説明

ラクトン安定化組成物

本発明は、ラクトン酸化防止剤3-アリールベンゾフラノンに関する、新規な化合物および組成物並びに合成方法を提供する。本発明の化合物は、有機物質、好ましくはポリマー、一例としてポリウレタンフォームの黄変および劣化を防止するのに有用であり得る。本発明のラクトン酸化防止剤はポリマーであってよく、物理的形状として室温で液状またはペースト状であってもよい。その安定化特性に必須ではないが、ある種類では、本発明の化合物は、ポリマー鎖上に1個以上の反応性一級OH基を有し得る。本発明の一態様では、ポリマー鎖はまた、オリゴマーオキシアルキレンエーテルおよび脂肪族エステル官能基を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーのような有機物質、および安定剤として使用するためのオリゴマーラクトンを含んでなる配合物に関する。本発明の組成物は、酸化分解、熱分解または光誘起分解に対して有機物質を安定化するために使用され得る。本発明は、新規なオリゴマーラクトンを対象とする。
【背景技術】
【0002】
酸化分解、熱分解または光誘起分解に対して有機物質を安定化する様々な組成物が知られている。このような安定化組成物は、ポリオレフィンのような熱可塑性物質、ポリウレタンのような熱硬化性樹脂、および被覆組成物における広範な用途を有し得る。例えば、ポリウレタンフォームに関する1つの問題は、一定期間後にフォームが黄変する傾向があることである。フォーム生成物の黄変は望ましくない。このような黄変は、NOxガス退色または紫外線に起因し得る。
【0003】
US 4,325,863およびUS 4,338,244(Hinsken)は、ポリオレフィン、ポリウレタンおよびポリエステルのような様々な有機ポリマーにおける新規な安定剤として、3-アリールベンゾフラン-2-オンおよびそれらの二量体を開示している。
【0004】
US 5,367,008、US 5,369,159およびUS 5,428,162(Nesvadba)は、ポリマー安定剤として使用するための、様々な3-(アルコキシフェニル)ベンゾフラン-2-オンおよび3-(アシルオキシフェニル)ベンゾフラン-2-オン誘導体の製造を開示している。
【0005】
従来技術は、多くの相対的に非反応性である固体安定剤を提供している。固体は、製造工程において使用しにくい。固体は、取扱い性、移行性、曇りおよびブルーミングに関する問題を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新規かつより有効な安定化化合物が、産業界において必要とされている。本発明はこのような化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明の態様を説明するが、そのような態様の1つ以上の実施例は後述する。各実施例を、本発明の限定としてではなく、本発明を説明するために示す。実際、本発明の範囲または意図から逸れることなく本発明を修正および変更できることは、当業者には明らかであろう。
【0008】
本発明は、新規な化合物および組成物並びに合成方法を提供する。本発明の一態様では、組成物は、ポリマーまたはオリゴマーのラクトン酸化防止剤、例えば、ポリ(オキシアルキレン)鎖置換3-アリールベンゾフラノンまたはポリ(カプロラクトン)鎖置換3-アリールベンゾフラノンを含み得る。本発明のラクトン酸化防止剤は、ポリマーまたはオリゴマーであってよく、室温で本質的に液状またはペースト状であってよい。多くの用途において、液状またはペースト状のこのような化合物は、顕著かつ意外な利点を与える。その安定化特性に必須ではない場合もあるが、本発明の化合物は、ポリマー鎖上に1個以上の反応性一級OH基を有し得る。ある用途のために、ポリマー鎖の末端基が安定剤組成物中のポリマーラクトンの機能に関して重要であるとは考えられない。ポリマー鎖は、オキシアルキレンエーテルおよび脂肪族エステル(官能)基も含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の液状ラクトンポリマー/オリゴマー鎖は、オキシアルキレンセグメント(例えばエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドなどであり、EO/PO比は、所望の親水性および/または疎水性を達成するように設計され得る。)および/または脂肪族エステルセグメント(疎水性)を含み得る。これによって、ラクトン酸化防止剤を、熱硬化性樹脂(ポリウレタン)、熱可塑性物質(PET、PP、PS、PCなど)、ワックス、水性系(液状ハンドソープ、洗剤、日焼け止め、布地柔軟剤などの消費財)、および被覆剤のような様々な媒体における望ましい適合性に「調整」する機会が与えられる。
【0010】
特異なポリマー/オリゴマー鎖を有するラクトンは、上記した用途のほとんどに適合性であるEO/PO/脂肪族エステルの特定組合せを含んでもよい。本発明のポリマーラクトンの液体性は、応用過程における取扱い容易性を与える。化合物が望ましくは室温で液状またはペースト状であり得ることによって、製造工程において化合物を著しく利用しやすくなる。そして、本発明のラクトンのポリマー/オリゴマー特性は、高分子量、および適用媒体との良好な適合性を与え、従って、揮発しにくく、移行、ブルーミングおよびプレートアウトが起こりにくい。
【0011】
ある用途では、一級ヒドロキシ基が本発明のラクトン分子上に存在する。これらの構造は、ポリウレタン、PETおよび被覆系において優れた反応性を提供する。従って、望ましい場合は、ポリマーラクトン分子は適用媒体に化学的に結合され得る。本発明のポリマーUV吸収剤は、移行、滲出、曇り、プレートアウトおよび抽出の問題を解決または緩和し得る。これらの問題の各々は、極めて望ましくない。
【0012】
UV吸収剤、他の酸化防止剤および光安定剤のような他の添加剤と共に使用する場合、本発明のポリマーラクトン酸化防止剤3-アリールベンゾフラノンは、白色ポリウレタンフォームのガス退色(NOx)および紫外線誘起黄変を著しく低減し得る。本発明の化合物は、液状で供給され得、フォーム内部で反応性を示すが、このことは極めて有利である。これらの化合物は間違いなくポリマーまたはオリゴマーであり、ある用途では、ポリオキシアルキレンおよび脂肪族ポリエステルブロックコポリマー/オリゴマー鎖を有する。
【0013】
本発明のラクトン安定剤は、液状かつポリマーであり得る。それらは、取扱い、加工および計量の容易性を与え得る。本発明のラクトン安定剤は、ポリマー鎖の末端に一級OH基を有し得る。それらは、望ましい場合は、ポリウレタン、被覆剤、PETおよびポリカーボネート用途において完全に反応性を示し得る。それらは、ポリマーマトリックスからの望ましくない抽出、移行、曇りおよび滲出を防止するための酸化防止機能を与え得る。
【0014】
一態様では、本発明の化合物は、以下:
【化1】

[式中、R〜Rは、各々独立して、H、F、Cl、Br、I、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20フェニルアルキル基、およびフェニル基からなる群から選択され、
AはC〜C20アルキル基または二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり、
ZはC〜C20アルキル基または二価オリゴマーエステル基からなり、
Gは、H、C〜C10アルキル基、アルキルカルボニル基、およびアリールカルボニル基からなる群から選択される末端基からなる。]
のように記載され得る。
【0015】
先に記載された「A」は、構造:
【化2】

[式中、EOはエチレンオキシドまたはその誘導体からなり、
POはプロピレンオキシドまたはその誘導体からなり、
は二価C〜C20アルキル基からなり、
x、yおよびwは、独立して、0、および1〜20の間の自然数または分数からなる群から選択され、
x+y+wの和は1以上であり、
10はHまたはC〜C20アルキル基からなる。]
を有し得る二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり得る。
【0016】
更に、Z基は、構造:
【化3】

[式中、R11およびR12は、独立して、HまたはC〜C10アルキル基から選択され、
nは1〜10の間の整数からなり、
mは1〜20の間の自然数または分数からなる。]
を有する二価オリゴマーエステル基からなり得る。
【0017】
別の態様では、本発明の化合物は、式:
【化4】

[式中、R、R、R〜R、A、ZおよびGは先に定義したとおりである。]
によっても表され得る。
【0018】
また別の態様では、本発明の化合物は、式:
【化5】

[式中、RおよびRは先に定義したとおりであり、
qは1〜20の間の自然数であり、
tは0〜20の間の自然数であり、
q+tは3以上である。]
によっても表され得る。
【0019】
更に具体的には、本発明の化合物は、式:
【化6】

[式中、qおよびtは先に定義したとおりである。]
によって表され得る。
【0020】
本発明の化合物は、単独でまたは他の常套の酸化防止剤と組み合わせて使用する場合、有機物質、例えば被覆剤および多数のポリマーを安定化するための有効な酸化防止剤であり得る。液状オリゴマーであり、かつ無移行性であることが極めて望ましい全ての用途のために、本発明の化合物は、従来のラクトン酸化防止剤と比べて有利である。ポリマーは、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールなどであり得る。
【0021】
安定化組成物は、成形品の製造時、例えば所望の相に、常套の方法によって有機物質に配合される。安定化組成物は例えば、他の物質を伴った液体、ペーストおよび粉体、懸濁液またはエマルション或いは溶液として、粉体、溶融体、溶液、懸濁液またはエマルションの状態であってよいポリマーに混合され得る。
【0022】
とりわけポリウレタンフォームの安定化では、本発明の化合物は、下記種類の添加剤と共に使用され得る。
【0023】
A類:ベンゾトリアゾールは一般に、下記構造:
【化7】

[式中、R13、R14およびR15は、独立して、水素、式C(式中、a、b、c、dおよびeは0〜30である。)を有する基、およびハロゲンから選択される。]
に従う化合物である。
【0024】
B類:ヒンダードフェノール、即ちBHT誘導体および関連化合物は、一般に、下記構造:
【化8】

[式中、R16は、水素、式C(式中、a、b、c、dおよびeは0〜30であり得る。)を有する基、およびハロゲンからなる群から選択される。]
に従う。
【0025】
C類:二級ジフェニルアミンは、下記構造:
【化9】

[式中、R17およびR18は、独立して、水素、式C(式中、a、b、c、dおよびeは0〜30である。)を有する基、およびハロゲンからなる群から選択される。]
に従い得る。
【0026】
D類:他の常套のラクトン系酸化防止剤は、下記構造:
【化10】

[式中、R19〜R27は、独立して、水素、式C(式中、a、b、c、dおよびeは0〜30である。)を有する基、およびハロゲンからなる群から選択される。]
に従う化合物を含み得る。
【0027】
本発明の合成および応用の様々な例を、実施例の形式および表にまとめたデータとして以下に示す。
【0028】
本発明の合成実施例
【実施例1】
【0029】
【化11】

274gの2,4-ジ-t-ブチルフェノール、165gの4-ヒドロキシマンデル酸、および530mlの酢酸を、温度プローブ、撹拌装置および冷却器を備えた2リットル容の三ッ口丸底フラスコ内で混合した。混合物を95℃まで加熱し、その温度で2.6gのメタンスルホン酸を添加した。反応を95℃で3時間行った。室温まで冷却し、一晩放置した後、沈澱生成物を濾過によって収集した。沈澱物が白くなるまで、この濾過ケークを酢酸で数回洗浄した。50℃のオーブンで乾燥後、189〜191℃の融点を有する175gの5,7-ジ-t-ブチル-3-(4-ヒドロキシフェニル)ベンゾフラン-2-オン生成物を得た。
【実施例2】
【0030】
【化12】

3リットル容の三ッ口丸底フラスコで、水酸化ナトリウム32.4gの水810ml溶液を調製した。撹拌しながら、91.6gの5,7-ジ-t-ブチル-3-(4-ヒドロキシフェニル)ベンゾフラン-2-オンを添加し、混合物を窒素雰囲気中で80℃まで加熱した。80℃になった時点で、27mlの2-クロロエタノールを添加し、反応系を80℃で2時間保持した。室温まで冷却後、濃塩酸99mlの水1251ml溶液を添加し、反応系を80℃で更に1時間保持した。室温まで冷却した時点で、該液体をデカントし、残留固体を500mlの塩化メチレンに溶解した。この溶液を300mlの水で一回洗浄した。硫酸マグネシウム上で塩化メチレン層を乾燥し、ストリッピングした後、92.6gの淡黄色固体である5,7-ジ-t-ブチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-フェニル]ベンゾフラン-2-オンが残留した。この固体を、更にエタノール/水から再結晶させることができる。
【実施例3】
【0031】
【化13】

15gの5,7-ジ-t-ブチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-フェニル]ベンゾフラン-2-オン、13.5gのε-カプロラクトン、および0.3gの50%次亜リン酸を、100ml容の三ッ口フラスコに導入した。窒素雰囲気中、混合物を100℃まで加熱し、3時間保持した。24gの粘稠な淡黄色の液体生成物を得た。
【実施例4】
【0032】
【化14】

300gの5,7-ジ-t-ブチル-3-(4-ヒドロキシフェニル)ベンゾフラン-2-オン、500gのトルエン、および3gのリン酸ランタン触媒をオートクレーブに導入した。反応混合物を(60PSIGの圧力まで)数回窒素パージし、最後に窒素5PSIGまで加圧した。121℃までオートクレーブを加熱後、反応器中の圧力が60PSIGに達するまで、エチレンオキシドを反応混合物に添加した。エチレンオキシドの消費によって圧力が30PSIGまで低下した後、合計192gのエチレンオキシドを添加するまで先に記載した方法と同様に、更なるエチレンオキシドを反応器に添加した。その後、反応混合物を合計で30分間、後加熱した。トルエンを減圧ストリッピングによって除去し、472g(96%)の淡黄色の粘稠な液体を得た。
【0033】
本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤についての物品製造および性能試験
a)ポリエーテルフォーム物品の製造
本発明の一態様として、以下の組成および方法に従って、本発明のラクトン酸化防止剤を単独でまたは他の添加剤と組み合わせてポリウレタンフォームを製造した。
【0034】
【表1】

【0035】
反応器内での混合と同時に、反応は「良好な」気泡(ゲル化と発泡とのバランスを指す)を生じ、容器を160℃(工業製造レベルで受ける実際の熱履歴をシミュレートするために通常のオーブンで実施)に約3分間曝し、原料を硬化してフォームバンを形成した。次いで、得られたフォームバンの性能を、以下に詳細に示したように分析した。
【0036】
b)本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤を含むポリエーテルフォームの性能特性
セクションa)に記載したような組成および方法に従って製造した白色フォームを、ライズ時間、タック時間およびバン高さに関する標準的なフォーム性能について試験し、常套の市販ラクトン酸化防止剤Irganox(登録商標)HP 163を用いて製造されたまたは添加剤なしで製造された、対照ポリエーテルフォームと比較した。対照の5%未満の測定値は、最終フォーム製品に許容できると見なされる。測定値を表2にまとめる。
【0037】
【表2】

【0038】
また、製造したフォームは、良好なレジリエンスを示し、密度は約1.5lb/ftであった。従って、本発明のポリマーラクトン酸化防止剤は、対照試料と比較して、許容可能なポリウレタンフォーム物品を提供する。
【0039】
c)ポリウレタンフォームからの抽出測定
上記セクションb)で製造したポリウレタンフォームを、下記方法を用い、抽出レベルについて分析した。抽出試験は、試料の中心から1gの硬化フォームを切り出し、切り出したフォームをガラスジャー内で160℃で更に20分間、後硬化させることを含む。室温まで冷却後、75gのメタノールをガラスジャーに添加し、次いで1時間蓋をした。続いてフォームを取り出し、抽出されたラクトン酸化防止剤の割合を調べるために抽出溶液を分析した。結果を表3にまとめる。
【0040】
【表3】

【0041】
これらの添加剤の分子量に基づいて、1.0phpのHP-136は、2.1phpの本発明の実施例3の添加剤、および1.6phpの本発明の実施例4の添加剤に相当する。表3に記載されているように、本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤は、フォーム抽出試験において、市販品HP-136のような比較例と比べて著しい改善をもたらす。
【0042】
d)ポリウレタンフォームにおける熱変色からの着色料の保護
液状ポリマー着色料Reactint(登録商標)Blue X3LV(Milliken Chemical社から入手可能)は、ポリウレタンフォームの着色のために広範に使用されているが、フォーム物品製造時に熱変色する傾向があることが知られている。従って、反応が「良好な」気泡(ゲル化と発泡とのバランスを指す)を生じた後、容器を160℃(通常のオーブンで実施)に3分間曝す前に185℃(広い工業製造環境で受ける実際の熱履歴をシミュレートするために電子オーブンで実施)に約10分間曝し、フォームバンを硬化した以外は、セクションa)で記載したような組成および方法に従って、青色フォームを、1phpのBlue X3LVの存在下、本発明のラクトン酸化防止剤および比較のラクトン酸化防止剤を用いてまたは用いずに製造した。フォームバンを半分にスライスし、次いで、デルタEのためのCMC式を用いて、フォームバン中心部(通常変色が生じる)の測定値とフォームバン外部(通常変色は生じない)の測定値とを比較した。結果を表4にまとめる。
【0043】
【表4】

【0044】
表4のデータは、本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤が、ポリウレタンフォーム製造過程での熱変色からBlue X3LVのようなポリマー着色料を安定化するのに非常に有効であったことを示した。
【0045】
e)ポリウレタンフォーム製造時の熱変色/黄変からの純粋なポリオールの保護
ポリオールは非常に酸化されやすいことが知られている。その物理特性および化学特性を維持するために、ほとんど全ての市販ポリオールは、貯蔵中および輸送中、常套のヒンダードフェノール酸化防止剤で保護されている。ヒンダードフェノールの1つの主な副作用は、ポリウレタン物品製造時および排気ガス(NOx)への暴露時、ヒンダードフェノールが変色/黄変を招くことである。ポリウレタンフォームのようなポリマーの黄変を招くことなくポリオールの完全性を有効に保護でき、ポリオールと適合性である、酸化防止剤が非常に望まれている。
【0046】
本発明のポリマーラクトン酸化防止剤の有効性を試験するために、反応が「良好な」気泡(ゲル化と発泡とのバランスを指す)を生じた後、容器を160℃(通常のオーブンで実施)に3分間曝す前に185℃(広い工業製造環境で受ける実際の熱履歴をシミュレートするために電子オーブンで実施)に約10分間曝し、フォームバンを硬化した以外は、セクションa)で記載したような組成および方法に従って、白色フォーム(着色料を添加せず)を、本発明のラクトン酸化防止剤および比較のラクトン酸化防止剤を用いてまたは用いずに、純粋なポリオール(常套の酸化防止剤パッケージは存在せず)を用いて製造した。フォームバンを半分にスライスし、次いで、デルタEのためのCMC式を用いて、フォームバン中心部(通常変色が生じる)の測定値とフォームバン外部(通常変色は生じない)の測定値とを比較した。結果を表5にまとめる。
【0047】
【表5】

【0048】
従って、本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤は、熱分解から純粋なポリオールを安定化するのに非常に有効である。
【0049】
f)純粋なポリオールを用いて製造したポリウレタンフォームのガス退色からの保護
ガス(NOx)退色からの純粋なポリオールの安定化に対する本発明のポリマーラクトン酸化防止剤の有効性を試験し、通常使用される常套のヒンダードフェノール酸化防止剤パッケージの性能と比較するために、セクションa)で記載したような組成および方法に従って、白色フォーム(着色料を添加せず)を、本発明のラクトン酸化防止剤および比較のラクトン酸化防止剤を用いてまたは用いずに、純粋なポリオール(常套の酸化防止剤パッケージは存在せず)および通常のポリオール(常套の安定剤パッケージを伴う)を用いて製造した。硬化後、フォームバンを半分にスライスし、フォーム試料の小片(径10cm×5cm×2cm)を各フォームバンの中心から切り出した。これらのフォーム試料を、異なった暴露時間での変色について、NOxガス室(NOx濃度は1ppm)内で試験した。次いで、NOx室試験で異なった時間暴露したこれらのフォーム試料を、各々の未暴露フォーム試料と、デルタEのためのCMC式における測定値について比較した。結果を表6にまとめる。
【0050】
【表6】

【0051】
従って、本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤が、NOx退色からのポリオールの安定化について、常套のヒンダードフェノール酸化防止剤パッケージより優れていることが明らかである。
【0052】
g)白色ポリウレタンフォームにおける変色の低減
A類から選択された紫外線吸収剤、B類から選択されたフェノール系酸化防止剤、C類から選択された二級アミン酸化防止剤、およびD類から選択されたラクトン酸化防止剤からなる特異な変色防止剤パッケージの存在下、セクションa)に記載したような組成および方法に従って、複数の白色フォームを製造した。本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤を、この特異な添加剤パッケージにおいて、固体であるかおよび/またはポリオールと完全には混和できない市販酸化防止剤Irgnox(登録商標)HP-136に代えて使用した。フォームを、本発明の添加剤パッケージおよび商業的に入手可能な添加剤パッケージを用いて製造した。次いで、フォームバンを半分にスライスし、フォーム試料の小片(径10cm×5cm×2cm)を2組、各フォームバンの中心から切り出した。1組のこれらのフォーム試料を、キセノンランプ下で試験し、紫外線変色に対する特性を比較した(AATCC Test No. 16-1999に従ったキセノンランプ試験)。もう1組の試料を、異なった暴露時間での変色についてNOxガス室(NOx濃度は1ppm)内で試験した(AATCC Test No. 23-1999に記載されているようなガス退色試験)。続いて、紫外線ランプ下またはNOx室内で異なった時間暴露したこれらのフォーム試料を、各々の未暴露フォーム試料と、デルタEのためのCMC式における測定値について比較した。
【0053】
本発明の相乗的添加剤組成物パッケージを表7に示す。対照(添加剤なし)および市販添加剤パッケージB-75(Ciba)、CS-31(Crompton)、およびLS-1(Ortegol)も、比較例として表7に含まれている。これらは、ポリウレタン産業において、白色ポリウレタンフォームの安定化に現在最良の市販品である。
【0054】
【表7】

【0055】
本発明の試料フォームおよび比較の試料フォームについての耐光性およびガス退色性の試験結果を、表8にまとめる。
【0056】
【表8】

【0057】
明らかに、本発明の液状ポリマーラクトン酸化防止剤を含む本発明の添加剤パッケージは、GG、HHおよびJJのような最先端の市販添加剤パッケージと比較して、紫外線暴露による変色およびガス退色に対して最高の総合性能を示した。
【0058】
これらの考察は例示的な態様の記載でしかなく、本発明の広範な態様を制限することを意図していないことは、当業者に理解される。本発明は、請求の範囲における例によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式:
【化1】

[式中、R〜Rは、独立して、H、F、Cl、Br、I、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20フェニルアルキル基、およびフェニル基からなる群から選択され、
AはC〜C20アルキル基または二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり、
ZはC〜C20アルキル基または二価オリゴマーエステル基からなり、
Gは、H、C〜C10アルキル基、アルキルカルボニル基、およびアリールカルボニル基からなる群から選択される末端基からなり、
(i)Aは二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり、
(ii)Zは二価オリゴマーエステル基からなり、または
(iii)Aは二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり、かつZは二価オリゴマーエステル基からなる。]
を有する化合物。
【請求項2】
Aが構造:
【化2】

[式中、EOはエチレンオキシドまたはその誘導体からなり、
POはプロピレンオキシドまたはその誘導体からなり、
は二価C〜C20アルキル基からなり、
x、yおよびwは、独立して、0、および1〜20の間の自然数または分数からなる群から選択され、
x+y+wの和は1以上であり、
10はHまたはC〜C20アルキル基からなる。]
を有する二価オリゴマーオキシアルキレン基からなる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zが構造:
【化3】

[式中、R11およびR12は、独立して、HまたはC〜C10アルキル基から選択され、
nは1〜10の間の整数からなり、
mは1〜20の間の自然数または分数からなる。]
を有する二価オリゴマーエステル基からなる、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Zが構造:
【化4】

[式中、R11およびR12は、独立して、HまたはC〜C10アルキル基から選択され、
nは1〜10の間の整数からなり、
mは1〜20の間の自然数または分数からなる。]
を有する二価オリゴマーエステル基からなる、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
式:
【化5】

[式中、RおよびRは、独立して、H、F、Cl、Br、I、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20フェニルアルキル基、およびフェニル基からなる群から選択され、
qは1〜20の間の自然数であり、
tは0〜20の間の自然数であり、
q+tの和は3以上である。]
によって表される化合物。
【請求項6】
式:
【化6】

[式中、qは1〜20の間の自然数であり、
tは0〜20の間の自然数であり、
q+tの和は3以上である。]
によって表される化合物。
【請求項7】
構造式:
【化7】

によって表される化合物。
【請求項8】
構造式:
【化8】

によって表される化合物。
【請求項9】
a)酸化分解、熱分解または光誘起分解される有機物質、および
b)式:
【化9】

[式中、R〜Rは、独立して、H、F、Cl、Br、I、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20フェニルアルキル基、およびフェニル基からなる群から選択され、
AはC〜C20アルキル基または二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり、
ZはC〜C20アルキル基または二価オリゴマーエステル基からなり、
Gは、H、C〜C10アルキル基、アルキルカルボニル基、およびアリールカルボニル基からなる群から選択される末端基からなり、
(i)Aは二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり、
(ii)Zは二価オリゴマーエステル基からなり、または
(iii)Aは二価オリゴマーオキシアルキレン基からなり、かつZは二価オリゴマーエステル基からなる。]
で表される少なくとも1種の化合物
を含んでなる組成物。
【請求項10】
Aが構造:
【化10】

[式中、EOはエチレンオキシドまたはその誘導体からなり、
POはプロピレンオキシドまたはその誘導体からなり、
は二価C〜C20アルキル基からなり、
x、yおよびwは、独立して、0、および1〜20の間の自然数または分数からなる群から選択され、
x+y+wの和は1以上であり、
10はHまたはC〜C20アルキル基からなる。]
を有する二価オリゴマーオキシアルキレン基からなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
Zが構造:
【化11】

[式中、R11およびR12は、独立して、HおよびC〜C10アルキル基からなる群から選択され、
nは1〜10の間の整数からなり、
mは1〜20の間の自然数または分数からなる。]
を有する二価オリゴマーエステル基からなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
有機物質が合成ポリマーからなる請求項9に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−524226(P2008−524226A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546833(P2007−546833)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/045100
【国際公開番号】WO2006/065829
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】