説明

ユニットルームの壁構造

【課題】共通の床パン上に壁部で仕切った複数の部屋を形成するユニットルームにおいて、構造の複雑化を伴うことなく、ユニット内のより広いスペースの確保を達成すること。
【解決手段】共通の床パン上に形成される中仕切り壁部14は、それぞれの部屋の境界部を構成する2枚の壁板14a,14bによって形成され、該2枚の壁板14a,14bは、所定間隔を空けて設置され、かつその2枚の壁板14a,14bの間に在る床パン12には所定の大きさの開口部12aが形成され、2枚の壁板14a,14bの間の空間である隙間Xには仕切られた部屋に連通する配管構造物300が配置され、配管は開口部12aから床パン12の外部へ導かれる。この構造によれば、中仕切り壁部14の内部を配管構造用の空間として集中させて活用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットルームの壁構造、特に、1つの床パン上に複数の部屋を壁部で仕切ることによって形成したユニットルームの壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部屋を1つの床パン上に形成するユニットルームが、バス、トイレの複合ユニットを初め、シャワー室、洗面室、洗濯機設置スペースなどとの組み合わせに係る複合ユニットが広く用いられている。この様なユニットルームにおいては、床パン上に間仕切り壁を立てて、複数の部屋を区切っている。例えば、バス、トイレの複合ユニットの場合、いわゆる水周り器具に関する配管、例えば、給水、給湯配管は、ユニットルームの外側の仕切りである外側壁に設けている。
【0003】
しかしながら、この様に区切られる複数の部屋毎にそれぞれユニットルームの外側に配管等のスペースを確保するとユニットルームの内側のスペースが小さくなってしまう。この様な内部空間の狭小化の防止策として、例えば、特許文献1や特許文献2の技術が開示されている。
【0004】
特許文献1は、いわゆるユニットバスの構造において、ある者がトイレを使用しているときにでも洗面部やバスの使用を可能とするための工夫をしたものである。そして、この様な構造を達成するために、ユニットバスの一つのコーナー部を浴室内側へ入り込ませ、浴室内に出隅を形成することで建物躯体側に配管用等のスペースを設けている。すなわち、ユニットバスの外側に配管スペースを確保している状況が示されている。
【0005】
特許文献2は、浴室ユニットと洗面室ユニットを含む複合衛生室ユニットと称する構造体において、ユニットの外側の壁パネルと躯体との間に配管のための広いスペースを確保する必要をなくして衛生室ユニットを大きく構築できるようにしたものであり、広い内部空間を確保するという思想は本願発明と共通している。
【0006】
このために、洗面室を浴室の洗い場に隣接して設け、浴室の壁パネルを部分的に凹陥させてパイプスペースを形成して縦パイプを配設している。また、浴室における給・排水用配管を壁パネルの内側において横引配管し、上記縦パイプに接続している。その他、洗面室のデッドスペースを活用して横引配管を行い、これを上記縦パイプ64に接続することなどを行っている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−100641号
【特許文献2】特開平9−112013号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、ユニットの外壁の外側に配管スペースを確保するために明らかにユニットの内部空間を狭くしており、出入り口のドアを用いてトイレの領域を区切るという作用は得られているが、ユニットの内部空間をより大きく取るという方向には逆行するものである。
【0009】
また、特許文献2の技術では、複合ユニットの外側スペースを配管のために広く取ることを回避していると考えられるが、そのために、ユニットの外壁に凹陥部を設けてパイプスペースを確保している。また、ユニット内のデッドスペース等を配管のために用いるために配管の位置や洗面室や洗い場の位置関係が拘束されている。外側に配管を行い且つ内部スペースをより大きく確保するために、複雑な外壁構造と配管構造が必要となっている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は共通の床パン上に壁部で仕切った複数の部屋を形成するユニットルームにおいて、構造の複雑化を伴うことなく、ユニット内のより広いスペースの確保を達成することのできるユニットルーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため請求項1に係るユニットルームの中仕切り壁構造は、共通の床パン上に中仕切り壁部にて仕切られた複数の部屋を備えるユニットルームの中仕切り壁構造において、前記中仕切り壁部は、仕切られるそれぞれの部屋の境界部を構成する2枚の壁板によって形成され、前記2枚の壁板は、所定間隔を空けて設置され、かつその2枚の壁板の間に在る前記床パンには所定の大きさの開口部が形成され、前記2枚の壁板の間の空間には前記仕切られた部屋に連通する配管構造物が配置され、前記開口部から床パンの外部へ導かれることを特徴とする。
【0012】
この構造によれば、床パン上に形成される複数の部屋が境界となる2枚の壁板で仕切られ、配管構造はその2枚の壁板の間に配置される。これにより、中仕切り壁部の内部を配管構造用の空間として集中させて活用することが可能となる。したがって、ユニットルームの外側壁と建築躯体との間に配管のためのスペースを確保する必要がなくなり、ユニットルームの外側壁を最大限建築躯体側に近づけることができる。これにより、ユニットルーム内の空間をより広く確保することが可能となる。
【0013】
請求項2に係るユニットルームの中仕切り壁構造は、請求項1に係るユニットルームの中仕切り壁構造において、前記配管構造物と連通する前記部屋内部の水回り設備は前記中仕切り壁部に設けられたことを特徴とする。この構成により、上記2枚の壁板間に形成される配管構造の設置用空間へ、部屋内の水回り設備に連通する配管を迂回させることなく直接連続する様に配置することが可能となる。請求項1に係るユニットルームの中仕切り壁構造を最も有効に活用することが可能となる。
【0014】
請求項3に係るユニットルームの中仕切り壁構造は、請求項1又は2の何れか1項に係るユニットルームの中仕切り壁構造において、前記中仕切り壁部を構成する2枚の壁板の少なくとも何れか一方に、開閉可能な点検及び/又は作業用の開口部を設けたことを特徴とする。これにより、中仕切り壁部内に配置された配管構造の点検や修理が必要となったときに、上記開口部を開状態とすることによって、簡単に点検や修理作業を行うことができる。すなわち、ユニットルーム内から部屋を仕切る2枚の壁板間の空間への作業が可能となり、建築躯体とユニット外側壁間の空間での作業に比し、点検や修理作業の容易化が図られる。更に、開口部は2枚の壁部のより大きい面積を確保する側に設置することが可能であり、点検用大型開口部の形成も可能となる。
【0015】
請求項4に係るユニットルームの中仕切り壁構造は、請求項1〜3の何れか1項に係るユニットルームの中仕切り壁構造において、前記所定間隔を空けて設置される2枚の壁板を有する前記中仕切り壁部は、中空構造とした1つの壁パネルによって構成されたことを特徴とする。すなわち、中空構造の壁パネルを用いることで、その壁パネルの表面壁を上記2枚の壁板として用いることができる。これにより、工場にて製造した1つの壁パネルを設置することにより、2枚の壁板間の配管構造設置用の空間を簡単に確保することができ、本件発明に係る中仕切り壁構造の施工作業が容易なものとなる。
【0016】
請求項5に係るユニットルームの中仕切り壁構造は、請求項1から4の何れか1項に係るユニットルームの中仕切り壁構造において、前記ユニットルームは、バスとトイレの2部屋から成り、前記中仕切り壁部を構成する2枚の壁板に水周り用の設備が設置され、該水周り用設備につながる外部配管が前記2枚の壁板の間の空間を通って、前記開口部からユニット外方へ導かれることを特徴とする。
【0017】
本項に係る発明は、バストとトイレから成るユニットルームの場合におけるより具体的な構造に係るものであり、2枚の壁板、すなわち中仕切り壁部に水周り用の設備が形成され、当該設備への配管構造が2枚の壁板間の空間に配置されることで、無駄な配管スペースを排除した効率の良い配管が達成される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係るユニットルームの中仕切り壁構造によれば、配管構造の複雑化や外壁構造の複雑化を伴うことなく、配管構造の設置をスペース効率良く行うことができ、これによりユニットルーム内のスペースをより大きく確保することが可能となっている。更に、中仕切り壁部内の空間に配管構造が存在することから、中仕切り壁部に開口を設けることにより、配管構造部に対する点検や作業の容易性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、実施の形態に係るユニットルームの中仕切り壁構造の概略説明図である。なお、図面簡略化のために、ユニットルームの外側壁部の厚さ等は省略し線のみにて示している。図示のように、本実施の形態は、バスとトイレのユニットルーム10における中仕切り壁構造であり、1つの床パン12上に2つの部屋、すなわち、図上、左側にバスルーム10a、右側にトイレルーム10bが形成されている。そして、この2つの部屋を中仕切り壁部14が仕切っている。
【0020】
中仕切り壁部14は、2つの壁板14aと14bとを有しており、それぞれの壁板14aと14bがバスルーム10aとトイレルーム10bの境界部を形成している。そして、重要なことは2つの壁板14aと14bとの間に所定の隙間Xが確保されていることであり、この隙間Xが配管構造の設置空間となっていることである。本実施の形態では、バスルーム10a側に設置されるバスタブ用の給湯部100やシャワー等のための給湯部200などの水栓設備に連通する配管300が配置されている。
【0021】
更に、本実施の形態では、トイレ設備への給水用の配管400も2つの壁板14aと14b間の隙間Xを通すように配置されており、ユニットルーム10に必要な配管構造がこの隙間Xに集中配置されている。なお、手洗いや洗面用の設備を壁板14b側に取り付けることも可能であり、その場合の必要な配管も隙間Xを通して行われる。
【0022】
また、本実施の形態では、水栓設備は中仕切り壁部14側に設けられている。すなわち、バスルーム10a側の壁板14aには水栓設備(符号100,200)が取り付けられており、これにより、これらに連通する配管が、迂回することなく直接、隙間Xに引き込まれ、そのまま床パン12側に引き回される。そして、隙間Xの下方側の床パン12部分には、開口部12aが形成されており、配管300はこの開口部12aからユニットルーム10の下方へ導かれる。
【0023】
なお、図示していないが、トイレルーム10b側の水回り設備についても必要に応じて、部屋内のデッドスペースを利用して、中仕切り壁部14側に引き込むことが、配管スペースの集中によるスペース効率の向上につながるものである。また、図上符号500及び600を付して示した部材は、各ルームの出入り口を概念的に示したものである。
【0024】
図2は、上述の様な2つの壁板14aと14bの配置と配管構造の関係を示すための概略部分断面図であり、図示のように、床パン12の所定位置、すなわち、2つの部屋の仕切り位置には、中仕切り壁部14を設置するための壁部設置構造部として、他の部分よりもやや高さを高くした壁部設置部12bが形成されている。2枚の壁板14a、14bはこの床パンの壁部設置部12b上に立設されている。
【0025】
2枚の壁板14a、14bの下端部の床パン12との接触部にはコーキング処理(符号15)や乾式パッキンなどの水密性を確保するための処理が施される。また、これら2枚の壁板14a、14b間の所定位置には、両壁板14a、14bの間の間隔を適正に保ち、且つ壁構造の強度を確保するために結合部が設けられ、本実施の形態では、所定長さのブロック16をビス18により固定することで、両壁板14a、14bを結合すると共に隙間Xを均一に確保している。なお、この結合部の水密性を保つためにビス18にはビスキャップ20が取り付けられている。また、ブロック16と壁板14a、14bとの結合は接着材を用いて行うことも可能である。
【0026】
この隙間Xの下部位置の床パン12には開口部12aが形成されており、ここから壁板12aに取り付けられた配管300が下方に導き出されている。この様に、中仕切り壁部14の内部(隙間X)を配管構造用の空間として集中させて活用することが可能である。
【0027】
したがって、ユニットルーム10の外側壁と建築躯体との間に全体的に配管のためのスペースを設けたり、所々にスペースの確保を行うことで、ユニットルーム10内のスペースの狭小化や、内部空間形状の複雑化を解消することができる。
【0028】
次に、図3は中仕切り壁部14の一部切り欠き斜視図を示しており、図示のように、隙間Xの部分の床パン12には所定位置に開口部12aが形成されていることが理解される。そして、特徴的なことは、トイレルーム10b側の壁板14bに点検用の大型開口部が形成され、図示のように着脱可能なカバー22が装着されていることである。カバー22は装着状態では大型開口部を閉塞し、壁板14bの一部を構成している。そして、このカバー22を取り外した場合には、隙間X内を点検可能な開口窓が現出するものである。なお、この大型開口部の形成位置は、本実施の形態の場合、より水密性の要請の低いトイレルーム10bの壁板14b側に設けられ、また、壁板14a側に取り付けられ、床パンの開口部12aから導き出されている配管300の点検や修理作業の容易化を図るために、配管構造及び床パンの開口部12aの近傍に配置されるのが好適である。
【0029】
なお、上記構造では、点検用の大型開口部を形成する構造を説明したが、この様な部分的な開口構造ではなく、壁板14b全体を取り外し可能な構成とすることも可能である。
【0030】
また、上述の中仕切り壁部14は、ユニットルーム10の設置作業の際に、2枚の壁板14a、14bを別途立設する作業を行って構築することも可能であるが、予め工場生産により、中仕切り壁部14を1つの壁パネルにて形成することも可能である。例えば、中空構造の壁パネルにより2つの部屋の壁面を形成する2つの壁板部を両側面に確保し、それらの壁面部に、予め水栓設備の取付用の穴部や大型の点検用の開口を形成しておくことで、本発明に係る中仕切り壁部の施行現場における設置をより迅速且つ簡単に行うことが可能となる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、バスとトイレの組合せのユニットルーム10を例にとって説明したが、この様な構成のユニットルームに限定されるものではなく、他の機能の部屋の組合せにおいても適用することが可能である。すなわち、ユニットルームに必要な配管構造のためのスペースを部屋や部屋の外部に確保することの必要な種々のユニットルームにおいて好適に適用が可能である。また、上記実施の形態では、水回り構造に用いられる配管構造が示されたが、ガス、水蒸気その他の供給、排出に係る配管構造のために中仕切り壁部内の隙間を利用することによっても本発明の作用を奏することが可能である。
【0032】
また、中仕切り壁部14の隙間X内の床パン12に形成される開口部12aは、上記実施の形態では所定範囲を切り欠いて大きく形成しているが、配管の位置が固定的に設定されている場合、配管を通す部分のみに配管の形状に合わせた開口を形成することでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係るユニットルームの中仕切り壁構造の適用されたユニットルームの概略構成説明図である。
【図2】実施の形態に係る中仕切り壁部の設置構造を示す部分概略断面図である。
【図3】実施の形態に係る中仕切り壁部の内部構造及び大型開口部を示す一部切り欠き説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ユニットルーム
10a バスルーム
10b トイレルーム
12 床パン
12a 開口部
12b 壁部設置部
14 中仕切り壁部
14a,14b 壁板
22 大型開口部のカバー
100,200 水栓設備
300 バス側の配管
400 トイレ側の配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の床パン上に中仕切り壁部にて仕切られた複数の部屋を備えるユニットルームの中仕切り壁構造において、
前記中仕切り壁部は、
仕切られるそれぞれの部屋の境界部を構成する2枚の壁板によって形成され、
前記2枚の壁板は、所定間隔を空けて設置され、かつその2枚の壁板の間に在る前記床パンには所定の大きさの開口部が形成され、
前記2枚の壁板の間の空間には前記仕切られた部屋に連通する配管構造物が配置され、前記開口部から床パンの外部へ導かれることを特徴とするユニットルームの中仕切り壁構造。
【請求項2】
前記配管構造物と連通する前記部屋内部の水回り設備は前記中仕切り壁部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のユニットルームの中仕切り壁構造。
【請求項3】
前記中仕切り壁部を構成する2枚の壁板の少なくとも何れか一方に、開閉可能な点検及び/又は作業用の開口部を設けたことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のユニットルームの壁構造。
【請求項4】
前記所定間隔を空けて設置される2枚の壁板を有する前記中仕切り壁部は、
中空構造とした1つの壁パネルによって構成されたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のユニットルームの壁構造。
【請求項5】
前記ユニットルームは、バスとトイレの2部屋から成り、
前記中仕切り壁部を構成する2枚の壁板に水周り用の設備が設置され、
該水周り用設備につながる外部配管が前記2枚の壁板の間の空間を通って、前記開口部からユニット外方へ導かれることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のユニットルームの壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−31479(P2010−31479A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192525(P2008−192525)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】