説明

モータ、モータ内蔵ローラおよびローラコンベア装置

【課題】容易に製造可能であって、容易に整備可能なモータ、モータ内蔵ローラおよびローラコンベア装置を提供することである。
【解決手段】モータ内蔵ローラに搭載されるモータ1であって、モータ1は、出力軸2,5と、筺体10とを有し、筺体10は、軸方向において、少なくとも2分割された筺体片11,12を組み合わせて成る。筺体10は、締結金具20で締結されている。モータ内蔵ローラであって、モータ1を搭載する。ローラコンベア装置であって、モータ1を搭載するモータ内蔵ローラを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ、モータ内蔵ローラおよびローラコンベア装置に関し、さらに詳細には、容易に製造可能であって、容易に整備可能なモータ、モータ内蔵ローラおよびローラコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や物流倉庫では、容易に荷物を搬送するため、ローラコンベア装置が利用されている。ローラコンベア装置には、複数のローラが設けられており、その内のいくつかには、モータを内蔵したローラ(以下、モータ内蔵ローラと称する)が設けられることもある。特許文献1には、パワーモーラ(伊東電機株式会社の登録商標)と呼ばれるモータ内蔵ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−18925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6に示すように、特許文献1に開示されたモータ内蔵ローラ80は、筒状のローラ本体81の内部に、モータ90が内蔵されている。モータ90は、筒状の筺体91を有している。
図7に示すように、筺体91内には、減速機95と、固定子92と、回転子に連結された出力軸93等を有している。減速機95と固定子92は、筺体91内に圧入されており、筺体91に強固に固定されている。
【0005】
ところが、特許文献1に開示されたモータ内蔵ローラ80は、減速機95と固定子92が圧力に耐えられる構造である必要があるため、材質や形状に制約がある。
また、モータ内蔵ローラ80は、減速機95と固定子92が、筺体91に強固に固定されていることにより、モータ90を分解して整備(潤滑油の注入、巻線の交換等)することが、困難である。例えば、モータ90を長期間使用することにより、固定子92が筺体91に固着することもある。この場合、固定子92を筺体91から無理に引き剥がそうとして、固定子92が破損することもある。
また、モータ内蔵ローラ80の製造段階において、減速機95と固定子92とを、筺体91内に圧入するためには、数種類の工具や機器が必要であり、手間が掛かる。
【0006】
上記した現状に鑑み、本発明は、容易に製造可能であって、容易に整備可能なモータ、モータ内蔵ローラおよびローラコンベア装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、モータ内蔵ローラに搭載されるモータであって、前記モータは、出力軸と、筺体とを有し、前記筺体は、軸方向において、少なくとも2分割された筺体片を組み合わせて成ることを特徴とするモータである。
【0008】
本発明のモータは、モータ内蔵ローラに搭載されるモータであって、前記モータは、出力軸と、筺体とを有しているものである。また、本発明のモータは、前記筺体は、軸方向において、少なくとも2分割された筺体片を組み合わせて成るものである。前記筺体は、筺体の内部に、減速機や固定子を圧入する必要がない。すなわち、減速機や固定子を、少なくとも2分割された筺体片を組み合わせることで、容易に覆うことができる。また、筺体は、容易に分解することができる。すなわち、少なくとも2分割された筺体片を分解することで、減速機や固定子を、筺体から、容易に取り外すことができる。本発明のモータによれば、容易に製造することができ、容易に整備することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記筺体は、締結手段で締結されていることを特徴とする請求項1に記載のモータである。
【0010】
本発明のモータでは、前記筺体は、締結手段で締結されているものである。締結手段とは、繰り返し締結可能な部品を指す。すなわち、少なくとも2分割された筺体片を、溶接等の接合手段で永久締結するのではなく、締結手段で締結する。このことにより、筺体の組立と分解とを、容易に行うことができる。本発明のモータによれば、より容易に製造することができ、より容易に整備することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータを搭載することを特徴とするモータ内蔵ローラである。
【0012】
本発明のモータ内蔵ローラは、請求項1又は2に記載のモータを搭載するものである。前記モータは、筺体の組立と分解を容易に行うことができる。このようなモータを搭載することにより、モータ内蔵ローラの組立と分解が容易となる。本発明のモータ内蔵ローラによれば、容易に製造することができ、容易に整備することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のモータ内蔵ローラを有することを特徴とするローラコンベア装置である。
【0014】
本発明のローラコンベア装置は、請求項3に記載のモータ内蔵ローラを有するものである。前記モータ内蔵ローラは、筺体の組立と分解が容易なモータを搭載している。このようなモータ内蔵ローラを有することにより、ローラコンベア装置の組立と分解が容易となる。本発明のローラコンベア装置によれば、容易に製造することができ、容易に整備することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータ、モータ内蔵ローラおよびローラコンベア装置によれば、容易に製造することができ、容易に整備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るモータを示す斜視図である。
【図2】図1のモータを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るモータ内蔵ローラを示す分解斜視図である。
【図4】図3のモータ内蔵ローラを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るローラコンベア装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図6】従来のモータ内蔵ローラを示す分解斜視図である。
【図7】図6のモータを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は、本発明のモータおよびモータ内蔵ローラの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。また、公知のものについては、説明を省略する。
【0018】
図1において、モータ1の出力軸方向を「軸方向」とし、モータ1の出力軸方向に直交する方向を「鉛直方向」とする。
【0019】
まず、本実施形態のモータ1の構成について説明する。
図1に示すように、モータ1は、円筒状を成した筺体10を有している。軸方向において、筺体10の一方の端部からは出力軸2が突出しており、他方の端部には電源部23を有している。
図2に示すように、筺体10は、2つの筺体片11,12によって構成されている。モータ1は公知のそれと同様に、筺体10の内部に、減速機3と、固定子4と、出力軸5を有している。
【0020】
出力軸5は、図示しない回転子6を有している。回転子6は図示しない永久磁石を有している。固定子4は図示しない巻線を有している。すなわち、固定子4の巻線に電流を流すことにより、永久磁石を有する回転子6が回転する。つまり、固定子4と回転子6によって、モータ1の動力を生み出すことができる。本実施形態で採用するモータ1は、ブラシレスモータであることが好ましい。なお、固定子4は、図示しない突起部を有している。また、固定子4の端部には、図示しない基板を有している。この基板は、固定子4の巻線と接続されている。また、この基板は、ホールICを有し、回転子6の回転数を検出可能である。
【0021】
減速機3は、出力軸2を有している。減速機3は、公知のそれと同様に、図示しない太陽歯車や遊星歯車等を有している。すなわち、減速機3は、固定子4と回転子6によって生み出された動力の回転速度を減じる代わりに、出力軸2から高いトルクとして出力することができる。なお、減速機3は、図示しない突起部を有している。
【0022】
筺体10の外側には、円筒の蓋部材24が位置している。円筒の蓋部材24は、固定軸25と、電源ケーブル26と、歯車29を有している。固定軸25と歯車29とは同軸となるように接続されている。
蓋部材24の内部には、図示しない軸受28を有している。すなわち、蓋部材24が軸受28を有することにより、蓋部材24は固定軸25に対して相対的に回転可能である。さらに、蓋部材24は歯車29に対しても相対的に回転可能である。
電源ケーブル26は、コネクタ27を有している。
【0023】
筺体片11,12の略中央部と、両端部には、くびれ部14を有している。くびれ部14は、筺体10の他の外周面13よりも縮径している。筺体片11,12は、モータ1の軸方向に対して2分割された半円筒状の部品である。2分割された筺体片11,12が組み合わされて、筺体10を成している。
なお、筺体片11,12は、孔17を有している。孔17は、減速機3と固定子4とが有する突起部と、略合致する大きさを有している。孔17は、減速機3と固定子4とが有する突起部と合致することにより、筺体10内で減速機3と固定子4とが回転することを防止できる。また、孔17は、減速機3と固定子4とが有する突起部と合致することにより、筺体片11,12に減速機3と固定子4とを組み立てる際に、各々の位置決めが可能である。
孔17は、筺体片11,12の内側15と外側16とを連通している。孔17は、鉛直方向において、筺体片11,12の略中央に位置している。また、孔17は、軸方向において、くびれ部14の近傍に位置している。
筺体片11,12は、高い剛性を有し、且つ耐腐食性に優れた金属で構成されることが好ましい。
【0024】
つぎに、モータ1の組立構造について説明する。
減速機3と、固定子4とは、出力軸5を介して接続されている。なお、固定子4と、蓋部材24とは、歯車29を介して接続されている。
接続されている減速機3と固定子4は、両側から筺体片11,12で覆われている。なお、減速機3と固定子4とに設けられた図示しない突起部は、筺体片11,12が有する孔17に嵌められている。
筺体片11,12は、組み合わされて、筺体10を成している。筺体片11,12同士は、くびれ部14に設けられた締結金具20によって結束されている。
締結金具20は、くびれ部14の全周を締結しており、締結金具20の端部同士は接合されている。締結金具20の端部同士は、溶接等の接合手段で接合しても良い。
筺体10は、出力軸2,5と同軸円状となるように配置されている。筺体10の一方側の端部からは、出力軸2が突出している。筺体10の他方側の端部には、電源部23が接続されている。
コネクタ27を有していない側の電源ケーブル26の端部は、固定子4の基板に接続されている。
【0025】
つぎに、本実施形態のモータ内蔵ローラ30の構成について説明する。
図3に示すように、モータ内蔵ローラ30は、モータ1と、ローラ本体31と、出力板32と、蓋部材33とを有している。
ローラ本体31は公知のそれと同様に、両端が開放された管状を成している。ローラ本体31は、高い剛性を有し、且つ耐腐食性に優れた金属で構成されることが好ましい。
蓋部材33は、固定軸35を有している。蓋部材33の内部には、図示しない軸受34を有している。すなわち、蓋部材33が軸受34を有することにより、蓋部材33は固定軸35に対して相対的に回転可能である。
出力板32は、円板状を成している。出力板32は、モータ1の出力軸2からの出力を、ローラ本体31に伝達するための結合部材である。換言すれば、出力板32は、出力軸2の回転速度と、ローラ本体31の回転速度とを同期させるための部材である。
出力板32は、ローラ本体31の内径と略同一の外径を有している。出力板32の内径は、出力軸2の外形と合致する形状を有している。
【0026】
つぎに、モータ内蔵ローラ30の組立構造について説明する。
モータ1は、ローラ30の一方の端部から、ローラ30内に挿入されている。ローラ30の一方の端部には、モータ1の蓋部材24が係止している。
モータ1の出力軸2には、出力板32が接続されている。このことにより、モータ1とローラ本体31とは、出力板32を介して接続されている。
ローラ30の他方の端部には、蓋部材33が挿入され、係止している。
すなわち、図4に示すように、モータ内蔵ローラ30は、前記の各部材が一体化され、管状を成している。ローラ本体31の両端部からは、固定軸25,35が突出している。
【0027】
つぎに、モータ内蔵ローラ30の動作について説明する。
モータ内蔵ローラ30に対して、電源ケーブル26から電源を供給すると、モータ1の出力軸2が回転する。すると、出力軸2は出力板32を介してローラ本体31に接続されていることから、ローラ本体31が回転する。この時、ローラ本体31は、固定軸25,35に対して、相対的に回転する。これは、蓋部材24,33が軸受28,34を有しているからである。換言すれば、ローラ本体31が回転しても、固定軸25,35は回転しない。なお、モータ1については、出力軸2が回転しても、筺体10は回転しない。
【0028】
つぎに、本実施形態のローラコンベア装置40の構成について説明する。
図5(a)に示すように、ローラコンベア装置40は、モータ内蔵ローラ30と、フレーム41,42と、フリーローラ43を有している。
フリーローラ43は公知のそれと同様に、モータ等の動力機構を持たないローラである。フリーローラ43は、ローラ本体44を有している。ローラ本体44の両端部には、図示しない蓋部材45を有している。蓋部材45は、図示しない軸受46と固定軸47とを有している。すなわち、蓋部材45が軸受46を有することにより、蓋部材45は固定軸47に対して相対的に回転可能である。よって、ローラ本体44は固定軸47に対して相対的に回転可能である。
図5(b)に示すように、フレーム41,42の側面には、孔48を有している。孔48は、モータ内蔵ローラ30と、フリーローラ43とを回動可能に支持するためのものである。
【0029】
前述のように、本実施形態のモータ1の筺体10は、筺体片11,12が組み合わされて成るものである。よって、筺体10は、従来のように、筺体10の内部に、減速機3や固定子4を圧入する必要がない。すなわち、減速機3や固定子4を、2分割された筺体片11,12を組み合わせることで、容易に覆うことができる。また、筺体10は、容易に分解することができる。すなわち、2分割された筺体片11,12を分解することで、減速機3や固定子4を、筺体10から、容易に取り外すことができる。
【0030】
筺体10は、締結金具20(締結手段)で締結されているものである。すなわち、2分割された筺体片11,12を、溶接等の接合手段で接合するのではなく、締結金具20で締結している。このことにより、筺体10の組立をより容易に行うことができる。
また、筺体10は、締結金具20を工具類で切断するだけで、筺体片11,12を引き離すことができる。このことにより、筺体10の分解をより容易に行うことができる。
【0031】
本実施形態のモータ内蔵ローラ30は、前述のモータ1を搭載するものである。モータ1は、筺体10の組立と分解を容易に行うことができる。このようなモータ1を搭載することにより、モータ内蔵ローラ30の組立と分解が容易となる。
【0032】
本実施形態のローラコンベア装置40は、前述のモータ内蔵ローラ30を有するものである。モータ内蔵ローラ30は、筺体10の組立と分解が容易なモータ1を搭載している。このようなモータ内蔵ローラ30を有することにより、ローラコンベア装置40の組立と分解が容易となる。
【0033】
以上のように、本実施形態のモータ1、モータ内蔵ローラ30およびローラコンベア装置40によれば、容易に製造することができ、容易に整備することができる。
【0034】
上記した実施形態では、筺体10を円筒状とする例を示し、筺体片11,12を半円筒状とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、一般的なモータのように箱型状等としても構わない。また、筺体10を2分割したものを筺体片11,12とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、筺体10を4分割等したものを、筺体片としても構わない。
【0035】
上記した実施形態では、モータ1は減速機3を有する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回転子と固定子からなる動力発生部を有するだけでも構わない。
【0036】
上記した実施形態では、減速機3と固定子4とが有する突起部を、筺体片11,12が有する孔17に、合致させる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、減速機3と固定子4には、突起部を設けなくても構わない。この場合、モータ1の構成にカップリング部材を加え、カップリング部材に突起部を設けるものである。なお、カップリング部材とは、減速機3と固定子4を接続する部材であり、固定子4と、蓋部材24が有する歯車29を接続する部材である。
また、モータ1の耐振動性を高め、制振構造とするため、筺体片11,12と、減速機3と固定子4との間に、緩衝材を設けても構わない。
【符号の説明】
【0037】
1 モータ
2,5 出力軸
10 筺体
11,12 筺体片
20 締結金具(締結手段)
30 モータ内蔵ローラ
40 ローラコンベア装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ内蔵ローラに搭載されるモータであって、
前記モータは、出力軸と、筺体とを有し、
前記筺体は、軸方向において、少なくとも2分割された筺体片を組み合わせて成ることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記筺体は、締結手段で締結されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータを搭載することを特徴とするモータ内蔵ローラ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ内蔵ローラを有することを特徴とするローラコンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219185(P2011−219185A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87160(P2010−87160)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】