説明

モノスルホン酸エステルの製造方法

【課題】医薬品、農薬、液晶及び高分子の原料として有用なモノスルホン酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(I):
−CH(OH)−CHOH[式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基である。]で表される1,2−エタンジオール誘導体を、塩基及びスズ化合物存在下、炭化水素系溶媒中で、一般式:RSOX[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基であり、Xはハロゲン原子である。]で表されるスルホン酸ハライドと反応させることを含む、下記一般式(II)モノスルホン酸エステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、農薬、液晶及び高分子の原料として有用なモノスルホン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノスルホン酸エステルの製造方法としては、アセトニトリル及びジクロロメタン溶媒中、ジブチルスズオキサイドを触媒として1−フェニル−1,2−エタンジオールをモノトシル化する方法が報告されている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記の方法は反応性のあるアセトニトリルを反応溶媒として用いていることから、反応条件によっては不純物を生成させ、生成物の純度を低下させる点で問題がある。また、ジクロロメタンは、環境負荷及び人体への毒性の観点から、工業的な製造には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−500498号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,124巻、3578−3585頁、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、環境負荷や人体への悪影響のより小さい溶媒を用いて、高い純度及び高い収率で目的とするモノスルホン酸エステルを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、炭化水素系溶媒中で、1,2−エタンジオール誘導体を、塩基及びスズ化合物存在下、スルホン酸ハライドと反応させることにより、1,2−エタンジオール誘導体の第一級アルコールを選択的にスルホニル化し、高純度、高収率かつ簡便な操作でモノスルホン酸エステルを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のモノスルホン酸エステルの製造方法を提供するものである。
一般式(I):
【0009】
【化1】

[式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基である。]
で表される1,2−エタンジオール誘導体を、塩基及びスズ化合物存在下、炭化水素系溶媒中で、一般式:RSOX[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基であり、Xはハロゲン原子である。]で表されるスルホン酸ハライドと反応させることを含む、下記一般式(II):
【0010】
【化2】

[式中、R及びRは前記と同じである。]
で表されるモノスルホン酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便な操作で、ジスルホン酸エステルの生成を抑制しながら、目的のモノスルホン酸エステルを高純度かつ高収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のモノスルホン酸エステルの製造方法について具体的に説明する。
【0013】
一般式(I)及び一般式(II)におけるRは、置換基を有していてもよいアリール基である。このRとしては、例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、ピリジル、フリル等が挙げられる。置換されたアリール基の場合、置換基としては、例えば、(保護されていても良い)ヒドロキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、アルキルチオ、ハロゲン、置換されたフェニル、フェノキシ、アミノまたはニトロが挙げられる。好ましくは、アリール基はアリール基、特に好ましくはフェニル基である。それらアリール基は無置換、あるいはC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、(保護されていても良い)ヒドロキシ、アセトキシ、Cl、Br、フェニル、フェノキシまたはフルオロフェノキシによって置換されていてもよい。
置換基としては、例えば、C〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C〜C12アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
本発明に用いられる1,2−エタンジオール誘導体は、例えば、1−フェニル−1,2−エタンジオール、1−(2−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−メチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−メチルフェニル)1,2−エタンジオール、1−(4−メチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−ヒドロキシフェニル)− −1,2−エタンジオール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−メトキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−メトキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−メトキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−アミノフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−アミノフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−アミノフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−ニトロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−ニトロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−ニトロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2,4−ジクロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−1,2−エタンジオールなどが挙げられる。なお、これらモノスルホン酸エステル誘導体はラセミ体でも光学活性体でもよい。
【0015】
本発明に用いられるスルホン酸ハライドは、一般式:RSOX[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基であり、Xはハロゲン原子である。]で表される化合物である。
【0016】
で示されるアルキル基は、特に制限されないが、C〜C20アルキル基であることが好ましく、C〜C10アルキル基であることがより好ましく、C〜Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0017】
で示されるアリール基は、C〜C18アリール基であることが好ましく、C〜C12アリール基であることがより好ましい。アリール基の例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0018】
で示されるアルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基が置換基を有している場合、置換基としては、例えば、C〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C〜C12アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0020】
スルホン酸ハライドの使用量は、理論当量(モル)以上であればよい。具体的には、1,2−エタンジオール誘導体に対して、1.0〜1.5当量が好ましく、1.0〜1.1当量であることがさらに好ましい。その使用量を1.5当量以下とすることにより、ジスルホン酸エステルの増加を防ぐことができ、未反応のスルホン酸ハライドの除去を必要としなくなる。一方、使用量を1.0当量以下とすることにより、収率の低下を防ぐことができ、未反応の1,2−エタンジオール誘導体を除去する必要がなくなる。
【0021】
本発明に用いられる塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリンが例示できる。これらの塩基は単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
その使用量は、理論当量(モル)以上であればよい。具体的には、1,2−エタンジオール誘導体に対して、1.0〜1.5当量が好ましく、1.0〜1.1当量であることがさらに好ましい。その使用量を1.5当量以下とすることにより、ジスルホン酸エステル誘導体の生成による収率の低下を防ぐことができる。一方、使用量を1.0当量以上とすることにより、未反応のジオールの残存による収率の低下を防ぐことができる。
当該塩基の添加方法は限定されない。例えば、反応時に反応に必要な全量が存在していても良いし、反応中に一括で添加することもできる。本発明では、塩基を反応中に何回かに分けて添加すること(分割添加)がより好ましい。副生成物であるジスルホン酸エステルの生成を抑制することができるからである。また、反応開始時点の反応液の温度から、±2℃の範囲内に反応を制御するように、塩基を滴下することがさらに好ましい。
【0022】
本発明に用いられる触媒としてのスズ化合物は、ジブチルスズオキシド、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジフェニルスズジクロライド、トリブチルスズクロライドなどが挙げられる。これらのスズ化合物は、単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0023】
スズ化合物の使用量は1,2−エタンジオール誘導体に対して0.001〜0.10当量であることが好ましく、0.01〜0.05当量であることがより好ましい。その使用量を0.10当量以下とすることにより、反応後に回収する触媒(スズ化合物)の良が多くなり、操作が煩雑になるのを防ぐことができる。一方、0.001以上とすることにより、反応速度が低下し、反応を完結させるための時間が長くなるなど効率が悪くなるのを防ぐことができる。
【0024】
1,2−エタンジオール誘導体と、スルホン酸ハライド及び塩基とを反応させる際の反応温度は、−40〜100℃が好ましく、−20〜80℃がより好ましい。反応温度を100℃以下とすることにより、塩基の分解による反応液の着色を防ぐことができる。一方、−40以上とすることにより、反応速度が遅いことによるジスルホン酸エステルなど不純物の増加を防ぐことができる。
【0025】
本発明では、反応溶媒として炭化水素系溶媒を用いる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、トルエン、キシレンなどが好ましく挙げられる。これらの溶媒は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
炭化水素系溶媒の使用量は、1,2−エタンジオール誘導体に対して5〜50倍量(質量)が好ましく、7〜20倍量(質量)であることがより好ましい。その使用量を50倍量(質量)以下とすることにより、後処理での濃縮に時間を要するという欠点を防ぐことができる。一方、使用量を5倍量(質量)以上とすることにより、反応により生成するスルホン酸塩が析出し、攪拌ができなくなるという欠点を防ぐことができる。
【0026】
上記反応で得られたモノスルホン酸エステル誘導体は、例えば、反応液を反応溶媒で希釈した後に純水などで洗浄し、溶媒を除去して濃縮することにより回収することができる。
【0027】
以上の操作により、対応する1,2−ジオール誘導体を出発原料として、簡便な操作で化学純度95%以上の高品質な製造したモノスルホン酸エステル誘導体をすることができる。
【0028】
本発明の方法で得られるモノスルホン酸エステル誘導体としては、例えば、2−フェニル−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2−クロロフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル メタンスルホネート、2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2−メチルフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル メタンスルホネート、2−(3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチルメタンスルホネート、2−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル メタンスルホネート、2−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(3−メトキシフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル メタンスルホネート、2−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2−トリフルオロメチルフェニル)−21−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル メタンスルホネート、2−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−ヒドロキシエチルメタンスルホネート、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2−アミノフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(3−アミノフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(4−アミノフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル メタンスルホネート、2−(2−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(3−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(4−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル メタンスルホネート、2−フェニル−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 4−トルエンスルホネート、2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(4−クロロフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 4−トルエンスルホネート、2−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 4−トルエンスルホネート、2−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(2−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(3−メトキシフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 4−トルエンスルホネート、2−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(2−トリフルオロメチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル、4−トルエンスルホネート,2−(3−トルフルオロメチルフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 4−トルエンスルホネート、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(2−アミノフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(3−アミノフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 4−トルエンスルホネート、2−(4−アミノフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(2−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(3−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(4−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネート、2−フェニル−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(4−クロロフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(3−メトキシフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2−トリフルオロメチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル、2−ニトロフェニルスルホネート,2−(3−トルフルオロメチルフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2−アミノフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(3−アミノフェニル)−2−(1−メトキシ−1−メチルエチルオキシ)エチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(4−アミノフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(3−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(4−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネート、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル 2−ニトロフェニルスルホネートなどが挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明する。得られたモノスルホン酸エステルの分析条件は以下のものを用いた。
〔分析条件〕
モノスルホン酸エステルの高速液体クロマトグラフィーによる純度分析
試料調製方法 :試料25mgを溶離液25mLに溶解
装置 :カラムオーブン 日本分光社製 865−CO
UV日本分光社製 870−UV
ポンプ 日本分光社製 880−PU
インテグレーター 島津製作所社製 C−R3A
カラム :ODS−2(GLサイエンス社製)
キャリヤー :アセトニトリル:純水=50/50
カラム温度 :40℃
流速 :1mL/min
波長 :230nm
[実施例1]
攪拌機及び温度計を付した50mLの三口フラスコに、R−1−(3−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール43.7g(0.25mol)、塩化p−トルエンスルホニル50.7g(0.27mol)、触媒としてジブチルスズオキシド1.3g(0.01mol)をトルエン345mLに溶解した。反応液を20℃に調整し、トリエチルアミン26.9g(0.27mol)を内温19〜21℃(20±1℃)の範囲で1時間かけて滴下した。その後、20℃で2時間攪拌した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、転化率94%、選択率94%、光学純度99%ee以上でR−2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル 4−トルエンスルホネートを取得した。
[実施例2]
反応温度(アミン滴下前の反応液の温度)を40℃とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、転化率97%、選択率99%、光学純度99%ee以上でモノトシル体を取得した。
[実施例3]
反応温度を60℃(アミン滴下前の反応液の温度)とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、転化率94%、選択率99%、光学純度99%ee以上でモノトシル体を取得した。
[実施例4]
触媒をジメチルスズジクロライドとした以外は、実施例1と同様の方法で行った。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、転化率76%、選択率99%、光学純度99%ee以上でモノトシル体を取得した。
【0030】
[実施例5]
攪拌機及び温度計を付した50mLの三口フラスコに、R−1−(3−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール43.7g(0.25mol)、塩化p−トルエンスルホニル50.7g(0.27mol)、トリエチルアミン26.9g(0.27mol)をトルエン345mLに溶解した。反応液を20℃に調整し、ジブチルスズオキシド1.3g(0.01mol)を添加した。反応温度は発熱により25〜29℃となった。その後、20℃で2時間攪拌した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、転化率86%、選択率90%、光学純度99%ee以上でモノトシル体を取得した。
[比較例1]
攪拌機及び温度計を付した50mLの三口フラスコに、R−1−(3−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール43.7g(0.25mol)、塩化p−トルエンスルホニル50.7g(0.27mol)をトルエン345mLに溶解した。反応液を20℃に調整し、トリエチルアミン26.9g(0.27mol)を内温19〜21℃の範囲で1時間かけて滴下した。その後、20℃で2時間攪拌した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、転化率26%、選択率90%、光学純度99%ee以上でモノトシル体を取得した。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、簡便な方法でモノスルホン酸エステルを高純度及び高収率で得ることができる。また、本発明によれば、光学活性体を用いた場合、高い光学純度で目的のモノスルホン酸エステルを得ることができる。得られたモノスルホン酸エステルは、医薬品、農薬、液晶及び高分子の原料として幅広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基である。]
で表される1,2−エタンジオール誘導体を、塩基及びスズ化合物存在下、炭化水素系溶媒中で、一般式:RSOX[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基であり、Xはハロゲン原子である。]で表されるスルホン酸ハライドと反応させることを含む、下記一般式(II):
【化2】

[式中、R及びRは前記と同じである。]
で表されるモノスルホン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
塩基を炭化水素系溶媒に分割添加する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
スズ化合物が、ジブチルスズオキシド、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジフェニルスズジクロライド及びトリブチルスズクロライドからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
炭化水素系溶媒が、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、トルエン及びキシレンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−168320(P2010−168320A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13446(P2009−13446)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】