説明

モータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びそれを用いた封入モータ

【課題】成形時の流動性が極めて良好で、硬化時の収縮が少なく、硬化後の線膨張率が小さく且つ熱伝導率が高いモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂、架橋剤、球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材、ガラス繊維及び低収縮剤を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、
前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、前記球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材を800〜1400質量部、前記ガラス繊維を20〜300質量部、前記低収縮剤を15〜50質量部含み、且つ前記球状無機充填材と前記不定形無機充填材との重量比が80:20〜50:50の範囲にあることを特徴とするモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びそれを用いた封入モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防振性による静寂性向上、一体成形による工程の簡略化などの目的で、モータ構成部品を樹脂組成物で封止することが行なわれており、このようにして得られる封入モータは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、エアコン、冷蔵庫等の種々の用途に使用されている。
これらの封入モータは、近年のエネルギー利用の更なる効率化のために小型化や高出力化が求められており、種々の改良が行なわれている。特に、封入モータの小型化や高出力化のためには、放熱性を向上させることが重要となってきている。このような熱に対する対策として、モータ構成部品を封入するための樹脂組成物の熱伝導性をより向上させることが求められている。また、このような樹脂組成物には硬化後の線熱膨張係数が小さいこと、硬化時の収縮が少ないこと、さらには成形時の流動性が十分に確保されていることが必要である。
【0003】
このような問題を解決する手段として、イソフタル酸系不飽和ポリエステル、スチレンモノマー、飽和ポリエステル及びポリエチレン微粉末からなる低収縮性不飽和ポリエステル樹脂と、粉末の水酸化アルミニウムと、粉末の炭酸カルシウムと、ガラス繊維とを特定の割合で含む電動機用の封止材料が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、不飽和ポリエステル及び架橋剤からなる不飽和ポリエステル樹脂と、熱伝導率が20〜250W/m・Kである無機充填材と、水酸化アルミニウムと、ガラス繊維と、低収縮剤とを特定の割合で含む、自動車分野及び重電分野で使用されるモータや発電機等に使用可能な不飽和ポリエステル樹脂組成物も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−298538号公報
【特許文献2】特開2001−226573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先に述べた用途の中でも、特に自動車のエンジンルーム内に設置される封入モータ等には、エンジンルームの省スペース化に伴い、小型化が強く要求されている。そのために封入モータを磁束密度や電流密度の高い状態で使用することが必要となり、それによって発熱量が増大する。それに加えて、小型化による封入モータそのものの表面積の減少が放熱性を悪化させている。そのため、このような封入モータに用いられる封止用樹脂組成物には、更なる熱伝導性の向上が求められている。
しかしながら、特許文献1及び2に開示されるような従来の不飽和ポリエステル樹脂組成物において、上記用途での要求を満たし得るようなレベルに熱伝導性を高めようとすると、モータ構成部品封止用として線熱膨張係数や成形収縮率が許容できない程高くなってしまったり、成形時の流動性が著しく低下してしまうという問題がある。
したがって、本発明は、成形時の流動性が極めて良好で、硬化時の収縮が少なく、硬化後の線膨張率が小さく且つ熱伝導率が高いモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂、架橋剤、球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材、ガラス繊維及び低収縮剤を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、前記球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材を800〜1400質量部、前記ガラス繊維を20〜300質量部、前記低収縮剤を15〜50質量部含み、且つ前記球状無機充填材と前記不定形無機充填材との重量比が80:20〜50:50の範囲にあることを特徴とするものである。
前記球状無機充填材は、球状酸化アルミニウムであり、且つ前記不定形無機充填材は、不定形酸化アルミニウム及び不定形窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記球状無機充填材の平均粒子径は、前記不定形無機充填材の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
前記モータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物からなる硬化物は、1.5W/m・K以上の熱伝導率、1.5×10−5/℃以下の線膨張係数、及び0.1%以下の成形収縮率を有することが好ましい。
また、本発明は、モータ構成部品を上記モータ封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物で封止成形してなることを特徴とする封入モータである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形時の流動性が極めて良好で、硬化時の収縮が少なく、硬化後の線膨張率が小さく且つ熱伝導率が高いモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)不飽和ポリエステル樹脂
本発明に用いる不飽和ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと、飽和多価酸成分及び/又は不飽和多価酸成分とのエステル化反応により得られる従来公知のものを制限なく用いることができる。また不飽和ポリエステル樹脂の一部をビニルエステル樹脂としてもよい。
【0009】
不飽和ポリエステル樹脂の合成に使用される多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。更にビスフェノールA及びビスフェノールF、ビスフェノールSなどのプロピレンオキサイド付加物またはエチレンオキサイド付加物、2,2−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン{水素化ビスフェノールA}、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの市販の2価アルコールが挙げられる。さらにグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの市販の多価アルコールが挙げられる。
【0010】
不飽和ポリエステル樹脂の合成に使用される不飽和多価酸成分としては、α、β−不飽和多価カルボン酸及びその反応性誘導体が挙げられる。α、β−不飽和多価カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げられる。また、これらの反応性誘導体の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水クロロマレイン酸などの酸無水物、上記不飽和多価カルボン酸の低級アルキルエステルなどが挙げられる。これら不飽和多価酸成分の中から一種を選択して用いてもよく、また、これらを併用し組み合わせて用いてもよい。
【0011】
不飽和ポリエステル樹脂の合成に使用される飽和多価酸成分としては、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)などが挙げられ、芳香族多価カルボン酸の例としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など、更にクロレンディク酸(ヘット酸)、テトラブロモフタル酸のようなハロゲン化フタル酸などが挙げられる。更に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水琥珀酸、無水クロレンディク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの上記の酸無水物、ジメチルオルソフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルテレフタレートなどの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これら飽和多価酸成分の中から一種を選択して用いてもよく、また、これらを併用し組み合わせて用いてもよい。
【0012】
上記のような不飽和ポリエステル樹脂は、公知の方法で合成することができる。その反応の条件は、窒素などの不活性ガス気流中で、140〜230℃の温度で行われ、加圧下または減圧下で所要の段階までエステル化させる方法で行なう。エステル化反応では、必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。その触媒の例としては、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、シュウ酸第一錫、酢酸亜鉛、酢酸コバルト等の公知の触媒が挙げられる。
【0013】
(2)架橋剤
本発明に用いる架橋剤としては、上記の不飽和ポリエステル樹脂と重合可能な重合性二重結合を有しているものであれば適宜適当なものを用いることができる。このようなものとしては、例えば、スチレンモノマー、ジアリルフタレートモノマー、ジアリルフタレートプレポリマー、メタクリル酸メチル、トリアリルイソシアヌレート等が例示される。架橋剤の使用量は、不飽和ポリエステル樹脂と架橋剤との合計100質量部中に、好ましくは25〜70質量部、更に好ましくは35〜65質量部である。
【0014】
また、本発明において、不飽和ポリエステル樹脂と架橋剤との合計量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に対して、5〜12質量%であることが好ましく、6〜9質量%であることがより好ましい。不飽和ポリエステル樹脂と架橋剤との合計量が5質量%未満であると充填材を混合し難くなることがあるため好ましくなく、12質量%を超えると不飽和ポリエステル樹脂組成物の成形性が低下することがあるため好ましくない。
【0015】
(3)球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材
本発明に用いる球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材としては、球状の無機充填材と不定形の無機充填材との重量比が80:20〜50:50の範囲にあるものであれば、無機充填材の種類は特に限定されない。不飽和ポリエステル樹脂組成物の流動性を考慮すると、球状無機充填材と不定形無機充填材との好ましい重量比は70:30〜60:40である。球状及び不定形の無機充填材の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化チタン、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、石こう、硫酸バリウム、クレー、タルク等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導率をより向上させる観点から、球状無機充填材として球状酸化アルミニウムを用い、不定形無機充填材として酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、球状及び不定形の無機充填材の大きさは、特に限定されるものではないが、成形時の流動性をより向上させる観点から、球状無機充填材の平均粒子径が、不定形無機充填剤のそれよりも大きいものを使用することが好ましい。球状無機充填材の平均粒子径は、好ましくは5〜100μm、更に好ましくは10〜50μmであり、不定形無機充填材の平均粒子径は、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは2〜8μmである。
なお、本発明において球状無機充填材は完全な真球である必要はなく、一部に楕円形等の変形物が含まれていても差しつかえない。一般には、球形度が、0.8以上のものであればよい。
また、本発明において不定形無機充填材は、具体例として上記した無機充填材を粉砕して得られる粉砕物である。粉砕手段は特に限定されず、公知の粉砕手段を制限なく採用することができる。例えば、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いた粉砕が一般的であり、粉砕により得られた不定形無機充填材は必要により分級して使用される。
このような混合充填材は、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤の合計100質量部に対して、800〜1400質量部、好ましくは900〜1200質量部配合される。混合充填材の配合量が800質量部未満であると、熱伝導率が不十分となり、また1400質量部を超えると充填材が混合し難くなるばかりか、流動性が著しく低下する。
【0016】
(4)ガラス繊維
本発明に用いるガラス繊維としては、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、ガラスチョップ、ミルドガラス、ロービングガラス等が挙げられ、ガラス繊維の繊維長は好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは0.05〜3mmである。繊維長が1.5mm以下のガラス繊維を用いることで、成形時の流動性をより向上させることができる。また、ガラス繊維は、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤の合計100質量部に対して、20〜300質量部、好ましくは50〜250質量部とするのがよい。ガラス繊維の配合量が20質量部未満であると硬化物の線膨張係数が大きくなり、300質量部を越えると成形時の流動性が著しく低下する。
【0017】
(5)低収縮剤
本発明に用いる低収縮剤としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル、スチレン−ブタジエン系ゴム等の低収縮剤として一般に使用されている熱可塑性ポリマーを単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい低収縮剤としては、ポリスチレンが挙げられる。低収縮剤は、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋剤の合計100質量部に対して、15〜50質量部であり、好ましくは20〜50質量部である。低収縮剤の配合量が15質量部未満であると硬化物の成形収縮率が大きくなり、50質量部を越えると成形時の流動性が著しく低下する。
【0018】
(6)その他の成分
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、上記の各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化剤、離型剤、増粘剤、顔料等を必要に応じて用いることができる。
【0019】
硬化剤としては、例えば、過酸化物の中から適宜選択することができる。例えばt−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1,−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等を例示することができる。
【0020】
離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0021】
増粘剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、イソシアネート化合物が例示される。
【0022】
以上の様な成分によって構成される本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法はとくに制限されず、常法によって調製することができ、例えば、双碗型ニーダにて不飽和ポリエステル樹脂、架橋剤、球状無機充填材、不定形無機充填材、低収縮剤、硬化剤、離型剤、顔料等を混練後、ガラス繊維を加えてさらに混練することにより得ることができる。また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、各種の成形手段に供することができる。例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形のいずれの方法によっても、成形時に良好な流動性を確保しつつ、熱伝導率が高い硬化物を得ることができる。
【0023】
また、本発明のモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて、成形型内に固定されたコイル、回転子、固定子、軸受等のモータ構成部品を封止成形して封入モータを得ることもできる。封止成形は公知の手法を採用して行うことができ、例えば圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等により行うことができる。また封止成形時の成形条件は適宜設定されるが、例えば成形温度110〜180℃、成形時間は1〜30分、成形圧力は2〜10MPaとすることができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に何ら限定されるものではない。
【0025】
[実施例1〜10]
下記表1及び2に示す配合組成でそれぞれの配合成分を、双碗型ニーダを用いて混練し、実施例1〜10の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。なお、ここで使用した不飽和ポリエステル樹脂・スチレン溶液は、フマル酸/プロピレングリコール/水素化ビスフェノールA=100モル/80モル/20モルの配合比の不飽和ポリエステル樹脂をスチレンモノマーで溶解させ、不飽和ポリエステル樹脂が70質量%含まれるように調整したものである。
【0026】
得られた不飽和ポリエステル樹脂組成物について、熱伝導率、線膨張係数、成形収縮率及び流動性の評価を行った。試験及び評価の方法は次の通りである。
【0027】
(1)熱伝導率
成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間15分で圧縮成形により150×150×厚さ20mmの平板を成形し、QTM法(測定機:京都電子製QTM−500(SDK製QTM−DII))により熱伝導率を測定した。
【0028】
(2)線膨張係数
成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形により90×10×厚さ4mmの平板を成形し、20×4×4mmのテストピースを切り出し、TMA法(測定機:リガク製TMA8310)により線膨張係数を測定した。
【0029】
(3)成形収縮率
JIS・K6911に規定される収縮円盤を、成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間3分で圧縮成形を行い、JIS・K6911に基づいて成形収縮率を算出した。
【0030】
(4)流動性
フローテスター粘度測定機(測定機:島津製CFT−500)にて見掛け粘度を測定した。型内流動を想定し130℃及び2MPaの条件で測定を行った。評価において、表中、◎は100dPa・s≧、流動性が非常に良好であることを意味し、○は300dPa・s≧、流動性が良好であることを意味し、△は1000dPa・s≧、流動性がやや劣ることを意味し、×は1000dPa・s<、流動性が悪いことを意味し、××は流動せず製造不可であることを意味する。
【0031】
評価の結果を表1及び2に合わせて示した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
[比較例1〜13]
実施例1〜10と同様にして、表3〜5に示す配合組成でそれぞれの配合成分を、双碗型ニーダを用いて混練し、比較例1〜13の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。実施例1〜10と同様に熱伝導率、線膨張係数、成形収縮率及び流動性の評価を行った。これら評価の結果を下記表3〜5に併せて示した。
【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
表1〜5の結果から明らかなように、実施例1〜10の不飽和ポリエステル樹脂組成物では、比較例1〜13の不飽和ポリエステル樹脂組成物と比較して、極めて良好な型内流動性を確保することができ、且つ熱伝導率1.5W/m・K以上、線膨張係数1.5×10−5/℃以下及び成形収縮率0.1%以下というモータ構成部品封止用に適した高熱伝導性の硬化物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂、架橋剤、球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材、ガラス繊維及び低収縮剤を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、
前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、前記球状無機充填材と不定形無機充填材との混合充填材を800〜1400質量部、前記ガラス繊維を20〜300質量部、前記低収縮剤を15〜50質量部含み、且つ前記球状無機充填材と前記不定形無機充填材との重量比が80:20〜50:50の範囲にあることを特徴とするモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記球状無機充填材が、球状酸化アルミニウムであり、且つ前記不定形無機充填材が、不定形酸化アルミニウム及び不定形窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記球状無機充填材の平均粒子径が、前記不定形無機充填材の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記モータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物からなる硬化物が、1.5W/m・K以上の熱伝導率、1.5×10−5/℃以下の線膨張係数、及び0.1%以下の成形収縮率を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のモータ構成部品封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
モータ構成部品を請求項1〜4の何れか一項に記載のモータ封止用不飽和ポリエステル樹脂組成物で封止成形してなることを特徴とする封入モータ。

【公開番号】特開2009−77577(P2009−77577A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245537(P2007−245537)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】