ユニバーサルデザインパウチ
【課題】ユニバーサルデザインの考え方に基づき、主に、詰め替え用のシャンプーや洗剤、牛乳パック、レトルトや食品用の容器等に用いられるパウチの「開封しやすさ」および「開封箇所や開封方向のわかりやすさ」の向上を目指して、幅広い年代の消費者がスムースにパウチを使用することが可能なユニバーサルデザインに基づいたパウチを提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の発明は、フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分が、パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が略プルタブ形状を形成することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の請求項1記載の発明は、フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分が、パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が略プルタブ形状を形成することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境および使う人(消費者)への配慮を重視したユニバーサルデザインに対応したパウチ(ユニバーサルデザインパウチ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主にレトルト食品や、詰め替え用の洗剤、或いは無菌包装食品、鮮度保持包装食品、医薬品等の内容物を密封包装した、図11に示すような、包装体10(パウチ10)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このパウチ10は、通常、上シール2、左右シール3、下シール4の計4辺に直線状のヒートシール(シール)を施して、略四角形状の外形を有するパウチ10を形成し、前記左右シール3にパウチの開封起点となる切欠き9(ノッチ9)が形成されている。そして、パウチ開封時、図12に示すように、前記ノッチ9を起点に前記上シール2を含むフィルム(切取片Z)を、開封方向(図中点線矢印)に沿って切除することによりパウチ10の開封を行なうものである。
【0004】
しかしながら、このパウチ10は、前記ノッチ9上下部分のフィルムをそれぞれつまんで、フィルムを引き裂きづらいという問題があった。すなわち、ノッチ9上下部分のフィルムは、指先で強固につまむためのシール部分が少なく、フィルムをつまむ手が滑りやすいため力を加えてフィルムを引き裂くことが困難である。また、前記パウチ10の形状は、通常、パウチの4隅Rが同形状を有しているため、パウチ10の開封箇所がわかりづらいという問題もある。このため、高齢者や障害を持つ人にとっては、パウチ10の開封操作自体が困難であった。
【0005】
他方、近年できるだけ多くの人が利用可能であるようデザインすることを念頭に開発されたユニバーサルデザイン商品があり、ユニバーサルデザイン商品の一例としては、安全に配慮された自動ドア、エレベータや、外国人などのために、文字の代わりに絵文字を使っての各種表示を行うものや、シャンプーのボトルに凹凸加工による印をつけ、リンスその他のボトルと区別するものがある。
【0006】
このようにユニバーサルデザインの目的としては、だれでも公平に使えること、使う上で自由度が高いこと、使い方が簡単で、すぐに分かること、必要な情報がすぐに分かること、うっかりミスが危険につながらないこと、身体への負担が少ないこと、利用するための十分な大きさと空間を確保すること、を目的としており、今後、このようなユニバーサルデザインに沿った様々な商品の開発が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開平08−080977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、このようなユニバーサルデザインの考え方に基づき、上記パウチ10の「開封しやすさ」および「開封位置や開封方向のわかりやすさ」の向上を目指し、幅広い年代の消費者が、スムースにパウチ10を使用することが可能なユニバーサルデザインに基づいたパウチ10を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの課題を解決するため、本発明の請求項1記載の発明は、フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分に、前記パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が、略プルタブ形状を形成することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記把持部に、スリット若しくは貫通孔からなる指掛部を形成したことを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記指掛部は、パウチの開封方向を示す形状を有することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記把持部の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部を形成したことを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明の請求項1記載の発明は、フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分に、前記パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が、略プルタブ形状を形成することを特徴とするから、パウチの開封箇所および開封方向を直感的に認識することが可能であるとともに、パウチ開封時、プルタブを引く感覚で、容易にパウチを開封することが可能である。また、パウチの開封時、切取片を切り取り方向へと引く際に、指先がパウチの上シール部分に当接してしまうことなく、スムースにパウチの開封を行なうことが可能である。よって、切取片を側方や上方から持ちパウチの開封操作を行なった場合でも、常にパウチの開封をスムースに行なうことが可能である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、前記把持部に、スリット若しくは貫通孔からなる指掛部を形成したことを特徴とするから、パウチ開封時、指掛部に指先を掛けることにより、フィルムをつまむ指先が滑ることなく、強固にフィルムを引きつつスムースにパウチの開封を行なうことが可能である。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、前記指掛部は、パウチの開封方向を示す形状を有することを特徴とするから、パウチの開封方向を直感的に認識することが可能である。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、前記把持部の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部を形成したことを特徴とするから、パウチを安定して保持することが可能であるとともに、パウチの開封を安定かつスムースに行なうことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のユニバーサルパウチ10(パウチ10)の一例としては、図1に示すように、パウチ10の中央部分に、予め所定の方法により内容物が充填される未シール部分からなる収容部1を有し、該収容部1の外周(上シール2、左右シール3、下シール4)の計4辺にヒートシールが施されて4方シールパウチ10を形成している。このようなパウチ10としては、4方シール形式のパウチに限らず、スタンドパウチや、ガゼット袋やピロー袋など、フィルムの外周をシールしてなるパウチであれば、パウチの種類や形状は限定されるものではない。
【0018】
前記パウチ10の左シール3の一端部分には、パウチ開封時に前記上シール2を含む切取片Zを開封方向(水平方向)へと切除する際の開封起点となる切欠き9(ノッチ9)が形成され、該ノッチ9の上方には、前記上シール2より上方へと突出したシール形状を有する、幅広なシールからなる把持部8が形成されている。このため把持部8の全体形状が略プルタブ形状Pを形成している。
【0019】
このように、パウチ10の開封部分のフォルムを略プルタブ形状Pとすることにより、後述する、パウチ10の開封箇所のみならず開封方向、さらにはパウチ10の開封方法を直感的に認識可能な効果がある。また、前記把持部8は、前記上シール2よりも上方へと突出したプルタブ形状Pを有しており、このため、後述する、パウチ10の開封時において、切取片Zを切り取り方向へと引く際に、切取片Zをつまんだ指先Yがパウチの上シール2に当接することなく、スムースに切取片Zを開封方向へと引いてパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0020】
そして、プルタブ形状Pの前記把持部8には、パウチ10の開封方向を示す略矢印形状の貫通孔Kからなる指掛部5が形成されており、該指掛部5に指を掛けることにより、パウチ開封時において、切取片Zをつまむ指先がすべることなく、強固かつ確実に切取片Zを切除することが可能である。また、前記把持部8の下方には、幅広なシールからなるパウチ保持部6が形成されており、後述する、パウチ開封時や内容物の取り出し時において、パウチ10を安定して保持することが可能な効果がある。
【0021】
以下に、本発明のユニバーサルデザインパウチ10(パウチ10)の構成およびパウチ10の開封操作について説明する。
本発明のユニバーサルデザインパウチ10は、図2に示すように、パウチ10の外周に、上シール2、左右シール3、下シール4からなるヒートシールが施され、前記左シール3の上方には、パウチ10の開封起点となる切欠き9からなるノッチ9が形成されている。そして、パウチ開封時、前記ノッチ9を起点に開封方向(図中点線F)へとパウチ10を引き裂くことにより、前記上シール2を含むフィルムからなる切取片Zを切除して、パウチ10の開封を行なうものである。
【0022】
特に、前記ノッチ9上方には、前記上シール2より上方へと突出Tした幅広なシールからなる把持部8が形成されており、このため、把持部8の全体形状が略プルタブ形状P(図中点線枠P)をなしている。そして、前記把持部8には、貫通孔Kからなる指掛部5が形成されており、該指掛部5の形状は、パウチ10の開封方向を示す略矢印形状を有している。
【0023】
よって、パウチ10の開封箇所のみならず開封方向が一目で認識可能であるとともに、図3に示すように、把持部8に形成された前記指掛部5に指先を挿入しつつ、図4に示すように、パウチ10の開封操作を、プルタブPを引くような感覚で行なうことが可能である。また、前記把持部8のシール形状は、前記上シール2よりも上方へと突出したシール形状を有しており、このため、パウチ開封時、切取片Zをつまんだ指先Yがパウチ10の上シール2に当接することなく、切取片Zを切り取り方向へとスムースに引きつつパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0024】
特に、前記把持部8に形成された前記貫通孔Kへと、指先を掛けつつ把持部8のフィルムをつまむことにより、図5に示すように、前記貫通孔Kの外側フィルムが折れ曲がるとともに、指先にフィットした湾曲面Wを形成することとなる。よって、貫通孔Kに指先を掛けた状態で、力を加えて前記切取片Zを引くことが可能であり、フィルムをつまむ指が滑ることなく、より少ない力でもって確実にパウチ10の開封を行なうことが可能である。また、把持部8の下方に形成された幅広なシールからなるパウチ保持部6をつまむことにより、パウチ10を安定して保持しつつスムースにパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0025】
以上のように、本発明のユニバーサルデザインパウチ10は、該パウチ10の開封部分が上シール2より上方へと突出したシール形状からなる把持部8を形成する簡単な構成により、パウチ開封部分の把持部形状8が略プルタブ形状Pを形成するため、パウチ10の開封箇所を容易に認識することが可能であるとともに、幅広な把持部をしっかりつまんでパウチ10を開封することが可能である。
【0026】
また、前記把持部8に、スリットS若しくは貫通孔Kからなる指掛部5を形成する簡単な構成により、パウチ開封時、切取片Zをつまむ指先が滑ることなく、指掛部5に指先を掛けつつ切取片Zを強固に引いてパウチ10の開封操作を確実に行なうことが可能である。
【0027】
特に、前記指掛部5の形状が、パウチ10の開封方向を示す形状(矢印形状)を有することにより、パウチ10の開封方向を一目で認識することが可能であるとともに、さらには、前記把持部8の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部6を形成することにより、パウチ10の開封をより安定して行なうことが可能であるとともに、パウチの内容物を注ぎやすくなる効果がある。
【0028】
前記把持部8に形成された前記指掛部5は、前記貫通孔Kのみならず、図6に示すように、スリットSであってもよく、この場合、把持部8を指先でつまむとともに、図7に示すように、スリットSに沿って把持部8が折れ曲がり、指先にフィットした湾曲面Wを形成することとなる。よって、把持部8の湾曲面Wを指先でつまんだ状態で、力を加えて前記切取片Zを引くことが可能であり、フィルムをつまむ指が滑ることなく、少ない力でもって確実にパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0029】
また、前記スリットSは、パウチの開封方向へと凸形状を有する略弓形状とすることにより、前記指掛部5を簡単に形成することが可能であるとともに、パウチ10の開封方向を直感的に認識することが可能な効果がある。
【0030】
他方、前記把持部8に、前記指掛部5を必ずしも形成する必要はなく、例えば図8に示すように、幅広なシールからなるプルタブ形状Pの把持部8と、該把持部8下方のパウチ保持部6とをつまんで、パウチ10を開封しても、図9に示すように、幅広なシール部分からなる把持部8およびパウチ保持部6をしっかりつまんで、安定かつ容易にパウチ10を開封することが可能である。
【0031】
また、前記把持部8に前記指掛部5を形成した場合、図10に示すように、パウチ10をボイル等の熱湯調理をする際に、熱したパウチ10に直接手で触れることなく、前記指掛部5に箸やスプーンの柄等の棒状部材Bを挿入して、熱したパウチ10をぶら下げることが可能である。よって、安全かつスムースにパウチ10を扱うことが可能であり、パウチ10の使用性が向上する効果がある。
【0032】
本発明のユニバーサルデザインパウチ10の好適な用途の一例としては、例えば、詰め替え用のシャンプーや洗剤、牛乳パック、レトルトや食品用の容器、歯磨き粉チューブ、さらには、紙にアルミを蒸着したシップの包装材など、パウチ10の「開封しやすさ」や「開封箇所や開封方向のわかりやすさ」を向上することが可能な容器形態であれば、パウチ10の形態や形状は特に限定されるものではない。
【0033】
また、本発明のパウチ10に用いるフィルムは、主にプラスチックフィルムを主体とする積層フィルムが用いられ、例えば、液体を含む各種食品用パウチに用いられている従来公知の積層フィルムを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0034】
前記積層フィルムの構成としては、充填される流動食の種類や充填後の加圧加熱殺菌時に加えられる加熱条件などによって適宜選定することができ、好適に用いられる前記積層フィルムの一例としては、下記に示す構成の積層フィルムが挙げられる。
(1) PETフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(2)PETフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(3)PETフィルム/接着剤/EVOHフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(4)PETフィルム/接着剤/一軸延伸PPフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(5)PETフィルム/接着剤/(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
【0035】
上記構成において、PETフィルムは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ONフィルムは2軸延伸ナイロンフィルム、PPフィルムはポリプロピレンフィルム、CPPフィルムは無延伸ポリプロピレンフィルム、EVOHフィルムはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルムはシリカまたはアルミナを蒸着した2軸延伸ナイロンフィルムを指すものである。
【0036】
前記PETフィルムやONフィルムは、基材フィルムとして作用し、パウチに機械的強度のほか耐熱性、印刷適性などを付与する。また、中間層のアルミニウム箔、EVOHフィルム、(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルムは、パウチにガスバリヤー性を付与することが可能である。一軸延伸PPフィルムは、本発明のパウチ10では、その延伸方向がパウチを開封する方向と一致するように積層することにより、切取片Zのフィルムを切除する際、開封方向に沿って容易にフィルムを切り取ることが可能である。
【0037】
また、最内層の前記CPPフィルムは、ヒートシール用のシーラント層として作用すると共に、耐熱性、低臭性に優れるので、パウチごと加圧加熱殺菌される流動食用のパウチには好ましく用いられる。尚、上述した各フィルム材と同様な作用効果を有するものであれば、前記の積層構成に限定されるものではなく適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のパウチの一例を示す図である。
【図2】本発明のパウチを示す正面図である。
【図3】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図4】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図5】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図6】本発明のパウチの別の例を示す図である。
【図7】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図8】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図9】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図10】本発明のパウチの使用時の一例を示す説明図である。
【図11】従来のパウチを示す図である。
【図12】従来のパウチの開封時を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 収容部
2 上シール
3 左右シール
4 下シール
5 指掛部
6 パウチ保持部
8 把持部
9 ノッチ
10 ユニバーサルデザインパウチ(パウチ)
S スリット
K 貫通孔
Z 切取片
P プルタブ形状(プルタブ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境および使う人(消費者)への配慮を重視したユニバーサルデザインに対応したパウチ(ユニバーサルデザインパウチ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主にレトルト食品や、詰め替え用の洗剤、或いは無菌包装食品、鮮度保持包装食品、医薬品等の内容物を密封包装した、図11に示すような、包装体10(パウチ10)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このパウチ10は、通常、上シール2、左右シール3、下シール4の計4辺に直線状のヒートシール(シール)を施して、略四角形状の外形を有するパウチ10を形成し、前記左右シール3にパウチの開封起点となる切欠き9(ノッチ9)が形成されている。そして、パウチ開封時、図12に示すように、前記ノッチ9を起点に前記上シール2を含むフィルム(切取片Z)を、開封方向(図中点線矢印)に沿って切除することによりパウチ10の開封を行なうものである。
【0004】
しかしながら、このパウチ10は、前記ノッチ9上下部分のフィルムをそれぞれつまんで、フィルムを引き裂きづらいという問題があった。すなわち、ノッチ9上下部分のフィルムは、指先で強固につまむためのシール部分が少なく、フィルムをつまむ手が滑りやすいため力を加えてフィルムを引き裂くことが困難である。また、前記パウチ10の形状は、通常、パウチの4隅Rが同形状を有しているため、パウチ10の開封箇所がわかりづらいという問題もある。このため、高齢者や障害を持つ人にとっては、パウチ10の開封操作自体が困難であった。
【0005】
他方、近年できるだけ多くの人が利用可能であるようデザインすることを念頭に開発されたユニバーサルデザイン商品があり、ユニバーサルデザイン商品の一例としては、安全に配慮された自動ドア、エレベータや、外国人などのために、文字の代わりに絵文字を使っての各種表示を行うものや、シャンプーのボトルに凹凸加工による印をつけ、リンスその他のボトルと区別するものがある。
【0006】
このようにユニバーサルデザインの目的としては、だれでも公平に使えること、使う上で自由度が高いこと、使い方が簡単で、すぐに分かること、必要な情報がすぐに分かること、うっかりミスが危険につながらないこと、身体への負担が少ないこと、利用するための十分な大きさと空間を確保すること、を目的としており、今後、このようなユニバーサルデザインに沿った様々な商品の開発が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開平08−080977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、このようなユニバーサルデザインの考え方に基づき、上記パウチ10の「開封しやすさ」および「開封位置や開封方向のわかりやすさ」の向上を目指し、幅広い年代の消費者が、スムースにパウチ10を使用することが可能なユニバーサルデザインに基づいたパウチ10を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの課題を解決するため、本発明の請求項1記載の発明は、フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分に、前記パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が、略プルタブ形状を形成することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記把持部に、スリット若しくは貫通孔からなる指掛部を形成したことを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記指掛部は、パウチの開封方向を示す形状を有することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記把持部の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部を形成したことを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明の請求項1記載の発明は、フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分に、前記パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が、略プルタブ形状を形成することを特徴とするから、パウチの開封箇所および開封方向を直感的に認識することが可能であるとともに、パウチ開封時、プルタブを引く感覚で、容易にパウチを開封することが可能である。また、パウチの開封時、切取片を切り取り方向へと引く際に、指先がパウチの上シール部分に当接してしまうことなく、スムースにパウチの開封を行なうことが可能である。よって、切取片を側方や上方から持ちパウチの開封操作を行なった場合でも、常にパウチの開封をスムースに行なうことが可能である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、前記把持部に、スリット若しくは貫通孔からなる指掛部を形成したことを特徴とするから、パウチ開封時、指掛部に指先を掛けることにより、フィルムをつまむ指先が滑ることなく、強固にフィルムを引きつつスムースにパウチの開封を行なうことが可能である。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、前記指掛部は、パウチの開封方向を示す形状を有することを特徴とするから、パウチの開封方向を直感的に認識することが可能である。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、前記把持部の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部を形成したことを特徴とするから、パウチを安定して保持することが可能であるとともに、パウチの開封を安定かつスムースに行なうことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のユニバーサルパウチ10(パウチ10)の一例としては、図1に示すように、パウチ10の中央部分に、予め所定の方法により内容物が充填される未シール部分からなる収容部1を有し、該収容部1の外周(上シール2、左右シール3、下シール4)の計4辺にヒートシールが施されて4方シールパウチ10を形成している。このようなパウチ10としては、4方シール形式のパウチに限らず、スタンドパウチや、ガゼット袋やピロー袋など、フィルムの外周をシールしてなるパウチであれば、パウチの種類や形状は限定されるものではない。
【0018】
前記パウチ10の左シール3の一端部分には、パウチ開封時に前記上シール2を含む切取片Zを開封方向(水平方向)へと切除する際の開封起点となる切欠き9(ノッチ9)が形成され、該ノッチ9の上方には、前記上シール2より上方へと突出したシール形状を有する、幅広なシールからなる把持部8が形成されている。このため把持部8の全体形状が略プルタブ形状Pを形成している。
【0019】
このように、パウチ10の開封部分のフォルムを略プルタブ形状Pとすることにより、後述する、パウチ10の開封箇所のみならず開封方向、さらにはパウチ10の開封方法を直感的に認識可能な効果がある。また、前記把持部8は、前記上シール2よりも上方へと突出したプルタブ形状Pを有しており、このため、後述する、パウチ10の開封時において、切取片Zを切り取り方向へと引く際に、切取片Zをつまんだ指先Yがパウチの上シール2に当接することなく、スムースに切取片Zを開封方向へと引いてパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0020】
そして、プルタブ形状Pの前記把持部8には、パウチ10の開封方向を示す略矢印形状の貫通孔Kからなる指掛部5が形成されており、該指掛部5に指を掛けることにより、パウチ開封時において、切取片Zをつまむ指先がすべることなく、強固かつ確実に切取片Zを切除することが可能である。また、前記把持部8の下方には、幅広なシールからなるパウチ保持部6が形成されており、後述する、パウチ開封時や内容物の取り出し時において、パウチ10を安定して保持することが可能な効果がある。
【0021】
以下に、本発明のユニバーサルデザインパウチ10(パウチ10)の構成およびパウチ10の開封操作について説明する。
本発明のユニバーサルデザインパウチ10は、図2に示すように、パウチ10の外周に、上シール2、左右シール3、下シール4からなるヒートシールが施され、前記左シール3の上方には、パウチ10の開封起点となる切欠き9からなるノッチ9が形成されている。そして、パウチ開封時、前記ノッチ9を起点に開封方向(図中点線F)へとパウチ10を引き裂くことにより、前記上シール2を含むフィルムからなる切取片Zを切除して、パウチ10の開封を行なうものである。
【0022】
特に、前記ノッチ9上方には、前記上シール2より上方へと突出Tした幅広なシールからなる把持部8が形成されており、このため、把持部8の全体形状が略プルタブ形状P(図中点線枠P)をなしている。そして、前記把持部8には、貫通孔Kからなる指掛部5が形成されており、該指掛部5の形状は、パウチ10の開封方向を示す略矢印形状を有している。
【0023】
よって、パウチ10の開封箇所のみならず開封方向が一目で認識可能であるとともに、図3に示すように、把持部8に形成された前記指掛部5に指先を挿入しつつ、図4に示すように、パウチ10の開封操作を、プルタブPを引くような感覚で行なうことが可能である。また、前記把持部8のシール形状は、前記上シール2よりも上方へと突出したシール形状を有しており、このため、パウチ開封時、切取片Zをつまんだ指先Yがパウチ10の上シール2に当接することなく、切取片Zを切り取り方向へとスムースに引きつつパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0024】
特に、前記把持部8に形成された前記貫通孔Kへと、指先を掛けつつ把持部8のフィルムをつまむことにより、図5に示すように、前記貫通孔Kの外側フィルムが折れ曲がるとともに、指先にフィットした湾曲面Wを形成することとなる。よって、貫通孔Kに指先を掛けた状態で、力を加えて前記切取片Zを引くことが可能であり、フィルムをつまむ指が滑ることなく、より少ない力でもって確実にパウチ10の開封を行なうことが可能である。また、把持部8の下方に形成された幅広なシールからなるパウチ保持部6をつまむことにより、パウチ10を安定して保持しつつスムースにパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0025】
以上のように、本発明のユニバーサルデザインパウチ10は、該パウチ10の開封部分が上シール2より上方へと突出したシール形状からなる把持部8を形成する簡単な構成により、パウチ開封部分の把持部形状8が略プルタブ形状Pを形成するため、パウチ10の開封箇所を容易に認識することが可能であるとともに、幅広な把持部をしっかりつまんでパウチ10を開封することが可能である。
【0026】
また、前記把持部8に、スリットS若しくは貫通孔Kからなる指掛部5を形成する簡単な構成により、パウチ開封時、切取片Zをつまむ指先が滑ることなく、指掛部5に指先を掛けつつ切取片Zを強固に引いてパウチ10の開封操作を確実に行なうことが可能である。
【0027】
特に、前記指掛部5の形状が、パウチ10の開封方向を示す形状(矢印形状)を有することにより、パウチ10の開封方向を一目で認識することが可能であるとともに、さらには、前記把持部8の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部6を形成することにより、パウチ10の開封をより安定して行なうことが可能であるとともに、パウチの内容物を注ぎやすくなる効果がある。
【0028】
前記把持部8に形成された前記指掛部5は、前記貫通孔Kのみならず、図6に示すように、スリットSであってもよく、この場合、把持部8を指先でつまむとともに、図7に示すように、スリットSに沿って把持部8が折れ曲がり、指先にフィットした湾曲面Wを形成することとなる。よって、把持部8の湾曲面Wを指先でつまんだ状態で、力を加えて前記切取片Zを引くことが可能であり、フィルムをつまむ指が滑ることなく、少ない力でもって確実にパウチ10の開封を行なうことが可能である。
【0029】
また、前記スリットSは、パウチの開封方向へと凸形状を有する略弓形状とすることにより、前記指掛部5を簡単に形成することが可能であるとともに、パウチ10の開封方向を直感的に認識することが可能な効果がある。
【0030】
他方、前記把持部8に、前記指掛部5を必ずしも形成する必要はなく、例えば図8に示すように、幅広なシールからなるプルタブ形状Pの把持部8と、該把持部8下方のパウチ保持部6とをつまんで、パウチ10を開封しても、図9に示すように、幅広なシール部分からなる把持部8およびパウチ保持部6をしっかりつまんで、安定かつ容易にパウチ10を開封することが可能である。
【0031】
また、前記把持部8に前記指掛部5を形成した場合、図10に示すように、パウチ10をボイル等の熱湯調理をする際に、熱したパウチ10に直接手で触れることなく、前記指掛部5に箸やスプーンの柄等の棒状部材Bを挿入して、熱したパウチ10をぶら下げることが可能である。よって、安全かつスムースにパウチ10を扱うことが可能であり、パウチ10の使用性が向上する効果がある。
【0032】
本発明のユニバーサルデザインパウチ10の好適な用途の一例としては、例えば、詰め替え用のシャンプーや洗剤、牛乳パック、レトルトや食品用の容器、歯磨き粉チューブ、さらには、紙にアルミを蒸着したシップの包装材など、パウチ10の「開封しやすさ」や「開封箇所や開封方向のわかりやすさ」を向上することが可能な容器形態であれば、パウチ10の形態や形状は特に限定されるものではない。
【0033】
また、本発明のパウチ10に用いるフィルムは、主にプラスチックフィルムを主体とする積層フィルムが用いられ、例えば、液体を含む各種食品用パウチに用いられている従来公知の積層フィルムを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0034】
前記積層フィルムの構成としては、充填される流動食の種類や充填後の加圧加熱殺菌時に加えられる加熱条件などによって適宜選定することができ、好適に用いられる前記積層フィルムの一例としては、下記に示す構成の積層フィルムが挙げられる。
(1) PETフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(2)PETフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(3)PETフィルム/接着剤/EVOHフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(4)PETフィルム/接着剤/一軸延伸PPフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(5)PETフィルム/接着剤/(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
【0035】
上記構成において、PETフィルムは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ONフィルムは2軸延伸ナイロンフィルム、PPフィルムはポリプロピレンフィルム、CPPフィルムは無延伸ポリプロピレンフィルム、EVOHフィルムはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルムはシリカまたはアルミナを蒸着した2軸延伸ナイロンフィルムを指すものである。
【0036】
前記PETフィルムやONフィルムは、基材フィルムとして作用し、パウチに機械的強度のほか耐熱性、印刷適性などを付与する。また、中間層のアルミニウム箔、EVOHフィルム、(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルムは、パウチにガスバリヤー性を付与することが可能である。一軸延伸PPフィルムは、本発明のパウチ10では、その延伸方向がパウチを開封する方向と一致するように積層することにより、切取片Zのフィルムを切除する際、開封方向に沿って容易にフィルムを切り取ることが可能である。
【0037】
また、最内層の前記CPPフィルムは、ヒートシール用のシーラント層として作用すると共に、耐熱性、低臭性に優れるので、パウチごと加圧加熱殺菌される流動食用のパウチには好ましく用いられる。尚、上述した各フィルム材と同様な作用効果を有するものであれば、前記の積層構成に限定されるものではなく適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のパウチの一例を示す図である。
【図2】本発明のパウチを示す正面図である。
【図3】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図4】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図5】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図6】本発明のパウチの別の例を示す図である。
【図7】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図8】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図9】本発明のパウチの開封時を示す説明図である。
【図10】本発明のパウチの使用時の一例を示す説明図である。
【図11】従来のパウチを示す図である。
【図12】従来のパウチの開封時を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 収容部
2 上シール
3 左右シール
4 下シール
5 指掛部
6 パウチ保持部
8 把持部
9 ノッチ
10 ユニバーサルデザインパウチ(パウチ)
S スリット
K 貫通孔
Z 切取片
P プルタブ形状(プルタブ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分に、前記パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が、略プルタブ形状を形成することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチ。
【請求項2】
前記把持部に、スリット若しくは貫通孔からなる指掛部を形成したことを特徴とする、請求項1記載のユニバーサルデザインパウチ。
【請求項3】
前記指掛部は、パウチの開封方向を示す形状を有することを特徴とする、請求項1乃至2記載のユニバーサルデザインパウチ。
【請求項4】
前記把持部の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部を形成したことを特徴とする、請求項1乃至3記載のユニバーサルデザインパウチ。
【請求項1】
フィルム外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、前記パウチの開封部分に、前記パウチの上シールより上方へと突出したシール形状からなる把持部を形成することにより、前記開封部分の把持部形状が、略プルタブ形状を形成することを特徴とする、ユニバーサルデザインパウチ。
【請求項2】
前記把持部に、スリット若しくは貫通孔からなる指掛部を形成したことを特徴とする、請求項1記載のユニバーサルデザインパウチ。
【請求項3】
前記指掛部は、パウチの開封方向を示す形状を有することを特徴とする、請求項1乃至2記載のユニバーサルデザインパウチ。
【請求項4】
前記把持部の下方に幅広なシールからなるパウチ保持部を形成したことを特徴とする、請求項1乃至3記載のユニバーサルデザインパウチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−120427(P2008−120427A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307499(P2006−307499)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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