説明

モータの分解方法及び組立て方法

【課題】モータの整備を行う際にステータからロータを引抜くモータの分解方法及び整備が完了後ロータをステータに挿入するモータの組立て方法を提供する。
【解決手段】モータの分解方法は、チャック15にモータ13の一側のシャフト14を固定しながら、芯押し台16の芯押しロッド27でモータ13の他側のシャフト14を押圧して、モータ13を往復台17の載置台21に固定する第1工程と、シャフト14を支持するベアリングが設けられたブラケット32、33を外す第2工程と、ブラケット33を芯押しロッド27側に移動させ、往復台17を他側に移動させてステータ45及び外側部材31をロータ44から分離する第3工程と、芯押しロッド27を他側に後退させ、チャック15でロータ44を保持した状態で、ステータ45及び外側部材31を取り出す第4工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場又はプラントで使用するモータの整備を行う際にステータからロータを引抜くモータの分解方法及びステータとロータの整備が完了した後にステータにロータを挿入するモータの組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、外周領域に永久磁石を有する回転子(ロータ)に固定子(ステータ)を挿着する際に、回転子と固定子の空隙長を精度よく設定でき、かつ効率よく組立てることが可能な組立て装置が開示されている。特許文献2に、ステータの永久磁石を着磁した後にロータをステータに組込む際に、ロータがステータに接触するのを防止して円滑かつ容易に組付けることを可能にする組立て装置が開示されている。また、特許文献3に、ステータの内周面に固着した永久磁石の着磁とロータの組付けを同一装置内で一連の作業として作業性よく行うことが可能なモータ組立て装置が開示されている。
更に、特許文献4に、ロータ及びステータのいずれか一方に、永久磁石が設けられたモータを組立てる際に、ロータとステータとの吸着を確実に防止できるロータの挿入方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−66312号公報
【特許文献2】特開2001−251817号公報
【特許文献3】特開2003−235216号公報
【特許文献4】特開2005−57915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された装置は、決まった形状のモータを対象として、ロータをステータに挿入する際に使用する専用装置である。このため、工場で使用されている多種多用な型式のモータに対して、モータの分解整備を行った後に、ステータにロータを挿入する組立て作業には適用できないという問題がある。
また、特許文献4に開示された装置は、ステータからロータを引抜く作業にも転用可能であるが、特許文献4の装置は本来決まった形状のモータを対象としたものであるため、構造部材(ねじ軸)を整備するモータに合わせて交換する必要が生じるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、工場又はプラントで使用する多種多用な型式のモータの整備を行う際に、ステータとロータとの隙間を確実に維持しながら、ステータからロータを引抜くモータの分解方法及びステータとロータの整備が完了した後、ステータとロータとの隙間を確実に維持しながらロータをステータに挿入するモータの組立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係るモータの分解方法は、機台の一側に主軸台を介して設けられて対象物を挟持するチャック、該チャックに対向して前記機台に設けられた芯押し台、及び前記機台に沿って移動可能な往復台を有する旋盤を用いて、ロータに永久磁石を用いた両軸型のモータを分解する方法であって、
前記チャックに前記モータの一側から突出するシャフトを固定しながら、前記芯押し台に設けられた芯押しロッドで前記モータの他側から突出する前記シャフトを押圧し、この状態で前記モータを前記往復台に設けられた載置台に固定する第1工程と、
前記シャフトを回転自在に支持するベアリングが設けられている一側及び他側のブラケットを外す第2工程と、
前記他側のブラケットを、前記モータの他側より突出している前記シャフトから前記芯押しロッド側に移動させ、更に前記往復台を他側に移動させることにより前記モータのステータ及び外側部材(フレーム(継鉄)又はヨークともいう)を前記ロータから分離する第3工程と、
前記芯押しロッドを他側に後退させて、前記チャックに前記ロータを保持させた状態で、前記モータのステータ及び前記外側部材を取り出す第4工程とを有する。
なお、機台を基準にして、主軸台のある方向を「一側」、芯押し台のある方向を「他側」としている(第2の発明に係るモータの組立て方法においても同じ)。
【0007】
第1の発明に係るモータの分解方法において、前記第3工程は、前記他側のブラケットを前記芯出しロッド側に移動させる第3−1工程と、他側から突出している前記シャフトを、前記往復台又は該往復台が載っている前記機台に載置される高さ調整が可能な支持手段で仮支持する第3−2工程と、前記芯押しロッドを後退させて前記他側のブラケットを該芯押しロッドから除去する第3−3工程と、前記芯押しロッドを再度他側の前記シャフトに押し当て、前記ロータを前記チャックと前記芯押しロッドで支持した状態で、前記モータのステータ及び前記外側部材を前記芯押しロッド側に移動させて、前記ロータから分離する第3−4工程とを有することができる。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係るモータの組立て方法は、機台の一側に主軸台を介して設けられて対象物を挟持するチャック、該チャックに対向して前記機台に設けられた芯押し台、及び前記機台に沿って移動可能な往復台を有する旋盤を用いて、ロータがステータから分離された両軸型のモータを組立てる方法であって、
前記ロータのシャフトと同一形状の仮モータ軸の一側に、該ロータの一側のシャフトを回転自在に支持するベアリングが設けられている一側のブラケットを外装して前記チャックで固定しながら、前記芯押し台に設けられた芯押しロッドに他側の前記シャフトを回転自在に支持するベアリングが設けられている他側のブラケットを外装し、前記往復台に設けられた載置台に載せた前記モータの外側部材(フレーム(継鉄)又はヨークともいう)内に保持された前記ステータ内を軸方向に貫通させて前記仮モータ軸の他側を押圧する第1工程と、
前記往復台を前記チャックに向けて移動させ、前記チャック及び前記芯押しロッドで支持された前記仮モータ軸を前記外側部材内に保持された前記ステータ内に挿入し、前記外側部材の両側に前記一側及び他側のブラケットをそれぞれ取付けた状態で、前記外側部材を前記載置台に固定する第2工程と、
前記一側のブラケット及び前記他側のブラケットを前記外側部材から取り外し、該他側のブラケットを、前記仮モータ軸から前記芯押しロッド側に移動させ、更に前記往復台を他側に移動させることにより、前記モータのステータ及び前記外側部材を前記仮モータ軸から分離する第3工程と、
前記チャックから前記仮モータ軸を前記一側のブラケットと共に取り外し、前記ロータの一側の前記シャフトに前記一側のブラケットを外装して前記チャックに固定し、前記ステータを軸方向に貫通する前記芯押しロッドを一側に移動させて前記ロータの他側の前記シャフトを押圧する第4工程と、
前記往復台を一側に移動させて前記ロータを前記ステータに挿入した後、前記一側のブラケット及び前記他側のブラケットをそれぞれ前記ステータを保持する前記外側部材に取り付ける第5工程とを有する。
【0009】
第2の発明に係るモータの組立て方法において、前記第4工程は、前記チャックから前記仮モータ軸を前記一側のブラケットと共に取り外す第4−1工程と、前記ロータの一側の前記シャフトに前記一側のブラケットを外装して該シャフトを前記チャックに挿入し、前記ロータの他側の前記シャフトを前記往復台又は該往復台が載っている前記機台に載置した高さ調整が可能な支持手段で仮支持しながら、前記ロータを水平状態に調整した後に前記ロータの一側の前記シャフトを前記チャックで固定する第4−2工程と、前記支持手段を取り外し、前記ステータを軸方向に貫通する前記芯押しロッドを前記チャック側に移動させて前記ロータの他側の前記シャフトを押圧する第4−3工程とを有することができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係るモータの分解方法においては、旋盤のチャックでロータのシャフトを固定すると共に芯押し台に取付けた芯押しロッドでシャフトを支持しながら、旋盤の往復台に固定したステータを保持した外側部材を芯押し台側に移動させるので、ステータとロータの隙間を確実に維持することができ、ロータとステータを分離する(ロータをステータから引抜く)際に、ロータとステータ同士が吸着することを防止できる。その結果、巻線、ステータコア、ロータコアに損傷を与えることなく、モータの分解作業を安全に行うことができる。
【0011】
第1の発明に係るモータの分解方法において、第3工程で、他側から突出しているシャフトを、往復台又は往復台が載っている機台に載置される高さ調整が可能な支持手段で仮支持しながら、芯押しロッドを後退させて他側のブラケットを芯押しロッドから除去する場合、シャフトの軸ずれを防止することができる。これにより、ステータをロータから分離する際に、ロータとステータ同士が吸着することを防止できる。
【0012】
第2の発明に係るモータの組立て方法においては、旋盤のチャックでロータのシャフトを固定し、旋盤の往復台に外側部材を介してロータの軸位置に軸位置が一致するようにステータを固定して、芯押し台に取付けられ、ステータ内を挿通する芯押しロッドでシャフトを押圧した状態で、往復台をチャック側に移動させるので、ステータとロータの隙間を確実に維持することができ、ロータをステータに挿入する際に、ロータとステータ同士が吸着することを防止できる。その結果、巻線、ステータコア、ロータコアに損傷を与えることなく、モータの分解作業を安全に行うことができる。
【0013】
第2の発明に係るモータの組立て方法において、第4工程で、ロータの一側のシャフトをチャックに挿入し、他側のシャフトを往復台又は往復台が載っている機台に載置した高さ調整が可能な支持手段で仮支持する場合、ロータを水平状態になるように容易に調整することができる。その結果、ロータの軸位置を、往復台に外側部材を介して固定されたステータの軸位置に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)、(B)は本発明の第1の実施の形態に係るモータの分解方法で使用する旋盤の説明図である。
【図2】(A)は同モータの分解方法における第1工程の説明図、(B)は載置台に固定されたモータの説明図である。
【図3】(A)、(B)は第2工程の説明図である。
【図4】(A)は第3−1工程の説明図、(B)は第3−2工程及び第3−3工程の説明図、(C)は支持手段の説明図である。
【図5】(A)は第3−4工程の前段部分、(B)は第3−4工程の後段部分の説明図である。
【図6】第4工程の前段部分の説明図である。
【図7】(A)、(B)は本発明の第2の実施の形態に係るモータの組立て方法における第1工程の前段部分の説明図である。
【図8】(A)、(B)は第1工程の後段部分の説明図である。
【図9】(A)は第2工程の説明図、(B)は載置台に固定された外側部材の説明図である。
【図10】(A)は第3工程の前段部分、(B)は第3工程の中段部分の説明図である。
【図11】第3工程の後段部分の説明図である。
【図12】(A)は第4−1工程、(B)は第4−2工程の説明図である。
【図13】第4−3工程の説明図である。
【図14】(A)は第5工程の説明図、(B)は組立てが完了したモータを取出す方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るモータの分解方法、本発明の第2の実施の形態に係るモータの組立て方法で使用する旋盤10は、機台(ベッドともいう)11の一側に主軸台12を介して設けられて対象物である両軸型のモータ13の一側から突出するシャフト14(図2参照)を挟持するチャック15、チャック15に対向して機台11に設けられた芯押し台16、及び機台11に沿って左右方向(例えば、チャック15が存在する側である機台11の一側を左側とし、芯押し台16が存在する側である機台11の他側を右側とする)に移動可能な往復台17を有している。
【0016】
そして、往復台17には、図1(B)に示すように、往復台17に当接して載置される下板材18と、下板材18の前後両側にそれぞれ設けられた支持材19を介して下板材18の上方に平行配置された上板材20とを有する載置台21が、掛止部材22を介して固定されている。ここで、掛止部材22は断面視してコ字状となって、掛止部材22の対向する一方の突出部23の先側が往復台17の左右両側にそれぞれ前後方向(左右方向に直交する方向)に沿って形成された側溝24内に挿入され、他方の突出部25が上、下板材20、18の間に形成された空間部に挿入され、突出部25を厚さ方向に貫通するボルト26の先部が下板材18の上面を押圧している。このような構成とすることにより、往復台17上での載置台21の位置を前後方向で調整可能になり、前後方向に位置決めされた状態の載置台21の下板材18を往復台17の上部に押圧して、載置台21を往復台17に固定することができる。
【0017】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係るモータの分解方法について説明する。
先ず、図1(A)、(B)に示すように、旋盤10の往復台17に掛止部材22を用いて載置台21を固定する。そして、芯押し台16に芯押しロッド27を固定する。ここで、芯押しロッド27は、芯押し軸28と、芯押し軸28の先部に取付けられる芯押し先端部29とを有している。なお、長尺の芯押しロッドが必要な場合は、芯押し軸28と芯押し先端部29の間に延長用芯押し軸(図示せず)を配置する。
【0018】
次いで、図2(A)、(B)に示すように、往復台17に固定した載置台21に分解しようとするモータ13を載置し、チャック15で載置台21に載置されたモータ13の一側(チャック15側)から突出するシャフト14の一側を固定しながら、モータ13の他側(芯押し台16側)から突出するシャフト14の他側を、芯押し台16に取付けられた芯押しロッド27の先端部(芯押し先端部29)で押圧する(シャフト14の他端部に形成された図示しない芯穴に芯押し先端部29を嵌入してシャフト14を支持する)。
【0019】
これによって、モータ13の両側から突出するシャフト14がそれぞれチャック15と芯押しロッド27で支持されることになって、チャック15の中心軸、シャフト14の中心軸、芯押しロッド27の中心軸は一直線上に並ぶ。その結果、モータ13の外側部材31の載置台21に対する位置決めが行われるので、外側部材31を図示しない締結部材を介して載置台21に固定する。ここで、図2に示すように、外側部材31と載置台21の上板材20との間に隙間が形成されている場合は、隙間に隙間充填部材30(例えば、銅製の薄板)を挿入し、外側部材31を載置台21に固定する際に傾斜が生じないようにする(以上、第1工程)。
【0020】
続いて、図3(A)に示すように、外側部材31が載置台21に固定された状態のモータ13において、シャフト14の一側及び他側を回転自在に支持するベアリング(図示せず)が設けられている一側のブラケット32及び他側のブラケット33と外側部材31との連結を解除する。そして、図3(B)に示すように、一側のブラケット32をシャフト14のチャック15側に移動し、他側のブラケット33をシャフト14の芯押しロッド27側に移動して、一側及び他側のブラケット32、33を外す(以上、第2工程)。
【0021】
外側部材31から一側及び他側のブラケット32、33がそれぞれ外された状態において、図4(A)に示すように、他側のブラケット33をシャフト14から芯出しロッド27側に移動させる(第3−1工程)。そして、図4(B)に示すように、他側から突出しているシャフト14を、往復台17が載っている機台11に載置される高さ調整が可能な支持手段34で仮支持して(第3−2工程)、芯押しロッド27を後退させて、シャフト14と芯押しロッド27の間から、芯押しロッド27側に移動させた他側のブラケット33を取出して除去する(第3−3工程)。なお、シャフト14は支持手段34で仮支持されているので、シャフト14の軸ずれを防止する(チャック15の中心軸、シャフト14の中心軸、芯押しロッド27の中心軸が一直線上に並んだ状態を維持する)ことができる。
【0022】
ここで、支持手段34は、図4(C)に示すように、機台11に取付けられる固定台35と、固定台35に設けられ、シャフト14を支持する受け台36を昇降する昇降機構37と、受け台36に取付けられ、受け台36で支持されたシャフト14を上方から押圧して固定する押さえ部材38とを有している。また、昇降機構37は、固定台35の上側に設けられたV字状の下ヒンジ部39と、受け台36の下側に設けられた逆V字状の上ヒンジ部40と、上、下ヒンジ部40、39の両側のピン接続部41、42を連結する雄ネジ部材43とを備えている。このような構成とすることで、雄ネジ部材43を操作して、上、下ヒンジ部40、39の交差角度を変化させることで受け台36の高さ位置を変化させることができ、受け台36でシャフト14を下側から支えることができる。
【0023】
他側のブラケット33を除去した後、図5(A)に示すように、芯押しロッド27を再度シャフト14の他側に押し当てる。そして、図5(B)に示すように、シャフト14を介してチャック15と芯押しロッド27で永久磁石を用いたロータ44を支持した状態で、往復台17を他側に移動させてモータ13のステータ45及び外側部材31を(外側部材31内に保持されたステータ45を)芯押しロッド27側に移動させる(第3−4工程)。
その結果、モータ13のステータ45及び外側部材31が、ロータ44から分離される(以上、第3工程)。
【0024】
モータ13のステータ45及び外側部材31をロータ44から分離した後、図6に示すように、芯押しロッド27を他側に後退させて、チャック15にロータ44を保持させた状態で、モータ13のステータ45を保持した状態の外側部材31を載置台21から取り外す(以上、第4工程)。
そして、外側部材31を載置台21から取り外した後、ロータ44を図示しない吊り具で支持した状態で、チャック15からロータ44を取り外す。
【0025】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るモータの組立て方法について説明する。
先ず、図7(A)に示すように、旋盤10の往復台17に掛止部材22を用いて載置台21を固定する。そして、芯押し台16に芯押しロッド27を固定する。なお、長尺の芯押しロッドが必要な場合は、芯押し軸28と芯押し先端部29の間に延長用芯押し軸(図示せず)を配置する。
そして、図7(B)に示すように、組立てようとするモータ13(図14(B)参照)のロータ44(図12(B)参照)に取付られたシャフト14と同一形状の仮モータ軸46の一側をチャック15に固定する。ここで、仮モータ軸46の一側には、予めロータ44の一側から突出するシャフト14を回転自在に支持するベアリング(図示せず)が設けられている一側のブラケット32を外装する。また、芯押しロッド27の先側に、ロータ44の他側から突出するシャフト14を回転自在に支持するベアリング(図示せず)が設けられている他側のブラケット33を外装する(図8(A)参照)。
【0026】
次いで、図8(A)に示すように、ロータ44が分離されたモータ13のステータ45を内側に保持した外側部材31を、往復台17に固定された載置台21に載せる。そして、図8(B)に示すように、芯押し台16に取付けられた芯押しロッド27をチャック15側に押し出し、外側部材31に保持されたステータ45内を軸方向に貫通させ、芯押しロッド27の芯押し先端部29を仮モータ軸46の他端部に形成された芯穴(図示せず)に嵌入して、芯押しロッド27で仮モータ軸46の他側(芯押し台16側)を押圧支持する。なお、芯押しロッド27をチャック15側に押し出す際、他側のブラケット33は芯押しロッド27の芯押し台16側に移動する(以上、第1工程)。
【0027】
図9(A)に示すように、往復台17をチャック15に向けて移動させ、チャック15及び芯押しロッド27で支持された仮モータ軸46を外側部材31内に保持されたステータ45内に挿入し、外側部材31の両側に一側及び他側のブラケット32、33をそれぞれ取付けた状態で、外側部材31を載置台21に固定する。これによって、仮モータ軸46が取付られた外側部材31が、仮モータ軸46を介してチャック15と芯押しロッド27で支持されることになって、チャック15の中心軸、外側部材31に保持されたステータ45の中心軸、芯押しロッド27の中心軸は一直線上に並ぶ。その結果、外側部材31の載置台21に対する位置決めが行われるので、外側部材31を図示しない締結部材を介して載置台21に固定する。ここで、図9(B)に示すように、外側部材31と載置台21の上板材20との間に隙間が形成されている場合は、隙間に隙間充填部材30を挿入し、外側部材31を載置台21に固定する際に傾斜が生じないようにする(以上、第2工程)。
【0028】
続いて、図10(A)に示すように、一側のブラケット32及び他側のブラケット33を外側部材31から取り外し、図10(B)に示すように、他側のブラケット33を、仮モータ軸46から芯押しロッド27側に移動させる。そして、図11に示すように、往復台17を他側(芯押し台16側)に移動させることにより、モータ13のステータ45及び外側部材31を仮モータ軸46から分離する(以上、第3工程)。
【0029】
図12(A)に示すように、チャック15から仮モータ軸46を一側のブラケット32と共に取り外す(第4−1工程)。そして、図12(B)に示すように、ロータ44の一側から突出するシャフト14に一側のブラケット32を外装してシャフト14をチャック15に挿入し、ロータ44の他側から突出するシャフト14を往復台17が載っている機台11に載置した高さ調整が可能な支持手段34で仮支持しながら、ロータ44を水平状態に調整した後にロータ44の一側から突出するシャフト14をチャック15で固定する(第4−2工程)。次いで、図13に示すように、支持手段34を機台11から取り外し、往復台17に固定された載置台21に固定された外側部材31に保持されたステータ45を軸方向に貫通する芯押しロッド27をチャック15側に移動させてロータ44の他側から突出するシャフト14を押圧する(第4−3工程)。
【0030】
ロータ44の一側のシャフト14をチャック15に挿入し、他側のシャフト14を機台11に載置した支持手段34で仮支持するので、ロータ44を水平状態になるように容易に調整することができる。ここで、チャック15の中心軸と往復台17に外側部材31を介して固定されたステータ45の中心軸と、芯押しロッド27の中心軸は一直線上に存在するので、ロータ44を水平状態でチャック15に固定すると、ロータ44(シャフト14)の中心軸はチャック15の中心軸と一致する。その結果、ロータ44の中心軸と、往復台17に外側部材31を介して固定されたステータ45の中心軸を一直線上に存在させることができる。
【0031】
続いて、図14(A)に示すように、往復台17を一側に移動させて、チャック15に固定されたロータ44を、外側部材31に保持されたステータ45に挿入した後、一側のブラケット32及び他側のブラケット33をそれぞれ外側部材31に取付ける。これにより、モータ13の組立てが完了する(第5工程)。ここで、ロータ44の中心軸と往復台17に外側部材31を介して固定されたステータ45の中心軸は、一直線上に存在するので、往復台17をチャック15側に移動させた際、ステータ45とロータ44の隙間を確実に維持することができ、ロータ44をステータ45に挿入する際に、ロータ44とステータ45同士が吸着することを防止できる。その結果、巻線、ステータコア、ロータコアに損傷を与えることなく、モータ13の組立てを安全に行うことができる。
【0032】
組立てが完了したモータ13を取出す場合は、図14(B)に示すように、モータ13(ロータ44)の他側から突出するシャフト14を押圧している芯押しロッド27を他側に退避させ、モータ13(ロータ44)の一側から突出するシャフト14を把持しているチャック15を解除する。次いで、往復台17を他側に向けて移動させ、チャック15に挿入されているモータ13の一側のシャフト14を引き出し、往復台17に取付られた載置台21と外側部材31との固定を解除する。そして、図示しない吊り具をモータ13の両側から突出しているシャフト14に掛止して、モータ13を吊り上げ、所定の場所に移動する。
【0033】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、第1の実施の形態に係るモータの分解方法では、第3工程において、他側から突出しているシャフトを、機台に載置される支持手段で仮支持し、芯押しロッドを後退させて他側のブラケットを芯押しロッドから除去し、芯押しロッドを再度他側のシャフトに押し当て、ロータをチャックと芯押しロッドで支持した状態で、ステータを保持した状態の外側部材を芯押しロッド側に移動させて、ステータをロータから分離したが、旋盤が長尺材用の仕様で機台の長さが長い場合は、長尺の芯押しロッドを使用することにより、支持手段による仮支持及び他側のブラケットの芯押しロッドからの除去の各サブ工程を省略して、他側のブラケットと共に往復台を芯押しロッド側に移動させることで、ステータをロータから分離することができる。
また、第1の実施の形態に係るモータの分解方法、第2の実施の形態に係るモータの組立て方法では、支持手段を往復台が載っている機台に取付けたが、支持手段を往復台に取付けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10:旋盤、11:機台、12:主軸台、13:モータ、14:シャフト、15:チャック、16:芯押し台、17:往復台、18:下板材、19:支持材、20:上板材、21:載置台、22:掛止部材、23:突出部、24:側溝、25:突出部、26:ボルト、27:芯押しロッド、28:芯押し軸、29:芯押し先端部、30:隙間充填部材、31:外側部材、32、33:ブラケット、34:支持手段、35:固定台、36:受け台、37:昇降機構、38:押さえ部材、39:下ヒンジ部、40:上ヒンジ部、41、42:ピン接続部、43:雄ネジ部材、44:ロータ、45:ステータ、46:仮モータ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台の一側に主軸台を介して設けられて対象物を挟持するチャック、該チャックに対向して前記機台に設けられた芯押し台、及び前記機台に沿って移動可能な往復台を有する旋盤を用いて、ロータに永久磁石を用いた両軸型のモータを分解する方法であって、
前記チャックに前記モータの一側から突出するシャフトを固定しながら、前記芯押し台に設けられた芯押しロッドで前記モータの他側から突出する前記シャフトを押圧し、この状態で前記モータを前記往復台に設けられた載置台に固定する第1工程と、
前記シャフトを回転自在に支持するベアリングが設けられている一側及び他側のブラケットを外す第2工程と、
前記他側のブラケットを、前記モータの他側より突出している前記シャフトから前記芯押しロッド側に移動させ、更に前記往復台を他側に移動させることにより前記モータのステータ及び外側部材を前記ロータから分離する第3工程と、
前記芯押しロッドを他側に後退させて、前記チャックに前記ロータを保持させた状態で、前記モータのステータ及び前記外側部材を取り出す第4工程とを有することを特徴とするモータの分解方法。
【請求項2】
請求項1記載のモータの分解方法において、前記第3工程は、前記他側のブラケットを前記芯出しロッド側に移動させる第3−1工程と、他側から突出している前記シャフトを、前記往復台又は該往復台が載っている前記機台に載置される高さ調整が可能な支持手段で仮支持する第3−2工程と、前記芯押しロッドを後退させて前記他側のブラケットを該芯押しロッドから除去する第3−3工程と、前記芯押しロッドを再度他側の前記シャフトに押し当て、前記ロータを前記チャックと前記芯押しロッドで支持した状態で、前記モータのステータ及び前記外側部材を前記芯押しロッド側に移動させて、前記ロータから分離する第3−4工程とを有することを特徴とするモータの分解方法。
【請求項3】
機台の一側に主軸台を介して設けられて対象物を挟持するチャック、該チャックに対向して前記機台に設けられた芯押し台、及び前記機台に沿って移動可能な往復台を有する旋盤を用いて、ロータがステータから分離された両軸型のモータを組立てる方法であって、
前記ロータのシャフトと同一形状の仮モータ軸の一側に、該ロータの一側のシャフトを回転自在に支持するベアリングが設けられている一側のブラケットを外装して前記チャックで固定しながら、前記芯押し台に設けられた芯押しロッドに他側の前記シャフトを回転自在に支持するベアリングが設けられている他側のブラケットを外装し、前記往復台に設けられた載置台に載せた前記モータの外側部材内に保持された前記ステータ内を軸方向に貫通させて前記仮モータ軸の他側を押圧する第1工程と、
前記往復台を前記チャックに向けて移動させ、前記チャック及び前記芯押しロッドで支持された前記仮モータ軸を前記外側部材内に保持された前記ステータ内に挿入し、前記外側部材の両側に前記一側及び他側のブラケットをそれぞれ取付けた状態で、前記外側部材を前記載置台に固定する第2工程と、
前記一側のブラケット及び前記他側のブラケットを前記外側部材から取り外し、該他側のブラケットを、前記仮モータ軸から前記芯押しロッド側に移動させ、更に前記往復台を他側に移動させることにより、前記モータのステータ及び前記外側部材を前記仮モータ軸から分離する第3工程と、
前記チャックから前記仮モータ軸を前記一側のブラケットと共に取り外し、前記ロータの一側の前記シャフトに前記一側のブラケットを外装して前記チャックに固定し、前記ステータを軸方向に貫通する前記芯押しロッドを一側に移動させて前記ロータの他側の前記シャフトを押圧する第4工程と、
前記往復台を一側に移動させて前記ロータを前記ステータに挿入した後、前記一側のブラケット及び前記他側のブラケットをそれぞれ前記ステータを保持する前記外側部材に取り付ける第5工程とを有することを特徴とするモータの組立て方法。
【請求項4】
請求項3記載のモータの組立て方法において、前記第4工程は、前記チャックから前記仮モータ軸を前記一側のブラケットと共に取り外す第4−1工程と、前記ロータの一側の前記シャフトに前記一側のブラケットを外装して該シャフトを前記チャックに挿入し、前記ロータの他側の前記シャフトを前記往復台又は該往復台が載っている前記機台に載置した高さ調整が可能な支持手段で仮支持しながら、前記ロータを水平状態に調整した後に前記ロータの一側の前記シャフトを前記チャックで固定する第4−2工程と、前記支持手段を取り外し、前記ステータを軸方向に貫通する前記芯押しロッドを前記チャック側に移動させて前記ロータの他側の前記シャフトを押圧する第4−3工程とを有することを特徴とするモータの組立て方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate