ライニング管の貫通孔形成方法及びライニング管用の膜切断装置
【課題】ライニング管に対する不断流状態での貫通孔の形成を、貫通孔周縁に連続する管内周面側の樹脂ライニング層の剥離を抑制しながら能率良く確実に行う。
【解決手段】内周面に樹脂ライニング層1が形成されている流体管2の管壁2Aに、流体の流れを維持したまま貫通孔3を形成するライニング管の貫通孔形成方法であって、流体管2に、流体管2の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁5を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、ハウジングに連結した穿孔装置の穿孔具で流体管2の管壁2Aに貫通孔3を形成したのち、切断壁片を備えた穿孔装置をハウジングから撤去する穿孔作業工程と、ハウジングに、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを切断可能な膜切断装置Bを取付けて、樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に略沿って切断分離する膜切断作業工程とが備えられている。
【解決手段】内周面に樹脂ライニング層1が形成されている流体管2の管壁2Aに、流体の流れを維持したまま貫通孔3を形成するライニング管の貫通孔形成方法であって、流体管2に、流体管2の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁5を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、ハウジングに連結した穿孔装置の穿孔具で流体管2の管壁2Aに貫通孔3を形成したのち、切断壁片を備えた穿孔装置をハウジングから撤去する穿孔作業工程と、ハウジングに、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを切断可能な膜切断装置Bを取付けて、樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に略沿って切断分離する膜切断作業工程とが備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面に樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま弁体装着孔や分岐孔等の貫通孔を形成するライニング管の貫通孔形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
既設流体管の内面腐食による老朽化を防止する対策として、例えば、既設流体管内に、予め内周面側に接着剤が塗布されている柔軟性のある樹脂(ポリエチレン樹脂等)製のシールホースを空気圧によって反転させながら送り込み、当該シールホースを流体管の内周面に順次接着させて樹脂ライニング層を形成するライニング工法、又は、既設流体管内に、これよりも少し小径のポリエチレン管等のライニング樹脂管を挿入したのち、このライニング樹脂管の外周面と既設流体管の内周面との間にセメントミルクを圧入して三層構造とするライニング工法、或いは、既設流体管の一方の開口からライニング樹脂(2液混合型エポキシ樹脂等)を高速空気流又は管内を移動するライニングピグ等で搬送しながら流体管の内周面に所定厚の樹脂ライニング層を形成するライニング工法等が採られている。
【0003】
そして、上述のような樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま貫通孔を形成する場合、従来では、前記流体管に、当該流体管の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、前記ハウジングに、穿孔具の一例であるホールソーを備えた穿孔装置を連結して、この穿孔装置のホールソーを流体管側に送込むことにより、流体管の管壁に貫通孔を形成すると同時に、この貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜を切断除去する穿孔工程とからなる貫通孔形成方法が採られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−47577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のライニング管の貫通孔形成方法では、穿孔装置のホールソーで流体管の管壁及び樹脂ライニング層を切削するように構成されているが、ホールソーの先端に設けられる切削チップは、切削の主体である鋳鉄管や鋼管等の硬度の高い流体管を対象にしたチップ形状に構成されており、さらに、樹脂ライニング層は施工後の硬化によってある程度の剛性を有するものの、まだ樹脂としての適度の弾性を有しているため、次の不都合があった。
【0006】
すなわち、流体管の管壁に貫通孔が形成された時点で、穿孔装置のホールソーをハウジング側に引き上げ、このホールソーにて切断分離された流体管の切断壁片及び樹脂ライニング膜が保持されているか否かを確認し、樹脂ライニング膜が保持されていなければ、ホールソーの流体管側への送込み量を増やして再度送込む工程を繰り返す必要があるため、貫通孔に臨む樹脂ライニング膜の切断分離に多くの手数を要している。
【0007】
しかも、このとき、流体管の貫通孔に臨む樹脂ライニング膜をホールソーで管内側に押し込んだ押し切り状態で切断することになるため、この樹脂ライニング膜に連続している管内周面側の樹脂ライニング層が貫通孔周縁側から次第に剥離される現象が発生し、その結果、樹脂ライニング層が剥離された流体管の内周面に錆びが発生する問題があった。
【0008】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、ライニング管に対する不断流状態での貫通孔の形成を、貫通孔周縁に連続する管内周面側の樹脂ライニング層の剥離を抑制しながら能率良く確実に行うことのできる貫通孔形成方法及びそれに用いられるライニング管用の膜切断装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の特徴構成は、内周面に樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま貫通孔を形成するライニング管の貫通孔形成方法であって、
前記流体管に、当該流体管の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、
前記ハウジングに連結した穿孔装置の穿孔具で流体管の管壁に貫通孔を形成したのち、切断壁片を備えた穿孔装置をハウジングから撤去する穿孔作業工程と、
前記ハウジングに、前記管壁の貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜を切断可能な膜切断装置を取付けて、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離する膜切断作業工程とが備えられている点にある。
【0010】
上記構成によれば、穿孔装置の穿孔具による穿孔作業は、流体管の管壁に貫通孔が形成された時点で終了し、この貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜に対しては、前記ハウジングに付け替えられた専用の膜切断装置により貫通孔の内周縁に略沿って確実に切断分離することができる。
【0011】
したがって、従来方法のように、ハウジング側に引き上げた穿孔装置の穿孔具に切断分離された切断壁片及び樹脂ライニング膜が保持されていることを確認するまで、穿孔具の流体管側への送込み量を増やして幾度となく送込む必要がなく、しかも、流体管の貫通孔に臨む樹脂ライニング膜の管内側への押し込み量の増大化を抑制することができるから、ライニング管に対する不断流状態での貫通孔の形成を、貫通孔周縁に連続する管内周面側の樹脂ライニング層の剥離を抑制しながら能率良く確実に行うことができる。
【0012】
本発明による第2の特徴構成は、前記膜切断作業工程において、前記膜切断装置を用いて前記樹脂ライニング膜を回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作する点にある。
【0013】
上記構成によれば、前記膜切断装置の膜切断機能と膜保持機能とにより、貫通孔の内周縁に略沿って切断分離された樹脂ライニング膜を確実に回収することができるとともに、樹脂ライニング膜を切断分離し易い姿勢に保持して膜切断作業能率の向上を図ることができる。
【0014】
本発明による第3の特徴構成は、上記の第1又は第2の特徴構成を備えたライニング管の貫通孔形成方法に用いられる前記膜切断装置であって、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作可能な膜切断治具と、前記樹脂ライニング膜を回収可能な状態で保持する膜回収治具とが備えられている点にある。
【0015】
上記構成によれば、前記膜切断治具で貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を切断分離する際、前記膜回収治具で樹脂ライニング膜を保持することができるので、貫通孔の内周縁に略沿って切断分離された樹脂ライニング膜を確実に回収することができるとともに、樹脂ライニング膜を切断分離し易い姿勢に保持して膜切断作業能率の向上を図ることができる。
【0016】
本発明による第4の特徴構成は、前記膜切断治具の切断操作軸が、前記ハウジングに連結された膜切断作業用ケースに対して前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在で、且つ前記貫通孔の径方向に揺動操作自在に貫通支持されているとともに、前記膜回収治具の回収操作軸が、前記膜切断作業用ケースに対して少なくとも前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在に貫通支持されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、前記ハウジングに対して、膜切断治具の切断操作軸及び膜回収治具の回収操作軸が貫通支持されている膜切断作業用ケースを連結するだけで、穿孔作業工程から膜切断作業工程にスムーズに移行することができるとともに、膜切断治具の切断操作軸の摺動及び揺動操作機能を利用して、膜回収治具の回収操作軸との干渉を回避しながら貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を貫通孔の内周縁に略沿ってスムーズに切断分離することができる。
【0018】
本発明による第5の特徴構成は、前記膜切断治具の切断操作軸が、膜切断作業用ケースにおける前記貫通孔の孔軸芯上又はその近傍に配置されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、前記膜回収治具の回収操作軸に比して貫通孔の径方向での移動操作範囲が広い膜切断治具の切断操作軸を貫通孔の孔軸芯上又はその近傍に配置することにより、貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を能率良く確実に切断分離することができる。
【0020】
本発明による第6の特徴構成は、前記膜切断作業用ケースに、複数の作業用窓が設けられている点にある。
【0021】
上記構成によれば、前記膜切断作業用ケースに設けられた一つの作業用窓からハウジング内の作業箇所に照明光を照射し、他の作業用窓から作業箇所を目視確認しながら膜切断治具及び膜回収治具を操作することができるから、貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を能率良く確実に切断分離して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態を示す水道管に割T字管を連結したときの断面側面図
【図2】割T字管に作業用開閉弁を連結したときの一部切欠き側面図
【図3】作業用開閉弁に穿孔装置を連結したときの一部切欠き側面図
【図4】穿孔作業終了時の一部切欠き側面図
【図5】作業用開閉弁に膜切断装置を連結したときの一部切欠き側面図
【図6】作業用開閉弁に膜切断装置を連結したときの横断正面図
【図7】膜切断作業用ケースの天蓋の平面図
【図8】膜切断治具及び膜回収治具の要部の拡大断面図
【図9】膜切断治具及び膜回収治具による膜切断作業時の一部切欠き側面図
【図10】膜切断治具及び膜回収治具による膜切断作業時の横断正面図
【図11】膜切断作業終了時の横断正面図
【図12】膜切断作業終了時の一部切欠き側面図
【図13】作業用開閉弁に弁装着作業ケースを連結したときの横断側面図
【図14】割T字管に仕切弁の上部ケースを連結したときの一部切欠き側面図
【図15】本発明の第2実施形態を示し、作業用開閉弁に膜切断装置を連結したときの一部切欠き正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
図1〜図14は、内周面に樹脂ライニング層1が形成されている流体管の一例である鋳鉄管製の水道管2の管壁2Aに、当該水道管2での上水(流体)の流れを維持した不断水状態のまま弁体装着孔となる貫通孔3を形成するライニング管の貫通孔形成方法及びこの方法を用いた仕切弁Dの新設工事を示す。
【0024】
この貫通孔形成方法では、水道管2の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で水道管2に装着される作業用開閉弁5を備えたハウジングHと、ハウジングHで密閉された水道管2の管壁2Aに貫通孔3を形成する穿孔装置A、及び、前記管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に沿って切断分離するための膜切断装置Bとが用いられる。
【0025】
前記ハウジングHは、水道管2の貫通孔形成箇所に水密状態で外装固定される割T字管4と、この割T字管4の接続管部4Bにおける連結フランジ4Cに水密状態で固定連結される作業用開閉弁5とから構成されている。
前記割T字管4は、図14に示すように、前記膜切断装置Bによる膜切断作業後において、後述の上部ケース56とで仕切弁Dの弁筐を構成する下部ケースとしてそのまま使用される。
【0026】
前記割T字管4は、図1、図6に示すように、水道管2に対して管径方向から外装自在な管周方向で三分割された分割継手体4Aから構成されているとともに、各分割継手体4Aの管周方向両端部には、水道管2に外装された分割継手体4Aの隣接端部同士を締結手段6の一例である複数本のボルト6A・ナット6Bを介して脱着自在に固定連結するための連結フランジ4aが一体形成されている。
【0027】
更に、水道管2の上部側に外装される分割継手体4Aにおける管軸芯方向の中央部で、かつ、管周方向の中央部には、前記水道管2の管壁2Aに形成される貫通孔3に対して管径方向から連通する接続管部4Bが一体的に突出形成されている。
【0028】
また、前記分割継手体4Aの管軸芯方向両端部の周方向複数箇所には、水道管2の外周面に対して管径方向外方から締付け操作することにより、割T字管4を水道管2に所定姿勢で強固に固定する固定ボルト7が設けられているとともに、前記分割継手体4Aの内周面に形成したシール保持溝には、水道管2の外周面との間を水密状態に密封するゴム製のパッキン8が装着されている。
【0029】
前記作業用開閉弁5の弁ケース5A内には、図2、図4、図6に示すように、ハンドル5Bの回転操作に伴って水平方向に開閉作動される弁体5Cが設けられ、前記弁ケース5Aの下部には、前記接続管部4Bの連結フランジ4Cに対して上方から外嵌装着可能な円筒状の下側連結筒部5Dが一体形成されている。
【0030】
前記下側連結筒部5Dの内周面の上部側で、且つ、前記弁体5Cの開閉移動経路よりも下方側の近傍部位には、接続管部4Bの連結フランジ4Cの上面の周縁部に対して載置状態で当接する円環状の環状当り部5Eが一体形成されているとともに、前記下側連結筒部5Dには、前記環状当り部5Eが接続管部4Bの連結フランジ4Cに載置支持されている状態において、前記連結フランジ4Cの下面(背面)に係合した状態で弁ケース5Aを連結フランジ4Cに引き寄せ固定する引き寄せ固定手段としての引き寄せボルト9が設けられている。
【0031】
前記弁ケース5Aの上部には、下側連結筒部5Dと同芯状態で連通して弁内流路を形成する円筒状の上側連結筒部5Fが一体形成され、この上側連結筒部5Fの上側開口端には、穿孔装置Aや膜切断装置B等を取り付けるための連結フランジ5Gが一体形成されている。
【0032】
前記膜切断装置Bは、図5〜図12に示すように、作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに水密状態で脱着自在に連結される膜切断作業用ケース11に、前記樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に略沿って切断分離操作可能な膜切断治具B1と、前記樹脂ライニング膜1aを回収可能な状態で保持する膜回収治具B2とを装着して構成されている。
【0033】
前記膜切断治具B1を構成するに、図6、図8に示すように、膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けられた第1軸受部12に、ケース外から余裕を持って樹脂ライニング膜1aを切断操作可能な長さを備えた切断操作軸13が、貫通孔3の孔軸芯Y方向に沿って摺動自在で且つ貫通孔3の径方向に揺動自在に、更に、貫通孔3の孔軸芯Y周りで回転自在に貫通支持されているとともに、前記切断操作軸13の下端部に形成された雄ネジ部13aには、切断具の一例である鋸刃14を備えた筒状の取付け部材15が螺合固定されている。
【0034】
前記鋸刃14は、取付け部材15に対して所定角度だけ傾斜させた状態で脱着可能にボルト16にて固定されているとともに、前記切断操作軸13には、取付け部材15に先行して切断操作軸13の雄ネジ部13aに螺着された抜止めナット17と天蓋11Aの下面(内側面)との間に位置して、水圧による切断操作軸13の急激な上昇によって取付け部材15が天蓋11Aの下面に衝突する際の衝撃を緩和するウレタンゴム等の弾性緩衝体18が外装されている。
【0035】
前記鋸刃14としては刃先のピッチ、角度、大きさ等の切断性能が異なる複数種類のものを準備して、穿孔装置Aによる穿孔作業終了時の樹脂ライニング膜1aの状況から最適な鋸刃14を選定し、膜切断作業用ケース11を作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに連結する工程の前に、切断操作軸13に対する取付け部材15の脱着操作又は取付け部材15に対する鋸刃14の脱着操作によって選定された鋸刃14を装着する。
【0036】
また、前記切断操作軸13の上部には、図6に示すように、左右一対の第1係止環20を備えた取付けアーム21が吊り環付きネジ部材22で締付け固定され、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aの複数箇所(当該実施形態では2箇所)には、第2係止環23が取付けられ、切断操作軸13の上部側の第1係止環20と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、水圧による切断操作軸13の上方への飛び出し移動を阻止するための飛び出し防止手段Cが装着可能に構成されている。
【0037】
前記膜回収治具B2を構成するに、図6、図8に示すように、膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける第1軸受部12から径方向外方に偏倚した部位に設けられた第2軸受部25には、ケース外から余裕を持って樹脂ライニング膜1aを保持操作可能な長さを備えた回収操作軸26が、貫通孔3の孔軸芯Y方向に沿って摺動自在で且つ貫通孔3の径方向に揺動自在に、更に、貫通孔3の孔軸芯Yと平行な軸芯周りで回転自在に貫通支持されているとともに、前記回収操作軸26の下端部に形成された雄ネジ部26aには、樹脂ライニング膜1aを貫通した状態で当該樹脂ライニング膜1aの下面に係止可能な一対の膜係止爪27Aを備えた膜保持具27が螺合固定されている。
【0038】
前記膜保持具27の下端部には、穿孔装置Aによる穿孔作業時において、穿孔具の一例であるホールソー(円筒状回転カッター)45の穿孔中心に位置するセンタードリル46で形成された樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bに挿入案内するための先細りのテーパー面27aが形成されているとともに、前記膜保持具27の外周面の周方向二箇所には、各膜係止爪27Aを格納可能な格納凹部27bが形成されている。
【0039】
前記各膜係止爪27Aは、膜保持具27の格納凹部27b内の下端側部位に対して自重で外方への飛出し付勢力が発生する偏芯状態で揺動自在に枢着されている。
【0040】
そのため、前記樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bに対する膜保持具27の挿入時には、樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bの周縁との接触によって両膜係止爪27Aが格納凹部27b内に格納揺動され、貫通直後に、格納凹部27b内に格納されていた両膜係止爪27Aが外方に飛び出し揺動し、両膜係止爪27Aが格納凹部27bの下端面との当接によって水平な係止姿勢に維持される。
【0041】
前記回収操作軸26には、膜保持具27の螺合操作に先行して回収操作軸26の雄ネジ部26aに螺着された抜止めナット17と天蓋11Aの下面との間に位置して、水圧による回収操作軸26の急速上昇によって膜保持具27が天蓋11Aの下面に衝突する際の衝撃を緩和するウレタンゴム等の弾性緩衝体18が外装されている。
【0042】
また、前記回収操作軸26の上部には、図6に示すように、前記切断操作軸13と同様に、左右一対の第3係止環28を備えた取付けアーム29が吊り環付きネジ部材30で締付け固定され、この第3係止環28と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、水圧による回収操作軸26の上方への飛び出し移動を阻止するための飛び出し防止手段Cが装着可能に構成されている。
【0043】
前記第1軸受部12及び第2軸受部25は同一構造に構成されており、具体的には、図8に示すように、前記天蓋11Aに貫通形成された軸挿通孔32の下半側が、切断操作軸13及び回収操作軸26の最大揺動範囲を規制する下方拡がりのテーパー規制面32aに構成され、前記軸挿通孔32の上半部が、軸受け球状体33を回動自在に支持する部分球状受け面32bに構成されている。
【0044】
さらに、前記軸受け球状体33には、切断操作軸13及び回収操作軸26を摺動及び回転自在に貫通支持する軸孔33aが形成されているとともに、前記天蓋11Aには、軸受け球状体33の回動を案内する部分球状の押え面34aを備えた押え板34がボルト35にて取付けられている。
【0045】
また、前記軸受け球状体33の軸孔33aの内周面には、切断操作軸13の外周面及び回収操作軸26の外周面との間を水密に密封する第1シール材36が設けられ、前記押え板34の押え面34aにも、軸受け球状体33の外周面との間を水密に密封する第2シール材37が設けられている。
【0046】
前記天蓋11Aの二箇所には、図6、図7に示すように、樹脂ライニング膜1aに対する保持作業や切断作業等の作業状況を目視確認したり、作業箇所を照明する際に使用される作業用窓38が設けられている。
【0047】
前記飛び出し防止手段Cは、図6に示すように、二つの係止フック40と巻取り及び繰り出し可能なチェーン41とを備えた手巻きウインチ42から構成されている。
【0048】
次に、上述の如く構成されたハウジングH、穿孔装置A、膜切断装置Bを用いたライニング管の貫通孔形成方法及びこの方法を用いた仕切弁Dの新設工事について説明する。
【0049】
[1]図1は、前記水道管2の貫通孔形成作業領域に、水道管2の管壁2Aに形成される弁体装着孔となる貫通孔3に対応する部位に接続管部4Bを備えたハウジングHの構成部材で、管周方向で三分割構成された割T字管4を外装固定する割T字管連結工程を示す。
【0050】
この割T字管連結工程の準備工程として、水道管2の貫通孔形成作業領域の外周面に付着している錆び瘤、石、砂等を除去し、各分割継手体4Aに装着されたパッキン8が接触する管壁2Aの外周面を清掃した後、その清掃された外周面に滑剤を塗布し、管壁2Aの所定装着位置に三分割された分割継手体4Aを取付ける。
【0051】
前記割T字管4が水道管2に外装固定されたとき、図示はしないが割T字管4の接続管部4Bの連結フランジ4Cにフランジ蓋を取付け、割T字管4内に圧力水を充填して水圧試験を行う。
【0052】
この水圧試験に合格すると、図1に示すように、前記割T字管4の内周面と水道管2の外周面との間の内部空間に、前記貫通孔3の形成領域を除く状態で補強充填材の一例である超速硬セメント(ジェットセメント)51を充填して、前記貫通孔3が形成される水道管2の管壁2Aを補強する。
【0053】
[2]図2、図3は、前記割T字管4の接続管部4Bの連結フランジ4Cに、作業用開閉弁5を連結してハウジングHを構成する開閉弁連結工程と、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに穿孔装置Aのケーシング47を水密状態で連結する穿孔装置連結工程と、この穿孔装置Aのホールソー45及びセンタードリル46を開弁操作された作業用開閉弁5及び割T字管4の接続管部4Bを通して送り込んで水道管2の管壁2Aに円形状の貫通孔3を形成する穿孔作業工程とを示す。
【0054】
前記開閉弁連結工程では、前記割T字管4の連結フランジ4Cに、作業用開閉弁5の下側連結筒部5Dを外装して、下側連結筒部5D内の上部に設けられている環状当り部5Eを接続管部4Bの連結フランジ4Cに載置支持させたのち、下側連結筒部5Dに設けられている引き寄せボルト9を連結フランジ4Cの下面に係合した状態で締め込み操作して、作業用開閉弁5の弁ケース5Aを割T字管4の連結フランジ4Cに引き寄せ固定する。
【0055】
前記穿孔装置Aのケーシング47の下部には、図4に示すように、弁ケース5Aの弁内流路(内部空間)のうち、閉弁操作された弁体5Cによって区画される下流側流路(上側内部空間)とでホールソー45及びセンタードリル46の格納空間48を形成可能な連結ケース49が設けられているとともに、前記連結ケース49の下部には、作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに対して締結手段の一例である複数本のボルト・ナットを介して水密状態で固定連結される連結フランジ49Aが形成されている。
【0056】
前記穿孔作業工程では、前記ホールソー45に先行してセンタードリル46が水道管2の管壁2Aの貫通孔形成相当箇所及びこれに対応する樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを貫通し、この貫通時点でセンタードリル46に設けられている一対の係止爪(図示はしないが、上述した膜保持具27の両膜係止爪27Aと同じ構造)が自重で自動的に飛び出し、両係止爪は、センタードリル46で形成された樹脂ライニング膜1aの内周面側のドリル孔1b周縁に係止可能な係止姿勢となる。
【0057】
しかし、前記ホールソー45の先端に設けられる切削チップは、切削の主体である鋳鉄管や鋼管等の硬度の高い水道管2を対象にしたチップ形状に構成されており、さらに、樹脂ライニング層1は施工後の硬化によってある程度の剛性を有するものの、まだ樹脂としての適度の弾性を有している。
【0058】
そのため、ホールソー45で水道管2の管壁2Aの貫通孔形成相当箇所を円形状に切断分離できても、ホールソー45の切削チップが接触する樹脂ライニング層1の貫通孔形成相当箇所は水道管2の管軸芯側に撓み変形する若しくは水道管2の内周面から剥離しながら管軸芯側に撓み変形するため、切削チップと接触する樹脂ライニング層1の一部が切断されても円形状に切断分離することができない。
【0059】
[3]図4は、前記貫通孔3の形成後に穿孔装置Aのホールソー45及び切断壁片2aを保持するセンタードリル46を格納空間48内に戻して作業用開閉弁5を閉弁操作する穿孔治具回収工程を示し、この穿孔治具回収工程後に、穿孔装置Aの連結ケース49の連結フランジ49Aを作業用開閉弁5の連結フランジ5Gから撤去する穿孔装置撤去工程を実行する。
【0060】
前記穿孔治具回収工程において、前記貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aは上述の如く樹脂ライニング層1に繋がった状態にあるため、ホールソー45及びセンタードリル46を上昇操作したとき、前記センタードリル46の係止姿勢にある両係止爪が、当該センタードリル46で形成されている樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bから無理やりに引き抜かれ、両係止爪は水道管2の管壁2Aから切断分離された切断壁片2aに係合し、この切断壁片2aのみがホールソー45及びセンタードリル46と共に格納空間48内に回収される。
【0061】
[4]図5〜図8は、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに、膜回収治具B2の膜切断作業用ケース11の下端部に設けた連結フランジ11Bを水密状態に連結する膜回収装置連結工程を示す。
【0062】
前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aの蓋中心位置に設けられた第1軸受部12には、切断具の一例である鋸刃14を備えた切断操作軸13が貫通支持され、蓋中心位置から径方向外方に偏倚して設けられた第2軸受部25には、膜保持具27を備えた回収操作軸26が貫通支持されている。
【0063】
前記切断操作軸13には、穿孔装置Aによる穿孔作業終了時の樹脂ライニング膜1aの状況から選定された最適な鋸刃14が取付けられている。
【0064】
当該実施形態では、前記膜切断作業用ケース11の内径が作業用開閉弁5の上側連結筒部5Fの内径よりも小に構成されているため、作業用開閉弁5の連結フランジ5Gと膜切断作業用ケース11の連結フランジ11Bとの間に、フランジ径調整用の合フランジ19が設けられている。
【0065】
尚、前記膜切断作業用ケース11の内径と作業用開閉弁5の上側連結筒部5Fの内径とが同径に構成されている場合には、フランジ径調整用の合フランジ19は省略することができる。
【0066】
[5]図9、図10は、前記膜切断装置Bの膜切断治具B1及び膜回収治具B2を操作して、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に沿って切断分離する膜切断作業工程を示す。
【0067】
この膜切断作業工程では、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aに設けられている二つの作業用窓38のうち、一方の作業用窓38から照明器具でハウジングH内の膜切断作業箇所を照明し、且つ、他の作業用窓38から膜切断作業箇所を目視確認しながら、膜回収治具B2の回収操作軸26を摺動及び揺動操作して、膜切断作業用ケース11内に位置する膜保持具27を蓋中心位置側に寄せながら下降させ、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aの中心位置に形成されているドリル孔1bに膜保持具27を貫通移動させる。
【0068】
前記膜回収治具B2の膜保持具27が樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bに挿入されるときには、膜保持具27の両膜係止爪27Aがドリル孔1bの周縁との接触によって格納凹部27b内に格納揺動され、貫通直後に、格納凹部27b内に格納されていた両膜係止爪27Aが外方に飛び出し揺動し、両膜係止爪27Aが格納凹部27b内の下端面との当接によって樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bの周縁部分に係止可能な係止姿勢に維持される。
【0069】
次に、上述と同様に、一方の作業用窓38から照明器具でハウジングH内の膜切断作業箇所を照明し、且つ、他の作業用窓38から膜切断作業箇所を目視確認しながら、前記膜切断治具B1の切断操作軸13を摺動及び揺動操作して、又はこれに回転操作を加えて、当該切断操作軸13の下端に取付けられている鋸刃14を、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aのうち、ホールソー45の切削チップと接触した回転切削移動軌跡上の破断箇所に差し入れる又は薄肉化した脆弱部分に突き刺し、切断操作軸13を上下方向に往復操作して、鋸刃14により樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に沿って切断分離する。
【0070】
このとき、前記膜回収治具B2の回収操作軸26を少し引上げ側に摺動及び揺動操作して、樹脂ライニング膜1aを鋸刃14による切断に最も適した姿勢に調節することにより、膜切断作業能率の向上を図ることができる。
【0071】
上記の膜切断作業工程では、前記回収操作軸26の上部に設けられた取付けアーム29の両第3係止環28と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、水圧による回収操作軸26の上方への飛び出し移動を阻止するための飛び出し防止手段Cが装着されているが、前記切断操作軸13には飛び出し防止手段Cは装着されていない。
【0072】
尚、前記切断操作軸13の上部に設けられた取付けアーム21の両第1係止環20と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、膜切断のための切断操作軸13の摺動及び揺動操作又は必要に応じて加えられる回転操作を許容する緩み状態で飛び出し防止手段Cを装着してもよい。
【0073】
[6]図11、図12は、前記膜切断治具B1の切断操作軸13及び膜回収治具B2の回収操作軸26を夫々上方に摺動操作して、切断操作軸13の鋸刃14及び切断分離された樹脂ライニング膜1aを係止保持している回収操作軸26の膜保持具27を膜切断作業用ケース11内の格納空間11C内に取り出したのち、前記作業用開閉弁5を閉弁操作する切断膜回収工程を示す。
【0074】
この切断膜回収工程後に、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gとフランジ径調整用の合フランジ19との連結を解除し、作業用開閉弁5から膜切断作業用ケース11を撤去する膜切断装置撤去工程を実行する。
【0075】
[7]図13は、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに対して水密状態で固定連結される連結フランジ55Aと、昇降操作軸55Bを水密状態で昇降自在に貫通支持する昇降ガイド部材55Cとを備えた弁装着作業ケース55のうち、前記昇降操作軸55Bの下端部に取付けられた吊下げ連結部材55Dの雌ネジ部に、前記仕切弁Dの上部ケース56の上端側の軸受部56aに形成された雄ネジ部を螺合連結したのち、この上部ケース56が組付けられた弁装着作業ケース55をクレーン等で作業用開閉弁5上に吊下げ搬送し、この弁装着作業ケース55の連結フランジ55Aと作業用開閉弁5の連結フランジ5Gとを固定連結する弁装着作業ケース取付け工程を示す。
【0076】
前記仕切弁Dの上部ケース56は、割T字管4の連結フランジ4Cに対して固定連結用のボルト57で水密状態に固定連結される下側連結フランジ56bを備えた上側ケース体56Aと、該上側ケース体56Aの上端に形成された連結フランジ56cに水密状態で固定連結される弁蓋56Bとから構成されているとともに、前記弁蓋56Bの軸受部56aには、仕切弁体58の弁棒59が水密状態で貫通支持されている。
【0077】
次に、前記昇降操作軸55Bの上端部に設けた操作杆60と弁装着作業ケース55との間に仕切弁Dの上部ケース56及び仕切弁体58を水圧に抗して所定装着位置に押し込み操作するためのジャッキ機構(図示せず)を設けたのち、前記作業用開閉弁5を開弁操作するとともに、前記ジャッキ機構を下降操作し、上部ケース56の下側連結フランジ56bを作業用開閉弁5の内部流路を通して割T字管4の連結フランジ4C上に当接する位置にまで下降させる。
【0078】
このとき、前記割T字管4の連結フランジ4Cには、上部ケース56の下側連結フランジ56bに形成されたネジ孔56dに係合する位置決め用のボルト61が設けられているため、当該ボルト61による位置決めガイド作用によって、前記割T字管4の連結フランジ4Cに対する上部ケース56の下側連結フランジ56bの装着位置が自動修正されて所定装着位置に確定される。
【0079】
前記割T字管4の連結フランジ4Cに対する上部ケース56の下側連結フランジ56bの装着位置が確定されたとき、割T字管4の連結フランジ4Cと上部ケース56の下側連結フランジ56bとを、前記位置決め用のボルト61を取り外して付け替えた固定連結用のボルト57で水密状態に固定連結する弁ケース連結工程を示す。
【0080】
[8]図14は、前記弁ケース連結工程の完了後において、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gから弁装着作業ケース55を撤去するとともに、この作業用開閉弁5を割T字管4の連結フランジ4Cから撤去する工程を示す。
【0081】
尚、水道管2の内周面に樹脂ライニング層1が形成されているライニング管としては、例えば、水道管2内に、予め内周面側に接着剤が塗布されている柔軟性のある樹脂(ポリエチレン樹脂等)製のシールホースを空気圧によって反転させながら送り込み、当該シールホースを水道管2の内周面に順次接着させて樹脂ライニング層1を形成してあるライニング管、又は、水道管2内に、これよりも少し小径のポリエチレン管等のライニング樹脂管を挿入したのち、このライニング樹脂管で構成される樹脂ライニング層1の外周面と水道管2の内周面との間にセメントミルクを圧入して三層構造としたライニング管、或いは、水道管2の一方の開口からライニング樹脂(2液混合型エポキシ樹脂等)を高速空気流又は管内を移動するライニングピグ等で搬送しながら水道管2の内周面に所定厚の樹脂ライニング層1を形成してあるライニング管等が存在する。
【0082】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記膜切断装置Bの膜切断治具B1と膜回収治具B2とを各別に構成したが、図15に示すように、この膜切断治具B1と膜回収治具B2とを結合して構成してもよい。
【0083】
具体的には、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けられた軸受部65には、ケース外から余裕を持って樹脂ライニング膜1aを保持操作及び切断操作可能な長さを備えた操作軸66が、貫通孔3の孔軸芯Y方向に摺動自在並びに貫通孔3の孔軸芯Y周りで回転自在に貫通支持されているとともに、前記操作軸66の下端部に形成された雄ネジ部66aには、樹脂ライニング膜1aを貫通した状態で当該樹脂ライニング膜1aの下面に係止可能な一対の膜係止爪27Aを備えた膜保持具27が螺合固定されている。
【0084】
前記操作軸66の下側部位には、貫通孔3の径方向に沿って突出する切断支持アーム67が、操作軸66の軸芯方向に沿って取付け位置変更可能な状態で装着されているとともに、前記切断支持アーム67には、水道管2の樹脂ライニング層1における貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aのうち、ホールソー45の切削チップと接触した回転切削移動軌跡に沿って又は略沿って切断する回転カッター68と、当該回転カッター68を駆動する電動モータ69とを備えた防水構造の切断駆動ユニット70が、貫通孔3の複数の口径に対応して切断支持アーム67の長手方向に取付け位置変更可能な状態で装備されている。
【0085】
そして、前記膜切断治具B1と膜回収治具B2は一本の操作軸66を共有し、前記膜切断治具B1は、切断支持アーム67と切断駆動ユニット70とから構成されているとともに、前記膜回収治具B2は膜係止爪27Aを備えた膜保持具27から構成されている。
【0086】
前記切断駆動ユニット70の回転移動及び樹脂ライニング層1への送り込みは、前記膜切断作業用ケース11の軸受部65に対する操作軸66の回転操作及び摺動操作によって人為的に行うように構成されている。
【0087】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一又は実質的に同一構成であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0088】
また、当該第2実施形態では、前記切断駆動ユニット70の回転移動及び樹脂ライニング層1への送り込みを人為操作で行うように構成したが、この切断駆動ユニット70の回転移動及び樹脂ライニング層1への送り込みをアクチュエータを用いた機械力で行うように構成してもよい。
【0089】
さらに、当該第2実施形態では、切断具として駆動回転する回転カッター68を用いたが、上下方向に往復駆動される電動鋸を用いてもよい。
【0090】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、水道管2の管壁2Aに、仕切弁Dを新設するための弁体装着孔となる貫通孔3を形成したが、この貫通孔3は、仕切弁D以外の流体機器を新設するための弁体装着孔であってもよく、さらに、分岐管を新設するための分岐孔等であってもよい。
【0091】
(2)前記膜切断治具B1の切断操作軸13を、膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けたが、この切断操作軸13を貫通孔3の孔軸芯Yの近傍に配置してもよい。
【0092】
(3)上述の第1実施形態において、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けられた第1軸受部12に、前記膜回収治具B2の回収操作軸26を貫通支持させるとともに、前記第1軸受部12から径方向外方に偏倚した部位に設けられた第2軸受部25に、前記膜切断治具B1の切断操作軸13を貫通支持させてもよい。
【0093】
(4)上述の第1実施形態では、水道管2の貫通孔形成箇所に水密状態で外装固定されるハウジングHの割T字管4を、管周方向で三分割された分割継手体4Aから構成したが、これに変えて管周方向で二分割又は四分割された分割継手体から構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本願発明は、ライニング管に対する不断流状態での貫通孔の形成を、貫通孔周縁に連続する管内周面側の樹脂ライニング層の剥離を抑制しながら能率良く確実に行うことのできる貫通孔形成方法及びそれに用いられるライニング管用の膜切断装置として良好に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
A 穿孔装置
B 膜切断装置
B1 膜切断治具
B2 膜回収治具
H ハウジング
Y 孔軸芯
1 樹脂ライニング層
1a 樹脂ライニング膜
2 流体管(水道管)
2A 管壁
2a 切断壁片
3 貫通孔
5 作業用開閉弁
11 膜切断作業用ケース
13 切断操作軸
26 回収操作軸
38 作業用窓
45 穿孔具(ホールソー)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面に樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま弁体装着孔や分岐孔等の貫通孔を形成するライニング管の貫通孔形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
既設流体管の内面腐食による老朽化を防止する対策として、例えば、既設流体管内に、予め内周面側に接着剤が塗布されている柔軟性のある樹脂(ポリエチレン樹脂等)製のシールホースを空気圧によって反転させながら送り込み、当該シールホースを流体管の内周面に順次接着させて樹脂ライニング層を形成するライニング工法、又は、既設流体管内に、これよりも少し小径のポリエチレン管等のライニング樹脂管を挿入したのち、このライニング樹脂管の外周面と既設流体管の内周面との間にセメントミルクを圧入して三層構造とするライニング工法、或いは、既設流体管の一方の開口からライニング樹脂(2液混合型エポキシ樹脂等)を高速空気流又は管内を移動するライニングピグ等で搬送しながら流体管の内周面に所定厚の樹脂ライニング層を形成するライニング工法等が採られている。
【0003】
そして、上述のような樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま貫通孔を形成する場合、従来では、前記流体管に、当該流体管の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、前記ハウジングに、穿孔具の一例であるホールソーを備えた穿孔装置を連結して、この穿孔装置のホールソーを流体管側に送込むことにより、流体管の管壁に貫通孔を形成すると同時に、この貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜を切断除去する穿孔工程とからなる貫通孔形成方法が採られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−47577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のライニング管の貫通孔形成方法では、穿孔装置のホールソーで流体管の管壁及び樹脂ライニング層を切削するように構成されているが、ホールソーの先端に設けられる切削チップは、切削の主体である鋳鉄管や鋼管等の硬度の高い流体管を対象にしたチップ形状に構成されており、さらに、樹脂ライニング層は施工後の硬化によってある程度の剛性を有するものの、まだ樹脂としての適度の弾性を有しているため、次の不都合があった。
【0006】
すなわち、流体管の管壁に貫通孔が形成された時点で、穿孔装置のホールソーをハウジング側に引き上げ、このホールソーにて切断分離された流体管の切断壁片及び樹脂ライニング膜が保持されているか否かを確認し、樹脂ライニング膜が保持されていなければ、ホールソーの流体管側への送込み量を増やして再度送込む工程を繰り返す必要があるため、貫通孔に臨む樹脂ライニング膜の切断分離に多くの手数を要している。
【0007】
しかも、このとき、流体管の貫通孔に臨む樹脂ライニング膜をホールソーで管内側に押し込んだ押し切り状態で切断することになるため、この樹脂ライニング膜に連続している管内周面側の樹脂ライニング層が貫通孔周縁側から次第に剥離される現象が発生し、その結果、樹脂ライニング層が剥離された流体管の内周面に錆びが発生する問題があった。
【0008】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、ライニング管に対する不断流状態での貫通孔の形成を、貫通孔周縁に連続する管内周面側の樹脂ライニング層の剥離を抑制しながら能率良く確実に行うことのできる貫通孔形成方法及びそれに用いられるライニング管用の膜切断装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の特徴構成は、内周面に樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま貫通孔を形成するライニング管の貫通孔形成方法であって、
前記流体管に、当該流体管の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、
前記ハウジングに連結した穿孔装置の穿孔具で流体管の管壁に貫通孔を形成したのち、切断壁片を備えた穿孔装置をハウジングから撤去する穿孔作業工程と、
前記ハウジングに、前記管壁の貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜を切断可能な膜切断装置を取付けて、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離する膜切断作業工程とが備えられている点にある。
【0010】
上記構成によれば、穿孔装置の穿孔具による穿孔作業は、流体管の管壁に貫通孔が形成された時点で終了し、この貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜に対しては、前記ハウジングに付け替えられた専用の膜切断装置により貫通孔の内周縁に略沿って確実に切断分離することができる。
【0011】
したがって、従来方法のように、ハウジング側に引き上げた穿孔装置の穿孔具に切断分離された切断壁片及び樹脂ライニング膜が保持されていることを確認するまで、穿孔具の流体管側への送込み量を増やして幾度となく送込む必要がなく、しかも、流体管の貫通孔に臨む樹脂ライニング膜の管内側への押し込み量の増大化を抑制することができるから、ライニング管に対する不断流状態での貫通孔の形成を、貫通孔周縁に連続する管内周面側の樹脂ライニング層の剥離を抑制しながら能率良く確実に行うことができる。
【0012】
本発明による第2の特徴構成は、前記膜切断作業工程において、前記膜切断装置を用いて前記樹脂ライニング膜を回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作する点にある。
【0013】
上記構成によれば、前記膜切断装置の膜切断機能と膜保持機能とにより、貫通孔の内周縁に略沿って切断分離された樹脂ライニング膜を確実に回収することができるとともに、樹脂ライニング膜を切断分離し易い姿勢に保持して膜切断作業能率の向上を図ることができる。
【0014】
本発明による第3の特徴構成は、上記の第1又は第2の特徴構成を備えたライニング管の貫通孔形成方法に用いられる前記膜切断装置であって、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作可能な膜切断治具と、前記樹脂ライニング膜を回収可能な状態で保持する膜回収治具とが備えられている点にある。
【0015】
上記構成によれば、前記膜切断治具で貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を切断分離する際、前記膜回収治具で樹脂ライニング膜を保持することができるので、貫通孔の内周縁に略沿って切断分離された樹脂ライニング膜を確実に回収することができるとともに、樹脂ライニング膜を切断分離し易い姿勢に保持して膜切断作業能率の向上を図ることができる。
【0016】
本発明による第4の特徴構成は、前記膜切断治具の切断操作軸が、前記ハウジングに連結された膜切断作業用ケースに対して前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在で、且つ前記貫通孔の径方向に揺動操作自在に貫通支持されているとともに、前記膜回収治具の回収操作軸が、前記膜切断作業用ケースに対して少なくとも前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在に貫通支持されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、前記ハウジングに対して、膜切断治具の切断操作軸及び膜回収治具の回収操作軸が貫通支持されている膜切断作業用ケースを連結するだけで、穿孔作業工程から膜切断作業工程にスムーズに移行することができるとともに、膜切断治具の切断操作軸の摺動及び揺動操作機能を利用して、膜回収治具の回収操作軸との干渉を回避しながら貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を貫通孔の内周縁に略沿ってスムーズに切断分離することができる。
【0018】
本発明による第5の特徴構成は、前記膜切断治具の切断操作軸が、膜切断作業用ケースにおける前記貫通孔の孔軸芯上又はその近傍に配置されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、前記膜回収治具の回収操作軸に比して貫通孔の径方向での移動操作範囲が広い膜切断治具の切断操作軸を貫通孔の孔軸芯上又はその近傍に配置することにより、貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を能率良く確実に切断分離することができる。
【0020】
本発明による第6の特徴構成は、前記膜切断作業用ケースに、複数の作業用窓が設けられている点にある。
【0021】
上記構成によれば、前記膜切断作業用ケースに設けられた一つの作業用窓からハウジング内の作業箇所に照明光を照射し、他の作業用窓から作業箇所を目視確認しながら膜切断治具及び膜回収治具を操作することができるから、貫通孔に臨む樹脂ライニング膜を能率良く確実に切断分離して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態を示す水道管に割T字管を連結したときの断面側面図
【図2】割T字管に作業用開閉弁を連結したときの一部切欠き側面図
【図3】作業用開閉弁に穿孔装置を連結したときの一部切欠き側面図
【図4】穿孔作業終了時の一部切欠き側面図
【図5】作業用開閉弁に膜切断装置を連結したときの一部切欠き側面図
【図6】作業用開閉弁に膜切断装置を連結したときの横断正面図
【図7】膜切断作業用ケースの天蓋の平面図
【図8】膜切断治具及び膜回収治具の要部の拡大断面図
【図9】膜切断治具及び膜回収治具による膜切断作業時の一部切欠き側面図
【図10】膜切断治具及び膜回収治具による膜切断作業時の横断正面図
【図11】膜切断作業終了時の横断正面図
【図12】膜切断作業終了時の一部切欠き側面図
【図13】作業用開閉弁に弁装着作業ケースを連結したときの横断側面図
【図14】割T字管に仕切弁の上部ケースを連結したときの一部切欠き側面図
【図15】本発明の第2実施形態を示し、作業用開閉弁に膜切断装置を連結したときの一部切欠き正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
図1〜図14は、内周面に樹脂ライニング層1が形成されている流体管の一例である鋳鉄管製の水道管2の管壁2Aに、当該水道管2での上水(流体)の流れを維持した不断水状態のまま弁体装着孔となる貫通孔3を形成するライニング管の貫通孔形成方法及びこの方法を用いた仕切弁Dの新設工事を示す。
【0024】
この貫通孔形成方法では、水道管2の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で水道管2に装着される作業用開閉弁5を備えたハウジングHと、ハウジングHで密閉された水道管2の管壁2Aに貫通孔3を形成する穿孔装置A、及び、前記管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に沿って切断分離するための膜切断装置Bとが用いられる。
【0025】
前記ハウジングHは、水道管2の貫通孔形成箇所に水密状態で外装固定される割T字管4と、この割T字管4の接続管部4Bにおける連結フランジ4Cに水密状態で固定連結される作業用開閉弁5とから構成されている。
前記割T字管4は、図14に示すように、前記膜切断装置Bによる膜切断作業後において、後述の上部ケース56とで仕切弁Dの弁筐を構成する下部ケースとしてそのまま使用される。
【0026】
前記割T字管4は、図1、図6に示すように、水道管2に対して管径方向から外装自在な管周方向で三分割された分割継手体4Aから構成されているとともに、各分割継手体4Aの管周方向両端部には、水道管2に外装された分割継手体4Aの隣接端部同士を締結手段6の一例である複数本のボルト6A・ナット6Bを介して脱着自在に固定連結するための連結フランジ4aが一体形成されている。
【0027】
更に、水道管2の上部側に外装される分割継手体4Aにおける管軸芯方向の中央部で、かつ、管周方向の中央部には、前記水道管2の管壁2Aに形成される貫通孔3に対して管径方向から連通する接続管部4Bが一体的に突出形成されている。
【0028】
また、前記分割継手体4Aの管軸芯方向両端部の周方向複数箇所には、水道管2の外周面に対して管径方向外方から締付け操作することにより、割T字管4を水道管2に所定姿勢で強固に固定する固定ボルト7が設けられているとともに、前記分割継手体4Aの内周面に形成したシール保持溝には、水道管2の外周面との間を水密状態に密封するゴム製のパッキン8が装着されている。
【0029】
前記作業用開閉弁5の弁ケース5A内には、図2、図4、図6に示すように、ハンドル5Bの回転操作に伴って水平方向に開閉作動される弁体5Cが設けられ、前記弁ケース5Aの下部には、前記接続管部4Bの連結フランジ4Cに対して上方から外嵌装着可能な円筒状の下側連結筒部5Dが一体形成されている。
【0030】
前記下側連結筒部5Dの内周面の上部側で、且つ、前記弁体5Cの開閉移動経路よりも下方側の近傍部位には、接続管部4Bの連結フランジ4Cの上面の周縁部に対して載置状態で当接する円環状の環状当り部5Eが一体形成されているとともに、前記下側連結筒部5Dには、前記環状当り部5Eが接続管部4Bの連結フランジ4Cに載置支持されている状態において、前記連結フランジ4Cの下面(背面)に係合した状態で弁ケース5Aを連結フランジ4Cに引き寄せ固定する引き寄せ固定手段としての引き寄せボルト9が設けられている。
【0031】
前記弁ケース5Aの上部には、下側連結筒部5Dと同芯状態で連通して弁内流路を形成する円筒状の上側連結筒部5Fが一体形成され、この上側連結筒部5Fの上側開口端には、穿孔装置Aや膜切断装置B等を取り付けるための連結フランジ5Gが一体形成されている。
【0032】
前記膜切断装置Bは、図5〜図12に示すように、作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに水密状態で脱着自在に連結される膜切断作業用ケース11に、前記樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に略沿って切断分離操作可能な膜切断治具B1と、前記樹脂ライニング膜1aを回収可能な状態で保持する膜回収治具B2とを装着して構成されている。
【0033】
前記膜切断治具B1を構成するに、図6、図8に示すように、膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けられた第1軸受部12に、ケース外から余裕を持って樹脂ライニング膜1aを切断操作可能な長さを備えた切断操作軸13が、貫通孔3の孔軸芯Y方向に沿って摺動自在で且つ貫通孔3の径方向に揺動自在に、更に、貫通孔3の孔軸芯Y周りで回転自在に貫通支持されているとともに、前記切断操作軸13の下端部に形成された雄ネジ部13aには、切断具の一例である鋸刃14を備えた筒状の取付け部材15が螺合固定されている。
【0034】
前記鋸刃14は、取付け部材15に対して所定角度だけ傾斜させた状態で脱着可能にボルト16にて固定されているとともに、前記切断操作軸13には、取付け部材15に先行して切断操作軸13の雄ネジ部13aに螺着された抜止めナット17と天蓋11Aの下面(内側面)との間に位置して、水圧による切断操作軸13の急激な上昇によって取付け部材15が天蓋11Aの下面に衝突する際の衝撃を緩和するウレタンゴム等の弾性緩衝体18が外装されている。
【0035】
前記鋸刃14としては刃先のピッチ、角度、大きさ等の切断性能が異なる複数種類のものを準備して、穿孔装置Aによる穿孔作業終了時の樹脂ライニング膜1aの状況から最適な鋸刃14を選定し、膜切断作業用ケース11を作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに連結する工程の前に、切断操作軸13に対する取付け部材15の脱着操作又は取付け部材15に対する鋸刃14の脱着操作によって選定された鋸刃14を装着する。
【0036】
また、前記切断操作軸13の上部には、図6に示すように、左右一対の第1係止環20を備えた取付けアーム21が吊り環付きネジ部材22で締付け固定され、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aの複数箇所(当該実施形態では2箇所)には、第2係止環23が取付けられ、切断操作軸13の上部側の第1係止環20と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、水圧による切断操作軸13の上方への飛び出し移動を阻止するための飛び出し防止手段Cが装着可能に構成されている。
【0037】
前記膜回収治具B2を構成するに、図6、図8に示すように、膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける第1軸受部12から径方向外方に偏倚した部位に設けられた第2軸受部25には、ケース外から余裕を持って樹脂ライニング膜1aを保持操作可能な長さを備えた回収操作軸26が、貫通孔3の孔軸芯Y方向に沿って摺動自在で且つ貫通孔3の径方向に揺動自在に、更に、貫通孔3の孔軸芯Yと平行な軸芯周りで回転自在に貫通支持されているとともに、前記回収操作軸26の下端部に形成された雄ネジ部26aには、樹脂ライニング膜1aを貫通した状態で当該樹脂ライニング膜1aの下面に係止可能な一対の膜係止爪27Aを備えた膜保持具27が螺合固定されている。
【0038】
前記膜保持具27の下端部には、穿孔装置Aによる穿孔作業時において、穿孔具の一例であるホールソー(円筒状回転カッター)45の穿孔中心に位置するセンタードリル46で形成された樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bに挿入案内するための先細りのテーパー面27aが形成されているとともに、前記膜保持具27の外周面の周方向二箇所には、各膜係止爪27Aを格納可能な格納凹部27bが形成されている。
【0039】
前記各膜係止爪27Aは、膜保持具27の格納凹部27b内の下端側部位に対して自重で外方への飛出し付勢力が発生する偏芯状態で揺動自在に枢着されている。
【0040】
そのため、前記樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bに対する膜保持具27の挿入時には、樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bの周縁との接触によって両膜係止爪27Aが格納凹部27b内に格納揺動され、貫通直後に、格納凹部27b内に格納されていた両膜係止爪27Aが外方に飛び出し揺動し、両膜係止爪27Aが格納凹部27bの下端面との当接によって水平な係止姿勢に維持される。
【0041】
前記回収操作軸26には、膜保持具27の螺合操作に先行して回収操作軸26の雄ネジ部26aに螺着された抜止めナット17と天蓋11Aの下面との間に位置して、水圧による回収操作軸26の急速上昇によって膜保持具27が天蓋11Aの下面に衝突する際の衝撃を緩和するウレタンゴム等の弾性緩衝体18が外装されている。
【0042】
また、前記回収操作軸26の上部には、図6に示すように、前記切断操作軸13と同様に、左右一対の第3係止環28を備えた取付けアーム29が吊り環付きネジ部材30で締付け固定され、この第3係止環28と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、水圧による回収操作軸26の上方への飛び出し移動を阻止するための飛び出し防止手段Cが装着可能に構成されている。
【0043】
前記第1軸受部12及び第2軸受部25は同一構造に構成されており、具体的には、図8に示すように、前記天蓋11Aに貫通形成された軸挿通孔32の下半側が、切断操作軸13及び回収操作軸26の最大揺動範囲を規制する下方拡がりのテーパー規制面32aに構成され、前記軸挿通孔32の上半部が、軸受け球状体33を回動自在に支持する部分球状受け面32bに構成されている。
【0044】
さらに、前記軸受け球状体33には、切断操作軸13及び回収操作軸26を摺動及び回転自在に貫通支持する軸孔33aが形成されているとともに、前記天蓋11Aには、軸受け球状体33の回動を案内する部分球状の押え面34aを備えた押え板34がボルト35にて取付けられている。
【0045】
また、前記軸受け球状体33の軸孔33aの内周面には、切断操作軸13の外周面及び回収操作軸26の外周面との間を水密に密封する第1シール材36が設けられ、前記押え板34の押え面34aにも、軸受け球状体33の外周面との間を水密に密封する第2シール材37が設けられている。
【0046】
前記天蓋11Aの二箇所には、図6、図7に示すように、樹脂ライニング膜1aに対する保持作業や切断作業等の作業状況を目視確認したり、作業箇所を照明する際に使用される作業用窓38が設けられている。
【0047】
前記飛び出し防止手段Cは、図6に示すように、二つの係止フック40と巻取り及び繰り出し可能なチェーン41とを備えた手巻きウインチ42から構成されている。
【0048】
次に、上述の如く構成されたハウジングH、穿孔装置A、膜切断装置Bを用いたライニング管の貫通孔形成方法及びこの方法を用いた仕切弁Dの新設工事について説明する。
【0049】
[1]図1は、前記水道管2の貫通孔形成作業領域に、水道管2の管壁2Aに形成される弁体装着孔となる貫通孔3に対応する部位に接続管部4Bを備えたハウジングHの構成部材で、管周方向で三分割構成された割T字管4を外装固定する割T字管連結工程を示す。
【0050】
この割T字管連結工程の準備工程として、水道管2の貫通孔形成作業領域の外周面に付着している錆び瘤、石、砂等を除去し、各分割継手体4Aに装着されたパッキン8が接触する管壁2Aの外周面を清掃した後、その清掃された外周面に滑剤を塗布し、管壁2Aの所定装着位置に三分割された分割継手体4Aを取付ける。
【0051】
前記割T字管4が水道管2に外装固定されたとき、図示はしないが割T字管4の接続管部4Bの連結フランジ4Cにフランジ蓋を取付け、割T字管4内に圧力水を充填して水圧試験を行う。
【0052】
この水圧試験に合格すると、図1に示すように、前記割T字管4の内周面と水道管2の外周面との間の内部空間に、前記貫通孔3の形成領域を除く状態で補強充填材の一例である超速硬セメント(ジェットセメント)51を充填して、前記貫通孔3が形成される水道管2の管壁2Aを補強する。
【0053】
[2]図2、図3は、前記割T字管4の接続管部4Bの連結フランジ4Cに、作業用開閉弁5を連結してハウジングHを構成する開閉弁連結工程と、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに穿孔装置Aのケーシング47を水密状態で連結する穿孔装置連結工程と、この穿孔装置Aのホールソー45及びセンタードリル46を開弁操作された作業用開閉弁5及び割T字管4の接続管部4Bを通して送り込んで水道管2の管壁2Aに円形状の貫通孔3を形成する穿孔作業工程とを示す。
【0054】
前記開閉弁連結工程では、前記割T字管4の連結フランジ4Cに、作業用開閉弁5の下側連結筒部5Dを外装して、下側連結筒部5D内の上部に設けられている環状当り部5Eを接続管部4Bの連結フランジ4Cに載置支持させたのち、下側連結筒部5Dに設けられている引き寄せボルト9を連結フランジ4Cの下面に係合した状態で締め込み操作して、作業用開閉弁5の弁ケース5Aを割T字管4の連結フランジ4Cに引き寄せ固定する。
【0055】
前記穿孔装置Aのケーシング47の下部には、図4に示すように、弁ケース5Aの弁内流路(内部空間)のうち、閉弁操作された弁体5Cによって区画される下流側流路(上側内部空間)とでホールソー45及びセンタードリル46の格納空間48を形成可能な連結ケース49が設けられているとともに、前記連結ケース49の下部には、作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに対して締結手段の一例である複数本のボルト・ナットを介して水密状態で固定連結される連結フランジ49Aが形成されている。
【0056】
前記穿孔作業工程では、前記ホールソー45に先行してセンタードリル46が水道管2の管壁2Aの貫通孔形成相当箇所及びこれに対応する樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを貫通し、この貫通時点でセンタードリル46に設けられている一対の係止爪(図示はしないが、上述した膜保持具27の両膜係止爪27Aと同じ構造)が自重で自動的に飛び出し、両係止爪は、センタードリル46で形成された樹脂ライニング膜1aの内周面側のドリル孔1b周縁に係止可能な係止姿勢となる。
【0057】
しかし、前記ホールソー45の先端に設けられる切削チップは、切削の主体である鋳鉄管や鋼管等の硬度の高い水道管2を対象にしたチップ形状に構成されており、さらに、樹脂ライニング層1は施工後の硬化によってある程度の剛性を有するものの、まだ樹脂としての適度の弾性を有している。
【0058】
そのため、ホールソー45で水道管2の管壁2Aの貫通孔形成相当箇所を円形状に切断分離できても、ホールソー45の切削チップが接触する樹脂ライニング層1の貫通孔形成相当箇所は水道管2の管軸芯側に撓み変形する若しくは水道管2の内周面から剥離しながら管軸芯側に撓み変形するため、切削チップと接触する樹脂ライニング層1の一部が切断されても円形状に切断分離することができない。
【0059】
[3]図4は、前記貫通孔3の形成後に穿孔装置Aのホールソー45及び切断壁片2aを保持するセンタードリル46を格納空間48内に戻して作業用開閉弁5を閉弁操作する穿孔治具回収工程を示し、この穿孔治具回収工程後に、穿孔装置Aの連結ケース49の連結フランジ49Aを作業用開閉弁5の連結フランジ5Gから撤去する穿孔装置撤去工程を実行する。
【0060】
前記穿孔治具回収工程において、前記貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aは上述の如く樹脂ライニング層1に繋がった状態にあるため、ホールソー45及びセンタードリル46を上昇操作したとき、前記センタードリル46の係止姿勢にある両係止爪が、当該センタードリル46で形成されている樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bから無理やりに引き抜かれ、両係止爪は水道管2の管壁2Aから切断分離された切断壁片2aに係合し、この切断壁片2aのみがホールソー45及びセンタードリル46と共に格納空間48内に回収される。
【0061】
[4]図5〜図8は、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに、膜回収治具B2の膜切断作業用ケース11の下端部に設けた連結フランジ11Bを水密状態に連結する膜回収装置連結工程を示す。
【0062】
前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aの蓋中心位置に設けられた第1軸受部12には、切断具の一例である鋸刃14を備えた切断操作軸13が貫通支持され、蓋中心位置から径方向外方に偏倚して設けられた第2軸受部25には、膜保持具27を備えた回収操作軸26が貫通支持されている。
【0063】
前記切断操作軸13には、穿孔装置Aによる穿孔作業終了時の樹脂ライニング膜1aの状況から選定された最適な鋸刃14が取付けられている。
【0064】
当該実施形態では、前記膜切断作業用ケース11の内径が作業用開閉弁5の上側連結筒部5Fの内径よりも小に構成されているため、作業用開閉弁5の連結フランジ5Gと膜切断作業用ケース11の連結フランジ11Bとの間に、フランジ径調整用の合フランジ19が設けられている。
【0065】
尚、前記膜切断作業用ケース11の内径と作業用開閉弁5の上側連結筒部5Fの内径とが同径に構成されている場合には、フランジ径調整用の合フランジ19は省略することができる。
【0066】
[5]図9、図10は、前記膜切断装置Bの膜切断治具B1及び膜回収治具B2を操作して、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング層1の樹脂ライニング膜1aを回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に沿って切断分離する膜切断作業工程を示す。
【0067】
この膜切断作業工程では、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aに設けられている二つの作業用窓38のうち、一方の作業用窓38から照明器具でハウジングH内の膜切断作業箇所を照明し、且つ、他の作業用窓38から膜切断作業箇所を目視確認しながら、膜回収治具B2の回収操作軸26を摺動及び揺動操作して、膜切断作業用ケース11内に位置する膜保持具27を蓋中心位置側に寄せながら下降させ、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aの中心位置に形成されているドリル孔1bに膜保持具27を貫通移動させる。
【0068】
前記膜回収治具B2の膜保持具27が樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bに挿入されるときには、膜保持具27の両膜係止爪27Aがドリル孔1bの周縁との接触によって格納凹部27b内に格納揺動され、貫通直後に、格納凹部27b内に格納されていた両膜係止爪27Aが外方に飛び出し揺動し、両膜係止爪27Aが格納凹部27b内の下端面との当接によって樹脂ライニング膜1aのドリル孔1bの周縁部分に係止可能な係止姿勢に維持される。
【0069】
次に、上述と同様に、一方の作業用窓38から照明器具でハウジングH内の膜切断作業箇所を照明し、且つ、他の作業用窓38から膜切断作業箇所を目視確認しながら、前記膜切断治具B1の切断操作軸13を摺動及び揺動操作して、又はこれに回転操作を加えて、当該切断操作軸13の下端に取付けられている鋸刃14を、管壁2Aの貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aのうち、ホールソー45の切削チップと接触した回転切削移動軌跡上の破断箇所に差し入れる又は薄肉化した脆弱部分に突き刺し、切断操作軸13を上下方向に往復操作して、鋸刃14により樹脂ライニング膜1aを貫通孔3の内周縁に沿って切断分離する。
【0070】
このとき、前記膜回収治具B2の回収操作軸26を少し引上げ側に摺動及び揺動操作して、樹脂ライニング膜1aを鋸刃14による切断に最も適した姿勢に調節することにより、膜切断作業能率の向上を図ることができる。
【0071】
上記の膜切断作業工程では、前記回収操作軸26の上部に設けられた取付けアーム29の両第3係止環28と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、水圧による回収操作軸26の上方への飛び出し移動を阻止するための飛び出し防止手段Cが装着されているが、前記切断操作軸13には飛び出し防止手段Cは装着されていない。
【0072】
尚、前記切断操作軸13の上部に設けられた取付けアーム21の両第1係止環20と天蓋11A側の第2係止環23とにわたって、膜切断のための切断操作軸13の摺動及び揺動操作又は必要に応じて加えられる回転操作を許容する緩み状態で飛び出し防止手段Cを装着してもよい。
【0073】
[6]図11、図12は、前記膜切断治具B1の切断操作軸13及び膜回収治具B2の回収操作軸26を夫々上方に摺動操作して、切断操作軸13の鋸刃14及び切断分離された樹脂ライニング膜1aを係止保持している回収操作軸26の膜保持具27を膜切断作業用ケース11内の格納空間11C内に取り出したのち、前記作業用開閉弁5を閉弁操作する切断膜回収工程を示す。
【0074】
この切断膜回収工程後に、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gとフランジ径調整用の合フランジ19との連結を解除し、作業用開閉弁5から膜切断作業用ケース11を撤去する膜切断装置撤去工程を実行する。
【0075】
[7]図13は、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gに対して水密状態で固定連結される連結フランジ55Aと、昇降操作軸55Bを水密状態で昇降自在に貫通支持する昇降ガイド部材55Cとを備えた弁装着作業ケース55のうち、前記昇降操作軸55Bの下端部に取付けられた吊下げ連結部材55Dの雌ネジ部に、前記仕切弁Dの上部ケース56の上端側の軸受部56aに形成された雄ネジ部を螺合連結したのち、この上部ケース56が組付けられた弁装着作業ケース55をクレーン等で作業用開閉弁5上に吊下げ搬送し、この弁装着作業ケース55の連結フランジ55Aと作業用開閉弁5の連結フランジ5Gとを固定連結する弁装着作業ケース取付け工程を示す。
【0076】
前記仕切弁Dの上部ケース56は、割T字管4の連結フランジ4Cに対して固定連結用のボルト57で水密状態に固定連結される下側連結フランジ56bを備えた上側ケース体56Aと、該上側ケース体56Aの上端に形成された連結フランジ56cに水密状態で固定連結される弁蓋56Bとから構成されているとともに、前記弁蓋56Bの軸受部56aには、仕切弁体58の弁棒59が水密状態で貫通支持されている。
【0077】
次に、前記昇降操作軸55Bの上端部に設けた操作杆60と弁装着作業ケース55との間に仕切弁Dの上部ケース56及び仕切弁体58を水圧に抗して所定装着位置に押し込み操作するためのジャッキ機構(図示せず)を設けたのち、前記作業用開閉弁5を開弁操作するとともに、前記ジャッキ機構を下降操作し、上部ケース56の下側連結フランジ56bを作業用開閉弁5の内部流路を通して割T字管4の連結フランジ4C上に当接する位置にまで下降させる。
【0078】
このとき、前記割T字管4の連結フランジ4Cには、上部ケース56の下側連結フランジ56bに形成されたネジ孔56dに係合する位置決め用のボルト61が設けられているため、当該ボルト61による位置決めガイド作用によって、前記割T字管4の連結フランジ4Cに対する上部ケース56の下側連結フランジ56bの装着位置が自動修正されて所定装着位置に確定される。
【0079】
前記割T字管4の連結フランジ4Cに対する上部ケース56の下側連結フランジ56bの装着位置が確定されたとき、割T字管4の連結フランジ4Cと上部ケース56の下側連結フランジ56bとを、前記位置決め用のボルト61を取り外して付け替えた固定連結用のボルト57で水密状態に固定連結する弁ケース連結工程を示す。
【0080】
[8]図14は、前記弁ケース連結工程の完了後において、前記作業用開閉弁5の連結フランジ5Gから弁装着作業ケース55を撤去するとともに、この作業用開閉弁5を割T字管4の連結フランジ4Cから撤去する工程を示す。
【0081】
尚、水道管2の内周面に樹脂ライニング層1が形成されているライニング管としては、例えば、水道管2内に、予め内周面側に接着剤が塗布されている柔軟性のある樹脂(ポリエチレン樹脂等)製のシールホースを空気圧によって反転させながら送り込み、当該シールホースを水道管2の内周面に順次接着させて樹脂ライニング層1を形成してあるライニング管、又は、水道管2内に、これよりも少し小径のポリエチレン管等のライニング樹脂管を挿入したのち、このライニング樹脂管で構成される樹脂ライニング層1の外周面と水道管2の内周面との間にセメントミルクを圧入して三層構造としたライニング管、或いは、水道管2の一方の開口からライニング樹脂(2液混合型エポキシ樹脂等)を高速空気流又は管内を移動するライニングピグ等で搬送しながら水道管2の内周面に所定厚の樹脂ライニング層1を形成してあるライニング管等が存在する。
【0082】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記膜切断装置Bの膜切断治具B1と膜回収治具B2とを各別に構成したが、図15に示すように、この膜切断治具B1と膜回収治具B2とを結合して構成してもよい。
【0083】
具体的には、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けられた軸受部65には、ケース外から余裕を持って樹脂ライニング膜1aを保持操作及び切断操作可能な長さを備えた操作軸66が、貫通孔3の孔軸芯Y方向に摺動自在並びに貫通孔3の孔軸芯Y周りで回転自在に貫通支持されているとともに、前記操作軸66の下端部に形成された雄ネジ部66aには、樹脂ライニング膜1aを貫通した状態で当該樹脂ライニング膜1aの下面に係止可能な一対の膜係止爪27Aを備えた膜保持具27が螺合固定されている。
【0084】
前記操作軸66の下側部位には、貫通孔3の径方向に沿って突出する切断支持アーム67が、操作軸66の軸芯方向に沿って取付け位置変更可能な状態で装着されているとともに、前記切断支持アーム67には、水道管2の樹脂ライニング層1における貫通孔3に臨む樹脂ライニング膜1aのうち、ホールソー45の切削チップと接触した回転切削移動軌跡に沿って又は略沿って切断する回転カッター68と、当該回転カッター68を駆動する電動モータ69とを備えた防水構造の切断駆動ユニット70が、貫通孔3の複数の口径に対応して切断支持アーム67の長手方向に取付け位置変更可能な状態で装備されている。
【0085】
そして、前記膜切断治具B1と膜回収治具B2は一本の操作軸66を共有し、前記膜切断治具B1は、切断支持アーム67と切断駆動ユニット70とから構成されているとともに、前記膜回収治具B2は膜係止爪27Aを備えた膜保持具27から構成されている。
【0086】
前記切断駆動ユニット70の回転移動及び樹脂ライニング層1への送り込みは、前記膜切断作業用ケース11の軸受部65に対する操作軸66の回転操作及び摺動操作によって人為的に行うように構成されている。
【0087】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一又は実質的に同一構成であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0088】
また、当該第2実施形態では、前記切断駆動ユニット70の回転移動及び樹脂ライニング層1への送り込みを人為操作で行うように構成したが、この切断駆動ユニット70の回転移動及び樹脂ライニング層1への送り込みをアクチュエータを用いた機械力で行うように構成してもよい。
【0089】
さらに、当該第2実施形態では、切断具として駆動回転する回転カッター68を用いたが、上下方向に往復駆動される電動鋸を用いてもよい。
【0090】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、水道管2の管壁2Aに、仕切弁Dを新設するための弁体装着孔となる貫通孔3を形成したが、この貫通孔3は、仕切弁D以外の流体機器を新設するための弁体装着孔であってもよく、さらに、分岐管を新設するための分岐孔等であってもよい。
【0091】
(2)前記膜切断治具B1の切断操作軸13を、膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けたが、この切断操作軸13を貫通孔3の孔軸芯Yの近傍に配置してもよい。
【0092】
(3)上述の第1実施形態において、前記膜切断作業用ケース11の天蓋11Aにおける貫通孔3の孔軸芯Yを通る蓋中心位置に設けられた第1軸受部12に、前記膜回収治具B2の回収操作軸26を貫通支持させるとともに、前記第1軸受部12から径方向外方に偏倚した部位に設けられた第2軸受部25に、前記膜切断治具B1の切断操作軸13を貫通支持させてもよい。
【0093】
(4)上述の第1実施形態では、水道管2の貫通孔形成箇所に水密状態で外装固定されるハウジングHの割T字管4を、管周方向で三分割された分割継手体4Aから構成したが、これに変えて管周方向で二分割又は四分割された分割継手体から構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本願発明は、ライニング管に対する不断流状態での貫通孔の形成を、貫通孔周縁に連続する管内周面側の樹脂ライニング層の剥離を抑制しながら能率良く確実に行うことのできる貫通孔形成方法及びそれに用いられるライニング管用の膜切断装置として良好に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
A 穿孔装置
B 膜切断装置
B1 膜切断治具
B2 膜回収治具
H ハウジング
Y 孔軸芯
1 樹脂ライニング層
1a 樹脂ライニング膜
2 流体管(水道管)
2A 管壁
2a 切断壁片
3 貫通孔
5 作業用開閉弁
11 膜切断作業用ケース
13 切断操作軸
26 回収操作軸
38 作業用窓
45 穿孔具(ホールソー)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま貫通孔を形成するライニング管の貫通孔形成方法であって、
前記流体管に、当該流体管の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、
前記ハウジングに連結した穿孔装置の穿孔具で流体管の管壁に貫通孔を形成したのち、切断壁片を備えた穿孔装置をハウジングから撤去する穿孔作業工程と、
前記ハウジングに、前記管壁の貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜を切断可能な膜切断装置を取付けて、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離する膜切断作業工程とが備えられているライニング管の貫通孔形成方法。
【請求項2】
前記膜切断作業工程において、前記膜切断装置を用いて前記樹脂ライニング膜を回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作する請求項1記載のライニング管の貫通孔形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のライニング管の貫通孔形成方法に用いられる前記膜切断装置であって、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作可能な膜切断治具と、前記樹脂ライニング膜を回収可能な状態で保持する膜回収治具とが備えられているライニング管用の膜切断装置。
【請求項4】
前記膜切断治具の切断操作軸が、前記ハウジングに連結された膜切断作業用ケースに対して前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在で、且つ前記貫通孔の径方向に揺動操作自在に貫通支持されているとともに、前記膜回収治具の回収操作軸が、前記膜切断作業用ケースに対して少なくとも前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在に貫通支持されている請求項3記載のライニング管用の膜切断装置。
【請求項5】
前記膜切断治具の切断操作軸が、膜切断作業用ケースにおける前記貫通孔の孔軸芯上又はその近傍に配置されている請求項4記載のライニング管用の膜切断装置。
【請求項6】
前記膜切断作業用ケースには、複数の作業用窓が設けられている請求項4又は5記載のライニング管用の膜切断装置。
【請求項1】
内周面に樹脂ライニング層が形成されている流体管の管壁に、当該流体管での流体の流れを維持したまま貫通孔を形成するライニング管の貫通孔形成方法であって、
前記流体管に、当該流体管の貫通孔形成作業領域を密閉する状態で作業用開閉弁を備えたハウジングを装着するハウジング装着工程と、
前記ハウジングに連結した穿孔装置の穿孔具で流体管の管壁に貫通孔を形成したのち、切断壁片を備えた穿孔装置をハウジングから撤去する穿孔作業工程と、
前記ハウジングに、前記管壁の貫通孔に臨む樹脂ライニング層の樹脂ライニング膜を切断可能な膜切断装置を取付けて、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離する膜切断作業工程とが備えられているライニング管の貫通孔形成方法。
【請求項2】
前記膜切断作業工程において、前記膜切断装置を用いて前記樹脂ライニング膜を回収可能に保持した状態で当該樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作する請求項1記載のライニング管の貫通孔形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のライニング管の貫通孔形成方法に用いられる前記膜切断装置であって、前記樹脂ライニング膜を前記貫通孔の内周縁に略沿って切断分離操作可能な膜切断治具と、前記樹脂ライニング膜を回収可能な状態で保持する膜回収治具とが備えられているライニング管用の膜切断装置。
【請求項4】
前記膜切断治具の切断操作軸が、前記ハウジングに連結された膜切断作業用ケースに対して前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在で、且つ前記貫通孔の径方向に揺動操作自在に貫通支持されているとともに、前記膜回収治具の回収操作軸が、前記膜切断作業用ケースに対して少なくとも前記貫通孔の孔軸芯方向に摺動操作自在に貫通支持されている請求項3記載のライニング管用の膜切断装置。
【請求項5】
前記膜切断治具の切断操作軸が、膜切断作業用ケースにおける前記貫通孔の孔軸芯上又はその近傍に配置されている請求項4記載のライニング管用の膜切断装置。
【請求項6】
前記膜切断作業用ケースには、複数の作業用窓が設けられている請求項4又は5記載のライニング管用の膜切断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−19528(P2013−19528A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155808(P2011−155808)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(396020361)株式会社水道技術開発機構 (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(396020361)株式会社水道技術開発機構 (113)
【Fターム(参考)】
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