説明

モール取付用クリップ及びそれを用いたモールの取付構造

【課題】車体側に取り付けるモールの取り付け及び取り外し作業が容易で、取り付け精度が高いモール取付用クリップ及びそれを用いたモールの取付構造の提供を目的とする。
【解決手段】モールを車体側に取り付けるクリップであって、車体側はスタッドボルトを有し、クリップは前記スタッドボルトの挿入部を有し、前記挿入部は間隔が前記スタッドボルトの外径よりも狭くおねじ部に弾性係止する係止部と、間隔が前記スタッドボルトの外径よりも広い取外し部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の車体側にモールを取り付けるのに用いるモール取付用クリップ及びそれを用いたモールの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にはルーフモール、サイドモール等の装飾モールが取り付けられている。
例えば、ルーフモールの場合にルーフパネルとアウトサイドパネルとの接合部分に車両前後方向の細長い溝部を形成し、この溝部を覆い隠すように取り付けられている。
この場合に従来は特許文献1に示すように車体側にTスタッドを突設し、このTスタッドの頭に挿入及び前後方向にスライド係止する略ダルマ形状の挿入部を有するクリップを用いてモールを車体側に取り付けていた。
しかし、Tスタッドの場合にモールの取り付けに挿入のみでなく、スライド作業も必要であり取り付け作業が繁雑となる問題があった。
また、TスタッドはT型の頭部の高さが一定であり、上下方向の取付ガタが生じやすい問題もあった。
【0003】
特許文献2は車体側にスタッドボルトを突設し、このおねじの谷に係合する拡開方向に弾性変形可能なクリップを用いた技術を開示する。
しかし、同公報に開示するクリップはクリップを車体側に押し込むだけでモールを取り付けることができるものの、メンテナンス等においてモールを取り外すことが必要となった場合にモールの取り外しが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−86765号公報
【特許文献2】特開2004−125041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は車体側に取り付けるモールの取り付け及び取り外し作業が容易で、取り付け精度が高いモール取付用クリップ及びそれを用いたモールの取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るモール取付用クリップは、モールを車体側に取り付けるクリップであって、車体側はスタッドボルトを有し、クリップは前記スタッドボルトの挿入部を有し、前記挿入部は間隔が前記スタッドボルトの外径よりも狭くおねじ部に弾性係止する係止部と、間隔が前記スタッドボルトの外径よりも広い取外し部を有することを特徴とする。
ここで車体側としたのはモールを車体に取り付ける部分を意味し、ルーフパネル,サイドパネル等車体の部位に制限はない。
【0007】
ここで車体側からモールを取り外す場合にクリップを前後方向にスライド移動させ、スタッドボルトがクリップの取外し部の位置になるようにすると、取外し部の間隔がスタッドボルトの外径より大きいため、モールを取り外すことができる。
この場合にクリップの取外し部は破断可能な薄片の係止片を有するようにすると、クリップをスライド移動しただけではモールを取り外すことができず、薄片を破断するようにクリップを引き抜くことになる。
これにより、クリップ(モール)が不本意に外れるのを防止する。
【0008】
本発明に係るクリップを用いたモールの取付構造としては、モール本体部と当該モールの端部に差し込み可能なエンドキャップとを有し、エンドキャップは請求項1又は2記載のクリップを有するようにする方法が例として挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るモール取付用クリップはクリップにスタッドボルトの挿入部と弾性係止する係止部とを設けたので、モールに取り付けたクリップを車体側に押し付けるだけで上記係止部がスタッドボルトのおねじ部に係止するので、モールの車体への取り付け作業が容易であり、上下方向のガタも生じない。
また、クリップを前後方向にスライドするだけでスタッドボルトからモールを取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るクリップを用いてモールを車体側に取り付ける例を示す。(a)はクリップを下面から見た状態、(b),(c)はスタッドボルトにクリップを押し込み取り付ける状態を示す。
【図2】スタッドボルトからモールを取り外す状態を示す。(a)は取り外し前、(b)は取り外し後を示す。
【図3】クリップの外観斜視図を示す。
【図4】(a)はA−A線断面図、(b)はB−B線断面図を示す。
【図5】(a),(b),(c)はモールを車体側に取り付けた状態を示し、(a)は左右方向断面図、(b)は前後方向断面図、(c)は下面図を示す。(d),(e),(f)はモールを車体側から取り外す状態を示し、(d)は左右方向断面図、(e)は前後方向断面図、(f)は下面図を示す。
【図6】(a)はクリップをモールに取り付けた下面側外観斜視図を示し、(b)は係止部の部分斜視図を示す。
【図7】クリップをエンドキャップに取り付けた状態を示し、(a)は側面図、(b)は下面図を示す。
【図8】クリップとエンドキャップの取付部の構造例を示す。
【図9】モール本体部の例を示し、(a)は部分側面図、(b)は断面図、(c)は下面図を示す。
【図10】クリップの取外し部に薄片状の係止片を設けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るクリップの構造例を以下図面に基づいて説明する。
図1に示すように車体1の例えばルーフパネルとアウトサイドパネルとの接合部に沿って前後方向の溝部を形成し、その溝部の底部にスタッドボルト2を突設してある。
モール(ルーフモール)は図9に示したモール本体部30の端部に図7に示したようなエンドキャップ20を差し込んである。
エンドキャップ20は図8に示すような取付構造を用いてクリップ10を取り付けてある。
本明細書ではモールを車体に取り付けた状態で車幅方向を左右方向と表現し、車の前後方向をクリップの前後方向と表現する。
【0012】
クリップ10は図1及び図3,4に示すようにクリップ本体部11の下面側にスタッドボルト2の挿入部12を形成し、この挿入部12には下面側の左右下端から挿入部12の奥側に向けて突片状に突設し、左右の間隔Dの寸法がスタッドボルト2の外径Tより狭い係止部13と、このスタッドボルト2の外径よりも間隔Dの寸法が広い取外し部14を前後方向に連続して設けてある。
【0013】
図1(b),(c)に示すようにクリップ(モール)をスタッドボルト2側に押し付けると、図5(a)〜(c)に示すように左右の弾性係止可能な係止部13が拡開方向に弾性変形し、この係止部13の断面三角形状の先端部がスタッドボルト2のおねじ部2aの谷部に嵌り込むように係止する。
【0014】
モールを車体側から取り外す場合は、図2及び図5(d)〜(f)に示すようにクリップ10を前後方向に移動し、スタッドボルト2が取外し部14に位置するようにする。
左右の取外し部14,14の間隔Dはスタッドボルト2の外径よりも大きいので、容易にモールを車体側から取り外すことができる。
【0015】
クリップ10をモールに取り付ける構造に限定はない。
本実施例は図7及び図8に示すようにエンドキャップ20に図9に示したモール本体部30のCチャンネル断面内側空間部34に差し込むための差込部24を形成し、この差込部24の下面側にクリップ取付片21とストッパ23を形成し、さらにクリップ取付片21に左右方向の嵌合凹部を形成した例になっている。
一方、クリップ10の上部に差し込み片15と左右方向の嵌合突部16を形成し、この差し込み片15をエンドキャップ20のクリップ取付片の上面側に差し込み、嵌合突部16を嵌合凹部22に嵌合するだけで位置決めでき、前後方向にずれないようになっている。
また、本実施例に示したモール本体部30は図9に示すように芯材31Cを型形状に折り曲げ、左右の内側折り曲げ片35とモール本体部の上面内側とでエンドキャップ20の差し込み部24を支持する。
モール本体部30の左右端部にはリップ32,33を形成してある。
【0016】
図10はクリップの変形例を示し、左右の取外し部14,14の先端部に薄片状の係止片14a,14aを形成した例である。
この場合にスタッドボルト2が取外し部14に移動しても係止片14aにおねじ部2aが係止しているので、直にはモールが外れない。
しかし、モール(クリップ)を上方に引張ると係止片14aが破断し、取り外しができるようになっている。
【符号の説明】
【0017】
1 車体
2 スタッドボルト
10 クリップ
11 クリップ本体部
12 挿入部
13 係止部
14 取外し部
20 エンドキャップ
30 モール本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールを車体側に取り付けるクリップであって、
車体側はスタッドボルトを有し、クリップは前記スタッドボルトの挿入部を有し、前記挿入部は間隔が前記スタッドボルトの外径よりも狭くおねじ部に弾性係止する係止部と、間隔が前記スタッドボルトの外径よりも広い取外し部を有することを特徴とするモール取付用クリップ。
【請求項2】
前記クリップの取外し部は破断可能な薄片の係止片を有することを特徴とする請求項1記載のモール取付用クリップ。
【請求項3】
モール本体部と当該モールの端部に差し込み可能なエンドキャップとを有し、前記エンドキャップは請求項1又は2記載のクリップを有することを特徴とするモールの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−47531(P2013−47531A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185461(P2011−185461)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000240949)片山工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】