モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶及びその使用
【課題】甘味物質として使用可能であり、モナティンの非天然型である立体異性体の塩の結晶を新規に提供する。この結晶は安定であり、高甘味度を呈し、甘味剤又はその成分として、更には飲食品等への甘味付与成分としての使用が期待できる。新規甘味物質である上記塩の結晶を使用する甘味剤や、甘味が付与された飲食品等の製品を提供することができる。
【解決手段】当該立体異性体の塩にはモナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体の塩が含まれるが、モナティンの(2R,4R)体の塩が特に好ましい。
【解決手段】当該立体異性体の塩にはモナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体の塩が含まれるが、モナティンの(2R,4R)体の塩が特に好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶及びその使用に関し、更に詳しくは甘味剤又はその有効成分(甘味料)として優れている、天然型モナティン(Monatin)((2S,4S)体)の立体異性体塩(非天然型立体異性体塩)の結晶、当該非天然型立体異性体塩の混合物の結晶、このような非天然型立体異性体塩のうち少なくとも1種と天然型モナティン((2S、4S)体)塩を含む混合物の結晶、並びにこれらの塩の結晶の使用に関する。この非天然型立体異性体塩には、モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体等非天然型の各種立体異性体の塩が含まれ、このような塩の代表例として、このような塩の単独品(当該非天然型立体異性体の何れか1種の塩)、その複数種の塩混合物、これら少なくとも1種の塩を含む混合物(組成物)等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の高度化に伴い、特に糖分の摂取過多による肥満及びこれに伴う各種疾病が問題となっており、砂糖に代わる低カロリー甘味剤の開発が強く望まれている。求められる甘味剤には甘味強度以外に、低カロリー、安全性、熱や酸に対する安定性、甘味質、コスト等、多くの諸特性、要件が求められる。
【0003】
現在、各種の甘味剤が使用又は提案されている。例えば、甘味強度(甘味度)が強く工業的に大量生産可能な甘味剤として実用化され、広範に使用されているものとして、安全性と甘味質の面で優れているアスパルテームが存在する。更に、アスパルテームの誘導体についての研究も盛んに行われている。これら以外にも、甘味剤として各種の特性を有する甘味物質が提案され、実用化に向けた検討がなされている。また、天然に存在し大量に採取できる植物由来のソーマチン、グリチルリチン、ステビオシド等が天然甘味剤として現在使用されている。このような情況下に、甘味剤としての実用化が期待でき、甘味度が強い甘味物質の開発が求められている。
【0004】
モナティンは南アフリカの北部トランスバール(northern Transvaal)地方に自生する植物シュレロチトン イリシホリアス(Schlerochiton ilicifolius)の根皮から単離された天然由来のアミノ酸誘導体であり、R. Vleggaar等により、その構造に関し、(2S,4S)-2-amino-4-carboxy-4-hydroxy-5-(3-indolyl)-pentanoic acid((2S,4S)-4-hydroxy-4-(3-indolylmethyl)-glutamic acid;後述の構造式(1)参照。)と報告されている(R. Vleggaar et. Al., J. Chem. Soc. Perkin Trans., 3095-3098, (1992)参照。)。また、この天然植物由来の(2S,4S)体(天然型モナティン)の甘味強度は、同文献等によると、ショ糖の800倍〜1400倍と報告されている。モナティンの合成法については、幾つかの方法が報告されているものの、それらの多くは立体異性体混合物の合成法に関するものであり、天然型モナティンと同一化学構造式を有する4種の立体異性体それぞれを純品として合成、単離し、それらの諸性質を詳細に調べ、報告した例は殆ど無い。(その合成例については、P. J. van Wyk et. al., ZA 87/4288, ZA 88/4220、Holzapfel et. al., Synthetic Communications, 24(22), 3197-3211 (1994)、 E. Abushanab et. al., US 5,994,559 (1999)、K. Nakamura et. al., Organic Letters, 2, 2967-2970 (2000)等を参照することができる。)
【0005】
先ず、最初にモナティンについて言及しているP. J. van Wyk等の特許文献によると、彼等はX線結晶構造解析で天然に存在し強い甘味を持つ立体異性体が(2S,4S)体か或いは(2R,4R)体であることをつきとめているが、(2S)−アスパラギン酸から(2S,4S)体と(2S,4R)体との混合物を合成した結果と総合して、天然に存在して強い甘味を持つ立体異性体は(2S,4S)体の可能性が高いと報告している。次に、前述のR. Vleggaar等の文献によると天然植物に存在するモナティンの立体異性体(立体構造)は唯一(2S,4S)体であり、その甘味強度はショ糖の800〜1400倍であると報告している。これらの情報を基にすると、天然に存在し強い甘味の本体であるモナティンの立体異性体(立体構造)は(2S,4S)体と考えるのが妥当である。
【0006】
K. Nakamura等は前記引例の文献で、モナティンの(2S,4S)体とモナティンの(2S,4R)体の塩酸塩を単離しこれらの甘味強度について、それぞれ天然標品のモナティン((2S,4S)体)と同等の甘味、及び恐らくは不純物として混在すると考えられるモナティン((2S,4S)体)に由来するものと思われる僅かな甘味を呈したと報告しているが、具体的な甘味強度についての報告は無い。即ち、この文献はモナティンの非天然型立体異性体((2S,4S)体以外)の甘味強度について言及した初めての例であるが、モナティンの(2S,4R)体塩酸塩には殆ど甘味が無いと報告している。
【0007】
一方、T. Kitahara等は甘味料としてモナティンの各立体異性体の選択的合成法について報告しているが、各立体異性体の甘味度については報告していない(T. Kitahara等、日本農芸化学会、2000年度大会 講演要旨集、3B128β(221ページ)参照。)。
【0008】
これらの情報を総合すると、下記のことが判明している:
(1)天然に存在し、800〜1400倍の甘味強度を持つモナティンの立体異性体(立体構造)は(2S,4S)体である;及び
(2)モナティンの他の非天然型立体異性体については、その一部について少量を単離した例はあるがその純品を単離精製し、甘味効果を確認した例は無い。
【0009】
即ち、これまで、5〜10%のショ糖濃度に相当する実用濃度での、モナティンの各立体異性体の甘味強度については、天然由来のモナティン((2S,4S)体)を除いて、明確なデータは無い。従って、モナティン((2S,4S)体)以外のモナティンの非天然型立体異性体が甘味剤として使用可能かどうか既存の文献、特許文献等からは知り得ない。換言すれば、天然由来のモナティン((2S,4S)体)を除き、甘味度(甘味強度)についての信頼できる情報に乏しく、先行技術情報を総合判断した場合には、モナティン((2S,4S)体)以外の非天然型モナティン立体異性体については甘味度が低く、甘味剤としての有用性が期待できないと考えざるを得ない情況にあった。
【0010】
この一因として、これまで前記各種立体異性体を合成し、単離精製する方法が見出されていなかったことが挙げられる。
【0011】
従って、少なくとも数百mg以上の天然型モナティン及びその3種の非天然型立体異性体それぞれを純品として単離精製し、それぞれの光学純度と甘味強度を明らかにし、更にモナティン((2S,4S)体)及びその立体異性体(即ち、非天然型立体異性体)の甘味剤としての有用性を明らかにし、その結果有用性の高い成分を含む甘味剤を開発することが求められている。
【0012】
モナティンの各種立体異性体を高純度に分離する方法として、先ず結晶化の方法が考えられる。そこで、モナティンの結晶(遊離体、塩等の形態を含む。)について若干説明すると、以下の通りである。
【0013】
従来の報告では、前述のR. Vleggaar等の文献にモナティン((2S,4S)体)の遊離体の結晶を水、酢酸及びエタノール(1:1:5)の混合溶媒から得たと報告されており、その融点は216℃〜220℃と記載されている。また、P. J. van Wyk等の特許文献には、モナティン((2S,4S)体)の遊離体(crystalline solid)の融点は247℃〜265℃(分解)であると記載されているが、各種塩に関してはアモルファス状固体(amorphous solid)であると報告されている。前述のC. W. Holzapfel等の文献には合成モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体混合物の遊離体の結晶を水及び酢酸(10:1)の混合溶媒から2度の晶析により得て、その融点が212℃〜214℃であると報告されている。従って、モナティンの(2S,4S)体の遊離体等これら2例以外のモナティンの非天然型立体異性体及びそれら複数の立体異性体混合物については、遊離体はもとより、各種塩に関しても結晶状態で単離されたことは無く、従って物性値その他の情報は全く知られていない。即ち、モナティンに関しては、従来のイオン交換クロマトグラフィー等による精製法に比べて、精製手段として最も簡便かつ有効な方法である晶析法及びそれによって得られる結晶についての知見はモナティン((2S,4S)体)の遊離体及びモナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体の遊離体混合物の2例を除いては無く、特に塩の結晶については皆無である。即ち、モナティンの各種立体異性体を甘味剤として実用化する観点からこのような結晶についてその諸物性を明らかにすることが、先ず求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ZA 87/4288
【特許文献2】ZA 88/4220
【特許文献3】US 5,994,559
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Holzapfel et. al., Synthetic Communications, 24(22), 3197-3211 (1994)
【非特許文献2】K. Nakamura et. al., Organic Letters, 2, 2967-2970 (2000)
【非特許文献3】T. Kitahara等、日本農芸化学会、2000年度大会 講演要旨集、3B128β(221ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は甘味剤としての実用化が期待でき、甘味強度が強い甘味物質を提供することにある。具体的には、天然型モナティン及びその3種の非天然型立体異性体をそれぞれ純品、特に結晶として分離精製し、これらの光学純度を確認する方法を確立し、更に、ショ糖の800倍〜1400倍と言われている天然型モナティン((2S,4S)体)の甘味強度(甘味度)を確認すると共に、他の3種の立体異性体の甘味強度を決定し、これらの立体異性体の甘味剤としての実用性を明らかにすることにある。更に、これらの立体異性体の各種塩の結晶に関して、諸物性を始めとする特徴を明らかにし、物性面からの実用性を明らかにすることも重要な課題である。
【0017】
尚、前述の通り、天然型モナティンはその立体構造において(2S,4S)体を示すが、本発明においては、それと同一の化学構造式を有する化合物を全て「モナティン」と総称し、従って、モナティンの非天然型立体異性体を、「天然型モナティンの立体異性体」、「非天然型モナティン」、「モナティンの(2S,4R)体」、「モナティンの(2R,4S)体」、或いは「モナティンの(2R,4R)体」等と称する。また、これらの立体異性体に、モナティン((2S,4S)体)を加えて、これらを「4種の立体異性体」と称したり、特に天然型モナティンを、「モナティン」、「モナティン((2S,4S)体)」或いは「モナティンの(2S,4S)体」等と称する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は上記課題を解決すべくモナティンについて鋭意検討を行った。先ず、K. Nakamura等の方法に従って、モナティンの(2S,4S)体とモナティンの(2S,4R)体との、及びモナティンの(2R,4R)体と(2R,4S)体との立体異性体(異性体混合物)を合成し、これらの立体異性体混合物から逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で目的とする立体異性体を分離、取得した。これらの方法によって得た立体異性体は後述の方法で各種塩基との塩として結晶化して更に高純度の結晶を得ることもできた。次に、これらの立体異性体の光学純度を光学活性カラムHPLC法で確認した。更に、得られたモナティンの4種立体異性体の甘味強度をショ糖を標準液として測定して決定した。
【0019】
その結果、天然型モナティン((2S,4S)体)の甘味強度は、従来報告されている値よりもはるかに低いものであることが判明し、これ以外の非天然型立体異性体については何れもモナティン((2S,4S)体)以上の甘味強度を有し、その中には(2S,4S)体に比較して格段に優れた甘味強度を有するものも存在し、これらが甘味物質として優れていることを見出した。
【0020】
即ち、モナティンの(2R,4S)体が5%のショ糖水溶液と比較して約1300倍、またモナティンの(2R,4R)体が5%のショ糖水溶液と比較して約2700倍の甘味強度をそれぞれ有することを新たに見出し、非天然型立体異性体のうち(2R)体が特に甘味剤として優れているとの新知見を得た。
【0021】
次に、前述の合成法等によって得たモナティンの立体異性体混合物を各種塩基との塩として晶析する方法、誘導体として晶析する方法、誘導体を光学異性体分離カラムで分離する方法等を検討し、これらの方法によっても各立体異性体を光学的に純品として得ることに成功した。このようにして得られたそれぞれの立体異性体及びそれらの混合物の各種晶析条件を見出し、各種塩の結晶を初めて取得することに成功し、甘味強度を始め種々の物性値を測定することができた。特に、今回初めて得ることができたこれらの塩基との塩の結晶、特にモナティンの非天然型立体異性体塩の結晶が、従来知られていたR. Vleggaar等の報告にある(2S,4S)体の遊離体結晶や、P. J. van Wyk等の特許文献でアモルファス状固体としてのみ知られていた各種塩の非晶形物質に比べ、単離精製の容易さや結晶状態での安定性等の点で優れた諸性質を持つことを見出した。特に、甘味強度の強いモナティンの(2R,4R)体のカリウム塩は、結晶化の際に用いる有機溶媒を付着溶媒として含まない点、加熱安定性に優れている点、酸性条件下で晶析を行って得る遊離体に比べて着色し難い点等で最も実用的な製品形態として優れている。
【0022】
更に、このモナティンの非天然型立体異性体塩の結晶を使用して、甘味剤或いは飲食品等を提供できることを見出した。
【0023】
以上のような各種の知見に基づいて本発明が完成されるに到った。
【0024】
以上、本発明においては、天然の立体異性体であるモナティン((2S,4S)体)を始めとして、これを含めてそれと同一化学構造式を有する4種の立体(光学)異性体の分離精製及びこれらの光学純度の確認を初めて行うと共に、モナティンの全立体異性体(4種)のより正確な甘味強度を明らかにした。この結果、モナティンの非天然型立体異性体塩の新規な結晶が、従来得られている(2S,4S)体等の遊離体の結晶や前述特許記載の塩のアモルファス状固体に比べて甘味物質及び甘味物質としての実用的な製品形態として優れていること、即ちモナティンの非天然型立体異性体塩の結晶が甘味剤として有用性を有することが見出され、中でもモナティンの(2R,4R)体塩結晶が4立体異性体の中で最も強力で、従来の知見からは予測し得ない甘味強度を有し、実用に供する甘味剤又はその成分として最も適していることも確認された。
【0025】
即ち、本発明は、一つの形態として、モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶に存する。本発明はアミノ酸系甘味物質、モナティン(Monatin)の非天然型立体異性体塩の結晶に関し、この立体異性体塩にはモナティンの(2R,4R)体塩、(2R,4S)体塩及び(2S,4R)体塩の少なくとも1種が含まれる。
【0026】
本発明において、当該立体異性体塩の結晶を構成する化合物は前記非天然型立体異性体の塩であり、その水和物、溶媒和物等の形態でもよい。更に、この化合物はこのようなモナティンの塩で、分子内で環化したラクトン又はラクタムの形態、及び/又は含まれる官能基の少なくとも一つが保護された形態でもよい。
【0027】
本発明の結晶に含まれる塩の種類、形態等には、特に制限は無い。最終的製品としての食品用として使用される場合には当然食品用に使用可能な塩が採用される。その他、中間体として適した塩も有用である。これらのこと(上記結晶の形態及び塩の種類、形態等)は、モナティンの非天然型立体異性体塩(結晶)の形態の場合に限らず、後述するように混合して使用される場合のモナティンの天然型立体異性体塩(結晶)の形態についても同様に適用される。
【0028】
このような塩の形態としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニア等とのアンモニウム塩、リジン、アルギニン等のアミノ酸との塩、塩酸、硫酸等の無機酸との塩、クエン酸、酢酸等の有機酸との塩及びサッカリン(saccharin)、アセスルフェーム(acesulfame)、シクラミン酸(cyclamic acid)、グリチルリチン酸(glycyrrhizic acid)、アスパルテーム(aspartame)等の他の甘味剤又はその成分との塩が挙げられ、これらも前述の通り前記本発明に使用する当該立体異性体の塩や、使用される場合の天然型モナティンの塩に適用することができる。
【0029】
上記塩の形成方法については、本発明についての説明(実施例等)に基いて、必要により慣用され又は公知の造塩方法を利用して、目的とする塩を調製することができる。
【0030】
前記立体異性体の中には、使用される場合の天然型モナティンを含めて、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、インドリル(インドール)基等の官能基が含まれているが、これらの官能基は保護されていてもよい。保護基としては、有機化学、特にアミノ酸やペプチド化学においてそれぞれの保護基として常用される保護基を使用することができる。
【0031】
本発明の結晶には、下記の内容[1]−[6]が含まれる。
【0032】
尚、天然型モナティンである(2S,4S)体、並びに非天然型モナティンである(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体は下記の構造式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される。
【0033】
[1]
当該非天然型立体異性体塩として、モナティンの(2S,4R)体塩、(2R,4R)体塩及び(2R,4S)体塩を挙げることができる。当該塩の結晶としては水和物及び溶媒和物等の形態でもよい。
これら立体異性体塩の中では、モナティンの(2R,4S)体及び(2R,4R)体がより好ましく、更にモナティンの(2R,4R)体が最も好ましい。このような本発明に含まれる塩の結晶は、単離精製の容易さ及び保存安定性に優れていること等から好ましい。
【0034】
[2]
上記本発明の非天然型立体異性体塩の結晶は、当該立体異性体の塩(水和物、溶媒和物等の形態を含む。)を、好ましくは少なくとも95%程度、より好ましくは少なくとも97%程度の化学純度で有することができる。
【0035】
[3]
上記本発明の非天然型立体異性体塩の結晶は、好ましくは少なくとも90%程度、より好ましくは少なくとも94%程度、更に好ましくは少なくとも98%程度の光学純度を有することができる。例えば、モナティンの(2R,4R)体の塩(水和物、溶媒和物、それら塩混合物の形態等を含む。)の高光学純度品を挙げることができる。
【0036】
[4]
上記本発明の立体異性体塩の結晶として、モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体の立体異性体塩の中から選択される、少なくとも2種の混合物結晶を採用することができる。
【0037】
[5]
上記本発明の非天然型立体異性体塩の結晶としては、5〜10%の実用濃度のショ糖の、好ましくは少なくとも200倍程度、より好ましくは少なくとも1000倍程度の甘味強度を示すものを採用することができる。
【0038】
[6]
上記本発明の立体異性体塩の結晶は、天然型モナティン((2S,4S)体)の塩の結晶との混合状態で使用することができる。この場合、全モナティンに対して、当該モナティンの(2S,4S)体を、好ましくは多くとも70%程度、より好ましくは多くとも50%程度含有することができる。
【0039】
当該天然型モナティン塩の結晶を構成する化合物は天然型モナティンの塩であり、その水和物、溶媒和物等の形態で使用することもできる。更に、この化合物を、このようなモナティンの塩で、分子内で環化したラクトン又はラクタムの形態、及び/又は含まれる官能基の少なくとも一つが保護された形態で使用することができる。
【0040】
この場合にも、当該天然型立体異性体を含む塩の結晶状態での、混合物結晶の甘味強度として、上記実用濃度のショ糖の、好ましくは少なくとも200倍程度、より好ましくは少なくとも1000倍程度のものを好ましいものとして、目的とする混合物結晶を調製することができる。
【0041】
上記好ましい例として、モナティンの(2S,4S)体とモナティンの(2R,4R)体との塩の混合物結晶、特にモナティンの(2S,4S)体塩とモナティンの(2R,4R)体塩との比率(重量)が1:0.5〜2程度、特に好ましくは1:1程度である塩の混合物結晶を挙げることができる。
【0042】
本発明は、別の形態として、上記本発明(前記[1]から[6]を含む。)の非天然型立体異性体塩の結晶を含有することに特徴を有する甘味剤にも存する。
【0043】
当該甘味剤には、甘味剤用の担体及び/又は増量剤等を含んでいてもよい。
【0044】
甘味剤用に使用できることが知られ、また今後そのために開発される担体や、増量剤を含んでいてもよい。更に、甘味剤のために使用され得る添加剤を含むことも当然できる。甘味剤は動物用、例えば哺乳動物用、特にヒト用に使用される。
【0045】
本発明は、更に別の形態として、上記本発明(前記[1]から[6]を含む。)の非天然型立体異性体の塩の結晶を含有することに特徴を有する甘味が付与された飲食品等の製品にも存する。
【0046】
甘味が求められる動物用製品、特にヒト用の飲食品で甘味が求められる飲食品等に甘味剤の少なくとも一部として、当該結晶を使用することができる。その他、歯磨き、薬品等口内の衛生目的で、或いは経口的に使用される製品で甘味を付与すべき製品に当該結晶が使用され得る。
【0047】
前記本発明の甘味剤及び飲食品等の製品には、更に他の甘味剤成分(甘味料)、特に糖類、並びに他の人工甘味料及び天然の甘味料の少なくとも1種を含有することができる。例えば、ショ糖、アスパルテーム、アセスルフェーム、スクラロース、サッカリン、ステビオサイド、キシロース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール等を併用することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明により、新規甘味物質、モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶を有効成分として使用することにより新規甘味剤又は甘味を付与した飲食品等の製品を提供することができる。当該立体異性体塩の結晶は、特に保存安定性に優れ、強い甘味強度を示し、甘味剤として優れた呈味性を発現する。その中でも当該非天然型立体異性体塩の結晶として、モナティンの(2R,4R)体塩(カリウム塩等)の結晶が好ましく、特に優れた呈味性及び保存安定性を有する。
【0049】
更に、本発明により、甘味剤或いはその成分として、また飲食品等に対する甘味付与成分としても優れた性質を有する新規甘味物質(上記モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶)を提供することができる。
【0050】
故に、本発明は工業的に、特に食品分野において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、実施例13においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図2】図2は、実施例13においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図3】図3は、実施例13におけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。縦軸には回折強度を、横軸には回折角度2θ[deg]を、それぞれ示す(以下の粉末X線回折図についても同様である。)。
【図4】図4は、実施例14においてモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図5】図5は、実施例14においてモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図6】図6は、実施例14におけるモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図7】図7は、実施例15においてモナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図8】図8は、実施例15においてモナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図9】図9は、実施例15におけるモナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図10】図10は、比較例1においてモナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図11】図11は、比較例1においてモナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図12】図12は、比較例1におけるモナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図13】図13は、比較例2においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図14】図14は、比較例2においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図15】図15は、実施例17におけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図16】図16は、実施例18におけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図17】図17は、実施例2においてモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図18】図18は、実施例2におけるモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図19】図19は、実施例2においてモナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図20】図20は、実施例2におけるモナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図21】図21は、実施例3においてモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図22】図22は、実施例3におけるモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図23】図23は、実施例4においてモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図24】図24は、実施例4におけるモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図25】図25は、実施例11においてモナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図26】図26は、実施例11におけるモナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図27】図27は、実施例12においてモナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図28】図28は、実施例12におけるモナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図29】図29は、実施例19におけるモナティン(2R,4R)体カリウム塩(起晶温度10℃、35℃、60℃)の水蒸気吸着脱着(吸脱着)曲線を示した図である。 縦軸:水分(Moisture)(重量%);横軸:相対湿度(Relative Humidity)(%)。 △:10℃ 吸着;▲:10℃ 脱着;◇:35℃ 吸着;◆:35℃ 脱着;○:60℃ 吸着;●:60℃ 脱着。
【図30】図30は、実施例20におけるモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図31】図31は、実施例Aにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図32】図32は、実施例Bにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図33】図33は、実施例Cにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図34】図34は、実施例Dにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図35】図35は、実施例Eにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図36】図36は、実施例Fにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図37】図37は、実施例Gにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図38−1】図38−1は、実施例Hにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図38−2】図38−2は、実施例Hにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図39−1】図39−1は、実施例Iにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図39−2】図39−2は、実施例Iにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図40−1】図40−1は、実施例Jにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図40−2】図40−2は、実施例Jにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図41−1】図41−1は、実施例Kにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図41−2】図41−2は、実施例Kにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図42】図42は、実施例Lにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図43】図43は、実施例Mにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩固体の粉末X線回折図である。
【図44】図44は、実施例Nにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【図45】図45は、実施例Oにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【図46】図46は、実施例Pにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【図47】図47は、実施例Qにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0053】
(2S)体モナティン(モナティンの(2S,4S)体と(2S,4R)体の混合物)、(2R)体モナティン(モナティンの(2R,4R)体と(2R,4S)体の混合物)及び4種立体異性体の混合物については、前述のK. Nakamura等の方法に従って合成することができ、これより各立体異性体を分離することができるが、各種の立体異性体を含むモナティンの合成法としては、別の方法を採用することもでき、前記K. Nakamura等の方法に限るものではない。
【0054】
以下、各種の立体異性体を含むモナティンから各立体異性体を分離精製する場合の例を簡単に説明する。これらは例として説明されるものであり、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0055】
K. Nakamura等の方法に従って合成した(2S)体モナティン及び(2R)体モナティンの立体異性体については、逆相HPLCで分離、分取することができるが、モナティンの立体異性体の分割法としては、これに限るものではない。
【0056】
既報告の方法等に従って合成した4種の立体異性体を分離して各立体異性体を得ることも可能である。例えば、モナティンの4種立体異性体を塩として或いは誘導体として晶析を行う方法や、誘導体を光学異性体分離カラムで分離し、得られた異性体を再びモナティンに戻す方法を用いることができるが、立体異性体の分割法はこれらに限られるものではない。
【0057】
本発明の結晶を構成する成分は前記モナティン塩であるが、前記の如く、そのラクトン誘導体やラクタム誘導体等、別の形態で使用することもできる。例えば、当該モナティンの塩において分子内で環化したラクトン又はラクタム誘導体を形成するには、分子内で環化したラクトン又はラクタムを形成する方法として知られている方法を利用して行うことができる。また、官能基の少なくとも一つが保護された誘導体を形成する場合にも、官能基保護法として知られている方法を利用して行うことができる。
【0058】
得られた各立体異性体結晶の光学純度を、光学活性カラムHPLC法で決定することができるが、光学純度の決定法はこれに限られるものではない。
【0059】
得られた各立体異性体結晶の甘味強度(甘味度)を5%ショ糖水溶液と比較して決定することができるが、甘味強度の決定法としてはこれに限るものではない。
【0060】
次に、各立体異性体の構造と甘味強度、或いは光学純度との関係を表1及び2に示す。表1にはHPLCで分取し、イオン交換樹脂で精製し、アンモニウム塩として凍結乾燥した試料について、表2にはナトリウム塩として結晶化精製した試料について、それぞれの評価結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示したように、天然に存在する(天然型)モナティン((2S,4S)体)の甘味強度は約50倍と従来の報告より低い値であることが分かる。興味深いことに、モナティンの他の3種の立体異性体全てがモナティン((2S,4S)体)以上の甘味強度を示し、特にモナティンの(2R,4R)体は約2700倍と最も強い甘味強度を示した。
【0064】
クロマトグラフィー等により分離したり、合成法等によって得た各種立体異性体から、更に晶析法により各立体異性体の塩を高純度に結晶として分離することができる。
【0065】
前記表1と表2に示した評価結果の比較から、(2R)体については結晶化によって光学純度を含めた純度が高くなっており、塩の結晶とすることの有用性が示されている。
【0066】
尚、本発明の非天然型立体異性体塩(水和物、溶媒和物等含む。)の結晶(当該立体異性体には分子内で環化したラクトン又はラクタムの形態、含まれる官能基の少なくとも一つが保護された形態等を含む。)を甘味剤として使用する場合、特別の支障が無い限り、他の甘味剤と併用してもよいことは勿論である。
【0067】
本発明の立体異性体塩(水和物、溶媒和物等含む。)の結晶を甘味剤として使用する場合、必要により担体及び/又は増量剤を使用してもよく、例えば従来から知られ、又は使用されている甘味剤用の担体、増量剤等を使用することができる。
【0068】
本発明の立体異性体塩(水和物、溶媒和物等含む。)の結晶を甘味剤又は甘味剤成分として使用することができるが、更に甘味の付与を必要とする飲食品等の製品、例えば菓子、チューインガム、衛生製品、化粧品、薬品及びヒト以外の動物用製品等の各種製品の中に甘味剤や甘味成分として、当該結晶を含有せしめて使用することができる。更に、本発明の非天然型立体異性体塩結晶を含有又は使用し甘味が付与された製品の形態として、また甘味の付与を必要とする当該製品に対する甘味付与方法における甘味付与成分として、本発明の非天然型立体異性体塩の結晶を使用することができ、その使用方法等については、甘味剤の使用方法として慣用されている従来法その他公知の方法に従うことができる。
【0069】
好適な実施の形態
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
1H−NMRスペクトルについては、Bruker AVANCE400(400MHz)により、MSスペクトルについては、Thermo Quest TSQ700により、それぞれ測定した。陽イオン交換樹脂として、AMBERLITE IR120B H AG 及びDIAION PK228を使用した。粉末X線解析については、Phillips社製 PW3050で測定した。融点については、Yanaco社 MICRO MELTING POINT APPARATUSで測定した。旋光度については、日本分光社製(JASCO ENGINEERING社)DIP−370 Degital Polarimeterで測定した。
【0071】
[実施例1]
K. Nakamura等の方法(K. Nakamura et. al., Organic Letters, 2, 2967-2970 (2000)参照。)に従ってモナティンの合成を行い、最後に陽イオン交換樹脂(H+型)に吸着、3%アンモニア水での溶出、及び凍結乾燥による精製を行い、(2S)体モナティンのアンモニウム塩(モナティンの(2S,4S)体と(2S,4R)体の混合物)2.92gと(2R)体モナティンのアンモニウム塩(モナティンの(2R,4R)体と(2R,4S)体の混合物)711mgを得た。
【0072】
以下の分取条件で(2S)体モナティン660mgと(2R)体モナティン711mgからそれぞれを分割し、モナティンの(2S,4S)体207mg、モナティンの(2S,4R)体233mg、モナティンの(2R,4R)体261mg及びモナティンの(2R,4S)体254mgを、アンモニウム塩の形態でアモルファス固体として得た。
【0073】
(分取条件)
ガードカラム:Inertsil ODS-3 30x50mm;
カラム :Inertsil ODS-3 30x250mm;
検出 :UV 210nm;
溶離液 :<A> アセトニトリル 0.05%TFA <B> H2O 0.05%TFA;
流速 :28ml/min;
グラジエント:25minで<A>12%から18%;
負荷量 :10〜13mg;及び
作業温度 :25℃。
【0074】
(分取後の処理)
分取画分をアンモニア水で中和し、濃縮した。分取画分を合わせて濃縮した後、陽イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B H AGのH+型)に吸着させた。5%アンモニア水で溶出し、溶出画分を凍結乾燥した。
【0075】
次に示す分析条件で各立体異性体の光学純度(エナンチオマー純度)を検定した。
(分析条件)
カラム:CROWNPAK CR(+) 4x150mm;
検出 :UV 210nm;
溶離液:過塩素酸水(pH2.0)/メタノール=90/10;
流速 :1.2ml/min;及び
分析温度:25℃。
【0076】
各立体異性体の光学純度は以下の通りであった。( )内には各ピークの溶出時間を示す。
モナティンの(2S,4S)体:94%(45.0min);
モナティンの(2S,4R)体:94%(26.1min);
モナティンの(2R,4R)体:94%(20.9min);及び
モナティンの(2R,4S)体:96%(16.1min)。
【0077】
それぞれの立体異性体に含まれる不純物の主なものは、それぞれの鏡像体であった。例えば、モナティンの(2S,4S)体には少量のモナティンの(2R,4R)体が含まれていた。
【0078】
得られた各立体異性体の甘味強度を以下の方法で測定した。
【0079】
各立体異性体の0.05%水溶液を調製し、これを適宜希釈して、所定の濃度の試料水溶液を調製した。別途、ショ糖の5%水溶液を調製し標準液とした。希釈した試料の水溶液と標準のショ糖水溶液を交互に味わい、それらの甘味強度が同等であると感じた時の試料濃度から甘味倍率を求めた。この評価は7人のパネリストによって行った。
【0080】
各立体異性体の甘味強度は以下のように決定された。
モナティンの(2S,4S)体:約300倍;
モナティンの(2S,4R)体:約300倍;
モナティンの(2R,4R)体:約2000倍;及び
モナティンの(2R,4S)体:約800倍。
【0081】
各立体異性体の旋光度([α]D25(c=0.5))を測定した結果は以下の通りであった。
モナティンの(2S,4S)体:-44.1(H2O)、-7.5(3%アンモニア水);
モナティンの(2S,4R)体:-7.8(H2O);
モナティンの(2R,4R)体:+3.7(H2O)、 +8.7(3%アンモニア水);及び
モナティンの(2R,4S)体:+11.1(H2O)。
【0082】
各立体異性体の1H-NMRは以下の通りであった(400MHz,D2O)。
モナティンの(2S,4S)体及び(2R,4R)体アンモニウム塩:
1.96(1H, dd,J=11.8Hz,J=15.2Hz),2.57(1H,dd,J=1.9Hz,J=15.2Hz),3.00(1H,d,J=14.6Hz),3.20(1H,d,J=14.6Hz),3.54(1H,d,J=10.2Hz),7.04(1H,t,J=7.2Hz),7.10(1H,t,J=7.2Hz),7.10(1H,s),7.38(1H,d,J=8.0Hz),7.62(1H,d,J=8.0Hz)。
【0083】
モナティンの(2S,4R)体及び(2R,4S)体アンモニウム塩:
2.11(1H,dd,J=10.4Hz,J=15.0Hz),2.37(1H,d,J=15.4Hz),3.13(2H,s),3.88(1H,d,J=9.8Hz),7.05(1H,d,J=7.6Hz),7.14(2H,s),7.38(1H,d,J=7.9Hz),7.63(1H、d、J=7.9Hz)。
【0084】
各立体異性体のMSスペクトルは以下の通りであった。
ESI−MS:291(M−H)−。
【0085】
[実施例2]
[モナティン4種立体異性体混合物のアンモニウム塩の(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体結晶及び(2S,4R)体と(2R,4S)体とのラセミ体結晶への分割]
モナティンの立体(光学)異性体混合物(モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体:モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体=6:4)のアンモニウム塩10.00g(32.33ミリモル)を、2.5%アンモニア水100mlに溶解し、得られた溶液を20mlになるまで濃縮した。新たに、5%アンモニア水3mlを加え均一にした後、室温にて30分静置した。結晶析出後、5%アンモニア水/エタノール=25/75の水溶液80mlを加えてスラリー状にし、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩の結晶を濾取した。得られた結晶を再び2.5%アンモニア水30mlに溶解し濃縮した後、5%アンモニア水0.5mlとエタノール30mlにて再結晶し、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶 4.80g(15.52ミリモル,逆相HPLC純度(以下、「HPLC純度」と称する。):98.0%)を得た。
【0086】
1HNMR(D2O)δ:1.95−2.02(m,1H),2.58−2.62(m,1H),3.01−3.05(m,1H),3.21−3.24(m,1H),3.55−3.58(m,1H),7.07−7.11(m,1H),7.14−7.18(m,2H),7.42−7.44(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.39(M−H)−。
融点:182〜186℃。
甘味度:約1300倍(5%ショ糖水溶液と比較)。
【0087】
図17には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0088】
図18には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。6.0°、12.1°、15.2°、18.6°、21.3°、23.2°及び25.0°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0089】
前述の操作で得た濾液(モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体:モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体=3:10)を5mlになるまで濃縮した。新たに、5%アンモニア水3mlを加えて均一にした後、室温にて10分静置した。結晶析出後、エタノール80mlを加えてスラリー状にし、モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]アンモニウム塩の結晶を濾取した。得られた結晶を再び2.5%アンモニア水30mlに溶解し濃縮した後、5%アンモニア水0.5mlとエタノール30mlによる再結晶を3回行い、モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶3.10g(10.02ミリモル,HPLC純度98.2%)を得た。総回収率は79.0%であった。
【0090】
1HNMR(D2O)δ:2.11−2.17(m,1H),2.38−2.43(m,1H),3.16(s,2H),3.90−3.93(m,1H),7.06−7.10(m,1H),7.13−7.17(m,2H),7.41−7.43(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.19(M−H)−。
融点:167.2〜168.4℃。
甘味度:約800倍(5%ショ糖水溶液と比較)。
【0091】
図19には、モナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0092】
図20には、モナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.4°、10.2°、19.7°、21.0°及び21.8°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0093】
[実施例3]
[モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体のナトリウム塩結晶の調製]
モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩1.00g(3.23ミリモル,HPLC純度100%)を水10mlに溶解し、これに水酸化ナトリウム水溶液(20当量)を加えて濃縮した。水20mlを加えて濃縮する操作を3回繰り返した後、再び水20mlに溶解し、イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B H AG(H+))を溶液が弱アルカリ性になるまで加えて攪拌し、過剰のナトリウムを除去した。樹脂を濾取した後、濾液を減圧下に濃縮した。室温下に、95%エタノール水溶液にて結晶化して、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶・0.05エタノール和物 0.680g(2.14ミリモル)を、収率66.3%で得た。
【0094】
1HNMR(D2O)δ:実施例2と同様。
ESI−MS:291.19(M−H)−。
融点:201.7〜203.2℃。
【0095】
図21には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0096】
図22には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、13.6°、15.2°、16.7°、22.2°及び24.4°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0097】
[実施例4]
[モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体のカリウム塩結晶の調製]
水酸化ナトリウム水溶液の替わりに、水酸化カリウム水溶液を用いること以外は実施例3と同様にして、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶・0.05エタノール和物0.71g(2.13ミリモル)を、収率65.9%で得た。
【0098】
1HNMR(D2O)δ:実施例2と同様。
ESI−MS:291.49(M−H)−。
融点:223.8〜224.7℃。
【0099】
図23には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0100】
図24には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.9°、18.7°、20.1°及び23.8°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0101】
[実施例5]
[モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体Z−ラクトン(2-Benzyloxycarbonylamino-4-(3-indolylmethyl)-4-carboxy-γ-butyrolactone)の調製]
モナティン [(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩19.51g(63.07ミリモル,HPLC純度:99.2%)を、2N-水酸化ナトリウム水溶液94.6ml(189.2ミリモル)と水90mlに溶解した。ベンジルオキシカルボニルクロライド12.61ml(88.30ミリモル)を加えて室温で2時間攪拌後、更に2N-水酸化ナトリウム水溶液15.8ml(31.54ミリモル)とベンジルオキシカルボニルクロライド4.50ml(31.54ミリモル)を加えて、室温にて1夜攪拌した。得られた反応水溶液は、エーテル50mlでの抽出操作を3回行い、過剰なベンジルオキシカルボニルクロライドを除去した。反応液を塩酸にてpH3に調整し、酢酸エチル100mlで3回抽出操作を行った後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧下に濃縮して、Z−モナティン(2-Benzyloxycarbonylamino-4-hydroxy-4-carboxy-5-(3-indolyl)pentanoic acid)[(2S,4S)+(2R,4R)]体27.93g(65.50ミリモル)を得た。Z−モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体27.93g(65.50ミリモル)を酢酸エチル400mlに溶解し、p-トルエンスルホン酸1.25g(6.55ミリモル)を加えて75℃で3時間加熱した。得られた反応液を水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧下に濃縮した。残渣にクロロホルム100mlを加えて析出した結晶を濾過して集め、Z-ラクトン[(2S,4S)+(2R,4R)]体17.64g(43.19ミリモル,HPLC純度:99.6%)を総収率68.5%で得た。
【0102】
1HNMR(DMSO−d6)δ:2.36−2.42(m,1H),2.64−2.70(m,1H),3.24−3.41(m,2H),3.71−3.81(m,1H),4.98(s,2H),6.97−7.00(m,1H),7.04−7.09(m,1H),7.21(s,1H),7.30−7.33(m,5H),7.54−7.56(d,1H),7.66−7.69(d,1H),11.03(s,1H)。
ESI−MS:409.68(M+H)+。
融点:195.5〜196.9℃。
【0103】
[実施例6]
[モナティンの(2S,4R)体と(2R,4S)体とのラセミ体Z−ラクトン(2-Benzyloxycarbonylamino-4-(3-indolylmethyl)-4-carboxy-γ-butyrolactone)の調製]
モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩の替わりに、モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩15.00g(48.49ミリモル,HPLC純度:99.5%)を使用し、p-トルエンスルホン酸を加えて75℃で2時間加熱する以外は実施例5と同様にして、Z−ラクトン[(2S,4R)+(2R,4S)]体12.10g(29.64ミリモル,HPLC純度100%)を総収率61.1%で得た。
【0104】
1HNMR(DMSO−d6)δ:2.31−2.37(m,1H),2.71−2.76(m,1H),3.19−3.23(m,1H),3.43−3.47(m,1H),4.34−4.41(m,1H),5.05(s,1H),6.96−7.00(m,1H),7.04−7.08(m,1H),7.14(s,1H),7.32−7.37(m,5H),7.53−7.55(d,1H),7.85−7.87(d,1H),10.95(s,1H)。
ESI−MS:409.58(M+H)+。
融点:156.7〜159.1℃。
【0105】
[実施例7]
[Z-ラクトン(2S,4S)体とZ-ラクトン(2R,4R)体との分割]
Z-ラクトン[(2S,4S)+(2R,4R)]体1.17g(2.86ミリモル,HPLC純度:99.7%)から、光学異性体分割カラムにて分割を行った。このとき、ガードカラムにCHIRALPAK AS 20×50mm、分取カラムにCHIRALPAK AS 20×250mmを使用した。溶離液:ヘキサン/エタノール/酢酸=40/60/0.5、流速:10ml/分、検出:UV210nm、温度:40℃、負荷量:25mgで分取した。溶出時間については、それぞれZ-ラクトン(2S,4S)体が13分、Z-ラクトン(2R,4R)体が23分であった。分取画分をそれぞれ濃縮後、酢酸エチル50mlに溶解し再び濃縮した。残渣をクロロホルム30mlで結晶化し、Z-ラクトン(2S,4S)体428mg(1.05ミリモル)、及びZ-ラクトン(2R,4R)体399mg(0.977ミリモル)を得た(総回収率:70.7%)。
【0106】
(Z-ラクトン(2S,4S)体)
1HNMR(DMSO−d6)δ:実施例5と同様。
ESI−MS:409.68(M+H)+。
融点:179.8〜182.0℃。
【0107】
(Z-ラクトン(2R,4R)体)
1HNMR(DMSO−d6)δ:実施例5と同様。
ESI−MS:409.88(M+H)+。
融点:179.2〜182.8℃。
【0108】
[実施例8]
[Z-ラクトン(2S,4R)体とZ-ラクトン(2R,4S)体との分割]
Z-ラクトン[(2S,4R)+(2R,4S)]体9.89g(24.22ミリモル,HPLC純度:100%)から、光学異性体分割カラムにて分割を行った。このとき、ガードカラムにCHIRALCEL OJ 20×50mm、分取カラムにCHIRALCEL OJ 20×250mmを使用した。溶離液:ヘキサン/エタノール/トリフルオロ酢酸=40/60/0.1、流速:8ml/分、検出:UV210nm、温度:40℃、負荷量:50mgで分取した。溶出時間については、それぞれZ-ラクトン(2R,4S)体が16分、Z-ラクトン(2S,4R)体が21分であった。分取画分をそれぞれアンモニア水で中和後に濃縮した。酢酸エチル150mlに溶解し、pH3に調整した塩酸水溶液にて洗浄後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン100mlで結晶化し、Z-ラクトン(2R,4S)体・0.2酢酸エチル和物4.88g(11.45ミリモル,HPLC純度:97.3%)、及びZ-ラクトン(2S,4R)体・0.2酢酸エチル和物5.41g(12.70ミリモル,HPLC純度:96.9%)を得た(総回収率:99.7%)。
【0109】
(Z-ラクトン(2R,4S)体・0.2酢酸エチル和物)
1HNMR(DMSO−d6)δ:2.21−2.28(m,1H),2.64−2.70(m,1H),3.18−3.22(m,1H),3.40−3.44(m,1H),4.42−4.45(m,1H),5.04(s,2H),6.95−7.00(m,1H),7.03−7.07(m,1H),7.15(s,1H),7.32−7.35(m,5H),7.52−7.55(d,1H),7.80−7.82(d,1H),10.92(s,1H)。
ESI−MS:409.58(M+H)+。
融点:109.1〜110.8℃。
【0110】
(Z-ラクトン(2S,4R)体・0.2酢酸エチル和物)
1HNMR(DMSO−d6)δ:上記(2R,4S)体と同様。
ESI−MS:409.58(M+H)+。
融点:116.1〜116.8℃。
【0111】
[実施例9]
[Z−ラクトン(2R,4R)体のモナティン(2R,4R)体ナトリウム塩結晶への変換(ナトリウム塩結晶の調製その1)]
Z−ラクトン(2R,4R)体14.24g(34.85ミリモル,HPLC純度:99.5%)をメタノール400ml、水40mlに溶解し、10%パラジウム−炭素3gを加え、水素雰囲気下に室温で2時間還元した。還元後、水100mlと4N-水酸化ナトリウム水溶液19.2ml(76.67ミリモル)を加えてしばらく攪拌した後、触媒を濾過により除去して濾液を濃縮した。残渣を水160mlに溶解後、イオン交換樹脂 AMBERLITE IR120B H AG(H+)を溶液が弱酸性になるまで少量ずつ加えて過剰なナトリウムを除去した。28%アンモニア水34.8mlを加え、イオン交換樹脂を濾過して除いた。このイオン交換樹脂を5%アンモニア水で洗い、濾液を合わせて濃縮した。濃縮した残渣を水100mlに溶解し、この溶液に活性炭1gを加えて10分間攪拌した。活性炭を濾過して除き、濾液を濃縮後、これに、室温で90%エタノール水溶液を加えて結晶化し、モナティン(2R,4R)体ナトリウム塩結晶・0.2エタノール和物6.55g(20.19ミリモル、光学活性カラムHPLC純度:99.3%)を、総収率57.9%で得た。
【0112】
1HNMR(D2O)δ:1.95−2.02(m,1H),2.58−2.62(m,1H),3.01−3.05(m,1H),3.21−3.24(m,1H),3.55−3.58(m,1H),7.07−7.11(m,1H),7.14−7.18(m,2H),7.42−7.44(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.49(M−H)−。
融点:197.1〜198.3℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=+0.64。
甘味度:約2700倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0113】
[実施例10]
[Z−ラクトン(2S,4S)体のモナティン(2S,4S)体ナトリウム塩結晶への変換]
Z−ラクトン(2R,4R)体の替わりに、Z−ラクトン(2S,4S)体5.00g(12.25ミリモル,HPLC純度:99.8%)を使用し、水素雰囲気下、室温で1時間還元する以外は実施例9と同様にして、モナティン(2S,4S)体ナトリウム塩結晶・0.2エタノール和物3.15g(9.71ミリモル,光学活性カラムHPLC純度:99.8%)を、総収率79.3%で得た。
【0114】
1HNMR(D2O))δ:実施例9と同様。
ESI−MS:291.59(M−H)−。
融点:196.1〜197.9℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=−1.67。
甘味度:約50倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0115】
[実施例11]
[Z−ラクトン(2R,4S)体のモナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶への変換]
Z−ラクトン(2R,4R)体の替わりに、Z−ラクトン(2R,4S)体・0.2酢酸エチル和物 3.66g(8.59ミリモル,HPLC純度:97.3%)を使用し、水素雰囲気下に室温で1時間還元すること以外は実施例9と同様にして、モナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶2.23g(7.07ミリモル,光学活性カラムHPLC純度:99.2%)を、総収率82.3%で得た。
【0116】
1HNMR(D2O)δ:2.11−2.17(m,1H),2.38−2.43(m,1H),3.16(s,2H),3.90−3.93(m,1H),7.06−7.10(m,1H),7.13−7.17(m,2H),7.41−7.43(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.19(M−H)−。
融点:227.5〜229.2℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=+11.08。
甘味度:約1300倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0117】
図25には、モナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0118】
図26には、モナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、13.7°、16.6°、17.9°、18.6°、20.2°及び22.6°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0119】
[実施例12]
[Z−ラクトン(2S,4R)体のモナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶への変換]
Z−ラクトン(2R,4R)体の替わりに、Z−ラクトン(2S,4R)体・0.2酢酸エチル和物 5.23g(12.28ミリモル,HPLC純度:96.9%)を使用し、水素雰囲気下に室温で1時間還元し、90%エタノール水溶液による再結晶を2回行った以外は実施例9と同様にして、モナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶2.57g(8.14ミリモル,光学活性カラムHPLC純度:99.4%)を、総収率66.3%で得た。
【0120】
1HNMR(D2O)δ:実施例11と同様。
ESI−MS:291.49(M−H)−。
融点:227.1〜229.4℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=−9.57。
甘味度:約300倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0121】
図27には、モナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0122】
図28には、モナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、13.7°、16.6°、17.9°、18.6°、20.2°及び22.6°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0123】
[実施例13]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の調製(その1)]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩1.5gを水10mlに溶解し、25mlの陽イオン交換樹脂 DIAION PK228(カリウム型、三菱化学製)を充填したカラムに通液して所望のイオンに交換した後、溶出液を11.5gまで濃縮した。得られた濃縮液を60℃まで加熱しエタノール60mlを添加した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶1.1gを得た。
【0124】
融点:213.3〜214.7℃。
【0125】
図1には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0126】
図2には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0127】
図3には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、6.6°、11.5°、11.8°、12.2°、13.9°、17.2°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0128】
[実施例14]
[モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の調製(その2)]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩1.5gを水10mlに溶解し、25mlの陽イオン交換樹脂 DIAION PK228(Na型、三菱化学製)を充填したカラムに通液して所望のイオンに交換した後、溶出液を11.5gまで濃縮した。得られた濃縮液を60℃まで加熱しエタノール60mlを添加した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶0.2エタノール和物1.2gを得た。
【0129】
融点:193.5〜195.1℃。
【0130】
図4には、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0131】
図5には、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0132】
図6には、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、15.3°、17.5°、19.1°及び24.6°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0133】
[実施例15]
[モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の調製]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩1.5gを水10mlに溶解した。この溶解液を60℃まで加熱しエタノール60mlを添加した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)アンモニウム塩結晶0.77gを得た。
【0134】
融点:172.1〜172.8℃。
【0135】
図7には、モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0136】
図8には、モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0137】
図9には、モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。6.1°、11.6°、18.1°、19.6°及び25.0°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0138】
[比較例1]
[モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の調製]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩0.5gを50%酢酸水溶液10mlに溶解後、25℃にてエタノール25mlを1時間かけて添加した。更に、25℃で4.5時間攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶0.38gを得た。
【0139】
融点:175.2〜176.1℃。
【0140】
図10には、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0141】
図11には、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0142】
図12には、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.9°、17.9°、19.2°、23.9°及び27.8°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0143】
[比較例2]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の調製]
実施例13に従って製造したモナティンの(2R,4R)体カリウム塩1.0gを水10mlに溶解し、凍結乾燥を行い(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体0.97gを得た。
【0144】
融点:183.2〜184.8℃。
【0145】
図13には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0146】
図14には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の粉末X線回折図を示す。この図から明らかな如く、この固体はアモルファスであった。
【0147】
[実施例16]
[結晶の熱安定性の比較]
上記の方法により得られた結晶或いはアモルファス固体50mgをそれぞれ4mlのバイアル瓶に入れ、温度120℃で保存(保持)した。このとき、バイアル瓶は開放した状態とした。保持時間として3時間、7時間、及び24時間後に、それぞれサンプル2mgを抜き取り、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分解物の割合(比率)を求めた。このときの保持時間と分解物の割合の関係を下記表3及び表4に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
上記表の結果から、分解物A及びBの生成はカリウム塩が最も少なく、他の結晶に比べて格段に安定性が優れていることが分かる。分解物Bについては、遊離体結晶やアモルファス固体に比べて各種塩の結晶においてその生成が少ないことから、これらの塩の結晶が安定性において優れていることが分かる。
【0151】
[実施例17]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の調製(その2)]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩10gを水20mlに溶解し、50mlの陽イオン交換樹脂 DIAION PK228(カリウム型、三菱化学製)を充填したカラムに通液して所望のイオンに交換した後、溶出液を23.48gまで濃縮した。得られた濃縮液を35℃まで加熱しエタノール84ml約3時間かけて滴下した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶9.3gを得た。
【0152】
融点:220.0〜222.3℃。
【0153】
図15には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、12.2°、18.3°、20.6°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0154】
[実施例18]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の調製(その3)]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶1.5gを水10mlに溶解した後、溶解液を10℃まで冷却しエタノール60mlを約2.5時間かけて滴下した。このエタノール水溶液を10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、(2R,4R)体カリウム塩結晶1.2gを得た。
【0155】
融点:213.2〜215.6℃。
【0156】
図16には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.6°、11.5°、11.8°、17.2°、22.9°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0157】
[実施例19]
[結晶の水蒸気吸着脱着曲線]
上記の方法により得られたモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶(10℃、35℃、60℃で起晶)それぞれの水蒸気吸着脱着(吸脱着)曲線を求めた。この測定値を図29に示す。測定条件は以下の通りである。
【0158】
装置 :日本ベル株式会社製 自動蒸気吸着量測定装置BELSORP18
測定方式 :定容量式ガス吸着法
測定条件 :
吸着ガス :H2O
空気恒温槽温度 :323K
吸着温度 :298K
初期導入圧力 :1.0torr
導入圧力差 :0torr
飽和蒸気圧 :23.76torr
吸着断面積 :0.125nm2
最大吸着圧 :0.90
最小吸着圧 :0.10
平衡時間 :300sec
【0159】
[実施例20]
実施例14で得られたモナティンの(2R, 4R)体ナトリウム塩を、温度40℃及び湿度75%の恒温恒湿機中で2日間保存することにより結晶中のエタノールが消失した結晶が得られた。
【0160】
図30には、得られた結晶の粉末X線回折図を示す。4.4°、15.2°、17.8°、20.6°及び24.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0161】
[実施例A]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水2.5mlに溶解した後、溶解液を40℃まで加熱し、撹拌下でメタノール15mlをゆっくり滴下した。このメタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶1.03gを得た。
【0162】
図31には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0163】
[実施例B]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノールの替わりに、エタノールを用いること以外は実施例Aと同様にして、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.38g(水分:5.97%)を得た。
【0164】
図32には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0165】
[実施例C]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノールの替わりに、イソプロピルアルコールを用いること以外は実施例Aと同様にして、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.38g(水分:9.85%)を得た。
【0166】
図33には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0167】
[実施例D]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノールの替わりに、アセトンを用いること以外は実施例Aと同様にして、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.30g(水分:10.64%)を得た。
【0168】
図34には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0169】
[実施例E]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水5mlに溶解した後、溶解液を35℃まで加熱し、撹拌下でエタノール30mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.28g(水分:9.75%)を得た。
【0170】
図35には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0171】
[実施例F]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水1.7mlに溶解した後、溶解液を35℃まで加熱し、撹拌下でエタノール10mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.38g(水分:9.45%)を得た。
【0172】
図36には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0173】
[実施例G]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水1.25mlに溶解した後、溶解液を35℃まで加熱し、撹拌下でエタノール7.5mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.42g(水分:9.67%)を得た。
【0174】
図37には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0175】
[実施例H]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶475mgを水5mlに溶解した後、溶解液を10℃まで冷却し、撹拌下でエタノール30mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.36g(水分:8.26%)を得た。
【0176】
図38−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0177】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:2.11%)を得た。
図38−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。6.1°、6.6°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0178】
[実施例I]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水2.5mlに溶解した後、溶解液を25℃まで加熱し、撹拌下でエタノール15mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.40g(水分:10.39%)を得た。
【0179】
図39−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0180】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:1.69%)を得た。
【0181】
図39−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、6.6°、11.5°、11.8°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0182】
[実施例J]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶213mgを水1.25mlに溶解した後、溶解液を40℃まで加熱し、撹拌下でエタノール7.5mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.19g(水分:6.43%)を得た。
【0183】
図40−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0184】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:5.43%)を得た。
【0185】
図40−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。6.1°、6.6°、11.5°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0186】
[実施例K]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶217mgを水1.25mlに溶解した後、溶解液を60℃まで加熱し、撹拌下でエタノール7.5mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.20g(水分:7.25%)を得た。
【0187】
図41−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0188】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:4.79%)を得た。
【0189】
図41−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。6.1°、6.6°、11.5°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0190】
[実施例L]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
モナティンの(2R、4R)体アンモニウム塩420mgをメタノール25mlに45℃で溶解した後、撹拌下で20wt%水酸化カリウム/メタノール溶液0.3mlをゆっくり滴下した。このメタノール溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.22g(水分:5.64%)を得た。
【0191】
図42には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、6.6°、11.5°、11.8°、12.2°、13.9°、17.2°、18.3°、22.9°、23.1°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0192】
[実施例M]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノール25mlと20wt%水酸化カリウム/メタノール溶液0.38mlを混合し、この中にモナティンの(2R、4R)体アンモニウム塩400mgを添加した。このメタノール溶液を室温下で一晩撹拌した。得られたスラリーを分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩固体0.25g(水分:5.42%)を得た。
【0193】
図43には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩固体の粉末X線回折図を示す。この図から明らかな如く、この固体はアモルファスであった。
【0194】
[実施例N]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、60℃の恒温槽内で一晩放置した。
【0195】
図44には、60℃で保存したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:7.04%)の粉末X線回折図を示す。6.1°、12.2°、18.3°、20.6°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0196】
[比較例N]
60℃の恒温槽の替わりに、10℃の冷蔵庫を用いること以外は実施例Nと同様にして、前記結晶を一晩放置した。この結晶(水分:6.96%)の粉末X線回折図は図15と同様であった。
【0197】
[実施例O]
60℃の恒温槽の替わりに、120℃の恒温槽を用いること以外は実施例Nと同様にして、前記結晶を一晩放置した。
【0198】
図45には、120℃で保存したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:4.73%)の粉末X線回折図を示す。6.1°、12.2°、18.3°、20.6°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0199】
[実施例P]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、相対湿度97%に保ったデシケーター内で一晩放置した。
【0200】
図46には、相対湿度97%で保存したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:8.61%)の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0201】
[比較例P1]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、相対湿度75%の恒温恒湿機中で一晩放置した。この結晶(水分:5.43%)の粉末X線回折図は図15と同様であった。
【0202】
[比較例P2]
実施例Gに従って得られたモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶200mgを、相対湿度10%に保ったデシケーター内で一晩放置した。この結晶の粉末X線回折図は図37と同様であった。
【0203】
[実施例Q]
実施例Fに従って得られたモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶240mgを、60℃で減圧乾燥した。
【0204】
図47には、60℃で減圧乾燥したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:1.04%)の粉末X線回折図を示す。6.6°、13.9°、22.9°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0205】
[比較例Q]
実施例Fに従って得られたモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、40℃で減圧乾燥した。この結晶の粉末X線回折図は図36と同様であった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶及びその使用に関し、更に詳しくは甘味剤又はその有効成分(甘味料)として優れている、天然型モナティン(Monatin)((2S,4S)体)の立体異性体塩(非天然型立体異性体塩)の結晶、当該非天然型立体異性体塩の混合物の結晶、このような非天然型立体異性体塩のうち少なくとも1種と天然型モナティン((2S、4S)体)塩を含む混合物の結晶、並びにこれらの塩の結晶の使用に関する。この非天然型立体異性体塩には、モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体等非天然型の各種立体異性体の塩が含まれ、このような塩の代表例として、このような塩の単独品(当該非天然型立体異性体の何れか1種の塩)、その複数種の塩混合物、これら少なくとも1種の塩を含む混合物(組成物)等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の高度化に伴い、特に糖分の摂取過多による肥満及びこれに伴う各種疾病が問題となっており、砂糖に代わる低カロリー甘味剤の開発が強く望まれている。求められる甘味剤には甘味強度以外に、低カロリー、安全性、熱や酸に対する安定性、甘味質、コスト等、多くの諸特性、要件が求められる。
【0003】
現在、各種の甘味剤が使用又は提案されている。例えば、甘味強度(甘味度)が強く工業的に大量生産可能な甘味剤として実用化され、広範に使用されているものとして、安全性と甘味質の面で優れているアスパルテームが存在する。更に、アスパルテームの誘導体についての研究も盛んに行われている。これら以外にも、甘味剤として各種の特性を有する甘味物質が提案され、実用化に向けた検討がなされている。また、天然に存在し大量に採取できる植物由来のソーマチン、グリチルリチン、ステビオシド等が天然甘味剤として現在使用されている。このような情況下に、甘味剤としての実用化が期待でき、甘味度が強い甘味物質の開発が求められている。
【0004】
モナティンは南アフリカの北部トランスバール(northern Transvaal)地方に自生する植物シュレロチトン イリシホリアス(Schlerochiton ilicifolius)の根皮から単離された天然由来のアミノ酸誘導体であり、R. Vleggaar等により、その構造に関し、(2S,4S)-2-amino-4-carboxy-4-hydroxy-5-(3-indolyl)-pentanoic acid((2S,4S)-4-hydroxy-4-(3-indolylmethyl)-glutamic acid;後述の構造式(1)参照。)と報告されている(R. Vleggaar et. Al., J. Chem. Soc. Perkin Trans., 3095-3098, (1992)参照。)。また、この天然植物由来の(2S,4S)体(天然型モナティン)の甘味強度は、同文献等によると、ショ糖の800倍〜1400倍と報告されている。モナティンの合成法については、幾つかの方法が報告されているものの、それらの多くは立体異性体混合物の合成法に関するものであり、天然型モナティンと同一化学構造式を有する4種の立体異性体それぞれを純品として合成、単離し、それらの諸性質を詳細に調べ、報告した例は殆ど無い。(その合成例については、P. J. van Wyk et. al., ZA 87/4288, ZA 88/4220、Holzapfel et. al., Synthetic Communications, 24(22), 3197-3211 (1994)、 E. Abushanab et. al., US 5,994,559 (1999)、K. Nakamura et. al., Organic Letters, 2, 2967-2970 (2000)等を参照することができる。)
【0005】
先ず、最初にモナティンについて言及しているP. J. van Wyk等の特許文献によると、彼等はX線結晶構造解析で天然に存在し強い甘味を持つ立体異性体が(2S,4S)体か或いは(2R,4R)体であることをつきとめているが、(2S)−アスパラギン酸から(2S,4S)体と(2S,4R)体との混合物を合成した結果と総合して、天然に存在して強い甘味を持つ立体異性体は(2S,4S)体の可能性が高いと報告している。次に、前述のR. Vleggaar等の文献によると天然植物に存在するモナティンの立体異性体(立体構造)は唯一(2S,4S)体であり、その甘味強度はショ糖の800〜1400倍であると報告している。これらの情報を基にすると、天然に存在し強い甘味の本体であるモナティンの立体異性体(立体構造)は(2S,4S)体と考えるのが妥当である。
【0006】
K. Nakamura等は前記引例の文献で、モナティンの(2S,4S)体とモナティンの(2S,4R)体の塩酸塩を単離しこれらの甘味強度について、それぞれ天然標品のモナティン((2S,4S)体)と同等の甘味、及び恐らくは不純物として混在すると考えられるモナティン((2S,4S)体)に由来するものと思われる僅かな甘味を呈したと報告しているが、具体的な甘味強度についての報告は無い。即ち、この文献はモナティンの非天然型立体異性体((2S,4S)体以外)の甘味強度について言及した初めての例であるが、モナティンの(2S,4R)体塩酸塩には殆ど甘味が無いと報告している。
【0007】
一方、T. Kitahara等は甘味料としてモナティンの各立体異性体の選択的合成法について報告しているが、各立体異性体の甘味度については報告していない(T. Kitahara等、日本農芸化学会、2000年度大会 講演要旨集、3B128β(221ページ)参照。)。
【0008】
これらの情報を総合すると、下記のことが判明している:
(1)天然に存在し、800〜1400倍の甘味強度を持つモナティンの立体異性体(立体構造)は(2S,4S)体である;及び
(2)モナティンの他の非天然型立体異性体については、その一部について少量を単離した例はあるがその純品を単離精製し、甘味効果を確認した例は無い。
【0009】
即ち、これまで、5〜10%のショ糖濃度に相当する実用濃度での、モナティンの各立体異性体の甘味強度については、天然由来のモナティン((2S,4S)体)を除いて、明確なデータは無い。従って、モナティン((2S,4S)体)以外のモナティンの非天然型立体異性体が甘味剤として使用可能かどうか既存の文献、特許文献等からは知り得ない。換言すれば、天然由来のモナティン((2S,4S)体)を除き、甘味度(甘味強度)についての信頼できる情報に乏しく、先行技術情報を総合判断した場合には、モナティン((2S,4S)体)以外の非天然型モナティン立体異性体については甘味度が低く、甘味剤としての有用性が期待できないと考えざるを得ない情況にあった。
【0010】
この一因として、これまで前記各種立体異性体を合成し、単離精製する方法が見出されていなかったことが挙げられる。
【0011】
従って、少なくとも数百mg以上の天然型モナティン及びその3種の非天然型立体異性体それぞれを純品として単離精製し、それぞれの光学純度と甘味強度を明らかにし、更にモナティン((2S,4S)体)及びその立体異性体(即ち、非天然型立体異性体)の甘味剤としての有用性を明らかにし、その結果有用性の高い成分を含む甘味剤を開発することが求められている。
【0012】
モナティンの各種立体異性体を高純度に分離する方法として、先ず結晶化の方法が考えられる。そこで、モナティンの結晶(遊離体、塩等の形態を含む。)について若干説明すると、以下の通りである。
【0013】
従来の報告では、前述のR. Vleggaar等の文献にモナティン((2S,4S)体)の遊離体の結晶を水、酢酸及びエタノール(1:1:5)の混合溶媒から得たと報告されており、その融点は216℃〜220℃と記載されている。また、P. J. van Wyk等の特許文献には、モナティン((2S,4S)体)の遊離体(crystalline solid)の融点は247℃〜265℃(分解)であると記載されているが、各種塩に関してはアモルファス状固体(amorphous solid)であると報告されている。前述のC. W. Holzapfel等の文献には合成モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体混合物の遊離体の結晶を水及び酢酸(10:1)の混合溶媒から2度の晶析により得て、その融点が212℃〜214℃であると報告されている。従って、モナティンの(2S,4S)体の遊離体等これら2例以外のモナティンの非天然型立体異性体及びそれら複数の立体異性体混合物については、遊離体はもとより、各種塩に関しても結晶状態で単離されたことは無く、従って物性値その他の情報は全く知られていない。即ち、モナティンに関しては、従来のイオン交換クロマトグラフィー等による精製法に比べて、精製手段として最も簡便かつ有効な方法である晶析法及びそれによって得られる結晶についての知見はモナティン((2S,4S)体)の遊離体及びモナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体の遊離体混合物の2例を除いては無く、特に塩の結晶については皆無である。即ち、モナティンの各種立体異性体を甘味剤として実用化する観点からこのような結晶についてその諸物性を明らかにすることが、先ず求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ZA 87/4288
【特許文献2】ZA 88/4220
【特許文献3】US 5,994,559
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Holzapfel et. al., Synthetic Communications, 24(22), 3197-3211 (1994)
【非特許文献2】K. Nakamura et. al., Organic Letters, 2, 2967-2970 (2000)
【非特許文献3】T. Kitahara等、日本農芸化学会、2000年度大会 講演要旨集、3B128β(221ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は甘味剤としての実用化が期待でき、甘味強度が強い甘味物質を提供することにある。具体的には、天然型モナティン及びその3種の非天然型立体異性体をそれぞれ純品、特に結晶として分離精製し、これらの光学純度を確認する方法を確立し、更に、ショ糖の800倍〜1400倍と言われている天然型モナティン((2S,4S)体)の甘味強度(甘味度)を確認すると共に、他の3種の立体異性体の甘味強度を決定し、これらの立体異性体の甘味剤としての実用性を明らかにすることにある。更に、これらの立体異性体の各種塩の結晶に関して、諸物性を始めとする特徴を明らかにし、物性面からの実用性を明らかにすることも重要な課題である。
【0017】
尚、前述の通り、天然型モナティンはその立体構造において(2S,4S)体を示すが、本発明においては、それと同一の化学構造式を有する化合物を全て「モナティン」と総称し、従って、モナティンの非天然型立体異性体を、「天然型モナティンの立体異性体」、「非天然型モナティン」、「モナティンの(2S,4R)体」、「モナティンの(2R,4S)体」、或いは「モナティンの(2R,4R)体」等と称する。また、これらの立体異性体に、モナティン((2S,4S)体)を加えて、これらを「4種の立体異性体」と称したり、特に天然型モナティンを、「モナティン」、「モナティン((2S,4S)体)」或いは「モナティンの(2S,4S)体」等と称する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は上記課題を解決すべくモナティンについて鋭意検討を行った。先ず、K. Nakamura等の方法に従って、モナティンの(2S,4S)体とモナティンの(2S,4R)体との、及びモナティンの(2R,4R)体と(2R,4S)体との立体異性体(異性体混合物)を合成し、これらの立体異性体混合物から逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で目的とする立体異性体を分離、取得した。これらの方法によって得た立体異性体は後述の方法で各種塩基との塩として結晶化して更に高純度の結晶を得ることもできた。次に、これらの立体異性体の光学純度を光学活性カラムHPLC法で確認した。更に、得られたモナティンの4種立体異性体の甘味強度をショ糖を標準液として測定して決定した。
【0019】
その結果、天然型モナティン((2S,4S)体)の甘味強度は、従来報告されている値よりもはるかに低いものであることが判明し、これ以外の非天然型立体異性体については何れもモナティン((2S,4S)体)以上の甘味強度を有し、その中には(2S,4S)体に比較して格段に優れた甘味強度を有するものも存在し、これらが甘味物質として優れていることを見出した。
【0020】
即ち、モナティンの(2R,4S)体が5%のショ糖水溶液と比較して約1300倍、またモナティンの(2R,4R)体が5%のショ糖水溶液と比較して約2700倍の甘味強度をそれぞれ有することを新たに見出し、非天然型立体異性体のうち(2R)体が特に甘味剤として優れているとの新知見を得た。
【0021】
次に、前述の合成法等によって得たモナティンの立体異性体混合物を各種塩基との塩として晶析する方法、誘導体として晶析する方法、誘導体を光学異性体分離カラムで分離する方法等を検討し、これらの方法によっても各立体異性体を光学的に純品として得ることに成功した。このようにして得られたそれぞれの立体異性体及びそれらの混合物の各種晶析条件を見出し、各種塩の結晶を初めて取得することに成功し、甘味強度を始め種々の物性値を測定することができた。特に、今回初めて得ることができたこれらの塩基との塩の結晶、特にモナティンの非天然型立体異性体塩の結晶が、従来知られていたR. Vleggaar等の報告にある(2S,4S)体の遊離体結晶や、P. J. van Wyk等の特許文献でアモルファス状固体としてのみ知られていた各種塩の非晶形物質に比べ、単離精製の容易さや結晶状態での安定性等の点で優れた諸性質を持つことを見出した。特に、甘味強度の強いモナティンの(2R,4R)体のカリウム塩は、結晶化の際に用いる有機溶媒を付着溶媒として含まない点、加熱安定性に優れている点、酸性条件下で晶析を行って得る遊離体に比べて着色し難い点等で最も実用的な製品形態として優れている。
【0022】
更に、このモナティンの非天然型立体異性体塩の結晶を使用して、甘味剤或いは飲食品等を提供できることを見出した。
【0023】
以上のような各種の知見に基づいて本発明が完成されるに到った。
【0024】
以上、本発明においては、天然の立体異性体であるモナティン((2S,4S)体)を始めとして、これを含めてそれと同一化学構造式を有する4種の立体(光学)異性体の分離精製及びこれらの光学純度の確認を初めて行うと共に、モナティンの全立体異性体(4種)のより正確な甘味強度を明らかにした。この結果、モナティンの非天然型立体異性体塩の新規な結晶が、従来得られている(2S,4S)体等の遊離体の結晶や前述特許記載の塩のアモルファス状固体に比べて甘味物質及び甘味物質としての実用的な製品形態として優れていること、即ちモナティンの非天然型立体異性体塩の結晶が甘味剤として有用性を有することが見出され、中でもモナティンの(2R,4R)体塩結晶が4立体異性体の中で最も強力で、従来の知見からは予測し得ない甘味強度を有し、実用に供する甘味剤又はその成分として最も適していることも確認された。
【0025】
即ち、本発明は、一つの形態として、モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶に存する。本発明はアミノ酸系甘味物質、モナティン(Monatin)の非天然型立体異性体塩の結晶に関し、この立体異性体塩にはモナティンの(2R,4R)体塩、(2R,4S)体塩及び(2S,4R)体塩の少なくとも1種が含まれる。
【0026】
本発明において、当該立体異性体塩の結晶を構成する化合物は前記非天然型立体異性体の塩であり、その水和物、溶媒和物等の形態でもよい。更に、この化合物はこのようなモナティンの塩で、分子内で環化したラクトン又はラクタムの形態、及び/又は含まれる官能基の少なくとも一つが保護された形態でもよい。
【0027】
本発明の結晶に含まれる塩の種類、形態等には、特に制限は無い。最終的製品としての食品用として使用される場合には当然食品用に使用可能な塩が採用される。その他、中間体として適した塩も有用である。これらのこと(上記結晶の形態及び塩の種類、形態等)は、モナティンの非天然型立体異性体塩(結晶)の形態の場合に限らず、後述するように混合して使用される場合のモナティンの天然型立体異性体塩(結晶)の形態についても同様に適用される。
【0028】
このような塩の形態としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニア等とのアンモニウム塩、リジン、アルギニン等のアミノ酸との塩、塩酸、硫酸等の無機酸との塩、クエン酸、酢酸等の有機酸との塩及びサッカリン(saccharin)、アセスルフェーム(acesulfame)、シクラミン酸(cyclamic acid)、グリチルリチン酸(glycyrrhizic acid)、アスパルテーム(aspartame)等の他の甘味剤又はその成分との塩が挙げられ、これらも前述の通り前記本発明に使用する当該立体異性体の塩や、使用される場合の天然型モナティンの塩に適用することができる。
【0029】
上記塩の形成方法については、本発明についての説明(実施例等)に基いて、必要により慣用され又は公知の造塩方法を利用して、目的とする塩を調製することができる。
【0030】
前記立体異性体の中には、使用される場合の天然型モナティンを含めて、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、インドリル(インドール)基等の官能基が含まれているが、これらの官能基は保護されていてもよい。保護基としては、有機化学、特にアミノ酸やペプチド化学においてそれぞれの保護基として常用される保護基を使用することができる。
【0031】
本発明の結晶には、下記の内容[1]−[6]が含まれる。
【0032】
尚、天然型モナティンである(2S,4S)体、並びに非天然型モナティンである(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体は下記の構造式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される。
【0033】
[1]
当該非天然型立体異性体塩として、モナティンの(2S,4R)体塩、(2R,4R)体塩及び(2R,4S)体塩を挙げることができる。当該塩の結晶としては水和物及び溶媒和物等の形態でもよい。
これら立体異性体塩の中では、モナティンの(2R,4S)体及び(2R,4R)体がより好ましく、更にモナティンの(2R,4R)体が最も好ましい。このような本発明に含まれる塩の結晶は、単離精製の容易さ及び保存安定性に優れていること等から好ましい。
【0034】
[2]
上記本発明の非天然型立体異性体塩の結晶は、当該立体異性体の塩(水和物、溶媒和物等の形態を含む。)を、好ましくは少なくとも95%程度、より好ましくは少なくとも97%程度の化学純度で有することができる。
【0035】
[3]
上記本発明の非天然型立体異性体塩の結晶は、好ましくは少なくとも90%程度、より好ましくは少なくとも94%程度、更に好ましくは少なくとも98%程度の光学純度を有することができる。例えば、モナティンの(2R,4R)体の塩(水和物、溶媒和物、それら塩混合物の形態等を含む。)の高光学純度品を挙げることができる。
【0036】
[4]
上記本発明の立体異性体塩の結晶として、モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体の立体異性体塩の中から選択される、少なくとも2種の混合物結晶を採用することができる。
【0037】
[5]
上記本発明の非天然型立体異性体塩の結晶としては、5〜10%の実用濃度のショ糖の、好ましくは少なくとも200倍程度、より好ましくは少なくとも1000倍程度の甘味強度を示すものを採用することができる。
【0038】
[6]
上記本発明の立体異性体塩の結晶は、天然型モナティン((2S,4S)体)の塩の結晶との混合状態で使用することができる。この場合、全モナティンに対して、当該モナティンの(2S,4S)体を、好ましくは多くとも70%程度、より好ましくは多くとも50%程度含有することができる。
【0039】
当該天然型モナティン塩の結晶を構成する化合物は天然型モナティンの塩であり、その水和物、溶媒和物等の形態で使用することもできる。更に、この化合物を、このようなモナティンの塩で、分子内で環化したラクトン又はラクタムの形態、及び/又は含まれる官能基の少なくとも一つが保護された形態で使用することができる。
【0040】
この場合にも、当該天然型立体異性体を含む塩の結晶状態での、混合物結晶の甘味強度として、上記実用濃度のショ糖の、好ましくは少なくとも200倍程度、より好ましくは少なくとも1000倍程度のものを好ましいものとして、目的とする混合物結晶を調製することができる。
【0041】
上記好ましい例として、モナティンの(2S,4S)体とモナティンの(2R,4R)体との塩の混合物結晶、特にモナティンの(2S,4S)体塩とモナティンの(2R,4R)体塩との比率(重量)が1:0.5〜2程度、特に好ましくは1:1程度である塩の混合物結晶を挙げることができる。
【0042】
本発明は、別の形態として、上記本発明(前記[1]から[6]を含む。)の非天然型立体異性体塩の結晶を含有することに特徴を有する甘味剤にも存する。
【0043】
当該甘味剤には、甘味剤用の担体及び/又は増量剤等を含んでいてもよい。
【0044】
甘味剤用に使用できることが知られ、また今後そのために開発される担体や、増量剤を含んでいてもよい。更に、甘味剤のために使用され得る添加剤を含むことも当然できる。甘味剤は動物用、例えば哺乳動物用、特にヒト用に使用される。
【0045】
本発明は、更に別の形態として、上記本発明(前記[1]から[6]を含む。)の非天然型立体異性体の塩の結晶を含有することに特徴を有する甘味が付与された飲食品等の製品にも存する。
【0046】
甘味が求められる動物用製品、特にヒト用の飲食品で甘味が求められる飲食品等に甘味剤の少なくとも一部として、当該結晶を使用することができる。その他、歯磨き、薬品等口内の衛生目的で、或いは経口的に使用される製品で甘味を付与すべき製品に当該結晶が使用され得る。
【0047】
前記本発明の甘味剤及び飲食品等の製品には、更に他の甘味剤成分(甘味料)、特に糖類、並びに他の人工甘味料及び天然の甘味料の少なくとも1種を含有することができる。例えば、ショ糖、アスパルテーム、アセスルフェーム、スクラロース、サッカリン、ステビオサイド、キシロース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール等を併用することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明により、新規甘味物質、モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶を有効成分として使用することにより新規甘味剤又は甘味を付与した飲食品等の製品を提供することができる。当該立体異性体塩の結晶は、特に保存安定性に優れ、強い甘味強度を示し、甘味剤として優れた呈味性を発現する。その中でも当該非天然型立体異性体塩の結晶として、モナティンの(2R,4R)体塩(カリウム塩等)の結晶が好ましく、特に優れた呈味性及び保存安定性を有する。
【0049】
更に、本発明により、甘味剤或いはその成分として、また飲食品等に対する甘味付与成分としても優れた性質を有する新規甘味物質(上記モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶)を提供することができる。
【0050】
故に、本発明は工業的に、特に食品分野において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、実施例13においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図2】図2は、実施例13においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図3】図3は、実施例13におけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。縦軸には回折強度を、横軸には回折角度2θ[deg]を、それぞれ示す(以下の粉末X線回折図についても同様である。)。
【図4】図4は、実施例14においてモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図5】図5は、実施例14においてモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図6】図6は、実施例14におけるモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図7】図7は、実施例15においてモナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図8】図8は、実施例15においてモナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図9】図9は、実施例15におけるモナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図10】図10は、比較例1においてモナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図11】図11は、比較例1においてモナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図12】図12は、比較例1におけるモナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図13】図13は、比較例2においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図14】図14は、比較例2においてモナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図15】図15は、実施例17におけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図16】図16は、実施例18におけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図17】図17は、実施例2においてモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図18】図18は、実施例2におけるモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図19】図19は、実施例2においてモナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図20】図20は、実施例2におけるモナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図21】図21は、実施例3においてモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図22】図22は、実施例3におけるモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図23】図23は、実施例4においてモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図24】図24は、実施例4におけるモナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図25】図25は、実施例11においてモナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図26】図26は、実施例11におけるモナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図27】図27は、実施例12においてモナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示したものである(倍率200倍)。
【図28】図28は、実施例12におけるモナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図29】図29は、実施例19におけるモナティン(2R,4R)体カリウム塩(起晶温度10℃、35℃、60℃)の水蒸気吸着脱着(吸脱着)曲線を示した図である。 縦軸:水分(Moisture)(重量%);横軸:相対湿度(Relative Humidity)(%)。 △:10℃ 吸着;▲:10℃ 脱着;◇:35℃ 吸着;◆:35℃ 脱着;○:60℃ 吸着;●:60℃ 脱着。
【図30】図30は、実施例20におけるモナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図31】図31は、実施例Aにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図32】図32は、実施例Bにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図33】図33は、実施例Cにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図34】図34は、実施例Dにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図35】図35は、実施例Eにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図36】図36は、実施例Fにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図37】図37は、実施例Gにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図38−1】図38−1は、実施例Hにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図38−2】図38−2は、実施例Hにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図39−1】図39−1は、実施例Iにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図39−2】図39−2は、実施例Iにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図40−1】図40−1は、実施例Jにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図40−2】図40−2は、実施例Jにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図41−1】図41−1は、実施例Kにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図41−2】図41−2は、実施例Kにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図である。
【図42】図42は、実施例Lにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図である。
【図43】図43は、実施例Mにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩固体の粉末X線回折図である。
【図44】図44は、実施例Nにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【図45】図45は、実施例Oにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【図46】図46は、実施例Pにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【図47】図47は、実施例Qにおけるモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0053】
(2S)体モナティン(モナティンの(2S,4S)体と(2S,4R)体の混合物)、(2R)体モナティン(モナティンの(2R,4R)体と(2R,4S)体の混合物)及び4種立体異性体の混合物については、前述のK. Nakamura等の方法に従って合成することができ、これより各立体異性体を分離することができるが、各種の立体異性体を含むモナティンの合成法としては、別の方法を採用することもでき、前記K. Nakamura等の方法に限るものではない。
【0054】
以下、各種の立体異性体を含むモナティンから各立体異性体を分離精製する場合の例を簡単に説明する。これらは例として説明されるものであり、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0055】
K. Nakamura等の方法に従って合成した(2S)体モナティン及び(2R)体モナティンの立体異性体については、逆相HPLCで分離、分取することができるが、モナティンの立体異性体の分割法としては、これに限るものではない。
【0056】
既報告の方法等に従って合成した4種の立体異性体を分離して各立体異性体を得ることも可能である。例えば、モナティンの4種立体異性体を塩として或いは誘導体として晶析を行う方法や、誘導体を光学異性体分離カラムで分離し、得られた異性体を再びモナティンに戻す方法を用いることができるが、立体異性体の分割法はこれらに限られるものではない。
【0057】
本発明の結晶を構成する成分は前記モナティン塩であるが、前記の如く、そのラクトン誘導体やラクタム誘導体等、別の形態で使用することもできる。例えば、当該モナティンの塩において分子内で環化したラクトン又はラクタム誘導体を形成するには、分子内で環化したラクトン又はラクタムを形成する方法として知られている方法を利用して行うことができる。また、官能基の少なくとも一つが保護された誘導体を形成する場合にも、官能基保護法として知られている方法を利用して行うことができる。
【0058】
得られた各立体異性体結晶の光学純度を、光学活性カラムHPLC法で決定することができるが、光学純度の決定法はこれに限られるものではない。
【0059】
得られた各立体異性体結晶の甘味強度(甘味度)を5%ショ糖水溶液と比較して決定することができるが、甘味強度の決定法としてはこれに限るものではない。
【0060】
次に、各立体異性体の構造と甘味強度、或いは光学純度との関係を表1及び2に示す。表1にはHPLCで分取し、イオン交換樹脂で精製し、アンモニウム塩として凍結乾燥した試料について、表2にはナトリウム塩として結晶化精製した試料について、それぞれの評価結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示したように、天然に存在する(天然型)モナティン((2S,4S)体)の甘味強度は約50倍と従来の報告より低い値であることが分かる。興味深いことに、モナティンの他の3種の立体異性体全てがモナティン((2S,4S)体)以上の甘味強度を示し、特にモナティンの(2R,4R)体は約2700倍と最も強い甘味強度を示した。
【0064】
クロマトグラフィー等により分離したり、合成法等によって得た各種立体異性体から、更に晶析法により各立体異性体の塩を高純度に結晶として分離することができる。
【0065】
前記表1と表2に示した評価結果の比較から、(2R)体については結晶化によって光学純度を含めた純度が高くなっており、塩の結晶とすることの有用性が示されている。
【0066】
尚、本発明の非天然型立体異性体塩(水和物、溶媒和物等含む。)の結晶(当該立体異性体には分子内で環化したラクトン又はラクタムの形態、含まれる官能基の少なくとも一つが保護された形態等を含む。)を甘味剤として使用する場合、特別の支障が無い限り、他の甘味剤と併用してもよいことは勿論である。
【0067】
本発明の立体異性体塩(水和物、溶媒和物等含む。)の結晶を甘味剤として使用する場合、必要により担体及び/又は増量剤を使用してもよく、例えば従来から知られ、又は使用されている甘味剤用の担体、増量剤等を使用することができる。
【0068】
本発明の立体異性体塩(水和物、溶媒和物等含む。)の結晶を甘味剤又は甘味剤成分として使用することができるが、更に甘味の付与を必要とする飲食品等の製品、例えば菓子、チューインガム、衛生製品、化粧品、薬品及びヒト以外の動物用製品等の各種製品の中に甘味剤や甘味成分として、当該結晶を含有せしめて使用することができる。更に、本発明の非天然型立体異性体塩結晶を含有又は使用し甘味が付与された製品の形態として、また甘味の付与を必要とする当該製品に対する甘味付与方法における甘味付与成分として、本発明の非天然型立体異性体塩の結晶を使用することができ、その使用方法等については、甘味剤の使用方法として慣用されている従来法その他公知の方法に従うことができる。
【0069】
好適な実施の形態
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
1H−NMRスペクトルについては、Bruker AVANCE400(400MHz)により、MSスペクトルについては、Thermo Quest TSQ700により、それぞれ測定した。陽イオン交換樹脂として、AMBERLITE IR120B H AG 及びDIAION PK228を使用した。粉末X線解析については、Phillips社製 PW3050で測定した。融点については、Yanaco社 MICRO MELTING POINT APPARATUSで測定した。旋光度については、日本分光社製(JASCO ENGINEERING社)DIP−370 Degital Polarimeterで測定した。
【0071】
[実施例1]
K. Nakamura等の方法(K. Nakamura et. al., Organic Letters, 2, 2967-2970 (2000)参照。)に従ってモナティンの合成を行い、最後に陽イオン交換樹脂(H+型)に吸着、3%アンモニア水での溶出、及び凍結乾燥による精製を行い、(2S)体モナティンのアンモニウム塩(モナティンの(2S,4S)体と(2S,4R)体の混合物)2.92gと(2R)体モナティンのアンモニウム塩(モナティンの(2R,4R)体と(2R,4S)体の混合物)711mgを得た。
【0072】
以下の分取条件で(2S)体モナティン660mgと(2R)体モナティン711mgからそれぞれを分割し、モナティンの(2S,4S)体207mg、モナティンの(2S,4R)体233mg、モナティンの(2R,4R)体261mg及びモナティンの(2R,4S)体254mgを、アンモニウム塩の形態でアモルファス固体として得た。
【0073】
(分取条件)
ガードカラム:Inertsil ODS-3 30x50mm;
カラム :Inertsil ODS-3 30x250mm;
検出 :UV 210nm;
溶離液 :<A> アセトニトリル 0.05%TFA <B> H2O 0.05%TFA;
流速 :28ml/min;
グラジエント:25minで<A>12%から18%;
負荷量 :10〜13mg;及び
作業温度 :25℃。
【0074】
(分取後の処理)
分取画分をアンモニア水で中和し、濃縮した。分取画分を合わせて濃縮した後、陽イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B H AGのH+型)に吸着させた。5%アンモニア水で溶出し、溶出画分を凍結乾燥した。
【0075】
次に示す分析条件で各立体異性体の光学純度(エナンチオマー純度)を検定した。
(分析条件)
カラム:CROWNPAK CR(+) 4x150mm;
検出 :UV 210nm;
溶離液:過塩素酸水(pH2.0)/メタノール=90/10;
流速 :1.2ml/min;及び
分析温度:25℃。
【0076】
各立体異性体の光学純度は以下の通りであった。( )内には各ピークの溶出時間を示す。
モナティンの(2S,4S)体:94%(45.0min);
モナティンの(2S,4R)体:94%(26.1min);
モナティンの(2R,4R)体:94%(20.9min);及び
モナティンの(2R,4S)体:96%(16.1min)。
【0077】
それぞれの立体異性体に含まれる不純物の主なものは、それぞれの鏡像体であった。例えば、モナティンの(2S,4S)体には少量のモナティンの(2R,4R)体が含まれていた。
【0078】
得られた各立体異性体の甘味強度を以下の方法で測定した。
【0079】
各立体異性体の0.05%水溶液を調製し、これを適宜希釈して、所定の濃度の試料水溶液を調製した。別途、ショ糖の5%水溶液を調製し標準液とした。希釈した試料の水溶液と標準のショ糖水溶液を交互に味わい、それらの甘味強度が同等であると感じた時の試料濃度から甘味倍率を求めた。この評価は7人のパネリストによって行った。
【0080】
各立体異性体の甘味強度は以下のように決定された。
モナティンの(2S,4S)体:約300倍;
モナティンの(2S,4R)体:約300倍;
モナティンの(2R,4R)体:約2000倍;及び
モナティンの(2R,4S)体:約800倍。
【0081】
各立体異性体の旋光度([α]D25(c=0.5))を測定した結果は以下の通りであった。
モナティンの(2S,4S)体:-44.1(H2O)、-7.5(3%アンモニア水);
モナティンの(2S,4R)体:-7.8(H2O);
モナティンの(2R,4R)体:+3.7(H2O)、 +8.7(3%アンモニア水);及び
モナティンの(2R,4S)体:+11.1(H2O)。
【0082】
各立体異性体の1H-NMRは以下の通りであった(400MHz,D2O)。
モナティンの(2S,4S)体及び(2R,4R)体アンモニウム塩:
1.96(1H, dd,J=11.8Hz,J=15.2Hz),2.57(1H,dd,J=1.9Hz,J=15.2Hz),3.00(1H,d,J=14.6Hz),3.20(1H,d,J=14.6Hz),3.54(1H,d,J=10.2Hz),7.04(1H,t,J=7.2Hz),7.10(1H,t,J=7.2Hz),7.10(1H,s),7.38(1H,d,J=8.0Hz),7.62(1H,d,J=8.0Hz)。
【0083】
モナティンの(2S,4R)体及び(2R,4S)体アンモニウム塩:
2.11(1H,dd,J=10.4Hz,J=15.0Hz),2.37(1H,d,J=15.4Hz),3.13(2H,s),3.88(1H,d,J=9.8Hz),7.05(1H,d,J=7.6Hz),7.14(2H,s),7.38(1H,d,J=7.9Hz),7.63(1H、d、J=7.9Hz)。
【0084】
各立体異性体のMSスペクトルは以下の通りであった。
ESI−MS:291(M−H)−。
【0085】
[実施例2]
[モナティン4種立体異性体混合物のアンモニウム塩の(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体結晶及び(2S,4R)体と(2R,4S)体とのラセミ体結晶への分割]
モナティンの立体(光学)異性体混合物(モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体:モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体=6:4)のアンモニウム塩10.00g(32.33ミリモル)を、2.5%アンモニア水100mlに溶解し、得られた溶液を20mlになるまで濃縮した。新たに、5%アンモニア水3mlを加え均一にした後、室温にて30分静置した。結晶析出後、5%アンモニア水/エタノール=25/75の水溶液80mlを加えてスラリー状にし、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩の結晶を濾取した。得られた結晶を再び2.5%アンモニア水30mlに溶解し濃縮した後、5%アンモニア水0.5mlとエタノール30mlにて再結晶し、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶 4.80g(15.52ミリモル,逆相HPLC純度(以下、「HPLC純度」と称する。):98.0%)を得た。
【0086】
1HNMR(D2O)δ:1.95−2.02(m,1H),2.58−2.62(m,1H),3.01−3.05(m,1H),3.21−3.24(m,1H),3.55−3.58(m,1H),7.07−7.11(m,1H),7.14−7.18(m,2H),7.42−7.44(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.39(M−H)−。
融点:182〜186℃。
甘味度:約1300倍(5%ショ糖水溶液と比較)。
【0087】
図17には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0088】
図18には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。6.0°、12.1°、15.2°、18.6°、21.3°、23.2°及び25.0°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0089】
前述の操作で得た濾液(モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体:モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体=3:10)を5mlになるまで濃縮した。新たに、5%アンモニア水3mlを加えて均一にした後、室温にて10分静置した。結晶析出後、エタノール80mlを加えてスラリー状にし、モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]アンモニウム塩の結晶を濾取した。得られた結晶を再び2.5%アンモニア水30mlに溶解し濃縮した後、5%アンモニア水0.5mlとエタノール30mlによる再結晶を3回行い、モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶3.10g(10.02ミリモル,HPLC純度98.2%)を得た。総回収率は79.0%であった。
【0090】
1HNMR(D2O)δ:2.11−2.17(m,1H),2.38−2.43(m,1H),3.16(s,2H),3.90−3.93(m,1H),7.06−7.10(m,1H),7.13−7.17(m,2H),7.41−7.43(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.19(M−H)−。
融点:167.2〜168.4℃。
甘味度:約800倍(5%ショ糖水溶液と比較)。
【0091】
図19には、モナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0092】
図20には、モナティンの[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.4°、10.2°、19.7°、21.0°及び21.8°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0093】
[実施例3]
[モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体のナトリウム塩結晶の調製]
モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩1.00g(3.23ミリモル,HPLC純度100%)を水10mlに溶解し、これに水酸化ナトリウム水溶液(20当量)を加えて濃縮した。水20mlを加えて濃縮する操作を3回繰り返した後、再び水20mlに溶解し、イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B H AG(H+))を溶液が弱アルカリ性になるまで加えて攪拌し、過剰のナトリウムを除去した。樹脂を濾取した後、濾液を減圧下に濃縮した。室温下に、95%エタノール水溶液にて結晶化して、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶・0.05エタノール和物 0.680g(2.14ミリモル)を、収率66.3%で得た。
【0094】
1HNMR(D2O)δ:実施例2と同様。
ESI−MS:291.19(M−H)−。
融点:201.7〜203.2℃。
【0095】
図21には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0096】
図22には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、13.6°、15.2°、16.7°、22.2°及び24.4°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0097】
[実施例4]
[モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体のカリウム塩結晶の調製]
水酸化ナトリウム水溶液の替わりに、水酸化カリウム水溶液を用いること以外は実施例3と同様にして、モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶・0.05エタノール和物0.71g(2.13ミリモル)を、収率65.9%で得た。
【0098】
1HNMR(D2O)δ:実施例2と同様。
ESI−MS:291.49(M−H)−。
融点:223.8〜224.7℃。
【0099】
図23には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0100】
図24には、モナティンの[(2S,4S)+(2R,4R)]体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.9°、18.7°、20.1°及び23.8°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0101】
[実施例5]
[モナティンの(2S,4S)体と(2R,4R)体とのラセミ体Z−ラクトン(2-Benzyloxycarbonylamino-4-(3-indolylmethyl)-4-carboxy-γ-butyrolactone)の調製]
モナティン [(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩19.51g(63.07ミリモル,HPLC純度:99.2%)を、2N-水酸化ナトリウム水溶液94.6ml(189.2ミリモル)と水90mlに溶解した。ベンジルオキシカルボニルクロライド12.61ml(88.30ミリモル)を加えて室温で2時間攪拌後、更に2N-水酸化ナトリウム水溶液15.8ml(31.54ミリモル)とベンジルオキシカルボニルクロライド4.50ml(31.54ミリモル)を加えて、室温にて1夜攪拌した。得られた反応水溶液は、エーテル50mlでの抽出操作を3回行い、過剰なベンジルオキシカルボニルクロライドを除去した。反応液を塩酸にてpH3に調整し、酢酸エチル100mlで3回抽出操作を行った後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧下に濃縮して、Z−モナティン(2-Benzyloxycarbonylamino-4-hydroxy-4-carboxy-5-(3-indolyl)pentanoic acid)[(2S,4S)+(2R,4R)]体27.93g(65.50ミリモル)を得た。Z−モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体27.93g(65.50ミリモル)を酢酸エチル400mlに溶解し、p-トルエンスルホン酸1.25g(6.55ミリモル)を加えて75℃で3時間加熱した。得られた反応液を水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧下に濃縮した。残渣にクロロホルム100mlを加えて析出した結晶を濾過して集め、Z-ラクトン[(2S,4S)+(2R,4R)]体17.64g(43.19ミリモル,HPLC純度:99.6%)を総収率68.5%で得た。
【0102】
1HNMR(DMSO−d6)δ:2.36−2.42(m,1H),2.64−2.70(m,1H),3.24−3.41(m,2H),3.71−3.81(m,1H),4.98(s,2H),6.97−7.00(m,1H),7.04−7.09(m,1H),7.21(s,1H),7.30−7.33(m,5H),7.54−7.56(d,1H),7.66−7.69(d,1H),11.03(s,1H)。
ESI−MS:409.68(M+H)+。
融点:195.5〜196.9℃。
【0103】
[実施例6]
[モナティンの(2S,4R)体と(2R,4S)体とのラセミ体Z−ラクトン(2-Benzyloxycarbonylamino-4-(3-indolylmethyl)-4-carboxy-γ-butyrolactone)の調製]
モナティン[(2S,4S)+(2R,4R)]体アンモニウム塩の替わりに、モナティン[(2S,4R)+(2R,4S)]体アンモニウム塩15.00g(48.49ミリモル,HPLC純度:99.5%)を使用し、p-トルエンスルホン酸を加えて75℃で2時間加熱する以外は実施例5と同様にして、Z−ラクトン[(2S,4R)+(2R,4S)]体12.10g(29.64ミリモル,HPLC純度100%)を総収率61.1%で得た。
【0104】
1HNMR(DMSO−d6)δ:2.31−2.37(m,1H),2.71−2.76(m,1H),3.19−3.23(m,1H),3.43−3.47(m,1H),4.34−4.41(m,1H),5.05(s,1H),6.96−7.00(m,1H),7.04−7.08(m,1H),7.14(s,1H),7.32−7.37(m,5H),7.53−7.55(d,1H),7.85−7.87(d,1H),10.95(s,1H)。
ESI−MS:409.58(M+H)+。
融点:156.7〜159.1℃。
【0105】
[実施例7]
[Z-ラクトン(2S,4S)体とZ-ラクトン(2R,4R)体との分割]
Z-ラクトン[(2S,4S)+(2R,4R)]体1.17g(2.86ミリモル,HPLC純度:99.7%)から、光学異性体分割カラムにて分割を行った。このとき、ガードカラムにCHIRALPAK AS 20×50mm、分取カラムにCHIRALPAK AS 20×250mmを使用した。溶離液:ヘキサン/エタノール/酢酸=40/60/0.5、流速:10ml/分、検出:UV210nm、温度:40℃、負荷量:25mgで分取した。溶出時間については、それぞれZ-ラクトン(2S,4S)体が13分、Z-ラクトン(2R,4R)体が23分であった。分取画分をそれぞれ濃縮後、酢酸エチル50mlに溶解し再び濃縮した。残渣をクロロホルム30mlで結晶化し、Z-ラクトン(2S,4S)体428mg(1.05ミリモル)、及びZ-ラクトン(2R,4R)体399mg(0.977ミリモル)を得た(総回収率:70.7%)。
【0106】
(Z-ラクトン(2S,4S)体)
1HNMR(DMSO−d6)δ:実施例5と同様。
ESI−MS:409.68(M+H)+。
融点:179.8〜182.0℃。
【0107】
(Z-ラクトン(2R,4R)体)
1HNMR(DMSO−d6)δ:実施例5と同様。
ESI−MS:409.88(M+H)+。
融点:179.2〜182.8℃。
【0108】
[実施例8]
[Z-ラクトン(2S,4R)体とZ-ラクトン(2R,4S)体との分割]
Z-ラクトン[(2S,4R)+(2R,4S)]体9.89g(24.22ミリモル,HPLC純度:100%)から、光学異性体分割カラムにて分割を行った。このとき、ガードカラムにCHIRALCEL OJ 20×50mm、分取カラムにCHIRALCEL OJ 20×250mmを使用した。溶離液:ヘキサン/エタノール/トリフルオロ酢酸=40/60/0.1、流速:8ml/分、検出:UV210nm、温度:40℃、負荷量:50mgで分取した。溶出時間については、それぞれZ-ラクトン(2R,4S)体が16分、Z-ラクトン(2S,4R)体が21分であった。分取画分をそれぞれアンモニア水で中和後に濃縮した。酢酸エチル150mlに溶解し、pH3に調整した塩酸水溶液にて洗浄後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン100mlで結晶化し、Z-ラクトン(2R,4S)体・0.2酢酸エチル和物4.88g(11.45ミリモル,HPLC純度:97.3%)、及びZ-ラクトン(2S,4R)体・0.2酢酸エチル和物5.41g(12.70ミリモル,HPLC純度:96.9%)を得た(総回収率:99.7%)。
【0109】
(Z-ラクトン(2R,4S)体・0.2酢酸エチル和物)
1HNMR(DMSO−d6)δ:2.21−2.28(m,1H),2.64−2.70(m,1H),3.18−3.22(m,1H),3.40−3.44(m,1H),4.42−4.45(m,1H),5.04(s,2H),6.95−7.00(m,1H),7.03−7.07(m,1H),7.15(s,1H),7.32−7.35(m,5H),7.52−7.55(d,1H),7.80−7.82(d,1H),10.92(s,1H)。
ESI−MS:409.58(M+H)+。
融点:109.1〜110.8℃。
【0110】
(Z-ラクトン(2S,4R)体・0.2酢酸エチル和物)
1HNMR(DMSO−d6)δ:上記(2R,4S)体と同様。
ESI−MS:409.58(M+H)+。
融点:116.1〜116.8℃。
【0111】
[実施例9]
[Z−ラクトン(2R,4R)体のモナティン(2R,4R)体ナトリウム塩結晶への変換(ナトリウム塩結晶の調製その1)]
Z−ラクトン(2R,4R)体14.24g(34.85ミリモル,HPLC純度:99.5%)をメタノール400ml、水40mlに溶解し、10%パラジウム−炭素3gを加え、水素雰囲気下に室温で2時間還元した。還元後、水100mlと4N-水酸化ナトリウム水溶液19.2ml(76.67ミリモル)を加えてしばらく攪拌した後、触媒を濾過により除去して濾液を濃縮した。残渣を水160mlに溶解後、イオン交換樹脂 AMBERLITE IR120B H AG(H+)を溶液が弱酸性になるまで少量ずつ加えて過剰なナトリウムを除去した。28%アンモニア水34.8mlを加え、イオン交換樹脂を濾過して除いた。このイオン交換樹脂を5%アンモニア水で洗い、濾液を合わせて濃縮した。濃縮した残渣を水100mlに溶解し、この溶液に活性炭1gを加えて10分間攪拌した。活性炭を濾過して除き、濾液を濃縮後、これに、室温で90%エタノール水溶液を加えて結晶化し、モナティン(2R,4R)体ナトリウム塩結晶・0.2エタノール和物6.55g(20.19ミリモル、光学活性カラムHPLC純度:99.3%)を、総収率57.9%で得た。
【0112】
1HNMR(D2O)δ:1.95−2.02(m,1H),2.58−2.62(m,1H),3.01−3.05(m,1H),3.21−3.24(m,1H),3.55−3.58(m,1H),7.07−7.11(m,1H),7.14−7.18(m,2H),7.42−7.44(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.49(M−H)−。
融点:197.1〜198.3℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=+0.64。
甘味度:約2700倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0113】
[実施例10]
[Z−ラクトン(2S,4S)体のモナティン(2S,4S)体ナトリウム塩結晶への変換]
Z−ラクトン(2R,4R)体の替わりに、Z−ラクトン(2S,4S)体5.00g(12.25ミリモル,HPLC純度:99.8%)を使用し、水素雰囲気下、室温で1時間還元する以外は実施例9と同様にして、モナティン(2S,4S)体ナトリウム塩結晶・0.2エタノール和物3.15g(9.71ミリモル,光学活性カラムHPLC純度:99.8%)を、総収率79.3%で得た。
【0114】
1HNMR(D2O))δ:実施例9と同様。
ESI−MS:291.59(M−H)−。
融点:196.1〜197.9℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=−1.67。
甘味度:約50倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0115】
[実施例11]
[Z−ラクトン(2R,4S)体のモナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶への変換]
Z−ラクトン(2R,4R)体の替わりに、Z−ラクトン(2R,4S)体・0.2酢酸エチル和物 3.66g(8.59ミリモル,HPLC純度:97.3%)を使用し、水素雰囲気下に室温で1時間還元すること以外は実施例9と同様にして、モナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶2.23g(7.07ミリモル,光学活性カラムHPLC純度:99.2%)を、総収率82.3%で得た。
【0116】
1HNMR(D2O)δ:2.11−2.17(m,1H),2.38−2.43(m,1H),3.16(s,2H),3.90−3.93(m,1H),7.06−7.10(m,1H),7.13−7.17(m,2H),7.41−7.43(d,1H),7.66−7.68(d,1H)。
ESI−MS:291.19(M−H)−。
融点:227.5〜229.2℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=+11.08。
甘味度:約1300倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0117】
図25には、モナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0118】
図26には、モナティンの(2R,4S)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、13.7°、16.6°、17.9°、18.6°、20.2°及び22.6°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0119】
[実施例12]
[Z−ラクトン(2S,4R)体のモナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶への変換]
Z−ラクトン(2R,4R)体の替わりに、Z−ラクトン(2S,4R)体・0.2酢酸エチル和物 5.23g(12.28ミリモル,HPLC純度:96.9%)を使用し、水素雰囲気下に室温で1時間還元し、90%エタノール水溶液による再結晶を2回行った以外は実施例9と同様にして、モナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶2.57g(8.14ミリモル,光学活性カラムHPLC純度:99.4%)を、総収率66.3%で得た。
【0120】
1HNMR(D2O)δ:実施例11と同様。
ESI−MS:291.49(M−H)−。
融点:227.1〜229.4℃。
比旋光度(5%NH3水、C=0.5):[α]D25=−9.57。
甘味度:約300倍(5%ショ糖水溶液との比較)。
【0121】
図27には、モナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0122】
図28には、モナティンの(2S,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、13.7°、16.6°、17.9°、18.6°、20.2°及び22.6°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0123】
[実施例13]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の調製(その1)]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩1.5gを水10mlに溶解し、25mlの陽イオン交換樹脂 DIAION PK228(カリウム型、三菱化学製)を充填したカラムに通液して所望のイオンに交換した後、溶出液を11.5gまで濃縮した。得られた濃縮液を60℃まで加熱しエタノール60mlを添加した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶1.1gを得た。
【0124】
融点:213.3〜214.7℃。
【0125】
図1には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0126】
図2には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0127】
図3には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、6.6°、11.5°、11.8°、12.2°、13.9°、17.2°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0128】
[実施例14]
[モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の調製(その2)]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩1.5gを水10mlに溶解し、25mlの陽イオン交換樹脂 DIAION PK228(Na型、三菱化学製)を充填したカラムに通液して所望のイオンに交換した後、溶出液を11.5gまで濃縮した。得られた濃縮液を60℃まで加熱しエタノール60mlを添加した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶0.2エタノール和物1.2gを得た。
【0129】
融点:193.5〜195.1℃。
【0130】
図4には、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0131】
図5には、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0132】
図6には、モナティンの(2R,4R)体ナトリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。4.4°、15.3°、17.5°、19.1°及び24.6°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0133】
[実施例15]
[モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の調製]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩1.5gを水10mlに溶解した。この溶解液を60℃まで加熱しエタノール60mlを添加した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)アンモニウム塩結晶0.77gを得た。
【0134】
融点:172.1〜172.8℃。
【0135】
図7には、モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0136】
図8には、モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0137】
図9には、モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。6.1°、11.6°、18.1°、19.6°及び25.0°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0138】
[比較例1]
[モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の調製]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩0.5gを50%酢酸水溶液10mlに溶解後、25℃にてエタノール25mlを1時間かけて添加した。更に、25℃で4.5時間攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶0.38gを得た。
【0139】
融点:175.2〜176.1℃。
【0140】
図10には、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0141】
図11には、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0142】
図12には、モナティンの(2R,4R)体遊離体結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.9°、17.9°、19.2°、23.9°及び27.8°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0143】
[比較例2]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の調製]
実施例13に従って製造したモナティンの(2R,4R)体カリウム塩1.0gを水10mlに溶解し、凍結乾燥を行い(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体0.97gを得た。
【0144】
融点:183.2〜184.8℃。
【0145】
図13には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の光学顕微鏡写真を図示する(倍率200倍)。
【0146】
図14には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩アモルファス固体の乾燥後の粉末X線回折図を示す。この図から明らかな如く、この固体はアモルファスであった。
【0147】
[実施例16]
[結晶の熱安定性の比較]
上記の方法により得られた結晶或いはアモルファス固体50mgをそれぞれ4mlのバイアル瓶に入れ、温度120℃で保存(保持)した。このとき、バイアル瓶は開放した状態とした。保持時間として3時間、7時間、及び24時間後に、それぞれサンプル2mgを抜き取り、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分解物の割合(比率)を求めた。このときの保持時間と分解物の割合の関係を下記表3及び表4に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
上記表の結果から、分解物A及びBの生成はカリウム塩が最も少なく、他の結晶に比べて格段に安定性が優れていることが分かる。分解物Bについては、遊離体結晶やアモルファス固体に比べて各種塩の結晶においてその生成が少ないことから、これらの塩の結晶が安定性において優れていることが分かる。
【0151】
[実施例17]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の調製(その2)]
モナティンの(2R,4R)体アンモニウム塩10gを水20mlに溶解し、50mlの陽イオン交換樹脂 DIAION PK228(カリウム型、三菱化学製)を充填したカラムに通液して所望のイオンに交換した後、溶出液を23.48gまで濃縮した。得られた濃縮液を35℃まで加熱しエタノール84ml約3時間かけて滴下した。このエタノール水溶液を10℃まで5℃/Hrで冷却した後、10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶9.3gを得た。
【0152】
融点:220.0〜222.3℃。
【0153】
図15には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、12.2°、18.3°、20.6°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0154】
[実施例18]
[モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の調製(その3)]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶1.5gを水10mlに溶解した後、溶解液を10℃まで冷却しエタノール60mlを約2.5時間かけて滴下した。このエタノール水溶液を10℃で一晩攪拌した。得られた晶析液から結晶を分離した後、湿結晶を減圧乾燥器にて乾燥して、(2R,4R)体カリウム塩結晶1.2gを得た。
【0155】
融点:213.2〜215.6℃。
【0156】
図16には、モナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶の乾燥後の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.6°、11.5°、11.8°、17.2°、22.9°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0157】
[実施例19]
[結晶の水蒸気吸着脱着曲線]
上記の方法により得られたモナティンの(2R,4R)体カリウム塩結晶(10℃、35℃、60℃で起晶)それぞれの水蒸気吸着脱着(吸脱着)曲線を求めた。この測定値を図29に示す。測定条件は以下の通りである。
【0158】
装置 :日本ベル株式会社製 自動蒸気吸着量測定装置BELSORP18
測定方式 :定容量式ガス吸着法
測定条件 :
吸着ガス :H2O
空気恒温槽温度 :323K
吸着温度 :298K
初期導入圧力 :1.0torr
導入圧力差 :0torr
飽和蒸気圧 :23.76torr
吸着断面積 :0.125nm2
最大吸着圧 :0.90
最小吸着圧 :0.10
平衡時間 :300sec
【0159】
[実施例20]
実施例14で得られたモナティンの(2R, 4R)体ナトリウム塩を、温度40℃及び湿度75%の恒温恒湿機中で2日間保存することにより結晶中のエタノールが消失した結晶が得られた。
【0160】
図30には、得られた結晶の粉末X線回折図を示す。4.4°、15.2°、17.8°、20.6°及び24.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0161】
[実施例A]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水2.5mlに溶解した後、溶解液を40℃まで加熱し、撹拌下でメタノール15mlをゆっくり滴下した。このメタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶1.03gを得た。
【0162】
図31には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0163】
[実施例B]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノールの替わりに、エタノールを用いること以外は実施例Aと同様にして、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.38g(水分:5.97%)を得た。
【0164】
図32には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0165】
[実施例C]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノールの替わりに、イソプロピルアルコールを用いること以外は実施例Aと同様にして、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.38g(水分:9.85%)を得た。
【0166】
図33には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0167】
[実施例D]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノールの替わりに、アセトンを用いること以外は実施例Aと同様にして、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.30g(水分:10.64%)を得た。
【0168】
図34には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0169】
[実施例E]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水5mlに溶解した後、溶解液を35℃まで加熱し、撹拌下でエタノール30mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.28g(水分:9.75%)を得た。
【0170】
図35には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0171】
[実施例F]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水1.7mlに溶解した後、溶解液を35℃まで加熱し、撹拌下でエタノール10mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.38g(水分:9.45%)を得た。
【0172】
図36には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0173】
[実施例G]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水1.25mlに溶解した後、溶解液を35℃まで加熱し、撹拌下でエタノール7.5mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.42g(水分:9.67%)を得た。
【0174】
図37には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0175】
[実施例H]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶475mgを水5mlに溶解した後、溶解液を10℃まで冷却し、撹拌下でエタノール30mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.36g(水分:8.26%)を得た。
【0176】
図38−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0177】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:2.11%)を得た。
図38−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。6.1°、6.6°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0178】
[実施例I]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶400mgを水2.5mlに溶解した後、溶解液を25℃まで加熱し、撹拌下でエタノール15mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.40g(水分:10.39%)を得た。
【0179】
図39−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0180】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:1.69%)を得た。
【0181】
図39−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、6.6°、11.5°、11.8°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0182】
[実施例J]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶213mgを水1.25mlに溶解した後、溶解液を40℃まで加熱し、撹拌下でエタノール7.5mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.19g(水分:6.43%)を得た。
【0183】
図40−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0184】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:5.43%)を得た。
【0185】
図40−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。6.1°、6.6°、11.5°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0186】
[実施例K]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶217mgを水1.25mlに溶解した後、溶解液を60℃まで加熱し、撹拌下でエタノール7.5mlをゆっくり滴下した。このエタノール水溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.20g(水分:7.25%)を得た。
【0187】
図41−1には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、11.5°、11.8°、12.2°、17.2°、18.3°、20.6°、23.1°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0188】
この結晶を60℃で減圧乾燥し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:4.79%)を得た。
【0189】
図41−2には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の粉末X線回折図を示す。6.1°、6.6°、11.5°、12.2°、13.9°、18.3°、20.6°、22.9°、24.5°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0190】
[実施例L]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
モナティンの(2R、4R)体アンモニウム塩420mgをメタノール25mlに45℃で溶解した後、撹拌下で20wt%水酸化カリウム/メタノール溶液0.3mlをゆっくり滴下した。このメタノール溶液を10℃の冷蔵庫内で一晩放置した。得られた結晶を分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶0.22g(水分:5.64%)を得た。
【0191】
図42には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩湿結晶の粉末X線回折図を示す。5.7°、6.1°、6.6°、11.5°、11.8°、12.2°、13.9°、17.2°、18.3°、22.9°、23.1°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0192】
[実施例M]
[モナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶の調製]
メタノール25mlと20wt%水酸化カリウム/メタノール溶液0.38mlを混合し、この中にモナティンの(2R、4R)体アンモニウム塩400mgを添加した。このメタノール溶液を室温下で一晩撹拌した。得られたスラリーを分離し、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩固体0.25g(水分:5.42%)を得た。
【0193】
図43には、モナティンの(2R、4R)体カリウム塩固体の粉末X線回折図を示す。この図から明らかな如く、この固体はアモルファスであった。
【0194】
[実施例N]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、60℃の恒温槽内で一晩放置した。
【0195】
図44には、60℃で保存したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:7.04%)の粉末X線回折図を示す。6.1°、12.2°、18.3°、20.6°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0196】
[比較例N]
60℃の恒温槽の替わりに、10℃の冷蔵庫を用いること以外は実施例Nと同様にして、前記結晶を一晩放置した。この結晶(水分:6.96%)の粉末X線回折図は図15と同様であった。
【0197】
[実施例O]
60℃の恒温槽の替わりに、120℃の恒温槽を用いること以外は実施例Nと同様にして、前記結晶を一晩放置した。
【0198】
図45には、120℃で保存したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:4.73%)の粉末X線回折図を示す。6.1°、12.2°、18.3°、20.6°及び24.5°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0199】
[実施例P]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、相対湿度97%に保ったデシケーター内で一晩放置した。
【0200】
図46には、相対湿度97%で保存したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:8.61%)の粉末X線回折図を示す。5.7°、11.5°、11.8°、17.2°及び23.1°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0201】
[比較例P1]
実施例17に従って製造したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、相対湿度75%の恒温恒湿機中で一晩放置した。この結晶(水分:5.43%)の粉末X線回折図は図15と同様であった。
【0202】
[比較例P2]
実施例Gに従って得られたモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶200mgを、相対湿度10%に保ったデシケーター内で一晩放置した。この結晶の粉末X線回折図は図37と同様であった。
【0203】
[実施例Q]
実施例Fに従って得られたモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶240mgを、60℃で減圧乾燥した。
【0204】
図47には、60℃で減圧乾燥したモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶(水分:1.04%)の粉末X線回折図を示す。6.6°、13.9°、22.9°及び26.3°の回折角度(2θ、CuKα線)に特徴的な回折X線のピークを示した。
【0205】
[比較例Q]
実施例Fに従って得られたモナティンの(2R、4R)体カリウム塩結晶150mgを、40℃で減圧乾燥した。この結晶の粉末X線回折図は図36と同様であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶。
【請求項2】
モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体の塩の何れかの結晶である請求の範囲1記載の結晶。
【請求項3】
モナティンの(2R,4R)体塩の結晶である請求の範囲2記載の結晶。
【請求項4】
当該塩がアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩から選択される請求の範囲1記載の結晶。
【請求項5】
当該立体異性体塩を、少なくとも95%の化学純度で有する請求の範囲1又は3記載の結晶。
【請求項6】
少なくとも94%の光学純度を有する請求の範囲1、3又は5記載の結晶。
【請求項7】
モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体から成る立体異性体の中から選択される、少なくとも2種異性体混合物の塩の結晶である請求の範囲1記載の結晶。
【請求項8】
ショ糖の少なくとも1000倍の甘味強度を有する請求の範囲1記載の結晶。
【請求項9】
モナティンの(2S,4S)体塩と混合状態にある請求の範囲1又は3記載の結晶。
【請求項10】
全モナティン塩に対して、当該モナティンの(2S,4S)体塩を多くとも70%含有する請求の範囲9記載の結晶。
【請求項11】
当該モナティンの(2S,4S)体塩とモナティンの(2R,4R)体塩との混合物結晶の状態にある請求の範囲9記載の結晶。
【請求項12】
当該モナティンの(2S,4S)体塩と当該モナティンの(2R,4R)体塩との比率が1:1である請求の範囲11記載の結晶。
【請求項13】
請求の範囲1〜12何れか記載の結晶を含有することを特徴とする甘味剤。
甘味剤用の担体及び/又は増量剤を含んでいてもよい。
【請求項14】
請求の範囲1〜12何れか記載の結晶を含有し、又は使用して得られたことを特徴とする甘味が付与された飲食品等の製品。
【請求項15】
糖類、並びに他の人工甘味料及び天然の甘味料の少なくとも1種を含有する請求の範囲13又は14記載の甘味剤又は飲食品等の製品。
【請求項1】
モナティンの非天然型立体異性体塩の結晶。
【請求項2】
モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体の塩の何れかの結晶である請求の範囲1記載の結晶。
【請求項3】
モナティンの(2R,4R)体塩の結晶である請求の範囲2記載の結晶。
【請求項4】
当該塩がアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩から選択される請求の範囲1記載の結晶。
【請求項5】
当該立体異性体塩を、少なくとも95%の化学純度で有する請求の範囲1又は3記載の結晶。
【請求項6】
少なくとも94%の光学純度を有する請求の範囲1、3又は5記載の結晶。
【請求項7】
モナティンの(2S,4R)体、(2R,4R)体及び(2R,4S)体から成る立体異性体の中から選択される、少なくとも2種異性体混合物の塩の結晶である請求の範囲1記載の結晶。
【請求項8】
ショ糖の少なくとも1000倍の甘味強度を有する請求の範囲1記載の結晶。
【請求項9】
モナティンの(2S,4S)体塩と混合状態にある請求の範囲1又は3記載の結晶。
【請求項10】
全モナティン塩に対して、当該モナティンの(2S,4S)体塩を多くとも70%含有する請求の範囲9記載の結晶。
【請求項11】
当該モナティンの(2S,4S)体塩とモナティンの(2R,4R)体塩との混合物結晶の状態にある請求の範囲9記載の結晶。
【請求項12】
当該モナティンの(2S,4S)体塩と当該モナティンの(2R,4R)体塩との比率が1:1である請求の範囲11記載の結晶。
【請求項13】
請求の範囲1〜12何れか記載の結晶を含有することを特徴とする甘味剤。
甘味剤用の担体及び/又は増量剤を含んでいてもよい。
【請求項14】
請求の範囲1〜12何れか記載の結晶を含有し、又は使用して得られたことを特徴とする甘味が付与された飲食品等の製品。
【請求項15】
糖類、並びに他の人工甘味料及び天然の甘味料の少なくとも1種を含有する請求の範囲13又は14記載の甘味剤又は飲食品等の製品。
【図3】
【図6】
【図9】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図20】
【図22】
【図24】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38−1】
【図38−2】
【図39−1】
【図39−2】
【図40−1】
【図40−2】
【図41−1】
【図41−2】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図17】
【図19】
【図21】
【図23】
【図25】
【図27】
【図6】
【図9】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図20】
【図22】
【図24】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38−1】
【図38−2】
【図39−1】
【図39−2】
【図40−1】
【図40−2】
【図41−1】
【図41−2】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図17】
【図19】
【図21】
【図23】
【図25】
【図27】
【公開番号】特開2009−298807(P2009−298807A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214343(P2009−214343)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【分割の表示】特願2003−547366(P2003−547366)の分割
【原出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【分割の表示】特願2003−547366(P2003−547366)の分割
【原出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
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