説明

ラクトバチルス・プランタラムの培養物を有効成分とする抗アレルギー剤

【課題】ヒトにおいて抗原特異的IgE等のアレルギー関連成分値を改善し、かつその症状を緩和することができる効果的な抗アレルギー活性を持つ乳酸菌を有効成分とする抗アレルギー剤を提供する。
【解決手段】ラクトバチルス・プランタラム(代表的には、微工研菌寄第11550号(FERM P−11550)として寄託されているラクトバチルス・プランタラムNo.14株)の培養物を有効成分とする抗アレルギー剤。
ラクトバチルス・プランタラムの菌体を含有する抗アレルギー食品、およびラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有する抗アレルギー用医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗アレルギー剤に関し、さらに具体的には本発明は、野菜の漬物から分離された乳酸菌に由来するラクトバチルス・プランタラムの培養物を有効成分とすることを特徴とする、アレルギーの予防・治療に有効な抗アレルギー剤、ならびに該ラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有してなる、上記抗アレルギー効果を有する食品および抗アレルギー用医薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、先進国においてアレルギー疾患の患者数は増加し、アレルギー疾患は老若男女にいたるまで最も頻度が高い疾患の一つである。アレルギーの発症機構は通常I型からIV型の4つに分類される。I型アレルギーは、IgE抗体が関与し、花粉症、喘息、じんま疹、アナフィラキシーショックなどが代表的な症例である。II型アレルギーは、赤血球等体内の特定の細胞にIgG抗体、IgM抗体が結合し、補体系を活性化しその細胞が溶かされてしまう細胞障害性反応であり、輸血の際に異なる型の血液が輸血されると、輸血された血液中の赤血球が溶かされて起こる重大な障害がこれにあたる。III型アレルギーは、免疫反応によってできた大量の抗原抗体複合体が特定の臓器に沈着したり、全身に広がったりして炎症を引き起こすものであり、血清病、糸球体腎炎に代表される反応である。IV型アレルギーは遅延型過敏症とも言われ、T細胞が関与する遅延型アレルギーであり、ある種の金属、薬剤、ゴム製品、うるし等の植物が肌に触れた場合、皮膚に浸透し、炎症を伴う免疫反応が引き起こされる。
【0003】
前記のI型アレルギーは、抗原特異的IgE抗体の誘導とヒスタミンやロイコトリエン等のケミカルメディエーターの放出、好酸球の増加をその特徴とする。その結果毛細血管透過性促進、気管支平滑筋収縮、外分泌刺激により、種々のアレルギー反応が30分以内に引き起こされる。
【0004】
I型アレルギーの予防・治療に用いられるのは、例えばヒスタミンと拮抗的に結合し末梢神経からの信号伝達を阻害する抗ヒスタミン剤、ケミカルメディエーターの産生細胞の活性を弱める抗アレルギー剤、抗炎症剤として用いられるステロイド剤、抗原そのものを定期的に注射することにより免疫寛容を誘導する減感作療法などがある。しかし、そのいずれもが長期服用による眠気、肝臓への負担等副作用が問題視されており、効果についても決定的なものがない。
【0005】
近年、結核菌や乳酸菌などのある種の細菌(Lactobacillus acidophilus、Bifidobacterium longum、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus fermentum)はIgEを低下させることが報告されている。中でも乳酸菌は安全性の面から食品などへの応用が容易であり、有用な素材である。
【0006】
しかしながら、上記のような従来の乳酸菌では動物実験レベルでは明らかなIgE抗体の低下が示されていながら、ヒト試験においてはIgE抗体の低下が認められず、あいまいになりがちな自覚症状に改善が見られるだけという報告がほとんどである(Jpn. J. Lactic Acid Bact., 15(1),26−27, 2004(非特許文献1)、アレルギーの臨床、24(7)、537−541、2004年(非特許文献2)、Biosci. Biotechnol. Biochem. 67 (5), 951-957, 2003(非特許文献4)、特開2004−26729号公報(特許文献1))。さらに、抗アレルギー作用の機構とされるIL12とINF−γによるTh1への傾きが結果的にIgE抗体を抑制させるという考え方があるが、一方でこれらのサイトカインは炎症を拡大させるという報告もあり、生体にとって望ましくない(アレルギー科、16(4):301−307、2003年(非特許文献3))。
【0007】
ラクトバチルス・プランタラムは主に植物から分離される乳酸菌であり、マクロファージ貪食能の向上(日本食品科学工学会誌、第47巻第6号、p.465−469,2000年)(非特許文献5)等の免疫作用に関わる報告もいくつかある。しかし、本発明者らの知る限り、ラクトバチルス・プランタラムの抗アレルギー性に関しては未だ報告されていない。
【0008】
従って昨今、ヒトにおいて明らかに抗アレルギー症状のマーカーとなる特異的IgE等の成分値が改善され、それに伴って症状も緩和する強い活性を持った乳酸菌が求められていた。
【非特許文献1】Jpn. J. Lactic Acid Bact., 15(1),26-27, 2004
【非特許文献2】アレルギーの臨床、24(7)、537−541、2004年
【非特許文献3】アレルギー科、16(4):301−307、2003年
【非特許文献4】Biosci. Biotechnol. Biochem. 67 (5), 951-957, 2003
【特許文献1】特開2004−26729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術に鑑み、本発明は、ヒトにおいて抗原特異的IgE等のアレルギー関連成分値を改善し、かつその症状を緩和することができる効果的な抗アレルギー活性を有する乳酸菌を探索し、これを有効成分とする抗アレルギー剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、ラクトバチルス・プランタラム、具体的には工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第11550号(FERM P−11550)として寄託されているラクトバチルス・プランタラムNo.14株の培養物が意外にも極めて強い抗アレルギー効果を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の構成を要旨とする抗アレルギー剤、抗アレルギー食品および抗アレルギー用医薬に関するものである。
(1)ラクトバチルス・プランタラムの培養物を有効成分とする抗アレルギー剤。
(2)工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第11550号(FERM P−11550)として寄託されているラクトバチルス・プランタラムNo.14株の培養物を有効成分とする、上記(1)に記載の抗アレルギー剤。
(3)ラクトバチルス・プランタラムの培養物のヒト経口投与により、血中の総IgE、抗原特異的IgE、好酸球数およびアレルギー症状を抑制することができる、上記(1)または(2)に記載の抗アレルギー剤。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載されたラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有する、抗アレルギー作用を有する食品。(もしくは、食品として用いられる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗アレルギー剤。)
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載されたラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有する、抗アレルギー用医薬品。(もしくは、医薬として用いられる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗アレルギー剤。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記のラクトバチルス・プランタラムNo.14株等のラクトバチルス・プランタラムの培養物が、ヒトにおいて抗原特異的IgE等のアレルギー関連成分値を改善し、かつその症状を緩和することができる。ラクトバチルス・プランタラムがヒトにおいてこのような強い抗アレルギー活性を有することは思いがけなかったことと解される。
【発明の実施の形態】
【0013】
以下は、本発明による抗アレルギー剤、抗アレルギー食品および抗アレルギー用医薬について詳細に説明するものである。
【0014】
本発明による抗アレルギー剤は、ラクトバチルス・プランタラムの培養物を有効成分とするものであり、また、本発明による抗アレルギー食品および抗アレルギー用医薬は、上記ラクトバチルス・プランタラムの培養物を含むものであることは前記したところである。ここで、ラクトバチルス・プランタラムの培養物は、培養後の菌体および/または菌体外生成物(希釈、洗浄等により処理されたものも包含される)を意味し、液体等の湿潤状態の他、粉末等の乾燥状態のいずれであってもよい。
【0015】
本発明において使用されるラクトバチルス・プランタラムとしては、この種に属する乳酸菌であれば任意の菌株を使用することができるが、代表的な態様として、ラクトバチルス・プランタラムNo.14株があげられる。ラクトバチルス・プランタラムNo.14株は野菜(ラッキョウ、白菜など)の漬け物から分離したものであり、この菌株は工業技術院微生物工業技術研究所(現在の独立行政法人産業技術総合研究所・特許生物寄託センター)に微工研菌寄第11550号(FERM P−11550、寄託日:平成2年6月22日)として寄託されている。
【0016】
ラクトバチルス・プランタラムNo.14株は下記のような菌学的性質を有するものである(特開平4−63587号公報参照)。
A.形態的性状
(1) 細胞の形・大きさ:桿菌、2〜5μm×1〜1.5μm (2) 運動性:なし
(3) 胞子の有無:なし (4) グラム染色:陽性 (5) 細胞の多形成の有無:なし
B.培地上の生育状態
(1) MRS寒天培地:30℃、3日間で直径約3mmの白色、円形のコロニーを形成する
(2) MRS液体培地:30℃、3日間で混濁し、底部に沈殿する
(3) MRS寒天穿刺培養:穿刺に沿って一様に生育、表面にも生育する
C.生理的性質
(1) 硝酸塩を還元しない (2) インドールを生成しない (3) ゼラチンを液化しない
(4) カタラーゼ反応:陰性 (5) デンプンを加水分解しない
(6) グルコース発酵形式:ホモ発酵 (7) 生成乳酸:DL−乳酸
(8) 耐塩性:NaCl−10%(w/v)まで生育し、11%(w/v)で生育不可
(9) 糖類からの酸の生成およびガス生成の有無
酸の生成 ガスの生成 酸の生成 ガスの生成
アミグダリン + − メレジトース + −
アラビノース − − メリビオース + −
セロビオース + − ラフィノース + −
エスクリン + − ラムノース − −
フラクトース + − リボース + −
ガラクトース + − サリシン + −
グルコン酸 + − ソルビトール + −
ラクトース + − シュクロース + −
マルトース + − トレハロース + −
マンニトール + − キシロース − −
マンノース + −
(10) 生育温度:至適温度 28〜31℃、生育範囲 7〜42℃
(11) 生育pH:至適pH 6.9、生育範囲 3.0〜7.8
(12) リトマスミルク:酸性化 (13) ウレアーゼ:陰性 (14) オキシダーゼ:陰性
(15) 硫化水素の生成:生成せず (16) VP反応:陰性 (17) MR反応:陽性
【0017】
本発明において使用するラクトバチルス・プランタラムの培養工程は、この細菌が増殖可能な条件であればどのような方法でもよく、乳酸菌の培養に用いられる通常の固形培地あるいは液体培地(例えばMRS培地、Rogosa培地、各種野菜汁もしくは抽出液((必要に応じて糖源を添加したもの))等を使用して通常の培養条件で培養することができる。ラクトバチルス・プランタラムの培養物は、そのまま、あるいは遠心分離等で集菌して湿潤状態とするか、その後適当な液体(例えば分岐デキストリン水溶液等)に懸濁して液体状態で本発明の抗アレルギー剤として使用することができるが、さらにこれを乾燥させた培養物等任意の形態のものを使用することもできる。
【0018】
ラクトバチルス・プランタラム菌体の培養物を乾燥させる方法としては、例えば自然乾燥法、加熱法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等の通常の方法を使用することができる。本発明において、乾燥させたラクトバチルス・プランタラムの培養物は、そのままでも使用できるが、通常の粉砕機等を用いて粉末化することもできる。また、湿潤状態(懸濁状態を含む)の培養物は、必要に応じて、通常の破砕機等を用いて破砕したものを抗アレルギー剤として使用することもできる。従って、本発明におけるラクトバチルス・プランタラムの培養物は、湿潤状態あるいは乾燥状態のいずれでも使用可能であり、また、培養物における菌体がもとの形態を保持したものでもよいし、微細片状に破壊された形態であってもよく、培養物の状態もしくは形態は特に制限されない。本発明においては、使用し易さ、保存し易さ、安定性等の点から粉末の形態のものがより好ましい。
【0019】
後記実施例において、ラクトバチルス・プランタラム(No.14株)の培養物は、ヒトでのインビボ摂取試験において、アレルギー関連成分(マーカー)が摂取前後で有意に低下し、かつアレルギー症状を抑制する作用を有することが確認されている。具体的には、後記実施例におけるインビボ摂取試験の結果、すなわち、ラクトバチルス・プランタラム培養物のヒトへのインビボ摂取試験によるアレルギー関連成分(総IgE、抗原特異的IgE、好酸球数(図3))およびアレルギー症状(くしゃみ、鼻かみ、鼻づまり、目の痒み、喉の痛み(図4))の結果に示されるように、アレルギー関連成分の値は改善(抑制)され、アレルギー症状に関しては、特に鼻かみ症状において顕著に抑制され、鼻づまり、目の痒み、喉の痛みの症状においては後観察期間に穏やかに緩和される効果が確認された。従って、ラクトバチルス・プランタラムの培養物は抗アレルギー剤として有用である。また、上記のような効果から、本発明の対象となるアレルギーとしては花粉症をはじめ、アレルギー性気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等のアレルギーもしくはアレルギー疾患があげられ、本発明による抗アレルギー剤はこれらの症状を改善、予防するものである。
【0020】
本菌体はラッキョウ等の漬物中に旺盛に生育していたもので、その安全性は漬物の長期に渡る食経験により保障されているものである。本発明において、前記のように調製された基本形態のラクトバチルス・プランタラムの培養物は、食品用の抗アレルギー剤あるいは医薬用の抗アレルギー剤として種々の形態で使用(摂取)することができる。
【0021】
本発明抗アレルギー剤を食品として用いる場合は、サプリメントもしくは栄養補助剤等の健康補助食品とするかあるいは一般の飲食品に含有させた健康食品とすることができる。そのような食品の形態としては、ラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有させた錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末、ゼリー、ドリンク剤等の種々の形態とすることができる。また、ラクトバチルス・プランタラムの培養物を一般の飲食品に含有もしくは混合させる場合の食品としては特に限定されないが、例えば、固形食品としては漬け物類、菓子類、ケーキ、ふりかけ類、麺類等、半流動食品としては、ヨーグルト、ゼリー類、粥類等、飲料としては、乳酸菌飲料、スープ類、お茶、青汁等があげられる。上記のような種々の形態の食品を調製する場合、必要に応じて一般に飲食品に用いられる乳化剤、分散剤、緩衝剤等の通常の添加剤を使用することができる。また必要に応じて、栄養補助等を目的としてビタミン類、ミネラル類、食物繊維等の添加物を適量配合することもできる。ビタミンCあるいはE等を添加した場合には、長期保存時の劣化(退色、酸化等)を防止することができる。本発明による抗アレルギー食品は、種々のアレルギーの症状に対して穏やかに作用してこれを改善することができる。本発明の食品は、製品形態として上記のような種々のアレルギー症状の改善のために用いられる旨の表示を付した飲食品(特定保健用食品等)とすることができる。
【0022】
ラクトバチルス・プランタラム培養物の食品への配合量は適宜設定できるが、本発明による抗アレルギー食品を摂取する場合、乾燥状態のラクトバチルス・プランタラムの培養物量として、経口摂取で一般に毎食事あたり10〜1010CFU程度、あるいは1日あたり10〜1010CFU程度が適当である。
【0023】
本発明抗アレルギー剤を医薬品として用いる場合は、ラクトバチルス・プランタラム培養物は、投与方法、投与目的等によってきまる適当な剤形、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤等の種々の形態とすることができる。これらの製剤を製造するには、製薬上許容される担体あるいは希釈剤等、具体的には通常医薬に使用される賦形剤、結合剤、滑沢剤等張化剤等を添加することができる。投与方法としては、経口投与、直腸投与等の投与経路で投与することができる。本発明医薬の投与量は、投与方法、患者の状況等に応じて変化することはいうまでもなく、また適量と投与回数は専門医によって決定されるが、具体的には、ラクトバチルス・プランタラム培養物の乾燥物として成人1日当たり10〜1010CFU程度が適当である。
【0024】
上記のように、本発明による抗アレルギー剤あるいは抗アレルギー食品または抗アレルギー用医薬は、ラクトバチルス・プランタラムの培養物を使用することにより、ヒトにおいて実際にアレルギー関連成分を低下させ、かつ種々のアレルギーの症状を改善することができ、従って、花粉症、アレルギー性気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等のアレルギー症状の抑制または防止、あるいは改善に有効である。
【実施例】
【0025】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]ラクトバチルス・プランタラムNo.14株の培養
ラクトバチルス・プランタラムNo.14株は、まずMRS培地やフラクトース糖源Rogosa培地で前培養をした。その後30L容ジャーファーメンターにて本培養を行った。培養液を回収し、8000×g、10分間遠心分離機にて集菌を行った。滅菌水を添加しこの洗浄操作を3回繰り返し、培地成分を除去した。培養物を分岐デキストリン水溶液に懸濁させた後凍結乾燥させた。これをミルで粗粉砕した。その結果この粉末の乳酸菌数は1.5×1010 cfu/gであった。
【0027】
[実施例2]ヒト摂取試験
花粉症の自覚症状のある企業内ボランティア9名。本試験は、ヘルシンキ宣言にのっとり、全ての被験者に試験内容、方法に関する十分な説明を行い、文書と口頭によるインフォームドコンセントを得て行った。9名は実施例1のラクトバチルス・プランタラムNo.14株粉末0.5gを毎朝食時、摂取した。
・試験期間:2004年9月〜11月
・測定項目:被験者に対して前観察期間2週間、摂取期間2週間、後観察期間2週間
各終了後に採血を行った。血液は(株)Medca Japanにおいて末梢血一般と好酸球、血清脂質、血中総IgE量を測定した。採血前日は21時までに夕食を終了し、その後採血までは水以外の飲食を禁止した。
これらのデータは試験終了後、統計処理を行ってデータ化した。また被験者はアレルギー症状に対するアンケートに毎日回答した。
(実験結果)
図1および表1に示すように、乳酸菌摂取により9名中8名の総IgEが低下し、統計的にも有意に低下した。症状については花粉飛散時期ではなかったので、摂取前後で変化は無かった。他の血液成分等には特に問題がなく、安全に摂取し続けられることがわかった。
【0028】
【表1】

【0029】
[実施例3]ヒト摂取試験
花粉症の自覚症状のある女子大生ボランティア28名。本試験は、ヘルシンキ宣言にのっとり、全ての被験者に試験内容、方法に関する十分な説明を行い、文書と口頭によるインフォームドコンセントを得て行った。
被験者28名を無作為に2群に分けた。一群はプラセボとして分岐デキストリンFD(凍結乾燥)粉末、もう一群は実施例1のラクトバチルス・プランタラムNo.14株FD菌体、各々0.5gずつ毎朝食時摂取した。群分けの結果については試験終了まで第三者が情報を管理する二重盲検試験で行われた。
・試験期間:2005年1月〜3月
・測定項目:被験者に対して前観察期間2週間、摂取期間3週間、後観察期間2週間
各終了後に採血を行った。血液は(株)SRLにおいて末梢血一般と好酸球、血清脂質、血中総IgE量、スギ花粉特異的IgE量を測定した。採血前日は21時までに夕食を終了し、その後採血までは水以外の飲食を禁止した。
これらのデータは試験終了後、統計処理を行ってデータ化した(表2)。また被験者はアレルギー症状に対するアンケートに毎日回答した。
(実験結果)
2005年のスギ花粉飛散量は図2のように大変多かった。図3および表2に示すようにプラセボ群は花粉量の増大に伴い、好酸球、総IgE、スギ花粉特異的IgEが有意に上昇しているが、試験群はその上昇が有意ではなく、明らかに本乳酸菌が花粉症に対して効果があることを示している。さらに花粉症の症状についても図4のように有意に抑制していることがわかる。図4において、特に鼻かみ症状の抑制は顕著であり、鼻づまり、目の痒み、喉の痛みの症状に関しては特に後観察中において穏やかな緩和効果がみられた。なお、鼻づまり等の症状において摂取期間中に有意な差がみられなかったのは、上記のような多量の花粉飛散により症状の重い被験者が多かったことも起因していると考えられる。他の血液成分等には特に問題はなく、安全に摂取し続けられることがわかった。
【0030】
【表2】

【0031】
以下に、本発明の抗アレルギー剤、すなわちラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有する食品、医薬品の配合例を示す。
【0032】
[実施例4]乳酸菌培養物入り漬物
乳酸発酵を行う漬物類について実施例1の本菌体をスターターとして使用し、適当なpH条件で発酵を停止し調味後容器に充填し殺菌すれば、培養物を残存させたまま摂取することができる。官能評価に供したところ一般的な漬物と何ら変わりなく毎日食べ続けられるとの回答がほとんどであった。
【0033】
[実施例5]乳酸菌培養物入り飲料
ウーロン茶葉から湯抽出したウーロン茶に実施例1の培養物を10cfu/500mlとなるように懸濁し、ビタミンCを加えて常法通りUHT殺菌して500ml容PETボトルにアセプティック充填した。官能評価に供したところ毎日飲み続けられるとの回答がほとんどであった。
【0034】
[実施例6]乳酸菌培養物入りヨーグルト
乳を含む原材料(牛乳、脱脂粉乳、生クリーム、野菜抽出物、砂糖液糖、安定剤、水)を均一に混合し、85℃、15分の加熱殺菌を行い、40℃以下まで冷却後、実施例1の乳酸菌スターターと香料を添加し、紙容器に充填し37℃で発酵させた。約18時間でpH4.3となり、10℃以下の冷蔵庫で冷却保管した。できあがったヨーグルトは一般的なヨーグルトと変わらず、毎日食べ続けられるとの評価がほとんどであった。
【0035】
[実施例7]顆粒状健康食品
実施例1の培養物にデキストリンを添加し、水をバインダーとして流動層造粒機を用いて、均等に混和・加熱・造粒を行い、造粒物を得た。これをスティック充填機にて1スティック1gとなるように充填した。
【0036】
[実施例8]タブレット状健康食品
実施例1の培養物に還元パラチノース、ソルビトール、アラビアガムを、適宜水をバインダーとして加熱・造粒しながら添加し、クエン酸、香料等で味を調製し、打錠機によりタブレット状に成型しやすいように粉末油脂とショ糖脂肪酸エステルを加え、混合する。これを1粒当たり1.5gになるよう打錠した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例2のヒト摂取試験における血中総IgEの変化量を示すグラフ。
【図2】実施例3のヒト摂取試験におけるスギ花粉飛散量の変化を示すグラフ。
【図3】実施例3のヒト摂取試験における血中アレルギー関連成分の変化を示すグラフ。
【図4】実施例3のヒト摂取試験におけるアレルギー症状の変化を示すグラフ。 前観察1の試験群とプラセボ群について1.0とし、そこからの変化率を左X軸目盛りとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラムの培養物を有効成分とする抗アレルギー剤。
【請求項2】
工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第11550号(FERM P−11550)として寄託されているラクトバチルス・プランタラムNo.14株の培養物を有効成分とする、請求項1に記載の抗アレルギー剤。
【請求項3】
ラクトバチルス・プランタラムの培養物のヒト経口投与により、血中の総IgE、抗原特異的IgE、好酸球数およびアレルギー症状を抑制することができる、請求項1または2に記載の抗アレルギー剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載されたラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有する、抗アレルギー作用を有する食品。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載されたラクトバチルス・プランタラムの培養物を含有する、抗アレルギー用医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−126365(P2007−126365A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318226(P2005−318226)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(591104848)株式会社桃屋 (17)
【Fターム(参考)】