説明

モニタ装置およびモニタ方法

【課題】本発明は、患者の呼吸パラメータに基づき、障害パターンおよび/または疾病パターンに関する情報を提供する方法および装置に関する。この装置は、好適には、複数の機能を有し、さまざまな障害パターンおよび/または疾病パターンに関する情報を提供する。
【解決手段】本発明に係る装置は、患者のさまざまな症状を特定するための装置に関し、患者の呼吸を表す信号を検出するセンサと、前記信号を処理し、そして/または分析する処理ユニットと、処理および/分析の結果を表示するための表示手段とを備えたものである。同様に、本発明に係る方法は、患者のさまざまな症状を特定するためのものであり、患者の呼吸を表す信号を検出するステップと、前記信号を処理し、そして/または分析するステップと、処理および/分析の結果を表示するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の呼吸パラメータに基づき、障害パターンおよび/または疾病パターンに関する情報を提供する方法および装置に関する。この装置は、好適には、複数の機能を有し、さまざまな障害パターンおよび/または疾病パターンに関する情報を提供する。
【背景技術】
【0002】
患者の呼吸パラメータに基づいて障害パターンおよび/または疾病パターンに関する情報を提供する装置および方法は従来から知られている。しかしながら、こうした装置および方法を利用することは煩雑で面倒なことであり、しかも患者に関する情報を測定し、分析し、分析結果を得るためには数多くの装置やユニットを利用する必要がある場合が多い。さらに、従来技術による装置および方法を用いて、患者情報を測定し、測定データを分析し、これを制御するためには、一般に、医師が管理する必要がある。
【0003】
加えて、従来技術による装置は、その計算機能が低く、方法ステップやアルゴリズムが正確でないため、精緻でかつ完全な情報が得られないことがしばしばあった。また従来技術による方法および装置は、低呼吸、無呼吸、周期性呼吸、および鼾などの障害パターンおよび/または疾病パターンの判別ができず、単に無呼吸数を計測するに過ぎなかった。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0055348A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち本発明の目的は、従来技術にある問題点を解消する方法および装置を提供することにある。とりわけ本発明の目的は、好適には患者のさまざまな障害パターンおよび/または疾病パターンを特定するための方法および/または装置であって、医師が利用する際に監視する必要のなく、簡便で、信頼性が高く、安価なものを提供することにある。
【0005】
本発明の目的は、独立請求項に記載された発明特定事項により実現され、従属請求項は、本発明の好適な実施形態を規定するものである。
【0006】
本発明において、患者という用語は、すべての患者および潜在的な患者を意味し、とりわけ本発明に係る装置および/または方法を利用するすべての人を指すものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る装置は、患者のさまざまな症状を特定するための装置に関し、患者の呼吸を表す信号を検出するセンサと、前記信号を処理し、そして/または分析する処理ユニットと、処理および/分析の結果を表示するための表示手段とを備えたものである。この装置は、得られた情報をさらに処理するための他の装置を用いるまでもなく、その機能を十分に発揮できるような単体ユニット装置あるいは独立ユニット装置として構成される。さらに、この装置は、患者が容易に持ち運びして利用できるように小型に、好適には患者のポケットに入るように構成されている。本発明に係る装置は、1つまたはそれ以上の障害パターンおよび/または疾病パターンに関する情報を患者の呼吸パラメータに基づいて出力するために必要なすべてのステップを実行し、これを実現する手段を備えるように構成されている。好適には、この装置は、障害パターンおよび/または疾病パターン、好適には呼吸障害および/または疾病の特徴に関する治療行為のための理由付けまたは根拠を示唆するものである。
【0008】
好適な実施形態によれば、本発明に係る装置は、検出装置(screener)とも呼ばれ、1種類以上、好適には2種類以上、より好適には3種類以上の患者の症状、すなわち障害パターンおよび/または疾病パターンを特定できるように構成されている。これは、患者の呼吸を示す信号を検出またはスクリーニング処理し、これらの信号を分析し、例えば是(YES)または非(NO)などの容易に判別可能な論理信号として分析結果を出力することにより実現される。好適には、それぞれの分析結果は、1つまたはそれ以上の障害パターンおよび/または疾病パターンを患っている可能性(リスク)を示唆することができる。
【0009】
好適には、この装置は、鼾をかく人、睡眠時呼吸障害をもつ人(閉塞性睡眠時無呼吸またはOSA障害をもつ人)、および周期性呼吸障害を特定するように構成されている。
【0010】
鼾をかく人は、眠りが阻害され、通常少なくともベッドをともにする人(bed partner)にとって鼾は不快である場合が多い。鼾自体は、CPAP(持続的気道陽圧)の装置や治療必要とするものではないが、少なくとも鼾装置の必要性を示唆する有用な示唆を含むものである。睡眠時呼吸障害(OSA障害)が検出されると、CPAPの装置や治療を行う必要があることを示す臨床的示唆であると考えられている。周期性呼吸障害が検出されると、心臓疾患があることを示す臨床的示唆であると考えられている。
【0011】
この装置により出力された分析結果または臨床的示唆に応じて、患者に対して特定の処置または治療を行うことができる。例えば、患者に対し、医者に相談して鼾装置を用いること、睡眠研究室を受診すること、および/または心臓専門医に相談することなどのアドバイスを行うことができる。
【0012】
好適な実施形態によれば、この装置は、鼻腔内圧力信号または呼吸フロー信号などの患者の呼吸を表す信号を検出またはスクリーニング処理し、得られた信号を解析または分析し、さらに、好適には、鼾、呼吸障害(OSA)、周期性呼吸障害、および/または患者の呼吸から券出可能な他の障害パターンおよび/または疾病パターンといった1つまたはそれ以上の障害パターンおよび/または疾病パターンの可能性に関する情報を提供するものである。
【0013】
この装置は、好適には、使い捨てデバイス(単一使用デバイス)または複数回使用可能なデバイス(複数使用デバイス)として構成される。複数使用デバイスである場合、例えば医者などの認可された人により表示をリセットできることが好ましい。単一使用デバイスとして構成される場合には、使用後に廃棄してもよいし、好適にはリサイクルしてもよい。好適には、この装置は、生データを保持したり、制御することなく、パーソナルコンピュータのような処理装置にアップデートする必要もない。
【0014】
好適には、本発明に係る装置は、比較的に小型サイズで、例えば煙草と同程度の大きさを有する。好適には、この装置は携帯可能なサイズおよび/またはポケットサイズを有する。より好適には、この装置は、独立ユニット装置および/または単体ユニット装置である。こうした装置は、追加的なハードウェアまたはソフトウェアに対して接続されたか否かによらず、作動させ、そして/または所望の目的を果たすための機能的ユニットを提供する。
【0015】
本発明に係る装置は、数多くの異なる臨床的症状を示唆するものであって、安価に構成され、較正する必要がなく、そして/またはパーソナルコンピュータのようなものによりデータを取り込んでさらに分析する必要がないので操作が容易である点において極めて有用である。本発明の装置のさらなる利点は、上述の利点が、単体ユニットまたは独立ユニットであり、好適には携帯可能なユニットで実現される点にある。この機能ユニットは、携帯可能であり、そして/またはポケットサイズであり、医学的に不慣れな者であっても出力値として容易に判断できる信頼性の高い情報を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1および図2は、本発明に係る好適な実施形態により患者のさまざまな症状を特定するための装置1を示す。この装置は、携帯サイズまたはポケットサイズのものであるので、患者が容易に持ち運ぶことができる。この装置の好適なサイズは、同様に図示されたように、一般的な人間の手のひら2のサイズである。この装置は、患者の呼吸を示唆する信号を検出するためのセンサ(図示せず)を有する。こうしたセンサとして、好適には、圧力センサ、差動式圧力センサ、あるいは患者の呼吸のフローパラメータを検出するフローセンサが挙げられる。好適には、患者の呼吸は、一般に知られた適当な機構を用いて、患者の口および鼻からホースを介して装置およびセンサにそれぞれ案内されている。好適には、装置1は、例えば図2に示すように、鼻カニューレ3を有する。また装置1は、患者の呼吸およびセンサから得られた呼吸信号を処理し、分析するための処理ユニットを有する。この処理または分析による結果あるいは出力がインジケータ手段またはディスプレイ手段4に表示されている。この分析結果は、例えば是(YES)または非(NO)などの簡易的で判別可能な信号として表示されることが好ましい。図1に図示されているように、この分析結果は、好適には、LEDなどの発光デバイス5をオンまたはオフとして点灯させることにより表示される。ディスプレイの色を変えて、例えば良好な結果を緑色、良好でない結果を赤色で表示して、異なる結果を表示するようにしてもよい。この装置は、好適には、鼻腔内圧力を分析して、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)や関連する特定の障害に対する可能性を示唆する。
【0017】
図1および図2に示す装置を用いて、3つの異なる障害パターンおよび/または疾病パターンを検出することができる。この検出装置は、好適にも、鼾をかく人、睡眠時呼吸障害をもつ人(閉塞性睡眠時無呼吸またはOSA障害をもつ人)、および周期性呼吸障害(チェーン・ストークス呼吸(Cheyne Stokes breathing)または周期性CS)をもつ人の3種類の患者の疾病を特定することができる。
【0018】
最後に挙げた障害は心臓の疾患によるものである可能性がある。本発明の好適な実施形態に係る装置はその他のさらなる障害を検出することができる。
【0019】
図示のように、装置1は、独立ユニットあるいは単体ユニットであることが好ましい。また、この装置は、小型で、患者が家庭や私的な環境で使用しやすいものであることが好ましい。さらに上記したように、この装置は、特定の測定を実施するためのさまざまな手段を備えており、患者の呼吸に関する上述した分析を行い、容易に理解される情報としての分析結果を提供するために他の手段や方法を必要としないものである。この装置は、好適には蓄電池や再充電可能な電池などのエネルギ源を有する。
【0020】
図3などに示す好適な実施形態において、この装置は、検出ユニットで検出された入力信号を処理し、分析するためのアルゴリズムなどを実施するための手段を有する。この装置は、好適には、例えばPICコントローラ(Peripheral Interface Controller)などのコントローラ(または処理ユニット)6と、例えば安価な圧力センサなどの圧力センサ7とを有する。
【0021】
とりわけ生産時間におけるセンサ較正を回避するために、好適には、センサ7はA/DコンバータにAC接続される。このセンサ7は、交流結合回路8を介してコントローラ6に接続されることが好ましい。こうしてセンサ7は、好適には、第1のチャンネル9および第2のチャンネル10を介してコントローラ6に情報を提供する。
【0022】
圧力センサ7で検出された鼻腔内圧力信号は、好適には、フローチャンネルなどの第1のチャンネル9を介してコントローラ6に供給される。すなわち鼻腔内圧力信号はコントローラ6のA/D1入力端に接続される。
【0023】
この装置1には、検出された圧力信号をコントローラ6に供給するために、鼾チャンネルという第2のチャンネル10を設けることが好ましい。特に高いサンプリングレートを回避しつつ、高い信頼性で鼾を検出できるように、アナログ回路を用いて、検出時の生の圧力信号の包絡線信号を形成する。すなわち包絡線信号はコントローラ6のA/D2入力端に接続される。
【0024】
換言すると、好適な実施形態によれば、検出された圧力信号は、まず第1のチャンネル(フローチャンネルともいう)9を介してコントローラ6に供給される。他方、検出された圧力信号は、HPフィルタなどのフィルタを用いて、そして/または包絡線信号あるいは包絡曲線を得るための包絡線検波手段を用いて追加的に処理され、包絡線信号として、第2のチャンネル(鼾チャンネルともいう)10を介してコントローラ6に供給される。
【0025】
好適な実施形態に係るコントローラ6は、異なる3つのインジケータに関するアルゴリズムを実行処理する。アルゴリズムによる処理結果は、少なくとも1つ、好適には3つ以上、あるいは検出可能な結果に対応する数のインジケータ部品またはディスプレイ部品4を用いて視覚化(表示)される。表示手段4は、簡便なLED5であってもよいし、分析結果を記録保管するために、使い捨てデバイス(単一使用デバイス)などの不消失性の(安定した)表示素子13であってもよい。図3に示すように、コントローラ6は、鼾インジケータ、閉塞性睡眠時無呼吸インジケータ、および周期性呼吸障害インジケータの3つの異なるインジケータ4に情報を提供する。
【0026】
好適な実施形態によれば、複数使用デバイスなどの再利用可能ディスプレイを用いて、装置1による分析結果を表示してもよい。こうした複数使用デバイスとしては、LED5のようなものであってもよい。好適には、複数使用デバイスを用いた場合であっても、患者が分析結果を医者や薬剤師に示すことができるように、分析結果を永続的な信号を用いて表示するようにしてもよい。好適には、その後こうした分析結果は、認証されたユーザにより削除できるようにしてもよい。
【0027】
単一使用デバイスとして構成する場合、安定した永続性のあるインジケータ13を用いて、分析結果を表示してもよい。一般に知られた妊娠検査結果と同様、単一使用デバイスを破棄する前に、こうした分析結果に関する表示を医者に示すことができる。インジケータ13は、好適には、装置1のハウジング15に設けた微小ウィンドウ(窓部)14により実現され、ハウジングは感熱紙または感熱ラッカ16の入口を有する。好適な実施形態によれば、表面実装型レジスタなどの熱源17などにより、この感熱紙または感熱ラッカを黒く変色させる。こうして、例えば「鼾」、「閉塞性睡眠時無呼吸」、および「周期性呼吸障害」といった障害を示す症状を示すそれぞれの表示領域に、分析結果を永続的に残すことができる。
【0028】
図4は、本発明の好適な実施形態に係る装置1のハウジング15の一部を図示するものであり、ハウジングは透明ウィンドウを有し、その下方に感熱紙の部分領域である感熱インジケータ16が配置されている。この感熱インジケータの下方に、あるいはこれに隣接して表面実装型(SMD)レジスタなどの熱源17が配設されている。SMDレジスタ17はコントローラ6により作動すると、発熱し、感熱インジケータを変色させ、特定の分析結果を表示する。
【0029】
好適には、コントローラ6は、コントローラへの入力データを読み取るように構成されたデータ収集モジュール18と、アナログ入力回路からの入力チャンネルA/D1,A/D2を有する。上述の好適な実施形態によれば、フィルタ11および/または包絡線検波手段12からなる鼾チャンネル10を介して、包絡線信号が供給されるとき、サンプリングレートは約5〜20Hz、好適には約10Hzであれば十分である。
【0030】
ここでフロー信号と称するものは、好適には圧力またはフローに関する信号であって、より好適には鼻腔内圧力信号または鼻腔内フロー信号である。こうした信号は、単にフローまたはフロー信号と称するが、圧力または圧力信号をも意図するものである。
【0031】
好適には、フローチャンネル9および鼾チャンネル10を介してそれぞれコントローラ6に供給されるフロー信号および鼾信号は、異なる処理を行うために、あるいは別のアルゴリズムを実行するために、コントローラの異なる処理モジュールに供給される。本発明に係る装置1は、フローチャンネルおよび/または鼾チャンネルからの信号について少なくとも1つの異なる分析を行うように構成された、好適には少なくとも1つ、より好適には少なくとも3つのモジュールを有する。本発明に係る装置とともに用いられるアルゴリズムは、安価なプロセッサでも動作可能な程度に単純なものであるが、検出装置として求められる感度および機能を十分に併せもつ程度に信頼性が高く良好なものであることが好ましい。これらのモジュールまたはアルゴリズムモジュールは、好適には、個別のリスク指数を計算する。好適には、データ収集モジュール18により収集された生データは、装置1により出力された計算されたリスク指数の根拠となるものであるが、データ記憶しておく必要はない。ただし装置1は、異なるモジュール間でデータ交換処理を行うために、特性(基本特性および複合特性)のための2つの先入れ先出しメモリ(FIFO)を有することが好ましい。
【0032】
図5は、フローチャンネル9からの信号のための入力端A/D1と、鼾チャンネル10からの信号のための入力端A/D2とを有する好適なデータ収集モジュール18を図示するものである。さらにデータ収集モジュール18は、表示すべき障害パターンおよび/または疾病パターンに依存して、1つまたは複数のモジュールを有する。好適には、データ収集モジュール18は、図5に示すように、鼾検出モジュール19、OSA検出モジュール20、および周期性/CS検出モジュール21を有する。
【0033】
鼾検出モジュール19は、好適には、フローチャンネル9からの信号および鼾チャンネル10からの信号を処理して、鼾指数22を生成する。OSA検出モジュール20は、好適には、フローチャンネル9からの信号を処理して、無呼吸・低呼吸指数などの無呼吸および低呼吸に基づくリスク指数23を生成する。周期性/CS検出モジュール21は、フローチャンネル9からの信号を処理して、周期性指数24を生成する。コントローラ6は、鼾指数22、無呼吸・低呼吸指数23、および周期性指数24に基づいて、インジケータまたはディスプレイ4を制御する。
【0034】
好適には、鼾検出モジュール19は、センサ7およびA/Dコンバータ8からの信号を供給する鼾チャンネル10の入力信号を利用する。この鼾チャンネル10において、センサ7およびA/Dコンバータ8から出力された信号は、図6に示すように、フィルタ手段11および包絡線検波手段12で処理され、包絡線信号を生成する。フィルタ手段11は、好適には、約10Hzの遮断周波数を有するハイパス・フィルタである。高域の遮断周波数は約50〜100Hzであることが好ましい。
【0035】
好適にも、鼾チャンネル10を介してフロー信号の包絡線信号が得られる。好適には、さらに、コントローラ6および鼾検出モジュール19は、鼾チャンネル10を介して得られた包絡線信号を分析して、信号内の鼾の長さを示す信号を検出するように構成された閾値検出手段を有する。鼾検出モジュールがノイズ信号を検出しないように、鼾か否かを判断する最小時間が設定される。
【0036】
さらに鼾検出モジュール19は、好適には、鼾のあった時間(回数)と、所定の内的時間基準または閾値とを比較して、鼾指数22を計算するタイマまたはカウンタを有する。
【0037】
装置1はOSA検出モジュール20を有することが好ましい。好適なOSA検出モジュール20の概略的構成が図7に図示されている。好適には、OSA検出モジュール20は、包絡線信号および(時間と振幅に関する)閾値アルゴリズムを用いて、フロー包絡線を検出するように構成されている。これは、一般的なサーミスタ分析に類似するものである。好適な実施形態によれば、無呼吸・低呼吸指数または呼吸障害指数だけを計測して、OSA検出モジュールを作動させる場合には、無呼吸および低呼吸を必ずしも判別する必要はない。しかし、アルゴリズムの選択性を改善するために、個別の閾値を用いて無呼吸および低呼吸を判別することが好ましい。
【0038】
図7に示すOSA検出モジュール20は、好適には、フローチャンネル9を介して得られた信号を入力値として受信する。OSA検出モジュール20は、好適には、包絡線信号と、入力信号の最大値および/または最小値とを検出するための検出手段27を有する。検出手段27の出力値に基づいて、少なくとも1つの計算手段28が無呼吸、低呼吸、および/または過呼吸の開始時点および/または停止時点を計算する。好適には、2つの計算手段28を設け、一方が低呼吸および過呼吸の開始時点/停止時点を計算し、他方が無呼吸および過呼吸の開始時点/停止時点を計算する。計算手段28は、出力値として変動する低呼吸指数HIおよび変動する無呼吸指数AIを出力する。変動低呼吸指数HI、変動無呼吸指数AI、および計数手段30から出力された情報に基づいて、AHI(無呼吸・低呼吸)計算手段29は、無呼吸/低呼吸指数23を計算する。計数手段30は、フローチャンネル9を介して得られた信号に基づき、時間とともにサンプル数を計数する。
【0039】
好適には、OSA検出モジュール20は、無呼吸、低呼吸、および過呼吸の長さなどの追加的な情報を出力する。以下に説明するように、好適な実施形態では、こうした情報は周期性/CSモジュール21内で利用される。
【0040】
例えば図8に示す周期性/CS検出モジュール21は、周期性チェーン・ストークス・パターンを検出するためのものであるが、低呼吸(特定の場合は無呼吸の場合も含む)の一時的な停止およびその期間に関する情報に基づいて処理を行うものである。好適には、周期性/CS検出モジュール21は、図7を参照して説明したように、包絡線信号の最大値/最小値を計算する手段(図示せず)、および/または例えば期間毎の自己相関指数のための周期性に関する変動指数を計算するための指数計算手段31を有する。好適には、指数計算手段は、入力パラメータとして、平均低呼吸期間、平均低呼吸停止時間(低呼吸期間中に低呼吸の続く時間)が、および/または過呼吸期間に関する情報とともに、計数手段30に関して上述した時間に依存する情報を受信する。低呼吸に関する情報のそれぞれには、特別の場合、無呼吸情報が含まれる。好適には、周期性/CS検出モジュール21および指数計算手段31は、出力値として、周期指数および/またはチェーン・ストークス指数を含む周期性指数24を出力する。
【0041】
こうした周期性/CS検出モジュール21は、好適には、例えばフローチャンネル9を介して出力される鼻カニューレ信号から、主要な周期的呼吸パターンを検出する。好適には、周期性/CS検出モジュール21は、フロー最大値の包絡線形状が周期的であるという事実を利用する。このような周期性/CS検出モジュール21は、一定の値で推移する一定期を有する低呼吸および無呼吸とともに、降下勾配(FG)および上昇勾配(RG)からフロー曲線を抽出する。周期的な低呼吸のためのインジケータは、降下勾配(FG)、上昇勾配(RG)、その間の期間の発生頻度から計算することができる。より高い機能性が必要な場合、降下勾配(FG)および上昇勾配(RG)の最大値を自動相関させて、規則性に関する数を収集する。
【0042】
図9は、周期的事象に関する検出を示し、特に過呼吸について示唆的な上昇勾配(RG)と、特に主要な呼吸障害や一定の値で推移する一定期を有する低呼吸(主要なもの)のフローが制限されることについて示唆的な降下勾配(FG)とを、例示的なフロー曲線(フローの時間的推移)に基づいて図解している。
【0043】
通常の呼吸パターンまたは単なる閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)パターンは、周期性を示すような十分な数の降下勾配−上昇勾配コンプレックスを有さないことが予想される。すなわち周期性は、FFT(高速フーリエ変換)などにより特定されることはない。
【0044】
好適には、この装置は、圧力センサおよび/またはフローセンサ、アナログ電子回路、PICコントローラ、および3つのLEDを有する。
【0045】
本発明に係る装置は、単一使用または複数使用のための単体ユニット装置あるいは独立ユニット装置であることが好ましい。この装置は、使用しやすく、分かりやすい高信頼性の出力情報を提供するものである。したがって、この装置は、患者が家庭や私的な環境で使用するのに適している。患者がこの装置を使用したとき、その分析結果を医者に提示することができる。本発明に係る装置で得られた分析結果を読み出すために他の特別な手段やアダプタを必要としない。むしろ、こうした分析結果は、不慣れな人でも容易に信頼性高く読み出すことができる。
【0046】
本発明に係る装置は、とりわけ、さまざまな臨床的症状に関する情報を提供することができ、安価であり、較正する必要がなく、取り扱いが容易で、パーソナルコンピュータなどで検出データをさらに処理する必要のないといった数多くの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る装置の例示的な実施形態であって、3つの異なる障害に関する情報を提供するのに適したものを示す。
【図2】本発明の好適な装置および方法に関する概略的な構成およびコンセプトを示す。
【図3】本発明の好適な装置および方法に関する概略的な構成およびコンセプトを示す。
【図4】本発明の好適な不消失ディスプレイまたはインジケータの概略的な構成およびコンセプトを示す。
【図5】本発明の好適な装置および方法に関する概略的な構成およびコンセプトを示す。
【図6】本発明の好適な処理アルゴリズムおよび分析アルゴリズムに関する概略的な構成を示す。
【図7】本発明の好適な構成およびコンセプトの概略的なフローチャートを示す。
【図8】本発明の好適な実施形態の基本的な構成およびコンセプトを概略的に示す。
【図9】本発明の好適な実施形態の周期性事象の検出を示す。
【符号の説明】
【0048】
1:装置、2:手のひら、3:鼻カニューレ、4:インジケータ手段またはディスプレイ手段、5:発光デバイス、6:コントローラ、7:センサ、8:交流結合回路、9:第1のチャンネル(フローチャンネル)、10:第2のチャンネル(鼾チャンネル)、11:フィルタ手段、12:包絡線検波手段、13:不消失性表示素子、14:微小ウィンドウ(窓部)、15:ハウジング、16:感熱ラッカ、17:熱源、18:データ収集モジュール、19:鼾検出モジュール、20:OSA検出モジュール、21:周期性/CS検出モジュール、22:鼾指数、23:無呼吸・低呼吸指数、24:周期性指数、27〜31:検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のさまざまな症状を特定するための装置であって、
患者の呼吸を表す信号を検出するセンサ(7)と、
前記信号を処理し、そして/または分析する処理ユニット(6)と、
処理および/分析の結果を表示するための表示手段(4)とを備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
処理および/分析の結果が是または非などの容易に判別できる信号として表示されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
独立ユニットとして構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
携帯可能なサイズおよび/またはポケットサイズであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の装置。
【請求項5】
蓄電池や再充電可能な電池などのエネルギ源を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の装置。
【請求項6】
フローチャンネル(9)および/または鼾チャンネル(10)を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の装置。
【請求項7】
A/Dコンバータ(8)をさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の装置。
【請求項8】
鼾チャンネル(10)に配設されたフィルタ手段(11)および包絡線検波手段(12)をさらに有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の装置。
【請求項9】
鼾指数(22)、無呼吸・低呼吸指数(23)、および周期性指数(24)をそれぞれ出力する鼾検出モジュール(19)、OSA検出モジュール(20)、および周期性/CS検出モジュール(21)をさらに有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の装置。
【請求項10】
好適には請求項1〜9のいずれか1に記載の装置を用いて、患者のさまざまな症状を特定するための方法であって、
患者の呼吸を表す信号を検出するステップと、
前記信号を処理し、そして/または分析するステップと、
処理および/分析の結果を表示するステップとを有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−253760(P2008−253760A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79840(P2008−79840)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(506153697)エムアーペー・メディツィーン−テヒノロギー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (10)
【氏名又は名称原語表記】MAP Medizin−Technologie GmbH
【Fターム(参考)】