説明

ライフルスコープおよび整合装置

【課題】
正確な目視整合を提供し、視差を防止して射撃精度を向上させる。
【解決手段】
接眼レンズ部(6)、対物レンズ部(4)、レチクル(10)およびレチクルから軸方向に離れており、使用中に射撃手が見ることができる1以上のマーキング(22a、22b)を備えた整合装置(20)を含んだライフルスコープ。整合装置(20)は、正確な目視整合状態ではマーキング(22a、22b)がレチクル(10)と整合状態に見え、不正確な目視整合状態ではマーキングがレチクルと非整合状態に見えるように設計されている。レチクルは十字線を含み、整合装置のマーキングは使用時に前記十字線と整合できる四分円マーキングを含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はライフルスコープに関する。すなわちライフル銃並びに他の銃器用のテレスコープサイトに関する。本発明はまた正確な目視整合を提供し、視差を防止して射撃精度を向上させるべくライフルスコープに使用する整合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
正確で安定した射撃は視差を防止するためにライフルスコープを利用した中央目視整合を必要とする。視差は標的像をスコープで見ることができる十字線に対して移動させ、精度に影響を及ぼす。現在のライフルスコープは目視的に正確に整合(スコープの光学軸における整合)させるために射撃者の経験に頼っている。もし射撃者が判定を誤れば射撃精度が犠牲になる。
【0003】
不正確な射撃はカント(銃身軸周囲で銃が垂直面から回転すること)によっても生じる。スコープがゼロエレベーション(すなわち銃身軸に対して平行)に設定されていない限り、カントは射撃を照準点から外れさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WO99/27408は主レチクルと、スコープ内に存在し、主レチクルから軸方向に離れている副レチクルとを有したサイトスコープを解説する。これら2本のレチクルを整合させることで正確な目視整合状態が確認でき、視差の可能性が減少する。しかしながらスコープはいくつかの弱点を内包する。これら2本のレチクルの軸方向間隔は比較的に狭く、小さな非整合状態を見極めることは困難である。それらレチクルは両方とも内蔵されており、シルエット状態で確認できるだけであるため、それら2本のレチクルの区別が困難である。弱光状態であるときには一層に困難である。副レチクルはスコープの視界を部分的に遮り、集中を乱す。さらに現行のスコープの構造では副レチクルは容易に利用できない。スコープはさらにカントの問題に対処していない。
【0005】
本発明の1特徴によれば、接眼レンズ部、対物レンズ部、レチクルおよびその接眼レンズ部に隣接してスコープの外部に取り付けられた整合装置を含んだライフルスコープが提供される。この整合装置は、使用中に射撃手が見ることができるように接眼レンズ部周囲に配置された1以上のマーキングを有している。この整合装置は、正確な目視整合状態ではそのマーキングがレチクルと整合状態に見え、不正確な目視整合状態ではマーキングがレチクルと非整合状態に見えるように設計されている。
【0006】
整合装置を含むことで射撃手にとって正確な目視整合状態の確認と、非整合状態の矯正とが非常に容易になった。よって射撃精度は改善される。整合装置は外部に取り付けられているため周囲光で照明されて見易く、レチクルとの区別が容易である。スコープの視界も非妨害状態である。整合装置とレチクルとの大きな軸方向間隔は目視による不正確な整合状態の確認を容易にする。さらに整合装置は単純構造であり、頑丈であって比較的に安価であり、ライフルスコープの価格をさほど押し上げることはない。さらにマーキングをカントの確認のために使用することができる。マーキングは接眼レンズ部の周囲に配置されているため、射撃手の視界の周囲に接近しており、少程度のカントでも容易に認識できる。
【0007】
有利にはレチクルは十字線を含み、整合装置のマーキングは使用時にそれら十字線と整合できる四分円マーキングを含む。
【0008】
有利にはそれらマーキングは接眼レンズ部の周囲から内側に延び、スコープの射出瞳と重なり、レチクルとの整合を容易に確認させる。
【0009】
有利には整合装置は第1マーキングから角度がずれた1以上の別マーキングを有しており、その別マーキングをレチクルと整合させるように回転することができる。有利にはそれらマーキングおよび別マーキングは異なる照明条件で使用するための異なる視認特性を有している。例えばマーキングを明るくしたり暗くしたり、異なる色で彩色したり、反射性としたり、蛍光性としたり、または被照明体としてもよい。
【0010】
あるいは整合装置を接眼レンズ部の自由端に着脱式に取り付ける。好適には整合装置は、マーキングを有し、接眼レンズ部の自由端に取り付けられているリングを含む。本発明のこの形態は非常に単純構造であり安価ではあるが、非常に高性能である。この整合装置は現存のライフルスコープに容易に後付けすることが可能であるため、最低の追加費用でそれら現存のライフルスコープを改良することができる。
【0011】
整合装置はスコープが使用されていないときに接眼レンズ部を覆うカバー要素を含むことができる。カバー要素は好適にはヒンジ式である。よって整合装置は接眼レンズ部を保護する副次機能も提供する。
【0012】
本発明の別な特徴によれば、接眼レンズ部、対物レンズ部およびレチクルを含んだライフルスコープ用の整合装置が提供される。この整合装置は接眼レンズ部に隣接してスコープの外側に取り付けられるように設計されており、使用中の射撃手の視野に入るように接眼レンズ部周囲に配置された1以上のマーキングを有している。この整合装置は、正確な目視整合状態ではマーキングがレチクルと整合状態に見え、不正確な目視整合状態ではマーキングがレチクルと非整合状態に見えるよう設計されている。
【0013】
有利には整合装置のマーキングは使用中にレチクルの十字線と整合できる四分円マーキングを含んでいる。
【0014】
有利にはマーキングは使用中にスコープの射出瞳と重なるように内側に延びている。
【0015】
有利には整合装置は第1マーキングから角度がずれた1以上の別マーキングを有している。この整合装置は使用中に回転することができ、それら別マーキングをレチクルと整合させる。
【0016】
それらマーキングおよび別マーキングは好適には異なる視認特性を有している。
【0017】
有利には整合装置は接眼レンズ部の自由端に着脱式に取り付けられるように設計されている。好適にはこの整合装置はマーキングを有し、接眼レンズ部の自由端に取り付けられるように設計されたリングを含んでいる。
【0018】
有利にはこの整合装置はスコープの非使用時に接眼レンズ部を覆うカバー要素を含んでいる。このカバー要素は好適にはヒンジ式である。
【0019】
以下において本発明の様々な実施例を添付の図面を利用して例示的に説明する。図1は本発明の第1実施例によるライフルスコープの斜視図である。図2は図1のライフルスコープの側断面図である。図3はライフルスコープの標的像である。図4は標的像上の視差の影響を図示している。図5は本発明の第2実施例によるライフルスコープの視界である。図6は別状態にある第2ライフルスコープの視界である。図7は本発明の第3実施例および第4実施例による2つの整合装置と共に示された従来のライフルスコープの斜視図である。
【0020】
図1と図2は本発明の第1実施例によるライフルスコープを図示する。このライフルスコープは1端に対物レンズ部4を有し、他端に接眼レンズ部6を有した円筒体2を含む。この実施例では対物レンズ部4は2セットの対物レンズ4aおよび4bを含み、接眼レンズ部6は2セットの接眼レンズ6aおよび6bを含む。対物レンズ部と接眼レンズ部との間でスコープは1セットの組レンズ8を含む。
【0021】
スコープは射撃手が狙いを定めるために使用する、例えば2本の十字線11であるレチクル10を含む。この実施例ではレチクル10は接眼レンズ部6の焦点面内に位置する。これは狩猟に好適な位置である。あるいはレチクルは対物焦点面12内に置かれる。これは軍事目的に好適な位置である。スコープは上下用タレット14と風用タレット16とを含む。これらタレットはレチクルの垂直位置および水平位置の調整に使用される。
【0022】
前述の特徴は全て従来技術であるため、これ以上詳細に説明しない。
【0023】
本ライフルスコープはスコープの照準の正確な軸整合を提供し、視差を防止する整合装置を含んでいる。図1と図2に示す実施例では、整合装置は接眼レンズ部6の端部に装着された環状リング20を含んでいる。リング20はその端部面に4つの四分円マーキング22aと22bを有している。2つの四分円マーキング22aは接眼レンズ部の垂直軸と整合し、別の2つのマーキング22bは接眼レンズ部の水平軸と整合する。それらマーキングは例えば刻印、描加工または印刷等の適切な方法で創出できる。あるいは蛍光性または被照明体のマーキングを弱光状態での使用のために提供することもできる。
【0024】
図3と図4はスコープの使用状態を図示している。図3は正確な目視整合状態(すなわち照準がスコープの光学軸に位置している)におけるスコープを通した視野を図示している。レチクル10の十字線は四分円マーキング22aと22bと整合している。よってスコープに正確な軸方向目視整合状態を確実に提供し、視差を排除する。レチクル10の十字線11は視野の中央に位置し、標的24と整合し、ライフルの照準が正確に標的と整合していることを示している。
【0025】
図4は不正確な目視整合状態(すなわち照準がスコープの光学軸から外れている)にあるスコープを通した視野を図示している。レチクル10の十字線11は視野の中央から外れたように見え、四分円マーキング22aと22bとは整合していない。視差の影響のため、たとえ銃の狙先が変わっていない場合でも十字線11は標的24と整合していない。射撃手が十字線を標的上に移動させるように照準を調節しても、不正確な発射となるであろう。不正確な照準は不正確な目視整合がもたらす視差によって生じる。
【0026】
このように、レチクル10の十字線11がリング20の四分円マーキング22aと22bと整合しないことから、目視整合が不正確であることを射撃手が認識することは容易である。十字線の見かけの位置と四分円マーキングとを比較することで、射撃手は自身の頭部を正確な目視整合のために移動することで視差を防止し照準精度を向上させることができる。
【0027】
本発明によって提供される別の利点は、四分円マーキング22aと22bはカント(銃身軸周囲で銃が正確な垂直位置から意図せずに回転すること)を防止する補助となる点である。四分円マーキング22aと22bの位置は、例えば水平線または壁等の適切な水平または垂直の基準と比較することができ、必要に応じてカントを排除するよう銃を回転させることができる。同様の効果は十字線を適切な水平または垂直の基準と比較することで従来式スコープでも達成できる。しかしながら射撃手は十字線の中央の目的物にのみ集中する傾向があるためカントには気付きにくい。本発明においては四分円マーキングは非常にはっきりしており、スコープの射出瞳の外側に延びているため、十字線よりもさらに明確な基準を提供し、少程度のカントもはっきりと示すことができる。従って、カントの防止がさらに容易となり、射撃の精度をさらに向上させる。
【0028】
図5と図6は本発明の第2実施例を図示しており、リング20は2つの別セットの四分円マーキング22aと22b、並びに22’aと22’bを有している。リング20は図5に示す位置から図6に示す位置まで反時計回りに45°回転できる。リングが図5に示す位置にあるとき、第1セットの四分円マーキング22aと22bによって目視整合を確認し、リングが図6に示す第2位置まで回転すると第2セットの四分円マーキング22’aと22’bによって目視整合を確認できる。
【0029】
2つのセットの四分円マーキング22aと22b、および22’aと22’bは異なる視界を有しており、異なる明暗状態で使用するように設計されている。例えば弱光状態での使用のために第1セットの四分円マーキング22aと22bを白色で着色することができ、強光状態での使用のために第2セットの四分円マーキング22’aと22’bを黒色に着色することができる。別の色も使用することができ、あるいはマーキングのセットの片方または両方を反射性、蛍光性または被照明体とすることもできる。
【0030】
図7は本発明のさらに別の実施例を2つ示しており、整合装置60と60’は、接眼レンズ部6、対物レンズ部4およびレチクル10を含んだ従来のライフルスコープ62に再装着するための付属品を含んでいる。
【0031】
第1整合装置60は、接眼レンズ部6の端部に、好適には押し込み式に装着できる環状リング64を含んでいる。リング64はその端部面に4つの四分円マーキング66aと66bを有している。これらマーキングは例えば描加工、塗料または印刷等の適切な方法で創出できる。あるいは蛍光性または被照明体のマーキングを弱光状態での使用のために提供することもできる。本実施例ではマーキング22aと22bはリングから内側に延び、接眼レンズ部の射出瞳と少々重なっている。よって、マーキングがレチクルの十字線と正しく整合していることを容易に確認させる。
【0032】
使用に先立って、2つの四分円マーキング66aが接眼レンズ部の垂直軸と整合し、別の2つのマーキング66bが接眼レンズ部の水平軸と整合するようにリング64を調節する。射撃手は使用中にマーキングを視認することができ、マーキングは、正確な目視整合状態ではレチクルと整合状態に見え、不正確な目視整合状態ではレチクルと不整合状態に見えるように設計されている。
【0033】
第2整合装置60’は第1整合装置と殆どの点で類似しており、接眼レンズ部6の端部に、好適には押し込み式に装着できる環状リング64’を含んでいる。リング64’はその端部面に4つの四分円マーキング66a’と66b’を有している。本装置は、ヒンジ70によってリング64’に取り付けられている調節式レンズキャップ68をさらに含んでいる。レンズキャップ68は図7に示す開位置から、接眼レンズ部6の端部を覆って保護する閉位置(図示せず)にまで回転できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1は本発明の第1実施例によるライフルスコープの斜視図である。
図2は図1のライフルスコープの側断面図である。
図3はライフルスコープの標的像である。
図4は標的像上の視差の影響を図示している。
図5は本発明の第2実施例によるライフルスコープの視界である。
図6は別状態にある第2ライフルスコープの視界である。
図7は本発明の第3実施例および第4実施例による2つの整合装置と共に示された従来のライフルスコープの斜視図である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライフルスコープであって、接眼レンズ部、対物レンズ部、レチクルおよび前記接眼レンズ部に隣接して本スコープの外部に取り付けられた整合装置を含んでおり、該整合装置は、使用中に射撃手が見ることができるように前記接眼レンズ部周囲に配置された1以上のマーキングを有しており、前記整合装置は、正確な目視整合状態では前記マーキングが前記レチクルと整合状態に見え、不正確な目視整合状態では前記マーキングが前記レチクルと非整合状態に見えるように設計されていることを特徴とするライフルスコープ。
【請求項2】
レチクルは十字線を含み、整合装置のマーキングは使用時に前記十字線と整合できる四分円マーキングを含んでいることを特徴とする請求項1記載のライフルスコープ。
【請求項3】
マーキングは接眼レンズ部の周囲から内側に延び、スコープの射出瞳と重なることを特徴とする請求項1または2記載のライフルスコープ。
【請求項4】
整合装置は第1マーキングから角度がずれた1以上の別マーキングを有しており、該別マーキングをレチクルと整合させるように回転することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のライフルスコープ。
【請求項5】
マーキングおよび別マーキングは異なる視認特性を有していることを特徴とする請求項4記載のライフルスコープ。
【請求項6】
整合装置は接眼レンズ部の自由端に着脱式に取り付けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のライフルスコープ。
【請求項7】
整合装置は、マーキングを有し、接眼レンズ部の自由端に取り付けられているリングを含んでいることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のライフルスコープ。
【請求項8】
整合装置はスコープが使用されていないときに接眼レンズ部を覆うカバー要素を含んでいることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のライフルスコープ。
【請求項9】
カバー要素はヒンジ式であることを特徴とする請求項8記載のライフルスコープ。
【請求項10】
ライフルスコープ用の整合装置であって、接眼レンズ部、対物レンズ部およびレチクルを含んでおり、本整合装置は前記接眼レンズ部に隣接して前記スコープの外側に取り付けられるように設計されており、使用中の射撃手の視野に入るように前記接眼レンズ部周囲に配置された1以上のマーキングを有しており、本整合装置は、正確な目視整合状態では前記マーキングが前記レチクルと整合状態に見え、不正確な目視整合状態では前記マーキングが前記レチクルと非整合状態に見えるよう設計されていることを特徴とする整合装置。
【請求項11】
マーキングは使用中にレチクルの十字線と整合できる四分円マーキングを含んでいることを特徴とする請求項10記載の整合装置。
【請求項12】
マーキングは使用中にスコープの射出瞳と重なるように内側に延びていることを特徴とする請求項10または11記載の整合装置。
【請求項13】
第1マーキングから角度がずれた1以上の別マーキングを有しており、使用中に回転して前記別マーキングをレチクルと整合させることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の整合装置。
【請求項14】
マーキングおよび別マーキングは異なる視認特性を有していることを特徴とする請求項13記載の整合装置。
【請求項15】
整合装置は接眼レンズ部の自由端に着脱式に取り付けられるように設計されていることを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載の整合装置。
【請求項16】
整合装置はマーキングを有し、接眼レンズ部の自由端に取り付けられるように設計されたリングを含んでいることを特徴とする請求項15記載の整合装置。
【請求項17】
スコープの非使用時に接眼レンズ部を覆うカバー要素を含んでいることを特徴とする請求項10から16のいずれか1項に記載の整合装置。
【請求項18】
カバー要素はヒンジ式であることを特徴とする請求項17記載の整合装置。

【公表番号】特表2009−520945(P2009−520945A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546576(P2008−546576)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004664
【国際公開番号】WO2007/071930
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508182981)
【Fターム(参考)】