説明

モナチン鏡像異性体の生成

モナチンの大規模生成に適用可能な方法を含めた、高甘味度甘味料のモナチン、3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−3−ヒドロキシ−ブト−4−イル)インドール、その塩およびその内部縮合生成物の調製方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、グルタミン酸誘導体、それらの塩およびそれらの内部縮合生成物を生成する方法に関し、そのような化合物の大規模生成に適用可能な方法も含む。より詳しくは、本発明は、3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−ヒドロキシ−ブト−4イル)インドール(「モナチン」としても知られている。)、その塩およびその内部縮合生成物に関し、モナチンの大規模生成に適用可能な方法を含む。
【背景技術】
【0002】
モナチンは高甘味度甘味料であって、下記の化学式:
【0003】
【化1】

を有する。
【0004】
モナチンは二つのキラル中心を含有して、4つの可能な立体異性配置を生じる。R,R配置(「R,R立体異性体」すなわち「R,R−モナチン」);S,S配置(「S,S立体異性体」すなわち「S,S−モナチン」);R,S配置(「R,S立体異性体」すなわち「R,S−モナチン」);および、S,R配置(「S,R立体異性体」すなわち「S,R−モナチン」)である。異なる立体異性体のモナチンは異なる甘味特性を有する。ここで用いるとき、特記がない限り、用語「モナチン」は4つの全ての立体異性体を含む組成物、モナチン異性体のいずれかの組合せを含む組成物(例えば、モナチンのR,RおよびS,S立体異性体のみ含む組成物)、ならびに、単一異性体をいう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この開示の目的のため、モナチン炭素骨格は上に例示するように番号付けし、アルコール基に直接共有結合する炭素を2位の炭素とし、アミノ基に直接共有結合する炭素を4位の炭素とする。その結果、特記がない限り、ここでR,Rモナチン、S,Sモナチン、R,SモナチンおよびS,Rモナチンへの言及は、それぞれ、2R,4Rモナチン、2S,4Sモナチン、2R,4Sモナチンおよび2S,4Rモナチンを意味する。
【0006】
文言上、モナチン炭素骨格は、代替的な規則を用いても番号付けられ、アルコール基に結合する炭素を4位炭素とし、アミノ基に結合する炭素を2位炭素とする。したがって、例えば、本開示における2S,4Rモナチンへの言及は、前記代替的な規則を用いて、文言上、2R,4Sモナチンへの言及と同一である。
【0007】
さらに、様々な命名規則により、モナチンは以下の:2−ヒドロキシ−2−(インドル−3−イルメチル)−4−アミノグルタル酸;4−アミノ−2−ヒドロキシ−2−(1H−インドル−3−イルメチル)−ペンタン二酸;4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)グルタミン酸;および、3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−3−ヒドロキシ−ブト−4−イル)インドールを含む多数の代替的な名称でも知られている。
【0008】
モナチンの特定の異性体は、主に南アフリカのリンポポ地域に生息するが、ムブマランガや北西部にも生息するシュレロチトン・イリシホリアス(Schlerochiton ilicifolius)植物の根皮内に見いだすことができる。しかしながら、乾燥皮内に存在するモナチンの濃度は、酸形態のインドール換算で、約0.007質量%であることが分かった。米国特許第4,975,298を参照せよ。米国特許第5,128,482(「’482特許」)は、出典明示してその全体が本明細書に含まれるとみなされ、モナチンを調製する合成経路を提案し、その経路に沿って、モナチンおよび特定の中間体を生成する方法を開示する。
【0009】
少なくとも部分的には、その甘味特性における有用性のため、モナチンの経済的な起源を有することが望ましい。かくして、立体異性体的に純粋なまたは立体異性体的に豊富化された形態のモナチンの生成方法を開発する必要性が継続している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、モナチンを含めたグルタミン酸誘導体を作製する新規方法ならびに、米国特許第5,128,482号に開示されるものに類似する経路における中間体を含めた、前記方法に用いるかまたは生じる中間体を提供する。本発明の一以上の新規方法は、とりわけ、よりコスト的に有効な製造ソリューションを許容し、それには、モナチンの大規模製造の機会および/またはモナチンの食品グレード製造の増大した適合性が含まれる。
【0011】
いくつかの具体例において、モナチンは、(1)アクリル酸エチルから、中間体2−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル(「EHMA」)を経て、2−ブロモメチルアクリル酸エチル(「EBMA」)を生成し;(2)EBMAを臭化インドールマグネシウム (indole magnesium bromide) (例えば、臭化エチルマグネシウム (ethyl magnesium bromide) とインドールとの反応から生成できる)と反応させて、2−インドリルメチルアクリル酸エチル(「EIMA」)を生成し;(3)EIMAをクロロヒドロキシイミノ酢酸エチル(「ECHA」)(例えば、グリシンエチルエステル塩酸から生成される)と反応させて、イソオキサゾリンジエチルエステル)「ID」)を生成し;ついで、(4)IDを加水分解および水素化分解反応に付して、モナチンを生成することによって、生じる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による、モナチンを生成する経路の特別の具体例、および前記経路のける特定の中間体を例示する。
【0013】
【図2】本発明による、EHMAの生成についての特別の具体例の流れ図。
【0014】
【図3】本発明による、EBMAの生成についての特別の具体例の流れ図。
【0015】
【図4】本発明による、ECHAの生成についての特別の具体例の流れ図。
【0016】
【図5】本発明による、EIMAの生成についての特別の具体例の流れ図。
【0017】
【図6】本発明による、イソオキサゾリンジエステルの生成についての特別の具体例の流れ図。
【0018】
【図7】本発明による、モナチンの調製および精製についての特別の具体例の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特記ない限り、用語「含む」、「含む」「含んでいる」などはオープンエンドであることを意図している。かくして、例えば、「含む」は「限定されないが含む」を意味する。
【0020】
断わりがあるときを除き、冠詞「a」、「an」および「the」は、「一以上」を意味する。
【0021】
ここで用いるとき、用語「約」はいかなる測定でも発生する実験誤差の範囲を包含する。断りない限り、全ての測定値は、語「約」が明示的に用いられていなくても、それらの前に語「約」を有していると推定される。
【0022】
ここで採用する用語「アルキル」は、それ自体でまたは別の基の一部としてここで用いられるとき、鎖長が限定されていない限り、10炭素までの直鎖および分枝鎖双方の飽和官能基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、へプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシルなどである。
【0023】
ここで用いるとき、用語「インドール基質」は、2、4、5、6および7位の一以上において、アルキル、カルボキシ、アルコキシ、アリールアルキル、アリールアルコキシ、ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアリールオキシ、およびジアルキルアミノアルコキシから選ばれる置換基で置換されているかまたは置換されていないインドール分子を含む。
【0024】
ここで用いるとき、Rは水素、アルキル、アリール、またはアシル(ベンゾイルのごときアリールカルボニル基を含む)から選択される。
【0025】
ここで用いるとき、RおよびRは、独立して、アミド、アルコキシ、アリールオキシ、または、アリール置換されたアルコキシ基から選択され、それらは、直鎖状、分子鎖状または環状で、および、所望により、キラリティーの元素を含有してもよい。
【0026】
ここで用いるとき、Ra-Reは、独立して、水素、アルキル、カルボキシ、アルコキシ、アリールアルキル、アリールアルコキシ、ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアリールオキシ、およびジアルキルアミノアルコキシから選ばれるか;または、Rb/Rc、Rc/Rd、または Rd/Reのいずれかの対は、アルキレンまたはアルキレンジオキシ基を形成できる。
【0027】
ここで用いるとき、「X]は、化学組成物式中で、ハロゲン化物または擬ハロゲン化合物から選ばれる。擬ハロゲン化物は、脱離基特性の点で、ハロゲン化物と本質的に同等の脱離基であり、例えば、メタンスルホニルまたはトルエンスルホニルである。
【0028】
ここで用いるとき、特記がない限り、用語「モナチン」を用いて、4つ全ての立体異性体を含む組成物、モナチン立体異性体のいずれかの組合せを含む組成物(例えば、モナチンのR,RおよびS,S立体異性体のみを含む組成物)、ならびに単一異性体をいう。
【0029】
概略、式I:
【0030】
【化2】

[式中、窒素原子上の2つのR基は、同一または異なる。]で特定される化合物の分類は、図1に示されるものと同様の一般的方法によって生成できる。特定された反応は、段階的に実施することができ、または、単一の手順に合わせて実行することができ、以下:
式(II):
【0031】
【化3】

のアクリル酸誘導体を式III:
【0032】
【化4】


のインドールまたはインドール誘導体と反応させて、式(IV):
【0033】
【化5】

の化合物を生成し;前記式(IV)の化合物を式(V):
【0034】
【化6】

によるカルボン酸ヒドロキシイミノと反応させて、式(IV):
【0035】
【化7】

のイソオキサゾリンジエステルを生成し、ここに、式(V)によるカルボン酸ヒドロキシイミノはグリシン誘導ニトリルオキシドをイン・サイチュで反応種として発生し;
式(VI)のイソオキサゾリンジエステルを、1つの反応容器中で式(Ia):
【0036】
【化8】


の化合物を生成する加水分解および水素化分解を行う条件下に付すか、または、代替的に、
式(VI)の化合物を式(VIa):
【0037】
【化9】


の化合物に加水分解し、その後、水素化分解して式(Ia)の化合物を得ること、
の一以上を含む。
【0038】
式(III)のアクリル酸誘導体と反応させ得るインドール誘導体の例は、脱プロトン化インドールの臭化マグネシウム塩である。
【0039】
式(VI)のイソオキサゾリンジエステルは、上流で用いたプロトコルに依存して、ラセミ体、スカルミック (scalemic) または鏡像異性体的に純粋なものであってよい。
【0040】
本発明によるグルタミン酸誘導体の生成方法は、式(VII):
【0041】
【化10】

のアクリレート化合物から、式(VIII):
【0042】
【化11】


の中間体を経て、式IIの化合物を生成することを含むこともできる。
【0043】
本発明のグルタミン酸誘導体の生成方法は、式(IX):
【0044】
【化12】


のグリシンエステル(その結果、グリシンのエステル化によって生成できる)のニトロ化によって、式Vの化合物を生成することを含むこともできる。
【0045】
いくつかの具体例において、前記グルタミン酸誘導体はモナチンであり、グルタミン酸の生成方法を用いて、または、適用して、モナチンの塩、特定の異性体、および内部縮合生成物を生成できる。図1は、本発明の具体例により、モナチンを生成する全スキームを示す。図2〜7は、前記全スキームを含む様々な反応の特定の具体例の詳細をさらに提供する。
【0046】
かくして、図1に示すように、モナチンは、(1)アクリル酸エチルから、中間体2−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル(「EHMA」)を経て、2−ブロモメチルアクリル酸エチル(「EBMA」)を生成し;(2)EBMAを臭化インドールマグネシウム (indole magnesium bromide) (例えば、臭化エチルマグネシウム (ethyl magnesium bromide) とインドールとの反応から生成できる)と反応させて、2−インドリルメチルアクリル酸エチル(「EIMA」)を生成し;(3)EIMAをクロロヒドロキシイミノ酢酸エチル(「ECHA」)(例えば、グリシンエチルエステル塩酸から生成される)と反応させて、イソオキサゾリンジエチルエステル(「ID」)を生成し;ついで、(4)IDを加水分解および水素化分解反応に付して、モナチンの4つのジアステレオマーを生成することによって、生じる。示すように、この方法は、鏡像異性体対の一方のセットを他方のセットから分離すること、すなわち、RR/SS鏡像異性体対をRS/SR鏡像異性体対から分離することをさらに、含むことができる。
【0047】
図2は、実施例1と共に、EHMAを調製する手法の詳細を提供する。特に、EHMAは二相反応混合物中のアクリル酸エチルから生成される。本発明者らは、’482特許に教示があるようにニートで、すなわち、無溶液系であるよりも、より少ない副生成物しか生じないことを見いだした。この発見は、抽出による標的生成物の単離を可能とし、その単離方法は蒸留方法よりも良好な選択を与え、その結果、下流生成物の収率および純度を向上させ、かつ、大規模合成と適合するという利点を提供できる。
【0048】
図3は、EBMAを調製する手法の詳細を提供する。特に、EBMAはEHMAの濃HBr水溶液との反応から生成される。本発明者らは、濃硫酸の使用がより高速かつより選択的な反応をもたらし、より少ない副生成物および生成物のより簡単な単離をもたらすことを見いだした。EBMAは、ヘキサンでの抽出によって反応混合物から回収する。ヘキサン層を炭酸水素ナトリウム溶液で数回洗浄して、酸性残渣を除去する。ついで、ヘキサンを蒸発によって除去して、粗EBMA生成物を得る。この粗混合物を真空下で蒸留して、純粋なEBMAを得る。
【0049】
図4は、ECHAを調製する手法の詳細を提供する。特に、ECHAはグリシンエチルエステル塩酸と塩化ニトロシルガスとの反応によって調製される。塩化ニトロシルガスは、亜硝酸ナトリウムと濃塩酸水との反応によってイン・サイチュで発生させる。反応は、高度に発熱性であり、0℃を下回る温度にて行う。塩化水素ガスを、まず、反応混合物全体に散布して、濃塩酸溶液を生じる。ついで、亜硝酸ナトリウムの溶液をゆっくりと反応混合物に投入して塩化ニトロシルガスを発生させる。これらのステップを繰り返し、向上した収率でECHAを生じる。ついで、反応混合物をクロロホルムで抽出し、溶媒をフラッシュ蒸留して、油状残渣を残す。この油状残渣は周囲温度に冷却することによって結晶化する。結晶を冷ヘキサンで洗浄して副生成物を除去し、真空乾燥して純粋な白色生成物を生成する。本発明者らは、生成物をクロロホルム中に抽出すると、向上した純度および回収率のECHAが得られることを見いだした。以前の実験において、ECHAは水性反応混合物から直接結晶化させた。この手順は回収率が悪く、大規模化できず、再現性なく、単離した生成物は塩化ナトリウムで汚れていた。
【0050】
図5は、実施例9と共に、EIMAを調製する手法の詳細を提供する。特に、EIMAは塩化メチルマグネシウムをテトラヒドロフラン(THF)中のインドールの溶液に添加して塩化インドールマグネシウムを生じることから生成する。温度が30℃を超えないことを保証しつつ、典型的に、反応を6〜10℃にて行った。ついで、THF中のEBMAの溶液を、反応温度が5℃を超えないことを保証しつつ、必要な時間をかけて添加した。EBMA/THF添加の間、反応は、高度に発熱性であり、投入速度を変えることによって反応温度を制御する。ついで、反応を水で停止し、その後相分離した。代替的に、反応を塩化アンモニウム飽和水溶液で停止し、その後、塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄することができる。水中のTHFの混和性のため、ついで、水相を酢酸エチルで(2×)抽出する。合わせた有機相を減圧濃縮する。ついで、粗有機残渣を短絡蒸留(SPD)ユニットのフィード容器内に加熱移動する。物質をSPDに通すことは、高沸点副生成物からのEIMA生成物の分離を容易にし、かくして、熱分解を制限する。45〜54%の間の典型的な収率および70〜75%m/mの間の生成物純度が達成された。
【0051】
図6は、IDを調製する手法の詳細を提供する。特に、イソオキサゾリンジエステルは、トリエチルアミンのごときアミン塩基の存在下、クロロホルムのごとき溶媒中で、EIMAとECHAの反応によって生成される。反応は、’482特許の教示よりも6倍まで濃縮して行い、バッチ体積を著しく削減できる。反応は、大規模で2〜4時間以内に完了し、’482特許に記載するように、より長く(24時間まで)反応させる必要がない。より高濃度およびより短い反応時間は、大規模でより効率的な生成をもたらす。反応を水で停止し、有機相を分離する。溶媒の除去は、粗IDを生じ、それを水/エタノールからの再結晶によって精製して、純粋IDを得る。70%を超える純度のEIMAがこの反応でよく機能する。
【0052】
図7は、モナチンを調製し、精製する手法の詳細を提供する。特に、IDを水素化分解に付す場合、水素化分解に用いるマトリックスは、系の塩基性のため、化学的加水分解を開始するのに十分である。最も好ましくは、この水素化分解はアルコール/水系中室温よりもわずかに高い温度にて行う。そのように生じたモナチンはラセミ体であるか、または、上流でキラルエステル基または酵素加水分解が採用されたならば、鏡像異性体的に豊富化されている。
【0053】
生じたジアステレオマーは分別結晶によって分離することができる。RR/SSジアステレオマーまたは鏡像異性体的に豊富化されたそれらの変異体は主に水性の流れから沈殿させることができる。RS/SRジアステレオマーまたは鏡像異性体的に豊富化されたそれらの変異体はエタノール豊富な流れから沈殿させることができる。
【0054】
ジアステレオマーがジアステレオマー的に純粋な形態で単離されたならば、鏡像異性体純度はキラルアミンでの塩の精製によって豊富化できる。シンコナアルカロイド、アルキルグルカミンおよびフェネチルアミン誘導体はこの点で有用であろう。
【0055】
1つのジアステレオマーが必要ならば、ジアステレオマーは窒素末端にアミドを発生させることによって相互転換できる。アミド発生ステップの具体例は、RがHであって、それ以外がベンゾイルである、式Iのベンズアミド誘導体の発生であるが;他のアシル基を用いることもできる。
【0056】
概略、R基の1つがベンゾイルである、式(I)の化合物のアミド官能性は化学的加水分解によって除去でき、式(Ia):
【0057】
【化13】


の化合物を生成し、それから、個々のジアステレオマーを、上記のように結晶化によって単離できる。このアシル化、エピ化および加水分解のサイクルを数回、単一のジアステレオマーを生成する時間、繰り返せる。
【0058】
示すように、VIaの化学的加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア水を用いた水ベースマトリックス中で達成することができる。限定されないが、エタノール、メタノールまたはジオキサンのごとき水混和性有機溶媒を共溶媒として用いて、このステップでのジエステル溶解性を促進できる。
【0059】
式(II)の化合物を生成するいくつかの具体例は、アクリル酸誘導体として、アルキルまたはアリールの2−クロロメチルアクリル酸エステルを、前記アルキルまたはアリールの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル中間体を経て、生成することを含む。いくつかの具体例は、2−クロロメチルアクリル酸エチル(「ECMA」)を、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル中間体を経て、生成することを、EBMAを生成する代替として、含む。実施例2および3は、EHMAからECMAを生成するための同一プロトコルを提供する。
【0060】
驚くべき発見は、当業者の予想に反して、’482特許に開示された方法において塩化物を臭化物に置き換えられただけではなく、より良くないにしても、比較可能な程度の結果も提供するということであり、本発明者らは、より効率的、コスト的に有効な方法の必要性を解決した。通常、当業者は、塩化物を臭化物に置き換えて、反応を全て進行させれば、著しいプロセス変更が必要であり、いずれにせよ、反応は緩慢に進行するであると理解する。この予想に一致して、本発明者らは、塩化チオニルを用いたとき、反応は求める生成物を生成しなかった。しかし、驚くべきことに、塩化水素を用いた場合、反応は非常に良く進行した。
【0061】
より詳しくは、’482特許の方法は、EBMAをグリニアル試薬への付加生成物として用いる。EHMAを生成するベイリス・ヒルマン (Baylis-Hillman) 反応で良好な収率が得られるが、EHMAの臭素化は、効率的な反応のために高濃度HBr溶液を必要とする。商業的に入手可能な最も高濃度のHBrはわずか48%であり、これだけの使用では、非常に効率が悪い。このことは、HBrを(テトラリンおよび臭素から)生成すべきであるか、または、HBrガスシリンダーを用いてHBrガスを反応混合物全体に散布すべきことを、意味する。これらの方法で良好な収率が得られるが、大規模では経済的に適していない。本発明者らによって例示されたように、硫酸を脱水剤として用いてHBrを濃縮できるが、これらの特定の反応からの収率は非常に低かった。EHMAおよび臭素化プロセスの全収率は約30%に過ぎなかった。
【0062】
EBMAの調製に固有のコストおよび上記の非効率を埋め合わせるために、潜在的に安上がりのクロロ誘導体(「ECMA」)の調製を検討した。ECMAの純度は約92%であり、副生成物の形成は最小限であった。32%HClガス中でHClガスを添加して反応を行うことは有効であることが証明された。冷条件下でのHClガスの添加および容器の密閉は、反応がHCl豊富な環境下で行われ、十分な反応を生じることを保証した。
【0063】
式(II)化合物の生成のいくつかの具体例は、2−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルおよび臭化水素水溶液および硫酸を含む反応混合物中で2−ブロモメチルアクリル酸アルキルを生成し、および/または、そのように生成された2−ブロモメチルアクリル酸アルキルを、2−インドリルメチルアクリル酸アルキルを生じるのに使う前に、精製することを含む。実施例4は、本発明の具体例において、2−ブロモメチルアクリル酸アルキルを生成するプロトコルを提供する。
【0064】
式(II)化合物の生成のいくつかの具体例は、EHMAおよび臭化水素水溶液および硫酸を含む反応混合物中で2−ブロモメチルアクリル酸エチル(「EBMA」)を生成し、および、そのように生成されたEBMAを、2−インドリルメチルアクリル酸エチル(「EIMA」)を生じるのに使う前に、反応混合物から精製することを含む。実施例5は、EBMAを生成する本発明の具体例によるプロトコルを提供する。
【0065】
’482特許はEBMAを生成する方法を開示し、それはニートなアクリル酸エチル中で行われ、臭化水素ガスを用いる。本発明の方法と対象的に、’482の反応方法は、EBMAに対して選択的であり(<50%)、GC痕跡で目に見える多数の副生成物を生成し、小規模で約80%の純度の生成物を生成し、その純度は全く再現不可能であり、大規模の達成が困難であり、原料のかなりの損失を生じる。EBMAを生成する本発明の方法の具体例は妥当な収率で95%を超える純度を提供できる。
【0066】
式(IV)化合物を生成するいくつかの具体例は、2−クロロメチルアクリル酸アルキルをハロゲン化インドールマグネシウムと反応させることによって2−インドリルメチルアクリル酸アルキルを生成することを含む、1つの具体例は、ECMAを臭化インドールマグネシウムと反応させて2−インドリルメチルアクリル酸アルキル(「EIMA」)を生成することを含む。実施例6は、本発明の具体例により、ECMAからEIMAを生成するプロトコルを提供する。当業者が塩化物は反応で機能しない、または、より高温にするごとき著しいプロセス変化を必要とし、それでも遅い反応しか得られない、と予測するであろうが、ここでも再び、本発明者らは、驚くべきことに、塩化物反応を開発し、著しいプロセス変化なく、臭化物と比較可能な反応効率であった。(例えば、[AR Katritzy, O Meth-Cohn, CW Rees Eds; 1955, Volume 1, pg. 107: "iodide and bromide are the best leaving groups, alkyl chlorides react at much slower rates."]を参照せよ。)
【0067】
本発明の具体例によれば、2−ハロメチルアクリル酸アルキルとハロゲン化インドールマグネシウムの反応からの2−インドリルメチルアクリル酸アルキルは、IDを生成する反応において試薬として使用する前に、蒸留法を用いて精製し、および/または、蒸留によって精製した2−インドリルメチルアクリル酸アルキルを用いてイソオキサゾリンジエステルを精製する。「精製された」は、標的化合物が反応混合物中で見いだされるよりもより少ない不純物を含有することを意味するが、標的化合物は依然としてかなりの不純物を含有していてもよい。例えば、蒸留を用いて反応混合物から70%純度レベルまで単離した2−インドリルメチルアクル酸アルキルは「精製された」と見なされるであろう。実施例7は、包括的に、EIMAを調製する方法を記載し、精製手順の比較およびID収率への影響を提示する。実施例8から10は、EBMAからEIMAを生成するプロトコルを例示する。
【0068】
本発明者らは、驚くべきことに、蒸留法が所望する生成と合致することを発見し、蒸留法は非揮発性粘稠油状物質の精製らしくない方法であるとの当業者の理解に反する。事実、当該分野の予想と一致して、古典的な蒸留法は2L規模で著しい分解を生じた。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、ワイプトフィルム短絡蒸留 (a wiped-film short path distillation) が、生成物を高沸点副生成物から成功裏に分離できることを発見した。蒸留による精製のクロマトグラフィーに対する利点は、前者の方法は大規模化可能であり、すなわち、大規模生成に適合するが、後者の方法はできないことである。さらに、通常、当業者は、適当な収率を達成するためには高純度が望ましいと予測する。この予測に一致して、例えば、EBMA出発物質の純度がグリニアル試薬の性能に著しい効果を有する。90%を下回る純度のEBMAを用いたとき、インドールの転換が著しく低下したことを特記する。このことは、反応にさらなるモル当量のグリニアル試薬を必要とさせ、生成物の約10%の収率の全体的な低下もたらした。しかしながら、発明者らは、驚くべきことに、50%を超える純度、好ましくは70%を超える純度のEIMAを用いて、大規模で、小規模クロマトグラフィー収率に相当する収率のイソオキサゾリンジエステル(「ID」)を生成できることを発見した。
【0069】
本発明のいくつかの具体例は、反応混合物をガス性HClで飽和することによって、クロロヒドロキシイミノ酢酸エチル(「ECHA」)の生成を容易にし、および/または、結晶化法ではなく抽出を用いてクロロヒドロキシイミノ酢酸エチルを単離することを含む。実施例11は、クロロヒドロキシイミノ酢酸エチル(「ECHA」)を調製するプロトコルを記載し、本発明の方法からの収率を先行技術と比較する。実施例12は、本発明によるECHAの大規模生成の例を提供する。実施例13は、本発明によるECHA生成の他の例を提供する。ECHAを生成するこれらの新たな方法は、’482特許(70g規模にて約25%、約140g規模にて20%未満の収率を生じた)と比較して、140および210g規模にてより高い収率(平均約56.7%)をもたらし、大規模化可能な方法である。
【0070】
本発明のいくつかの具体例によれば、式VIのジエステルはイソオキサゾリンジエステル(「ID」)であり、IDはEIMAから生成される。実施例14は、EIMAからIDを生成する本発明によるプロトコルを例示する。
【0071】
式(VI)化合物の生成および水素化分解のいくつかの具体例は、マルチステップ法ではなく、ワンステップ法で、IDからモナチンを生成することを含み、それは、イソオキサゾリジンジエステルの加水分解および還元の双方を達成する。本発明のいくつかの具体例によれば、ロジウム触媒および、好ましくは、スポンジ状ニッケル触媒が、ワンステップ加水分解/水素化反応を促進する。いくつかの具体例によれば、このワンステップ加水分解/水素化は、ナトリウムアマルガム、炭素上ロジウム、炭素上パラジウム、炭素上白金、アルミナ上パラジウム、炭素上ルテニウム、ラネーニッケル、およびスポンジ状ニッケル触媒(例えば、AMCからの一連のスポンジ状ニッケル触媒、すなわち、A7063, A7000, A5200, A5000, A4000)、およびKata Levina 6564のごとき支持ニッケル触媒から選択される触媒を用いる。いくつかの具体例によれば、前記触媒は、5%ナトリウムアマルガム、ニッケルA7063、水中に分散したニッケルA7000、油中に分散したニッケルA7000、ニッケルA5200、水中に分散したニッケルA5000、ニッケルA4000、および炭素上5%ロジウムから選択される。実施例14は、IDの調製の具体例を例示する。実施例15〜23は、金属触媒を用いてモナチンを生成するためのIDの還元を例示する。実施例15および22は、前記4つのジアステレオマーの2対の鏡像異性体への分離の方法を例示する。
【0072】
モナチンを生成するための、さらに、前記条件下でのIDの還元に対するスポンジ状ニッケルおよびロジウム触媒の成功した適用は、当該技術分野の教示に反した予期されない驚くべき結果であった。イソオキサゾリンジエステル(または二酸)の還元は、必要とされる生成物の成功した生成に影響する複雑な一連の事象、順序および相対速度を含む。ジエステルが考えられるならば、当該事象は、エステル加水分解(2つの加水分解事象)、窒素−酸素結合還元およびプソイドイミン(炭素−窒素二重結合)の還元と称することができる。成功した変換は、窒素−酸素結合前の炭素−窒素二重結合の還元と関連し、そのすべては、敏感なインドール核の存在下で実行されなければならない。万一、この条件(炭素−窒素二重結合の還元に先行する窒素−酸素結合還元)が満足されない場合、そのように形成された脂肪族イミンは、高度に容易な加水分解に付され、ピルビン酸(α−ケト酸)誘導体を生じるであろう。還元条件下、このタイプのピルビン酸(α−ケト酸)誘導体は、必要とされるアミノ酸誘導体に容易に変換できないα−ヒドロキシ酸誘導体を生じる。
【0073】
かかる状況では、単一電子移動を含む還元技術を典型的に用いて、炭素−窒素二重結合が最初に還元されることを保証する。これらの技術のうち、溶解性金属還元が顕著であると考えられる。反応機構的には、かかる技術は、単一電子のπ−系への移動を経て開始され、その速度は、電子を受取る系がヘテロ原子(酸素または窒素のごとき)を含有する場合に増強される。このタイプの還元では、事象の順序に関して不明瞭さはほとんどなく、これは、ナトリウム金属(典型的には、アマルガムとして)のごとき単一電子移動剤の使用が、選択の還元プロトコルになるであろうことを示唆する(5,128,482を参照)。また、ヒドロキシ化合物の生成は、溶解性金属還元、特に、ヨウ化サマリウムを用いる場合に、問題かもしれない(Sun Ho Jung, Jee Eun Lee and Hun Yeong Koh, Bull. Korean Chem. Soc., 19, 33 (1998))。さらに、ナトリウム/水銀アマルガムを用いた溶解性金属還元は、大過剰のナトリウムアマルガム(7モル当量の5%アマルガムとしてのナトリウム)の使用を必要とする。これもまた、ナトリウムアマルガムの大量の調製のため高価で有毒である大量の水銀を必要とし、このプロセスは大規模では安全でない。加えて、食品用生成物の調製における水銀の使用は、適切とは考えられない。結果的に、この手法はIDを還元するのに適切ではなかった。
【0074】
しかしながら、触媒金属/水素系は、必要とされる反応性につきかかる明確な反応機構的な偏りを示さない。ニッケル触媒 (K.B.G. Torssell, O. Zeuthen, Acta Chem. Scand. Ser. B, 32, 118 (1978); R.H. Wollenberg, J.E. Goldstein, Synthesis, 1980, 757; A.P. Kozikowski, M. Adamczyk, Tetrahedron Lett., 23, 3123 (1982); S.F. Martin, B. Dupre, Tetrahedron Lett., 24, 1337 (1983); D.P. Curran, J. Am. Chem. Soc., 104, 4024 (1982); D.P. Curran, J. Am. Chem. Soc., 105, 5826 (1983))およびパラジウム触媒(Sun Ho Jung, Jee Eun Lee, Hyun Jung Sung and Soon Ok Kim, Bull. Korean Chem. Soc., 17, 2 (1996))の双方は、水素化分解条件下、イソオキサゾリンの還元においてヒドロキシ化合物を生成すること−アルカリ水溶液中のニッケル触媒によるオキシムの還元と一致する結果が報告されている(B. Staskun and T. van Els, J. Chem. Soc., 1966, 531)。厳密な無水条件下で、ニッケル触媒作用を用いて、無水安息香酸の存在下、単純なイソオキサゾリンジエステルの水素化分解を達成した(Virgil Helaine and Jean Bolte, Tetrahedron Asymmetry, 9, 3855 (1998))。しかしながら、得られたアミドの加水分解に必要な条件は、この手法を現在の適用には余り魅力的でなくした。
【0075】
触媒水素化分解を用いるイソオキサゾリンジエステルの還元は、基質が酸およびエステル形態の双方である場合に検討された。確認された制限された先例に基づいて、無水条件は最初に使用された。Bolteにより使用されたものに類似する条件は、満足な結果を与えなかった。無水条件(触媒としてのニッケルおよびパラジウム種の双方)下で検討された条件には、満足な結果を与えるものはなかった。また、水性条件(Staskunの先行技術により教示された非塩基性、または制限されたアルカリ性)は、必要とされる結果を生じなかった。同様に、酸性媒体は必要とされる結果を与えなかった。
【0076】
予期せぬことには、必要とされる種が触媒水素化分解の主生成物になるのは、強アルカリ条件下だけであった。パラジウムまたはルテニウム触媒作用は不適当な反応経路および生成物を生じ、その上、白金触媒作用が反応を有効に促進せず、5%だけの所望の生成物が生成された。パラジウム触媒作用は、主経路として不適当な経路を促進しつつ、必要とされる生成物を生成した。ニッケル触媒作用を用いた場合、若干より多くの成功が観察されたが、これは全体的な結果ではなかった。支持されたニッケル触媒(Kata Leunaにより供給されたもののごとき)は生成物を生成しなかった。同様に、ロジウム触媒作用の結果、必要とされる生成物を生成させた。最終的には、「スポンジ状ニッケル」と緩く記載された触媒が、エタノールアルカリ金属水酸化物水溶液中のほぼ室温の比較的低い水素圧力(約1〜5バールのオーダー)下の必要とされる変換(最も具体的には、A7063、A4000、A5000、A5200、A7000、好ましくは、Active Metals Corporationにより供給された水分散形態における)を達成するのに特に適当であると判明したと決定された。
【0077】
複数の具体例が本明細書に開示されているが、依然として、本発明の他の実施例が、以下の詳細な記載から当業者に明らかになり、それは、本発明の例示的な具体例を示し記載する。本明細書の記載から理解されるように、本発明は、本発明の精神および範囲に逸脱することなく、種々の態様において変形できる。結果的に、図面、および実施例を含めた詳細な明細書は、限定的ではなく、事実上の例示とみなされるべきである。
【0078】
特記がない限り、本明細書および特許請求の範囲に用いた成分の量、反応条件などを表す全ての数は、用語「約」により修飾されていると理解されるべきである。結果的に、反対に示されない限り、かかる数は、本発明により得られるように追求される所望の特性に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する等価物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字の数および通常の丸め技術に徴して解釈されるべきである。
【0079】
本発明の広範囲を記載した数値範囲およびパラメーターは近似値であるが、実施例に示した数値はできる限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定で見出された標準偏差に必ず起因するある種の誤差を本質的に含む。
【0080】
本発明は、今や以下の非制限の例を参照して、より詳細に記載される:
【0081】
実施例1
水に溶解した、2〜4モル過剰のパラホルムアルデヒド(またはホルマリン水溶液)を、塩基性触媒(1〜20モル%DABCOまたはDBU)を溶解したアクリル酸エチル溶液と混合した。反応混合物を(室温にて)pH5に酸性化後、混合物を水非混合性溶媒(クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン)で抽出した。有機層を水で洗浄し、有機相を真空下で蒸留して、溶媒を除去した。アクリル酸エチルの転換は約60〜80%の範囲であり、生成物のEHMAを純度>85%で単離した。
【0082】
実施例2
ECMAの調製
EHMA(100g、0.77mol)および塩化亜鉛(102g)を温度計および冷却器を備えた丸底フラスコに充填した。混合物を4時間加熱還流(80℃)した。ついで、反応混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(3×100g)で抽出した。その混合物を真空(40〜50℃)下で濃縮して、純度85%の生成物(7.5g、6.5%収率)を得た。
【0083】
実施例3
ECMAの調製
EHMA(5g、0.038mol)を濃HCl(32%)に溶解し、溶液を塩/氷浴を用いて2℃に冷却した。ついで、HClガスを10分間溶液を通して散布した。反応器を密閉し、一晩室温に暖めたままにした。溶液が2相に分離したことを観察した。その混合物をヘキサン(3×20ml)で抽出した。混合物を真空(50℃、10mmHg)下で濃縮して、GCによる純度92%の生成物を得た。
【0084】
実施例4
EBMAの調製
EHMAを48%の水性臭化水素酸および濃硫酸の混合物に溶解し、混合物を25℃で24時間撹拌した。ついで、反応混合物を水非混合性溶媒(石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン)で抽出し、有機相を炭酸水素ナトリウムの希薄溶液で洗浄し、粗生成物を真空下、濃縮して、純度>95%の式IIの化合物を得た。
【0085】
実施例5
EBMAのパイロットプラント規模の調製
パラホルムアルデヒド(18.75kg、625モル)を反応器中の水(62.5kg)に添加した。この混合物に、DABCO(0.10当量、2.8kg、25モル)およびアクリル酸エチル(25kg、250モル)を添加した。内容物を85℃に加熱した。反応の進行は、異なる反応時間の間隔で集めた試料のGC分析によってモニターした。最大の転換に達した後、反応混合物を25℃に冷却し、硫酸水溶液(4.35kgの20%溶液)で処理して、混合物のpHを4.5に調整した。反応混合物を、反応器にポンプ注入したヘキサン(16.5kg)で抽出した。ついで、内容物を、30分間撹拌後、撹拌機を止め、内容物を30分間沈降させた。相を分離し、水相を反応器にポンプで戻し注入した。このプロセスを2回繰り返して、アクリル酸エチルおよびいくらかの副生成物の除去を促進した。ついで、残留水相を1,2−ジクロロエタン(DCE、20kg)で抽出した。内容物を30分間撹拌し、撹拌機を止め、混合物を沈降させた(これには、通常2時間必要であった)。ついで、相を分離し、水相を反応器に戻し、抽出プロセスを2回繰り返した。ついで、DCE抽出物を残りのパラホルムアルデヒドにつき分析した。これは、抽出物の試料2gを100mlの亜硫酸ナトリウムの125g/l溶液に添加することにより行った。3滴のフェノールフタレインを添加し、混合物を0.5N硫酸で無色の終点まで滴定した。パラホルムアルデヒドが存在しない場合、DCEは減圧下、40℃〜60℃で蒸留した。ついで、温度を60℃に30分間維持して、残留水およびDCEが除去されることを保証した。2−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル(EHMA)(27kg)を含有する得られた残渣を含水量につき分析した。
【0086】
EHMA(27kg、207モル)を反応器に充填した。HBr(48%、3.25当量、112kg、672mol)を添加し、ついで、混合物を12℃に冷却した。12℃にて、硫酸(2.0当量、39kg、398mol)を、内部温度が15℃を超えないような速度で添加した。全ての酸の添加後、混合物を室温(約22〜26℃)で一晩撹拌させた。ついで、反応混合物をヘキサン(3×33kg)で抽出した。ヘキサンを反応器に送り込み、30分間撹拌し;30分間沈降させ、ついで、相を分離した。ヘキサン抽出物を炭酸水素ナトリウム水溶液(5%、33kg)で洗浄した。混合物を30分間撹拌し、ついで、撹拌機を30分間止めて、相を分離させた。このプロセスを2回繰り返した。ついで、洗浄したヘキサン抽出物を蒸留塔へ移した。ついで、ヘキサンを減圧下、40℃で蒸留した。温度を50℃に増加させて、存在し得るすべての水を除去した。ついで、EBMAを含有する残渣を、高真空ポンプ(80℃/<1mmHg)下で蒸留して、98%純粋な生成物(16.4kg、34%)を得た。
【0087】
実施例6
ECMAを用いた(インドリルメチル)アクリル酸エチルの実験室規模の生成
削り屑状マグネシウム (228mg、1.1当量)を窒素雰囲気下でテトラヒドロフラン(THF)(2mL)で覆った。ついで、THF(2mL)中の臭化エチル(0.70mL、1.1当量)の溶液の数滴を反応を始めるために撹拌せずに添加した。一旦、活発な反応が始まったならば、臭化エチル溶液の残りを滴下し、必要なときに反応を冷やして、氷浴で35℃を下回る温度を維持した。反応混合物を30〜40分間撹拌して、マグネシウムのすべてが消費されることを可能にした。ついで、インドール(1.0g、1.0当量)をTHF(2mL)中の溶液として滴下し、エタンガスを活発に発生させ、必要なときに氷水浴中で冷却した。得られた混合物をさらに30分間撹拌した。ついで、混合物を−10℃に冷却し、THF(2mL)中のECMA(1.49g、1.0当量、純度85%)の溶液を2分間にわたりその冷却溶液に添加した。反応混合物を室温に暖め、この温度でさらに30分間撹拌した。反応は水(10mL)の添加(発熱)により停止させ、2相を分離した。水相を、酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、有機抽出物を合わせ、乾燥(MgSO4)して減圧下で濃縮した。粗生成物を1H NMR分光法によって分析し、約80%の純度で所望の生成物を含むことを示した。
【0088】
実施例7
2−(インドリルメチル)アクリル酸エチル(EIMA)のごとき(インドリルメチル)アクリレートをEBMAのごときブロモメチルアクリレートとの臭化インドールマグネシウムの反応によって調製した。また、別法として、大部分の場合にEBMAを用いたが、クロロメチルアクリレートを用いてもよい。生成したエステルの性質は、アクリル酸メチルまたはエチルのごときブロモメチルまたはクロロメチルのアクリル酸エステルの調製に用いたアクリレート出発物質に依存する。塩化または臭化のインドールマグネシウムを生成するために用いたグリニアル試薬(塩化メチルマグネシウムまたは臭化エチルマグネシウムのごとき)を、削り屑状マグネシウムおよび塩化または臭化のエチルから生成するか、あるいはTHFまたはジエチルエーテル中の溶液として購入してもよい。
【0089】
その反応は水分に敏感であり、窒素またはアルゴンのごとき不活性ガスを用いて、無水条件下で行った。しかしながら、微量の水(<0.03%m/m)は、反応効率に有害作用を有しなく、ナトリウムからの蒸留による溶媒(THFまたはジエチルエーテルのごとき)の予備乾燥は、大規模合成に必要ではなかった。
【0090】
検討過程の間に、所望の生成物の生成に加えて、他の複雑なインドール/アクリレート付加物が生成されることが観察され、いくつかの実験は、試薬の添加の様式および順序の変更を含めて、副生成物形成を最小化しようとして、また、トリエチルアミンまたは酸化マグネシウムのごとき塩基またはキレート剤を添加して、求核インドール窒素での反応を有効に回避することにより行った。しかしながら、副生成物形成における低下は観察されないか、または生成物へのより低い転換が観察された。
【0091】
EBMA出発物質の純度はグリニャール反応の効率に対してかなりの効果を有する。純度<90%のEBMAを用いた場合、インドールの転換のかなりの減少は、恐らく不純物存在によるグリニアル試薬の急冷により特記された。これは、反応に必要なグリニアル試薬のさらなるモル当量、および約10%の生成物収率の全体的な減少を生じさせた。
【0092】
実験室規模(および5,128,482に記載された)で、反応混合物から単離した粗製のEIMAを、大規模精製では実現可能ではないシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。概略、精製の代替方法は選択的な液液抽出、固体である生成物のための結晶化または揮発性油のための蒸留を含む。生成物および副生成物が非常に密接に関連し、有機溶媒中で類似する溶解度を示す場合には、選択的抽出は、精製方法として可能ではなかった。関連するメチルエステル(2−(インドリルメチル)アクリル酸メチル)が純粋な形態でワックス様固体であると判明したが、EIMAが固体として単離されなかったため、結晶化は精製の実現可能な方法であるとは考えなかった。これは、保護されていないインドール部分を含有する化合物が結晶性固体としてしばしば単離されるので、驚くべきことであった。加えて、結晶化によってメチルエステル(2−(インドリルメチル)アクリル酸メチル)を精製する試みは失敗した。蒸留はこの非揮発性粘稠油状物質のための精製の思いもよらない方法であると考えられたが、それを小規模で試み、原則的には可能であることが示された。しかしながら、古典的蒸留が2Lのスケールで繰り返した場合、生成物のかなりの分解を観察した。代替的なワイプトフィルム短絡蒸留(SPD)を以下の表に定義されたパラメーターを用いて試み、それは生成物が高温に曝露される時間を最小化する。これにより、高沸騰の副生成物から成功裡に生成物を分離することを見い出し、70〜75%m/mの純度で所望の生成物を得た。
【0093】
【表1】

【0094】
生成物の分別精製を可能とする<1L規模のビグリュー蒸留によるこの混合物のさらなる精製は、高純度(>90%)だか、非常に低収率(<28%)の所望の生成物を与えた。加熱時間の延長が必要とされたので、この蒸留の拡大は、<15%まで収率のさらなる低下を生じさせ、これはかなりの生成物分解を生じさせた(>50%)。
【0095】
代替法として、わずか70%純粋であったSPD後の物質をクロロヒドロキシイミノ酢酸エチル(ECHA)との引き続いての環化付加反応で試験して、イソオキサゾリンジエチルエステル(ID)を得た。得られた結果は、純度>70%のEIMAをさらなる精製なくして環化付加工程に成功裡に使用できることを示した。このように、発明者らは、大規模のEIMAの完全な精製の複雑な問題を克服できた。EIMA調製にこの下流の処理プロトコルを用いて、15L規模の生成物収率は45〜54%の範囲にあり、10回の試行の平均収率は、49%であった。これは、5,128,482(47%)に記載の収率に相当し、発明者らの実験室内の検討(55〜65%)で得られた収率よりわずかだけ低かった。
【0096】
実施例8
EBMAを用いたEIMAの調製
削り屑状マグネシウム (13.36g、1.1当量)を窒素雰囲気下でテトラヒドロフラン(THF)(125mL)で覆った。ついで、THF(125mL)中の臭化エチル(41.0mL、1.1当量)の約2mLの溶液を、反応を始めるために撹拌なくして、滴下した。一旦活発な反応が始まったならば、臭化エチル溶液の残りを滴下し、必要なときに反応を冷やして、氷浴で35℃を下回る温度を維持した。反応混合物は、マグネシウムのすべてが消費されることを可能にするように30〜40分間撹拌した。ついで、インドール(58.5g、1.0当量)をTHF(125mL)中の溶液として滴下し、エタンガスを活発に発生させ、必要なときに氷水浴中で冷却した。得られた混合物を、さらに30分間撹拌した。ついで、混合物を−10℃に冷却し、THF(125mL)中の2−(ブロモメチル)アクリル酸エチル(104.0g)(実施例1)の溶液を、10分間にわたり冷却溶液に添加した。反応混合物を室温に暖め、この温度でさらに30分間撹拌した。反応は、20分間にわたり水(200mL)の滴下(発熱)により停止し、2相を分離した。水相を、酢酸エチル(300mL)で抽出し、有機抽出物を合わせ、乾燥(MgSO4)し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(500gのシリカ、溶離液としての10%EtOAcヘキサン)によって精製して、黄白色油として純粋な生成物(75.5g、66%)を得た。
【0097】
実施例9
予め形成したグリニアル試薬を用いるEIMAの実験室規模の生成
インドール/THF溶液(10.9g、94.5mmolのインドールを含有する33%m/m、33g)を、反応器に充填し、窒素雰囲気下0℃〜5℃に冷却した。ついで、予め形成したグリニアル試薬(塩化メチルマグネシウム、22%m/m、34.5g、102.5mmol)を、反応温度が30℃を超えないことを保証しつつ、10〜30分間滴下した。ついで、反応混合物をさらに45分間撹拌した。2−(ブロモメチル)アクリル酸エチル(EBMA)/THF(48%m/m、42g、103.6mmol)の溶液を、反応温度が5℃(−10℃〜5℃)を超えないことを保証しつつ、15〜30分間滴下し、これらの反応条件下でさらに1時間維持した。
【0098】
ついで、反応混合物を、反応温度が30℃〜35℃を超えないことを保証しつつ、水(40cm)で急冷した。有機相および水相を分離した。水中のTHFの混和性により、水相を、酢酸エチル(2×100cm)で2回抽出した。有機画分(THF/酢酸エチル)を合わせ、真空(5〜10mbar)下40℃〜90℃で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル9:1)によって精製して、EIMA(13.7g、64%)を得た。
【0099】
実施例10
EIMAのベンチスケール生成
インドール/THF溶液(2kg、17.1モルのインドールを含有する5.88kg、34%m/m)を、反応器に充填し、窒素雰囲気下の0℃に冷却した。グリニアル試薬(6.32kg、22%m/m、1.39kg、18.8モルの塩化メチルマグネシウムを含有する)を105分間にわたり充填し、反応器温度を6℃〜10℃に維持した。反応混合物を前記反応条件下でさらに30分間撹拌した。ついで、EBMA/THF溶液(6.87kg、46%m/m、17.1モル)を、3℃〜5.0℃の反応温度を維持しつつ、120分間添加し、さらに60分間撹拌した。ついで、反応混合物を水(7.5kg)で急冷し、塩を溶解するために約20℃に加熱した。水相および有機相を分離させ、水相を酢酸エチル(7.5kg、10.5kg)で2回抽出した。酢酸エチル/THF相を合わせ、5〜10mbarの真空下40〜90℃で濃縮した。有機残渣を短絡蒸留ユニットを通過させて、「短絡蒸留単位プロセスパラメーター」と題する表に特定される以下の条件下で高沸騰の成分の除去を促進した。
【0100】
留出物(2.38kg)は、有効なHPLC分析として76.8%m/m EIMAを含有した(46.5%収率)。
【0101】
実施例11
ECHAの実験室規模の生成
クロロヒドロキシイミノ酢酸エチル(ECHA)を亜硝酸ナトリウム水溶液およびHClからの塩化ニトロシルガスのイン・サイチュ発生によりグリシンエチルエステル塩酸から生成できる。特に、グリシンエチルエステHClを水に溶解する。これに、濃HCl溶液(32%)を添加し、反応混合物を<10℃に冷却する。ついで、HClガスを反応混合物に通気する。亜硝酸ナトリウム水溶液を温度を<10℃に維持しつつ、反応器に投入する。HClガスを反応器に再度通気した後、亜硝酸ナトリウム水溶液の別の部分に通気する。最後に、生成物は、当業者に知られたいずれかの適切な手段によって反応混合物から精製する。例えば、反応混合物をさらなる期間撹拌し、ついで、室温にて水非混合性溶媒(ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素)で抽出して、反応混合物から生成物を取り出す。有機抽出物を乾燥剤で乾燥し、溶媒を流し去る。油性残渣が残り、それを冷却で結晶化する。結晶をろ過し、適切な溶媒で洗浄して、精製したECHAを得た。
【0102】
実施例12
ECHAの大規模生成
グリシンエチルエステル塩酸(6.3kg、0.045kmol)を塩酸(32%、5.13kg)に溶解した。溶液を0℃に冷却し、塩酸ガスを温度を<5℃に維持しつつ、散布用チューブを介して反応器に1時間通気した。ついで、反応混合物を−5℃に冷却した。ついで、水(4.5L)中の亜硝酸ナトリウム(3.11kg)の溶液を、温度を−5℃〜0℃に維持しつつ、ダイアフラムポンプを用いて、反応器に投入した。この操作は1時間以内に完了した。ガスHClの別の部分を0〜5℃にて1時間反応器に散布した。この後、水(4.5L)中の亜硝酸ナトリウム(3.11kg)の別の部分を、温度を−5℃〜0℃に維持しつつ、1時間添加した。反応混合物をさらなる時間撹拌し、ついで、周囲温度にてクロロホルム(3×2kg)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥(MgSO4)し、減圧下で(40℃)蒸留した。周囲温度への冷却に際して結晶化した油状残渣が残った。結晶をろ過し、5℃のヘキサン(2kg)で洗浄した。結晶を真空下で乾燥させて、(NMRにより)純粋な白色生成物(2.53kg、36.9%)を得た。10試行にわたるECHA収率は、31.4〜51.2%の範囲にあり、平均39.8%であった。
【0103】
実施例13
ECHAの実験室規模の調製
反応は、機械的オーバーヘッドプロペラタイプのスターラーおよび反応混合物の表面を下回り配置した散布用チューブを備えた、1Lのバップル付きジャケット式反応器中で行った。グリシンエチルエステル塩酸(210g、1.50モル)を水(270mL)に溶解し、反応器に添加した。これに、塩酸(32%、54.7g、1.52モル)を添加した。溶液を0℃に冷却し、塩酸ガスを散布用チューブを介して反応器に30分間通気した。ガスは、5℃未満で酸混合物の温度を維持しつつ、滴下漏斗を用いて、濃硫酸(98%、100mL)に水性塩酸(32%、100mL)を添加することにより発生した。ついで、反応混合物を−5℃に冷却した。ついで、水(150mL)中の亜硝酸ナトリウム(103.5g、1.50モル)の溶液を、温度を−5℃〜0℃に維持しつつ、ダイアフラムポンプを用いて、反応器へ投入した。この操作は1時間以内に完了した。ガスHCl(例えば、100mL HClおよび100mL HSO)の別の部分を0〜5℃で30分間反応器に散布した。この後、水(150mL)中の亜硝酸ナトリウム(103.5g、1.50モル)の別の部分を温度を−5℃〜0℃に維持しつつ、1時間添加した。反応混合物をさらに30分間撹拌し、ついで、周囲温度のクロロホルム(3×200mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥(MgSO4)し、減圧(40℃)下で蒸発させた。周囲温度に冷却するのに際して結晶化した油性残渣が残った。結晶(192.4g)を5℃で1時間ヘキサン(200mL)と撹拌し、ついで、ろ過した。結晶を真空下で乾燥させて、クロロヒドロキシイミノ酢酸エチル生成物(122.1g、0.81モル、53.9%)を得た。
【0104】
実施例14
イソオキサゾリンジエステルの調製
(インドリルメチル)アクリル酸エチル(57.3g)(実施例2)をクロロホルム(675mL)に溶解し、トリエチルアミン(50.6g、2.0当量)で処理した。クロロホルム(555mL)中のECHA(45.5g、1.2当量)(実施例11〜13)を室温で2時間滴下した。この時点の後に、LC分析は反応が完了したことを示し、ついで、混合物を水(400mL)で急冷した。相を分離し、有機相を水(2×400mL)で洗浄した。有機相を乾燥(MgSO4)し、減圧下で濃縮した。生成物の結晶化をエタノール(100mL)および水(20mL)の添加により促進した。沈殿物をろ過し、真空下で乾燥して、生成物(62.2g、72%)を得た。かくして、この生成物はイソオキサゾリンジエステル、すなわち、式(VI)の化合物であった。
【0105】
実施例15
イソオキサゾリンジエステルの還元、ならびにRR/SSおよびRS/SRモナチンの単離:
スポンジ状ニッケル触媒
反応は1LのLabmax圧力反応器中で行った。水酸化カリウム(33.9g、0.61モル)を90%水性エタノール(400mL)に溶解した。これに、イソオキサゾリンジエステル(50g、0.15モル)(実施例14)および約50%水を含有する湿潤ぺートスとしてスポンジ状ニッケル触媒(Activated Metals Corporationから表示A-7063下で入手可能、50g)を添加した。その混合物を反応器に移し、ついで、反応器を密閉し、300rpmで撹拌しつつ5分間排気させた。反応混合物を20℃に冷却し、水素ガスを5バールの圧力で反応器に供給した。反応器は、反応中にシリンダーを開けたままにした。反応をこれらの条件下で90分間継続した。反応の進行をHPLCによってモニターした。反応の完了に際して、反応器を排出し、触媒をブフナー漏斗上のセライトベッドを介してろ過した。ついで、濾液を当量の氷酢酸(36.4g、0.61モル)で処理した。
【0106】
エタノールを減圧下で除去し、反応混合物を約100mLの体積に濃縮した。その混合物を一晩静置させて、RR/SSモナチンが水溶液から沈殿することを可能にした。濾過によって分離されたRR/SSモナチン(15.8g)は、LCによりわずか90%純粋であり、それをpH9.3まで、水(80mL)およびアンモニア水(8.4mL)での処理によって再結晶した。この後、50%水性酢酸(14.7mL)で酸性化した。これにより、LCによって示された94%の純度のRR/SSモナチン(12.1g)を得た。
【0107】
再結晶を繰り返して、11.8gの96%RR/SSモナチンを得た。炭処理(3%炭、354mg)でのさらなる再結晶により、純度97.7%の10.6gのRR/SSモナチンを得た。
【0108】
反応からの母液を80mLの体積に濃縮して、エタノール(300mL)で処理した。RS/SRモナチンを溶液から一晩沈殿させた。
【0109】
実施例16
イソオキサゾリンジエステルの還元:ロジウム/炭素触媒
イソオキサゾリンジエステル(0.25g)を、室温で水酸化カリウム(0.16g)のエタノール/水溶液(9:1の比、2.5mL)に添加した。炭素触媒上ロジウム(炭素上5%、0.25g)を添加し、系を5バール圧力まで水素ガスを充填した。混合物を室温で水素下2時間撹拌した。HPLC分析は、RR/SS:RS/SRの比 1.4:1を持つ全収率92%のモナチン異性体の混合物を明らかにした。
【0110】
実施例17
イソオキサゾリンジエステルの還元:スポンジ状ニッケル触媒
イソオキサゾリンジエステル(0.25g)を、室温で水酸化カリウム(0.16g)のエタノール/水溶液(9:1の比、2.5mL)に添加した。ニッケル触媒(A4000、水分散、0.25g)および塩化銅(50mg)を添加し、系を水素ガスを5バール圧力まで充填した。混合物を室温で水素下2時間撹拌した。HPLC分析は、RR/SS:RS/SRの比 1.2:1を持つ全収率86%のモナチン異性体の混合物を明らかにした。
【0111】
実施例18
イソオキサゾリンジエステルの還元:スポンジ状ニッケル触媒
イソオキサゾリンジエステル(0.25g)を、室温で水酸化カリウム(0.16g)のエタノール/水溶液(9:1の比、2.5mL)に添加した。ニッケル触媒(A4000、水分散、0.25g)および塩化N−ベンジルシンコニジニウム(14mg)を添加し、系は水素ガスを5バールの圧力まで充填した。混合物を室温で水素下2時間撹拌した。HPLC分析は、RR/SS:RS/SRの比 1.3:1を持つ全収率88%のモナチン異性体の混合物を明らかにした。
【0112】
実施例19
イソオキサゾリンジエステルの還元:スポンジ状ニッケル触媒
イソオキサゾリンジエステル(0.25g)を、室温で水酸化カリウム(0.16g)のエタノール/水溶液(9:1の比、2.5mL)に添加した。ニッケル触媒(A5200、水分散、0.25g)を添加し、系は水素ガスを5バールの圧力まで充填した。その混合物を室温で水素下2時間撹拌した。HPLC分析は、RR/SS:RS/SRの比 1.1:1を持つ全収率92%のモナチン異性体の混合物を明らかにした。
【0113】
実施例20
イソオキサゾリンジエステルの還元:スポンジ状ニッケル触媒
イソオキサゾリンジエステル(0.25g)を、室温で水酸化カリウム(0.16g)のエタノール/水溶液(9:1の比、2.5mL)に添加した。ニッケル触媒(A7000、鉱油分散、0.25g)および塩化ベンジルトリブチルアンモニウム(0.25g)を添加し、系は水素ガスを5バールの圧力まで充填した。混合物を室温で水素下2時間撹拌した。HPLC分析は、RR/SS:RS/SRの比 1:1を持つ全収率94%のモナチン異性体の混合物を明らかにした。
【0114】
実施例21
イソオキサゾリンジエステルの還元:パラジウム触媒
イソオキサゾリンジエステル(0.25g)を、室温で水酸化カリウム(0.16g)のエタノール/水溶液(9:1の比、2.5mL)に添加した。炭素触媒上パラジウム(炭素上5%、Johnson Mattheyタイプ 338、0.25g)を添加し、系は水素ガスを5バール圧力まで充填した。混合物を室温で水素下2時間撹拌した。HPLC分析は、RR/SS:RS/SRの比 1.9:1を持つ全収率31%のモナチン異性体の混合物を明らかにした。
【0115】
実施例22
イソオキサゾリンジエステルの還元、ならびにRR/SSおよびRS/SRモナチンの単離:スポンジ状ニッケル触媒
【0116】
水酸化カリウム(4.0当量、3kg、0.05kmol)を反応器にエタノール(37kg)と共に充填した。系を21℃に冷却し、これにイソオキサゾリンジエステル(4.6kg、0.013kmol)を添加した。スポンジ状ニッケル触媒(A−7063、4.6kgの約50湿潤%)を、沈降を最小化するように撹拌(215rpm)しつつ反応器に添加した。反応器を密閉し、1バール(g)の窒素で5分間パージした。反応器を密閉し、1バール(g)まで窒素で加圧し、窒素供給を分離した。水素は、系の全圧が2バール(g)であるように反応器に供給した。反応は水素供給ラインを開いてこの圧力で30分間試行した。30分後の転換は71.6%であった。ついで、水素を用いて、3バール(g)まで反応器を加圧し、系を25分間維持した。97.23%の転換が得られた。ついで、系を5バール(g)まで加圧し、イソオキサゾリンジエステルの完全な転換を保証するように30分間試行した。完全に反応後、5分間窒素(1バール(g))で通気しフラッシュした後、反応器を1.5バール(g)に加圧した。物質をこの圧力でNutscheフィルターを介してろ過した。触媒床はろ過せずに、触媒の自燃性の性質に起因して乾燥させた。ついで、濾液(46.1kg)を、蒸気コイル、冷却器および収納容器を備えた40Lの容器中で濃縮した。濃縮物の最終質量は10.8kgであった。
【0117】
濃縮物を、20〜25℃の16Lのグラスライニングの撹拌反応器中で水および氷酢酸で処理した。系は酢酸でpH4.5に酸性化し、20℃で約15時間維持した。スラリーを排出させ、遠心して、固体を分離した。最初の沈殿から得た固体を、引き続いての沈殿に付した。固体を水中でスラリーとし、反応器に添加した。水酸化アンモニウム水溶液を系に添加して、pHを約8.5に調整した。酢酸を添加して、系をpH4.5に戻し酸性化した。ついで、反応器を約20℃に冷却し、2時間維持した。スラリーを排出し遠心した。これにより、規格内(HPLCによる98%)の1.42kg(73%)のRR/SSモナチンを得た。
【0118】
実施例23
N−ベンゾイルモナチンの調製
RS/SRモナチン(2.6g、8.90mmol)(実施例22)を水酸化ナトリウム水溶液(1M溶液)に溶解し、塩化ベンゾイル(1.25g、8.90mmol)および残りの水酸化ナトリウム溶液(1M、合計で8.90mL)を室温で4等分して添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。溶液のpHは塩酸溶液(1M)でpH2まで低下させ、生成物をジクロロメタンに抽出した。溶媒を除去し、94%の単離された収率で必要とされるN−ベンゾイルモナチンを生成した。
【0119】
本発明はある種の具体例を参照して記載したが、当業者ならば、変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細になしてもよいことを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリニアル試薬存在下、2−クロロメチルアクリル酸アルキルとインドール基質とを反応させて、インドール環がインドール基質出発物質により置換された2−インドリルメチルアクリル酸アルキルを含む混合物を生成する方法。
【請求項2】
2−クロロメチルアクリル酸アルキルが2−クロロメチルアクリル酸エチルであって、2−インドリルメチルアクリル酸アルキルが2−インドリルメチルアクリル酸エチルであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、混合物を蒸留して、精製された2−インドリルメチルアクリレートを生成することを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
精製された2−インドリルメチルアクリレートが、少なくとも約70%純粋であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
精製された2−インドリルメチルアクリレートが、少なくとも約90%純粋であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
さらに、マルチステップ法でモナチンを生成することを含み、ここに、2−クロロメチルアクリル酸アルキルの反応は、マルチステップ法の一工程であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
2相の反応混合物を用いて、開いた容器中で2−ハロメチルアクリル酸アルキルを生成することを含むことを特徴とするモナチンの方法。
【請求項8】
2−ハロメチルアクリル酸アルキルの生成が、アクリル酸アルキルを反応させて、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルを生成し、ついで、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルを臭化水素水溶液および硫酸に曝露させることを含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
アクリル酸アルキルの反応が、パラホルムアルデヒド、水およびトリエチルアミンの混合物にアクリル酸アルキルを供することを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
モナチンのRR、RS、SSおよびSRジアステレオマーの混合物を生成し、方法が分別結晶を用いてRSおよびSRのジアステレオマーから、RRおよびSSのジアステレオマーを分離することをさらに含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項11】
RRおよびSSのジアステレオマーが、主に水性の流れから沈殿し、RSおよびSRのジアステレオマーが、エタノール豊富な流れから沈殿することを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルが、混合物から生成され、混合物が、有機溶媒で抽出された後に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルを臭化水素水溶液および硫酸に曝露させることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項13】
マルチステップ法で生成し、ここに、マルチステップ法の一工程は、グリシンエチルエステル塩酸を反応させて、クロロヒドロキシイミノ酢酸エチルを含有する反応混合物を生成し、ついで、反応混合物からクロロヒドロキシイミノ酢酸エチルを抽出することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
さらに、少なくとも約70%純粋な2−インドリルメチルアクリレート生成物とクロロヒドロキシイミノ酢酸エチルとを反応させて、イソオキサゾリンジエステルを生成することを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
スポンジ状ニッケル触媒でイソオキサゾリンジエステルの水素化分解を促進することを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
スポンジ状ニッケル触媒が、A7063、水中に分散したA7000、油中で分散したA7000、A5200、水中に分散したA5000およびA4000の群から選択される請求項15記載の方法。
【請求項17】
スポンジ状ニッケル触媒でのイソオキサゾリンジエステルの水素化分解を促進する工程が、ワンステップ法でのジエステルの加水分解を達成することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルを反応させて、ハロアルキルアクリル酸アルキルを生成し;ついで、ハロアルキルアクリル酸アルキルを約95%またはそれを超える純度まで精製することを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルが、ヒドロキシメチルアクリル酸エチルであって、ハロアルキルアクリル酸アルキルがブロモメチルアクリル酸エチルであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルが、臭化水素水溶液および硫酸との反応混合物に入れられることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
蒸留を用いて、インドリルアルキルアクリル酸アルキルを精製し;精製したインドリルアルキルアクリル酸アルキルを反応させて、イソオキサゾリンジエステルを生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
インドリルアルキルアクリル酸アルキルが、少なくとも約50%の純度を有する2−インドリルメチルアクリル酸エチルであることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
2−インドリルメチルアクリル酸エチルが、少なくとも約70%の純度を有することを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項24】
2−インドリルメチルアクリル酸エチルが、少なくとも約90%の純度を有することを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項25】
大規模にて2−インドリルメチルアクリル酸エチルを反応させ、ついで、第1の収率のイソオキサゾリンジエステルを生成し、その第1の収率は、クロマトグラフィーを用いて精製された2−インドリルメチルアクリル酸エチルを反応させることにより、小規模で生成されたイソオキサゾリンジエステルの第2の収率に相当することを特徴とする請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−540614(P2010−540614A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527560(P2010−527560)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002522
【国際公開番号】WO2009/044245
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(500159680)カーギル・インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】