説明

ラジアル転がり軸受特に1列深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト転がり軸受

本発明は、外軸受レース(2)、内軸受レース(3)、及び両軸受レース(2,3)の間に設けられる多数の転動体(4)を含むラジアル転がり軸受に関する。転動体(4)は、球基本形状から対称に平らにされかつ互いに平行に設けられるそれぞれ2つの側面(12,13)を持つ球面円板(11)として構成されている。球面円板(11)とその転動路(7,8)との間の縁応力を避けるため、本発明によれば、少なくとも内軸受レース(3)にある転動路(8)がそれぞれその外側縁範囲(14,15)で、かつ/又は球面円板(11)の転動面(6)がそれぞれ側面(12,13)に隣接するその縁部分(16,17)で、対数的に傾斜する輪郭(Plog)に移行している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のラジアル転がり軸受に関し、深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト転がり軸受において特に有利に実現可能である。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受技術における当業者に対して一般に次のことが公知である。即ち1列深溝玉軸受は、分解不可能な固定ラジアル転がり軸受の古典的な形式であり、半径を玉半径より少し大きく構成される深溝を持ち、その半径方向及び軸線方向の荷重負担能力が同じように高く、僅かな摩擦のためすべての種類の軸受のうちで最高の回転数限界を持っているという点ですぐれている。これに反し1列アンギュラコンタクト玉軸受は、ラジアル転がり軸受の分解可能又は分解不可能な別の形式である。なぜならば、生じる力が特定の押圧角をなして半径面に対して斜めに一方の転動路から他方の転動路へ伝達されるように、軸受の転動路が設けられているからである。しかしアンギュラコンタクト玉軸受は、その押圧角のため、大きい軸線方向力を受止めるために深溝玉軸受より一層よく適しており、1列アンギュラコンタクト玉軸受が同時に軸線方向に負荷される時、この軸受により半径方向力が伝達可能であるに過ぎない。これらの1列深溝玉軸受及びアンギュラコンタクト玉軸受は久しい以前から公知であり、外軸受レース、内軸受レース、及び両軸受レースの間に設けられる転動体としての多数の玉を含んでいる。外軸受レースの内側及び内軸受レースの外側には、1つ又は2つの肩部によりそれぞれ区画される転動路が形成され、これらの転動路において玉がその転動面で転がり、保持器により均一な相互間隔で案内される。
【0003】
しかしこのような深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト玉軸受では、玉が内軸受レースの転動路に点接触しているだけであり、従って押圧角軸線の範囲で転動路に高い面圧を生じ、この高い面圧がこの転動路の高い摩耗の原因になるという点で、ラジアル玉半径に対して異なる転動路半径の構成が不利なことがわかった。更に通常の潤滑では転動路の肩部縁に重なるけれども潤滑剤の消費後肩部縁に接する玉により、この肩部縁の範囲に大きい縁応力が生じ、この縁応力により玉用転動路の摩耗が更に高められ、このような深溝玉軸受又はアンギュラコンタクト玉軸受の使用期間が著しく減少する。
【0004】
転動体の押圧角軸線の範囲における内軸受レースの転動路に作用する高い面圧を避ける可能性は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4334195号明細書により公知になっている。しかしこの公知に開示されて1列深溝玉軸受又はアンギュラコンタクト玉軸受として構成されているラジアル転がり軸受では、転動体が玉によって形成されているのではなく、部分的に又は完全にいわゆる球面円板により形成され、これらの球面円板は球基本形状から対称に平らにされかつ互いに平行に設けられる2つの側面を持つように構成されている。これらの球面円板の側面の間の幅は、外軸受レースの内側と内軸受レースの外側との間の間隔より小さいので、軸受の組立ての際、軸受に対して軸線方向に内軸受レースと外軸受レースとの間の間隔を通って軸受へ球面円板を導入し、転動路内で回すことができる。従来の玉とは異なり、球面円板は一定の回転軸線を持っているので、球面円板の転動面は軸受レースの転動路と同じ半径を持つように構成され、従って球面円板は転動路と線接触している。従ってこの線接触により、1列深溝玉軸受又はアンギュラコンタクト玉軸受において生じる不利な点接触の代わりに、球面円板と転動路との間に低い応力レベルの均一な面圧が生じるようにすることができる。
【0005】
しかし作動中に荷重を受けると、転動体として球面円板を持つこのような深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト転がり軸受では、軸受レースにある転動路が球面円板より幅広く構成されていることによって、球面円板が、そのまっすぐな側面に隣接する縁部分により、転動路の外側縁範囲に大きい縁応力を生じ、この縁応力が依然としてこの転動路の摩耗の増大の原因になり、従ってこのような深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト転がり軸受の使用期間を短くする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知の従来技術の解決策の上述した欠点から出発して、本発明の基礎になっている課題は、押圧角軸線の範囲に現れる転動路への大きい面圧も、内軸受レースにある転動路の外側縁範囲に現れる大きい縁応力も効果的に回避し、それにより深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト転がり軸受の使用期間を長くする、転動体として球面円板を持つラジアル転がり軸受特に1列深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト転がり軸受を構想することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によればこの課題は、請求項1の上位概念に記載のラジアル転がり軸受において、少なくとも内軸受レースにある転動路がそれぞれその外側縁範囲で、かつ/又は球面円板の転動面がそれぞれ側面に隣接するその縁部分で、対数的に傾斜する輪郭に移行していることによって解決される。
【0008】
従って本発明の基礎になっている認識によれば、その時まで現れる縁応力の範囲において対数的に傾斜する輪郭によって、このような縁応力を効果的に回避し、同時に均一に小さい面圧にとって有利な球面円板と転動路との有利な線接触を維持することが可能である。その際対数的輪郭を選択的に、内軸受レースの転動路の外側縁範囲に設けるか、又は球面円板の側面に隣接する縁部分に設けるか、又は転動路の縁範囲及び球面円板の転動面の縁部分に設けるのが有利である。
【0009】
本発明により構成される1列ラジアル転がり軸受の好ましい構成及び有利な展開は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明により構成されるラジアル転がり軸受において請求項2によれば、対数的に傾斜する輪郭を持つように構成される内軸受レースの転動路の外側縁範囲及び/又は球面円板の転動面の縁部分の面積割合が、内軸受レースの転動路又は球面円板の転動面の面積のそれぞれ約10%〜40%である。それにより同じ半径で形成される球面円板の転動面及び内軸受レースの転動路の面積の割合は、60%〜90%であり、それにより100%の潤滑及び球面円板と転動路との線接触が保証される。
【0011】
本発明により構成されるラジアル転がり軸受の別の構成として、請求項3及び4によれば、内軸受レースの転動路の外側縁範囲における対数的輪郭の半径が、球面円板の転動面の半径よりなるべく大きく、球面円板の転動面の縁部分における対数的輪郭の半径が、球面円板の転動面の半径よりなるべく小さい。すべての半径の中心は、なるべくラジアル転がり軸受の押圧角軸線上でそれぞれ上下に設けられているので、それぞれ両側で球面円板の転動面の縁部分と内軸受レースの転動路の縁範囲との間に、均一な大きい楔状の環状間隙が生じる。しかし球面円板及び/又は内軸受レースの転動路における対数的輪郭の半径の中心を、ラジアル転がり軸受の押圧角軸線の両側の近くに設けることも可能で、それにより半径が接線方向に互いに移行し合うという特別な利点がある。
【0012】
従って本発明により構成されるラジアル転がり軸受は、従来技術から公知のラジアル転がり軸受に対して、対数的に傾斜する輪郭をその時まで現れる縁応力の範囲に設けることにより、押圧角軸線の範囲に現れる転動路への高い面圧も、内軸受レースの転動路の外側縁範囲に現れる大きい縁応力も持たず、それにより長い使用期間の点ですぐれている、という利点を持っている。
【0013】
本発明により構成されるラジアル転がり軸受の好ましい実施例が添付図面を参照して以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
深溝転がり軸受として構成されるラジアル転がり軸受1は図1から明らかにわかり、公知の深溝玉軸受と同じように、外軸受レース2、内軸受レース3、及び両軸受レース2,3の間に設けられる転動体4を含み、これらの転動体4は保持器5により周方向に均一な相互間隔で保持されている。図2に拡大して示す図1の細部Xが示すように、転動体4は、球面基本形状から対称に平らにされかつ互いに平行に設けられるそれぞれ2つの側面12,13を持つように構成され、その転動面6が、外軸受レース2の内側9及び内軸受レース3の外側10に形成されかつ2つの肩部によりそれぞれ区画される2つの転動路7,8内で転がる。
【0015】
更に図3からわかるように、内軸受レース3の転動路8の外側縁範囲14,15に現れる大きい縁応力を避けるため、内軸受レース3の転動路8がそれぞれその外側縁範囲14,15で、又球面円板11の転動面6もそれぞれその側面12,13に隣接する縁部分16,17で、対数的に傾斜する輪郭Plogに移行している。対数的に傾斜する輪郭Plogにより形成される内軸受レース3の転動路8の外側縁範囲14,15及び球面円板11の転動面6の縁部分16,17の面積割合は、図3から少なくともそれとなくわかるように、内軸受レース3の転動路8又は球面円板11の転動面6の面積のそれぞれ約30%であるので、球面円板11の転動面及び内軸受レース3の転動路8の面の同じ半径で形成される割合は、約70%である。
【0016】
同様に図3からわかるように、内軸受レース3の転動路8の外側縁範囲14,15における対数的輪郭Plogの半径Rは、球面円板11の転動面6の半径Rより大きく、球面円板11の転動面6の縁部分16,17における対数的輪郭Plogの半径Rは、球面円板11の転動面6の半径Rより小さい。すべての半径R,R,Rの中心M,M,Mは、明らかにわかるように、ラジアル転がり軸受1の押圧角軸線A上で上下に設けられているので、それぞれ両側で球面円板11の転動面6の縁部分16,17と内軸受レース3の転動路8の縁範囲14,15との間に、均一な大きさの楔状の環状間隙が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】 本発明により構成される深溝転がり軸受の形のラジアル転がり軸受の断面図を示す。
【図2】 本発明により構成されるラジアル転がり軸受の図1の細部Xの拡大図を示す。
【図3】 本発明により構成されるラジアル転がり軸受の転動体と内軸受レースの転動路との接触範囲の拡大図を示す。
【符号の説明】
【0018】
1 ラジアル転がり軸受
2 外軸受レース
3 内軸受レース
4 転動体
5 保持器
6 4の転動面
7 2にある転動路
8 3にある転動路
9 2の内側
10 3の外側
11 球面円板
12,13 11の側面
14,15 8の縁範囲
16,17 6の縁範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアル転がり軸受特に1列深溝転がり軸受又はアンギュラコンタクト転がり軸受であって、外軸受レース(2)、内軸受レース(3)、及び両軸受レース(2,3)の間に設けられる多数の転動体(4)を含み、転動体(4)が、保持器(5)により周方向に均一な相互間隔で保持され、その転動面(6)により、外軸受レース(2)の内側(9)及び内軸受レース(3)の外側(10)に形成されかつ1つ又は2つの肩部によりそれぞれ区画される2つの転動路(6,8)において転がり、転動体(4)が、球基本形状から対称に平らにされかつ互いに平行に設けられるそれぞれ2つの側面(12,13)を持つ球面円板(11)として構成されているものにおいて、少なくとも内軸受レース(3)にある転動路(8)がそれぞれその外側縁範囲(14,15)で、かつ/又は球面円板(11)の転動面(6)がそれぞれ側面(12,13)に隣接するその縁部分(16,17)で、対数的に傾斜する輪郭(Plog)に移行していることを特徴とする、ラジアル転がり軸受。
【請求項2】
対数的に傾斜する輪郭(Plog)を持つように構成される内軸受レース(3)の転動路(8)の外側縁範囲(14,15)及び/又は球面円板(11)の転動面(6)の縁部分(16,17)の面積割合が、内軸受レース(3)の転動路(8)又は球面円板(11)の転動面(6)の面積それぞれ約10%〜40%であることを特徴とする、請求項1に記載のラジアル転がり軸受。
【請求項3】
内軸受レース(3)の転動路(8)の外側縁範囲(14,15)における対数的輪郭(Plog)の半径(R)が、球面円板(11)の転動面(6)の半径(R)より大きく、両方の半径(R,R)の中心(M,M)が、なるべくラジアル転がり軸受(1)の押圧角軸線(A)上に上下に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のラジアル転がり軸受。
【請求項4】
球面円板(11)の転動面(6)の縁部分(16,17)における対数的輪郭(Plog)の半径(R)が、球面円板(11)の転動面(6)の半径(R)より小さく、両方の半径(R,R)の中心(M,M)が、なるべくラジアル転がり軸受(1)の押圧角軸線(A)上に上下に設けられていることを特徴とする、ラジアル転がり軸受。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−544197(P2008−544197A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520703(P2008−520703)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001096
【国際公開番号】WO2007/000150
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】