる動物から得られる。例えば、ヒトプリオンタンパク質遺伝子を含むトランスジェニックマウスによりヒトプリオンを作ることが出来、かかるマウスの脳を用いて標準的ヒトプリオン調製物を作ることが出来る。さらに調製物は「標準化」されたものであり、一般的に実質的に同一の動物から得られる(例えば、100; 1,000、またはそれ以上の動物)。例えば、非常に高コピー数のヒトPrP遺伝子(すべての多型および突然変異)を含む100匹のマウスは自然に疾患を発症し、それぞれからの脳組織を組み合わせて標準的プリオン調製物が作られる。
【0207】
標準的プリオン調製物はあらゆる改変された宿主哺乳類を用いて作ることが出来る。例えば、標準的プリオン調製物は一般的にヒト、ウシ、ヒツジまたはウマなど遺伝的に異なる種にのみ感染するプリオンに感染しやすいように遺伝的に改変された、マウス、ラット、ハムスターまたはモルモットを用いて作ることが出来る。かかる改変宿主哺乳類はCNS 機能不全の臨床徴候をプリオン接種の350日以内に発症する。例示的な宿主哺乳類はマウスである。
【0208】
適切なタイプの宿主、例えばマウスを選択すると、標準的プリオン製剤を作るための適切なタイプの遺伝子操作を選択する。例えば、マウスをキメラ遺伝子の挿入によって遺伝的に改変できる。この群の中でマウスは高コピー数のキメラ遺伝子を含めることおよび/または複数のプロモーターを含めることによって改変してキメラ遺伝子の発現レベルを上昇させることが出来る。あるいは、切断された内因性のPrP遺伝子を有するハイブリッドマウスをそのゲノムにヒト PrP 遺伝子が挿入されたマウスと交配する。かかるハイブリッドマウスには多くの亜分類が存在する。例えば、ヒト PrP 遺伝子を高コピー数にて挿入してもよく、および/または複数のプロモーターを用いて発現を促進してもよい。あるいは、複数の異なるPrP 遺伝子をそのゲノムに挿入して様々な種類のプリオンに感染しやすいマウスを作ることが出来る(即ち、一般的に2以上のタイプの被験動物に感染する)。例えば、ヒト配列の一部を含むキメラ遺伝子、別のウシ配列の一部を含むキメラ遺伝子およびヒツジ配列の一部を含む別のキメラ遺伝子を含むマウスを作ることが出来る。かかる3種類のすべてのキメラ遺伝子をマウスゲノムに挿入すると、その結果得られるマウスは、一般的にヒト、ウシおよびヒツジのみに感染するプリオンに感染しやすいものとなる。
【0209】
適切な哺乳類、例えばマウス、および好適な遺伝子修飾の態様、例えばキメラ PrP 遺伝子の挿入を選択すると、プリオンに関しては実質的に同一の遺伝的材料を有する多数の哺乳類が得られる。こうして作られたマウスにはそれぞれゲノムに実質的に同コピー数の同一のキメラ遺伝子が存在する。マウスはプリオンに関する遺伝子材料については十分に遺伝的に同一であるべきであり、 95%以上のマウスが接種の350日以内にCNS 機能不全の臨床徴候を示し、すべてのマウスがほぼ同時に、例えば、30日前後にCNS 機能不全を発症するようにする。
【0210】
多数の、例えば、50、100、500またはそれ以上のマウス群を作ると、マウスに一般的に遺伝的に異なる哺乳類のみに感染するプリオン(例えばヒト、ヒツジ、ウシ、ウマからのプリオン)を接種する。ことなる群の哺乳類に対する量は変動しうる。哺乳類にプリオンを接種した後、哺乳類をプリオン感染症状、例えばCNS機能不全の臨床徴候が発症するまで観察する。プリオン感染症状がみられた後、哺乳類の脳または脳組織の少なくとも一部を抽出する。抽出した脳組織をホモジナイズして標準的プリオン調製物を得る。
【0211】
遺伝的に異なる動物からプリオンをトランスジェニックマウス群に接種する代わりに、自発的にプリオン関連疾患を発症するマウスを作ることも可能である。これは、例えば、非常に高コピー数のヒト PrP 遺伝子をマウスゲノムに含めることによる。コピー数を、例えば、100以上に高めると、マウスは自発的にCNS 機能不全の臨床徴候を発症し、脳組織内に、ヒトに感染しうるプリオンが生じる。かかる動物の脳または脳組織の一部を抽出し、抽出した脳組織をホモジナイズして標準的プリオン調製物を得る。
【0212】
標準的プリオン調製物は直接用いてもよいし、希釈して様々な陽性対照が得られるように力価を測定してから用いてもよい。標準的プリオン調製物を用いることにより、非常に希薄なプリオン含有組成物を作ることが出来る。例えば、100万分の1またはそれ未満、あるいは10億分の1またはそれ未満を含む組成物を作ることが出来る。かかる組成物を用いて、本発明において提供するハイブリッドタンパク質、アッセイおよび方法の感度を試験することが出来る。プリオン調製物は一定量のプリオンを含み、同質遺伝子のバックグラウンドから抽出されているために好ましい。したがって、調製物中の汚染は一定であり制御可能である。標準的プリオン調製物は様々なサンプル中のプリオンの存在を判定するためのバイオアッセイを行うのに有用である。サンプルとしては医薬、全血、血液フラクション、食品、化粧品、臓器および特に(生きているか死んでいるかを問わず)動物由来の材料、例えば生きているか死んでいるヒトからの器官、血液およびその産物が挙げられる。したがって、標準的プリオン調製物は、調製物が特定の工程について測定した力価が増減するような精製プロトコールの確認に有用である。
【0213】
F.組み合わせおよびキット
ハイブリッド分子、例えば、ハイブリッドポリペプチド、およびアッセイを行うためのその他の試薬および材料は組み合わせとして提供でき、所望により標識、アッセイを行うための説明書を含むキットとして提供してもよい。例えばハイブリッドポリペプチドは溶液中に液体分散物として提供してもよいし、実質的に乾燥粉末、例えば凍結乾燥形態で提供してもよい。例えば上述のような支持体プレートなどの固体支持体および1以上のバッファーも別々の要素としてキットに含めてもよい。
【0214】
以下の実施例は例示の目的であり、本発明の範囲を制限するものではない。
G.実施例
【実施例1】
【0215】
材料および方法
免疫沈降
正常または79A スクレイピープリオン感染マウス (脳内接種の130-150日後に屠殺)からの全脳をリン酸緩衝食塩水 (PBS)中で10% (w/v)にてホモジナイズし、等量の200 mM NaCl、50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、1% NP40 (またはTriton X-100)および1% デオキシコール酸で希釈し、再びホモジナイズし、超音波処理にかけた。正常またはプリオン感染脳のホモジネートを500 g で15分間遠心し、上清をアリコットとし-20℃で保存した。
【0216】
プリオン感染ホモジネートの一部をプロテイナーゼ K (40 μg/ml)で1時間37℃で消化した。PMSFをこれらサンプルに終濃度1 mMとなるように添加し、-20℃で保存した。各免疫沈降について、終濃度01.μg/ml〜10μg/mlのハイブリッドポリペプチドを総タンパク質含量1 mg未満の一定容積の脳ホモジネートとともに2時間4℃でインキュベートした。ポリクローナルヤギ抗-ヒトIgG F(ab’)2 (ヒト Fab検出用)またはポリクローナルヤギ抗-マウスIgG F(ab’)2(抗体 6H4検出用)に結合させたトシル-活性化常磁性ビーズ (Dynal)を3回洗浄バッファー (2% Nonidet P40 および 2% Tween 20またはTritonX-100を含有する0.05 M Tris、0.2 M NaCl)で洗浄し、一晩4℃でハイブリッドポリペプチド-ホモジネート混合物とともにインキュベートした。ビーズを洗浄バッファーで3回、TBSで1回洗浄し、遠心分離によって沈降させた。
【0217】
ペレット化したビーズを20μlのローディングバッファー (150 mM Tris-HCl、pH 6.8、6% ドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、0.3% ブロモフェノールブルー、30% グリセロール)に再懸濁し、100℃で5分加熱した。サンプルを12% SDS-PAGEゲルで泳動し、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。メンブレンを0.1 % Tween 20を含有するTBS (TBST)中の5% (w/v) 脱脂粉乳にてRTで10分間ブロッキングし、ブロットされたPrPを正常ウシPrP を認識する6H4 抗体またはD13 抗体で検出した(Korth et al. (1997) Nature 390:74-77)。ブロットされたPrP タンパク質を、ブロッキングバッファー中で1:5000に希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ウサギ抗-マウス IgG (Dako)とともにRTで2時間インキュベーションすることにより検出した。メンブレンをTBSTで5回洗浄し、増強化学発光試薬 (Amersham)を用いてフィルムに現像した。プラスミノーゲン結合研究については、80μgのビオチン化ヒトプラスミノーゲン(Enzyme Research Laboratories)を1 mgの脳ホモジネートとともにインキュベートし、ストレプトアビジンでコーティングしたアガロースビーズ上に捕捉した。ビーズを簡単に遠心し、洗浄し、ローディングバッファーに再懸濁し、加熱し、再びペレットとし、ビーズ溶出液を回収し、沈降したPrPの存在をウェスタンブロットにより調べた。
【0218】
SMB 細胞
SMB 細胞を162 cm2 組織培養フラスコにて集密するまで培養し、PBSで2回洗浄し、フラスコあたり1 mlの細胞溶解バッファー (10 mM Tris-HCl、pH 8.0、100 mM NaCl、10 mM EDTA、0.5% w/v Nonidet P40、0.5% w/v デオキシコール酸ナトリウム)を用いて溶解した。細胞溶解液から1000 g、5分、4℃での遠心によって破片を除いた。免疫沈降実験を、3 mgの総溶解液タンパク質および10μg 抗体を終容量 1 mlにて用いて上述のようにして行った。
【実施例2】
【0219】
モチーフ-グラフトされたハイブリッドポリペプチドの調製
2段階 オーバーラップ伸長 PCR (McLane et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:5214-5218; 図1参照)を用いてアミノ酸残基 119-136、121-144および121-158 (または136-158および 89-112、実施例4参照)に対応するマウス PrP 配列を、独立にFab b12またはIgG b12 (実施例4参照)のHCDR3 ドメインを置換するようにグラフトした (Burton et al. (1994) Science 266:1024)。
【0220】
オリゴヌクレオチドプライマーを2倍のポリアクリルアミドゲル電気泳動精製(Operon Technologies)にかけた。以下の配列を含むものであった:
PelSeq (5’-ACCTATTGCCTACGGCAGCCG-3’; 配列番号14);
CG1d (5’-GCATGTACTAGTTTTGTCACA-AGATTTGG-3’; 配列番号15);
MoPrP121-144 5’ (5’-GGTGGCTACATGCTGGGGAGCGCCATGAGCAGGCCC-ATGATCCATTTTGGCAACGACGGCGGTTATATGGACGTCT-GGGGCAAAGGGAC-3’; 配列番号16);
MoPrP121-144 3’(5’-CCTGCTCATGGCGCTCCCCAGCATGTAGCCACCAA-GGCCCCCCACTACCCCGCCCACTCTCGCACAATAATAAACAGCCGTGTCTGC-3’; 配列番号17);
MoPrP119-136 5’(5’-GTGGGGGGCCTTGGTGGCTACATGCTGGGGAGCGCCATGAGCAGG-GGCGGTTATATGGACGTCTGGGGCAAAGGGAC-3’; 配列番号18);
MoPrP119-136 3’ (5’-CATGGCGCTCCCCAGCATGTAGCCACC-AAGGCCCCCCACTACTGCCCCGCCCACTCTCGCACAATAATAAACAGC-3’; 配列番号19
MoPrP121-158 5’ (5’-GACCGCTACTACCGTGAAAAC-ATGTACCGCTACCCTGGCGGTTATATG GACGTCTGGGGCAAAGGG-3’ 配列番号20);
MoPrP121-158 3’(5’-GCGGTACATGTTTTCACGGTAGTAGCGGTCCTCCCAGTCGTTGCCAAAATGGATCATGGGCCTG-3’; 配列番号21)。
【0221】
すべてのPCR反応は以下の条件にてPfu DNA ポリメラーゼ (Stratagene)を用いて行った: 工程 1、 (94℃、30秒; 52℃、1分; 72℃、1分30秒; 35 サイクル); 工程 2、(94℃、30秒; 50℃、1分; 72℃、2分; 10 サイクル 、隣接プライマー PelSeq および CG1d の不在下、次いで隣接 プライマーの添加後さらに30サイクル)。その結果得られたFab b12 PrP 重鎖フラグメントを親 b12 Fab 軽鎖 DNAを含むpComb3H (Burton et al. (1994) Science 266:1024)のXhoIおよび SpeI部位の間に挿入した。CHO 細胞での発現およびIgG ハイブリッドポリペプチドの調製の説明については実施例4を参照されたい。
【実施例3】
【0222】
疾患形態のPrPに対する特異的結合の試験
PrPSc および PrP27-30 (これはPrPScの感染性プロテアーゼ耐性コア)に特異的に結合するがPrPc には結合しないか実質的にPrPcへのアフィニティーの方が低い試薬を同定するために試験を計画した。
【0223】
PrP-Fab 分子の、PrPc、PrPScおよびPrP27-30に対する反応性を調べるために、正常マウスおよび79A 株のスクレイピープリオンで感染したマウスから調製した脳ホモジネートを用いて免疫沈降実験を行った。免疫沈降は実施例1に記載のように行った。Fab b12 およびPrP-Fab 119-136、121-144および121-158を、正常マウスの全脳から調製したホモジネートの遠心から得られた上清とともにインキュベートした。抗体を常磁性ビーズに結合したポリクローナルヤギ 抗-ヒト IgG F(ab’)2を用いて沈降した。沈降物をウェスタンブロットによってPrPの存在について分析した。二次抗体と沈降PrP-Fabとの交差反応によりおよそ50 kDaのバンドが生じた。PrPc が正常脳ホモジネートのサンプルにおいて検出され、対照抗体 6H4によって特異的に沈降された。Fab b12、またはPrP-Fabによる免疫沈降ではPrPc は検出されなかった。
【0224】
pK 消化された79A プリオン感染マウス脳の遠心したホモジネートからPrP27-30 が免疫沈降された。PrP 27-30 は粗ホモジネート中に存在していた。同等のPrP バンドがPrP-Fab 119-136、121-144および 121-158による免疫沈降後に存在していた。PrPはFab b12とインキュベートしたホモジネートには表れず、PrP 27-30 特異性はグラフトされた PrP 配列に依存することが示された。未消化プリオン感染マウス脳の遠心したホモジネートから免疫沈降された全長 PrPScが検出された。PrPSc はFab 121-158によって効率よく沈降されたが、Fab b12によっては沈降されなかった。プラスミノーゲンによって沈降したPrPScも観察された。
【0225】
陽性対照として、6H4 抗体を用いて正常マウス脳ホモジネートからPrPcを沈降させ、プラスミノーゲン(Fischer (2000) Nature 408:479)を用いてプリオン感染脳サンプルからPrPScを沈降させた。正常マウス脳においてPrP Fabと PrPc との反応はいずれも存在しないか非常に弱かった。これらFabはそれぞれpK-消化したプリオン感染脳ホモジネートから3つのPrP バンドを免疫沈降させた。これらバンドはサイズにおいてPrP27-30のジ-、モノ-および非グリコシル化形態に対応する。PrP27-30はPrPScのプロテイナーゼ耐性コアであり、タンパク質のN-末端部分の残基 23-90が酵素により分解したものである。PrP27-30 を最も有効に沈降させたFab 121-158 (図1B)を次いで、全長 PrPScとの反応性について評価した。このFabを用いると、プリオン感染脳組織の未消化ホモジネートから、全長 PrPScに対応する3つの分子量 33-35 Kのバンドが沈降した。同一実験条件下で、親 b12 FabはPrPc、PrPSc または PrP27-30のいずれとも反応しなかった。さらに、PrP 配列を含むFabは、親 b12 抗体の標的抗原であるgp120を認識せず、マウス脳ホモジネートのウェスタンブロットのプローブに用いた場合その他のいずれのタンパク質とも結合せず、SDSの存在下での加熱によるPrPc-様コンフォメーションへの変性の後、PrPSc とは完全に非反応性であった。残基 121-158から構成されるグラフトされたPrP 配列はPrPScの特異的抗体認識を付与し、この疾患関連エピトープはPrP27-30において保持されている。
【0226】
スクレイピープリオン感染SMB 細胞の溶解液からFab 121-158を用いてPrPを免疫沈降させる免疫沈降実験を行った。Fab b12およびFab 121-158 を、チャンドラーマウスプリオン株を伝搬するSMB 細胞の溶解液とともにインキュベートした。pK処理を行わないと、Fab b12も Fab 121-158もいずれもPrPc またはPrPScを認識しなかった。pK 消化によってPrPc を除くと、Fab 121-158 は30 kDa未満のサイズの2つの明らかなバンドとより拡散した30 kDa程度のバンドを沈降させた。このバンドパターンはSMB 細胞由来のpK-処理した PrPSc (PrP27-30)について以前に観察されたものである。二次抗体と沈降したPrP-Fabとの交差反応によりおよそ50 kDaのサイズのバンドが生じる。
【0227】
また未処理SMB 溶解液においてはFab 121-158は PrPc に結合しなかったが、pK 消化の後はこれらサンプルにおいてPrP27-30を認識することが出来た。プリオン感染脳ホモジネートからFab 121-158が効率よくPrPSc を沈降させた上記の実験と異なり、この抗体を用いてSMB 細胞から全長 PrPSc は免疫沈降されなかった。SMB 細胞におけるPrPc:PrPSc 比はおよそ4:1であり、疾患が進行したプリオン感染マウスの脳においては1よりかなり小さいことから、これらの観察は、SMB 溶解液において、PrPSc が抗体の添加の前にPrPcと複合体形成しているとすればうまく説明できる。かかる状況から、PrPcに結合されるPrPSc エピトープを認識するよう設計されたFab 121-158の結合は排除される。逆に、疾患脳組織においてはPrPSc 分子の一部が複合体形成せずに残っていると考えられる。というのはこれら調製物において観察されるPrPcに対し PrPSc が化学量論的に過剰であるからである。
【0228】
この実施例において試験した3つのPrP Fab調製物のなかで、Fab121-158が疾患関連d PrP配座異性体について最も高いアフィニティーを有する。このハイブリッドポリペプチド はPrPc の最初のαヘリックス(残基 145-155)を含む唯一の配列であった。しかしFab119-136 そして程度は低いがFab121-144も、疾患関連形態の PrPに結合し、これはヘリックス AがPrPSc またはPrP27-30の特異的認識に必須ではないことを示す。これらのデータはPrP 配列 の残基 140から175を欠き、ネイティブなマウスプリオンに感染しやすいトランスジェニックマウスを用いた研究と一致するが、ただし潜伏期間が有意に長くなっている。インビボでは内因性のPrPc「基質」についてのPrPScテンプレートの固有のアフィニティーは、プリオン複製の有効性を決定する鍵となるパラメーターであり、プリオン疾患の経過を表す。
【0229】
重鎖 CDR3に以下のPrP配列をグラフトされた抗体 b12 分子も調製し(実施例において121-158コンストラクトについて記載したのと同一の方法) (残基番号はシリアンハムスターの番号に対応する)、PrPSc を特異的に認識することが示された:
マウス PrP: 87-112、87-118、87-130、126-158、131-158、136-158、141-158
ヒト PrP: 121-158 (129 M)、121-158 (129 V)
ウシ PrP 121-158 、配列番号13のアミノ酸132-169参照
【実施例4】
【0230】
IgGハイブリッドポリペプチドの調製および試験
モチーフ-グラフトされた抗体の調製
2段階 オーバーラップ伸長 PCR 19を用いて、アミノ酸残基 89-112、136-158および141-158に対応するマウス PrP 配列を別々に抗体b12にHCDR3ドメインを置換するようにグラフトした。オリゴヌクレオチドプライマーを2倍のポリアクリルアミドゲル電気泳動精製(Operon Technologies)にかけ、それらは以下の配列を含むものであった:
PelSeq (5'-ACCTATTGCCTACGGC-AGCCG-3'; 配列番号14);
CG1d (5'-GCATGTACTAGTTTTGTCACAAGATTTGG-3'; 配列番号15);
MoPrP 89-112 (5'-CATAATCAGTGGAACAAGCCCAGCAAACCAAAAACCAACCTCAAGCATGTGGGCGGTTATATGGACGTCTGGGGCAAAGG -3' 配列番号22);
MoPrP 89-112 3' (5'-GGGCTTGTTCCACTGATTATGGGTACCCCCTCCTTGGCCCCATCCACCCAC TCTCGCACAATAATAAACAGC-3'、配列番号23);
MoPrP136-158 5' (5'-GTTTATTATTGTGCGAGAGTGGGCGGGAGGCCCATGATCCATTTTGGCAACGAC-3'、配列番号24 );
MoPrP136-158 3' (5'-GCGGTACATGTTTTCACGGTAGTAGCGGTCCTCCCAGTCGTTGCCAAAATGGATCATGGGCCTG-3'、配列番号25);
MoPrP141-158 5' (5'- GTTTATTATTGTGCGAGAGTGGGCGGGTTTGGCAACGACTGGGAGGACCGCTAC-3'、配列番号26)。
【0231】
スクランブルされたMoPrP 136-158 グラフトを以下のプライマーを用いて b12 抗体に導入した:
MoPrP 136-158 RAN 5' (5'- ATCTACCAT ATGTTTAACGGCGAAAACCGTGACTACTGGTACGAGCGCGACGGCGGTTATATGGACGTCTGGGGC-3'、配列番号27) および、
MoPrP 136-158 RAN 3' (5'- TTCGCCGTTAAACATATGGTAGATGCGCATGTAGGGAGGCCT CCCGCCCACTCTCGCACAATAATAAACAGT-3'、配列番号28)。
【0232】
すべてのPCR反応は以下の条件を用いて Pfu DNA ポリメラーゼ (Stratagene)によって行った:工程 1、 (94℃、30秒; 52℃、1分; 72℃、1分30秒; 35 サイクル + 10分、72℃のインキュベーション); 工程 2、(94℃、30秒; 50℃、1分; 72℃、2分; 10 サイクル 、隣接プライマー PelSeq および CG1d の不在下、次いでさらに隣接プライマーの添加後、30サイクル+ 10分、72℃のインキュベーション)。その結果得られたb12 PrP 重鎖フラグメントをファージミド Fab ディスプレーベクター pComb3H (available from New England Biolabsから入手;Barbas、III et al. (1995) Methods: Comp. Meth Enzymol 8:94-103も参照) の XhoI および SpeI 部位の間に導入し、CHO 細胞中でのヒト IgG1 としての発現のために親b12軽鎖遺伝子を含むpDR12 ベクターにサブクローニングした (Maruyama et al. (1999) J. Virol. 73:6024-6030)。
【0233】
免疫沈降
正常または RMLまたは79A スクレイピープリオン感染マウス (脳内接種130-150日後に屠殺)からの全脳をTris緩衝食塩水(TBS; 0.05M Tris、0.2M NaCl、pH 7.4、1% NP-40および1% DOC含有)中で10% (w/v)にてホモジナイズし、等容量のTBSに希釈し、再びホモジナイズし、超音波処理にかけた。正常またはプリオン感染脳ホモジネートを500 g 、15分、4℃で遠心した。遠心したプリオン感染ホモジネートの一部をプロテイナーゼ K (50μg/ml) で1時間 37℃で消化した。PMSF をすべてのサンプルに終濃度2 mMとなるよう添加した。それぞれの免疫沈降について、終濃度 0.3μg/ml〜10μg/mlの抗体をアッセイバッファー (TBS、 3% NP-40 および 3% Tween 20含有)で終容量500μl に調整した反応混合物中のおよそ1 mgの総タンパク質を含む脳ホモジネートのアリコットと共に2時間室温でインキュベートした。ポリクローナルヤギ抗ヒト IgG F(ab')2 (ヒト PrP-グラフトされたハイブリッドポリペプチド検出用)またはポリクローナルヤギ抗マウス IgG F(ab')2 (Fab D13 およびIgG 6H4 検出用)のいずれかに結合したトシル活性化常磁性ビーズ (Dynal) をハイブリッドポリペプチドとホモジネートの混合物に添加し、一晩4℃でインキュベートした。ビーズを洗浄バッファー (TBS 、2% NP-40および2% Tween 20含有)で4回、TBSで1回洗浄し、磁石で分離した。ペレット化したビーズを20μlのローディングバッファー (150 mM Tris-HCl、pH 6.8、6% ドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、0.3% ブロモフェノールブルー、30% グリセロール)に再懸濁し、100℃で5分加熱した。サンプルを12% SDS-PAGEゲルで泳動し、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーした。メンブレンを、0.1 % Tween 20 を含有するTBS (TBST)中の5% (w/v) 脱脂粉乳で1時間室温でブロッキングし、ブロットされたPrPをFab D13 またはIgG 6H4 抗体1μg/mlにて検出した。TBST 中で5回洗浄後、ブロットされたPrP タンパク質を、ブロッキングバッファーに1:10,000に希釈されたセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG (Pierce)との30分室温でのインキュベーションにより検出した。メンブレンをTBSTで5回洗浄し、増強化学発光試薬 (Amersham)を用いてフィルムに現像した。
【0234】
プラスミノーゲン結合研究については、100μg/mlのビオチン化ヒトプラスミノーゲン(Enzyme Research Laboratories)を1 mgの脳ホモジネートとインキュベートし、ストレプトアビジンでコーティングしたアガロースビーズで捕捉した。ビーズを簡単に遠心し、洗浄し、ローディングバッファーに再懸濁し、加熱し、再びペレットとし、ビーズ溶出液を上記のウェスタンブロッティングによってPrPの存在について調べた。Triton X-100の存在下での免疫沈降を上記と全く同様に行ったが、ただし、脳ホモジネーションおよび反応バッファーは NP-40/DOC デタージェントではなく1% Triton X-100を含むものであった。
【0235】
改変は当業者に明らかであり、添付の請求の範囲によってのみ本発明は限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関連するポリペプチドからのポリペプチドモチーフであって、ハイブリッドポリペプチド中にあって、該ポリペプチドの凝集形態または該ポリペプチドの疾患関連配座異性体に結合するのに十分な数の連続するアミノ酸残基を含むポリペプチドモチーフ;および、
該モチーフが由来するポリペプチド以外のポリペプチドからのさらなるアミノ酸を含む骨格
を含むハイブリッドポリペプチドであって、
該ポリペプチドモチーフが該骨格からのものでなく、
該ポリペプチドモチーフが該骨格に挿入されており、あるいは該足場に結合されており、
タンパク質凝集またはコンフォーメーションの疾患が、少なくとも2つの形態を有するタンパク質に関連するものであり、該少なくとも2つの形態のうちの1つがタンパク質凝集の疾患に関連する形態であり、
結果として得られるハイブリッドポリペプチドが、該ポリペプチドモチーフのソースである凝集形態のタンパク質に対して、ポリペプチドの良性形態と比較してより高いアフィニティーで結合する、ハイブリッドポリペプチド。
【請求項2】
多量体である請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
さらなるアミノ酸が、モチーフ部分のN−末端に少なくとも約5アミノ酸およびC−末端に少なくとも約5アミノ酸含む、請求項1のポリペプチド。
【請求項4】
さらなるアミノ酸が、モチーフ部分のN−末端に少なくとも約15アミノ酸およびC−末端に少なくとも約15アミノ酸含む、請求項1のポリペプチド。
【請求項5】
二量体である、請求項1のポリペプチド。
【請求項6】
三量体である、請求項1のポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドモチーフのソースである疾患関連形態のタンパク質または感染性配座異性体のタンパク質に、単量体または多量体単位として特異的に結合する請求項1のハイブリッドポリペプチド。
【請求項8】
ポリペプチドモチーフが骨格に挿入されている請求項1のハイブリッドポリペプチド。
【請求項9】
良性のアイソフォームと比較して少なくとも10倍高いアフィニティーにてタンパク質の疾患関連アイソフォームに結合する、請求項1−8のいずれかのハイブリッドポリペプチド。
【請求項10】
良性のアイソフォームと比較して少なくとも100倍高いアフィニティーにてタンパク質の疾患関連アイソフォームに結合する、請求項1−8のいずれかのハイブリッドポリペプチド。
【請求項11】
疾患がアミロイド疾患からなる群から選択される、請求項1−10のいずれかのポリペプチド。
【請求項12】
疾患が、クロイツフェルトヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症、アルツハイマー病、II型糖尿病、ハンチントン病、免疫グロブリンアミロイド症、慢性炎症性疾患を伴う反応性アミロイド症、変異体トランスサイレチン遺伝子の常染色体優性遺伝を伴う遺伝性全身性アミロイド症、ALS、ピック病、パーキンソン病、前頭側頭骨痴呆、II型糖尿病、多発性骨髄腫、形質細胞悪液質、家族性アミロイド神経障害、甲状腺髄様癌;慢性腎不全、うっ血性心不全、老人性心臓および全身性アミロイド症、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症および家族性アミロイド症からなる群から選択される請求項1−10のいずれかのポリペプチド。
【請求項13】
骨格がIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE免疫グロブリンからの定常領域を含む請求項1−12のいずれかのポリペプチド。
【請求項14】
骨格が、Fab、およびF(ab)または一本鎖Fvである請求項1−12のいずれかのポリペプチド。
【請求項15】
骨格が免疫グロブリンである請求項1−12のいずれかのポリペプチド。
【請求項16】
ポリペプチドモチーフが、APP、Aβ、α1−抗キモトリプシン、タウ(tau)、非−Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2、apoE、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および神経フィラメント、ピック体、α−シヌクレイン、原繊維におけるタウ(tau)、アミリン、IgGL−鎖、トランスサイレチン、プロカルシトニン、β−ミクログロブリン、心房性ナトリウム利尿因子、血清アミロイドA、ApoAI、ゲルソリン、ハンチントンタンパク質からなる群から選択されるポリペプチドの全部または一部を含む、請求項1−15のいずれかのいずれかのポリペプチド。
【請求項17】
疾患関連タンパク質がプリオンタンパク質である請求項1−16のいずれかのいずれかのポリペプチド。
【請求項18】
タンパク質が、ヒト、ハムスター、マウス、ラット、シカ、ヒツジ、ヤギ、オオジカ、クドゥ、ウマ、イヌ、ネコ、ラクダおよびブタからなる群から選択される動物からのプリオンである、請求項17のポリペプチド。
【請求項19】
疾患が遺伝的疾患であり、タンパク質がプリオンをコードするアレルの突然変異体形態によってコードされるプリオンである、請求項18のポリペプチド。
【請求項20】
骨格がポリペプチドモチーフを提示するのに十分な、抗体、酵素、色素生産性タンパク質、蛍光タンパク質およびそれらのフラグメントからなる群から選択されるタンパク質の全部または十分な部分であって、それによってモチーフの優先的または特異的結合が保持される請求項1−12のいずれかのポリペプチド。
【請求項21】
骨格が酵素、抗体または蛍光または色素生産性ポリペプチドの全部または一部を含む請求項20のポリペプチド。
【請求項22】
骨格が抗体の全部または一部を含む請求項20のポリペプチド。
【請求項23】
PrP形態のプリオンからの少なくとも1つのαヘリックスを含む残基を含む請求項17のポリペプチド。
【請求項24】
感染性形態のプリオンタンパク質(PrP)に特異的に結合する、単離された実質的に純粋な請求項1のポリペプチド。
【請求項25】
ポリペプチドが少なくとも10l/molのアフィニティーにて結合する請求項24のポリペプチド。
【請求項26】
ポリペプチドモチーフが、そのネイティブな非感染性コンフォメーションに存在する、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100残基から全長のプリオンポリペプチドを含む請求項1−8のポリペプチド。
【請求項27】
配列番号5に示すアミノ酸配列または他の種のプリオンポリペプチドからの対応する残基を有するシリアンハムスタープリオンポリペプチドの残基87−169に対応するPrPの部分からの残基を含む請求項24のポリペプチド。
【請求項28】
配列番号5に示すアミノ酸配列または他の種のプリオンポリペプチドからの対応する残基を有するシリアンハムスタープリオンポリペプチドの少なくとも残基121−131、121−141、121−136、121−144、121−158、87−112、87−118、87−130、126−158、131−158、136−158または141−158を含む請求項24のポリペプチド。
【請求項29】
ポリペプチドのプリオン部分が、配列番号5に示すアミノ酸配列または他の種のプリオンポリペプチドからの対応する残基を有するシリアンハムスタープリオンポリペプチドの残基121−131、121−141、121−136、121−144、121−158、87−112、87−118、87−130、126−158、131−158、136−158または141−158のみを含む請求項24のポリペプチド。
【請求項30】
配列番号5に示すアミノ酸配列または他の種のプリオンポリペプチドからの対応する残基を有するプリオンポリペプチドの少なくとも残基136−158、89−105、89−112または95−112を含む請求項24のポリペプチド。
【請求項31】
ポリペプチドのプリオン部分が、配列番号5に示すアミノ酸配列または他の種のプリオンポリペプチドからの対応する残基を有するシリアンハムスタープリオンポリペプチドの残基136−158、89−105、89−112または95−112のみを含む請求項24のポリペプチド。
【請求項32】
PrP形態のプリオンからの少なくとも1つのαヘリックスを含む残基を含む請求項24のポリペプチド。
【請求項33】
抗体b12またはそのフラグメントを含み、プリオンの残基121−158またはその結合部分が配列番号4の残基119−131の代わりに挿入されている請求項1、請求項7または請求項8のポリペプチド。
【請求項34】
抗体b12またはそのフラグメントを含み、プリオンの残基87−112またはその結合部分が配列番号4の残基119−131の代わりに挿入されている請求項1、請求項7または請求項8のポリペプチド。
【請求項35】
抗体b12の重鎖および軽鎖を含み、重鎖が配列番号4のアミノ酸配列を含み、軽鎖が配列番号2のアミノ酸配列を含む請求項33のポリペプチド。
【請求項36】
プリオンポリペプチドの残基119−158の領域からの少なくとも5、10、15、20、25、30、35の連続する残基を含む請求項1のポリペプチドであって:
該領域からの残基がポリペプチドにおけるプリオン由来の残基のみであり、
残基がプリオン配列とシリアンハムスタープリオン配列とのアラインメントにより、配列番号5に示すシリアンハムスターの残基119−158に対応するポリペプチド。
【請求項37】
プリオンがヒト、ハムスター、マウス、ラット、シカ、ヒツジ、ヤギ、オオジカ、クドゥ、ウマ、イヌ、ネコ、ラクダおよびブタからなる群から選択される動物プリオンである請求項36のポリペプチド。
【請求項38】
免疫グロブリンポリペプチドである請求項1のハイブリッドポリペプチドであって、ポリペプチドモチーフが免疫グロブリン分子の第3相補性決定領域(CDR)に挿入されているハイブリッドポリペプチド。
【請求項39】
タンパク質凝集の疾患に関連するポリペプチドからの少なくとも10、15、20、25、30、35、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上の連続するアミノ酸残基を含む請求項38のポリペプチド。
【請求項40】
疾患がアミロイド疾患からなる群から選択される請求項38のポリペプチド。
【請求項41】
タンパク質凝集の疾患に関連するポリペプチドがプリオンである請求項38のポリペプチド。
【請求項42】
疾患が、クロイツフェルトヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症、アルツハイマー病、II型糖尿病、ハンチントン病、免疫グロブリンアミロイド症、慢性炎症性疾患を伴う反応性アミロイド症、変異体トランスサイレチン遺伝子の常染色体優性遺伝を伴う遺伝性全身性アミロイド症、ALS、ピック病、パーキンソン病、前頭側頭骨痴呆、II型糖尿病、多発性骨髄腫、形質細胞悪液質、家族性アミロイド神経障害、甲状腺髄様癌;慢性腎不全、うっ血性心不全、老人性心臓および全身性アミロイド症、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症および家族性アミロイド症からなる群から選択される請求項38のポリペプチド。
【請求項43】
ポリペプチドモチーフが、APP、Aβ、α1−抗キモトリプシン、タウ(tau)、非−Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2、apoE、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および神経フィラメント、ピック体、α−シヌクレイン、原繊維におけるタウ(tau)、アミリン、IgGL−鎖、トランスサイレチン、プロカルシトニン、β−ミクログロブリン、心房性ナトリウム利尿因子、血清アミロイドA、ApoAI、ゲルソリン、ハンチントンタンパク質からなる群から選択されるポリペプチドの全部または一部を含む請求項38のポリペプチド。
【請求項44】
良性のアイソフォームと比較してタンパク質の疾患関連アイソフォームに対して少なくとも10倍高いアフィニティーにて結合する請求項38のポリペプチド。
【請求項45】
良性のアイソフォームと比較してタンパク質の疾患関連アイソフォームに対して少なくとも100倍高いアフィニティーにて結合する請求項38のポリペプチド。
【請求項46】
モチーフがプリオンポリペプチド由来であって、プリオンがヒト、ハムスター、マウス、ラット、シカ、ヒツジ、ヤギ、オオジカ、クドゥ、ウマ、イヌ、ネコ、ラクダおよびブタからなる群から選択される動物プリオンである請求項38のポリペプチド。
【請求項47】
請求項1−46のいずれかのポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項48】
請求項47の核酸分子を含むベクター。
【請求項49】
発現ベクターである請求項48のベクター。
【請求項50】
真核ベクターである請求項48のベクター。
【請求項51】
作動可能にリンクしたヌクレオチド配列にコードされるポリペプチドの分泌を促すヌクレオチド配列を含む請求項48のベクター。
【請求項52】
哺乳類ベクター、酵母ベクターまたは細菌ベクターである請求項48のベクター。
【請求項53】
ウイルスベクター、ピチアベクターまたは大腸菌ベクターである請求項48のベクター。
【請求項54】
請求項48のベクターを含む細胞。
【請求項55】
原核細胞である請求項54の細胞。
【請求項56】
真核細胞である請求項54の細胞。
【請求項57】
細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞および動物細胞から選択される請求項54の細胞。
【請求項58】
哺乳類細胞である請求項56の細胞。
【請求項59】
以下の工程を含むタンパク質凝集の疾患に関連するアイソフォームのポリペプチドの検出方法:
該アイソフォームを含むと考えられるサンプルと請求項1−46のいずれかのハイブリッドポリペプチドとを接触させる工程;および、
ポリペプチドの結合を検出し、それによって疾患に関連するアイソフォームのポリペプチドを検出する工程。
【請求項60】
ハイブリッドポリペプチドが検出可能に標識されている請求項59の方法。
【請求項61】
以下の工程を含むPrPSc形態のプリオンポリペプチドの検出方法:
感染性アイソフォームのプリオンポリペプチドを含むと考えられるサンプルと、PrP形態のプリオンポリペプチドまたはその部分を含み、感染性形態に結合する請求項24のポリペプチドとを接触させる工程;および、
サンプル中のPrPScに対する結合を検出する工程。
【請求項62】
サンプルが体液、組織または器官である請求項61の方法。
【請求項63】
感染性アイソフォームのプリオンポリペプチドを含むと考えられるサンプルと、PrP形態のプリオンポリペプチドの全てまたは少なくとも約20、25、30、35、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上の連続するアミノ酸残基から実質的になるポリペプチドとを接触させる請求項61の方法。
【請求項64】
プリオンがヒト、ハムスター、マウス、ラット、シカ、ヒツジ、ヤギ、オオジカ、クドゥ、ウマ、イヌ、ネコ、ラクダおよびブタからなる群から選択される動物プリオンである請求項61の方法。
【請求項65】
以下の工程を含むPrPSc形態のプリオンポリペプチドの検出方法:
プリオンポリペプチドを含むサンプルをPrPscに特異的に結合するためのPrPの十分な部分を含む請求項1−10のいずれかのポリペプチドと接触させる工程、および、
サンプルにおけるPrPScへの結合を検出し、それによってPrPScの存在を検出する工程。
【請求項66】
サンプルが体液、組織または器官である請求項65の方法。
【請求項67】
サンプルが、血液、尿、汗、唾液、脳脊髄液、精子サンプル、血清、血漿および滑液からなる群から選択される体液である請求項66の方法。
【請求項68】
体液が血液、尿、汗、唾液、脳脊髄液、精子サンプル、血清、血漿および滑液からなる群から選択される請求項66の方法。
【請求項69】
骨格が酵素、抗体または蛍光または色素生産性分子の全部または一部を含む請求項65の方法。
【請求項70】
以下の工程:
ネイティブなPrPScを含むと考えられるサンプルと、単量体または二量体としてネイティブなPrPScにインサイチュで特異的に結合する請求項1のハイブリッドポリペプチドとを接触させる工程;および、
その結果得られる複合体を検出する工程
を含むサンプル中のPrPScを検出する方法であって、該ハイブリッドポリペプチドがPrPScに特異的に結合するのに十分なPrPの部分を含むものである、方法。
【請求項71】
骨格が酵素、色素生産性タンパク質、蛍光タンパク質、抗体および抗体フラグメントからなる群から選択される請求項70の方法。
【請求項72】
ポリペプチドモチーフが少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸を含む請求項71の方法。
【請求項73】
ポリペプチドモチーフが骨格の1以上のアミノ酸の代わりに挿入されている請求項71の方法。
【請求項74】
請求項1、7、8および38のいずれかのポリペプチドの複数を含む固体支持体。
【請求項75】
以下の工程を含むタンパク質凝集の疾患に関連するタンパク質配座異性体を含む細胞の検出方法:
動物または組織からの細胞を請求項1−46のハイブリッドポリペプチドと接触させる工程、ここでハイブリッドポリペプチドは検出可能に標識されているか、検出可能な骨格を含む;および、
標識された細胞を検出する工程。
【請求項76】
標識が蛍光標識である請求項75の方法。
【請求項77】
検出をフローサイトメトリーまたはスキャニングサイトメトリーによって行う請求項76の方法。
【請求項78】
細胞を複数の異なるハイブリッドポリペプチドと接触させる請求項75の方法。
【請求項79】
ハイブリッドポリペプチドが標的ポリペプチド上の異なるエピトープに結合する請求項78の方法。
【請求項80】
ハイブリッドポリペプチドが検出可能な骨格を含む請求項75の方法。
【請求項81】
検出可能な骨格が発光タンパク質またはその発光部分を含む請求項80の方法。
【請求項82】
発光タンパク質が蛍光タンパク質(FP)である請求項81の方法。
【請求項83】
FPが異なる発光スペクトルを有する、緑色FP、赤色FP、青色FPおよびそれらの変異体からなる群から選択される請求項82の方法。
【請求項84】
細胞がプリオン感染細胞である請求項75の方法。
【請求項85】
疾患がクロイツフェルトヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症、アルツハイマー病、II型糖尿病、ハンチントン病、免疫グロブリンアミロイド症、慢性炎症性疾患を伴う反応性アミロイド症、変異体トランスサイレチン遺伝子の常染色体優性遺伝を伴う遺伝性全身性アミロイド症、ALS、ピック病、パーキンソン病、前頭側頭骨痴呆、II型糖尿病、多発性骨髄腫、形質細胞悪液質、家族性アミロイド神経障害、甲状腺髄様癌;慢性腎不全、うっ血性心不全、老人性心臓および全身性アミロイド症、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症および家族性アミロイド症からなる群から選択される請求項75の方法。
【請求項86】
以下の工程を含むタンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関与するタンパク質の1つの配座異性体に特異的に相互作用する請求項1のハイブリッド分子の調製方法:
疾患関連配座異性体と良性形態の配座異性体との相互作用または凝集反応に関与する疾患関連配座異性体の部分を同定する工程;および、
同定された部分の全部または一部を骨格に挿入する工程、ここで、その結果得られるハイブリッド分子はタンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関与するタンパク質の1つの配座異性体に対して良性の配座異性体に比べて高いアフィニティーで相互作用する方法。
【請求項87】
以下の工程を含むPrPSc形態のプリオンポリペプチドの検出方法:
感染性アイソフォームのプリオンポリペプチドを含むと考えられるサンプルと、PrP形態のプリオンポリペプチドまたはその部分を含み、感染性形態に結合するポリペプチドとを接触させる工程;および、
サンプル中のPrPScに対する結合を検出する工程。
【請求項88】
サンプルが体液、組織または器官である請求項87の方法。
【請求項89】
感染性アイソフォームのプリオンポリペプチドを含むと考えられるサンプルと、PrP形態のプリオンポリペプチドの全てまたは少なくとも約20、25、30、35、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100またはそれ以上の連続するアミノ酸残基から実質的になるポリペプチドとを接触させる請求項87の方法。
【請求項90】
プリオンがヒト、ハムスター、マウス、ラット、シカ、ヒツジ、ヤギ、オオジカ、クドゥ、ウマ、イヌ、ネコ、ラクダおよびブタからなる群から選択される動物プリオンである請求項87の方法。
【請求項91】
以下の工程を含むサンプル中の標的ポリペプチドのアイソフォームの検出方法:
a)標的ポリペプチドを含むと考えられるサンプルと、単量体または二量体としてそれに特異的に結合する試薬を接触させる工程:
ここで標的ポリペプチドはその凝集体を形成するコンフォメーションである;
試薬は骨格およびそれに挿入されたポリペプチドモチーフを含むハイブリッドポリペプチドである;
ポリペプチドモチーフは標的ポリペプチドに結合する;および、
b)その結果得られる標的ポリペプチドと試薬との複合体を検出する工程。
【請求項92】
サンプルが生物サンプルである請求項91の方法。
【請求項93】
サンプルが体液、組織または器官である請求項92の方法。
【請求項94】
サンプルが血液または血液由来組成物である請求項92の方法。
【請求項95】
サンプルが組織または器官あるいはそれら由来である請求項91の方法。
【請求項96】
サンプルが薬物またはその他の組織または器官から調製された生理活性分子あるいは食品である請求項91の方法。
【請求項97】
薬物または生理活性分子がホルモンまたは成長因子である請求項96の方法。
【請求項98】
標的ポリペプチドの存在がタンパク質凝集を伴う疾患を示す請求項91の方法。
【請求項99】
疾患がアミロイド疾患からなる群から選択される請求項98の方法。
【請求項100】
疾患がクロイツフェルトヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症、アルツハイマー病、II型糖尿病、ハンチントン病、免疫グロブリンアミロイド症、慢性炎症性疾患を伴う反応性アミロイド症、変異体トランスサイレチン遺伝子の常染色体優性遺伝を伴う遺伝性全身性アミロイド症、ALS、ピック病、パーキンソン病、前頭側頭骨痴呆、II型糖尿病、多発性骨髄腫、形質細胞悪液質、家族性アミロイド神経障害、甲状腺髄様癌;慢性腎不全、うっ血性心不全、老人性心臓および全身性アミロイド症、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症および家族性アミロイド症からなる群から選択される請求項98の方法。
【請求項101】
アッセイが同種アッセイである請求項91の方法。
【請求項102】
試薬またはハイブリッドポリペプチドがさらに第2の結合部位を含み、方法が固体支持体上での試薬と標的ポリペプチドとの間に形成される複合体を捕捉して検出を行うものである、請求項101の方法。
【請求項103】
アッセイが異種アッセイである請求項101の方法。
【請求項104】
試薬またはハイブリッドポリペプチドが固体支持体に直接的または間接的に結合している請求項103の方法。
【請求項105】
以下の工程を含むサンプル中のPrPScを検出する方法:
ネイティブなPrPScを含むと考えられるサンプルと、単量体または二量体としてネイティブなPrPScにインサイチュで特異的に結合する試薬とを接触させる工程;および、
その結果得られる複合体を検出する工程。
【請求項106】
試薬がPrPScに特異的に結合するのに十分なPrPの部分を含むハイブリッドポリペプチドである請求項105の方法。
【請求項107】
試薬が以下を含むハイブリッドポリペプチドを含む請求項106の方法:
骨格;および、
単量体または二量体単位として疾患関連形態のタンパク質に特異的に結合するポリペプチドモチーフ、
ここで、疾患がタンパク質凝集の疾患である方法。
【請求項108】
骨格が酵素、色素生産性タンパク質、蛍光タンパク質、抗体および抗体フラグメントからなる群から選択される請求項107の方法。
【請求項109】
ポリペプチドモチーフが少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸を含む請求項108の方法。
【請求項110】
ポリペプチドモチーフが骨格の1以上のアミノ酸の代わりに挿入されている請求項108の方法。
【請求項111】
以下の工程を含むタンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関与するタンパク質の1つの配座異性体に特異的に相互作用するハイブリッド分子の調製方法:
疾患関連配座異性体と良性形態の配座異性体との相互作用または凝集反応に関与する疾患関連配座異性体の部分を同定する工程;および、
同定された部分の全部または一部を骨格に挿入する工程、ここで、その結果得られるハイブリッド分子はタンパク質凝集またはコンフォメーションの疾患に関与するタンパク質の1つの配座異性体に対して良性の配座異性体に比べて高いアフィニティーで相互作用する方法。
【請求項112】
体液が血液、尿、汗、唾液、脳脊髄液、精子サンプル、血清、血漿および滑液からなる群から選択される請求項88の方法。
【請求項113】
感染性形態のプリオンタンパク質に特異的に結合する抗−イディオタイプ抗体。
【請求項114】
Fab D13またはFab D18あるいは骨格に挿入された細胞のプリオンポリペプチドの複製インターフェイスからのモチーフを含むハイブリッドポリペプチドによって免疫することによって得られる請求項113の抗−イディオタイプ抗体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−142285(P2009−142285A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18209(P2009−18209)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【分割の表示】特願2003−582265(P2003−582265)の分割
【原出願日】平成15年4月8日(2003.4.8)
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【Fターム(参考)】