説明

モータトロリー

【課題】レールから懸架され、レール上を走行するためのモータトロリーを改良すること
【解決手段】レール(12)から懸架され、レール(12)上で走行するためのモータトロリー(10)は、レールの両側に位置決めされ、これらに係合するための第1および第2支持車輪(14)を備え、前記第1支持車輪は、この第1車輪(14−1)を回転させるための第1シャフト(18−1)を備え、前記第2支持車輪(14−2)は、この第2車輪を回転させるための第2シャフト(18−2)を備える。支持車輪を回転させるためのシャフトに駆動モータ(16)が連動し、第3および第4支持車輪もモータによって駆動できる。支持車輪のシャフトにはモータが直接接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、レールから懸架され、レール上を走行するためのモータトロリーに関し、特にドラグライン装置と共に使用するためのモータライントロリーに関する。
【背景技術】
【0002】
ライントロリーは、一般的には4つの支持車輪を有するシャーシと、固定供給ポイントと装置の可動部品との間に接続されたすべての種類のケーブルまたはホースを支持するためのライン支持装置とを備える。支持車輪は、レールの両側に係合し、レール上を走行するようになっている。受動的ライントロリー、すなわち自らの駆動装置を有しないライントロリーは、前のトロリーにより個々のトロリーがかなり急激に加速するという欠点を有する。このことは、トロリー自身にも損傷を与えるし、トロリー間の接続ラインにも損傷を与える。更に、別のトロリーが加速するたびに他のトロリーはスローダウンする。
【0003】
このことを回避するために、各ライントロリーに駆動モータを設けたモータライントロリーがこれまで提案されている。このようにすることにより、各トロリーを別々に駆動することが可能となり、次のトロリーを連行するためのトロリーの間の接続ラインが不要となり、よって、個々のトロリーの急激な加減速が防止される。隣接するライントロリー間のそれぞれの距離が、作動範囲にわたってほぼ同じままとなるようにするために、最初のトロリー(すなわち休止位置から最も遠くに延びるトロリー)が最高速度で駆動され、最終トロリー(すなわち休止位置から最も短い距離だけ延びているトロリー)が最低速度で駆動されるように、ライントロリーを低速で駆動することが好ましい。このようにすることにより、中間にあるトロリーは中間の適当な速度で駆動されることになる。
【0004】
1つの提案例は、歯付きベルトにより支持車輪を駆動する直流モータを使用することにより、ギアボックス駆動装置をライントロリーに設けることである。しかしながら、このような解決案は、支持車輪を駆動するのに必要な速度に直流モータの速度を減速するために、ギアボックスを使用しなければならないという欠点を有する。このようなギアボックス駆動方法は、例えば支持レールの両側で複数の支持車輪を駆動しなければならないとき、特に不利である。その理由は、この目的のために駆動ライン内で複雑なアイドラーギアとギア比が必要となるからである。
【0005】
例えば米国特許第5,711,228号に記載されているような別の提案は、同期式三相モータ、例えば速度を制御周波数によって調節でき、実質的に無負荷で、電流によらず、公称速度で走行するモータをライントロリーに設けることである。個々のモータに加えられる周波数を変えることで個々のトロリーを制御することにより、ギアボックスが不要となる。
【0006】
しかしながら、いずれの提案においても、システムの保守が比較的負担となる。ギアボックスが動かなくなったり、ベルトが切れたり、ずれたりする。この場合、関係するライントロリーは、作動不能となり、ドラグライン装置を再び使用できるようになる前にライントロリーを補修しなければならない。ライントロリーは、これにアクセスすることが困難な領域に設置されていることが多く、これによって比較的長時間停止しなければならず、保守コストも高くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、レールから懸架され、レール上を走行するための別のモータトロリーを提供することにある。
この目的は請求項1記載のトロリーによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、レールから懸架され、レール上で走行するためのモータトロリーは、レールの両側に位置決めされ、これらに係合するための第1および第2支持車輪を備え、前記第1支持車輪は、この第1車輪を回転させるための第1シャフトを備え、前記第2支持車輪は、この第2車輪を回転させるための第2シャフトを備える。本発明の1つの特徴によれば、前記第1支持車輪を回転させるための前記第1シャフトに第1駆動モータが連動し、前記第2支持車輪を回転させるための前記第2シャフトに第2駆動モータが連動する。各支持車輪に対し、個々の駆動モータを設けることにより、レールの各側での支持車輪を別々に駆動できる。レールにコーナがある場合、モータトロリーがこのコーナー領域を通過する際に、レールの一方の側の支持車輪を、レールの他方の側の支持車輪よりも若干早く回転するように制御できる。更に、駆動モータは他方の駆動モータが故障しても、モータトロリーを移動し続けることができるように、この故障を補償することができる。従って、駆動モータが故障しても自動的にモータトロリーが完全に停止するわけではなく、従ってドラグライン装置が停止するわけではない。適当な時間、例えばドラグライン装置の定期的な停止時に、故障した駆動モータの保守および/または交換を実行できる。従って、本発明にかかわるモータトロリーを使用することにより、保守の時間およびコストを低減できる。
【0009】
好ましくは、前記第1駆動モータの駆動シャフトに前記第1支持車輪の前記第1シャフトが直接接続されており、前記第2駆動モータの駆動シャフトに前記第2支持車輪の前記第2シャフトが直接接続されている。駆動モータのシャフトを支持車輪のシャフトに直接接続することにより、ドライブモータは支持車輪の側方に配置される。従って、モータトロリーを高さ方向によりコンパクトとすることができる。一般的には設備の幅よりも設備の高さがより問題となるので、このことは有利である。
【0010】
従来のモータトロリーでは、駆動モータのシャフトと支持車輪のシャフトとの間にギアボックスまたはベルトが設けられる。かかるギアボックスは、取り扱いにくく、機械部品の数が比較的多いために、動かなくなりやすく、壊れやすい。ベルトは、設計がより容易であるが、切れたりスリップしたりすることもある。駆動モータのシャフトを支持車両のシャフトに直接接続することにより、かかるギアボックスまたはベルトを省略し、部品の数および破損の可能性を低減できる。従って、必要な保守の処理回数を低減できる。更にかかる保守の処理中に、まずギアボックスまたはベルトを古い部品から外し、新しい部品に係合しなくてもよいので、駆動モータまたは支持車輪をより迅速に交換できる。
【0011】
好ましい実施例によれば、レールから懸架され、レール上で走行するためのモータトロリーは、レールの両側に位置決めされ、これらに係合するための第3および第4支持車輪を更に備え、前記第3支持車輪は、この第3車輪を回転させるための第3シャフトを備え、前記第4支持車輪は、この第4車輪を回転させるための第4シャフトを備える。前記第3支持車輪を回転させるための前記第3シャフトに第3駆動モータが連動し、前記第4支持車輪を回転させるための前記第4シャフトに第4駆動モータが連動する。モータトロリーに4つの支持車輪、すなわちレールの各側に2つの支持車輪を設けることにより、レール上でのモータトロリーの高い安定性が得られる。更に、残りの3つの駆動モータにより、4つの駆動モータのうちの1つが故障または誤作動してもこれを補償できる。
【0012】
好ましくは、前記第3駆動モータの駆動シャフトに前記第3支持車輪の前記第3シャフトが直接接続されており、前記第4駆動モータの駆動シャフトに前記第4支持車輪の前記第4シャフトが直接接続されている。
【0013】
個々の支持車輪のシャフトは連動する駆動モータの駆動シャフトの延長部とすることが好ましい。駆動モータのシャフトは、例えば支持車輪と直接係合し、支持車輪を直接回転できるように設計できる。
【0014】
駆動モータ、駆動シャフトおよび支持車輪を単一の相互に交換可能な部品として設計できる。このように部品を相互に交換可能にすることにより、更に保守処理の時間を短縮できる。かかる保守処理中、モータトロリーのシャーシから当該交換可能な部品を単に取り外し、これを新しい部品または修理した部品に交換することにより、故障した駆動モータおよび/または摩耗した車輪を迅速に交換できる。次に、ドラグライン装置が再び作動している間、モータトロリーから外した相互に交換可能な要素を現場または現場以外の場所のいずれかで修理できる。保守処理の時間を短縮し、従って保守コストを低減できる。
【0015】
支持車輪のシャフトを実質的に水平な平面に配置できる。しかしながら、支持車輪のシャフトは水平平面に対してわずかな角度に配置することが望ましい。これによって、車輪が倒立T字形またはダブルT字形レールの横方向部材の上部表面にフル接触することが可能となる。かかるレールの製造に起因し、このような上部表面は水平平面に対して一般にわずかな角度をなす。更に、レールの両側にある上部表面の角度は逆方向にあるので、このような構造によってレールに対してモータトロリーが自動センタリングされる。
【0016】
モータトロリーが更に水平平面に対するシャフトの角度を調節するための調節手段を含むことができ、これによってそれぞれのシャフトは支持車輪が載っているそれぞれの上部表面に平行な平面に移動できる。従って、モータトロリーを任意のタイプのレールと協働できるように容易に適合できる。
【0017】
更にモータトロリーは、電源からの電力を受け、この電力を駆動モータに送るための制御ユニットを更に含むことができる。かかる制御ユニットは、電源の近くに固定された状態に配置でき、個々のトロリーの運動を制御できる。これとは異なり、各モータトロリーに1つの制御ユニットを設け、この制御ユニットでそれぞれのトロリーの運動を制御してもよい。
【0018】
駆動モータは三相電動モータであることが好ましく、制御ユニットは制御周波数を変えることにより、駆動モータの速度を変更するための周波数変換器を含むことが好ましい。かかる駆動モータへ送られる電流の周波数を制御することより、モータトロリーの速度を容易に制御できる。
【0019】
レールの横断面は、例えば倒立T字形でもよいし、ダブルT字形でもよい。
以下、添付図面を参照し、例により、本発明について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1および2は、レール12から懸架し、レール12上で走行するためのモータトロリー10を示し、レール12は、図2に最良に示されるダブルT字形横断面を有する。
【0021】
モータトロリー10はシャーシ13を備え、このトロリー10は第1支持車輪14、第2支持車輪14、第3支持車輪14および第4支持車輪(どの図にも示されず)によって懸架されている。支持車輪14、14、14は、下方の(倒立)T字部の内側横方向表面上で走行する。各ケースにおいて、2つの支持車輪、すなわち第1支持車輪14および第3支持車輪14と、第2支持車輪14および第4支持車輪とは、それぞれレール12の両側に配置されている。
【0022】
各支持車輪14、14、14は、これらに連動する駆動モータ16、16、16を有する。各駆動モータ16、16、16は、駆動シャフト18、18、18を備え、この駆動シャフトは連動する支持車輪14、14、14にそれぞれ接続されており、駆動シャフトは駆動モータ16、16、16からの回転運動を支持車輪14、14、14に伝えるようになっている。
【0023】
交換可能な単一部品として設計できる駆動モータと駆動シャフトと支持車輪とのアセンブリは、シャーシ13に取り付けられている。かかる相互に交換可能な部品は、メンテナンス処理中にこれら部品を迅速かつ容易に交換できるという点で特に有利である。
【0024】
支持車輪14、14、14は、水平に、または図2に示されるようにわずかな角度で走行するシャフトを有するが、各支持車輪14、14、14に連動する追加ガイド車輪20、20、20には垂直シャフトが設けられている。水平に配置されたガイド車輪20、20、20は、モータトロリー10を横方向にガイドするように働き、この目的のために、ダブルT字形レール12の倒立T字部の横方向部材の端部に載っている。
【0025】
トロリー10は、その下面にライン支持装置22を有し、この支持装置はライン、ホース、ケーブルおよび同等物が載る、基本的に半円形の両側支持体の形態をしている。レール12の経路から見た前方側および後方側において、各ケースにおけるトロリー10は前方バッファ24と後方バッファ26を有し、後方バッファ26は2つのモータトロリー10が互いに衝突したとき、または1つのモータトロリー10が壁内に衝突したときのダンパーとして働く。
【0026】
4つの駆動モータ16、16、16の各々は、同期した三相モータである。すなわち制御周波数により速度を正確に調節でき、実質的に無負荷で、電流によることなく公称速度で作動するモータである。
【0027】
図には示されていないモータトロリーの第4の支持車輪と同様に、トロリーはこの第4支持車輪にすべて連動する駆動モータ、駆動シャフト、駆動車輪も備える。
【0028】
電源から電力を受け、この電力を駆動モータ16、16、16に伝えるために、制御ユニット(図示せず)が使用されている。駆動モータ16、16、16へ送られる電力の周波数を制御するための周波数変換器を設けることができる。駆動モータ16、16、16へ送られる電流の周波数を制御することにより、モータトロリー10の速度を容易に制御できる。
【0029】
モータトロリー10の速度、従って駆動モータ16、16、16の速度の低下に起因し、電流が増加する場合、制御周波数は新しい速度に適合される。
【0030】
このモータトロリー10は次のようにドラグライン装置によって作動される。
【0031】
レール12から懸架され、ライン支持装置22にライン、ケーブルおよびホース(図示せず)が取り付けられ、駆動モータ16、16、16が接続された後に、ドラグライン装置は作動の準備を完了する。一般に、例えば製造工場におけるアセンブリラインレール上、またはクレーンの走行キャリッジのためのレール装置上のように、レール12上に複数の複数のモータトロリー10が前後に配置される。レールに取り付けられたエンドユーザー、例えば走行キャリッジを移動させるとき、各トロリー10の駆動モータ16、16、16を附勢する。このためには、周波数を低速で増加させ、速度を連続的に増加させることが好ましい。共通回路により、複数のトロリー10を異なる周波数で附勢し、走行中のキャリッジの次のモータトロリー10を最高周波数で附勢し、最も離れたモータトロリー10を最低周波数で附勢する。走行キャリッジが移動しているとき、このことはモータトロリー10の異なる最適速度に対応する。一般にコスト上の理由から、複数のトロリーをドラグライン装置に設け、一部のトロリーだけをモータ駆動することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかわるモータトロリーの横方向断面図である。
【図2】図1のモータトロリーの前方横断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 モータトロリー
13 シャーシ
14、14、14 支持車輪
16、16、16 駆動モータ
20、20、20 ガイド車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの両側に位置決めされ、これらに係合するための第1および第2支持車輪を備え、前記第1支持車輪は、この第1車輪を回転させるための第1シャフトを備え、前記第2支持車輪は、この第2車輪を回転させるための第2シャフトを備え、レールから懸架され、レール上で走行するためのモータトロリーにおいて、
前記第1支持車輪を回転させるための前記第1シャフトに第1駆動モータが連動し、
前記第2支持車輪を回転させるための前記第2シャフトに第2駆動モータが連動することを特徴とするモータトロリー。
【請求項2】
前記第1駆動モータの駆動シャフトに前記第1支持車輪の前記第1シャフトが直接接続されており、
前記第2駆動モータの駆動シャフトに前記第2支持車輪の前記第2シャフトが直接接続されている、請求項1記載のモータトロリー。
【請求項3】
レールの両側に位置決めされ、これらに係合するための第3および第4支持車輪を備え、前記第3支持車輪は、この第3車輪を回転させるための第3シャフトを備え、前記第4支持車輪は、この第4車輪を回転させるための第4シャフトを備え、
前記第3支持車輪を回転させるための前記第3シャフトに連動する第3駆動モータと、
前記第4支持車輪を回転させるための前記第4シャフトに連動する第4駆動モータとをさらに備える請求項1または2記載のモータトロリー。
【請求項4】
前記第3駆動モータの駆動シャフトに前記第3支持車輪の前記第3シャフトが直接接続されており、
前記第4駆動モータの駆動シャフトに前記第4支持車輪の前記第4シャフトが直接接続されている、請求項3記載のモータトロリー。
【請求項5】
個々の支持車輪のシャフトは連動する駆動モータの駆動シャフトの延長部である、前の請求項のいずれかに記載のモータトロリー。
【請求項6】
各駆動モータは、それに連動する駆動シャフトおよびそれに連動する支持車輪と共に、交換可能な要素を形成する、請求項5記載のモータトロリー。
【請求項7】
前記支持車輪の前記シャフトは、水平平面に対する若干の角度にて配置されている、前の請求項のいずれかに記載のモータトロリー。
【請求項8】
前記水平平面に対する前記シャフトの前記角度を調節するための調節手段を更に含む、請求項7記載のモータトロリー。
【請求項9】
電源から電力を受け、この電力を前記駆動モータに送る制御ユニットを更に含む、前の請求項のいずれかに記載のモータトロリー。
【請求項10】
前記駆動モータは三相電動モータであり、前記制御ユニットは制御周波数を変えることによって駆動モータの速度を変えるための周波数変換器を備える、請求項9記載のモータトロリー。
【請求項11】
前記レールは倒立されたT字形横断面を有する、前の請求項のいずれかに記載のモータトロリー。
【請求項12】
前記レールはダブルT字形横断面を有する、前の請求項のいずれかに記載のモータトロリー。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−520519(P2008−520519A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541964(P2007−541964)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056072
【国際公開番号】WO2006/056554
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507160355)
【Fターム(参考)】