説明

モルタル注入装置

【課題】エアーによる圧力を用いてモルタルを排出させる場合に、モルタル内に気泡を混入させないようにするとともに、連続してモルタルを排出させることができるようにしたモルタル注入装置を提供する。
【解決手段】モルタルを投入することができる加圧シリンダー2と、当該加圧シリンダー2に投入されたモルタルの表面に接触する加圧ピストン4と、当該加圧ピストン4をエアーによる押圧力で押圧するコンプレッサー6を接続できるようにした加圧弁33と、前記加圧ピストン4によって押圧されたモルタルを排出する排出口51〜54とを備える。また、この排出口51〜54として、同一径を有する排出口51〜54を複数設け、一の排出口からモルタルを排出するとともに、他の排出口にモルタルの補給装置7を接続し、その排出口から連続的にモルタルを補給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面を増厚させて補強する際に、平面と板材との隙間にモルタルを注入できるようにしたモルタル注入装置などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なモルタル注入装置を図4や図5に示す。図4のモルタル注入装置は、比較的少量のモルタルを手動によって排出させることができるようにしたものであって、モルタルを投入するホッパー91と、そのホッパー91に投入されたモルタルを挿入するシリンダー92と、そのシリンダー92内に挿入されたモルタルを外部に排出させるピストン93とを備えて構成される(特許文献1など)。また、図5のモルタル注入装置は、連続してモルタルを排出させるようにしたもので、モルタルを装填するホッパー91と、そのホッパー91に投入されたモルタルを落とし込むシリンダー92と、そのシリンダー92内で回転することによってモルタルを外部に排出させるスクリュー94とを備えて構成される。このような装置のうち、前者のようなモルタル注入装置は、比較的少量のモルタルを必要とする目地の充填などに使用することができ、一方、後者のようなモルタル注入装置は、板材で養生された壁面内に大量のモルタルを充填して壁面を増圧する場合などに使用することができる。
【0003】
ところで、このようなモルタル注入装置のうち、前者のようにピストン93でモルタルを排出させる装置では、ピストン93の押圧によってモルタルを排出させるため、そのモルタルの排出が不連続なものになり、さらには、大量のモルタルが必要となる箇所の使用には適していない。また、ピストン93の押圧力によっては、例えば、板材で養生された壁面の内側にモルタルを注入させるような場合、圧力不足によってモルタルを全面に行き渡らせることができず、あるいは、過度に圧力を加えた場合には、養生された板材を破損させてしまう可能性がある。
【0004】
一方、後者のようにスクリュー94によってモルタルを排出させるようにした装置では、大量のモルタルを必要とする部位には好適に使用することができるものの、スクリュー94のピッチによって排出の圧力が決定されてしまうため、高圧でモルタルを排出させるように設定されている場合は、同様に養生された板材を破損させてしまう可能性がある。
【0005】
かかる問題を解決するために、従来では、エアーによる圧力によってモルタルを排出させるようにしたモルタル注入装置も提案されている(特許文献3)。このモルタル注入装置は、図6に示すように、モルタルを投入するホッパー91と、そのホッパー91に投入されたモルタルをエアーで押圧するコンプレッサー95とを備えてなるもので、そのコンプレッサー95の圧力を調整することによって、モルタルの排出圧力を調整できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−027443号公報
【特許文献2】実開昭59−138657号公報
【特許文献3】実用新案登録第3102723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなエアーによる圧力によってモルタルを排出させるようにしたモルタル注入装置においても次のような問題を有する。
【0008】
すなわち、図6に示すようなエアーによる圧力を用いてモルタルを排出させるようにした構造のものでは、ホッパー91に投入されたモルタルにそのままエアーを供給するため、モルタルに気泡が混入してしまう可能性がある。このため、気泡が混入したモルタルを壁面に注入すると、モルタルの強度が弱くなってしまう。
【0009】
また、コンプレッサー95で内部圧力を高める構造のものでは、一旦モルタルをホッパー91内に投入してホッパーを密封し、その状態でエアーで内部圧力を高くしなければならないが、ホッパー91内のモルタルの残量が少なくなると、再度ホッパーを開封してモルタルを投入しなければならない。このため、大量のモルタルが必要となる場合は、そのホッパー91の開封やモルタルの補給、再密封などの作業が面倒なものとなるといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、エアーによる圧力を用いてモルタルを排出させる場合に、モルタル内に気泡を混入させないようにするとともに、連続してモルタルを排出させることができるようにしたモルタル注入装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、モルタルが投入される加圧シリンダーと、当該加圧シリンダーに投入されたモルタルの表面を覆う加圧ピストンと、当該加圧ピストンをエアーによる押圧力で押圧するためのコンプレッサーを接続可能にした加圧弁と、前記加圧ピストンによって押圧されたモルタルを排出する排出口とを備えるようにしたものである。
【0012】
このように構成すれば、モルタルの表面を加圧ピストンで覆って、その上からエアーを供給するので、モルタルに気泡が混入してしまうことを防止することができるようになる。
【0013】
また、このような発明において、モルタルを排出する排出口を複数設け、そのうちの一の排出口からモルタルを加圧シリンダー内に補給する補給装置を備えるとともに、他の排出口からモルタルを外部に排出させるようにする。
【0014】
このようにすれば、加圧シリンダー内に連続してモルタルを補給しながら排出させることができ、しかも、加圧シリンダー内の圧力をエアーで調整しながら、モルタルを排出させることができるようになる。
【0015】
さらに、内径が同じ排出口を複数設けるようにしておく。
【0016】
このようにすれば、一の排出口からモルタルを排出する場合、同じ内径の排出口からモルタルを補給すれば、モルタルの排出途中に加圧シリンダー内のモルタルがなくなってしまうようなことがなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モルタルが投入される加圧シリンダーと、当該加圧シリンダーに投入されたモルタルの表面を覆う加圧ピストンと、当該加圧ピストンをエアーによる押圧力で押圧するためのコンプレッサーを接続可能にした加圧弁と、前記加圧ピストンによって押圧されたモルタルを排出する排出口とを備えるようにしたので、モルタルに気泡が混入することを防止することができ、気泡の混入したモルタルを壁面に塗布してしまうようなことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態におけるモルタル注入装置の概略図
【図2】同実施の形態における排出部を示す図
【図3】同実施の形態におけるモルタル注入装置の使用状態を示す概略図
【図4】従来例におけるモルタル注入装置を示す図
【図5】従来例におけるモルタル注入装置を示す図
【図6】従来例におけるモルタル注入装置を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態におけるモルタル注入装置1は、図1から図3に示すように、液状のモルタルを投入するための円筒状の加圧シリンダー2と、その加圧シリンダー2に投入されたモルタルの表面を覆う加圧ピストン4とを備え、コンプレッサー6によるエアーの押圧力によってモルタルを排出口51〜54から外部に排出させるようにしたものである。以下、本実施の形態におけるモルタル注入装置1について詳細に説明する。
【0020】
まず、加圧シリンダー2は、モルタルを上部から投入できるようにした円筒状をなすものであって、上部に開口部を有し、その開口部を蓋部32で密閉可能に覆うように構成されている。この蓋部32は、気密ガスケット31を用いて加圧シリンダー2の上部開口部に密着するように取り付けられており、その上面に、コンプレッサー6からのエアーを供給できるようにした加圧弁33や、加圧シリンダー2内に供給されたエアーを排出する排圧弁34、加圧ピストン4を吸い上げるための強制排圧弁35が取り付けられている。この加圧弁33にはコンプレッサー6からの管が取り付けられ(図3参照)、そこからエアーを供給できるようにするとともに、強制排圧弁35には作業が終了した際に図示しない真空ポンプが接続され、内部の加圧シリンダー2を持ち上げられるようになっている。
【0021】
一方、この加圧シリンダー2内に挿入される加圧ピストン4は、この円筒状の加圧シリンダー2に内接するように設けられるものであって、均等にモルタルを押圧するような円板状の部材によって構成される。ところで、新たなモルタルを上から補給する必要が生じた場合は、その加圧ピストン4を一旦外部に取り外してモルタルを補給しなければならないが、モルタルと加圧ピストン4の接触面が密着していると、その密着の圧力によって加圧ピストン4を取り外すことが難しくなる。そこで、この加圧ピストン4には、その接触面にエアーを取り込めるようにするための排気弁41と、加圧ピストン4を持ち上げるための把手42を取り付けるようにしている。そして、その排気弁41を開放させることよってモルタルとの隙間にエアーを取り込んで加圧ピストン4を取り出せるようにしている。
【0022】
この加圧シリンダー2の下方には、モルタルを外部に排出するための排出部5が設けられる。この排出部5の側面には、加圧シリンダー2によって押圧されたモルタルを排出するための複数の排出口51〜54が設けられており、この複数の排出口51〜54のうち、いずれかの排出口51〜54を選択してモルタルを排出できるようにしている。この実施の形態では、排出口51〜54として、小径(直径13mm)に構成された複数の第一排出口51と、中径(直径25mm)に構成された複数の第二排出口52と、中大径(直径30mm)に構成された複数の第三排出口53と、大径(直径50mm)に構成された複数の第四排出口54とをボックス状の排出部5の側面に設けている。これらの排出口51〜54には、非使用時にその開口部を栓止する気密プラグ55が取り付けられ、気密プラグ55が取り付けられていない排出口からモルタルを排出させるようにしている。
【0023】
また、この排出口51〜54は、図3に示すように、モルタルを加圧シリンダー2に補給する補給装置7を接続できるように構成されており、排出されたモルタルの量に相当するモルタルを下から補給できるようになっている。この排出された量に相当するモルタルを補給する場合、排出用に選択された排出口51〜54と同径の排出口に補給装置7を接続し、これによって内部のモルタルの量を一定に保つようにする。
【0024】
次に、このように構成されたモルタル注入装置1の使用方法について説明する。
【0025】
まず、モルタル注入装置1を使用する場合、使用場所に適した排出口(図3では第二排出口52)にホース8を取り付けるとともに、それ以外の排出口51〜54に気密プラグ55を取り付けておく。そして、このような状態で、加圧シリンダー2の上部に取り付けられた蓋部32を取り外してモルタルを投入し、適量の所でその上部から加圧ピストン4を挿入する。このとき加圧ピストン4の排気弁41は開放しておき、モルタルに接触した状態でその排気弁41を封止する。
【0026】
そして、その加圧シリンダー2の開口部に気密ガスケット31を挟み込んで蓋部32を取り付け、加圧弁33にコンプレッサー6からのホース8を接続する。
【0027】
このようにした状態で、コンプレッサー6からの圧力を調整しながらエアーを加圧シリンダー2内に供給する。すると、加圧ピストン4によってモルタルへのエアーの混入が遮られた状態でモルタルを押圧することができ、排出口51〜54から最適な圧力でモルタルを排出することができるようになる。このとき、使用箇所によって排出圧を大きくする必要がある場合は、コンプレッサー6からの圧力を大きくするとともに、排出圧を小さくする必要がある場合は、コンプレッサー6の圧力を小さくすることで、使用箇所に合わせて使用することができるようになる。
【0028】
そして、加圧シリンダー2内のモルタルがなくなった場合、コンプレッサー6からのエアーの供給を停止するとともに、排圧弁34を開放し、内部圧力を大気圧の状態にするとともに、再びその排圧弁34を封止し、強制排圧弁35に真空ポンプを接続して加圧ピストン4を持ち上げる。そして、加圧ピストン4を持ち上げた状態で、蓋部32を取り外し、また、加圧ピストン4の排気弁41を開放させて加圧ピストン4を取り外し、モルタルを補給する。
【0029】
なお、このように蓋部32の取り外しによってモルタルを順次補給していく方法では、モルタルの補給が不連続なものになってしまい、また、モルタルを加圧シリンダー2に補給している途中に、エアーがモルタル内に混入してしまう可能性がある。このため、加圧シリンダー2にモルタルを投入している状態で、選択された排出口51〜54と同径の排出口51〜54にモルタルの補給装置7を接続し、そこからモルタルを一定流量で加圧シリンダー2内に補給していくようにすることもできる。このとき、補給装置7からモルタルが補給されると、一旦、加圧シリンダー2内に下方からそのモルタルが補給され、コンプレッサー6からの圧力によってモルタルが排出口51〜54から排出されるようになる。このようにすれば、モルタルの補給が連続的なものになり、モルタルの補給の際に、モルタルにエアーが混入してしまうようなことがなくなるというメリットがある。
【0030】
このように上記実施の形態によれば、モルタルを投入することができる加圧シリンダー2と、当該加圧シリンダー2に投入されたモルタルの表面に接触する加圧ピストン4と、当該加圧ピストン4をエアーによる押圧力で押圧するためのコンプレッサー6を接続できるようにした加圧弁33と、前記加圧ピストン4によって押圧されたモルタルを排出する排出口51〜54とを備えるようにしたので、モルタルに気泡が混入することを防止することができ、気泡の混入したモルタルを壁面に塗布してしまうようなことがなくなる。
【0031】
また、上記実施の形態では、排出口51〜54を複数設け、そのうちの一の排出口51〜54からモルタルを補給する補給装置7を接続するとともに、他の排出口51〜54からモルタルを外部に排出させるようにしたので、加圧シリンダー2内に連続してモルタルを補給しながら排出させることができるようになる。しかも、加圧シリンダー2内の圧力をエアーで調整しながら、モルタルの排出圧力を調整して排出させることができるようになる。
【0032】
さらに、上記実施の形態では、4種類の同一径を有する排出口51〜54を複数設けるようにしておくようにしたので、一の排出口51〜54からモルタルを排出する場合、同じ内径の排出口51〜54からモルタルを補給するようにすれば、排出の途中で加圧シリンダー2内のモルタルがなくなってしまうようなことがなくなる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0034】
例えば、上記実施の形態では、加圧シリンダー2として円筒状のものを用いるようにしたが、筒状のものであれば断面が四角形状をなすものであってもよい。また、このとき、加圧ピストン4としては、その筒状の内面に接するような形状のものとしておく。
【0035】
また、上記実施の形態では、小径、中径、中大径、大径の四種類の径を有する排出口を設けるようにしたが、これ以外の種類の排出口を設けるようにしてもよく、あるいは、1種類の径の排出口を設けるようにしてもよい。但し、このような径の排出口を設ける場合において、好ましくは、各径の排出口を最低限2つ以上設けるようにしておき、これによって排出と補給を同時に行えるようにしておくとよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、モルタルを排出口51〜54から補給する場合、同径の排出口51〜54からモルタルを補給するようにしたが、異なる径の排出口51〜54からモルタルを補給するようにしてもよい。但し、異なる径の排出口51〜54からモルタルを補給する場合、外部に排出されるモルタルの量と加圧シリンダー2内に補給されるモルタルの量とが同等に調整しておく必要があるため、補給時における流量を調整することによって、外部に排出される量に相当するモルタルを補給できるようにする。
【符号の説明】
【0037】
1・・・モルタル注入装置
2・・・加圧シリンダー
31・・・気密ガスケット
32・・・蓋部
33・・・加圧弁
34・・・排圧弁
35・・・強制排圧弁
4・・・加圧ピストン
41・・・排気弁
42・・・把手
5・・・排出部(51:第一排出口、52:第二排出口、53:第三排出口、54:第四排出口)
55・・・気密プラグ
6・・・コンプレッサー
7・・・補給装置
8・・・ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタルを投入することができる加圧シリンダーと、
当該加圧シリンダーに投入されたモルタルの表面を覆う加圧ピストンと、
当該加圧ピストンをエアーによる押圧力で押圧するためのコンプレッサーを接続可能にした加圧弁と、
前記加圧ピストンによって押圧されたモルタルを排出する排出口と、
を備えたことを特徴とするモルタル注入装置。
【請求項2】
前記排出口が、複数設けられるものであり、
前記複数の排出口のうち、一の排出口からモルタルを加圧シリンダー内に補給する補給装置とを備え、
前記複数の排出口のうち、他の排出口からモルタルを外部に排出させるようにした請求項1に記載のモルタル注入装置。
【請求項3】
前記排出口として、内径の同じ排出口を複数設けたものである請求項1に記載のモルタル注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251381(P2012−251381A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125878(P2011−125878)
【出願日】平成23年6月4日(2011.6.4)
【出願人】(511136854)有限会社真鍋組 (1)
【Fターム(参考)】