説明

ユーザが活性化できるスイッチを具備する銀行カード

【課題】 ユーザの意図的な活性化にのみ応答するスイッチを有する銀行カードの提供。
【解決手段】 本発明の電子カードは、電子ユニットと、電源と、スイッチと、アプリケーションと、前記スイッチの活性化を検出する検出手段とを有する。前記アプリケーションは、前記電子ユニット内に組み込まれている。前記検出手段は、前記スイッチの活性化信号が、所定のパルスに応答するか又は所定の一連のパルスに応答するか、を決定する。前記所定のパルスの長さは、所定の時間間隔内にあり、前記所定の一連のパルスは、所定の時間プロファイルのデジタル信号を規定し、前記所定の時間プロファイルのパラメータは、所定の時間範囲内に含まれる値を有し、前記アプリケーションは、前記検出手段が前記所定のパルスまたは前記所定の一連のパルスを検出した時に、活性化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが活性化できるスイッチを具備する銀行カードに関する。
【背景技術】
【0002】
このような銀行カードは、一般的に、カードに組み込まれた電子回路又はデジタル表示を活性化する機能、特にカード内に組み込まれたプログラムを開始する機能を有する。このような銀行カードは公知である。幾つかの応用例に於いては、一般的な場合或いは特殊な場合を組み合わせることもできる。カードに組み込まれた電子回路への電力供給を活性化することにより、安全を確保した身元確認(ID)プログラムを自動的にスタートさせ、これにより、ある取引特に銀行での取引を実行できる。
【0003】
銀行カードは、特許文献1で公知である。この文献に開示された銀行カードは、カードに設けられた一種のプッシュ・ボタン(即ち変形可能な領域を押すことにより活性化されるスイッチ)を有する。その結果、カードのこの領域(プッシュ・ボタン)に圧力が加わると、特定の安全を確保した身元確認(ID)プログラムが動き出す。この銀行カードは、更に、様々な個人識別番号(PINコード)を表示するデジタル表示装置を有する。この銀行カードは、電子ユニットと電源とを有する。この電源は、カードの表面に設けられた太陽電池を具備する。この種のカードは、様々なサービスで用いられる。例えば公衆電話から電話をする場合、インターネットからファイルをダウンロードする場合、銀行口座或いは郵便口座へのアクセス、料金の支払い機能を実行する場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5627355号明細書
【0005】
特許文献1のIDプログラムはカード内にPINのリストを記憶している。これ等のPINコードは、クライアントに唯一無二のものであり、同一のリストは銀行のサーバーにも記憶されている。カードがスイッチにより活性化される毎に、新たな個人コードがリストの中から選択され表示される。この選択は、予め設定したリストから次の未使用コードを取り出すことである。ユーザは、機械即ちこのコンピュータにこのコードを入力すると、コンピュータはそれをサーバーに送る。サーバーは、そのコードがそのクライアントのリスト内の次の未使用コードであるか否かを、チェックする。これはワンタイム・パスワード(one time passwords:OTP:即ち1回限りのパスワード)として公知である。カードのリスト内の未使用コードの位置とサーバーのリスト内の未使用コードの位置との間で同期を維持することは、明らかに重要である。カードのリスト内のコードをサーバーに送ることなく使用した場合、特にカードが偶発的に活性化された場合、サーバーとの次の取引の間送信されるコードは、サーバーのリスト内の次の未使用コードと一致しない。
【0006】
特許文献1は、この問題を一部解決する方法を開示する。それは、同期の喪失を検出するために、サーバーのリスト内のコードシーケンスとの比較により、2つのリスト内の一致を再確立する方法である。この方法は、短いシーケンスに、特に安全上の理由から、限定されている。複数のコードがカード内で消費される場合には、システムは、クライアントにより与えられたコードを、もはや受け入れることはできない。一致が常に更新されている場合でも、未使用コードは消費され、カード内に登録されているリストに対し可能な取引はわずかしかない。かしてカードは、直ぐに使えなくなってしまう。更にこの問題に関連する別の欠点は、カードの偶発的な活性化は、カードの電力消費の無駄になる。
【0007】
一般的に、この種のカードのスイッチの最初の活性化は、アプリケーションの初期化である。次に新たなサイクルが、スイッチの新たな活性化により開始される。スイッチの偶発的な活性化に関連する問題、即ち安全を確保した身元確認(ID)プログラムの活性化につながる問題は、次のような場合にも発生する。即ち、カードユーザが、カードを財布或いはズボンのポケットに入れたまま椅子に座った時に不用意にカードのスイッチを押してしまう場合のみならず、カードに圧力が加わる製造段階特に外側の層がラミネーティング・ステップ或いはプリンティング・ステップで形成される場合である。
かくして、クライアント(カードユーザ)が、新たなカードを受け取っても、そのカードは、ある数の個人識別番号を既に消費してしまっている。この消費数が、アプリケーションを管理するシステムにより与えられる数よりも大きい場合には、クライアントは、欠陥カードを受け取ったことになる。このような状況は、サービス・サプライヤに対しは致命的であり、クライアントに対しても不都合となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ユーザが活性化できるスイッチを具備し、従来の問題を解決する電子カードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子カードは、電子ユニットと、電源と、スイッチと、アプリケーションと、前記スイッチの活性化を検出する手段とを有する。前記スイッチは、前記電子カードのユーザにより活性化される。前記アプリケーションは、前記電子ユニット内に組み込まれている。前記検出手段は、前記スイッチの活性化信号が、所定のパルスに応答するか又は所定の一連のパルスに応答するか、を決定する。前記所定のパルスの長さは、所定の時間間隔内にあり、前記所定の一連のパルスは、所定の時間プロファイルのデジタル信号を規定し、前記所定の時間プロファイルのパラメータは、所定の時間範囲内に含まれる値を有し、前記アプリケーションは、前記検出手段が前記所定のパルスまたは前記所定の一連のパルスを検出した時に、活性化される或いはその活性化が有効にされる。
【0010】
本発明によれば、ユーザが活性化したスイッチの信号の所定の時間パラメータをチェックして、アプリケーションの実行またはその実行を有効にするサイクルを保障する。この手順は、更にカードの電力消費をできるだけ押さえる為に、電子ユニットの部品に電力を与えることにも、ディスプレイに電力を与えることにも、適用される。
スタンバイ回路にのみ常時電流を流しておき、このスタンバイ回路が、スイッチからの最初の活性化信号を検出すると、スイッチの最初の活性化は、このカードが非活性モードに入った後、電子ユニット全体の内の一部の部品に電力を供給するよう活性化する。それに電力が供給されると、スイッチからの活性化信号を検出し処理して、それが前記アプリケーションの活性化信号に対応するか否かを決定する。
【0011】
本発明の特徴により、スイッチ(プッシュボタン)に長時間かかる圧力(特に製造時のラミネーティング・ステップの間における圧力)がアプリケーションを活性化するのを、防止できる。
一連のパルスの場合には、スイッチは、インテリジェントであり、生成されたデータ信号の時間プロファイルが、所定の時間範囲内に含まれる値を有するパラメータを具備する時間プロファイルに一致しない時には、スイッチの長時間の或いは短時間の活性化は、無視(除外)される。パラメータを選択することにより、従来のユーザの通常の動作或いは挙動に関連する意図しない活性化信号を除外し、アプリケーションは、ユーザが意図的に活性化した場合のみ、開始するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電子カードの構成を表す図。
【図2】本発明の第一実施例による電子カードに組み込まれたアプリケーションの活性化信号の時間プロファイル(時間経過)を表す図。
【図3】本発明の第二実施例による電子カードに組み込まれたアプリケーションの活性化信号の時間プロファイル(時間経過)を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に於いて、電子カード2は、デジタル表示装置4と電子ユニット6とバッテリ10とスイッチ12とを有する。このスイッチ12は電子カードのユーザにより活性化される。スイッチ12は、カード内に一体に組み込まれ、弾性変形可能な領域即ちプッシュ・ボタン14を有する。圧力がプッシュ・ボタン14にかかると、スイッチ12が活性化される。このスイッチ12の活性化は活性化検出手段により検出される。この活性化検出手段は、電子回路に組み込まれたアプリケーションを制御する制御手段に関連付けられている。
この検出手段と制御手段は、スイッチ14の活性化の開始を検出した時に、活性化され、少なくとも検出手段に電力が与えられる。図1の実施例に於いて、電子ユニット6はマイクロプロセッサーで構成される。このマイクロプロセッサー6が、前記の検出手段と制御手段とを構成する。この検出手段と制御手段専用の電子回路を具備した他の実施例も本発明の範囲内に入る。
【0014】
特に、アプリケーションは、安全を確保したカードユーザの身元確認(ID)プログラムであり、このプログラムは、サービスサプライヤーのサーバーに接続されているシステムに関連づけられている。プログラムは、カードのメモリー内の個人専用のワンタイム・パスワードを生成する或いは読み出す。
【0015】
この検出手段は、スイッチ12の活性化を、特にその包囲体を通して、検出し、その活性化が、所定のパルス(その長さが所定の時間範囲内に含まれる)に対応するか、或いは所定の一連のパルス(時間プロファイルを有するデータ信号を規定する)に対応するかを、決定する。所定のパラメータが所定の時間範囲内に含まれる値を有する。所定のパルスの対応する場合、アプリケーションは、活性化されるか、その活性化が制御手段により有効にされる。特にアプリケーションは、次の取引に使用される個人IDコード(personal identification code)を表示する。
【0016】
アプリケーションは、このディスプレイを実行する(これは、ユーザからの有効信号に対応する信号を検出した後に行われる)か、或いは、アプリケーションを開始する(これは、スイッチの活性化が開始されその後ユーザにコードを表示した後行われる)。このコードは、前記の有効信号が最終的に検出された場合のみ有効である即ち使用できるとみなされる。前記の有効信号が検出されないと、表示手段は、すぐに非活性化されて、表示されたコードは使用されていないとみなされる。この表示手段は、前記のアプリケーションの活性化と同時に、活性化される。そのディスプレイ手段は、ある時間活性状態におかれ、その間、ユーザは、再度非活性化される前に、カードに関連するシステムで表示されたコードを入力できる。
【0017】
本発明の第一実施例によれば、一連のパルスは、電子回路を活性化するのに特に電子回路内のアプリケーションを活性化するのに必要であるが、ある時間間隔Tで発生する複数のパルスからなる。図2の示す例に於いては、3つのパルスP1,P2,P3が発生する。他の実施例に於いては、検出された期間は、この3つのパルスの間の時間間隔である。この時間間隔は、所定の持続時間以下でなければならない。
【0018】
他の実施例によれば、可変長のパルスも用いることができる。図3に示す実施例に於いては、長いパルスの後に短いパルスが続く。様々なパラメータが、関連する電子回路のアプリケーションの活性化を発生させる一連のパルスを特徴づける。例として4個のパラメータが、2個のパルスからなる一連のパルス列を規定する。この実施例は、第1パルスP4の長さは、T1とT2の間にある。2つのパルスP4,P5の間の時間間隔は、T3未満でなければならない。第2パルスP5の長さは、時間間隔T4よりも短くなければならない。2つのパルスP4,P5の間の間隔は、ある時間間隔よりも大きくなければならない。これは、ユーザが、プッシュ・ボタンに圧力を2回連続的に加える間の最小時間とその間に圧力を開放することを、考慮に入れて決められる。
1個のパルスの場合は、最小と最大の時間間隔がそのパルスに対し規定できる。
【0019】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0020】
2 電子カード
4 デジタル表示装置
6 電子ユニット
10 バッテリ
12 スイッチ
14 プッシュ・ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ユニット(6)と、電源(10)と、スイッチ(12)と、アプリケーションと、前記スイッチ(12)の活性化を検出する検出手段とを有する電子カード(2)に於いて、
前記スイッチ(12)は、前記電子カード(2)のユーザにより活性化され、
前記アプリケーションは、前記電子ユニット(6)内に組み込まれており、
前記検出手段は、前記スイッチ(12)の活性化信号が、所定のパルス(P1、P2、P3)に応答するか又は所定の一連のパルス(P4、P5)に応答するか、を決定し、
前記所定のパルスの長さは、所定の時間間隔(T)内にあり、
前記所定の一連のパルスは、所定の時間プロファイルのデジタル信号を規定し、
前記所定の時間プロファイルのパラメータは、所定の時間範囲(T2;T3;T4)内に含まれる値を有し、
前記アプリケーションは、前記検出手段が前記所定のパルスまたは前記所定の一連のパルスを検出した時に、活性化される或いはその活性化が有効化される
ことを特徴とする電子カード。
【請求項2】
前記スイッチ(12)は、前記電子カード(2)のプッシュ・ボタン(14)に関連する
ことを特徴とする請求項1記載の電子カード。
【請求項3】
デジタル表示装置(4)を更に有し、
前記アプリケーションは、個人のワンタイム・パスワードを用いる個人識別プログラムであり、
前記ワンタイム・パスワードは、前記デジタル表示装置(4)に表示される
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電子カード。
【請求項4】
前記パラメータは、前記所定の一連のパルスの内の1つのパルスの最大の時間間隔(T;T2;T3)に対応する
ことを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の電子カード。
【請求項5】
前記所定のパルスは、所定の長さの時間間隔(T)で、発生する
ことを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の電子カード。
【請求項6】
前記所定の一連のパルスの内の2つの連続するパルスの間の時間間隔は、所定の時間間隔(T3)以下である
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の電子カード。
【請求項7】
前記前記所定の一連のパルスの内の2つの連続するパルスの間の時間間隔は、所定の時間間隔(T3)以上である
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の電子カード。
【請求項8】
前記所定の一連のパルスは、異なる長さの複数のパルス(P4,P5)を含む
ことを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載の電子カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−523600(P2012−523600A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503959(P2012−503959)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054101
【国際公開番号】WO2010/115752
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511242214)ナグライド セキュリティ エス.エイ. (2)
【Fターム(参考)】