ラインヘッドユニットの組立方法
【課題】描画装置本体に装着した後の液滴吐出ヘッドの位置微調整のための時間を短縮でき、描画作業を早期に開始させることのできるラインヘッドユニットの組立方法を提供する。
【解決手段】ベース部材11を描画装置本体から取り外した状態でアクチュエータに通電することによりヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させ、ヘッド取り付け部上に液滴吐出ヘッドをノズル列方向の位置を粗調整して固定し多数の液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニット1を構成し、アクチュエータの通電を停止させてラインヘッドユニットを描画装置本体に装着する。その後、アクチュエータに通電することによりラインヘッドユニットにおけるヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を可動範囲の中心付近に再度位置させて粗調整された液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置を再現する。
【解決手段】ベース部材11を描画装置本体から取り外した状態でアクチュエータに通電することによりヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させ、ヘッド取り付け部上に液滴吐出ヘッドをノズル列方向の位置を粗調整して固定し多数の液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニット1を構成し、アクチュエータの通電を停止させてラインヘッドユニットを描画装置本体に装着する。その後、アクチュエータに通電することによりラインヘッドユニットにおけるヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を可動範囲の中心付近に再度位置させて粗調整された液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置を再現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の液滴吐出ヘッドを配列したラインヘッドユニットを備えた描画装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液滴を射出する液滴吐出ヘッドを用いて、液滴を基材上に着弾させることにより描画を行う描画装置は、例えば半導体回路基板の他、液晶表示装置や有機EL表示装置等の産業用途への利用も試みられている。特に、表示装置においては、大画面化、描画時間短縮のため、多数の液滴吐出ヘッドをノズルの配列方向に沿うように千鳥状等に配列することによって、ノズル列(記録幅)を長尺としたラインヘッドユニットを用いて描画を行う描画装置が用いられる。
【0003】
ラインヘッドユニットは、それぞれ個別に製造された多数の液滴吐出ヘッドを、キャリッジとなる共通のベース部材の所定の位置に取り付け固定することによって組み立てられる。通常、液滴吐出ヘッドの取り付け固定作業は、ベース部材を描画装置本体から取り外した状態で行い、全ての液滴吐出ヘッドを取り付けてラインヘッドユニットを構成し終えたら、これを描画装置本体の所定の装着部位に装着を行う。
【0004】
このようなラインヘッドユニットを用いて描画した際の着弾精度は、各液滴吐出ヘッド自体の性能のばらつきの他にも、平面内におけるノズル(ノズル列)の位置精度(組み付け精度)の影響を受ける。従って、高い着弾精度を実現するためには、特に、液滴吐出ヘッド個々のベース部材に対する位置精度を高めること、具体的には、液滴吐出ヘッドのノズル列方向(副走査方向)のノズルピッチがライン幅全長に亘って均等となるように各液滴吐出ヘッドをベース部材に対して高精度に位置決めすることが重要である。ノズル列方向と直交する方向(主走査方向)の着弾位置ずれについては、射出タイミングを調整することで補正することができるが、ノズル列方向に沿う着弾位置ずれは各液滴吐出ヘッドの取り付け位置で決まってしまうためである。
【0005】
多数の液滴吐出ヘッドを共通のベース部材に対して取り付け固定する際に、各液滴吐出ヘッド間の位置を精密に規定して取り付けすることは困難である。このため、一般に、描画装置本体上とは別のオフライン作業にて液滴吐出ヘッドをベース部材に取り付けてラインヘッドユニットを構成し、これを描画装置本体に装着した後に、各液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して着弾位置ずれを確認するためのチャートを描画し、そのチャートに基づいて各液滴吐出ヘッドのノズル列方向の位置を微調整することが行われている。
【0006】
従来、ラインヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの取り付け位置の微調整を行う技術として、液滴吐出ヘッドを取り付けるヘッド設置部にピエゾ素子からなるアクチュエータを設け、このアクチュエータに所定の電圧を印加することによって伸長駆動させ、液滴吐出ヘッドに対してノズル列方向に移動する力を付与することで、液滴吐出ヘッドの位置を隣接する他の液滴吐出ヘッドに対してそのノズル列方向に微調整するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3880289号公報
【特許文献2】特許第3437963号公報
【特許文献3】特開2003−127392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の技術によれば、多数の液滴吐出ヘッドを共通のベース部材に対して取り付け、これを描画装置本体に装着した後、チャート等を確認し、位置調整が必要な液滴吐出ヘッドに対し、対応するアクチュエータへの通電を行ってその取り付け位置をノズル列方向に微調整することで、描画装置上で位置調整を簡単に行うことができる。
【0009】
しかし、このようなアクチュエータを用いて位置を微調整する場合、通電によってアクチュエータを伸長駆動させるために、通電前の液滴吐出ヘッドの位置に対して伸長方向に沿う方向の微調整は可能であるが、その反対方向への調整ができない問題がある。このため、各液滴吐出ヘッドをベース部材に対して取り付けする際、予め隣接する液滴吐出ヘッド間の離間距離に余裕を持たせておくことで、アクチュエータの伸長方向に沿う方向のみの移動によって位置の微調整が可能となるようにする必要がある。
【0010】
ところが、共通のベース部材に対し、隣接する液滴吐出ヘッド間の離間距離に余裕を持たせたラインヘッドユニットでは、これを描画装置本体に装着した後にチャート等に基づいて着弾位置ずれを補正するための微調整作業を行う際、アクチュエータの作動ストロークが長くなって各液滴吐出ヘッドを調整位置まで移動させるのに時間が掛かり、微調整のための全体の作業時間が長くなってしまう結果、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着してから実際に描画作業を開始できるようになるまでの時間のロスが大きくなる問題があった。
【0011】
そこで、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後の液滴吐出ヘッドの位置微調整のための時間を短縮でき、描画作業を早期に開始させることのできるラインヘッドユニットの組立方法を提供することを課題とする。
【0012】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0014】
請求項1記載の発明は、描画装置本体に着脱可能に設けられるベース部材に、各々独立して位置調整可能に設けられ、ノズルが配列された液滴吐出ヘッドを取り付けるための複数のヘッド取り付け部と、通電によって伸長して各ヘッド取り付け部に対して前記液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向に移動させる力を付与することにより、該ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲内で微調整するアクチュエータとを備え、多数のノズルが配列された複数の液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部にそれぞれ固定することにより複数の液滴吐出ヘッドが配列されたラインヘッドユニットを構成し、このラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着した後、着弾位置ずれ補正のための前記液滴吐出ヘッドの位置微調整作業を行うラインヘッドユニットの組立方法であって、
前記ベース部材を前記描画装置本体から取り外した状態で、前記アクチュエータに通電することにより前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させる第1の工程と、
前記ヘッド取り付け部上に、前記液滴吐出ヘッドをノズル列方向の位置を粗調整してそれぞれ固定することにより、多数の前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニットを構成する第2の工程と、
前記アクチュエータの通電を停止させる第3の工程と、
前記ラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着する第4の工程と、
前記アクチュエータに通電することにより前記ラインヘッドユニットにおける前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を可動範囲の中心付近に再度位置させ、前記第2の工程において粗調整された前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現する第5の工程とを有することを特徴とするラインヘッドユニットの組立方法である。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記第1の工程は、前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させた際、該ヘッド取り付け部の移動後の位置情報を検出して記憶し、
前記第5の工程は、前記第1の工程において記憶された位置情報に従って前記アクチュエータへの通電を制御することにより、前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現することを特徴とする請求項1記載のラインヘッドユニットの組立方法である。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記ベース部材を描画装置の稼働時と同一温度条件にした状態で行うことを特徴とする請求項1又は2記載のラインヘッドユニットの組立方法である。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記ベース部材は、前記液滴吐出ヘッド内の液体を加熱するための加熱手段を備えており、
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記加熱手段を稼働させた後、その加熱温度が恒温状態となって前記ベース部材が描画装置の稼働時と同一温度条件となった後に行うことを特徴とする請求項3記載のラインヘッドユニットの組立方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後の液滴吐出ヘッドの位置微調整のための時間を短縮でき、描画作業を早期に開始させることができるラインヘッドユニットの組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ラインヘッドユニットの一例を示す底面図
【図2】(a)(b)は弾性ヒンジの詳細を示す図
【図3】ヘッド固定プレートの位置調整動作の様子を示す図
【図4】ラインヘッドユニットにおける1つのヘッドの取り付け構造を示す斜視図
【図5】組立装置の概略斜視図
【図6】組立装置の要部斜視図
【図7】オフラインでのラインヘッドユニットの組立方法を説明するフローチャート
【図8】描画装置の一例を示す斜視図
【図9】描画装置の主要部の概略構成を示すブロック図
【図10】描画装置本体への装着後のラインヘッドユニットの組立方法を説明するフローチャート
【図11】位置微調整前の着弾ドット位置を示すテストパターンの平面図
【図12】位置微調整後の着弾ドット位置を示すテストパターンの平面図
【図13】ラインヘッドユニットの他の実施形態を示す底面図
【図14】ラインヘッドユニットの更に他の実施形態を示す底面図
【図15】図14におけるヘッド固定プレートの部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明におけるラインヘッドユニットは、描画装置本体に着脱可能に設けられるベース部材に、各々独立して位置調整可能に設けられ、ノズルが配列された液滴吐出ヘッドを取り付けるための複数のヘッド取り付け部と、通電によって伸長して各ヘッド取り付け部に対して前記液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向に移動させる力を付与することにより、該ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲内で微調整するアクチュエータとを備える。
【0021】
ベース部材には一般に金属材が使用される。金属材としては一般にSUSを用いることができるが、液滴吐出ヘッドの取り付け位置精度を高精度に保つ要請からは、インバー材やノビナイト等の低熱膨張材が好ましく使用される。
【0022】
ヘッド取り付け部は、液滴吐出ヘッドを1つずつ取り付け固定するための部位であり、ラインヘッドユニットを構成する液滴吐出ヘッドの数に対応してベース部材に設けられ、その配列構成も液滴吐出ヘッドの配列構成に対応する。多数の液滴吐出ヘッドのベース部材に対する配列態様は、例えばノズルの配列方向に沿って千鳥状となるように配列するもの、ノズルの配列方向に対して斜めとなるように配列するもの等特に問わないが、いずれの場合も、隣接する液滴吐出ヘッド間のノズルピッチが、液滴吐出ヘッドのノズルピッチと均等ピッチとなるように配列される必要があるものであれば本発明を適用することができる。
【0023】
各ヘッド取り付け部の表面(描画装置本体に装着された時の下面)は、それぞれ1つの液滴吐出ヘッドをねじ止め等の固定具により固定する固定面を有している。ヘッド取り付け部材の表面には、液滴吐出ヘッドをノズルの配列方向に沿って位置調整した上で固定することが可能であり、これによって、ヘッド取り付け部に対する液滴吐出ヘッドの取り付け位置の粗調整を行うことができる。これは例えばヘッド取り付け部に固定するために液滴吐出ヘッドに設けられたねじ挿通穴を、ノズルの配列方向に沿う方向に長い長穴又は取り付けねじのねじ径よりも大径な穴とすることによって実現される。後者の態様では、液滴吐出ヘッドをノズル列方向に沿う方向のみならず、他の方向の取り付け位置も粗調整することができる。
【0024】
アクチュエータはヘッド取り付け部毎に設けられる。アクチュエータには、電圧を機械的な運動に変換する例えばピエゾ素子のような電気機械変換素子が用いられ、通電によって作動子が伸長し、その作動子の先端に当接するヘッド取り付け部に対して、液滴吐出ヘッドの取り付け面と平行な横方向に移動させる力を付与する。横方向とは、ヘッド取り付け部に取り付け固定される液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向である。アクチュエータの通電が停止すると、作動子は収縮して元の状態まで短くなり、ヘッド取り付け部は弾性的に通電前の初期位置まで復帰する。
【0025】
アクチュエータは通電時の電圧を制御することにより、その伸長度合が調整される。ヘッド取り付け部毎に設けられる各アクチュエータはそれぞれ個別に電圧制御されることで、伸長度合も個別に調整される。これにより、各ヘッド取り付け部は、ベース部材に対する位置を液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う所定の可動範囲内で独立して微調整される。
【0026】
複数の液滴吐出ヘッドが配列されたラインヘッドユニットは、このベース部材の各ヘッド取り付け部に対してそれぞれ液滴吐出ヘッドを固定することにより構成される。液滴吐出ヘッドには、多数のノズルが一方向に沿って配列されており、各液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向と同一方向となるようにベース部材に配列される。
【0027】
本発明におけるラインヘッドユニットの組立方法は、描画装置本体上とは別のオフライン作業にて液滴吐出ヘッドをベース部材に取り付ける作業工程から、多数の液滴吐出ヘッドがベース部材に取り付け固定されたラインヘッドユニットを描画装置本体に装着して、液滴吐出ヘッドの取り付け位置の微調整を行う作業工程までを含む。
【0028】
第1の工程は、ベース部材を描画装置本体から取り外したオフライン状態で行われる。このときヘッド取り付け部は、アクチュエータに所定の電圧を印加し続けることによって、ベース部材に対する位置が所定の可動範囲の中心付近となるように位置調整された状態を保持しておく。
【0029】
ここで可動範囲の中心付近とは、その位置からアクチュエータの電圧値をプラス側又はマイナス側のいずれに制御しても、アクチュエータを伸長又は収縮させてヘッド取り付け部の位置を可動範囲の両方向に向けて移動させることができる位置にあるということであり、好ましくは可動範囲の中心位置である。
【0030】
第2の工程は、同じくオフライン状態のまま、各ヘッド取り付け部上にそれぞれ液滴吐出ヘッドを、ノズルの配列方向を同一方向に揃えて固定するが、このとき、隣接する液滴吐出ヘッド間のノズルの配列方向の位置を、ノズルピッチがほぼ均等ピッチとなるように粗調整して各ヘッド取り付け部にそれぞれ固定する。これにより、液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニットを構成する。
【0031】
なお、ここでいう粗調整とは、チャート等の描画を行うことなく、ベース部材上だけで各液滴吐出ヘッドの位置を調整することである。
【0032】
このラインヘッドユニットが構成されたら、第3の工程では、アクチュエータの通電を停止させる。これにより、各ヘッド取り付け部の位置は、通電前の初期位置に復帰する。
【0033】
これら第1〜第3の工程は、オフライン状態であれば、作業者の手作業によって行ってもよいし、専用の組立装置を用いて行ってもよい。
【0034】
第4の工程は、このようにして液滴吐出ヘッドの位置が粗調整されて構成されたラインヘッドユニットを、描画装置本体の所定の装着部位に装着する。このとき同時に、各液滴吐出ヘッドや各アクチュエータ等の電気的動作部品に対する通電を行うための電気的接続が描画装置本体との間でなされる。
【0035】
第5の工程は、描画装置本体に装着されたラインヘッドユニットの各アクチュエータに通電することにより、そのヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を、第1の工程と同じ可動範囲の中心付近に再度位置させる。この作業は描画装置の機能として実行することができる。これにより、第2の工程において粗調整された液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置が再現される。
【0036】
この液滴吐出ヘッドの取り付け位置の再現は、第1の工程において、ヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させた際に、そのヘッド取り付け部の移動後の位置情報を検出して記憶しておき、この第5の工程において再現する際に、その記憶された位置情報を読み出し、その読み出された位置情報に従ってアクチュエータへの通電を制御することによって行うことが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッドを粗調整した時と同一の状態を簡単に再現することができる。
【0037】
ヘッド取り付け部の位置情報は、例えばアクチュエータの作動子の伸長位置を位置検知センサ等を用いて検出することによって取得することができる。また、ヘッド取り付け部の位置そのものを適宜の位置検知センサを用いて検出することによって取得するようにしてもよい。
【0038】
ヘッド取り付け部の位置情報の記憶及びその再現は、例えば以下に列記する方法によって行うことができる。
【0039】
(1)ベース部材上に不揮発メモリを設け、第1の工程において検出された位置情報をこの不揮発メモリに記憶しておき、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した際、描画装置本体の制御装置がこの不揮発メモリから位置情報を読み取ることによって再現する。
【0040】
(2)第1の工程において検出された位置情報を、ベース部材上の所定部位にバーコード等によって記録形成し、そのラインヘッドユニットを描画装置本体に装着する際、描画装置本体側に設けられたバーコードリーダー等の読み取り装置によって読み取り、その読み取った位置情報に基づいて再現する。
【0041】
(3)ラインヘッドユニットの組立装置又は作業用PC(パーソナルコンピュータ)を、描画装置本体又は描画装置本体と接続された描画装置の制御用PCと情報交換可能に接続し、第1の工程において検出された位置情報を、その時点で組立装置内又は作業用PC内に記憶しておき、第5の工程においてラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した際、その組立装置又は作業用PCから描画装置本体又は制御用PCへ位置情報を読み出すことによって再現する。
【0042】
(4)第1の工程において検出された位置情報を、組立装置又は作業用PCからネットワークを介して所定のサーバ内に、ラインヘッドユニットと一対一に対応する管理番号と共に格納しておき、そのラインヘッドユニットを描画装置本体に装着する際、描画装置本体内の制御装置又は制御用PCがサーバ内から管理番号に対応する位置情報を読み出してダウンロードし、そのダウンロードされた位置情報に基づいて再現する。
【0043】
以上の各方法によれば、ラインヘッドユニットのオフラインでの粗調整作業と描画装置本体への装着作業とが時間的及び空間的に隔絶された作業環境であっても、描画装置本体への装着後に粗調整時の条件を容易に再現することができる。特に(1)(2)の方法は、ラインヘッドユニット自体が粗調整時の位置情報を持つため、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着するだけで簡単に位置情報の読み出し及び再現が可能である。
【0044】
第1の工程及び第2の工程は、ベース部材を描画装置の稼働時と同一温度条件にした状態で行うことが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッドの粗調整時と描画装置の稼働時との条件を同じくすることができるので、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後に液滴吐出ヘッドの粗調整時の位置を再現する際により精度良く再現することができ、実際の描画動作時の着弾位置ずれの抑制効果を高めることができる。
【0045】
描画装置の稼働時の温度条件には、例えば描画装置が設置される周囲の環境温度、描画装置を稼働させた際に各種の駆動部材から発生する熱による描画装置自体の温度が挙げられる。第1の工程及び第2の工程をこのような温度条件と同一温度条件で行うには、第1の工程及び第2の工程の作業環境を描画装置が置かれる環境温度と同条件にしたり、ベース部材に設けられるアクチュエータを描画装置の稼働時と同一温度となるように駆動させたりすることによって行うことができる。
【0046】
また、ラインヘッドユニットには、液滴吐出ヘッドから吐出される液体を所定温度に加熱することによって粘度を低下させるように機能するものがあり、この場合は、ベース部材に液体を加熱するための加熱手段が設けられている。このようなラインヘッドユニットの場合は、第1の工程及び第2の工程において、この加熱手段を稼働させた後、その加熱温度が所定の恒温状態となってベース部材が描画装置の稼働時と同一温度条件となった後に行うことが好ましい。液滴吐出ヘッドの粗調整作業を、ベース部材の熱膨張等の条件が描画装置の稼働時と同一の条件で行うことができるため、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後に液滴吐出ヘッドの粗調整時の位置を再現する際により精度良く再現することができ、実際の描画動作時の着弾位置ずれの抑制効果を更に高めることができる。
【0047】
このようにして描画装置本体に装着されたラインヘッドユニットは、その後、所定のテストパターンデータに基づいてテスト基材上に液滴を吐出することにより、各液滴吐出ヘッドの着弾位置ずれを検査するためのテスト描画を行う。そして、そのテスト描画の結果に基づいて、ラインヘッドユニット上のアクチュエータへの通電を各アクチュエータ毎にそれぞれ制御することにより、各液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う取り付け位置を微調整することによって本調整を行う。
【0048】
このとき、ラインヘッドユニットは、オフライン作業にて粗調整された状態、すなわち各ヘッド固定プレートがその可動範囲の中心付近に位置決めされた状態から取り付け位置の微調整のための移動を行うことになるので、アクチュエータを伸長又は収縮させることによって、可動範囲内のいずれの方向への微調整も可能であり、しかも、その微調整のための移動距離は極めて微小で済むため、微調整にかかる時間も短縮できる。このため、その後の描画作業を早期に開始させることができるようになる。
【0049】
次に、本発明に係るラインヘッドユニットの組立方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0050】
まず、最初にラインヘッドユニットの構成について図1〜図4を用いて説明する。図1はラインヘッドユニットの一例を示す底面図である。
【0051】
ラインヘッドユニット1は、一枚の大判なプレート状のベース部材11の下面に多数の液滴吐出ヘッドH(以下、単にヘッドHという。)が個別に取り付け固定される。本実施形態では、12個のヘッドHが、各ノズル列を図中のX方向に沿うように配列され、それがY方向に並列されている。なお、X方向とY方向とは互いに直交する方向である。
【0052】
各列のヘッドHの位置はX方向に互いにずれており、これにより、12個のヘッドHはX方向に沿って千鳥状に配列され、X方向に沿って長尺な記録幅を有するラインヘッドが構成される。なお、図1において、ベース部材11には11個のヘッドHが取り付け済みであり、残りの1個のヘッドHが未装着の状態を示している。
【0053】
ベース部材11は、ヘッドHの配列方向(X方向)に沿う2列の開口枠12を有しており、その開口枠12内にヘッド取り付け部であるヘッド固定プレート13が、ヘッドHを個別に取り付け可能とするべく該ヘッドHと同数配置されている。
【0054】
各ヘッド固定プレート13は、ヘッドHのノズル列方向(X方向)の両側端辺における一方端辺において、該ヘッドHのノズル列方向に間隔をおいて配置された同一長さの2本の弾性ヒンジ14によってベース部材11と一体に連結され、該ベース部材11に保持されている。各ヘッド固定プレート13は、この弾性ヒンジ14のみでベース部材11と繋がっており、それ以外の部位は開口枠12内においてベース部材11から離間している。
【0055】
また、各ヘッド固定プレート13の他方端辺側の開口枠12内には、ベース部材11との間にそれぞれアクチュエータ15が配置され、各ヘッド固定プレート13に対してアクチュエータ15がY方向に沿って並設されている。ここでは、各ヘッド固定プレート13の他方端辺側の1つの隅角部において、ヘッドHのノズル列方向と交差する側方(Y方向)である開口枠12の内周に向けて張り出した押圧操作部となる突出部131が形成されており、一方、ベース部材11には、開口枠12の内周から図中Y方向に沿いヘッド固定プレート13に向けて張り出した突出部111が形成されており、これらの突出部131、111の間で、図中X方向に沿う方向、すなわちヘッドHのノズル列方向に対して平行な横方向の押圧力を作用させるようになっている。
【0056】
これらベース部材11の開口枠12内に設けられたヘッド固定プレート13、弾性ヒンジ14、突出部111、131、アクチュエータ15によって、ヘッドHの取り付け位置を微調整するための微調整機構を構成している。この微調整機構は、アクチュエータ15の作動によって突出部131に対して所定の押圧力を作用させると、ヘッド固定プレート13にはX方向に沿う横方向(ノズル面に対して平行な水平方向)の力が作用し、この力によって2本の弾性ヒンジ14が微小に撓み変形して均等に傾倒することで、ヘッド固定プレート13のX方向への平行度を維持したまま、すなわち、ヘッドHのノズル列方向がX方向に対してなす角度を維持したまま、ヘッドHのノズル列方向に沿う方向の位置が微調整されるようになっている。
【0057】
図2は弾性ヒンジ14の詳細を示し、図3はヘッド固定プレート13の位置調整動作の様子を示している。図2(a)はヘッド固定プレート13に対してアクチュエータ15の押圧力が作用していない状態、(b)はヘッド固定プレート13に対して矢印方向にアクチュエータ15の押圧力が作用している状態をそれぞれ示している。なお、実際の弾性ヒンジ14の変形量はμmオーダーの極めて微小なものであるが、図中では変形量を誇張して示している。
【0058】
弾性ヒンジ14は、ヘッド固定プレート13とベース部材11の開口枠12の内周とに亘って、ベース部材11及びヘッド固定プレート13と同一部材によって一体成形されている。弾性ヒンジ14の数は、1つのヘッド固定プレート13に対して、ヘッドHのノズル列方向の両側端辺における一方端辺に、間隔をおいて平行に2本設けられれば足りるが、必要に応じて配設数を適宜増加させてもよい。
【0059】
各弾性ヒンジ14は、ヒンジ本体141の両端のベース部材11との接続部位及びヘッド固定プレート13との接続部位に、それぞれヒンジ本体141よりも幅狭状となる括れ部142が形成されている。各括れ部142は、ヒンジ本体141の両端が、両側から円弧状に削り取られることによって形成されている。
【0060】
これにより、ヘッド固定プレート13にアクチュエータ15の押圧力が作用した際、その押圧力はこの括れ部142に応力集中し、ヘッド固定プレート13との接続部位側では、矢印で示す押圧力の作用方向に対して手前側が圧縮され、奥側が引張され、ベース部材11との接続部位側では、矢印で示す押圧力の作用方向に対して手前側が引張され、奥側が圧縮されることでそれぞれ弾性変形し、ヘッド固定プレート13のX方向の位置を移動させる。このとき、ヘッド固定プレート13は2本の弾性ヒンジ14によってベース部材11に一体に連結されているため、ヘッドHのノズル列方向がX方向に対してなす角度は崩れることはない。従って、図3に示すように、ヘッドHはX方向に対する平行度を維持したまま、X方向に対する位置が微調整される。
【0061】
各アクチュエータ15は、各ヘッド固定プレート13と開口枠12の内周との間であって、ベース部材11と各ヘッド固定プレート13とにそれぞれ突設された突出部111と突出部131との間に並置されており、押圧力を各ヘッドHのノズル列方向と平行となるように作用させるように設けられている。これによれば、隣接するヘッド固定プレート13、13との間の距離を可及的近接させることができ、ラインヘッドユニット1を可及的小型化することが可能である。
【0062】
アクチュエータ15は、図3に示すように、アクチュエータ本体151の一端に作動子152が伸縮可能に設けられており、アクチュエータ本体151の後端はベース部材11の突出部111に対して固定されているが、この作動子152の先端はヘッド固定プレート13の突出部131に対して固定されずに単に当接しているだけとなっている。これにより、作動子152が図中矢印方向に伸張すると、突出部131に対して摺動しつつ該突出部131を横方向に押し、弾性ヒンジ14の弾性変形によって、ヘッド固定プレート13の開口枠12内におけるベース部材11に対するX方向の位置を変化させる。作動子152が縮小すると、ヘッド固定プレート13は、弾性ヒンジ14が弾性復帰することによって元の位置に戻る。
【0063】
各ヘッド固定プレート13は、ヘッドHを個別に着脱可能に取り付け固定するためのねじ穴132を有している。各ヘッドHは、多数のノズルnが配列されたノズル列方向がX方向に沿うように、ベース部材11の各ヘッド固定プレート13に対して配置される。
【0064】
各ヘッドHには、ノズル面h1と反対側において両側方に突出するフランジh2を有しており、このフランジh2において取り付けビス16によってヘッド固定プレート13のねじ穴132にねじ止め固定される。ヘッドHのフランジh2には、取り付けビス16を挿通させるねじ挿通穴h3が各々2個ずつ計4個形成されている。このねじ挿通穴h3は、取り付けビス16のねじ部分の外径よりも大径に形成されており、取り付けビス16によってヘッド固定プレート13のねじ穴132にねじ止めされる際、ヘッドHをこのねじ挿通穴h3の範囲内においてXY方向に位置調整可能となっている。
【0065】
なお、図1中の符号17A、17Bは、ベース部材11の下面におけるX方向の両端部近傍にそれぞれ形成された位置確認用マークであり、これらを結ぶ直線がベース部材11の中心線を通るように位置付けられており、ベース部材11の位置及び角度を検出するために利用される。各ヘッド固定プレート13の位置は、この位置確認用マーク17A、17Bに対して予め位置決め保証されている。
【0066】
次に、ラインヘッドユニットをオフラインで組み立てるための組立装置について図5、図6を用いて説明する。図5は組立装置の概略斜視図、図6はその要部の斜視図である。
【0067】
組立装置2は、基台21上にXYθステージ22が設けられており、ベース部材11を、ヘッドHの取り付け面側を上面にして載置し支持するための組立ステージ23が、このXYθステージ22に設けられている。
【0068】
XYθステージ22の上方には、ラインヘッドユニットの組立時にヘッドHを掴んでベース部材11のヘッド固定プレート13に位置決めするためのクランパ24が配置され、このクランパ24を支持する支持ステージ25がXYθステージ22の側方に設置されている。クランパ24は、支持ステージ25から組立ステージ23の上方に向けて延び、該組立ステージ23の上方に所定距離をおいて対面するよう配置されるクランパ支持プレート26の下面に、水平方向にθ回転可能に取り付けられており、支持ステージ25によってクランパ支持プレート26がX方向、Y方向及びこれらX方向及びY方向と直交するZ方向に沿って移動可能となっている。
【0069】
X方向とY方向は水平面において互いに直交する方向である。
【0070】
また、基台21上には、図中X方向に沿うように架設されたガントリ27に、XYZステージ28が設けられ、このXYZステージ28に下方の組立ステージ23を視認するためのカメラ29が設けられている。カメラ29の撮影画像は、この組立装置2に接続された不図示のモニタ画面上に表示されるようになっている。
【0071】
なお、XYθステージ22による組立ステージ23のXYθ方向の各位置、支持ステージ25によるクランパ支持プレート26のXYZ方向の各位置及びクランパ24のθ方向の位置は、不図示のエンコーダによって精密に検出される。
【0072】
次に、かかる組立装置2を用いたオフラインでのラインヘッドユニット1の組立方法について、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0073】
まず、ベース部材11を組立装置2の組立ステージ23上にセットする(S1)。ベース部材11は、ヘッドHの取り付け面側が上面となるように組立ステージ23にセットされ固定される。
【0074】
次いで、ベース部材11を、不図示の通電ケーブルと通電可能に接続し、ベース部材11上に設けられた不図示のヒータに通電を行って加熱状態とする(S2)。
【0075】
この通電後、ヒータは昇温を開始し、やがて描画動作と同じ恒温状態に達する。ヒータが恒温状態となったら、各アクチュエータ15に通電を行って、各ヘッド固定プレート13を移動させ、全てのヘッド固定プレート13を、図3中の実線で示すように、その可動範囲の中央付近に位置させる(S3)。
【0076】
このときの各ヘッド固定プレート13の位置は、不図示の位置センサによって検出される。検出された各ヘッド固定プレート13の位置情報は、ここでは、ベース部材11上に設けられた不図示の不揮発メモリに記憶されるものとする。
【0077】
また、ここでは、カメラ29によってベース部材11を撮影することにより表面の位置確認用マーク17A、17Bを画像認識し、これら位置確認用マーク17A、17Bの中心を結ぶ直線が、組立装置2上のX方向と一致するように、組立ステージ23をθ方向に回転させて位置補正を行い、ベース部材11上の座標系を決定する(S4)。
【0078】
座標系が決定したら、一つのヘッドHを、そのノズル面が上向きとなるようにクランパ24に把持させ(S5)、位置確認用マーク17A、17Bを利用して所定のヘッド固定プレート13上に位置合わせし(S6)、取り付けねじ16によって固定する(S7)。
【0079】
位置確認用マーク17A、17Bは、予めベース部材11表面において、各ヘッド固定プレート13との位置関係が正確に保証されているため、カメラ29を用いて各位置確認用マーク17A、17Bを画像認識し、その中心位置の座標と、各ヘッド固定プレート13の任意の位置(例えばいずれか一つのねじ穴132の中心位置)の座標とから、ある程度高い精度で、ヘッドHをヘッド固定プレート13に位置決めすることができる。このとき、隣接するヘッドH間のノズルピッチが、ヘッドH上のノズルピッチとほぼ均等ピッチとなるように、ヘッドHのねじ挿通穴h3の範囲内で、ヘッドHのヘッド固定プレート13に対する位置がクランパ24の移動によって調整され、取り付けねじ16によってヘッド固定プレート13に取り付けられることで、ヘッドHがベース部材11上に粗調整されて取り付け固定される。
【0080】
一つのヘッドHをヘッド固定プレート13上に位置決めして固定したら、クランパ24を離し(S8)、全てのヘッドHを同様に位置決め固定するまで上記ステップS5〜S8の作業を繰り返す(S9)。
【0081】
これにより、各ヘッドHのベース部材11に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニット1が構成される。
【0082】
この段階で、各ヘッドHはベース部材11において、隣接するヘッドH間のノズルピッチがほぼ均等ピッチとなるように、ある程度高い精度で位置決めされて取り付け固定されるが、ヘッドH毎のばらつき等によって着弾位置ずれを発生させるおそれを含んでおり、更に精密な位置調整(本調整)を行う必要性を有している。
【0083】
このように各ヘッドHが粗調整されたラインヘッドユニット1を構成したら、ベース部材11を組立ステージ23上から取り外す。このとき、ヒータ及びアクチュエータ15への通電は停止され、ベース部材11は通電ケーブルとの接続が解除される。これによりヒータは加熱を停止し、アクチュエータ15は作動子152を縮小させる。このアクチュエータ15への通電停止により、ヘッド固定プレート13は通電前の初期位置に自己復帰することになる(図3)。
【0084】
次に、以上のようにしてオフラインで構成されたラインヘッドユニット1を描画装置本体に装着した後のラインヘッドユニット1の組立方法について説明する。
【0085】
まず、ラインヘッドユニット1を備える描画装置の一例について図8、図9を用いて説明する。
【0086】
図8は描画装置の概略構成を示す斜視図、図9は描画装置内部の主要部の概略構成を示すブロック図である。
【0087】
描画装置3は、装置基台31に、ラインヘッドユニット1、上面に基材Wを載置して支持するためのワークステージ32、ワークステージ32をθ方向に回転移動させるためのθ回転機構33、ワークステージ32及びθ回転機構33を共にY方向に沿って直線移動させるY移動機構34、ワークステージ32及びθ回転機構33を共にX方向に沿って直線移動させるX移動機構35、ワークステージ32上を視認可能な着弾撮影カメラ36A、ラインヘッドユニット1の下面を視認可能なヘッド撮影カメラ36Bをそれぞれ備えている。
【0088】
なお、X方向とY方向とは水平面上で互いに直交する方向である。
【0089】
ラインヘッドユニット1は、装置基台31上の端部近傍においてX方向に沿って平行に架設されたガントリ37に移動可能に設けられたヘッド装着部38に取り付けられる。
【0090】
ヘッド装着部38は、ガントリ37に沿ってX方向にスライド移動可能なスライダ381と、スライダ381に取り付けられ、X、Y方向と直交する法線方向であるZ方向に沿って昇降移動可能なZ移動機構382と、Z移動機構382に取り付けられ、Z方向に沿う方向を軸としてθ方向に回転可能なθ回転機構383とを有しており、このθ回転機構383を介して、その下面にラインヘッドユニット1を取り付けることができるようになっている。
【0091】
なお、ワークステージ32のX方向、Y方向及びθ方向の各位置座標並びにラインヘッドユニット1のX方向、Z方向及びθ方向の各位置座標は、θ回転機構33、Y移動機構34、X移動機構35、スライダ381、Z移動機構382、θ回転機構383にそれぞれ設けられた位置座標検出手段である不図示のエンコーダによってnmオーダーで高精度に検出可能となるように構成されている。
【0092】
描画装置3は、ラインヘッドユニット1とワークステージ32とを相対的に移動させ、そのときの各位置情報に応じて、所定の射出パターンデータに基づいてラインヘッドユニット1の各ヘッドHからの液滴の射出を制御し、ワークステージ32上の基材Wの表面に着弾させることで、所望の描画を行うように構成される。
【0093】
図9において、300は射出信号制御部、301は射出信号生成部、302はステージエンコーダ、303はFIRE信号生成部である。
【0094】
各ヘッドHは、射出信号制御部300から送られた射出制御信号に基づいて、射出信号生成部301によって所定の射出信号が生成され、この射出信号が印加されることによって駆動される。ワークステージ32のX方向及びY方向の位置座標は、ステージエンコーダ302によって取得され、FIRE信号生成部303において、ワークステージ32の位置に応じた所定のタイミングで射出開始信号であるFIRE信号が生成される。射出信号制御部300は、このFIRE信号生成部303から所定のタイミングで送られるFIRE信号によって射出制御信号を生成する。
【0095】
また、304は位置ずれ量算出部、305は画像処理部、306はヘッド位置補正量算出部、307はアクチュエータ制御部、308はアクチュエータドライバ、309は射出タイミング補正量算出部である。
【0096】
詳細には後述するが、ラインヘッドユニット1を構成する各ヘッドHの位置ずれを調整するため、各ヘッドHから射出された液滴の着弾位置は、ラインヘッドユニット1と一体に設けられた着弾撮影カメラ36Aによって撮影され、その画像が画像処理部305によって画像認識されることで、ヘッドH毎の着弾位置の座標が検出される。
【0097】
位置ずれ量算出部304は、この着弾位置の座標に基づいて、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)における適正な着弾位置とのずれ量をそれぞれ求める。Y方向のずれ量を射出タイミング補正量算出部309に送り、X方向のずれ量をヘッド位置補正量算出部306に送る。
【0098】
ヘッド位置補正量算出部306では、X方向のずれ量に基づいて、そのずれを是正するための補正量を算出してアクチュエータ制御部307に送る。アクチュエータ制御部307では、この補正量に応じて各アクチュエータ15を駆動するための制御信号をアクチュエータドライバ308に出力して各アクチュエータ35を個別に駆動させる。これによって、対応するヘッド固定プレート13が位置調整され、ヘッドHのX方向の位置が微調整されるようになる。
【0099】
一方、射出タイミング補正量算出部309では、Y方向のずれ量に基づいて、そのずれを是正するための補正量を算出して射出信号制御部300に送る。この補正量は、各ヘッドHから液滴を射出するタイミングの補正量であり、液滴の射出タイミングが調整されることによって、対応するヘッドHのY方向の着弾位置が微調整される。
【0100】
次に、図10に示すフローチャートに基づいて、かかる描画装置3にラインヘッドユニット1を装着した後にラインヘッドユニット1の組立調整作業について説明する。
【0101】
まず、オフライン作業によって構成されたラインヘッドユニット1を描画装置3のヘッド装着部38に装着する(S10)。このとき、ラインヘッドユニット1のベース部材11とヘッド装着部38との間は、不図示の通電ケーブル又は接点電極による電気的接続が行われ、ラインヘッドユニット1の各種電気的動作部品への通電が可能となる。この通電により、ラインヘッドユニット1は描画動作時と同じ状態とされる。
【0102】
また、ワークステージ32側に設けられたヘッド撮影カメラ36Bによってラインヘッドユニット1の下面を撮影し、位置確認用マーク17A、17Bを画像認識することにより、各位置確認用マーク17A、17BのY座標が同一となるように必要に応じてθ回転機構383を回転させて位置補正を行い、ラインヘッドユニット1のX方向及びY方向の座標系を決定する。
【0103】
次いで、描画装置3は、オフライン作業において各ヘッドHを取り付け固定した際のヘッド固定プレート13の位置情報を、ラインヘッドユニット1に設けられた不図示の不揮発メモリから読み出し、その読み出した位置情報に基づいて、アクチュエータ制御部307の制御によりアクチュエータドライバ308を介して各アクチュエータ15を駆動させ、各ヘッド固定プレート13の位置をオフライン作業時に位置決めされた中央付近まで移動させることにより、各ヘッドHが粗調整された時の状態を再現する(S11)。
【0104】
ラインヘッドユニット1の各ヘッドHを粗調整時の位置に位置決めしたら、ワークステージ32上に基材W(着弾位置確認用のテスト基材)を位置決めして載置し、その表面に、予め記憶された着弾位置確認用の所定のテストパターンデータに従ってテストパターンを描画する(S12)。
【0105】
図11は基材W上に印字されたテストパターンの一例を示している。テストパターンは、ラインヘッドユニット1を構成するすべてのヘッドHのすべてのノズルnからそれぞれ液滴を射出することによって、基材W上にドットパターンを印字する。基材W上には、1つのヘッドHの各ノズルnから射出された液滴によって1つのドットパターン群DPが形成され、このドットパターン群DPが、ラインヘッドユニット1におけるヘッドHの個数分、各ヘッドHの配列態様と同じ態様で配列するように印字される。
【0106】
同図に示されるように、ラインヘッドユニット3を構成する各ヘッドHの取り付け位置が主走査方向(Y方向)及び副走査方向(X方向)に微妙にずれていることによって、各ヘッドHによって印字されるドットパターン群DPにも同様に位置ずれが生じている。
【0107】
この基材W上に印字された各ドットパターン群DPの位置を、ラインヘッドユニット1側に設けられた着弾撮影カメラ36Aによって撮影し、その画像を画像処理部305によって画像処理することで、各ドットパターン群DPの位置座標を測定する(S13)。
【0108】
この位置座標の測定には、図11に示したように、基材Wの表面の所定箇所に予め基準マークMを形成しておき、この基準マークMに対する位置座標から求めることができる。ラインヘッドユニット1とワークステージ32上の基材Wとの相対位置は、予めこの基準マークMに対して正確に位置決めされている。また、基準マークMに対する各ドットパターン群DPの位置座標の測定基準となる位置は、各ドットパターン群DPのいずれか1つのドット位置、例えば同一角部に位置する1ドットとすることができる。
【0109】
画像処理部305によって各ドットパターン群DPの位置座標が測定されると、まず、位置ずれ量算出部304において、その位置座標と不図示の記憶手段に予め記憶された各ドットパターン群DPの適正位置の位置座標とを比較し、各ヘッドHのX方向及びY方向の取り付け位置の良否を判定する(S14)。
【0110】
ここで、各ドットパターン群DPの位置座標が適正位置(OK)であれば、オフライン作業時に粗調整された各ヘッドHは適正な取り付け位置にあると判断され、作業は終了する。
【0111】
一方、少なくともいずれかのドットパターン群DPの位置座標が適正位置にない場合(NG)は、少なくともいずれかのヘッドHの取り付け位置にずれが生じていると判断され、次いで、その位置ずれ量を算出する(S15)。
【0112】
位置ずれ量の算出は、位置ずれ量算出部304において、画像処理部305によって認識された各ドットパターン群DPの位置座標に基づいて、各ドットパターン群DPの適正位置からのX方向及びY方向の位置ずれ量として算出される。
【0113】
ここで、X方向の位置ずれ量はヘッド位置補正量算出部306に送られ、このヘッド位置補正量算出部306において、該当するドットパターン群DPに対応するヘッドHのアクチュエータ15を駆動するための駆動量(補正電圧値)を算出し、対応するアクチュエータドライバ308を駆動することによってアクチュエータ15の駆動を調整する。アクチュエータ15は、ヘッド固定プレート13を可動範囲の中央付近に位置させるように駆動しているため、補正電圧値は、そのアクチュエータ15の作動子152を伸長させるための電圧値に限らず、収縮させるための電圧値とすることもでき、各ヘッドHのベース部材11に対する取り付け位置をX方向に沿ういずれの方向にも微調整することができる(S16)。
【0114】
また、位置ずれ量算出部304において算出されたY方向の位置ずれ量は射出タイミング補正量算出部309に送られ、この射出タイミング補正量算出部309において、該当するドットパターン群DPに対応するヘッドHの射出タイミングの補正時間を算出し、これを射出信号制御部300に送信することで、当該ヘッドHからの液滴の射出タイミングを調整し、Y方向の着弾位置を微調整する(S17)。
【0115】
以上のようにしてヘッドHのX方向の取り付け位置及びY方向の射出タイミングを微調整した後は、上記ステップS12からの動作を繰り返し、図12に示すように、すべてのヘッドHのX方向の取り付け位置及びY方向の射出タイミングが適正となり、ラインヘッドユニット1の記録幅全域に亘って着弾ドットが均等ピッチとなるまで調整作業を繰り返す。
【0116】
図13はラインヘッドユニットの他の実施形態を示す底面図である。図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0117】
この実施形態に示すラインヘッドユニット1Aは、アクチュエータ15の配置態様が図1に示すラインヘッドユニット1と異なっている。ベース部材11には各ヘッド固定プレート13に対応する開口枠12が個別に形成されており、アクチュエータ15は、各開口枠12内のヘッド固定プレート13との間に配置されているが、ここでは各ヘッド固定プレート13に対してX方向に沿って直列状に設けられており、ヘッド固定プレート13に対して直接押圧力を作用させるようになっている。
【0118】
このラインヘッドユニット1Aによれば、アクチュエータ15の配置の関係上、X方向に沿って隣接するヘッドH間の距離が長くなるため、X方向に沿って各ヘッドHのノズルピッチが均等となるように構成するためには、Y方向に沿って配列するヘッドHの数を増やす必要があるが、アクチュエータ15の押圧力を、図1に示すような突出部131を介さずに、ヘッド固定プレート13に対して直接作用させることができるため、各ヘッドHのX方向の位置を効率的に微調整可能である。
【0119】
図14はラインヘッドユニットの更に他の実施形態を示す底面図である。図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0120】
この実施形態に示すラインヘッドユニット1Bも、アクチュエータ15の配置態様が図1に示すラインヘッドユニット1と異なっている。アクチュエータ15は、図1に示す配置態様に対してX方向に斜めとなるように配置されており、各ヘッド固定プレート13に対して斜め方向から押圧力を作用させるようになっている。この押圧力の作用する方向とX方向とがなす角度θは、例えば45°程度とすることができる。
【0121】
各ヘッド固定プレート13には、アクチュエータ15の押圧力を作用させる押圧操作部である突出部131を有しているが、図15に示すように、この突出部131におけるアクチュエータ15の作動子152が当接する側面131aは、該作動子152に対してその伸縮方向に対して直交するように対面する傾斜面となっている。
【0122】
従って、このラインヘッドユニット1Bによれば、図1に示した配置態様と同様に、隣接するヘッド固定プレート13、13との間の距離を可及的近接させることができ、ラインヘッドユニット1Bを可及的小型化することが可能であることに加え、ヘッド固定プレート13をX方向に移動させるためのアクチュエータ15の作動子152のストロークを長くとることができるため、アクチュエータ15の駆動によるヘッドHのX方向の取り付け位置の微調整をより高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0123】
1、1A、1B:ラインヘッドユニット
11:ベース部材
12:開口枠
13:ヘッド固定プレート
14:弾性ヒンジ
15:アクチュエータ
16:取り付けビス
2:組立装置
3:描画装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の液滴吐出ヘッドを配列したラインヘッドユニットを備えた描画装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液滴を射出する液滴吐出ヘッドを用いて、液滴を基材上に着弾させることにより描画を行う描画装置は、例えば半導体回路基板の他、液晶表示装置や有機EL表示装置等の産業用途への利用も試みられている。特に、表示装置においては、大画面化、描画時間短縮のため、多数の液滴吐出ヘッドをノズルの配列方向に沿うように千鳥状等に配列することによって、ノズル列(記録幅)を長尺としたラインヘッドユニットを用いて描画を行う描画装置が用いられる。
【0003】
ラインヘッドユニットは、それぞれ個別に製造された多数の液滴吐出ヘッドを、キャリッジとなる共通のベース部材の所定の位置に取り付け固定することによって組み立てられる。通常、液滴吐出ヘッドの取り付け固定作業は、ベース部材を描画装置本体から取り外した状態で行い、全ての液滴吐出ヘッドを取り付けてラインヘッドユニットを構成し終えたら、これを描画装置本体の所定の装着部位に装着を行う。
【0004】
このようなラインヘッドユニットを用いて描画した際の着弾精度は、各液滴吐出ヘッド自体の性能のばらつきの他にも、平面内におけるノズル(ノズル列)の位置精度(組み付け精度)の影響を受ける。従って、高い着弾精度を実現するためには、特に、液滴吐出ヘッド個々のベース部材に対する位置精度を高めること、具体的には、液滴吐出ヘッドのノズル列方向(副走査方向)のノズルピッチがライン幅全長に亘って均等となるように各液滴吐出ヘッドをベース部材に対して高精度に位置決めすることが重要である。ノズル列方向と直交する方向(主走査方向)の着弾位置ずれについては、射出タイミングを調整することで補正することができるが、ノズル列方向に沿う着弾位置ずれは各液滴吐出ヘッドの取り付け位置で決まってしまうためである。
【0005】
多数の液滴吐出ヘッドを共通のベース部材に対して取り付け固定する際に、各液滴吐出ヘッド間の位置を精密に規定して取り付けすることは困難である。このため、一般に、描画装置本体上とは別のオフライン作業にて液滴吐出ヘッドをベース部材に取り付けてラインヘッドユニットを構成し、これを描画装置本体に装着した後に、各液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して着弾位置ずれを確認するためのチャートを描画し、そのチャートに基づいて各液滴吐出ヘッドのノズル列方向の位置を微調整することが行われている。
【0006】
従来、ラインヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの取り付け位置の微調整を行う技術として、液滴吐出ヘッドを取り付けるヘッド設置部にピエゾ素子からなるアクチュエータを設け、このアクチュエータに所定の電圧を印加することによって伸長駆動させ、液滴吐出ヘッドに対してノズル列方向に移動する力を付与することで、液滴吐出ヘッドの位置を隣接する他の液滴吐出ヘッドに対してそのノズル列方向に微調整するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3880289号公報
【特許文献2】特許第3437963号公報
【特許文献3】特開2003−127392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の技術によれば、多数の液滴吐出ヘッドを共通のベース部材に対して取り付け、これを描画装置本体に装着した後、チャート等を確認し、位置調整が必要な液滴吐出ヘッドに対し、対応するアクチュエータへの通電を行ってその取り付け位置をノズル列方向に微調整することで、描画装置上で位置調整を簡単に行うことができる。
【0009】
しかし、このようなアクチュエータを用いて位置を微調整する場合、通電によってアクチュエータを伸長駆動させるために、通電前の液滴吐出ヘッドの位置に対して伸長方向に沿う方向の微調整は可能であるが、その反対方向への調整ができない問題がある。このため、各液滴吐出ヘッドをベース部材に対して取り付けする際、予め隣接する液滴吐出ヘッド間の離間距離に余裕を持たせておくことで、アクチュエータの伸長方向に沿う方向のみの移動によって位置の微調整が可能となるようにする必要がある。
【0010】
ところが、共通のベース部材に対し、隣接する液滴吐出ヘッド間の離間距離に余裕を持たせたラインヘッドユニットでは、これを描画装置本体に装着した後にチャート等に基づいて着弾位置ずれを補正するための微調整作業を行う際、アクチュエータの作動ストロークが長くなって各液滴吐出ヘッドを調整位置まで移動させるのに時間が掛かり、微調整のための全体の作業時間が長くなってしまう結果、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着してから実際に描画作業を開始できるようになるまでの時間のロスが大きくなる問題があった。
【0011】
そこで、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後の液滴吐出ヘッドの位置微調整のための時間を短縮でき、描画作業を早期に開始させることのできるラインヘッドユニットの組立方法を提供することを課題とする。
【0012】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0014】
請求項1記載の発明は、描画装置本体に着脱可能に設けられるベース部材に、各々独立して位置調整可能に設けられ、ノズルが配列された液滴吐出ヘッドを取り付けるための複数のヘッド取り付け部と、通電によって伸長して各ヘッド取り付け部に対して前記液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向に移動させる力を付与することにより、該ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲内で微調整するアクチュエータとを備え、多数のノズルが配列された複数の液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部にそれぞれ固定することにより複数の液滴吐出ヘッドが配列されたラインヘッドユニットを構成し、このラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着した後、着弾位置ずれ補正のための前記液滴吐出ヘッドの位置微調整作業を行うラインヘッドユニットの組立方法であって、
前記ベース部材を前記描画装置本体から取り外した状態で、前記アクチュエータに通電することにより前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させる第1の工程と、
前記ヘッド取り付け部上に、前記液滴吐出ヘッドをノズル列方向の位置を粗調整してそれぞれ固定することにより、多数の前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニットを構成する第2の工程と、
前記アクチュエータの通電を停止させる第3の工程と、
前記ラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着する第4の工程と、
前記アクチュエータに通電することにより前記ラインヘッドユニットにおける前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を可動範囲の中心付近に再度位置させ、前記第2の工程において粗調整された前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現する第5の工程とを有することを特徴とするラインヘッドユニットの組立方法である。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記第1の工程は、前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させた際、該ヘッド取り付け部の移動後の位置情報を検出して記憶し、
前記第5の工程は、前記第1の工程において記憶された位置情報に従って前記アクチュエータへの通電を制御することにより、前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現することを特徴とする請求項1記載のラインヘッドユニットの組立方法である。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記ベース部材を描画装置の稼働時と同一温度条件にした状態で行うことを特徴とする請求項1又は2記載のラインヘッドユニットの組立方法である。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記ベース部材は、前記液滴吐出ヘッド内の液体を加熱するための加熱手段を備えており、
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記加熱手段を稼働させた後、その加熱温度が恒温状態となって前記ベース部材が描画装置の稼働時と同一温度条件となった後に行うことを特徴とする請求項3記載のラインヘッドユニットの組立方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後の液滴吐出ヘッドの位置微調整のための時間を短縮でき、描画作業を早期に開始させることができるラインヘッドユニットの組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ラインヘッドユニットの一例を示す底面図
【図2】(a)(b)は弾性ヒンジの詳細を示す図
【図3】ヘッド固定プレートの位置調整動作の様子を示す図
【図4】ラインヘッドユニットにおける1つのヘッドの取り付け構造を示す斜視図
【図5】組立装置の概略斜視図
【図6】組立装置の要部斜視図
【図7】オフラインでのラインヘッドユニットの組立方法を説明するフローチャート
【図8】描画装置の一例を示す斜視図
【図9】描画装置の主要部の概略構成を示すブロック図
【図10】描画装置本体への装着後のラインヘッドユニットの組立方法を説明するフローチャート
【図11】位置微調整前の着弾ドット位置を示すテストパターンの平面図
【図12】位置微調整後の着弾ドット位置を示すテストパターンの平面図
【図13】ラインヘッドユニットの他の実施形態を示す底面図
【図14】ラインヘッドユニットの更に他の実施形態を示す底面図
【図15】図14におけるヘッド固定プレートの部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明におけるラインヘッドユニットは、描画装置本体に着脱可能に設けられるベース部材に、各々独立して位置調整可能に設けられ、ノズルが配列された液滴吐出ヘッドを取り付けるための複数のヘッド取り付け部と、通電によって伸長して各ヘッド取り付け部に対して前記液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向に移動させる力を付与することにより、該ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲内で微調整するアクチュエータとを備える。
【0021】
ベース部材には一般に金属材が使用される。金属材としては一般にSUSを用いることができるが、液滴吐出ヘッドの取り付け位置精度を高精度に保つ要請からは、インバー材やノビナイト等の低熱膨張材が好ましく使用される。
【0022】
ヘッド取り付け部は、液滴吐出ヘッドを1つずつ取り付け固定するための部位であり、ラインヘッドユニットを構成する液滴吐出ヘッドの数に対応してベース部材に設けられ、その配列構成も液滴吐出ヘッドの配列構成に対応する。多数の液滴吐出ヘッドのベース部材に対する配列態様は、例えばノズルの配列方向に沿って千鳥状となるように配列するもの、ノズルの配列方向に対して斜めとなるように配列するもの等特に問わないが、いずれの場合も、隣接する液滴吐出ヘッド間のノズルピッチが、液滴吐出ヘッドのノズルピッチと均等ピッチとなるように配列される必要があるものであれば本発明を適用することができる。
【0023】
各ヘッド取り付け部の表面(描画装置本体に装着された時の下面)は、それぞれ1つの液滴吐出ヘッドをねじ止め等の固定具により固定する固定面を有している。ヘッド取り付け部材の表面には、液滴吐出ヘッドをノズルの配列方向に沿って位置調整した上で固定することが可能であり、これによって、ヘッド取り付け部に対する液滴吐出ヘッドの取り付け位置の粗調整を行うことができる。これは例えばヘッド取り付け部に固定するために液滴吐出ヘッドに設けられたねじ挿通穴を、ノズルの配列方向に沿う方向に長い長穴又は取り付けねじのねじ径よりも大径な穴とすることによって実現される。後者の態様では、液滴吐出ヘッドをノズル列方向に沿う方向のみならず、他の方向の取り付け位置も粗調整することができる。
【0024】
アクチュエータはヘッド取り付け部毎に設けられる。アクチュエータには、電圧を機械的な運動に変換する例えばピエゾ素子のような電気機械変換素子が用いられ、通電によって作動子が伸長し、その作動子の先端に当接するヘッド取り付け部に対して、液滴吐出ヘッドの取り付け面と平行な横方向に移動させる力を付与する。横方向とは、ヘッド取り付け部に取り付け固定される液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向である。アクチュエータの通電が停止すると、作動子は収縮して元の状態まで短くなり、ヘッド取り付け部は弾性的に通電前の初期位置まで復帰する。
【0025】
アクチュエータは通電時の電圧を制御することにより、その伸長度合が調整される。ヘッド取り付け部毎に設けられる各アクチュエータはそれぞれ個別に電圧制御されることで、伸長度合も個別に調整される。これにより、各ヘッド取り付け部は、ベース部材に対する位置を液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う所定の可動範囲内で独立して微調整される。
【0026】
複数の液滴吐出ヘッドが配列されたラインヘッドユニットは、このベース部材の各ヘッド取り付け部に対してそれぞれ液滴吐出ヘッドを固定することにより構成される。液滴吐出ヘッドには、多数のノズルが一方向に沿って配列されており、各液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向と同一方向となるようにベース部材に配列される。
【0027】
本発明におけるラインヘッドユニットの組立方法は、描画装置本体上とは別のオフライン作業にて液滴吐出ヘッドをベース部材に取り付ける作業工程から、多数の液滴吐出ヘッドがベース部材に取り付け固定されたラインヘッドユニットを描画装置本体に装着して、液滴吐出ヘッドの取り付け位置の微調整を行う作業工程までを含む。
【0028】
第1の工程は、ベース部材を描画装置本体から取り外したオフライン状態で行われる。このときヘッド取り付け部は、アクチュエータに所定の電圧を印加し続けることによって、ベース部材に対する位置が所定の可動範囲の中心付近となるように位置調整された状態を保持しておく。
【0029】
ここで可動範囲の中心付近とは、その位置からアクチュエータの電圧値をプラス側又はマイナス側のいずれに制御しても、アクチュエータを伸長又は収縮させてヘッド取り付け部の位置を可動範囲の両方向に向けて移動させることができる位置にあるということであり、好ましくは可動範囲の中心位置である。
【0030】
第2の工程は、同じくオフライン状態のまま、各ヘッド取り付け部上にそれぞれ液滴吐出ヘッドを、ノズルの配列方向を同一方向に揃えて固定するが、このとき、隣接する液滴吐出ヘッド間のノズルの配列方向の位置を、ノズルピッチがほぼ均等ピッチとなるように粗調整して各ヘッド取り付け部にそれぞれ固定する。これにより、液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニットを構成する。
【0031】
なお、ここでいう粗調整とは、チャート等の描画を行うことなく、ベース部材上だけで各液滴吐出ヘッドの位置を調整することである。
【0032】
このラインヘッドユニットが構成されたら、第3の工程では、アクチュエータの通電を停止させる。これにより、各ヘッド取り付け部の位置は、通電前の初期位置に復帰する。
【0033】
これら第1〜第3の工程は、オフライン状態であれば、作業者の手作業によって行ってもよいし、専用の組立装置を用いて行ってもよい。
【0034】
第4の工程は、このようにして液滴吐出ヘッドの位置が粗調整されて構成されたラインヘッドユニットを、描画装置本体の所定の装着部位に装着する。このとき同時に、各液滴吐出ヘッドや各アクチュエータ等の電気的動作部品に対する通電を行うための電気的接続が描画装置本体との間でなされる。
【0035】
第5の工程は、描画装置本体に装着されたラインヘッドユニットの各アクチュエータに通電することにより、そのヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を、第1の工程と同じ可動範囲の中心付近に再度位置させる。この作業は描画装置の機能として実行することができる。これにより、第2の工程において粗調整された液滴吐出ヘッドのベース部材に対する取り付け位置が再現される。
【0036】
この液滴吐出ヘッドの取り付け位置の再現は、第1の工程において、ヘッド取り付け部のベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させた際に、そのヘッド取り付け部の移動後の位置情報を検出して記憶しておき、この第5の工程において再現する際に、その記憶された位置情報を読み出し、その読み出された位置情報に従ってアクチュエータへの通電を制御することによって行うことが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッドを粗調整した時と同一の状態を簡単に再現することができる。
【0037】
ヘッド取り付け部の位置情報は、例えばアクチュエータの作動子の伸長位置を位置検知センサ等を用いて検出することによって取得することができる。また、ヘッド取り付け部の位置そのものを適宜の位置検知センサを用いて検出することによって取得するようにしてもよい。
【0038】
ヘッド取り付け部の位置情報の記憶及びその再現は、例えば以下に列記する方法によって行うことができる。
【0039】
(1)ベース部材上に不揮発メモリを設け、第1の工程において検出された位置情報をこの不揮発メモリに記憶しておき、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した際、描画装置本体の制御装置がこの不揮発メモリから位置情報を読み取ることによって再現する。
【0040】
(2)第1の工程において検出された位置情報を、ベース部材上の所定部位にバーコード等によって記録形成し、そのラインヘッドユニットを描画装置本体に装着する際、描画装置本体側に設けられたバーコードリーダー等の読み取り装置によって読み取り、その読み取った位置情報に基づいて再現する。
【0041】
(3)ラインヘッドユニットの組立装置又は作業用PC(パーソナルコンピュータ)を、描画装置本体又は描画装置本体と接続された描画装置の制御用PCと情報交換可能に接続し、第1の工程において検出された位置情報を、その時点で組立装置内又は作業用PC内に記憶しておき、第5の工程においてラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した際、その組立装置又は作業用PCから描画装置本体又は制御用PCへ位置情報を読み出すことによって再現する。
【0042】
(4)第1の工程において検出された位置情報を、組立装置又は作業用PCからネットワークを介して所定のサーバ内に、ラインヘッドユニットと一対一に対応する管理番号と共に格納しておき、そのラインヘッドユニットを描画装置本体に装着する際、描画装置本体内の制御装置又は制御用PCがサーバ内から管理番号に対応する位置情報を読み出してダウンロードし、そのダウンロードされた位置情報に基づいて再現する。
【0043】
以上の各方法によれば、ラインヘッドユニットのオフラインでの粗調整作業と描画装置本体への装着作業とが時間的及び空間的に隔絶された作業環境であっても、描画装置本体への装着後に粗調整時の条件を容易に再現することができる。特に(1)(2)の方法は、ラインヘッドユニット自体が粗調整時の位置情報を持つため、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着するだけで簡単に位置情報の読み出し及び再現が可能である。
【0044】
第1の工程及び第2の工程は、ベース部材を描画装置の稼働時と同一温度条件にした状態で行うことが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッドの粗調整時と描画装置の稼働時との条件を同じくすることができるので、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後に液滴吐出ヘッドの粗調整時の位置を再現する際により精度良く再現することができ、実際の描画動作時の着弾位置ずれの抑制効果を高めることができる。
【0045】
描画装置の稼働時の温度条件には、例えば描画装置が設置される周囲の環境温度、描画装置を稼働させた際に各種の駆動部材から発生する熱による描画装置自体の温度が挙げられる。第1の工程及び第2の工程をこのような温度条件と同一温度条件で行うには、第1の工程及び第2の工程の作業環境を描画装置が置かれる環境温度と同条件にしたり、ベース部材に設けられるアクチュエータを描画装置の稼働時と同一温度となるように駆動させたりすることによって行うことができる。
【0046】
また、ラインヘッドユニットには、液滴吐出ヘッドから吐出される液体を所定温度に加熱することによって粘度を低下させるように機能するものがあり、この場合は、ベース部材に液体を加熱するための加熱手段が設けられている。このようなラインヘッドユニットの場合は、第1の工程及び第2の工程において、この加熱手段を稼働させた後、その加熱温度が所定の恒温状態となってベース部材が描画装置の稼働時と同一温度条件となった後に行うことが好ましい。液滴吐出ヘッドの粗調整作業を、ベース部材の熱膨張等の条件が描画装置の稼働時と同一の条件で行うことができるため、ラインヘッドユニットを描画装置本体に装着した後に液滴吐出ヘッドの粗調整時の位置を再現する際により精度良く再現することができ、実際の描画動作時の着弾位置ずれの抑制効果を更に高めることができる。
【0047】
このようにして描画装置本体に装着されたラインヘッドユニットは、その後、所定のテストパターンデータに基づいてテスト基材上に液滴を吐出することにより、各液滴吐出ヘッドの着弾位置ずれを検査するためのテスト描画を行う。そして、そのテスト描画の結果に基づいて、ラインヘッドユニット上のアクチュエータへの通電を各アクチュエータ毎にそれぞれ制御することにより、各液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う取り付け位置を微調整することによって本調整を行う。
【0048】
このとき、ラインヘッドユニットは、オフライン作業にて粗調整された状態、すなわち各ヘッド固定プレートがその可動範囲の中心付近に位置決めされた状態から取り付け位置の微調整のための移動を行うことになるので、アクチュエータを伸長又は収縮させることによって、可動範囲内のいずれの方向への微調整も可能であり、しかも、その微調整のための移動距離は極めて微小で済むため、微調整にかかる時間も短縮できる。このため、その後の描画作業を早期に開始させることができるようになる。
【0049】
次に、本発明に係るラインヘッドユニットの組立方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0050】
まず、最初にラインヘッドユニットの構成について図1〜図4を用いて説明する。図1はラインヘッドユニットの一例を示す底面図である。
【0051】
ラインヘッドユニット1は、一枚の大判なプレート状のベース部材11の下面に多数の液滴吐出ヘッドH(以下、単にヘッドHという。)が個別に取り付け固定される。本実施形態では、12個のヘッドHが、各ノズル列を図中のX方向に沿うように配列され、それがY方向に並列されている。なお、X方向とY方向とは互いに直交する方向である。
【0052】
各列のヘッドHの位置はX方向に互いにずれており、これにより、12個のヘッドHはX方向に沿って千鳥状に配列され、X方向に沿って長尺な記録幅を有するラインヘッドが構成される。なお、図1において、ベース部材11には11個のヘッドHが取り付け済みであり、残りの1個のヘッドHが未装着の状態を示している。
【0053】
ベース部材11は、ヘッドHの配列方向(X方向)に沿う2列の開口枠12を有しており、その開口枠12内にヘッド取り付け部であるヘッド固定プレート13が、ヘッドHを個別に取り付け可能とするべく該ヘッドHと同数配置されている。
【0054】
各ヘッド固定プレート13は、ヘッドHのノズル列方向(X方向)の両側端辺における一方端辺において、該ヘッドHのノズル列方向に間隔をおいて配置された同一長さの2本の弾性ヒンジ14によってベース部材11と一体に連結され、該ベース部材11に保持されている。各ヘッド固定プレート13は、この弾性ヒンジ14のみでベース部材11と繋がっており、それ以外の部位は開口枠12内においてベース部材11から離間している。
【0055】
また、各ヘッド固定プレート13の他方端辺側の開口枠12内には、ベース部材11との間にそれぞれアクチュエータ15が配置され、各ヘッド固定プレート13に対してアクチュエータ15がY方向に沿って並設されている。ここでは、各ヘッド固定プレート13の他方端辺側の1つの隅角部において、ヘッドHのノズル列方向と交差する側方(Y方向)である開口枠12の内周に向けて張り出した押圧操作部となる突出部131が形成されており、一方、ベース部材11には、開口枠12の内周から図中Y方向に沿いヘッド固定プレート13に向けて張り出した突出部111が形成されており、これらの突出部131、111の間で、図中X方向に沿う方向、すなわちヘッドHのノズル列方向に対して平行な横方向の押圧力を作用させるようになっている。
【0056】
これらベース部材11の開口枠12内に設けられたヘッド固定プレート13、弾性ヒンジ14、突出部111、131、アクチュエータ15によって、ヘッドHの取り付け位置を微調整するための微調整機構を構成している。この微調整機構は、アクチュエータ15の作動によって突出部131に対して所定の押圧力を作用させると、ヘッド固定プレート13にはX方向に沿う横方向(ノズル面に対して平行な水平方向)の力が作用し、この力によって2本の弾性ヒンジ14が微小に撓み変形して均等に傾倒することで、ヘッド固定プレート13のX方向への平行度を維持したまま、すなわち、ヘッドHのノズル列方向がX方向に対してなす角度を維持したまま、ヘッドHのノズル列方向に沿う方向の位置が微調整されるようになっている。
【0057】
図2は弾性ヒンジ14の詳細を示し、図3はヘッド固定プレート13の位置調整動作の様子を示している。図2(a)はヘッド固定プレート13に対してアクチュエータ15の押圧力が作用していない状態、(b)はヘッド固定プレート13に対して矢印方向にアクチュエータ15の押圧力が作用している状態をそれぞれ示している。なお、実際の弾性ヒンジ14の変形量はμmオーダーの極めて微小なものであるが、図中では変形量を誇張して示している。
【0058】
弾性ヒンジ14は、ヘッド固定プレート13とベース部材11の開口枠12の内周とに亘って、ベース部材11及びヘッド固定プレート13と同一部材によって一体成形されている。弾性ヒンジ14の数は、1つのヘッド固定プレート13に対して、ヘッドHのノズル列方向の両側端辺における一方端辺に、間隔をおいて平行に2本設けられれば足りるが、必要に応じて配設数を適宜増加させてもよい。
【0059】
各弾性ヒンジ14は、ヒンジ本体141の両端のベース部材11との接続部位及びヘッド固定プレート13との接続部位に、それぞれヒンジ本体141よりも幅狭状となる括れ部142が形成されている。各括れ部142は、ヒンジ本体141の両端が、両側から円弧状に削り取られることによって形成されている。
【0060】
これにより、ヘッド固定プレート13にアクチュエータ15の押圧力が作用した際、その押圧力はこの括れ部142に応力集中し、ヘッド固定プレート13との接続部位側では、矢印で示す押圧力の作用方向に対して手前側が圧縮され、奥側が引張され、ベース部材11との接続部位側では、矢印で示す押圧力の作用方向に対して手前側が引張され、奥側が圧縮されることでそれぞれ弾性変形し、ヘッド固定プレート13のX方向の位置を移動させる。このとき、ヘッド固定プレート13は2本の弾性ヒンジ14によってベース部材11に一体に連結されているため、ヘッドHのノズル列方向がX方向に対してなす角度は崩れることはない。従って、図3に示すように、ヘッドHはX方向に対する平行度を維持したまま、X方向に対する位置が微調整される。
【0061】
各アクチュエータ15は、各ヘッド固定プレート13と開口枠12の内周との間であって、ベース部材11と各ヘッド固定プレート13とにそれぞれ突設された突出部111と突出部131との間に並置されており、押圧力を各ヘッドHのノズル列方向と平行となるように作用させるように設けられている。これによれば、隣接するヘッド固定プレート13、13との間の距離を可及的近接させることができ、ラインヘッドユニット1を可及的小型化することが可能である。
【0062】
アクチュエータ15は、図3に示すように、アクチュエータ本体151の一端に作動子152が伸縮可能に設けられており、アクチュエータ本体151の後端はベース部材11の突出部111に対して固定されているが、この作動子152の先端はヘッド固定プレート13の突出部131に対して固定されずに単に当接しているだけとなっている。これにより、作動子152が図中矢印方向に伸張すると、突出部131に対して摺動しつつ該突出部131を横方向に押し、弾性ヒンジ14の弾性変形によって、ヘッド固定プレート13の開口枠12内におけるベース部材11に対するX方向の位置を変化させる。作動子152が縮小すると、ヘッド固定プレート13は、弾性ヒンジ14が弾性復帰することによって元の位置に戻る。
【0063】
各ヘッド固定プレート13は、ヘッドHを個別に着脱可能に取り付け固定するためのねじ穴132を有している。各ヘッドHは、多数のノズルnが配列されたノズル列方向がX方向に沿うように、ベース部材11の各ヘッド固定プレート13に対して配置される。
【0064】
各ヘッドHには、ノズル面h1と反対側において両側方に突出するフランジh2を有しており、このフランジh2において取り付けビス16によってヘッド固定プレート13のねじ穴132にねじ止め固定される。ヘッドHのフランジh2には、取り付けビス16を挿通させるねじ挿通穴h3が各々2個ずつ計4個形成されている。このねじ挿通穴h3は、取り付けビス16のねじ部分の外径よりも大径に形成されており、取り付けビス16によってヘッド固定プレート13のねじ穴132にねじ止めされる際、ヘッドHをこのねじ挿通穴h3の範囲内においてXY方向に位置調整可能となっている。
【0065】
なお、図1中の符号17A、17Bは、ベース部材11の下面におけるX方向の両端部近傍にそれぞれ形成された位置確認用マークであり、これらを結ぶ直線がベース部材11の中心線を通るように位置付けられており、ベース部材11の位置及び角度を検出するために利用される。各ヘッド固定プレート13の位置は、この位置確認用マーク17A、17Bに対して予め位置決め保証されている。
【0066】
次に、ラインヘッドユニットをオフラインで組み立てるための組立装置について図5、図6を用いて説明する。図5は組立装置の概略斜視図、図6はその要部の斜視図である。
【0067】
組立装置2は、基台21上にXYθステージ22が設けられており、ベース部材11を、ヘッドHの取り付け面側を上面にして載置し支持するための組立ステージ23が、このXYθステージ22に設けられている。
【0068】
XYθステージ22の上方には、ラインヘッドユニットの組立時にヘッドHを掴んでベース部材11のヘッド固定プレート13に位置決めするためのクランパ24が配置され、このクランパ24を支持する支持ステージ25がXYθステージ22の側方に設置されている。クランパ24は、支持ステージ25から組立ステージ23の上方に向けて延び、該組立ステージ23の上方に所定距離をおいて対面するよう配置されるクランパ支持プレート26の下面に、水平方向にθ回転可能に取り付けられており、支持ステージ25によってクランパ支持プレート26がX方向、Y方向及びこれらX方向及びY方向と直交するZ方向に沿って移動可能となっている。
【0069】
X方向とY方向は水平面において互いに直交する方向である。
【0070】
また、基台21上には、図中X方向に沿うように架設されたガントリ27に、XYZステージ28が設けられ、このXYZステージ28に下方の組立ステージ23を視認するためのカメラ29が設けられている。カメラ29の撮影画像は、この組立装置2に接続された不図示のモニタ画面上に表示されるようになっている。
【0071】
なお、XYθステージ22による組立ステージ23のXYθ方向の各位置、支持ステージ25によるクランパ支持プレート26のXYZ方向の各位置及びクランパ24のθ方向の位置は、不図示のエンコーダによって精密に検出される。
【0072】
次に、かかる組立装置2を用いたオフラインでのラインヘッドユニット1の組立方法について、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0073】
まず、ベース部材11を組立装置2の組立ステージ23上にセットする(S1)。ベース部材11は、ヘッドHの取り付け面側が上面となるように組立ステージ23にセットされ固定される。
【0074】
次いで、ベース部材11を、不図示の通電ケーブルと通電可能に接続し、ベース部材11上に設けられた不図示のヒータに通電を行って加熱状態とする(S2)。
【0075】
この通電後、ヒータは昇温を開始し、やがて描画動作と同じ恒温状態に達する。ヒータが恒温状態となったら、各アクチュエータ15に通電を行って、各ヘッド固定プレート13を移動させ、全てのヘッド固定プレート13を、図3中の実線で示すように、その可動範囲の中央付近に位置させる(S3)。
【0076】
このときの各ヘッド固定プレート13の位置は、不図示の位置センサによって検出される。検出された各ヘッド固定プレート13の位置情報は、ここでは、ベース部材11上に設けられた不図示の不揮発メモリに記憶されるものとする。
【0077】
また、ここでは、カメラ29によってベース部材11を撮影することにより表面の位置確認用マーク17A、17Bを画像認識し、これら位置確認用マーク17A、17Bの中心を結ぶ直線が、組立装置2上のX方向と一致するように、組立ステージ23をθ方向に回転させて位置補正を行い、ベース部材11上の座標系を決定する(S4)。
【0078】
座標系が決定したら、一つのヘッドHを、そのノズル面が上向きとなるようにクランパ24に把持させ(S5)、位置確認用マーク17A、17Bを利用して所定のヘッド固定プレート13上に位置合わせし(S6)、取り付けねじ16によって固定する(S7)。
【0079】
位置確認用マーク17A、17Bは、予めベース部材11表面において、各ヘッド固定プレート13との位置関係が正確に保証されているため、カメラ29を用いて各位置確認用マーク17A、17Bを画像認識し、その中心位置の座標と、各ヘッド固定プレート13の任意の位置(例えばいずれか一つのねじ穴132の中心位置)の座標とから、ある程度高い精度で、ヘッドHをヘッド固定プレート13に位置決めすることができる。このとき、隣接するヘッドH間のノズルピッチが、ヘッドH上のノズルピッチとほぼ均等ピッチとなるように、ヘッドHのねじ挿通穴h3の範囲内で、ヘッドHのヘッド固定プレート13に対する位置がクランパ24の移動によって調整され、取り付けねじ16によってヘッド固定プレート13に取り付けられることで、ヘッドHがベース部材11上に粗調整されて取り付け固定される。
【0080】
一つのヘッドHをヘッド固定プレート13上に位置決めして固定したら、クランパ24を離し(S8)、全てのヘッドHを同様に位置決め固定するまで上記ステップS5〜S8の作業を繰り返す(S9)。
【0081】
これにより、各ヘッドHのベース部材11に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニット1が構成される。
【0082】
この段階で、各ヘッドHはベース部材11において、隣接するヘッドH間のノズルピッチがほぼ均等ピッチとなるように、ある程度高い精度で位置決めされて取り付け固定されるが、ヘッドH毎のばらつき等によって着弾位置ずれを発生させるおそれを含んでおり、更に精密な位置調整(本調整)を行う必要性を有している。
【0083】
このように各ヘッドHが粗調整されたラインヘッドユニット1を構成したら、ベース部材11を組立ステージ23上から取り外す。このとき、ヒータ及びアクチュエータ15への通電は停止され、ベース部材11は通電ケーブルとの接続が解除される。これによりヒータは加熱を停止し、アクチュエータ15は作動子152を縮小させる。このアクチュエータ15への通電停止により、ヘッド固定プレート13は通電前の初期位置に自己復帰することになる(図3)。
【0084】
次に、以上のようにしてオフラインで構成されたラインヘッドユニット1を描画装置本体に装着した後のラインヘッドユニット1の組立方法について説明する。
【0085】
まず、ラインヘッドユニット1を備える描画装置の一例について図8、図9を用いて説明する。
【0086】
図8は描画装置の概略構成を示す斜視図、図9は描画装置内部の主要部の概略構成を示すブロック図である。
【0087】
描画装置3は、装置基台31に、ラインヘッドユニット1、上面に基材Wを載置して支持するためのワークステージ32、ワークステージ32をθ方向に回転移動させるためのθ回転機構33、ワークステージ32及びθ回転機構33を共にY方向に沿って直線移動させるY移動機構34、ワークステージ32及びθ回転機構33を共にX方向に沿って直線移動させるX移動機構35、ワークステージ32上を視認可能な着弾撮影カメラ36A、ラインヘッドユニット1の下面を視認可能なヘッド撮影カメラ36Bをそれぞれ備えている。
【0088】
なお、X方向とY方向とは水平面上で互いに直交する方向である。
【0089】
ラインヘッドユニット1は、装置基台31上の端部近傍においてX方向に沿って平行に架設されたガントリ37に移動可能に設けられたヘッド装着部38に取り付けられる。
【0090】
ヘッド装着部38は、ガントリ37に沿ってX方向にスライド移動可能なスライダ381と、スライダ381に取り付けられ、X、Y方向と直交する法線方向であるZ方向に沿って昇降移動可能なZ移動機構382と、Z移動機構382に取り付けられ、Z方向に沿う方向を軸としてθ方向に回転可能なθ回転機構383とを有しており、このθ回転機構383を介して、その下面にラインヘッドユニット1を取り付けることができるようになっている。
【0091】
なお、ワークステージ32のX方向、Y方向及びθ方向の各位置座標並びにラインヘッドユニット1のX方向、Z方向及びθ方向の各位置座標は、θ回転機構33、Y移動機構34、X移動機構35、スライダ381、Z移動機構382、θ回転機構383にそれぞれ設けられた位置座標検出手段である不図示のエンコーダによってnmオーダーで高精度に検出可能となるように構成されている。
【0092】
描画装置3は、ラインヘッドユニット1とワークステージ32とを相対的に移動させ、そのときの各位置情報に応じて、所定の射出パターンデータに基づいてラインヘッドユニット1の各ヘッドHからの液滴の射出を制御し、ワークステージ32上の基材Wの表面に着弾させることで、所望の描画を行うように構成される。
【0093】
図9において、300は射出信号制御部、301は射出信号生成部、302はステージエンコーダ、303はFIRE信号生成部である。
【0094】
各ヘッドHは、射出信号制御部300から送られた射出制御信号に基づいて、射出信号生成部301によって所定の射出信号が生成され、この射出信号が印加されることによって駆動される。ワークステージ32のX方向及びY方向の位置座標は、ステージエンコーダ302によって取得され、FIRE信号生成部303において、ワークステージ32の位置に応じた所定のタイミングで射出開始信号であるFIRE信号が生成される。射出信号制御部300は、このFIRE信号生成部303から所定のタイミングで送られるFIRE信号によって射出制御信号を生成する。
【0095】
また、304は位置ずれ量算出部、305は画像処理部、306はヘッド位置補正量算出部、307はアクチュエータ制御部、308はアクチュエータドライバ、309は射出タイミング補正量算出部である。
【0096】
詳細には後述するが、ラインヘッドユニット1を構成する各ヘッドHの位置ずれを調整するため、各ヘッドHから射出された液滴の着弾位置は、ラインヘッドユニット1と一体に設けられた着弾撮影カメラ36Aによって撮影され、その画像が画像処理部305によって画像認識されることで、ヘッドH毎の着弾位置の座標が検出される。
【0097】
位置ずれ量算出部304は、この着弾位置の座標に基づいて、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)における適正な着弾位置とのずれ量をそれぞれ求める。Y方向のずれ量を射出タイミング補正量算出部309に送り、X方向のずれ量をヘッド位置補正量算出部306に送る。
【0098】
ヘッド位置補正量算出部306では、X方向のずれ量に基づいて、そのずれを是正するための補正量を算出してアクチュエータ制御部307に送る。アクチュエータ制御部307では、この補正量に応じて各アクチュエータ15を駆動するための制御信号をアクチュエータドライバ308に出力して各アクチュエータ35を個別に駆動させる。これによって、対応するヘッド固定プレート13が位置調整され、ヘッドHのX方向の位置が微調整されるようになる。
【0099】
一方、射出タイミング補正量算出部309では、Y方向のずれ量に基づいて、そのずれを是正するための補正量を算出して射出信号制御部300に送る。この補正量は、各ヘッドHから液滴を射出するタイミングの補正量であり、液滴の射出タイミングが調整されることによって、対応するヘッドHのY方向の着弾位置が微調整される。
【0100】
次に、図10に示すフローチャートに基づいて、かかる描画装置3にラインヘッドユニット1を装着した後にラインヘッドユニット1の組立調整作業について説明する。
【0101】
まず、オフライン作業によって構成されたラインヘッドユニット1を描画装置3のヘッド装着部38に装着する(S10)。このとき、ラインヘッドユニット1のベース部材11とヘッド装着部38との間は、不図示の通電ケーブル又は接点電極による電気的接続が行われ、ラインヘッドユニット1の各種電気的動作部品への通電が可能となる。この通電により、ラインヘッドユニット1は描画動作時と同じ状態とされる。
【0102】
また、ワークステージ32側に設けられたヘッド撮影カメラ36Bによってラインヘッドユニット1の下面を撮影し、位置確認用マーク17A、17Bを画像認識することにより、各位置確認用マーク17A、17BのY座標が同一となるように必要に応じてθ回転機構383を回転させて位置補正を行い、ラインヘッドユニット1のX方向及びY方向の座標系を決定する。
【0103】
次いで、描画装置3は、オフライン作業において各ヘッドHを取り付け固定した際のヘッド固定プレート13の位置情報を、ラインヘッドユニット1に設けられた不図示の不揮発メモリから読み出し、その読み出した位置情報に基づいて、アクチュエータ制御部307の制御によりアクチュエータドライバ308を介して各アクチュエータ15を駆動させ、各ヘッド固定プレート13の位置をオフライン作業時に位置決めされた中央付近まで移動させることにより、各ヘッドHが粗調整された時の状態を再現する(S11)。
【0104】
ラインヘッドユニット1の各ヘッドHを粗調整時の位置に位置決めしたら、ワークステージ32上に基材W(着弾位置確認用のテスト基材)を位置決めして載置し、その表面に、予め記憶された着弾位置確認用の所定のテストパターンデータに従ってテストパターンを描画する(S12)。
【0105】
図11は基材W上に印字されたテストパターンの一例を示している。テストパターンは、ラインヘッドユニット1を構成するすべてのヘッドHのすべてのノズルnからそれぞれ液滴を射出することによって、基材W上にドットパターンを印字する。基材W上には、1つのヘッドHの各ノズルnから射出された液滴によって1つのドットパターン群DPが形成され、このドットパターン群DPが、ラインヘッドユニット1におけるヘッドHの個数分、各ヘッドHの配列態様と同じ態様で配列するように印字される。
【0106】
同図に示されるように、ラインヘッドユニット3を構成する各ヘッドHの取り付け位置が主走査方向(Y方向)及び副走査方向(X方向)に微妙にずれていることによって、各ヘッドHによって印字されるドットパターン群DPにも同様に位置ずれが生じている。
【0107】
この基材W上に印字された各ドットパターン群DPの位置を、ラインヘッドユニット1側に設けられた着弾撮影カメラ36Aによって撮影し、その画像を画像処理部305によって画像処理することで、各ドットパターン群DPの位置座標を測定する(S13)。
【0108】
この位置座標の測定には、図11に示したように、基材Wの表面の所定箇所に予め基準マークMを形成しておき、この基準マークMに対する位置座標から求めることができる。ラインヘッドユニット1とワークステージ32上の基材Wとの相対位置は、予めこの基準マークMに対して正確に位置決めされている。また、基準マークMに対する各ドットパターン群DPの位置座標の測定基準となる位置は、各ドットパターン群DPのいずれか1つのドット位置、例えば同一角部に位置する1ドットとすることができる。
【0109】
画像処理部305によって各ドットパターン群DPの位置座標が測定されると、まず、位置ずれ量算出部304において、その位置座標と不図示の記憶手段に予め記憶された各ドットパターン群DPの適正位置の位置座標とを比較し、各ヘッドHのX方向及びY方向の取り付け位置の良否を判定する(S14)。
【0110】
ここで、各ドットパターン群DPの位置座標が適正位置(OK)であれば、オフライン作業時に粗調整された各ヘッドHは適正な取り付け位置にあると判断され、作業は終了する。
【0111】
一方、少なくともいずれかのドットパターン群DPの位置座標が適正位置にない場合(NG)は、少なくともいずれかのヘッドHの取り付け位置にずれが生じていると判断され、次いで、その位置ずれ量を算出する(S15)。
【0112】
位置ずれ量の算出は、位置ずれ量算出部304において、画像処理部305によって認識された各ドットパターン群DPの位置座標に基づいて、各ドットパターン群DPの適正位置からのX方向及びY方向の位置ずれ量として算出される。
【0113】
ここで、X方向の位置ずれ量はヘッド位置補正量算出部306に送られ、このヘッド位置補正量算出部306において、該当するドットパターン群DPに対応するヘッドHのアクチュエータ15を駆動するための駆動量(補正電圧値)を算出し、対応するアクチュエータドライバ308を駆動することによってアクチュエータ15の駆動を調整する。アクチュエータ15は、ヘッド固定プレート13を可動範囲の中央付近に位置させるように駆動しているため、補正電圧値は、そのアクチュエータ15の作動子152を伸長させるための電圧値に限らず、収縮させるための電圧値とすることもでき、各ヘッドHのベース部材11に対する取り付け位置をX方向に沿ういずれの方向にも微調整することができる(S16)。
【0114】
また、位置ずれ量算出部304において算出されたY方向の位置ずれ量は射出タイミング補正量算出部309に送られ、この射出タイミング補正量算出部309において、該当するドットパターン群DPに対応するヘッドHの射出タイミングの補正時間を算出し、これを射出信号制御部300に送信することで、当該ヘッドHからの液滴の射出タイミングを調整し、Y方向の着弾位置を微調整する(S17)。
【0115】
以上のようにしてヘッドHのX方向の取り付け位置及びY方向の射出タイミングを微調整した後は、上記ステップS12からの動作を繰り返し、図12に示すように、すべてのヘッドHのX方向の取り付け位置及びY方向の射出タイミングが適正となり、ラインヘッドユニット1の記録幅全域に亘って着弾ドットが均等ピッチとなるまで調整作業を繰り返す。
【0116】
図13はラインヘッドユニットの他の実施形態を示す底面図である。図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0117】
この実施形態に示すラインヘッドユニット1Aは、アクチュエータ15の配置態様が図1に示すラインヘッドユニット1と異なっている。ベース部材11には各ヘッド固定プレート13に対応する開口枠12が個別に形成されており、アクチュエータ15は、各開口枠12内のヘッド固定プレート13との間に配置されているが、ここでは各ヘッド固定プレート13に対してX方向に沿って直列状に設けられており、ヘッド固定プレート13に対して直接押圧力を作用させるようになっている。
【0118】
このラインヘッドユニット1Aによれば、アクチュエータ15の配置の関係上、X方向に沿って隣接するヘッドH間の距離が長くなるため、X方向に沿って各ヘッドHのノズルピッチが均等となるように構成するためには、Y方向に沿って配列するヘッドHの数を増やす必要があるが、アクチュエータ15の押圧力を、図1に示すような突出部131を介さずに、ヘッド固定プレート13に対して直接作用させることができるため、各ヘッドHのX方向の位置を効率的に微調整可能である。
【0119】
図14はラインヘッドユニットの更に他の実施形態を示す底面図である。図1と同一符号の部位は同一構成の部位を示している。
【0120】
この実施形態に示すラインヘッドユニット1Bも、アクチュエータ15の配置態様が図1に示すラインヘッドユニット1と異なっている。アクチュエータ15は、図1に示す配置態様に対してX方向に斜めとなるように配置されており、各ヘッド固定プレート13に対して斜め方向から押圧力を作用させるようになっている。この押圧力の作用する方向とX方向とがなす角度θは、例えば45°程度とすることができる。
【0121】
各ヘッド固定プレート13には、アクチュエータ15の押圧力を作用させる押圧操作部である突出部131を有しているが、図15に示すように、この突出部131におけるアクチュエータ15の作動子152が当接する側面131aは、該作動子152に対してその伸縮方向に対して直交するように対面する傾斜面となっている。
【0122】
従って、このラインヘッドユニット1Bによれば、図1に示した配置態様と同様に、隣接するヘッド固定プレート13、13との間の距離を可及的近接させることができ、ラインヘッドユニット1Bを可及的小型化することが可能であることに加え、ヘッド固定プレート13をX方向に移動させるためのアクチュエータ15の作動子152のストロークを長くとることができるため、アクチュエータ15の駆動によるヘッドHのX方向の取り付け位置の微調整をより高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0123】
1、1A、1B:ラインヘッドユニット
11:ベース部材
12:開口枠
13:ヘッド固定プレート
14:弾性ヒンジ
15:アクチュエータ
16:取り付けビス
2:組立装置
3:描画装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画装置本体に着脱可能に設けられるベース部材に、各々独立して位置調整可能に設けられ、ノズルが配列された液滴吐出ヘッドを取り付けるための複数のヘッド取り付け部と、通電によって伸長して各ヘッド取り付け部に対して前記液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向に移動させる力を付与することにより、該ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲内で微調整するアクチュエータとを備え、多数のノズルが配列された複数の液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部にそれぞれ固定することにより複数の液滴吐出ヘッドが配列されたラインヘッドユニットを構成し、このラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着した後、着弾位置ずれ補正のための前記液滴吐出ヘッドの位置微調整作業を行うラインヘッドユニットの組立方法であって、
前記ベース部材を前記描画装置本体から取り外した状態で、前記アクチュエータに通電することにより前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させる第1の工程と、
前記ヘッド取り付け部上に、前記液滴吐出ヘッドをノズル列方向の位置を粗調整してそれぞれ固定することにより、多数の前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニットを構成する第2の工程と、
前記アクチュエータの通電を停止させる第3の工程と、
前記ラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着する第4の工程と、
前記アクチュエータに通電することにより前記ラインヘッドユニットにおける前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を可動範囲の中心付近に再度位置させ、前記第2の工程において粗調整された前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現する第5の工程とを有することを特徴とするラインヘッドユニットの組立方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させた際、該ヘッド取り付け部の移動後の位置情報を検出して記憶し、
前記第5の工程は、前記第1の工程において記憶された位置情報に従って前記アクチュエータへの通電を制御することにより、前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現することを特徴とする請求項1記載のラインヘッドユニットの組立方法。
【請求項3】
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記ベース部材を描画装置の稼働時と同一温度条件にした状態で行うことを特徴とする請求項1又は2記載のラインヘッドユニットの組立方法。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記液滴吐出ヘッド内の液体を加熱するための加熱手段を備えており、
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記加熱手段を稼働させた後、その加熱温度が恒温状態となって前記ベース部材が描画装置の稼働時と同一温度条件となった後に行うことを特徴とする請求項3記載のラインヘッドユニットの組立方法。
【請求項1】
描画装置本体に着脱可能に設けられるベース部材に、各々独立して位置調整可能に設けられ、ノズルが配列された液滴吐出ヘッドを取り付けるための複数のヘッド取り付け部と、通電によって伸長して各ヘッド取り付け部に対して前記液滴吐出ヘッドのノズルの配列方向に沿う方向に移動させる力を付与することにより、該ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲内で微調整するアクチュエータとを備え、多数のノズルが配列された複数の液滴吐出ヘッドを前記ヘッド取り付け部にそれぞれ固定することにより複数の液滴吐出ヘッドが配列されたラインヘッドユニットを構成し、このラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着した後、着弾位置ずれ補正のための前記液滴吐出ヘッドの位置微調整作業を行うラインヘッドユニットの組立方法であって、
前記ベース部材を前記描画装置本体から取り外した状態で、前記アクチュエータに通電することにより前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させる第1の工程と、
前記ヘッド取り付け部上に、前記液滴吐出ヘッドをノズル列方向の位置を粗調整してそれぞれ固定することにより、多数の前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置が粗調整されたラインヘッドユニットを構成する第2の工程と、
前記アクチュエータの通電を停止させる第3の工程と、
前記ラインヘッドユニットを前記描画装置本体に装着する第4の工程と、
前記アクチュエータに通電することにより前記ラインヘッドユニットにおける前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を可動範囲の中心付近に再度位置させ、前記第2の工程において粗調整された前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現する第5の工程とを有することを特徴とするラインヘッドユニットの組立方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記ヘッド取り付け部の前記ベース部材に対する位置を所定の可動範囲の中心付近に位置させた際、該ヘッド取り付け部の移動後の位置情報を検出して記憶し、
前記第5の工程は、前記第1の工程において記憶された位置情報に従って前記アクチュエータへの通電を制御することにより、前記液滴吐出ヘッドの前記ベース部材に対する取り付け位置を再現することを特徴とする請求項1記載のラインヘッドユニットの組立方法。
【請求項3】
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記ベース部材を描画装置の稼働時と同一温度条件にした状態で行うことを特徴とする請求項1又は2記載のラインヘッドユニットの組立方法。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記液滴吐出ヘッド内の液体を加熱するための加熱手段を備えており、
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記加熱手段を稼働させた後、その加熱温度が恒温状態となって前記ベース部材が描画装置の稼働時と同一温度条件となった後に行うことを特徴とする請求項3記載のラインヘッドユニットの組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−274393(P2010−274393A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131634(P2009−131634)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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