説明

ヤンキー・コーティングのための改善された変性剤

本発明は、非常に柔らかく高級なティッシュペーパーを製造するために、有用な物質の組成物を提供する。該物質の組成物は、グリセロールを主成分とするポリオールを含む粘着性組成物を含む。該グリセロールを主成分とするポリオールは、前記組成物が、脆弱になり不揮発性になることを防止する。このことにより、前記組成物が、クレーピング後に再水和されることを可能にし、及び高温度においても強い水準の接着を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
連邦の資金援助を受けた研究開発の言明
該当しない。
【背景技術】
【0003】
本発明は、物質の組成物及びそれらを、製造された紙の物理的性質を改善するために使用するための方法に関し、特に柔らかなティッシュペーパーを製造する方法に関する。典型的に、ティッシュ・ペーは、ヤンキー・ドライヤー装置を含む処理により、その柔軟性、嵩、吸収性、及び伸縮性の特徴的性質を獲得する。従来のティッシュ製造では、ティッシュはヤンキー・ドライヤー装置に湿った繊維ウエブとして供給される。湿った繊維ウエブは、シートがヤンキー・ドライヤー・シリンダーの表面に移行される、圧力ロール・ニップにおいて大幅に脱水される。この時点で、ペーパー・ウエブは、典型的に35〜40%の稠度(これは65〜60%の水分に相当する)を有する。このシートは、蒸気加熱されたヤンキー・ドライヤー・シリンダー、及び熱気衝突フードにより更に90〜98%稠度まで乾燥され、及びドクターブレードにより取り外される。ブレードの機械的作用は、ティッシュペーパーに特徴的な性質を与える小壁構造(microfold structure)を形成する繊維−繊維結合の分裂をもたらす。このプロセスがクレーピング(creping)と称される。
【0004】
柔らかいティッシュペーパーを製造するためにペーパー・ウエブを適切にクレープ(crepe)する目的のために、前記ペーパー・ウエブは、ヤンキー・ドライヤー・シリンダーの表面に付着しなければならない。次いで、ペーパー・ウエブがドクターブレードと衝突するときに、圧縮又は短縮作用により小壁が機械方向に形成される一方、同時にウエブが乾燥シリンダーから分離される。この付着は、乾燥シリンダーの表面への接着剤の塗布により促進される。加えて、ウエットエンドの紙料構成要素も接着に貢献することができる。通常、使用されるヤンキー接着剤は、ポリアミノアミド−エピクロルヒドリン(PAE)樹脂、ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエチレンイミン、架橋されたビニルアルコール共重合体、及び特許文献1に記載されるようなその他の合成ポリマーである。澱粉、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどを含む、他の天然、及び誘導化された天然ポリマーも用いることができる。さまざまな低分子量化合物、離型剤、油類、及び界面活性剤が、これらの接着剤の性質を修飾するために用いられる。
【0005】
ティッシュ工業は、高い水準の柔軟性及び嵩を有するティッシュである、高級な等級のティッシュの製造に興味を持ち続けている。柔軟性の改善は繊維源の修飾、特定の成形の遂行、及び乾燥戦略、繊維シートのクレーピング、及び柔軟剤のウエット・エンド又は局所使用により達成され得る。シートが非常に低いシート湿度水準(<3%)のときの、紙シートのクレーピングは所望の水準の高い柔軟性及び嵩を達成するために、非常に効果的な方法である。低い湿度水準では、シート及びそのコーティングは、互いにより強く接着する傾向があり、そのためより効果的なシートのZ−方向の脱結合を引き起こし、それにより、より高い嵩及び柔軟性を生成させる。低湿度水準は、ヤンキー・ドライヤー及びフードの温度を増加させることにより達成される。
【0006】
ティッシュの柔軟性の利益にも関わらず、低湿度クレーピングは、一つにはコーティングの走行性(runnability)の問題のために、広くは実施されていない。従来のクレーピング接着剤は、典型的には、高温に曝された場合に、再水和性の少ないハード・コーティングを作成し、及び低湿度クレーピングに要求される広範囲の乾燥を起こす。このハードで、脆弱なコーティングは、接着の損失、及び更にブレードの振動(ガタガタする音:chatter)をもたらし、それにより不均一なクレーピング、ブレードの損耗、及び極端な場合にはヤンキー・ドライヤー・シリンダー表面の損傷を引き起こす。
【0007】
これらの問題を解決するために試みられた方法の一つは、接着剤を可塑化するために保湿剤を用い、及びそれにより、ヤンキー・ドライヤーの高温によりもたらされる帰結に対抗するものであった。そのような保湿剤の一つはグリセロール(例えば、特許文献2、及び特許文献3を参照のこと)である。グリセロールはコーティング薄膜の粘弾性の性質を変化させることに加え、薄膜のガラス転移点及び剪断弾性率を減少させ、薄膜をより柔軟に、並びに高温及び低温の両方の条件下で、より再水和性にすることが示されている。不運なことに、ヤンキー・ドライヤーに塗布される場合の希薄な水溶液の形態では、グリセロール/水混合物の揮発性がグリセロールの可塑剤としての有効性を制限してしまう。ヤンキー・ドライヤーの環境においては、水は普通に使用されるために、グリセロールほど揮発性でなく、薄膜を可塑化できる変性剤への高い要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,374,334号
【特許文献2】米国特許第5,187,219号
【特許文献3】米国特許第5,660,687号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも1つの本発明の実施形態は、ペーパー・ウエブをクレーピングする方法であって:
a) 回転するクレーピング・シリンダーに、少なくとも1つの接着剤、少なくとも1つの離型剤、及び少なくとも1つのポリグリセロールを含むコーティング組成物を塗布すること;
b) ペーパー・ウエブのクレーピング・シリンダーに対する接着を達成するために、ペーパー・ウエブをクレーピング・シリンダーに対して圧迫すること;及び
c) ドクターブレードによりペーパー・ウエブをクレーピング・シリンダーから取り除くこと、
を含む方法を志向する。
【0010】
前記コーティング組成物は、グリセロールの揮発性範囲を超える温度で可塑性であることができる。前記ポリグリセロールは、前記コーティング組成物の1〜70%であってよい。前記コーティング組成物は100度C未満のガラス転移点を有することができる。前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物は、紙がクレーピング・シリンダーから取り除かれた後に、容易に再び濡らされることができる。
【0011】
前記ポリグリセロールは、以下のものより成る群から選ばれることができる:下式のポリグリセロールであって、式中、m、n、o、p、q、及びrは、0より大きく25未満の整数であるポリグリセロール、
【0012】
【化1】

【0013】
グリセロールとエピクロルヒドリンの架橋結合により形成されるポリグリセロール、塩基縮合ポリグリセロール、グリシドールを主成分とするモノマーの縮合によるもの、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0014】
前記ポリグリセロール構造は、直鎖状、分枝状、多分枝状(hyperbranched)、樹枝状(dendritic)、環状及びそれらの任意の組み合わせより成る群から選ばれることができる。前記ポリグリセロールは、100g/moleを越える分子量を有することができる。前記コーティングは、更に、ポリアミノアミド−エピクロルヒドリン(PAE)樹脂、ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン、天然ポリマー、誘導化された天然ポリマー、澱粉、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、機能性添加物、約12〜約22個の炭素原子より成る脂肪鎖を有する有機第四級塩、ジアルキルイミダゾリウム第四級塩、ジアルキルジアミドアミン第四級塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム第四級塩、ジアルキルジメチルアンモニウム第四級塩、トリアルキルモノメチルアンモニウム第四級塩、エトキシル化第四級塩、ジアルキル及びトリアルキルエステル第四級塩、ポリシロキサン、四級シリコーン、有機反応性ポリシロキサン、アミノ−官能性ポリジメチルシロキサン、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドアミン、アミドアミン−エピクロルヒドリンポリマー、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセテート、ビニルアセテート共重合体、ポリエーテル、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、セルロース誘導体、澱粉、澱粉誘導体、動物性にかわ、架橋されたビニルアミン/ビニルアルコールポリマー、グリオキサル化アクリルアミド/ジアリルメチルアクリルアミド共重合体、架橋したカチオン性ポリアミノアミドポリマーを主成分とするハロゲンを含まないクレーピング・シリンダー接着剤、及びそれらの任意の組み合わせを含むことができる。前記コーティング組成物は、更に乳酸又は乳酸塩を、更に離型剤、他の変性剤(リン酸塩を含む)、機能性添加物、ポリグリセロール、 ポリグリセロール誘導体、任意のグリセロールを主成分とするポリオール、及びそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0015】
前記離型助剤は、以下のものよりなる群から選ばれる1つのものを含むことができる:ナフテン油、パラフィン油、植物油、鉱油、又は合成油、及び乳化性界面活性剤より成る離型油、脂肪酸、アロコキシル化アルコール、アルコキシ化脂肪酸などの界面活性剤の1つ以上から製剤される離型助剤、並びにそれらの任意の組み合わせ。前記コーティング組成物は、水溶液、乳化液、又は分散液として塗布されることができる。クレープされた紙は本発明の方法に従って製造される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下に本発明の詳細な記載が、以下の図面を具体的に参照しながら記載される:
【図1】図1は、本発明の薄膜において、使用されるのに適切なポリグリセロールの構造を図示している。
【図2】図2は、本発明の薄膜において、使用されるポリグリセロールにおいて適切な反復単位を図示している。
【図3】図3は、本発明の変性剤の、改善された揮発性の性質を示すグラフである。
【図4】図4は、希釈された変性剤の、重量損失に対する改善された抵抗性を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の薄膜の改善された乾燥粘着力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本出願の目的のための、用語の定義は以下のとおりである:
「分散」とは、連続相の液体の全体に分散された、典型的には、コロイド状のサイズの極端に細かい個体粒子の熱力学的に不安定な混合物であって、それ以外の方法によっては互いに混和しないものを意味する。分散は、少なくとも一時的には、分散剤により安定化され得る。
【0018】
「エマルション」とは、微小球として連続相の液体の全体に高度に分散された、分散相の液体の熱力学的に不安定な混合物であって、それ以外の方法によっては互いに混和しないものを意味する。エマルションは、少なくとも一時的には、界面活性剤、及び乳化剤により安定化され得る。
【0019】
「ポリマー性ポリオール」とは、ポリマーを形成するモノマーの反復単位の少なくとも一部分がポリオールであり、並びに限定はされないが、ポリグリセロール、ポリグリセロール誘導体、及び少なくとも1つのグリセロールのモノマー単位、及び少なくとも別の単一モノマー単位から、モノマー単位配列の順序に無関係に、他の複数のモノマー単位より成るポリマー、並びにそれらの任意の組み合わせを含むポリマーを意味する。
【0020】
「ポリオール」とは、脂肪族骨格の別個の炭素原子に結合している、少なくとも2つの水酸基を含む化合物又はポリマーを意味し、限定はされないが、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、イノシトール、ポリ(ビニルアルコール)及びグリセロールを主成分とするポリオールを含む。
【0021】
「可塑剤」とは、物質に加えられたときに、しばしばその物質のガラス転移点を低下させる結果として、その物質の柔軟性及び加工性の増大を引き起すものを意味する。
【0022】
万一、上記の定義又は本出願の他の箇所で言明される定義が、辞書、又は参照により本願に組み込まれたソースにおいて通常使用される意味(明示的な、又は暗示的な)と一致しない場合は、本出願、及びとりわけ特許請求範囲の用語は、本出願の定義に従い解釈されるべきものと理解され、及び通常の定義、辞書の定義、又は参照により組み込まれた定義に従うべきではない。
【0023】
少なくとも1つの本発明の実施形態は、接着剤、離型剤、及び変性剤を含むヤンキー・ドライヤー・コーティング組成物を志向する。前記接着剤は、紙マットをヤンキー・ドライヤーのドラム表面に結合させる。本発明は、セルロース系繊維、合成繊維、及びそれらの任意の組み合わせを含む紙マットへの適応を包含する。前記離型剤は、ドクターブレードが乾燥紙マットをドラムから取り除くことを可能にするために、接着剤の強度を低下させる。前記変性剤は、前記コーティング組成物を可塑化し、柔軟に保ち、並びに再水和性になること及び高温下にある間の接着を維持することを可能とする。ヤンキー・ドライヤー・コーティング組成物は、米国特許出願第12/273217号に記載されている。
【0024】
少なくとも1つの実施形態では前記変性剤は、グリセロールを主成分とする、ポリグリセロール、ポリグリセロール誘導体、及び少なくとも1つのグリセロールのモノマー単位、及び少なくとも別の単一モノマー単位から、モノマー単位配列の順序に無関係に、他の複数のモノマー単位より成るポリマー、並びにそれらの任意の組み合わせを含む、ポリマー性ポリオールを含む組成物である。適切な、グリセロールを主成分とするポリマー性ポリオールとしては、限定はされないが、米国特許出願第12/582,827号及び米国特許出願公開第2009/0130006号に記載されているものが挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、前記ポリマー性ポリオールは100より大きい分子量を有する。
【0025】
少なくとも1つの実施形態では、前記変性剤は、ポリグリセロールを含む組成物である。適切なポリグリセロールとしては、限定はされないが、米国特許出願第12/582,827号及び米国特許出願公開第2009/0130006号に記載されているものが挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、前記ポリグリセロールは100より大きい分子量を有する。グリセロールには、例えば、米国特許第一5,187,219号に記載されているように、他の物質において、可塑剤としての特定の使用法があることは知られているが、ヤンキー・ドライヤー・コーティングにおいて、ポリグリセロールが試されたことはない。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、前記ポリグリセロールは、ジグリセロール、トリグリセロール、及び図1に図示される構造により特定される、より高次の同族体より成る群から選ばれる一つである。前記ポリグリセロールは、エピクロルヒドリンとの架橋反応により、グリセロールとの縮合により、グリシドールを主成分とするモノマーの重合により、又はそれらの任意の組み合わせにより調製され得る。
【0027】
少なくとも1つの実施形態では、前記ポリグリセロールは図1に図示される構造を有することができる。前記ポリグリセロールは、限定はされないが、直鎖状構造I及びII、分枝状、多分枝状、又は樹木状構造III、IV、及びV、環状構造V、VI及びVII並びにそれらの任意の組み合わせを含む、図2に一覧される構造から選ばれる少なくとも1つの構造の、少なくとも2つの反復単位を含む構造を含む。図2のいかなる構造も、それ自身を含む任意の1つの構造、又は複数の構造と、構造中の遊離水酸基の官能性を介して、結合されることができる。図2の基本的な環状構造中の環状結合は、結合の一部分、又は複数部分として、任意の1つの構造又は複数の構造を含むことができる。図1及び図2では、各構造中の番号、m、n、n´、o、p、q及びrは、独立して任意の数、0、1、2、...25であってよい。図1のR及びR´は、(CHであり、及びnは独立して1又は0であることができる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態ではヤンキー・コーティングのための前記変性剤は、ポリグリセロール誘導体を含む。前記誘導体は、1〜22個の炭素原子を有するポリグリセロールからの誘導化により得ることができる。この修飾は、限定はされないがアルキル化、アルコキシル化、エステル化などを含むことができる。
【0029】
少なくとも1つの実施形態では、本発明の接着剤組成物は、希薄された水溶液としてクレーピング・シリンダーの表面に塗布される。一実施形態では、この希薄された水溶液は、約0.01〜約10.0重量パーセントの本発明のポリマーを含む。他の実施形態では、本発明のポリマーは、水溶液中に、約0.05〜約5.0重量パーセント含まれる。他の実施形態では、本発明のポリマーは、水溶液中に、約0.1〜約1.0重量パーセント含まれる。クレーピング接着剤分野の当業者は、混合物中に大きな割合の水が存在する理由が、部分的には、クレーピング・シリンダーに、非常に薄い接着剤層を堆積する必要があることに基づくことを理解するであろう。一実施形態では、この堆積はスプレー・ブームにより最も容易に達成される。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、上述のスプレーによる塗布は、例えば、混合を改善し、分離の可能性を低下させるための、二重又は三重の被覆のために設計された、スプレー・ブームの使用による、スプレー・ブームの振動による、及びスプレー・ブームの出口からの、希薄された離型助剤組成物の再循環による、などの、さまざまな手段によって更に改善され得る。
【0031】
少なくとも1つの実施形態では、これも水性の形態である離型助剤が、ポリマー接着剤とともにヤンキー・ドライヤーに塗布される。この離型助剤は、ヤンキー・ドライヤー表面、及びティッシュペーパーをヤンキー・ドライヤーからクレープするために用いられるドクターブレードとの間の潤滑を提供する。この離型助剤は、クレーピング・プロセスの間に接着剤からティッシュペーパーが離れることも可能にする。代表的な離型助剤としては、ナフテン油、パラフィン油、植物油、鉱油又は合成油から成る離型油及び乳化性界面活性剤が挙げられる。離型助剤の安定な水性分散物を形成するために、典型的には、アルコキシル化されたアルコール、アルコキシル化された脂肪酸などの、1つ以上の界面活性剤が製剤される。この離型助剤接着剤組成物の前、もしくは後にクレーピング・シリンダーに塗布されることができるか、又はクレーピング・シリンダーへの塗布のために接着剤とともに加えられることができる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では本発明の接着剤組成物は、当技術分野でティッシュ又はタオルの柔軟性を改善するために用いられる機能性添加物と組み合わせて用いることができる。代表的な機能性添加物としては、約12〜約22個の炭素原子の脂肪鎖を有する、ジアルキルイミダゾリウム第四級塩、ジアルキルジアミドアミン第四級塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム第四級塩、ジアルキルジメチルアンモニウム第四級塩、トリアルキルモノメチルアンモニウム第四級塩、エトキシル化第四級塩、ジアルキル及びトリアルキルエステル第四級塩などを含む有機第四級塩が挙げられる。追加的な適切な機能性添加物としては、ポリシロキサン、四級シリコーン、有機反応性ポリシロキサン、アミノ官能性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、クレープされた紙を製造するための、前記クレーピング接着剤としては、限定はされないが以下のものが挙げられる:ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドアミン、アミドアミン−エピクロルヒドリンポリマー、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセテート、ビニルアセテート共重合体、ポリエーテル、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、セルロース誘導体、澱粉、澱粉誘導体、動物性にかわ、米国特許第5,374,334号に記載される架橋されたビニルアミン/ビニルアルコールポリマー、グリオキシル化されたアクリルアミド/ジアリルメチルアクリルアミド共重合体;米国特許第5,179,150号に記載され、及び特許請求されているポリマー;米国特許第5,187,219号に記載され、及び特許請求されているポリマー;米国特許第6,277,242号B1に記載され、及び特許請求されている、約0.1〜約50重量パーセントの第一のポリアミド−エピハロヒドリン樹脂及び約99.9〜約50重量パーセントの第二のポリアミド−エピハロヒドリン樹脂の混合物;及び米国特許第5,382,323号に記載され、及び特許請求されている、架橋されたカチオン性ポリアミノアミドポリマーを主成分とするハロゲンを含まないクレーピング・シリンダー接着剤。
【実施例】
【0034】
上述のことは、説明の目的で提示され、及び本発明の範囲を制限することが意図されていない、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0035】
市販のジグリセロール、及びSolvay Chemical International(ベルギー)よりの、ポリグリセロール−3及びNalco Company(イリノイ州ネーパービル(Naperville))から入手可能である、合成された物質であるPG−1、及びPG−2を含む、さまざまなポリグリセロールのサンプルが体積粘性率及び分子量の測定のために特性化された。これらのサンプルの説明が表1に提供され及び全てのサンプルがグリセロール(分子量=92g/mole)よりも高い粘度及び分子量を有することが示されている。サンプルの体積粘性率は、Rheometer AR2000(TA Instruments,デラウエア州ニューキャッスル(New Castle))により測定された。測定は、5s−1のせん断率、40度Cで、回転モードにより行われた。2000μmのギャップを持つ60mmの平行板が用いられた。分子量測定では、全てのサンプルがSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法により分析され、及び報告されている分子量(MW)は、PEG/PEO標準の較正に基づく重量平均分子量である。塩基縮合により調製されたポリグリセロールは、乳酸又は乳酸塩を含み得る。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1
ポリグリセロール製造の一般的操作手順:グリセロール(500.0部)及びNaOH又はKOH溶液(反応固体の全重量に対する活性物質の重量により3〜10%)の混合物を、特定の流速の不活性気体下に、撹拌しながら、徐々に230〜260度Cに加熱した。この温度でこの反応混合物を、所望の反応時間(時間単位で)撹拌し、及び2時間後に、処理中のサンプルを抜き出し、更にその後は1時間又は2時間ごとに生成物の測定のためにサンプルを抜き出した。反応開始後0〜4時間の間は、1時間毎に、グリセロール1モルに対して、0.2〜8molでの窒素流速を加えるか、又は反応終了まで、760mmHg未満の真空圧を加えた。このポリグリセロール生成物は、水で希薄後に、pH調整をして、又はせずに、直接塗布に用いられた。
【0038】
実施例2
ポリグリセロール・サンプルの揮発性が、熱重量分析(TGA)により測定された。図3は、グリセロール及びさまざまなポリグリセロール・サンプルのTGA重量損失曲線の重ねあわせである。表2は、各サンプルで5%の重量損失が起きる時点の温度を一覧している。グリセロールの5%重量損失は162度Cで生じるが、ポリグリセロール・サンプルの5%重量損失は有意により高い温度で生じている。このことは、ポリグリセロール・サンプルの全てが、グリセロールよりも揮発性が低いことを示唆している。約20〜40mgのサンプルをTGA(TA Instruments,デラウエア州ニューキャッスル(New Castle))を用いて、10度C/minの加熱速度で空気中(流速:90mL/min)で分析した。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例3
希薄溶液中で、グリセロールに比較して低揮発性であるポリグリセロールが図4に図示されている。変性剤濃度がより希薄になるにつれて、グリセロールに対するポリグリセロールの有用性がより明白になる。1%変性剤濃度では、105度Cで16.5時間の乾燥後に実質的に100%のグリセロール変性剤が失われる。それに対して高々10%のポリグリセロール変性剤が失われるだけである。
【0041】
実施例4.
ヤンキー・ドライヤー組成物の一部として製剤されたときのポリグリセロールの可塑化性、が、ガラス転移点(Tg)及び貯蔵剪断弾性率(G´)の測定から実証された。ポリマーのTgは、示差走査熱量測定法により測定され、及びポリマー薄膜のG´はレオメータにより測定された。表3は、PAEを主成分とする薄膜のTg及びG´に対する変性剤の効果を示している。この結果は、ポリグリセロールが、グリセロールと同様に効果的な可塑剤であることを実証している。ポリグリセロールはグリセロールと同様の様式でTgを低下させ、及びポリグリセロールにより変性されたPAE薄膜は、変性されないものと比べて、より柔らかい薄膜であった。TAQ200示差走査熱量計(TA Instruments,デラウエア州ニューキャッスル(New Castle))がTg測定に用いられた。ポリマー・サンプルは、薄膜をポリプロピレンの皿の中で成型して調製した。サンプルは一晩105度Cのオーブンの中で乾燥された。約10〜15mgのサンプルをDSCパンに蓋をして密封した。このサンプルを10度C/minの昇温速度で加熱した。Tgは半値幅法を用いて二回目の走査から測定した。貯蔵剪断弾性率G´は、Rheometer AR2000(TA Instruments,デラウエア州ニューキャッスル(New Castle))により測定された。ポリマー薄膜は、5%(w/w)溶液からの成型により調製した。この薄膜は一晩95度Cのオーブンで乾燥された。乾燥した薄膜は、ダイによって型抜きされた(直径8mm)。この8mmのディスクを8mmの平行板を用いて、110度C及び1Hzで測定された。
【0042】
【表3】

【0043】
実施例5.
ポリグリセロール及びグリセロールの接着に与える効果を比較するために、乾燥接着剥離試験(dry tack peel test)を行った。この試験では、加熱された金属板に接着された木綿片を、引き剥がすのに必要な力が測定された。第一に、PAE粘着性組成物を#40の塗装用ロッドにより、金属板に塗布した。板に塗布した接着剤の固体分は15%未満であった。この板を100度Cに加熱し、乾燥した木綿片を1.9kgの円筒ローラーにより圧迫した。この金属板を、次いで105度Cに加熱し、及び木綿片を15分間、乾燥のために放置した。次いで金属板を試験装置に挟んで、180度の角度で一定速度により木綿片を板から引き剥がした。図5に示される試験結果は、本発明の有効性を実証している。変性剤を用いていないサンプルは、PAE接着剤薄膜が乾燥されたために、乾燥接着を示さず、薄膜は脆弱になり、及び木綿片が接着するには、硬くなりすぎる。グリセロール変性剤が、薄膜をより柔軟にして、乾燥接着を増強する一方で、図5は、グリセロール含有薄膜を修飾剤として用いる場合と比較して、ポリグリセロール含有薄膜が、より優れた乾燥接着を持つことを明白にしている。
【0044】
このデータは、このような効果的な可塑剤としてのポリグリセロールの機能のために、ポリグリセロールにより変性された薄膜のサンプルに、グリセロールの残量が存在するような稀な状況においてさえも、ポリグリセロールのより大量の存在量、及び有効性が、残渣のグリセロールのいかなる効果をも凌駕するために、残渣のグリセロールが、ポリアミドアミン/エピハロヒドリンのための可塑剤として効果的に機能することがないことをも明らかにする。更に、図3も、特定の使用条件下(例えば、100〜162度Cの環境)では、ポリグリセロールの揮発性がより少ないために、それらの条件下では、グリセロールは、グリセロールが蒸散する一方で、滞留するポリグリセロールが可塑剤として機能するために、グリセロールが、ポリアミドアミン/エピハロヒドリン樹脂のための有効な可塑剤とはならないことを明らかにする。
【0045】
本発明が多くの異なる形態で具体化され得る一方で、本明細書には図面が示され、及び本発明の特定の好適な実施形態が詳細に記載されている。本開示は、本発明の原理の例示であり、及び説明された特定の実施形態に本発明を限定する意図を持たない。本願中の全ての特許、特許出願、科学的論文、及びいかなる他の引用された資料も、引用により、ここにその全体が本願に組み込まれる。更に、本発明は本明細書において記載され、及び本明細書に組み込まれた、さまざまな実施形態の一部又は全てのいかなる可能な組み合わせも包含する。
【0046】
上記の開示は、説明的であって包括的であることが意図されていない。この説明は、当業者に多くの変化及び代替手段を示唆するであろう。全てのこれらの代替手段及び変化は、原文における用語「comprising:含んでいる」が「including,but not limited to:含んでいるが〜に限定されない」を意味している、請求項の範囲内に包含されることが意図されている。当技術分野に通暁した者には、本明細書に記載された具体的な実施形態の他の等価物を認知することが可能であり、そのような等価物も請求項により包含されることが意図される。このことは、本発明の好適かつ代替的な実施形態の説明を完成する。当業者は本明細書に記載された具体的な実施形態についての他の等価物を認知し得るが、それらの等価物は、本明細書に添付される特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0047】
本明細書において開示される全ての範囲及びパラメータは、任意及び全ての部分的範囲、その中に部分的に集計されるもの、及び終点までの全ての数字を包含するものと理解される。例えば、「1〜10」の範囲とは、最小値である1から、最大値である10までの間の(1及び10を含む)、任意及び全ての部分的範囲、即ち、最小値である1又はより大きな値から始まり(例えば1〜6.1など)、最大値である10又はそれ未満の値で終了する(例えば、2.3〜9.4、3〜8、4〜7など)、そして最終的には、その範囲内に含まれる、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10の各数をを含むものと考慮されるべきである。
【0048】
このことは、本発明の好適な、及び変更された実施形態の記述を完成する。当業者は、本明細書に記載された具体的な実施形態の等価物を認識するであろうが、そのような等価物も本明細書に添付された特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパー・ウエブをクレーピングする方法であって:
a)回転するクレーピング・シリンダーに、少なくとも1つの接着剤、少なくとも1つの離型剤、及び少なくとも1つのポリグリセロールを含むコーティング組成物を塗布すること;
b)ペーパー・ウエブのクレーピング・シリンダーに対する接着を達成するために、ペーパー・ウエブをクレーピング・シリンダーに対して圧迫すること;及び
c)ドクターブレードによりペーパー・ウエブをクレーピング・シリンダーから取り除くこと、
を含む方法。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、グリセロールの揮発性の範囲を超える温度においても可塑化されたままである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリグリセロールが、コーティング組成物の1〜70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング組成物が、100度C未満のガラス転移点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
紙がクレーピング・シリンダーから取り除かれた後に、前記コーティング組成物が、容易に再水和性(rewettable)になる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリグリセロールが、以下より成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法:下式のポリグリセロールであって、式中、m、n、o、p、q、及びrは、0より大きく25未満の整数である、ポリグリセロール、
【化1】

グリセロールとエピクロルヒドリンの架橋結合により形成されるポリグリセロール、塩基縮合ポリグリセロール、グリシドールを主成分とするモノマーの縮合によるもの、及びそれらの任意の組み合わせ。
【請求項7】
前記ポリグリセロール構造が、直鎖状、分枝状、多分枝状(hyperbranched)、樹枝状(dendritic)、環状及びそれらの任意の組み合わせより成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリグリセロールが、100g/molより大きい分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングが、更に、ポリアミノアミド−エピクロルヒドリン(PAE)樹脂、ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン、天然ポリマー、誘導化された天然ポリマー、澱粉、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、機能性添加物、約12〜約22個の炭素原子より成る脂肪鎖を有する有機第四級塩、ジアルキルイミダゾリウム第四級塩、ジアルキルジアミドアミン第四級塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム第四級塩、ジアルキルジメチルアンモニウム第四級塩、トリアルキルモノメチルアンモニウム第四級塩、エトキシル化第四級塩、ジアルキル及びトリアルキルエステル第四級塩、ポリシロキサン、四級シリコーン、有機反応性ポリシロキサン、アミノ−官能性ポリジメチルシロキサン、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドアミン、アミドアミン−エピクロルヒドリンポリマー、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセテート、ビニルアセテート共重合体、ポリエーテル、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、セルロース誘導体、澱粉、澱粉誘導体、動物性にかわ、架橋されたビニルアミン/ビニルアルコールポリマー、グリオキサル化アクリルアミド/ジアリルメチルアクリルアミド共重合体、架橋したカチオン性ポリアミノアミドポリマーを主成分とするハロゲンを含まないクレーピング・シリンダー接着剤、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物が、更に、乳酸又は乳酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティングが、更に、離型剤、他の変性剤(リン酸塩を含む)、及び機能性添加物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、ポリグリセロール、ポリグリセロール誘導体、グリセロールを主成分とするポリオール、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記離型助剤が、以下のものよりなる群から選ばれる1つのものを含む、請求項1に記載の方法:ナフテン油、パラフィン油、植物油、鉱油、又は合成油及び乳化性界面活性剤より成る離型油、脂肪酸、アロコキシル化アルコール、アルコキシ化脂肪酸などの界面活性剤の1つ以上から製剤される離型助剤、並びにそれらの任意の組み合わせ。
【請求項14】
前記コーティング組成物が、水溶液、乳化液、又は分散液として塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により製造される、クレープされた紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−516554(P2013−516554A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547338(P2012−547338)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2011/020213
【国際公開番号】WO2011/084996
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】