説明

ラジアル玉軸受

【課題】二個の環状樹脂部品を結合した波形保持器を備えたラジアル玉軸受の低速回転時における保持器安定性を犠牲にすることなく、高速回転時の異常発熱を防止する。
【解決手段】ポケット5の円周方向両側に波形保持器4のラジアル方向案内用の案内面8を形成し、PCD(円筒面Sc)から保持器外径側の領域内に、軸受停止時からアキシアル方向のポケットすきまを定める低速用玉受け面9を形成し、これよりも保持器内径側に、遠心力による保持器変形で低速用玉受け面に代わってアキシアル方向のポケットすきまを定める高速用玉受け面10を形成し、その変形による両側の低速用玉受け面9のアキシアル方向変位量ΔXの合計が軸受停止時のアキシアル方向のポケットすきま(δ1の2倍)に相当する軸受回転速度を超えてもアキシアル方向のポケットすきまが高速用玉受け面10で定まり、両玉受け面9、10が玉3を圧迫しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波形保持器を備えたラジアル玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
深溝玉軸受に代表されるラジアル玉軸受では、内外の軌道部材間に玉を組み込んだ状態で波形保持器を装着する組立てが実施されている。波形保持器として、二個の波形の環状部品を結合することにより各ポケットの形成と共に各ポケットに玉を収める形式のものがある。特に、高速回転、低騒音が求められる波形保持器では、二個の環状部品として、合成樹脂の射出成形で形成された環状樹脂部品が採用されている。一般に、波形保持器は、円周方向に連続する円環部をもたないため、駆動力を伝える玉によりラジアル方向に案内される転動体案内方式になっている。
【0003】
従来、図8(a)、(b)に例示するように、各環状樹脂部品81、82のうち、アキシアル方向に対向する湾曲状部83、83は、概ね玉84に沿うように形成され、そのポケット内側には、波形保持器をラジアル方向に案内する玉が滑り接触し、かつポケットすきまを全方向に定めるためのポケット内面85が形成されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ポケット内面85は、玉84との間に僅かなポケットすきまを全面的に設定した球面状に形成されている。dn値[軸受内径(mm)×回転速度(min-1)の積]30万を超える運転条件では、ポケット内面85と玉84との滑り接触に伴う発熱と摩耗により、グリースの劣化を早めたり、ポケットすきまが大きくなって保持器音が増したりする。また、ラジアル荷重の負荷域で玉84がポケット内面85を回転方向に押し、非負荷域でポケット内面85が玉84を回転方向に押す際、ポケット内面85と玉84が強く滑り接触して摩擦熱による軸受の温度上昇が急になったりする。これら問題の解決策として、ポケットの円周方向両側にグリース溜り部86を形成することもある。グリース溜り部86は、ポケット内面85からポケット外側へ凹入するように形成されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−343571号公報
【特許文献2】特開2006−226447号公報
【特許文献3】特開2006−226448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
dn値30万前後を許容回転速度とするラジアル玉軸受であれば、環状樹脂部品の採用を基本に潤滑条件の工夫を適宜に施すことで発熱を防止できるが、dn値100万を越える運転を目指すことになると、遠心力に対して環状樹脂部品の剛性不足が生じ、玉と波形保持器との接触関係が狂って異常発熱を招く恐れがある。剛性不足を見越してポケット内面85の球径を大きくすると、低速回転時の保持器安定性が悪化する。
【0007】
そこで、この発明の課題は、二個の環状樹脂部品を結合した波形保持器を備えたラジアル玉軸受の低速回転時の保持器安定性を犠牲にすることなく、高速回転時の異常発熱を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明は、内外の軌道部材間に介在する複数の玉と、二個の波形の環状樹脂部品を結合することにより各ポケットの形成と共に各ポケットに前記玉を収める波形保持器とを備えたラジアル玉軸受において、前記ポケットの円周方向両側に、前記玉との接触で前記波形保持器をラジアル方向に案内するための案内面が形成されており、前記ポケットのアキシアル方向両側には、軸受停止時に前記複数の玉の中心線(PCD)から保持器外径側の領域内に存在し、かつ軸受停止時からアキシアル方向のポケットすきまを定める低速用玉受け面と、軸受停止時に前記複数の玉の中心線(PCD)よりも保持器内径側の領域内に存在し、かつ軸受回転速度に応じた前記波形保持器の変形で前記低速用玉受け面に代わってアキシアル方向のポケットすきまを定める高速用玉受け面とが形成されている構成を採用したものである。
この発明において、ポケットは、1個の玉を収めるための波形保持器の空所をいう。また、円周方向は、軸受中心軸回りの円周方向をいう。また、波形保持器の幾何的な中心軸は、軸受中心軸と同軸である。また、ラジアルの概念は、軸受中心軸に垂直な向きをいう。また、アキシアルの概念は、軸受中心軸に沿った向きをいう。また、軸受停止時は、波形保持器、内外の軌道部材及び玉が熱平衡状態となってこれらの寸法が安定し、かつ内外の軌道部材及び玉が停止している時点をいう。また、複数の玉の中心線は、内外の軌道溝間で波形保持器に複数保持された1列の玉が円周方向等配位置に並ぶときの各玉の中心を含む円周をいう。また、アキシアル方向のポケットすきまは、ある軸受回転速度において(軸受停止時を含む)、ポケット内で玉が自由にアキシアル方向に変位可能な量に相当するポケット内面と玉との間のすきまをいい、0以上の1値に定まるパラメータである。
【0009】
波形保持器は案内面に接触する玉で駆動される転動体案内方式なので、波形保持器の回転速度は軸受の玉の公転速度に相当し、軸受運転中、その回転速度に応じた遠心力が波形保持器に作用する。本発明者は、有限要素法を用い、二個の環状樹脂部品を結合した波形保持器の回転速度を様々に変更し、遠心力による波形保持器の変形を検討した。解析モデルの波形保持器は、次の(1)〜(3)を前提としたものである。
(1)保持器幅は、ポケット中心線(すなわち、PCD上に位置する玉中心と軸受中心軸とを結ぶラジアル方向の直線)を含むアキシアル平面上であって、複数の玉の中心を含む円筒面と交わる箇所において最も大きい。保持器幅及びポケットの幅は、前記アキシアル平面から円周方向に離れるに連れて狭くなる。
(2)円周方向に一列で等配されたポケットの数に対応する円周方向の回転対称性を有する。
(3)各ポケットの円周方向両側に、波形保持器を玉との接触でラジアル方向に案内するための案内面が形成され、各ポケットのアキシアル方向両側に、アキシアル方向のポケットすきまを定めるための玉受け面が形成されている。波形保持器がどちらに回転しても、波形保持器のラジアル方向案内、アキシアル方向のポケットすきまを同じにするため、案内面及び玉受け面は、前記アキシアル平面、及びポケット中心線を含むラジアル平面を鏡面とした対称形に形成され、玉受け面は前記円筒面を鏡面とした対称形に形成されている。
【0010】
図5(a)、(b)に、波形保持器の一例である解析モデルの抽出部分を示す。この抽出では、前記アキシアル平面を境界とした。同図(a)、(b)中の二点鎖線は、遠心力非作用時(停止状態)における波形保持器の外形を示す。また、同図(a)、(b)中の実線は、dn値100万に相当する遠心力作用時(回転状態)における波形保持器の外形と、エレメント分割のメッシュとを示す。同図(a)中の段階的な濃淡分けは、ラジアル方向変位の分布を示す。同図(b)中の段階的な濃淡分けは、アキシアル方向変位の分布を示す。図5(a)、(b)に示すように、解析モデルの案内面S1は、PCD上に球中心をもった球面状で、隣り合うポケット間で円周方向に連続している繋ぎ部と、ポケットの幅を繋ぎ部から拡大する湾曲状部の繋ぎ部側とに形成されている。湾曲状部は、ラジアル方向厚さで保持器回転に対する剛性を高めるため、PCDから保持器外径側及び内径側に存在し、そのポケット内側に玉受け面S2が形成されている。玉受け面S2は、アキシアル方向のポケットすきまを全軸受回転域で定める球面状の壁面となっている。解析モデルの環状樹脂部品の素材として、ポリアミド(PA)にガラス繊維を拡散させた繊維強化樹脂を仮定した。
【0011】
同図(a)から分かるように、遠心力が作用すると、波形保持器は、全体として拡径し、円周方向に延びる。これに伴って、湾曲状部は、同図(b)から分かるように、円周方向に引っ張られて真直ぐに近づく変形を生じる。その結果、湾曲状部のうち、前記アキシアル平面上(図中の保持器断面上)のところは、アキシアル方向にポケット中心線の方へ最も大きく変位する。この変位の大きさは、前記アキシアル平面から円周方向に離れるに連れて次第に小さくなる。湾曲状部のラジアル方向の変位量は、前記アキシアル平面から円周方向に離れても大差がない。したがって、湾曲状部は、ポケット中心線を含む任意の平面上で考えると、その平面での前記ラジアル方向及びアキシアル方向の各変位量から定まる傾きの直線に沿って変位する。図6は、様々な回転速度で解析し、前記アキシアル平面上で生じる前記アキシアル方向及びラジアル方向の変位量が回転速度の変化に応じてどのように変化するかを求め、それぞれの回転速度でアキシアル方向変位量に対するラジアル方向変位量をプロットしたグラフを示す。同図から分かるように、回転速度の大きさに応じたラジアル方向変位量は、アキシアル方向変位量に比例する。前記アキシアル平面以外の他の平面上では、前記ラジアル方向及びアキシアル方向の各変位量が同図の値と異なるが、遠心力の大きさに比例する点は同じに考えられる。したがって、湾曲状部と交わり、かつポケット中心線を含む任意の平面上で考えると、湾曲状部は、一方向の直線に沿った向きにのみ変位し、遠心力の大きさに応じて当該直線に沿った方向の変位量が変化する、と考えられる。図5(a)、(b)のそれぞれで二点鎖線と実線の保持器外形を比較すれば、玉受け面S2と、結合構造を含む繋ぎ部に応力が分散する案内面S1との間で、ラジアル方向変位量に大差はないが、アキシアル方向変位量に顕著な差が存在する。dn値100万以上のとき、湾曲状部の剛性不足は避けられず、前記円筒面よりも保持器内径側の領域は、前記アキシアル方向及びラジアル方向の変位が相俟って、特に玉側へ接近し、前記アキシアル平面上付近にある玉受け面S2の保持器内径側でアキシアル方向のポケットすきまが定まり、遠心力による波形保持器の変形に伴ってアキシアル方向のポケットすきまが特に減少し易いことが分かる。一方、繋ぎ部ないし湾曲状部の繋ぎ部近傍に形成された案内面S1は、アキシアル方向の剛性が高いため、アキシアル方向に殆ど変位せず、ここで玉がアキシアル方向に圧迫される心配はない。図5、図6から把握された変位傾向は、回転対称性をもって各湾曲状部が円周方向に引っ張られることに由来するので、この解析モデルだけでなく、前記(1)〜(3)の前提をもった一般的な波形保持器でも同様に成立すると考えられる。高速回転時を前提に従来の球状ポケット内面の球径を大きく設定すると、軸受の低速回転時のポケットすきまが不要に大きくなって波形保持器が安定せず、保持器音が発生し易くなってしまう。
【0012】
上記解析で得た知見を踏まえ、この発明は、軸受回転が高速でも玉をアキシアル方向に圧迫する心配がないポケット円周方向両側には、波形保持器のラジアル方向の案内を行うための案内面を形成し、ポケットのアキシアル方向両側には、軸受停止時からアキシアル方向のポケットすきまを定める低速用玉受け面と、低速用玉受け面に代わってアキシアル方向のポケットすきまを定める高速用玉受け面とを形成した。両玉受け面は、アキシアル方向のポケットすきまを定める部分なので、アキシアル方向両側の湾曲状部に形成される。したがって、上記解析結果で述べたように、軸受回転速度に応じた波形保持器の変形で湾曲状部がラジアル方向及びアキシアル方向に変位すると、両玉受け面も、同じく変位することになる。軸受停止時にPCDから保持器外径側の領域内であれば、低速用玉受け面を、予め、玉の曲率と前記ラジアル方向変位とを利用して低速用玉受け面と玉の接近を防いだり、低速用玉受け面の面形状と前記ラジアル方向変位とを利用して同じく接近を防いだりするよう形成しておくことが可能である。また、軸受停止時にPCDよりも保持器内径側となる領域は、前記変形により、玉に対してラジアル方向及びアキシアル方向に接近するが、この変形を考慮し、高速用玉受け面を、軸受停止時に同側の低速用玉受け面よりも玉から離れ、軸受回転速度が増すと、前記ラジアル方向変位及びアキシアル方向変位によって同側の低速用玉受け面よりも玉とアキシアル方向に近くなり、低速用玉受け面に代わってアキシアル方向のポケットすきまを定めるように予め形成しておくことが可能である。このように波形保持器に特有の変形性、すなわち両玉受け面の変位性を利用すれば、低速用玉受け面で定める軸受停止時からのアキシアル方向のポケットすきまは、高速用玉受け面と別に自由な大きさに設定可能なので、低速回転時に波形保持器の安定性を犠牲にすることはない。また、低速用玉受け面で対応できなくなる高速回転時には、低速用玉受け面に代わって高速用玉受け面でアキシアル方向のポケットすきまを定めるので、両側の高速用玉受け面は勿論、両側の低速用玉受け面が玉をアキシアル方向に圧迫することもなく、異常発熱を防止することができる。
【0013】
なお、この発明において、前記案内面は、波形保持器を案内面と玉との接触で所望のラジアル方向案内性になるよう任意の面形状に形成することができ、球面状に限らず、平面状にしても良い。
【0014】
前記低速用玉受け面の面形状として、前記低速用玉受け面と交わり、かつポケット中心線を含む任意の平面上で考えて、前記変形によって前記低速用玉受け面が一方向の直線に沿った向きにのみ変位する当該直線と、前記低速用玉受け面の任意の箇所に対する接線とをアキシアル方向に対する傾き角度で比較したとき(ただし、この傾き角度は保持器外径側かつポケット中心線側の鋭角での大きさとする)、前記接線の傾き角度が前記直線以下に形成されている面形状を採用することができる。ここで、ポケット中心線は、PCD上に位置する玉中心と、軸受中心軸とを結ぶラジアル方向の直線をいう。
【0015】
上記解析結果で述べたように、前記任意の平面上で考えると、低速用玉受け面は、遠心力の大きさに応じてアキシアル方向に対して傾いた一方向の直線に沿った方向に変位する。この直線の傾き角度と低速用玉受け面の任意の箇所での接線の傾き角度とを、保持器外径側かつポケット中心線側の鋭角で比較したとき、接線の傾き角度がこの直線以下であれば、玉に対する前記ラジアル方向変位と接線の傾きのアキシアル方向成分とにより、低速用玉受け面を前記アキシアル方向変位量以上に玉からアキシアル方向に逃すことができる。したがって、波形保持器が遠心力でどれだけ変形しても、低速用玉受け面による玉の圧迫をも防止することができる。
【0016】
特に、前記任意の平面上で考えて、低速用玉受け面が前記一方向の直線に沿うように形成されていることが好ましい。前記接線の傾き角度と直線の傾き角度が等しくなるので、前記波形保持器の変形が生じても、当該平面上で低速用玉受け面と玉との間でラジアル方向すきま及びアキシアル方向すきまの最小値を同じに保つことができる。したがって、一定のアキシアル方向のポケットすきまで軸受回転を継続することが可能な低速回転域を軸受停止時から設定することができる。
【0017】
軸受停止時、アキシアル方向両側の前記高速用玉受け面と前記玉との間のアキシアル方向すきまの最小値は、玉直径の3%〜25%であり、前記低速用玉受け面で定めるアキシアル方向のポケットすきまは、玉直径の0.1%〜5%であることが好ましい。軸受停止時、前記アキシアル方向すきまの最小値を玉直径の3%以上にすれば、dn値100万を許容回転速度にすることができる。25%以下にすれば、高速用玉受け面でアキシアル方向のポケットすきまを定める高速回転時の保持器音を防止すると共に、湾曲状部外側が密封板に接触することや湾曲状部での減肉を避けるためである。図7に、許容dn値と、前記アキシアル方向すきま(玉直径比)との関係を求めたグラフを示す。同図は、数値解析から、前記アキシアル方向変位量が最大になる前記アキシアル平面上で、軸受停止時、前記湾曲状部の前記保持器内径側の領域と玉との間のアキシアル方向すきまの最小値(玉直径比)がどれだけあれば、前記ラジアル方向変位及びアキシアル方向変位を生じた当該両側の領域と玉との間にアキシアル方向のポケットすきまを確保可能な軸受回転速度がどう変化するかを算出したものであり、縦軸の許容dn値は、その確保可能な軸受回転速度(上限)を示し、横軸のアキシアル方向すきまは、その軸受停止時のアキシアル方向すきまの最小値を示す。同図から、許容dn値100万のときに、アキシアル方向すきまの最小値が玉直径の3%未満になっているので、3%以上あれば、dn値100万の高速回転時に高速用玉受け面でアキシアル方向のポケットすきまを得ることができる、と分かる。また、低速用玉受け面で定めるアキシアル方向のポケットすきま玉直径の0.1%以上にしたのは、低速用玉受け面の設計、形成を容易にするためであり、5%以下としたのは、軸受回転開始から保持器音を防止するためである。
【0018】
特に上記玉直径に対する比率を採用する場合、前記高速用玉受け面は、前記低速用玉受け面からポケット中心線に沿って連続する保持器壁面からなり、前記低速用玉受け面は、前記玉の表面のうち、ポケット中心線に直角な向きで玉中心を通る直線から玉中心回りに前記外方の軌道部材の方へとった傾き角度で10°〜40°の領域に位置する部分のみと接触し得るように形成されていることが好ましい。低速用玉受け面からポケット中心線に沿って連続する保持器壁面で高速用玉受け面を成せば、低速用玉受け面よりも保持器内径側の部分で、湾曲状部の肉厚減少を抑えられる。低速用玉受け面を前記10°未満の玉表面域と接触可能にすると、低速用玉受け面と、ポケット中心線に沿った高速用玉受け面との間でポケット中心線からの距離差が少なく、幾何的関係から上記玉直径の比率の設定が困難になる。低速用玉受け面を前記40°以上の玉表面域と接触可能にすると、低速用玉受け面が外方の軌道部材に近くなり過ぎ、外方の軌道部材と干渉する恐れがある。
【0019】
前記案内面は、前記複数の玉の中心線(PCD)よりも保持器内径側の領域に形成されているとよい。上記解析結果で述べたように、軸受回転速度に応じて保持器全体が拡径すると、案内面は、ラジアル方向変位を外方の軌道部材の方へ生じることになる。PCDよりも保持器内径側の領域は、前記ラジアル方向変位で玉に近づく。この領域には、高速回転時に適切な円周方向のポケットすきまに設定して案内面を形成することができるので、保持器音防止を図ることができる。
【0020】
具体的には、前記案内面は、ポケット中心から円周方向に対面する案内面の方へ寄った位置に球中心をもった球面状に形成されており、ポケット中心線を含む平面の当該中心線回りの回転角度で考えて、0°−180°位置を当該平面が軸受中心軸に直角になるところとしたとき、前記案内面が0°〜45°の領域内及び135°〜180°の領域内に形成されていることが好ましい。ここで、ポケット中心は、PCD上かつポケット中心線上の位置をいう。案内面の球面状の中心をポケット中心から円周方向に対面する案内面の方へオフセットすれば、軸受停止時、PCDよりも保持器内径側において、当該案内面と玉との間の円周方向のすきまを、保持器内径に近づくに連れて次第に大きくすることができる。これにより、軸受回転速度に応じて保持器全体が拡径しても、円周方向のポケットすきまが変化することを防止することができる。PCD上に球中心をもった案内面は、円周方向に公転する玉が負荷域、非負荷域に出入りする際、波形保持器がアキシアル方向に振れを生じると、斜めから衝突する玉を受けることになる。案内面を0°〜45°の領域内及び135°〜180°の領域内に留めておけば、玉が円周方向に対して45°以上の傾きをもった方向から案内面に衝突することが防止されるので、アキシアル方向に優勢な分力発生を抑え、環状樹脂部品同士の合わせ目の開きを防止することができる。
【0021】
特に、前記案内面の曲率半径が玉の表面の曲率半径の1.1倍以上であることが好ましい。案内面の曲率半径を玉の表面の曲率半径の1.03倍にしたとき、波形保持器の耐久試験において、二個の環状樹脂部品の合わせ目が開くことが確認された。これは、案内面の曲率半径と玉の表面の曲率半径とが近い程、衝突する玉と案内面との衝突による弾性接触域がポケット中心線回りの方向に拡大し易く、アキシアル方向の分力が大きくなり易いためと考えられる。1.1倍以上であれば、合わせ目の開きを防止することができる。なお、案内面の曲率半径は、接触圧力を抑えるため、2倍以下にすることが好ましい。
【0022】
この発明においても、波形保持器のうち、ポケットに面する部分に、グリース溜りとなる凹部を形成することにより、凹部から潤滑油をポケットの内側に供給し、案内面、低速用玉受け面等の摩耗を防止することができる。
【0023】
特に、前記凹部を、前記低速用玉受け面から軸受中心軸の方に向って開放する溝部から構成すれば、凹部に溜まったグリースが遠心力でポケット外へ飛ばされることを低速用玉受け面で防止することができる。また、低速用玉受け面と玉との間の狭いすきまにも凹部に溜まったグリースから潤滑油が入り易い。凹部内のグリースが減ったとしても、凹部が軸受中心軸の方に向って開放する形状なので、内方の軌道部材と波形保持器間のすきまから、凹部の開放端を経てグリースが補給される。
【0024】
この発明に係るラジアル玉軸受は、dn値100万の高速回転に対応できるので、電動モータの回転軸を支持するのに採用することができる。
【発明の効果】
【0025】
上述のように、この発明は、二個の環状樹脂部品を結合した波形保持器を転動体案内方式で備えるラジアル玉軸受において、上記構成を採用することにより、低速回転時における保持器安定性を犠牲にすることなく、高速回転時の異常発熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、第1実施形態をアキシアル平面で切断した断面図、(b)は、第1実施形態の波形保持器を外径側から示す部分平面図
【図2】(a)は、第1実施形態の波形保持器の環状樹脂部品の部分正面図、(b)は、前記環状樹脂部品の部分斜視図
【図3】(a)は、第2実施形態の波形保持器の環状樹脂部品の部分正面図、(b)は、前記(a)のポケット中心線を含むアキシアル平面で切断した断面図
【図4】(a)は、この発明に係るラジアル玉軸受を採用した電動モータの模式図
【図5】(a)は、解析モデルの遠心力によるラジアル方向の変形を示す部分斜視図、(b)は、解析モデルの遠心力によるアキシアル方向の変形を示す部分平面図
【図6】解析モデルの第二案内面域のラジアル方向変位とアキシアル方向変位との関係を示すグラフ
【図7】解析モデルの許容dn値と、アキシアル方向のポケットすきまとの関係を示すグラフ
【図8】(a)は、従来例の深溝玉軸受の断面図、(b)は、前記従来例の波形保持器の環状樹脂部品の部分正面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。第1実施形態に係るラジアル玉軸受は、図1(a)に示すように、内方の軌道部材1と外方の軌道部材2間に介在する複数の玉3と、転動体案内方式の波形保持器4とを備えている。内外の軌道部材1、2は、それぞれ内輪、外輪からなる。軸受形式は、深溝玉軸受となっている。波形保持器4は、二個の波形の環状樹脂部品4a、4aを結合することにより各ポケット5の形成と共に各ポケット5に玉3を収めるようになっている。
【0028】
二個の環状樹脂部品4a、4aは、それぞれに同形に射出成形されている。環状樹脂部品4aは、円周方向に所定ピッチで繋ぎ部6と湾曲状部7が交互に形成されている。繋ぎ部6に係合爪6a、係合孔6bが形成されている。環状樹脂部品4a、4aの結合は、互いの係合爪6a、係合孔6bによる。これら係合爪6a、係合孔6bは特許文献2、3と同じものであり、dn値120万まで実用に耐え得る。
【0029】
環状樹脂部品4a、4aの素材は、繊維強化樹脂となっている。母材には、ポリアミド(PA)が採用されている。強化繊維には、ガラス繊維が採用されている。他の母材、強化繊維を用いることもできる。母材、強化繊維は、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、炭素繊維等の樹脂保持器用のものを採用することができる。
【0030】
図1(a)は、波形保持器4のポケット中心線Cpを含むアキシアル平面上を図示している。図1(b)は、ポケット5を、ポケット中心線Cpに沿った方向に外方の軌道部材側から示している。同図中にポケット中心線Cpを含むアキシアル平面Sa、ラジアル平面Srを一点鎖線で示す。図2(a)は、片側の環状樹脂部品4aの結合面側をアキシアル方向から図示し、係合爪6a、係合孔6bの部分を除き、波形保持器4のポケット中心線Cpを含むラジアル平面上の形態を示している。同図中に、内外の軌道溝間に組み込んだ玉3を、円周方向に等配される位置において二点鎖線で示す。同図に示すように、ポケット中心線Cpは、PCD上に位置する玉3の玉中心O1と、軸受中心軸Crとを結ぶラジアル方向の直線をいう。図2(b)は、片側の環状樹脂部品4aに形成されたポケット5の半分部を結合面側かつ外方の軌道部材2側の斜めから示している。図1(a)、図2(a)中に、軸受中心軸を筒軸としたPCDと同径の円筒面Scを一点鎖線で示す。図1(a)〜図2(b)において、実線で描いた波形保持器4は、室温で軸受停止時、軸受中心軸と同軸に配置したときを示し、実線又は二点鎖線で描いた玉3の外形は、ポケット中心線Cp上に玉中心O1を置いたときを示している。図1(a)において二点鎖線で描いた波形保持器4の外形は、特定の軸受回転速度での外形を示している。
【0031】
図1(a)〜図2(b)に示すように、波形保持器4の内外径に亘って貫通するポケット5は、円周方向に一対の繋ぎ部6と、アキシアル方向に一対の湾曲状部7とで形成されている。係合爪6a、係合孔6bで一体化された繋ぎ部6は、波形保持器4のうち、円周方向に隣り合うポケット5間で円周方向に連続している。波形保持器4の幅及びラジアル方向厚さは、繋ぎ部6のところで一定になっている。一対の湾曲状部7は、ポケット5の幅を一対の繋ぎ部6から拡大している。ポケット5の幅は、湾曲状部7と交わり、かつ軸受中心軸Crを筒軸にもった任意の円筒面上において、アキシアル方向に対向する湾曲状部7間の任意の二箇所のうち、最もアキシアル方向に離れて対向する二点間のアキシアル方向距離をいう。湾曲状部7のポケット外側の壁面は、面取り部を除き、前記任意の円筒面上で、ポケット中心線Cp上に曲率中心をもった同一円弧状になっている。波形保持器4の幅は、湾曲状部7に交わるアキシアル平面Sa上で最大になっている。湾曲状部7のラジアル方向厚さは繋ぎ部6と同じに形成されている。
【0032】
ポケット5の円周方向両側には、玉3との接触で波形保持器4をラジアル方向に案内するための案内面8が形成されている。軸受回転速度に応じて波形保持器4が変形すると、この変形は、繋ぎ部6、湾曲状部7の玉3に対するラジアル方向変位、湾曲状部7の玉3に対するアキシアル方向変位となる。ポケット5のアキシアル方向両側には、軸受停止時から特定の低回転速度までアキシアル方向のポケットすきまを定める低速用玉受け面9と、前記特定の低回転速度以上の軸受回転速度のときにアキシアル方向のポケットすきまを定める高速用玉受け面10とが形成されている。
【0033】
波形保持器4は、玉3により案内されるので、円周方向に一列で等配されたポケット5の数に対応する円周方向の回転対称性を有し、遠心力による保持器変形も同じ回転対称性をもって生じる。ポケット5は、アキシアル平面Sa及びラジアル平面Srのそれぞれを鏡面とした対称形になっている。同図では、ラジアル平面Srを境とした半分を示している。
【0034】
図1(b)、図2(a)、(b)に示すように、案内面8は、PCD上に球中心O2をもった球面状に形成されている。低速用玉受け面9は、軸受停止時、PCD(円筒面Sc)から保持器外径側の領域内に存在し、軸受中心軸Crを筒軸にもった任意の円筒面上で低速用玉受け面9の断面形状を考えると、アキシアル平面Sa上でラジアル平面Srから最もアキシアル方向に距離をとり、平面Saから円周方向に離れるに連れて次第にラジアル平面Srに接近する中凹状を成し、ポケット中心線Cpを含む任意の平面上で低速用玉受け面9の断面形状を考えると、保持器外径側に向ってポケット中心線Cp側に傾いた直線状を成すように形成されている。高速用玉受け面10は、軸受停止時、PCD(円筒面Sc)よりも保持器内径側に存在し、ポケット中心線Cpを筒軸にもつ円筒面状を成し、ポケット中心線Cpを含む任意の平面上で考えると、低速用玉受け面9よりもポケット中心線Cpに直交する方向に距離をとった位置に形成されている。以下、図1(b)中に示すように、ポケット中心線Cpを含む平面の中心線Cp回りの回転角度で考えて、0°−180°位置を当該平面が軸受中心軸に直角になるところ(ラジアル平面Sr上)とし、特に言及しない限り、角度の数値は、この回転角度での値を意味する。図1(b)、図2(a)、(b)に示すように、円周方向片側の案内面8は、0°〜30°に亘って形成されている。これと円周方向に対面する案内面8は、150°〜180°に亘って同様に形成されている。低速用玉受け面9は、60°〜120°に亘って形成されている。高速用玉受け面10も60°〜120°に亘って形成されている。案内面8、低速用玉受け面9、高速用玉受け面10以外のポケット5の内面部分は、高速用玉受け面10と同一の円筒面状になっている。
【0035】
案内面8は、軸受停止時から転動体案内の限界速度までの間に、軸受中心軸に対する波形保持器4の偏心量制限を行う玉3と接触する箇所の集合からなる。転動体案内の限界速度は、遠心力の作用で波形保持器4の変形が進行し、波形保持器4の外径が円周方向二等配箇所で外方の軌道部材2の内径に接触する(干渉)時点の軸受回転速度と考えてよい。
【0036】
特定方向のポケットすきまは、ある時点の保持器形状の各ポケットにおいて、ポケット内で玉が自由に特定方向に変位可能な量に相当するパラメータなので、ある時点では0以上の1値しかとり得ない。低速用玉受け面9は、軸受停止時から特定の低回転速度までの間に、玉3が相対的にポケット5内で自由に動いてアキシアル方向片側に最も片寄ったときに接触するポケット内面箇所の集合からなる。高速用玉受け面10は、前記特定の低回転速度以上の軸受回転速度のときに、玉3が相対的にポケット5内で自由に動いてアキシアル方向片側に最も片寄ったときに接触するポケット内面箇所の集合からなる。
【0037】
図示において、案内面8を成す球面状壁面、低速用玉受け面9を成す中凹状の傾斜壁面、高速用玉受け面10を成す円筒面状壁面のそれぞれは、前記の集合のみで形成されているのでなく、玉3との接触、衝突時の負荷分散、ポケット5内での玉3の円滑な変位、成型容易化等のために余裕をもって前記の集合を同一面に含むように形成されている。
【0038】
軸受停止時から転動体案内の限界速度まで、円周方向のポケットすきまは、ラジアル平面Sr上に玉中心O1をおいて、片側の案内面8に接触する玉3が反対側の案内面8に接触するまで円周方向に変位する量に設定されている。PCD上に球中心O2をもった案内面8がラジアル平面Sr上に存在するため、円周方向のポケットすきまを定める玉3との接触点は、軸受回転速度に応じて案内面8のラジアル平面Sr上を移ることになる。
【0039】
案内面8の球中心O2は、ポケット中心(ポケット中心線Cp上にある玉中心O1)から円周方向に対面する案内面8の方に寄った位置にある(オフセット)。軸受停止時の案内面8と、ポケット中心線Cp上に玉中心O1をおいた玉3との間の円周方向のすきまは、前記オフセットの位置設定に基き、PCD(円筒面Sc)よりも保持器内径側の領域内において保持器内径に近づくに連れて次第に大きくなり、PCD(円筒面Sc)から保持器外径側の領域内において保持器外径に近づくに連れて次第に小さくなっている。軸受停止時の円周方向のポケットすきまは、A−玉直径の値を2倍した長さに設定されている。Aは、ポケット中心線Cpに直交する玉直径線の端と円周方向に対向する案内面8、8の二点間の円周方向幅である。軸受回転速度が増す程、遠心力の作用で案内面8が玉3に対して保持器外径側へラジアル方向変位を生じ、やがて、円周方向のポケットすきまは、PCD(円筒面Sc)よりも保持器内径側の領域内の案内面8部分で定まるようになる。前記円周方向のすきまの変化付けにより、軸受回転速度に応じて円周方向のポケットすきまの変化が防止されるので、保持器案内性の安定化を図り、保持器音の防止を図ることができる。なお、軸受停止時の円周方向のポケットすきまがPCD(円筒面Sc)上での円周方向のすきまの2倍であっても保持器案内性や保持器音防止等を十分に得られる場合、PCD(円筒面Sc)から保持器外径側の領域で案内面を省略することもできる。
【0040】
前記軸受停止時の円周方向のポケットすきま、及びPCD(円筒面Sc)よりも保持器内径側の領域内の案内面8部分で定まる円周方向のポケットすきまは、玉直径の1%〜10%の範囲内に収まることが好ましい。玉直径の10%以下としたのは、保持器音防止に効果的な範囲だからである。玉直径の1%以上としたのは、遠心力で波形保持器が変形し、円周方向のポケットすきまが狭くなり過ぎることを防止するためである。
【0041】
図1(b)に示すように、案内面8は、0°〜30°まで、150°〜180°までに限って形成されているので、円周方向に公転する玉3がアキシアル方向に近い向き(45°を超え、135°未満の方向)から案内面8に衝突することがない。これにより、アキシアル方向に優勢な分力の発生を防ぎ、環状樹脂部品4a、4aの合わせ目の開きを防止することができる。なお、案内面8を45°まで形成し、また、対面する案内面8を135°から形成する限り、当該分力の発生を防止することができるので、適宜に設定すればよい。
【0042】
図2(a)に示すように、案内面8の曲率半径Rは、球中心O2の設定により、玉3の表面の曲率半径の1.1倍以上であるように設定されている。玉3の表面の曲率半径は、玉中心O1からの玉半径である。案内面8の曲率半径Rと玉3の表面の曲率半径の比が1.1倍未満だと、アキシアル方向の分力が生じ易くなり、環状樹脂部品4a、4aの合わせ目の開きを防止する上で好ましくない。この比が大きくなると、玉3と案内面8との接触楕円が小さくなり、接触圧力が高くなり過ぎるので、摩耗を防止する上で、この比は2倍以下にすることが好ましい。
【0043】
前記低速用玉受け面9で定めるアキシアル方向のポケットすきまは、アキシアル平面Sa上に玉中心O1をおいて、片側の低速用玉受け面9に接触する玉3が反対側の低速用玉受け面9に接触するまでアキシアル方向に変位する量に相当する。軸受停止時のアキシアル方向のポケットすきまは、δ1の2倍になっている。δ1は、軸受停止時、ポケット中心線Cp上に玉中心O1をおいた玉3と、低速用玉受け面9との間のアキシアル方向すきまの最小値である。
【0044】
ある軸受回転速度における湾曲状部7のアキシアル方向変位量は、アキシアル平面Sa上で最大になり、アキシアル平面Saから円周方向に離れる程に小さくなり、ラジアル方向変位量は円周方向に略一定になる。低速用玉受け面9、高速用玉受け面10でも同じ変位量になる。ある軸受回転速度における低速用玉受け面9、高速用玉受け面10の最大のアキシアル方向変位量ΔXは、アキシアル平面Sa上で生じ、軸受停止時と比して、低速用玉受け面9、高速用玉受け面10がアキシアル方向にポケット中心線Cpに接近した変位量に相当する。
【0045】
軸受回転速度に比例して波形保持器4に作用する遠心力が大きくなると、低速用玉受け面9は、軸受停止時の実線の位置から、直線Lに沿った方向に外方の軌道部材2の方へ変位し、遠心力が小さくなると、直線Lに沿った方向に軌道部材1の方(軸受中心軸の方)へ変位する。すなわち、図1(a)、(b)のアキシアル平面Sa上で考えると、低速用玉受け面9は、遠心力の大きさに応じた保持器変形によって一方向の直線Lに沿った向きにのみ変位する。
【0046】
その直線Lの傾き角度θを保持器外径側かつポケット中心線Cp側の鋭角での大きさとし、軸受停止時と比して低速用玉受け面9が保持器外径側へラジアル方向に変位したラジアル方向変位量をΔYとしたとき、θ、前記ΔX、ΔYの関係は、θ=tan−1(ΔY/ΔX)となる。
【0047】
アキシアル平面Sa上における前記低速用玉受け面9の直線状は、直線Lの傾き角度θと同じ傾き角度をもち、直線Lに沿うように形成されている。すなわち、アキシアル平面Sa上において、低速用玉受け面9の任意の箇所に対する接線は、全て直線Lに相当する。同図上における実線の低速用玉受け面9と二点鎖線の低速用玉受け面9とを比べれば明らかなように、全ての接線と直線Lとが同じ傾きなので、低速用玉受け面9が直線Lに沿ったいずれの方に変位したとしても、ポケット中心線Cp上に玉中心O1をおいた玉3と、低速用玉受け面9との間における最短距離は変化せず、したがって、低速用玉受け面9と玉3との間のアキシアル方向すきまの最小値もδ1から変化しない。
【0048】
ポケット中心線Cpを含む他の平面、例えば60°、120°の平面上において、低速用玉受け面9及び高速用玉受け面10のアキシアル方向変位量は、最大のアキシアル方向変位量ΔXよりも小さくなるが、ラジアル方向変位量はΔYと殆ど変わらない(図5(a)、(b)参照)。したがって、他の平面上における一方向の直線の傾き角度は、図1(a)の直線Lの傾き角度θを超える(ラジアル方向に近い向きになる)点で異なるだけである。低速用玉受け面9は、他の平面上で考えても、任意の箇所での接線の傾き角度が当該平面上における一方向の直線の傾き角度以下になる面形状なので、当該他の平面上でも、ラジアル方向変位量に応じて玉3からアキシアル方向へ十分に逃げることになる。このため、軸受回転速度を問わず、玉3と低速用玉受け面9との間のアキシアル方向すきまの最小値をアキシアル平面Sa上で定めることができる。
【0049】
高速用玉受け面10で定まるアキシアル方向のポケットすきまは、アキシアル平面Sa上に玉中心O1をおいて、片側の高速用玉受け面10に接触する玉3が反対側の高速用玉受け面10に接触するまでアキシアル方向に変位する量に相当する。図1(a)中に二点鎖線で描いた波形保持器4の外形は、最大のアキシアル方向変位量ΔXがδ1の大きさに相当する軸受回転速度での外形を示している。図示の軸受回転速度でのアキシアル方向のポケットすきまは、δ2の2倍になっている。δ2は、図示の軸受回転速度のとき、ポケット中心線Cp上に玉中心O1をおいた玉3と、この軸受回転速度での高速用玉受け面10との間のアキシアル方向すきまの最小値である。軸受停止時、ポケット中心線Cp上に玉中心O1をおいた玉3と、高速用玉受け面10との間のアキシアル方向すきまの最小値は、実線で描く円筒径B−玉直径の半分の大きさであり、δ1+δ2に相当している。
【0050】
最大のアキシアル方向変位量ΔX<δ2を満たす軸受回転速度まで、アキシアル方向のポケットすきまは、両側の低速用玉受け面9のみでδ1の2倍に定まる。ΔX=δ2を満たす軸受回転速度のとき、アキシアル方向のポケットすきまは、両側の低速用玉受け面9、両側の高速用玉受け面10で同じに定まる。ΔX>δ2を満たす軸受回転速度のとき、アキシアル方向のポケットすきまは、両側の低速用玉受け面9に代わって両側の高速用玉受け面10のみで定まる。低速用玉受け面9でアキシアル方向のポケットすきまが定まる限界の軸受回転速度(前記特定の低回転速度)は、ΔX=δ2の軸受回転速度のときである。ΔX=δ1に相当する軸受回転速度、すなわち、両側の低速用玉受け面9に生じるアキシアル方向変位量ΔXの合計(片側の2倍)が軸受停止時のアキシアル方向のポケットすきま(δ1の2倍)に相当する軸受回転速度のとき、アキシアル方向のポケットすきまは、両側の高速用玉受け面10でδ2の2倍に定まる。この軸受回転速度を超えた軸受回転速度でも、アキシアル方向のポケットすきまは、高速用玉受け面10のみで定まり、低速用玉受け面9と玉3との間にはδ1が残っている。
【0051】
したがって、第1実施形態によれば、軸受停止時から前記特定の低速回転時まで、アキシアル方向のポケットすきま(δ1の2倍)は、低速用玉受け面9で保持器音防止等に有効な値に設定でき、低速回転中における波形保持器4の安定性を犠牲にすることはない。また、アキシアル方向のポケットすきまが高速用玉受け面10で定まる高速回転時、両側の低速用玉受け面9と玉3との間には、アキシアル方向のすきま(δ1の2倍)が残るので、両側の高速用玉受け面10、低速用玉受け面9が玉3を圧迫することはなく、異常発熱を防止することができる。低速用玉受け面9でアキシアル方向のポケットすきま(δ1の2倍)を定める低速回転域では、δ1が変化しないため、保持器安定性を一定に保つことができる。高速用玉受け面10で定めるアキシアル方向のポケットすきまは、δ1よりも小さく定めるので、高速回転時の波形保持器4の安定性を低速回転時よりも高めることができる。
【0052】
なお、転動体案内の限界速度でもΔXが(δ1+δ2)に相当する大きさにならず、両側の高速用玉受け面10でアキシアル方向のポケットすきまを定めることができるので、波形保持器4と外方の軌道部材2間のラジアル方向すきまを最大限に活かして許容回転速度を高めることができる。
【0053】
低速用玉受け面9で定めるアキシアル方向のポケットすきま(δ1の2倍)は、玉直径の0.1%〜5%に形成すればよい。上述のようにδ1が変化しないため、図示の実線の状態においてδ1を0に形成することも可能である。直線Lを数値解析、試作等を参考に求める精度の限界、成形誤差等を考慮すると、アキシアル方向のポケットすきま(δ1の2倍)を玉直径の0.1%以上に形成することが好ましい。また、前記特定の低回転速度までの間、波形保持器4がアキシアル方向に振れることを防止し、保持器安定回転や保持器音防止を図るため、アキシアル方向のポケットすきま(δ1の2倍)を玉直径の5%以下にすることが好ましい。前記特定の低回転速度は、dn値30万以下に設定することができる。
【0054】
また、アキシアル方向両側の高速用玉受け面10と玉3との間のアキシアル方向すきま(B−玉直径)の最小値は、円筒径B−玉直径で求まり、δ1+δ2の2倍に相当する。この値を玉直径の3%以上にすると、図7のグラフで示したように、dn値100万の高速回転時でも、高速用玉受け面10で定めるアキシアル方向のポケットすきまを確保することができる。玉直径の25%以下にすると、湾曲状部7が密封板(図示省略)に接触することや湾曲状部7のアキシアル方向肉厚の減少を抑えることができる。
【0055】
上記玉直径に対する比率で規定した各アキシアル方向のポケットすきまは、ガラス繊維を拡散させたPAを素材とした環状樹脂部品を前提としているが、同程度の機械的強度の素材であれば、そのまま適用することができ、環状樹脂部品の素材の機械的強度によって適切な値に変更すればよい。
【0056】
図1(a)、(b)の例のように、高速用玉受け面10がポケット中心線Cpに沿って低速用玉受け面9から連続する保持器壁面からなると、肉厚減少を抑えつつ、高速用玉受け面10でのアキシアル方向のポケットすきまを大きく形成することが容易である。
【0057】
図1(a)中の二点鎖線の保持器外形から明らかなように、低速用玉受け面9は、図示の実線の軸受停止時から高速回転時、特に転動体案内方式の限界まで玉3と接触可能な広がりをもって形成されている。低速用玉受け面9は、玉3の表面のうち、ポケット中心線Cpに直角な向きで玉中心O1を通る直線(同図中の円筒面Scの線に相当)から玉中心O1回りに軌道部材2の方へとった傾き角度で10°〜40°と滑り接触し得るように形成されている。40°以内にしたのは、低速用玉受け面9と外方の軌道部材2との干渉を可能な限り、避けるためである。また、低速用玉受け面9は、回転停止状態でも、玉3の表面のうち、アキシアル方向に対する玉中心O1回りの傾き角度で外方の軌道部材2の方へ10°以上の領域に位置する部分のみと滑り接触し得るように形成されている。10°以上にしたのは、低速用玉受け面9の傾き角度θが直線Lに基くので選択の自由性に乏しく、円筒面Scに近づけて形成すると、上記玉直径に対する比率でδ1を形成しつつ、ポケット中心線Cpに沿った高速用玉受け面10と連続させることができないためである。なお、低速用玉受け面9を保持器外径から形成したのも、同じ理由からである。
【0058】
湾曲状部7のポケット外側の面形状、繋ぎ部6の結合構造といった波形保持器4の外形は、各ポケット5の内面において前記ラジアル方向変位量ΔYとアキシアル方向変位量ΔXとの比例関係が成立する限り、図示例に限定されず、適宜に決定することができる。前記案内面8、低速用玉受け面9、高速用玉受け面10、これら以外のポケット内面部分は、軸受停止時から高速回転時まで波形保持器4のラジアル方向の案内に支障がなく、軸受停止時から高速回転時までの間で区切ってアキシアル方向のポケットすきまを別々に0以上の値に定めることができる限り、任意の数の面、面形状、配置で形成することができる。
【0059】
例えば、高速回転時、低速用玉受け面9でのアキシアル方向すきまの最小値をδ1以上に確保することを目的とするならば、低速用玉受け面9の前記接線の傾き角度を直線Lより小さくすることも可能であり、この場合、高速回転時の低速用玉受け面9でのアキシアル方向すきまの最小値をδ1よりも拡げることができる。
【0060】
また、低速用玉受け面9、高速用玉受け面10は、前記特定の低速回転時以下の軸受回転速度のときにアキシアル方向のポケットすきまが低速用玉受け面9で定まり、高速回転時にアキシアル方向のポケットすきまが高速用玉受け面10で定まり、かつ低速用玉受け面9と玉3との間にすきまが残る限り、前記中凹状、前記円筒面状以外にも適宜の面形状にすることができる。具体例を挙げると、低速用玉受け面9は、ポケット中心線Cpを中心線とし、直線Lを母線とする円錐面状にすることができる。この場合、アキシアル平面Sa上における直線Lを求めるだけで済むので、低速用玉受け面9の設計が簡単になる。また、高速用玉受け面10は、ポケット中心線Cpを中心線とし、低速用玉受け面9の保持器内径側の辺から拡がる円錐面状に形成することができる。
【0061】
また、前記の環状樹脂部品4aの材料で、dn値120万以下の高速回転を目標にする場合、この前提で想定される繋ぎ部の幅、湾曲状部での保持器幅、玉直径の対応性を考えると、案内面8のアキシアル方向幅は、前記アキシアル方向変位を無視できる繋ぎ部6の幅内(30°以下の領域内、150°以上の領域内)に収めることが可能である。なお、この場合、案内面8を45°以下、135°以上の角度範囲内に形成する限り、アキシアル方向変位を無視することが可能と考えられる。
【0062】
また、図示例は、案内面8と低速用玉受け面9との間をポケット中心線Cp回りの方向に離すことにより、これらの間に玉3と接触し得ないすきまを形成し、ポケット5内外への潤滑剤の出入りを良くしているが、潤滑や環状樹脂部品の合わせ目割れの懸念がない場合、すきまの部分に案内面8や低速用玉受け面9を適宜の面形状、角度範囲で追加することも可能である。
【0063】
また、案内面は、図5の当て面S3や特許文献3に開示されているように案内面の中央部を平面状の玉当て面に形成したり、特許文献2に開示されているように、グリース溜りとなる凹部を繋ぎ部から湾曲状部にかけて形成したりすることができる。
【0064】
この発明の第2実施形態を図3(a)、(b)に基いて説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に述べ、同一に考えられる構成の説明を省略する。第2実施形態は、波形保持器のうち、ポケットに面する部分に、グリース溜りとなる凹部11が形成されている。凹部11内に溜まったグリースから潤滑油が低速用玉受け面9に供給されるので、ここの摩耗を防止することができる。グリース溜りは、ポケット中心線Cp回りの方向で考えて案内面8と低速用玉受け面9間のところに形成することもできる。
【0065】
凹部11は、低速用玉受け面9から軸受中心軸Crの方に向って開放する溝部からなる。凹部11の溝部閉塞端は、低速用玉受け面9の端からアキシアル方向に段差をもっているため、溜まったグリースが遠心力で飛ばされることを防止することができる。凹部11は、ポケット中心線Cpを含むアキシアル平面上を溝幅中央としてポケット中心線Cpに沿って真直ぐに形成されている。これは、遠心力によって、凹部11内に溜まったグリースから潤滑油を低速用玉受け面9へ供給すること、及び凹部11の溝部開放端から潤滑油やグリースを凹部11内へ補給することを良好にするためである。
【0066】
図4にこの発明に係るラジアル玉軸受を採用した電動モータの一例を示す。図示例は、ステータ40、ロータ41によって駆動される回転軸42をモータケーシング43に対して支持するラジアル玉軸受44、44として、この発明に係るラジアル玉軸受が採用されている。ラジアル玉軸受44は、グリース潤滑で使用される小形軸受が一般的であり、環状樹脂部品を結合した波形保持器の採用に好適である。この発明に係るラジアル玉軸受44を採用すれば、係合爪6a等の限界であるdn値120万まで回転軸42の高速回転に対応することができる。
【0067】
この発明の技術的範囲は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載に基く技術的思想の範囲内での全ての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0068】
1 内方の軌道部材
2 外方の軌道部材
3 玉
4 波形保持器
4a 環状樹脂部品
5 ポケット
6 繋ぎ部
7 湾曲状部
8 案内面
9 低速用玉受け面
10 高速用玉受け面
11 凹部
42 回転軸
44 ラジアル玉軸受
Cp ポケット中心線
Cr 軸受中心軸
L 直線
O1 玉中心
O2 球中心
PCD 複数の玉の中心線
R 曲率半径
Sa アキシアル平面
Sc 円筒面
Sr ラジアル平面
ΔX アキシアル方向変位量
ΔY ラジアル方向変位量
θ 傾き角度
δ1、δ2 アキシアル方向すきま

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外の軌道部材(1,2)間に介在する複数の玉(3)と、二個の波形の環状樹脂部品(4a)を結合することにより各ポケット(5)の形成と共に各ポケット(5)に前記玉(3)を収める波形保持器(4)とを備えたラジアル玉軸受において、
前記ポケット(5)の円周方向両側に、前記玉(3)との接触で前記波形保持器(4)をラジアル方向に案内するための案内面(8)が形成されており、
前記ポケット(5)のアキシアル方向両側には、軸受停止時に前記複数の玉(3)の中心線(PCD)から保持器外径側の領域内に存在し、かつ軸受停止時からアキシアル方向のポケットすきまを定める低速用玉受け面(9)と、軸受停止時に前記複数の玉(3)の中心線(PCD)よりも保持器内径側の領域内に存在し、かつ軸受回転速度に応じた前記波形保持器(4)の変形で前記低速用玉受け面(9)に代わってアキシアル方向のポケットすきまを定める高速用玉受け面(10)とが形成されていることを特徴とするラジアル玉軸受。
【請求項2】
前記低速用玉受け面(9)と交わり、かつポケット中心線(Cp)を含む任意の平面上で考えて、前記変形によって前記低速用玉受け面(9)が一方向の直線(L)に沿った向きにのみ変位する当該直線(L)と、前記低速用玉受け面(9)の任意の箇所に対する接線とをアキシアル方向に対する傾き角度(θ)で比較したとき(ただし、この傾き角度(θ)は保持器外径側かつポケット中心線(Cp)側の鋭角での大きさとする)、前記接線の傾き角度が前記直線(L)以下に形成されている請求項1に記載のラジアル玉軸受。
【請求項3】
前記任意の平面上で考えて、前記低速用玉受け面(9)が前記直線(L)に沿うように形成されている請求項2に記載のラジアル玉軸受。
【請求項4】
軸受停止時、アキシアル方向両側の前記高速用玉受け面(10)と前記玉(3)との間のアキシアル方向すきまの最小値は、玉直径の3%〜25%であり、
前記低速用玉受け面で定めるアキシアル方向のポケットすきまは、玉直径の0.1%〜5%である請求項2又は3に記載のラジアル玉軸受。
【請求項5】
前記高速用玉受け面(10)は、前記低速用玉受け面(9)からポケット中心線(Cp)に沿って連続する保持器壁面からなり、
前記低速用玉受け面(9)は、前記玉(3)の表面のうち、ポケット中心線(Cp)に直角な向きで玉中心(O1)を通る直線から玉中心(O1)回りに前記外方の軌道部材(2)の方へとった傾き角度で10°〜40°の領域に位置する部分のみと接触し得るように形成されている請求項4に記載のラジアル玉軸受。
【請求項6】
前記案内面(8)は、前記複数の玉(3)の中心線(PCD)よりも保持器内径側の領域に形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載のラジアル玉軸受。
【請求項7】
前記案内面(8)は、ポケット中心から円周方向に対面する案内面の方へ寄った位置に球中心(O2)をもった球面状に形成されており、
ポケット中心線(Cp)を含む平面の当該中心線(Cp)回りの回転角度で考えて、0°−180°位置を当該平面が軸受中心軸に直角になるところとしたとき、前記案内面(8)が0°〜45°の領域内及び135°〜180°の領域内に形成されている請求項6に記載のラジアル玉軸受。
【請求項8】
前記案内面(8)の曲率半径(R)は、前記玉(3)の表面の曲率半径の1.1倍以上である請求項7に記載のラジアル玉軸受。
【請求項9】
前記波形保持器(4)のうち、前記ポケット(5)に面する部分に、グリース溜りとなる凹部(11)が形成されている請求項1から8のいずれか1項に記載のラジアル玉軸受。
【請求項10】
前記凹部(11)は、前記低速用玉受け面(9)から軸受中心軸(Cr)の方に向って開放する溝部からなる請求項9に記載のラジアル玉軸受。
【請求項11】
電動モータの回転軸(42)を支持する請求項1から10のいずれか1項に記載のラジアル玉軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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