説明

モデム及びアンテナ制御システム

【課題】BSモデムとアンテナモデムのどちらにも使用できるモデム及びアンテナ制御システムを提供する。
【解決手段】制御信号および電源信号を入出力するピン端子同士が電気的に接続されたAISGコネクタ4a,4bと、AISGコネクタ4aから入力された制御信号を変調して変調信号を生成して出力するか、変調信号を復調して制御信号に戻してAISGコネクタ4bに出力するモデム回路5と、変調信号と電源信号を合成してAISG信号を生成して出力するか、AISG信号を変調信号と電源信号に分離してモデム回路5とAISGコネクタ4bに出力する合成・分離回路6と、給電信号にAISG信号を重畳して重畳信号を生成しRFコネクタ3bから出力するか、重畳信号をAISG信号と給電信号に分離して合成・分離回路6とRFコネクタ3aに出力するバイアスT回路7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AISG(Antenna Interface Standards Group)規格に準拠してアンテナの制御を行うアンテナ制御システムに用いられるモデム及びアンテナ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信用の無線基地局では、一般に、アンテナのチルト制御を遠隔制御により行えるようになっている。当初は、アンテナの制御方式としてメーカーごとに独自の方式を用いていたが、近年のLTE(Long Term Evolution)無線基地局などでは、アンテナの制御をAISG規格で行うことが多くなっている。AISG規格は、アンテナの基本的な相互運用を確実にすべく標準化された規格である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、無線基地局のアンテナや、アンテナの制御を行うRET(Remote Electrical Tilt)ユニットなどのAISGデバイス(AISG端末機器)は、鉄塔の上部やビルの屋上など高い位置に配置される。他方、アンテナに給電を行う無線機や、AISGデバイスを制御する制御装置(AISG制御装置)は、鉄塔の下部など低い位置に配置されるのが一般的である。ここで、制御装置は、AISGデバイスに制御信号(RS485規格信号)を送信し、AISGデバイスを制御してアンテナの制御を行うと共に、AISGデバイスに電源を供給するものである。
【0004】
アンテナと無線機とは同軸ケーブルからなる給電線(RF給電線)により接続され、AISGデバイスと制御装置とはAISG規格に準拠した制御ケーブル(AISG制御ケーブル)により接続されるので、例えばアンテナとAISGデバイスを鉄塔の上部に、無線機と制御装置を鉄塔の下部に配置する場合には、鉄塔の上部から下部にわたって、給電線と制御ケーブルの2本のケーブルが敷設されることになる。
【0005】
しかし、例えば数十mと高い鉄塔においては、鉄塔の上部から下部にわたってケーブルを敷設することは非常に手間がかかり、工事にかかるコストも高くなってしまう。この問題を解決するため、AISG規格では、コアキシャルインターフェイス(Coaxial Interface)またはモデムオプション(Modem Option)と呼ばれる方式(以下、コアキシャルインターフェイス方式と呼称する)が規定されている。
【0006】
図6に示すように、コアキシャルインターフェイス方式を用いたアンテナ制御システム61では、アンテナ10と無線機11とを接続する給電線12の途中に、BSモデム13とアンテナモデム14と呼ばれる2つのモデムを設け、これらBSモデム13とアンテナモデム14を使用して、給電線12を経由してAISGデバイス17用の制御信号や電源信号を伝送する。
【0007】
BSモデム13は、無線機11の近傍(例えば鉄塔の下部)に設けられ、制御ケーブル15を介して制御装置(AISG制御装置)16が接続される。アンテナモデム14は、アンテナ10の近傍(例えば鉄塔の上部)に設けられ、制御ケーブル15を介してAISGデバイス17が接続される。
【0008】
図7に示すように、BSモデム13では、制御装置16から入力AISGコネクタ21を介して入力された制御信号(RS485A,RS485B)を、モデム(モデム回路)22にて変調して変調信号を生成し、その変調信号と制御装置16から入力された電源信号とを合成回路23で合成し、その合成した信号(AISG信号という)をバイアスT回路(Bias Tee)24に出力する。バイアスT回路24は、直流遮断用のキャパシタ(容量素子)と交流遮断用のインダクタ(誘導素子)とを組み合わせて構成され、合成回路23から入力されたAISG信号を、無線機11から入力側RFコネクタ25を介して入力された給電信号(RF信号)に重畳して、出力側RFコネクタ26からアンテナ10側の給電線12に出力する。
【0009】
図8に示すように、アンテナモデム14では、BSモデム13から入力側RFコネクタ31を介して入力された給電信号(AISG信号を重畳した給電信号)をバイアスT回路32に入力し、バイアスT回路32にて、給電信号からAISG信号を分離する。分離後の給電信号は、出力側RFコネクタ33から、アンテナ10側の給電線12に出力される。バイアスT回路32で分離されたAISG信号は、分離回路34にてさらに変調信号と電源信号とに分離され、分離された変調信号はモデム(モデム回路)35で復調されて制御信号に戻され、その復調された制御信号と、分離回路34で分離された電源信号とが、出力AISGコネクタ36を介してAISGデバイス17に出力される。
【0010】
BSモデム13のモデム22とアンテナモデム14のモデム35としては、同じ構成のものを用いるのが一般的である。図9に示すように、モデム22,35は、RS485インターフェイス91に入力された制御信号(RS485規格信号)を、変調回路92で変調して変調信号を生成し、生成した変調信号を方向性結合器93から外部に出力するように構成されると共に、方向性結合器93に入力された変調信号を、復調回路94で復調して制御信号に戻し、RS485インターフェイス91から外部に出力するように構成されている。モデム22,35の電源回路95は、制御装置16から供給される電源を利用し、入力される電源電圧をモデム22,35用の電圧に変換して、RS485インターフェイス91、変調回路92、復調回路94に出力するように構成されている。
【0011】
また、BSモデム13の合成回路23とアンテナモデム14の分離回路34は、共に低域フィルタ等を用いて構成されたものであり、同じ構成のものである。さらには、BSモデム13のバイアスT回路24とアンテナモデム14のバイアスT回路32も同じものである。
【0012】
このようなコアキシャルインターフェイス方式を採用することにより、鉄塔の上部から下部にわたって給電線12のみを敷設すればよいこととなり、工事費も含めたアンテナ制御システムのトータルコストを大幅に抑制することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2010−519804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、BSモデム13とアンテナモデム14の内部回路はほぼ同じであるが、現状では、BSモデム13とアンテナモデム14は別の機器として取り扱われている。
【0015】
本発明者は、BSモデム13とアンテナモデム14のどちらにも使用できるモデムがあれば、システムの構成部品を減らして低コスト化が可能となり、シンプルな構成のアンテナ制御システムを実現できると考えた。
【0016】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、BSモデムとアンテナモデムのどちらにも使用できるモデム及びアンテナ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うアンテナ制御システムに用いられ、前記アンテナの給電線が接続される2つのRFコネクタと、AISG規格に準拠し、制御信号を入出力するピン端子同士、および電源信号を入出力するピン端子同士がそれぞれ電気的に接続された入力側AISGコネクタ及び出力側AISGコネクタと、前記両AISGコネクタの制御信号を入出力するピン端子と電気的に接続され、前記入力側AISGコネクタから入力された制御信号を変調して変調信号を生成して出力するか、あるいは入力された変調信号を復調して制御信号に戻して前記出力側AISGコネクタに出力するモデム回路と、前記モデム回路の変調信号の入出力部と電気的に接続されると共に、前記両AISGコネクタの電源信号を入出力するピン端子と電気的に接続され、前記モデム回路から入力された変調信号と前記入力側AISGコネクタから入力された電源信号とを合成してAISG信号を生成して出力するか、あるいは入力されたAISG信号を変調信号と電源信号に分離して前記モデム回路と前記出力側AISGコネクタにそれぞれ出力する合成・分離回路と、前記合成・分離回路のAISG信号の入出力部と電気的に接続されると共に、前記両RFコネクタと電気的に接続され、一方の前記RFコネクタから入力された給電信号に前記合成・分離回路から入力されたAISG信号を重畳して重畳信号を生成し、他方の前記RFコネクタから出力するか、あるいは、他方の前記RFコネクタから入力された重畳信号をAISG信号と給電信号に分離して前記合成・分離回路と一方の前記RFコネクタにそれぞれ出力するバイアスT回路と、を備えたモデムである。
【0018】
前記入力側AISGコネクタは、前記ピン端子が外部に露出したオスコネクタであり、前記入力側AISGコネクタの電源信号を入出力するピン端子で短絡が発生したときに前記入力側AISGコネクタに過大な短絡電流が流れてしまうことを抑制する短絡電流抑制手段をさらに備えてもよい。
【0019】
前記短絡電流抑制手段は、短絡電流を阻止するように設けられたダイオードからなってもよい。
【0020】
前記短絡電流抑制手段は、電流制限素子からなってもよい。
【0021】
前記入力側AISGコネクタを介して入力された電源信号、あるいは前記合成・分離回路から出力された電源信号から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号を生成して前記出力側AISGコネクタに出力するDC/DCコンバータをさらに備えてもよい。
【0022】
また、本発明は、AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスにAISG規格にて規定される一の電圧の電源信号を送信する制御装置と、前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムと、を備えたアンテナ制御システムにおいて、前記BSモデムと前記アンテナモデムの少なくとも一方に、前記モデムを用いたアンテナ制御システムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、BSモデムとアンテナモデムのどちらにも使用できるモデム及びアンテナ制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態に係るモデムを用いたアンテナ制御システムの概略構成図であり、(b)はモデムの概略構成図である。
【図2】図1のアンテナ制御システムに用いる制御ケーブルの一例を示す横断面図である。
【図3】(a),(b)は、図1(b)のモデムの変形例を示す概略構成図である。
【図4】図1(b)のモデムの変形例を示す概略構成図である。
【図5】図1(b)のモデムをAISGデバイスと同一の筐体に内蔵したときの概略構成図である。
【図6】従来のアンテナ制御システムの概略構成図である。
【図7】図6の従来のアンテナ制御システムに用いる従来のBSモデムの概略構成図である。
【図8】図6の従来のアンテナ制御システムに用いるアンテナモデムの概略構成図である。
【図9】図7のBSモデム、図8のアンテナモデムに用いるモデム(モデム回路)の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態に係るモデムを用いたアンテナ制御システムの概略構成図であり、(b)はモデムの概略構成図である。
【0027】
図1に示すように、アンテナ制御システム1は、AISG規格に準拠してアンテナ10の制御を行うAISGデバイス17と、AISGデバイス17に制御信号を送信し、AISGデバイス17を制御してアンテナ10の制御を行うと共に、AISGデバイス17にAISG規格にて規定される一の電圧の電源信号を送信する制御装置16と、アンテナ10とアンテナ10に給電を行う無線機11とを接続する給電線12の途中に設けられた本発明のBSモデム13と、BSモデム13よりもアンテナ10側の給電線12の途中に設けられたアンテナモデム14と、を備えている。
【0028】
ここでは、一例として、制御装置16が、必須接続である10〜30V電源を供給するものであり、AISGデバイス17が、10〜30V電源を使用するものである場合を説明する。
【0029】
BSモデム13は、制御装置16から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と制御装置16から入力された電源信号とを合成した信号(AISG信号という)を、無線機11から入力された給電信号(RF信号)に重畳した信号(重畳信号という)をアンテナ10側の給電線12に出力するものである。
【0030】
アンテナモデム14は、BSモデム13から入力された重畳信号からAISG信号を分離すると共に、AISG信号を変調信号と電源信号とに分離し、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号をAISGデバイス17に、分離後の給電信号をアンテナ10側の給電線12に出力するものである。
【0031】
本実施の形態に係るアンテナ制御システム1は、これらBSモデム13とアンテナモデム14の少なくとも一方に、本発明のモデム2を用いたものである。ここでは、BSモデム13とアンテナモデム14の両方に本発明のモデム2を用いた場合を説明するが、どちらか一方であってもよい。
【0032】
モデム2の詳細については後述するが、モデム2は、アンテナ10の給電線12が接続される2つのRFコネクタ3a,3bと、AISG規格に準拠した入力側AISGコネクタ(オスコネクタ)4aと出力側AISGコネクタ(メスコネクタ)4bを備えている。両RFコネクタ3a,3bは、一般的な同軸ケーブル用のコネクタであり、両AISGコネクタ4a,4bは、AISG規格に準拠した一般的なコネクタである。
【0033】
BSモデム13として用いるモデム2は、無線機11の近傍(例えば鉄塔の下部)に設けられ、制御ケーブル15を介して制御装置16が接続される。アンテナモデム14として用いるモデム2は、アンテナ10の近傍(例えば鉄塔の上部)に設けられ、制御ケーブル15を介してAISGデバイス17が接続される。
【0034】
制御ケーブル15は、図2に示すように、制御信号を伝送する2本の制御信号線44と、電源を供給するための3本の電源線45とを備えている。2本の制御信号線44には、ドレインワイヤ46が縦添えされており、2本の制御信号線44とドレインワイヤ46の周囲には、これらを一括して取り囲むようにシールドテープ(金属テープ)47が設けられている。
【0035】
3本の電源線45は、異なる電圧が設定された2本の電源線45a,45cと、DCリターン用の電源線45bとからなる。ここでは、−48V電源を伝送する−48V線45aと10〜30V電源を伝送する10〜30V線45cを備える場合を示している。
【0036】
3本の電源線45は、介在48と共に2本の制御信号線44の周囲(シールドテープ47の周囲)に配置され、これらを一括して取り囲むように、シールドテープ49、編組シールド50、シース51が順次設けられている。
【0037】
なお、図2の制御ケーブル15は、あくまで一例として示したものであり、制御ケーブル15は、図2の構成に限定されるものではない。例えば、本実施の形態に係るアンテナ制御システム1では、10〜30V電源のみを使用しており−48V線45aを使用していないので、−48V線45aを省略したものを用いることも可能である。
【0038】
図1(a)に戻り、制御ケーブル15の両端には、オスコネクタ15aとメスコネクタ15bがそれぞれ設けられている。また、制御装置16には出力コネクタ(メスコネクタ)16aが、AISGデバイス17には入力コネクタ(オスコネクタ)17aが設けられている。これらコネクタ15a,15b,16a,17aは、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)である。なお、図示していないが、AISGデバイス17には、出力コネクタ(メスコネクタ)が設けられており、複数台のAISGデバイス17をデイジーチェーン接続できるようになっている。
【0039】
制御ケーブル15のオスコネクタ15aを制御装置16の出力コネクタ16aに接続し、その制御ケーブル15のメスコネクタ15bをBSモデム13として用いるモデム2の入力側AISGコネクタ4aに接続することで、制御装置16とBSモデム13として用いるモデム2とが制御ケーブル15を介して接続される。また、BSモデム13として用いるモデム2の一方のRFコネクタ3aには、無線機11から延びる給電線12が接続され、これにより、無線機11とBSモデム13として用いるモデム2とが給電線12を介して接続される。
【0040】
さらに、制御ケーブル15のオスコネクタ15aをアンテナモデム14として用いるモデム2の出力側AISGコネクタ4bに接続し、その制御ケーブル15のメスコネクタ15bをAISGデバイス17の入力コネクタ17aに接続することで、アンテナモデム14として用いるモデム2とAISGデバイス17とが制御ケーブル15を介して接続される。また、アンテナモデム14として用いるモデム2の一方のRFコネクタ3aには、アンテナ10に延びる給電線12が接続され、これにより、アンテナモデム14として用いるモデム2とアンテナ10とが給電線12を介して接続される。
【0041】
さらにまた、給電線12の両端を、BSモデム13として用いるモデム2とアンテナモデム14として用いるモデム2の他方のRFコネクタ3bにそれぞれ接続することで、両モデム2が給電線12を介して接続される。
【0042】
次に、本実施の形態に係るモデム2について説明する。
【0043】
図1(b)に示すように、モデム2は、2つのRFコネクタ3a,3bと、入力側AISGコネクタ4a及び出力側AISGコネクタ4bと、モデム回路5と、合成・分離回路6と、バイアスT回路7と、を主に備えている。
【0044】
入力側AISGコネクタ4aと出力側AISGコネクタ4bは、制御信号を入出力する3,5番のピン端子(RS485A,RS485B)同士、および電源信号を入出力するピン端子(ここでは、10〜30V電源を入出力する6番のピン端子)同士が、内部配線によりそれぞれ電気的に接続されている。また、図示省略しているが、両AISGコネクタ4a,4bは、DCリターン用の7番のピン端子同士も、内部配線により電気的に接続されている。なお、使用しない電源信号(+12V電源や−48V電源)を入出力するピン端子については、両AISGコネクタ4a,4b間で接続してもしなくてもよい。なお、ピン端子の番号については、AISG規格にて規定されているものである。
【0045】
モデム回路5は、入力側AISGコネクタ4aから入力された制御信号を変調して変調信号を生成して合成・分離回路6に出力するか、あるいは合成・分離回路6から入力された変調信号を復調して制御信号に戻して出力側AISGコネクタ4bに出力するものであり、図9で説明したものと同じものである。モデム回路5の制御信号の入出力部(RS485インターフェイス)は、内部配線により、両AISGコネクタ4a,4bの制御信号を入出力する3,5番のピン端子(RS485A,RS485B)と電気的に接続され、その変調信号の入出力部は、内部配線により、合成・分離回路6の変調信号の入出力部と電気的に接続される。
【0046】
合成・分離回路6は、モデム回路5から入力された変調信号と入力側AISGコネクタ4aから入力された電源信号とを合成してAISG信号を生成し、生成したAISG信号をバイアスT回路7に出力するか、あるいはバイアスT回路7から入力されたAISG信号を変調信号と電源信号に分離して、モデム回路5と出力側AISGコネクタ4bにそれぞれ出力するものである。合成・分離回路6の電源信号の入出力部は、両AISGコネクタ4a,4bの電源信号を入出力する6番のピン端子(10〜30V DC)と電気的に接続され、そのAISG信号の入出力部は、バイアスT回路7のAISG信号の入出力部と電気的に接続される。
【0047】
バイアスT回路7は、一方のRFコネクタ3aから入力された給電信号に合成・分離回路6から入力されたAISG信号を重畳して重畳信号を生成し、他方のRFコネクタ3bから出力するか、あるいは、他方のRFコネクタ3bから入力された重畳信号をAISG信号と給電信号に分離して合成・分離回路6と一方のRFコネクタ3aにそれぞれ出力するものである。バイアスT回路7の給電信号の入出力部は、一方のRFコネクタ3aと電気的に接続され、その重畳信号の入出力部は、他方のRFコネクタ3bと電気的に接続される。
【0048】
ところで、入力側AISGコネクタ4aは、ピン端子が外部に露出したオスコネクタ(プラグ)である。モデム2をアンテナモデム14として使用する場合、入力側AISGコネクタ4aには何も接続されず開放された状態となるが、このとき、露出したピン端子にゴミが付着するなどして電源信号を入出力するピン端子で短絡が発生してしまったり、あるいは作業者がピン端子に触れて感電してしまうことが考えられる。そこで、この対策として、本実施の形態では、入力側AISGコネクタ4aの電源信号を入出力するピン端子で短絡が発生したときに入力側AISGコネクタ4aに過大な短絡電流が流れてしまうことを抑制する短絡電流抑制手段8をさらに備えている。
【0049】
ここでは、短絡電流抑制手段8としてダイオード8aを用いた。ダイオード8aは、短絡電流を阻止するように設けられる。本実施の形態では、合成・分離回路6の電源信号の入出力部から出力側AISGコネクタ4bの6番のピン端子(10〜30V DC)に延びる内部配線から分岐し、入力側AISGコネクタ4aの6番のピン端子(10〜30V DC)に延びる内部配線に、アノード電極が入力側AISGコネクタ4a側(図示上側)、カソード電極が出力側AISGコネクタ4b側(図示下側)となるように、ダイオード8aを設けた。
【0050】
なお、使用する電源が10〜30V電源あるいは+12V電源、つまり正電源である場合には、ダイオード8aの向きは図1(b)に示す通りの向きでよいが、使用する電源が−48V電源、つまり負電源であるときは、短絡時に流れる短絡電流の向きが逆になるので、図3(a)に示すように、ダイオード8aの向きを逆に、すなわち、アノード電極を出力側AISGコネクタ4b側(図示下側)、カソード電極を入力側AISGコネクタ4a側(図示上側)とする必要がある。
【0051】
また、図3(b)に示すように、短絡電流抑制手段8として、電流制限素子8bを用いることも可能である。電流制限素子8bとしては、例えば、ポリマー系PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ等を用いることができる。
【0052】
図1に戻り、モデム2の動作を説明する。
【0053】
まず、モデム2をBSモデム13として用いる場合の動作を説明する。
【0054】
モデム2をBSモデム13として用いる場合、RFコネクタ3aには無線機11が接続され、RFコネクタ3bにはアンテナモデム14(ここではアンテナモデム14として用いるモデム2)が接続され、入力側AISGコネクタ4aには制御装置16が接続されることになる。出力側AISGコネクタ4bは、開放したままとしてもよいし、この出力側AISGコネクタ4bにAISGデバイス17をデイジーチェーン接続することも可能である。
【0055】
制御装置16から入力側AISGコネクタ4aを介して入力された制御信号は、モデム回路5にて変調信号とされ、合成・分離回路6に出力される。合成・分離回路6は、変調信号と電源信号を合成してAISG信号を生成してバイアスT回路7に出力する。バイアスT回路7は、無線機11からRFコネクタ3aを介して入力された給電信号にAISG信号を重畳して重畳信号を生成し、RFコネクタ3bからアンテナモデム14に出力する。
【0056】
次に、モデム2をアンテナモデム14として用いる場合の動作を説明する。
【0057】
モデム2をアンテナモデム14として用いる場合、RFコネクタ3aにはアンテナ10が、RFコネクタ3bにはBSモデム13(ここではBSモデム13として用いるモデム2)が、出力側AISGコネクタ4bにはAISGデバイス17が接続されることになる。入力側AISGコネクタ4aは、開放したままとされる。このとき、開放したままの入力側AISGコネクタ4aのピン端子にて短絡が発生した場合であっても、短絡電流は短絡電流抑制手段8で阻止されるので、短絡事故や感電事故の発生を防止できる。
【0058】
BSモデム13からRFコネクタ3bを介して入力された重畳信号は、バイアスT回路7でAISG信号と給電信号に分離され、AISG信号は合成・分離回路6に、給電信号はRFコネクタ3aからアンテナ10に出力される。合成・分離回路6は、AISG信号を変調信号と電源信号に分離して、変調信号をモデム回路5に、電源信号を出力側AISGコネクタ4bからAISGデバイス17に出力する。モデム回路5は、変調信号を復調して制御信号に戻し、出力側AISGコネクタ4bからAISGデバイス17に出力する。
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、BSモデム13とアンテナモデム14のどちらにも使用できるモデム2を実現できる。従来は、BSモデム13とアンテナモデム14を別製品として扱ってきたが、本発明によれば、BSモデム13とアンテナモデム14の両者を1つの製品で対応することが可能となり、その結果、システムの構成部品を減らして、低コストでシンプルな構成のアンテナ制御システム1を実現できる。
【0060】
また、本実施の形態では、モデム2に短絡電流抑制手段8を備えているため、入力側AISGコネクタ4aの電源信号を入出力するピン端子で短絡が発生したときに入力側AISGコネクタ4aに過大な短絡電流が流れてしまうことを抑制でき、短絡事故や感電事故の発生を防止できる。
【0061】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0062】
例えば、上記実施の形態では言及しなかったが、図4(a)に示すモデム41のように、両AISGコネクタ4a,4bの近傍に、サージ保護回路9を備え、雷サージなどのサージ電圧から内部回路(モデム回路5など)を保護するようにモデム2を構成してもよい。
【0063】
また、図4(b)に示すモデム42のように、入力側AISGコネクタ4aを介して入力された電源信号あるいは合成・分離回路6から出力された電源信号(ここでは10〜30V電源)から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号(ここでは+12V電源)を生成して出力側AISGコネクタ4bに出力するDC/DCコンバータ18をさらに備え、制御装置16が供給する電源電圧と異なる電源電圧を使用するAISGデバイス17を使用できるようにしてもよい。
【0064】
ここでは、DC/DCコンバータ18として、10〜30V電源から+12V電源を生成して出力するものを用いる場合を示しているが、これに限らず、制御装置16が出力する電源電圧と、出力側AISGコネクタ4bから出力したい電源電圧(つまり出力側AISGコネクタ4bに接続されるAISGデバイス17が使用する電源電圧)に応じて、10〜30V電源から−48V電源を生成して出力したり、−48V電源から10〜30V電源や+12V電源を生成して出力したり、あるいは、+12V電源から10〜30V電源や−48V電源を生成して出力するものを用いることも当然に可能である。
【0065】
さらには、入力された電源信号(例えば10〜30V電源)から、AISG規格にて規定される他の電圧で、かつ異なる電圧の電源信号(例えば−48V電源と+12V電源)を生成する2台のDC/DCコンバータ18を設け、AISG規格にて規定されている3種類全ての電源を出力するように構成することも可能である。
【0066】
なお、図4(b)のモデム42では、DC/DCコンバータ18の出力を入力側AISGコネクタ4aにも接続しているため、この両者を接続する内部配線にもダイオード19を設けて、入力側AISGコネクタ4aの電源信号を入出力するピン端子で短絡が発生したときに入力側AISGコネクタ4aに過大な短絡電流が流れてしまうことを抑制するようにしている。なお、DC/DCコンバータ18の出力を入力側AISGコネクタ4aに接続しないように構成すれば、ダイオード19は省略可能である。
【0067】
さらに、図5に示すように、本発明のモデム2を、RETなどのAISGデバイス17と同一筐体へ実装するようにしてもよい。この場合、モデム回路5の電源回路とAISGデバイス17の電源回路とを共通化することも可能である。このように構成することで、制御ケーブル15により制御信号や電源信号が入力される場合と、給電線12により制御信号や電源信号が入力される場合の両方に対応できるAISGデバイス17が実現できることになる。なお、分配器(AISG信号分配器)やアレスタと同一筐体内に本発明のモデム2を内蔵することも、もちろん可能である。
【0068】
また、上記実施の形態では、無線機11と制御装置16とが別体となっている場合を説明したが、無線機11と制御装置16が一体となった無線機能付きの制御装置を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 アンテナ制御システム
2 モデム
3a,3b RFコネクタ
4a 入力側AISGコネクタ
4b 出力側AISGコネクタ
5 モデム回路
6 合成・分離回路
7 バイアスT回路
8 短絡電流抑制手段
8a ダイオード
10 アンテナ
11 無線機
12 給電線
13 BSモデム
14 アンテナモデム
15 制御ケーブル
16 制御装置
17 AISGデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うアンテナ制御システムに用いられ、
前記アンテナの給電線が接続される2つのRFコネクタと、
AISG規格に準拠し、制御信号を入出力するピン端子同士、および電源信号を入出力するピン端子同士がそれぞれ電気的に接続された入力側AISGコネクタ及び出力側AISGコネクタと、
前記両AISGコネクタの制御信号を入出力するピン端子と電気的に接続され、前記入力側AISGコネクタから入力された制御信号を変調して変調信号を生成して出力するか、あるいは入力された変調信号を復調して制御信号に戻して前記出力側AISGコネクタに出力するモデム回路と、
前記モデム回路の変調信号の入出力部と電気的に接続されると共に、前記両AISGコネクタの電源信号を入出力するピン端子と電気的に接続され、前記モデム回路から入力された変調信号と前記入力側AISGコネクタから入力された電源信号とを合成してAISG信号を生成して出力するか、あるいは入力されたAISG信号を変調信号と電源信号に分離して前記モデム回路と前記出力側AISGコネクタにそれぞれ出力する合成・分離回路と、
前記合成・分離回路のAISG信号の入出力部と電気的に接続されると共に、前記両RFコネクタと電気的に接続され、一方の前記RFコネクタから入力された給電信号に前記合成・分離回路から入力されたAISG信号を重畳して重畳信号を生成し、他方の前記RFコネクタから出力するか、あるいは、他方の前記RFコネクタから入力された重畳信号をAISG信号と給電信号に分離して前記合成・分離回路と一方の前記RFコネクタにそれぞれ出力するバイアスT回路と、
を備えたことを特徴とするモデム。
【請求項2】
前記入力側AISGコネクタは、前記ピン端子が外部に露出したオスコネクタであり、
前記入力側AISGコネクタの電源信号を入出力するピン端子で短絡が発生したときに前記入力側AISGコネクタに過大な短絡電流が流れてしまうことを抑制する短絡電流抑制手段をさらに備えた
請求項1記載のモデム。
【請求項3】
前記短絡電流抑制手段は、短絡電流を阻止するように設けられたダイオードからなる
請求項2記載のモデム。
【請求項4】
前記短絡電流抑制手段は、電流制限素子からなる
請求項2記載のモデム。
【請求項5】
前記入力側AISGコネクタを介して入力された電源信号、あるいは前記合成・分離回路から出力された電源信号から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号を生成して前記出力側AISGコネクタに出力するDC/DCコンバータをさらに備えた
請求項1〜4いずれかに記載のモデム。
【請求項6】
AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、
前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスにAISG規格にて規定される一の電圧の電源信号を送信する制御装置と、
前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、
前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムと、
を備えたアンテナ制御システムにおいて、
前記BSモデムと前記アンテナモデムの少なくとも一方に、請求項1〜5いずれかに記載のモデムを用いた
ことを特徴とするアンテナ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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