ライニング処理配管の劣化診断方法
【課題】ライニング層の欠陥を精度良く検出することができると共に、欠陥の位置を容易に検出することができるライニング処理配管の劣化診断方法を提供する。
【解決手段】配管11内に導電性液体16を満たし、該導電性液体16中に配置した内部電極18と配管11に設けた外部電極19との間に交流電圧を印加し、内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定し、該インピーダンスの変化によって欠陥としてのピンホール17を検出する方法である。具体的には、配管11の所定位置に外部電極19を固定すると共に、内部電極18の位置を変化させて内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定する。そして、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定する。
【解決手段】配管11内に導電性液体16を満たし、該導電性液体16中に配置した内部電極18と配管11に設けた外部電極19との間に交流電圧を印加し、内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定し、該インピーダンスの変化によって欠陥としてのピンホール17を検出する方法である。具体的には、配管11の所定位置に外部電極19を固定すると共に、内部電極18の位置を変化させて内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定する。そして、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所において硫酸水溶液や塩酸水溶液等を送液するためのライニング処理配管に生じたピンホールなどの欠陥を検出するためのライニング処理配管の劣化診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製の配管内に硫酸水溶液、塩酸水溶液などの液体を流通させると、配管内面にその液体が常に接触していることによって配管内面に腐食が発生するため、配管内面に樹脂やゴムなどのライニング材が被覆されたライニング処理配管が用いられる。しかしながら、このライニング処理配管においても、配管内に硫酸水溶液、塩酸水溶液などの液体を長期間に渡って流通させると、配管内面のライニング材にクラックやピンホールなどの欠陥が発生する場合がある。そのような欠陥の有無を検出する方法として、配管を取り外す(抜管する)ことなく行う方法が知られている。
【0003】
具体的には、内壁面にライニングを施した金属体内に導電性液体を封入し、その導電性液体に接触する電極と、金属体に接触する電極との間に直流電圧を印加し、電極間の導電又は不導通を検知する樹脂ライニング部欠陥検出方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この検出方法によれば、抜管を伴うことなく簡易に検出を行うことができると共に、配管の腐食を未然に防止することができる。
【0004】
ところが、この特許文献1に記載されている樹脂ライニング部欠陥検出方法では、導電性液体に接触する電極と金属体に接触する電極との間に電圧を印加して両電極間が導通するか否かによりライニング部(ライニング層)の欠陥を検出することから、係る欠陥の有無を検出できるに過ぎなかった。しかも、欠陥の検出には直流電圧が用いられることから、検出される電流の安定性に欠け、精度の良い検出を行うことが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、ライニング層の欠陥を交流インピーダンス法で測定するライニング材測定セルが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、係る測定セルは、高分子ゲルが収容された容器と、該ゲル内に浸漬された電極と、高分子ゲルを容器内に密封するように取付けられたイオン透過膜と、該イオン透過膜をライニング材に押圧する押圧手段とを備えたものである。このライニング材測定セルを用いることにより、液中環境下でのライニング材の劣化診断が可能になる。
【特許文献1】特開昭56−163446号公報(第1頁及び第2頁)
【特許文献2】特開2003−28821号公報(第2〜4頁及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のライニング材測定セルを用いてライニング材の劣化診断を行うことによって液中でのライニング材の劣化診断、さらには母材の腐食診断を行うことはできるが、ピンホールなどの欠陥がどの位置に存在するかを特定する方法については記載されていない。ライニング層に欠陥が存在するだけではなく、その欠陥がどこに位置しているかを特定することは欠陥を補修する上で極めて重要である。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ライニング層の欠陥を精度良く検出することができると共に、欠陥の位置を容易に検出することができるライニング処理配管の劣化診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1のライニング処理配管の劣化診断方法は、電気絶縁性を有する高分子製のライニング層が内面に形成された金属製の配管におけるライニング層の劣化によって生じた欠陥を検出してライニング処理配管の劣化を診断するに際し、前記配管内に導電性液体を満たした状態で、該導電性液体中に配置した内部電極と配管に設けた外部電極との間に交流電圧を印加し、内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、該インピーダンスの変化によって欠陥を検出する方法である。そして、前記配管の所定位置に外部電極を固定すると共に、内部電極の位置を変化させて内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することを特徴とする。
【0009】
請求項2のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1に係る発明において、前記交流電圧の周波数は2〜10Hzであることを特徴とする。
請求項3のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記導電性液体は、静止状態又は流動状態であることを特徴とする。
【0010】
請求項4のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、予備試験の条件として、ライニング層を形成する高分子について内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることを特徴とする。
【0011】
請求項5のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記ライニング層を形成する高分子は、ポリオレフィン又はゴムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1のライニング処理配管の劣化診断方法においては、配管の所定位置に外部電極を固定すると共に、内部電極の位置を変化させて内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定する。その結果、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することができる。交流電圧に対するインピーダンスの変化は、直流電圧に対する電気抵抗の変化に比べて安定していると共に、複数箇所におけるインピーダンスの測定値からインピーダンスの最小値を容易に見い出すことができる。従って、ライニング層の欠陥を精度良く検出することができると共に、欠陥の位置を容易に検出することができる。
【0013】
請求項2のライニング処理配管の劣化診断方法では、交流電圧の周波数が2〜10Hzである。このため、ライニング層を形成する高分子の種類に拘らず、請求項1に係る発明の効果を有効に発揮することができる。
【0014】
請求項3のライニング処理配管の劣化診断方法では、導電性液体が静止状態又は流動状態である。従って、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、導電性液体が静止状態である場合に加えて流動状態である場合にも静止状態と同様のインピーダンス変化が得られ、静止状態と同様の効果を得ることができる。
【0015】
請求項4のライニング処理配管の劣化診断方法では、ライニング層を形成する高分子について内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0である。従って、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を、ライニング層を形成する高分子の種類に拘らず発揮することができる。
【0016】
請求項5のライニング処理配管の劣化診断方法では、ライニング層を形成する高分子がポリオレフィン又はゴムである。そのため、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、ポリオレフィン又はゴム製のライニング層に発生した欠陥を容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、ライニング処理配管10は、円筒状をなす金属製の配管11の内面に電気絶縁性を有する高分子製のライニング層12が形成されて構成されている。該ライニング層12は常法に従って所定厚さに形成され、金属製の配管11の内面を保護し、錆の発生を防止している。このライニング処理配管10は、端部のフランジ13間がボルト14及びナット15により締結され、所定の長さになるように形成されている。配管11を形成する金属としては、鋼鉄のほか、銅、アルミニウム等の導電性を有する材料が用いられる。ライニング層12を形成する高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ブチルゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、硬質ゴム(炭素粉末により架橋したもの)等のゴムが好適に用いられる。
【0018】
係るライニング処理配管10内には導電性液体16などの流体が流通するようになっている。導電性液体16としては、硫酸水溶液、塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液などが用いられる。このライニング処理配管10を長期間に渡って使用するとライニング層12が劣化してピンホール17やクラックなどの欠陥が発生する場合がある。従って、ライニング処理配管10のライニング層12に発生した欠陥を早期に検出し、欠陥の補修を速やかに行う必要がある。
【0019】
そこで、本実施形態におけるライニング処理配管10の劣化診断方法は、上記ライニング層12の劣化によって生じた欠陥を検出してライニング処理配管10の劣化を診断するものである。すなわち、配管11内に導電性液体16を満たした状態で、該導電性液体16中の内部電極18と配管11に設けた外部電極19との間に電気化学測定装置20により交流電圧を印加し、内部電極18と外部電極19との間のインピーダンス(実数インピーダンス)を交流電圧値及び交流電流値から測定する方法である。得られたインピーダンスの変化に基づいてライニング層12の欠陥を検出することができる。
【0020】
この方法において、交流電圧に対するインピーダンスの変化は、直流電圧に対する電気抵抗の変化に比べて安定している上に、複数箇所におけるインピーダンスの測定値からインピーダンスの最小値を容易に見い出すことができる。この場合、一定の条件下で内部電極18と外部電極19との間の距離とインピーダンスとの関係が通常直線関係(比例関係)となり、V字状を示す。そのため、係るV字状の谷部の位置が欠陥の位置であると特定することができ、ライニング層12に発生する欠陥の検出と該欠陥の位置を検出することができる。
【0021】
インピーダンスの測定に当たり、外部電極19の位置を固定し、内部電極18の位置を変化させて両電極間のインピーダンスを測定することが必要である。係る手順を採ることにより、導電性液体16の溶液抵抗に基づいて内部電極18の位置が外部電極19の位置から離れるにつれてインピーダンスが比例的に増大するのである。従って、このようなインピーダンスの変化により、外部電極19と内部電極18との距離を検出することが可能になる。これに対し、内部電極18を固定し、外部電極19を移動させた場合には、導電性の金属で形成されている配管11の電気抵抗が導電性液体16の溶液抵抗に比べて極めて小さいため、両電極間のインピーダンスはほとんど変化せず、外部電極19と内部電極18との距離をインピーダンスの変化によって検出することはできない。
【0022】
インピーダンスの測定条件として交流電圧の周波数を2〜10Hzに設定することにより、ライニング層12を形成する高分子の種類に拘らず、ライニング層12の欠陥の検出及び位置の特定を行うことができる。これは、高分子の種類に拘らず、周波数に対する相関係数が最も高いためである。また、インピーダンスの測定条件として導電性液体16が流動状態であっても静止状態と同様のインピーダンス変化が得られ、静止状態と同様の効果を得ることができる。これは、導電性液体16を介して測定されるインピーダンスの変化が、導電性液体16の流れによって溶液抵抗が変わらず、ほとんど影響を受けないためと考えられる。さらに、ライニング層12を形成する高分子について内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることにより、ライニング層12を形成する高分子に拘らず前記効果を発揮することができる。これは、交流電圧の周波数が特定の周波数すなわち2〜10Hzであればインピーダンスの変化がライニング層12を形成する高分子の影響を受けにくいためと考えられる。
【0023】
以上詳述した実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態におけるライニング処理配管10の劣化診断方法においては、配管11の所定位置に外部電極19を固定し、内部電極18の位置を変化させて内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定する。得られたインピーダンスに基づいてその最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することができる。
【0024】
このように、外部電極19を固定し、内部電極18の位置を変化させるという手法を採用することにより、内部電極18と外部電極19との間の距離の変化及びインピーダンスの変化が一定の関係(例えば直線関係)を発現することができる。この関係を利用することにより、インピーダンスの最小値を容易に見い出すことができる。従って、ライニング層12に発生したピンホール17などの欠陥を精度良く検出することができると共に、欠陥の位置を容易に検出することができる。よって、ライニング処理配管10の外部から欠陥の位置が把握でき、ライニング処理配管10の点検や補修に要する労力や時間を節約することができる。
【0025】
・ インピーダンスの測定条件として交流電圧の周波数が2〜10Hzという特定の低周波数であることにより、ライニング層12を形成する高分子の種類に拘らず、欠陥の検出及び位置の特定に関する効果を有効に発揮することができる。
【0026】
・ インピーダンスの測定条件として導電性液体16が静止状態である場合に加えて流動状態である場合にも、静止状態と変わらない溶液抵抗により静止状態と同様のインピーダンス変化が得られ、静止状態と同様の効果を得ることができる。従って、ライニング処理配管10を使用する装置の運転中でも測定を行うことができ、常時監視方法として実施することができる。
【0027】
・ インピーダンスの測定条件として、ライニング層12を形成する高分子について内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることにより、ライニング層12を形成する高分子に拘らず前記の効果を発揮することができる。
【0028】
・ ライニング層12を形成する高分子がポリオレフィン又はゴムであることにより、ポリオレフィン又はゴム製のライニング層12に発生した欠陥を容易に検出することができる。
【実施例】
【0029】
以下、参考例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
(参考例1)
この参考例1では予備試験を行った。ライニング処理配管10として、内面に電気絶縁性を有する高分子によるライニング層12を形成し、かつ欠陥としてのピンホール17を設けた鋼鉄製の配管11(内径32mm、長さ100mm)を用意した。図2に示すように、残りの配管11としてガラス管21を使用し、全長2400mmの模擬配管22を作製した。ガラス管21は、長さ200mmの直管21aに長さ400mmの直管21bを接続し、その直管21bに長さ200mmの半円管21cを接続した。さらに、長さ400mmの直管21d、長さ200mmの半円管21e、長さ400mmの直管21f、長さ200mmの半円管21g及び長さ400mmの直管21hを接続し、ガラス管21が蛇行して延びるように構成した。
【0030】
ライニング層12を形成する高分子としては、ポリエチレンを用いた。ピンホール17の直径は、3.2mmとした。ライニング処理配管10の内部に導電性液体16として20質量%の硫酸水溶液を満たした。ピンホール17を形成したライニング処理配管10の部分に外部電極19を設けると共に、硫酸水溶液中に内部電極18を移動可能に設けた。
【0031】
そして、内部電極18と外部電極19との間に電気化学測定装置20を接続し、該電気化学測定装置20により所定周波数の交流電圧を印加し、内部電極18と外部電極19との間の電圧値及び電流値からインピーダンスを測定し、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの値の関係をグラフにプロットした。交流電圧の周波数は、0.05、0.1、0.5、1、2、10及び20Hzとした。それらの結果を図3及び図4に示した。
【0032】
図3及び図4に示した結果より、予備試験の条件として交流電圧の周波数が特に2〜10Hzの場合に、内部電極18と外部電極19との距離が長くなるに従ってインピーダンスが大きくなる直線関係(比例関係)が得られた。従って、この直線関係に基づいて、内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスの測定値から欠陥の位置を特定できることが判明した。
(参考例2)
参考例2においても予備試験を実施した。前記参考例1において、ライニング層12を形成する高分子としてポリエチレンのほかに、ブチルゴム及び硬質ゴムの場合について内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定した。そして、予備試験の条件として、各高分子につき内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係として得られる直線の傾きを実施例1と同様にして求め、その一致率(直線の傾きの比)を相関係数として算出した。その相関係数(−)と交流電圧の周波数(Hz)との関係をグラフにプロットした結果を図5に示した。
【0033】
図5に示したように、周波数が10Hzの場合に最も相関係数の高い結果が得られ、周波数が2Hzの場合にも相関係数の良好な結果が得られた。従って、相関係数は0.8〜1.0であることが好ましい。そのため、周波数が特に2〜10Hzの範囲であれば、ライニング層12の欠陥の検出及び欠陥位置の検出をライニング層12を形成する高分子の種類に拘らず容易にできることが明らかになった。
(参考例3)
この参考例3では、さらに予備試験の条件について検討した。図6に示すように、参考例1(図2)において、長さ400mmの直管21hの端部に長さ200mmの半円管21iを接続し、その半円管21iの端部に長さ400mmの直管21jを接続した。さらに、ライニング処理配管10の端部と直管21jの端部との間に循環配管23を連結し、該循環配管23の途中にポンプ24を接続し、導電性液体16としての塩化ナトリウム水溶液を強制循環させた。予備試験の条件として塩化ナトリウム水溶液の流動速度を0、2.5及び5.0L/minに設定した。ライニング層12を形成する高分子として、硬質ゴムに代えてブチルゴムを使用した。また、ピンホール17の直径を3.2mmに代えて1.0mmに設定した。そして、電気化学測定装置20により周波数10Hzの交流電圧を内部電極18と外部電極19との間に印加した。この場合、内部電極18の位置を順に移動させ、内部電極18と外部電極19との距離を300〜3000mmまで変化させてインピーダンスを測定した。その結果を図7に示すようにプロットした。
【0034】
図7に示したように、塩化ナトリウム水溶液の流動速度が速くなると、距離とインピーダンスとの関係を示す直線の傾きが若干小さくなる傾向にあるが、導電性液体16が流動している場合でも静止している場合と同様にピンホール17の有無及び位置の検出を行うことができることが明らかになった。
(実施例1)
まず、予備試験を行った。すなわち、図8に示すように、長さ1000mmの3本の鋼鉄製の配管11を用いたライニング処理配管10(第1ライニング処理配管10a、第2ライニング処理配管10b及び第3ライニング処理配管10c)を接続して試験を行った。導電性液体16としては、硫酸水溶液に代えて3質量%の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を使用した。欠陥としてのピンホール17を第1ライニング処理配管10aの基端部(図8の左端部)に直径1mmの大きさで形成した。また、外部電極19を第1ライニング処理配管10aの基端部に設けると共に、内部電極18を第1ライニング処理配管10aと第2ライニング処理配管10bとの接続部における塩化ナトリウム水溶液中に設けた。
【0035】
そして、電気化学測定装置20により周波数10Hzの交流電圧を内部電極18と外部電極19との間に印加し、インピーダンスを測定した。さらに、内部電極18を第2ライニング処理配管10bと第3ライニング処理配管10cとの接続部における塩化ナトリウム水溶液中に移動させ、その後内部電極18を第3ライニング処理配管10cの先端部における塩化ナトリウム水溶液中に移動させた。その結果、インピーダンスの変化は、ピンホール17からの距離に比例してインピーダンスが大きくなるように変化することを確認することができた。
【0036】
次に、実施例1として実際のライニング処理配管10を想定してピンホール17の位置の特定を試みた。ピンホール17を第1ライニング処理配管10aの先端部(第1ライニング処理配管10aと第2ライニング処理配管10bとの接続部)に設けると共に、外部電極19を第1ライニング処理配管10aの基端部(図8の左端部)に設けた。さらに、内部電極18を第1ライニング処理配管10aの先端部(二点鎖線で示すピンホール17の位置)、第2ライニング処理配管10bと第3ライニング処理配管10cとの接続部、及び第3ライニング処理配管10cの先端部における塩化ナトリウム水溶液中に移動させてインピーダンスを測定した。すなわち、電気化学測定装置20により周波数10Hzの交流電圧を内部電極18と外部電極19との間に印加してインピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図9に示すようにプロットした(図9の□印)。
【0037】
この図9に示したように、インピーダンスの変化は内部電極18と外部電極19との距離が1000mmに近くなるほど、すなわちピンホール17に近くなるほどインピーダンスが小さくなり、そこからさらに離れるほどインピーダンスが比例的に大きくなるV字状を示す結果が得られた。このV字状の谷部でインピーダンスが最小値となり、その位置がピンホール17の存在する位置であることを特定することができた。
(実施例2)
この実施例2では、実施例1において交流電圧の周波数を2Hzに変更し、その他は実施例1と同様の条件で実施し、インピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図9に示すようにプロットした(図9の△印)。
【0038】
図9に示したように、実施例2では実施例1と同様にインピーダンスの変化は内部電極18と外部電極19との距離が1000mmに近くなるほどインピーダンスが小さくなり、そこからさらに離れるほどインピーダンスが比例的に大きくなるV字状を示したが、実施例1に比べて直線の傾斜が若干緩やかであった。このV字状の谷部でインピーダンスが最小値となり、その位置がピンホール17の存在する位置であることを特定することができた。
(実施例3)
実施例3では、実施例1において導電性液体16として3質量%の塩化ナトリウム水溶液に代えて20質量%の硫酸水溶液を用いた他は実施例1と同様の条件で実施し、インピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図9に示すようにプロットした(図9の○印)。
【0039】
図9に示したように、実施例3では実施例1とほぼ同様にインピーダンスの変化は内部電極18と外部電極19との距離が1000mmに近くなるほどインピーダンスが小さくなり、そこからさらに離れるほどインピーダンスが比例的に大きくなるV字状を示した。このV字状の谷部でインピーダンスが最小値となり、その位置がピンホール17の存在する位置であることを特定することができた。
(比較例1)
前記参考例1において、ライニング層12を形成する高分子として、ポリエチレンに代えて硬質ゴムを用いると共に、内部電極18と外部電極19との間に直流電圧を印加して電気抵抗(Ω)を測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離(mm)及び電気抵抗(Ω)との関係を図10に示すようにプロットした。
【0040】
この図10に見られるように、内部電極18と外部電極19との各距離に対して4.6〜4.75kΩの電気抵抗を示したことから、ピンホール17による電気的導通を確認することができ、ピンホール17の有無を検出できることが判った。しかしながら、内部電極18と外部電極19との距離に対して電気抵抗が一定しなかったことから、ピンホール17の位置を検出することはできないことが判明した。
(比較例2)
前記実施例1において、内部電極18を第1ライニング処理配管10aの基端部の塩化ナトリウム水溶液中に固定した。一方、外部電極19を第1ライニング処理配管10aと第2ライニング処理配管10bとの接続部、第2ライニング処理配管10bと第3ライニング処理配管10cとの接続部、さらに第3ライニング処理配管10cの先端部へと移動させて、インピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図11に示すようにプロットした。
【0041】
この図11に示した結果から、内部電極18と外部電極19との距離が変化してもインピーダンスはほとんど変化せず、両者間には一定の関係が得られなかった。これは、塩化ナトリウム水溶液の溶液の電気抵抗に比べて鋼鉄製の配管11の電気抵抗が小さいため、内部電極18と外部電極19との距離が変化してもインピーダンスがほとんど変化しなかったものと考えられる。従って、内部電極18を固定し、外部電極19の位置を変化させる方法では、ピンホール17の位置を特定できないことが明らかになった。
【0042】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きができるだけ大きくなるように、例えば導電性液体16の種類、濃度、交流電圧の周波数などを設定することが望ましい。この場合、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0043】
・ 前記インピーダンスの測定に加えて、内部電極18と外部電極19との間のキャパシタンス(静電容量)を測定し、その値に基づいてライニング層12の欠陥を検出するように構成し、欠陥の検出精度を向上させるようにすることも可能である。
【0044】
・ 内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係が、二次曲線などの関係であってもよく、インピーダンスの最小値を示す箇所を求めることができる。
・ 導電性液体16としては、実際のライニング処理配管10に使用されている液体を、欠陥を検出する際に別の導電性を有する液体に置換して行うこともできる。
【0045】
・ ライニング処理配管10の劣化診断方法を、火力発電所以外の化学プラント装置、水処理装置などにおいて適用することもできる。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0046】
・ 前記内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線はV字状を示すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加えて、インピーダンスの最小値を簡単に見出すことができ、欠陥の検出を容易に行うことができる。
【0047】
・ 前記欠陥はピンホールであって、その孔径は0.5〜3mmであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。このように構成した場合、ピンホールについて請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果を有効に発揮させることができる。
【0048】
・ 前記インピーダンスを測定するための導電性液体は、無機酸の水溶液であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。このように構成した場合、無機酸の水溶液が良好な導電性を発現でき、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図2】参考例1におけるライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図3】参考例1において、交流電圧の周波数を変化させた場合の内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図4】参考例1において、交流電圧の周波数を変化させた場合の内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図5】参考例2において、ライニング層を形成する高分子の種類を変えた場合の交流電圧の周波数と相関係数との関係を示すグラフ。
【図6】参考例3におけるライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図7】参考例3において、導電性液体の流動速度を変化させた場合の内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図8】実施例1におけるライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図9】実施例1における内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図10】比較例1における内部電極と外部電極との距離及び電気抵抗の関係を示すグラフ。
【図11】比較例2における内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0050】
10…ライニング処理配管、11…配管、12…ライニング層、16…導電性液体、17…欠陥としてのピンホール、18…内部電極、19…外部電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所において硫酸水溶液や塩酸水溶液等を送液するためのライニング処理配管に生じたピンホールなどの欠陥を検出するためのライニング処理配管の劣化診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製の配管内に硫酸水溶液、塩酸水溶液などの液体を流通させると、配管内面にその液体が常に接触していることによって配管内面に腐食が発生するため、配管内面に樹脂やゴムなどのライニング材が被覆されたライニング処理配管が用いられる。しかしながら、このライニング処理配管においても、配管内に硫酸水溶液、塩酸水溶液などの液体を長期間に渡って流通させると、配管内面のライニング材にクラックやピンホールなどの欠陥が発生する場合がある。そのような欠陥の有無を検出する方法として、配管を取り外す(抜管する)ことなく行う方法が知られている。
【0003】
具体的には、内壁面にライニングを施した金属体内に導電性液体を封入し、その導電性液体に接触する電極と、金属体に接触する電極との間に直流電圧を印加し、電極間の導電又は不導通を検知する樹脂ライニング部欠陥検出方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この検出方法によれば、抜管を伴うことなく簡易に検出を行うことができると共に、配管の腐食を未然に防止することができる。
【0004】
ところが、この特許文献1に記載されている樹脂ライニング部欠陥検出方法では、導電性液体に接触する電極と金属体に接触する電極との間に電圧を印加して両電極間が導通するか否かによりライニング部(ライニング層)の欠陥を検出することから、係る欠陥の有無を検出できるに過ぎなかった。しかも、欠陥の検出には直流電圧が用いられることから、検出される電流の安定性に欠け、精度の良い検出を行うことが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、ライニング層の欠陥を交流インピーダンス法で測定するライニング材測定セルが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、係る測定セルは、高分子ゲルが収容された容器と、該ゲル内に浸漬された電極と、高分子ゲルを容器内に密封するように取付けられたイオン透過膜と、該イオン透過膜をライニング材に押圧する押圧手段とを備えたものである。このライニング材測定セルを用いることにより、液中環境下でのライニング材の劣化診断が可能になる。
【特許文献1】特開昭56−163446号公報(第1頁及び第2頁)
【特許文献2】特開2003−28821号公報(第2〜4頁及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のライニング材測定セルを用いてライニング材の劣化診断を行うことによって液中でのライニング材の劣化診断、さらには母材の腐食診断を行うことはできるが、ピンホールなどの欠陥がどの位置に存在するかを特定する方法については記載されていない。ライニング層に欠陥が存在するだけではなく、その欠陥がどこに位置しているかを特定することは欠陥を補修する上で極めて重要である。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ライニング層の欠陥を精度良く検出することができると共に、欠陥の位置を容易に検出することができるライニング処理配管の劣化診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1のライニング処理配管の劣化診断方法は、電気絶縁性を有する高分子製のライニング層が内面に形成された金属製の配管におけるライニング層の劣化によって生じた欠陥を検出してライニング処理配管の劣化を診断するに際し、前記配管内に導電性液体を満たした状態で、該導電性液体中に配置した内部電極と配管に設けた外部電極との間に交流電圧を印加し、内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、該インピーダンスの変化によって欠陥を検出する方法である。そして、前記配管の所定位置に外部電極を固定すると共に、内部電極の位置を変化させて内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することを特徴とする。
【0009】
請求項2のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1に係る発明において、前記交流電圧の周波数は2〜10Hzであることを特徴とする。
請求項3のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記導電性液体は、静止状態又は流動状態であることを特徴とする。
【0010】
請求項4のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、予備試験の条件として、ライニング層を形成する高分子について内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることを特徴とする。
【0011】
請求項5のライニング処理配管の劣化診断方法は、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記ライニング層を形成する高分子は、ポリオレフィン又はゴムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1のライニング処理配管の劣化診断方法においては、配管の所定位置に外部電極を固定すると共に、内部電極の位置を変化させて内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定する。その結果、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することができる。交流電圧に対するインピーダンスの変化は、直流電圧に対する電気抵抗の変化に比べて安定していると共に、複数箇所におけるインピーダンスの測定値からインピーダンスの最小値を容易に見い出すことができる。従って、ライニング層の欠陥を精度良く検出することができると共に、欠陥の位置を容易に検出することができる。
【0013】
請求項2のライニング処理配管の劣化診断方法では、交流電圧の周波数が2〜10Hzである。このため、ライニング層を形成する高分子の種類に拘らず、請求項1に係る発明の効果を有効に発揮することができる。
【0014】
請求項3のライニング処理配管の劣化診断方法では、導電性液体が静止状態又は流動状態である。従って、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、導電性液体が静止状態である場合に加えて流動状態である場合にも静止状態と同様のインピーダンス変化が得られ、静止状態と同様の効果を得ることができる。
【0015】
請求項4のライニング処理配管の劣化診断方法では、ライニング層を形成する高分子について内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0である。従って、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を、ライニング層を形成する高分子の種類に拘らず発揮することができる。
【0016】
請求項5のライニング処理配管の劣化診断方法では、ライニング層を形成する高分子がポリオレフィン又はゴムである。そのため、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、ポリオレフィン又はゴム製のライニング層に発生した欠陥を容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、ライニング処理配管10は、円筒状をなす金属製の配管11の内面に電気絶縁性を有する高分子製のライニング層12が形成されて構成されている。該ライニング層12は常法に従って所定厚さに形成され、金属製の配管11の内面を保護し、錆の発生を防止している。このライニング処理配管10は、端部のフランジ13間がボルト14及びナット15により締結され、所定の長さになるように形成されている。配管11を形成する金属としては、鋼鉄のほか、銅、アルミニウム等の導電性を有する材料が用いられる。ライニング層12を形成する高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ブチルゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、硬質ゴム(炭素粉末により架橋したもの)等のゴムが好適に用いられる。
【0018】
係るライニング処理配管10内には導電性液体16などの流体が流通するようになっている。導電性液体16としては、硫酸水溶液、塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液などが用いられる。このライニング処理配管10を長期間に渡って使用するとライニング層12が劣化してピンホール17やクラックなどの欠陥が発生する場合がある。従って、ライニング処理配管10のライニング層12に発生した欠陥を早期に検出し、欠陥の補修を速やかに行う必要がある。
【0019】
そこで、本実施形態におけるライニング処理配管10の劣化診断方法は、上記ライニング層12の劣化によって生じた欠陥を検出してライニング処理配管10の劣化を診断するものである。すなわち、配管11内に導電性液体16を満たした状態で、該導電性液体16中の内部電極18と配管11に設けた外部電極19との間に電気化学測定装置20により交流電圧を印加し、内部電極18と外部電極19との間のインピーダンス(実数インピーダンス)を交流電圧値及び交流電流値から測定する方法である。得られたインピーダンスの変化に基づいてライニング層12の欠陥を検出することができる。
【0020】
この方法において、交流電圧に対するインピーダンスの変化は、直流電圧に対する電気抵抗の変化に比べて安定している上に、複数箇所におけるインピーダンスの測定値からインピーダンスの最小値を容易に見い出すことができる。この場合、一定の条件下で内部電極18と外部電極19との間の距離とインピーダンスとの関係が通常直線関係(比例関係)となり、V字状を示す。そのため、係るV字状の谷部の位置が欠陥の位置であると特定することができ、ライニング層12に発生する欠陥の検出と該欠陥の位置を検出することができる。
【0021】
インピーダンスの測定に当たり、外部電極19の位置を固定し、内部電極18の位置を変化させて両電極間のインピーダンスを測定することが必要である。係る手順を採ることにより、導電性液体16の溶液抵抗に基づいて内部電極18の位置が外部電極19の位置から離れるにつれてインピーダンスが比例的に増大するのである。従って、このようなインピーダンスの変化により、外部電極19と内部電極18との距離を検出することが可能になる。これに対し、内部電極18を固定し、外部電極19を移動させた場合には、導電性の金属で形成されている配管11の電気抵抗が導電性液体16の溶液抵抗に比べて極めて小さいため、両電極間のインピーダンスはほとんど変化せず、外部電極19と内部電極18との距離をインピーダンスの変化によって検出することはできない。
【0022】
インピーダンスの測定条件として交流電圧の周波数を2〜10Hzに設定することにより、ライニング層12を形成する高分子の種類に拘らず、ライニング層12の欠陥の検出及び位置の特定を行うことができる。これは、高分子の種類に拘らず、周波数に対する相関係数が最も高いためである。また、インピーダンスの測定条件として導電性液体16が流動状態であっても静止状態と同様のインピーダンス変化が得られ、静止状態と同様の効果を得ることができる。これは、導電性液体16を介して測定されるインピーダンスの変化が、導電性液体16の流れによって溶液抵抗が変わらず、ほとんど影響を受けないためと考えられる。さらに、ライニング層12を形成する高分子について内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることにより、ライニング層12を形成する高分子に拘らず前記効果を発揮することができる。これは、交流電圧の周波数が特定の周波数すなわち2〜10Hzであればインピーダンスの変化がライニング層12を形成する高分子の影響を受けにくいためと考えられる。
【0023】
以上詳述した実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態におけるライニング処理配管10の劣化診断方法においては、配管11の所定位置に外部電極19を固定し、内部電極18の位置を変化させて内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定する。得られたインピーダンスに基づいてその最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することができる。
【0024】
このように、外部電極19を固定し、内部電極18の位置を変化させるという手法を採用することにより、内部電極18と外部電極19との間の距離の変化及びインピーダンスの変化が一定の関係(例えば直線関係)を発現することができる。この関係を利用することにより、インピーダンスの最小値を容易に見い出すことができる。従って、ライニング層12に発生したピンホール17などの欠陥を精度良く検出することができると共に、欠陥の位置を容易に検出することができる。よって、ライニング処理配管10の外部から欠陥の位置が把握でき、ライニング処理配管10の点検や補修に要する労力や時間を節約することができる。
【0025】
・ インピーダンスの測定条件として交流電圧の周波数が2〜10Hzという特定の低周波数であることにより、ライニング層12を形成する高分子の種類に拘らず、欠陥の検出及び位置の特定に関する効果を有効に発揮することができる。
【0026】
・ インピーダンスの測定条件として導電性液体16が静止状態である場合に加えて流動状態である場合にも、静止状態と変わらない溶液抵抗により静止状態と同様のインピーダンス変化が得られ、静止状態と同様の効果を得ることができる。従って、ライニング処理配管10を使用する装置の運転中でも測定を行うことができ、常時監視方法として実施することができる。
【0027】
・ インピーダンスの測定条件として、ライニング層12を形成する高分子について内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることにより、ライニング層12を形成する高分子に拘らず前記の効果を発揮することができる。
【0028】
・ ライニング層12を形成する高分子がポリオレフィン又はゴムであることにより、ポリオレフィン又はゴム製のライニング層12に発生した欠陥を容易に検出することができる。
【実施例】
【0029】
以下、参考例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
(参考例1)
この参考例1では予備試験を行った。ライニング処理配管10として、内面に電気絶縁性を有する高分子によるライニング層12を形成し、かつ欠陥としてのピンホール17を設けた鋼鉄製の配管11(内径32mm、長さ100mm)を用意した。図2に示すように、残りの配管11としてガラス管21を使用し、全長2400mmの模擬配管22を作製した。ガラス管21は、長さ200mmの直管21aに長さ400mmの直管21bを接続し、その直管21bに長さ200mmの半円管21cを接続した。さらに、長さ400mmの直管21d、長さ200mmの半円管21e、長さ400mmの直管21f、長さ200mmの半円管21g及び長さ400mmの直管21hを接続し、ガラス管21が蛇行して延びるように構成した。
【0030】
ライニング層12を形成する高分子としては、ポリエチレンを用いた。ピンホール17の直径は、3.2mmとした。ライニング処理配管10の内部に導電性液体16として20質量%の硫酸水溶液を満たした。ピンホール17を形成したライニング処理配管10の部分に外部電極19を設けると共に、硫酸水溶液中に内部電極18を移動可能に設けた。
【0031】
そして、内部電極18と外部電極19との間に電気化学測定装置20を接続し、該電気化学測定装置20により所定周波数の交流電圧を印加し、内部電極18と外部電極19との間の電圧値及び電流値からインピーダンスを測定し、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの値の関係をグラフにプロットした。交流電圧の周波数は、0.05、0.1、0.5、1、2、10及び20Hzとした。それらの結果を図3及び図4に示した。
【0032】
図3及び図4に示した結果より、予備試験の条件として交流電圧の周波数が特に2〜10Hzの場合に、内部電極18と外部電極19との距離が長くなるに従ってインピーダンスが大きくなる直線関係(比例関係)が得られた。従って、この直線関係に基づいて、内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスの測定値から欠陥の位置を特定できることが判明した。
(参考例2)
参考例2においても予備試験を実施した。前記参考例1において、ライニング層12を形成する高分子としてポリエチレンのほかに、ブチルゴム及び硬質ゴムの場合について内部電極18と外部電極19との間のインピーダンスを測定した。そして、予備試験の条件として、各高分子につき内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係として得られる直線の傾きを実施例1と同様にして求め、その一致率(直線の傾きの比)を相関係数として算出した。その相関係数(−)と交流電圧の周波数(Hz)との関係をグラフにプロットした結果を図5に示した。
【0033】
図5に示したように、周波数が10Hzの場合に最も相関係数の高い結果が得られ、周波数が2Hzの場合にも相関係数の良好な結果が得られた。従って、相関係数は0.8〜1.0であることが好ましい。そのため、周波数が特に2〜10Hzの範囲であれば、ライニング層12の欠陥の検出及び欠陥位置の検出をライニング層12を形成する高分子の種類に拘らず容易にできることが明らかになった。
(参考例3)
この参考例3では、さらに予備試験の条件について検討した。図6に示すように、参考例1(図2)において、長さ400mmの直管21hの端部に長さ200mmの半円管21iを接続し、その半円管21iの端部に長さ400mmの直管21jを接続した。さらに、ライニング処理配管10の端部と直管21jの端部との間に循環配管23を連結し、該循環配管23の途中にポンプ24を接続し、導電性液体16としての塩化ナトリウム水溶液を強制循環させた。予備試験の条件として塩化ナトリウム水溶液の流動速度を0、2.5及び5.0L/minに設定した。ライニング層12を形成する高分子として、硬質ゴムに代えてブチルゴムを使用した。また、ピンホール17の直径を3.2mmに代えて1.0mmに設定した。そして、電気化学測定装置20により周波数10Hzの交流電圧を内部電極18と外部電極19との間に印加した。この場合、内部電極18の位置を順に移動させ、内部電極18と外部電極19との距離を300〜3000mmまで変化させてインピーダンスを測定した。その結果を図7に示すようにプロットした。
【0034】
図7に示したように、塩化ナトリウム水溶液の流動速度が速くなると、距離とインピーダンスとの関係を示す直線の傾きが若干小さくなる傾向にあるが、導電性液体16が流動している場合でも静止している場合と同様にピンホール17の有無及び位置の検出を行うことができることが明らかになった。
(実施例1)
まず、予備試験を行った。すなわち、図8に示すように、長さ1000mmの3本の鋼鉄製の配管11を用いたライニング処理配管10(第1ライニング処理配管10a、第2ライニング処理配管10b及び第3ライニング処理配管10c)を接続して試験を行った。導電性液体16としては、硫酸水溶液に代えて3質量%の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を使用した。欠陥としてのピンホール17を第1ライニング処理配管10aの基端部(図8の左端部)に直径1mmの大きさで形成した。また、外部電極19を第1ライニング処理配管10aの基端部に設けると共に、内部電極18を第1ライニング処理配管10aと第2ライニング処理配管10bとの接続部における塩化ナトリウム水溶液中に設けた。
【0035】
そして、電気化学測定装置20により周波数10Hzの交流電圧を内部電極18と外部電極19との間に印加し、インピーダンスを測定した。さらに、内部電極18を第2ライニング処理配管10bと第3ライニング処理配管10cとの接続部における塩化ナトリウム水溶液中に移動させ、その後内部電極18を第3ライニング処理配管10cの先端部における塩化ナトリウム水溶液中に移動させた。その結果、インピーダンスの変化は、ピンホール17からの距離に比例してインピーダンスが大きくなるように変化することを確認することができた。
【0036】
次に、実施例1として実際のライニング処理配管10を想定してピンホール17の位置の特定を試みた。ピンホール17を第1ライニング処理配管10aの先端部(第1ライニング処理配管10aと第2ライニング処理配管10bとの接続部)に設けると共に、外部電極19を第1ライニング処理配管10aの基端部(図8の左端部)に設けた。さらに、内部電極18を第1ライニング処理配管10aの先端部(二点鎖線で示すピンホール17の位置)、第2ライニング処理配管10bと第3ライニング処理配管10cとの接続部、及び第3ライニング処理配管10cの先端部における塩化ナトリウム水溶液中に移動させてインピーダンスを測定した。すなわち、電気化学測定装置20により周波数10Hzの交流電圧を内部電極18と外部電極19との間に印加してインピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図9に示すようにプロットした(図9の□印)。
【0037】
この図9に示したように、インピーダンスの変化は内部電極18と外部電極19との距離が1000mmに近くなるほど、すなわちピンホール17に近くなるほどインピーダンスが小さくなり、そこからさらに離れるほどインピーダンスが比例的に大きくなるV字状を示す結果が得られた。このV字状の谷部でインピーダンスが最小値となり、その位置がピンホール17の存在する位置であることを特定することができた。
(実施例2)
この実施例2では、実施例1において交流電圧の周波数を2Hzに変更し、その他は実施例1と同様の条件で実施し、インピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図9に示すようにプロットした(図9の△印)。
【0038】
図9に示したように、実施例2では実施例1と同様にインピーダンスの変化は内部電極18と外部電極19との距離が1000mmに近くなるほどインピーダンスが小さくなり、そこからさらに離れるほどインピーダンスが比例的に大きくなるV字状を示したが、実施例1に比べて直線の傾斜が若干緩やかであった。このV字状の谷部でインピーダンスが最小値となり、その位置がピンホール17の存在する位置であることを特定することができた。
(実施例3)
実施例3では、実施例1において導電性液体16として3質量%の塩化ナトリウム水溶液に代えて20質量%の硫酸水溶液を用いた他は実施例1と同様の条件で実施し、インピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図9に示すようにプロットした(図9の○印)。
【0039】
図9に示したように、実施例3では実施例1とほぼ同様にインピーダンスの変化は内部電極18と外部電極19との距離が1000mmに近くなるほどインピーダンスが小さくなり、そこからさらに離れるほどインピーダンスが比例的に大きくなるV字状を示した。このV字状の谷部でインピーダンスが最小値となり、その位置がピンホール17の存在する位置であることを特定することができた。
(比較例1)
前記参考例1において、ライニング層12を形成する高分子として、ポリエチレンに代えて硬質ゴムを用いると共に、内部電極18と外部電極19との間に直流電圧を印加して電気抵抗(Ω)を測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離(mm)及び電気抵抗(Ω)との関係を図10に示すようにプロットした。
【0040】
この図10に見られるように、内部電極18と外部電極19との各距離に対して4.6〜4.75kΩの電気抵抗を示したことから、ピンホール17による電気的導通を確認することができ、ピンホール17の有無を検出できることが判った。しかしながら、内部電極18と外部電極19との距離に対して電気抵抗が一定しなかったことから、ピンホール17の位置を検出することはできないことが判明した。
(比較例2)
前記実施例1において、内部電極18を第1ライニング処理配管10aの基端部の塩化ナトリウム水溶液中に固定した。一方、外部電極19を第1ライニング処理配管10aと第2ライニング処理配管10bとの接続部、第2ライニング処理配管10bと第3ライニング処理配管10cとの接続部、さらに第3ライニング処理配管10cの先端部へと移動させて、インピーダンスを測定した。そして、内部電極18と外部電極19との距離及びインピーダンスの関係を図11に示すようにプロットした。
【0041】
この図11に示した結果から、内部電極18と外部電極19との距離が変化してもインピーダンスはほとんど変化せず、両者間には一定の関係が得られなかった。これは、塩化ナトリウム水溶液の溶液の電気抵抗に比べて鋼鉄製の配管11の電気抵抗が小さいため、内部電極18と外部電極19との距離が変化してもインピーダンスがほとんど変化しなかったものと考えられる。従って、内部電極18を固定し、外部電極19の位置を変化させる方法では、ピンホール17の位置を特定できないことが明らかになった。
【0042】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きができるだけ大きくなるように、例えば導電性液体16の種類、濃度、交流電圧の周波数などを設定することが望ましい。この場合、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0043】
・ 前記インピーダンスの測定に加えて、内部電極18と外部電極19との間のキャパシタンス(静電容量)を測定し、その値に基づいてライニング層12の欠陥を検出するように構成し、欠陥の検出精度を向上させるようにすることも可能である。
【0044】
・ 内部電極18と外部電極19との間の距離及びインピーダンスの関係が、二次曲線などの関係であってもよく、インピーダンスの最小値を示す箇所を求めることができる。
・ 導電性液体16としては、実際のライニング処理配管10に使用されている液体を、欠陥を検出する際に別の導電性を有する液体に置換して行うこともできる。
【0045】
・ ライニング処理配管10の劣化診断方法を、火力発電所以外の化学プラント装置、水処理装置などにおいて適用することもできる。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0046】
・ 前記内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線はV字状を示すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加えて、インピーダンスの最小値を簡単に見出すことができ、欠陥の検出を容易に行うことができる。
【0047】
・ 前記欠陥はピンホールであって、その孔径は0.5〜3mmであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。このように構成した場合、ピンホールについて請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果を有効に発揮させることができる。
【0048】
・ 前記インピーダンスを測定するための導電性液体は、無機酸の水溶液であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。このように構成した場合、無機酸の水溶液が良好な導電性を発現でき、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図2】参考例1におけるライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図3】参考例1において、交流電圧の周波数を変化させた場合の内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図4】参考例1において、交流電圧の周波数を変化させた場合の内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図5】参考例2において、ライニング層を形成する高分子の種類を変えた場合の交流電圧の周波数と相関係数との関係を示すグラフ。
【図6】参考例3におけるライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図7】参考例3において、導電性液体の流動速度を変化させた場合の内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図8】実施例1におけるライニング処理配管の劣化診断方法を実施する装置を模式的に示す概略説明図。
【図9】実施例1における内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【図10】比較例1における内部電極と外部電極との距離及び電気抵抗の関係を示すグラフ。
【図11】比較例2における内部電極と外部電極との距離及びインピーダンスの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0050】
10…ライニング処理配管、11…配管、12…ライニング層、16…導電性液体、17…欠陥としてのピンホール、18…内部電極、19…外部電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性を有する高分子製のライニング層が内面に形成された金属製の配管におけるライニング層の劣化によって生じた欠陥を検出してライニング処理配管の劣化を診断するに際し、前記配管内に導電性液体を満たした状態で、該導電性液体中に配置した内部電極と配管に設けた外部電極との間に交流電圧を印加し、内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、該インピーダンスの変化によって欠陥を検出する方法であって、
前記配管の所定位置に外部電極を固定すると共に、内部電極の位置を変化させて内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することを特徴とするライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項2】
前記交流電圧の周波数は2〜10Hzであることを特徴とする請求項1に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項3】
前記導電性液体は、静止状態又は流動状態であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項4】
前記ライニング層を形成する高分子について内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項5】
前記ライニング層を形成する高分子は、ポリオレフィン又はゴムであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項1】
電気絶縁性を有する高分子製のライニング層が内面に形成された金属製の配管におけるライニング層の劣化によって生じた欠陥を検出してライニング処理配管の劣化を診断するに際し、前記配管内に導電性液体を満たした状態で、該導電性液体中に配置した内部電極と配管に設けた外部電極との間に交流電圧を印加し、内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、該インピーダンスの変化によって欠陥を検出する方法であって、
前記配管の所定位置に外部電極を固定すると共に、内部電極の位置を変化させて内部電極と外部電極との間のインピーダンスを測定し、得られたインピーダンスに基づいてインピーダンスの最小値を示す箇所を求め、該箇所が欠陥の位置であると特定することを特徴とするライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項2】
前記交流電圧の周波数は2〜10Hzであることを特徴とする請求項1に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項3】
前記導電性液体は、静止状態又は流動状態であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項4】
前記ライニング層を形成する高分子について内部電極と外部電極との間の距離及びインピーダンスの関係を示す直線の傾きの一致率を表す相関係数が0.8〜1.0であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【請求項5】
前記ライニング層を形成する高分子は、ポリオレフィン又はゴムであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のライニング処理配管の劣化診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−156819(P2009−156819A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338193(P2007−338193)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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