説明

ラジカル硬化性樹脂用硬化剤及びこれを用いたラジカル硬化性樹脂の硬化方法

【課題】 オープンモールド成形(空気接触)における表面乾燥性に優れるとともに、各原料の貯蔵安定性に優れ、しかも作業効率を改善できる硬化工法を可能とするラジカル硬化性樹脂用硬化剤及びこれを用いたラジカル硬化性樹脂の硬化方法を提供する。
【解決手段】 ラジカル硬化性樹脂と混合して用いられる硬化剤であって、該硬化剤は、有機過酸化物とN−ヒドロキシイミド化合物とを必須とする混合物であるラジカル硬化性樹脂用硬化剤、及び、該ラジカル硬化性樹脂用硬化剤とラジカル硬化性樹脂とを混合して硬化させるラジカル硬化性樹脂の硬化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル硬化性樹脂用硬化剤及びこれを用いたラジカル硬化性樹脂の硬化方法に関する。より詳しくはオープンモールト法に用いられるラジカル硬化性樹脂の硬化剤、及び、該硬化剤を用いたラジカル硬化性樹脂の硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル硬化性樹脂は、その硬化物が耐久性、強度等を有し、施工が簡便であることから、例えば、建築分野等における建築材料の仕上げ材、防水材(防水ライニング用材料)、塗り床材、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)材料、レジンコンクリート、化粧板、塗料、パテ、ゲルコート、注型、接着剤、家具材、防食材、WPC(Wood Plastic Combination)、バスタブ(浴槽)、人大(人工大理石)、包装品等の様々な分野において用いられている。
このようなラジカル硬化性樹脂は、硬化剤や硬化促進剤等の添加剤と混合することにより硬化させることができ、例えば、樹脂、硬化促進剤及び硬化剤を混合する3液タイプや、樹脂及び硬化促進剤の混合物と硬化剤とを混合する2液タイプとして施工現場で用いられている。一方、従来のラジカル硬化性樹脂は、酸素による硬化阻害を受け、空気接触面における表面硬化性が充分とならない。これを防ぐため、パラフィンワックスを樹脂中に混合する方法が広く用いられている。これは、硬化の際にパラフィンワックスが表面に析出して膜を形成し、この膜が空気と樹脂層を遮断して、空気の影響を抑えるものである。
しかしながら、樹脂の膜厚が薄い場合、パラフィンワックスの析出が不充分となり、表面が硬化(乾燥)するまでに長い時間が必要であり、施工時の作業効率を悪化させていた。
【0003】
ラジカル硬化性樹脂に関し、N−ヒドロキシイミド化合物を含有する樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、特願2004−018826にも、2価以上のアルコ−ルを含むアルコ−ル類と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を主成分とするラジカル硬化性樹脂、及び、N−ヒドロキシイミド化合物を含有するラジカル硬化性樹脂組成物が提案されている。これらの樹脂組成物は、硬化物特性を発揮できるとともに、硬化速度が速く、空気接触面の表面乾燥性、特に薄膜における速乾性を有するものである。このような樹脂組成物においては、N−ヒドロキシイミド化合物を乾燥性付与剤として用いて、以下に示す作業例(1)〜(3)等により使用されることになる。例えば作業例(1)としては、ラジカル硬化性樹脂と乾燥性付与剤と硬化促進剤と有機過酸化物とを、ラジカル硬化性樹脂を施工する直前に混合したり、作業例(2)としては、予めラジカル硬化性樹脂と乾燥性付与剤とを混合して主剤を調製し、施工する直前に主剤と硬化促進剤を混合し、更に有機過酸化物とを混合したり、作業例(3)としては、予めラジカル硬化性樹脂と硬化促進剤とを混合して主剤を調製し、施工する直前に主剤と乾燥性付与剤と有機過酸化物とを混合したりすることが挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの樹脂組成物は、ラジカル硬化性樹脂の表面乾燥性を、従来に比べて向上させるものの、前記作業例(1)では、施工時の添加剤種類が増えたり、或いは、前記の作業例(2)、(3)では予め調整した主剤を長期に保管した場合、貯蔵した主剤を用いて施工する時のゲル化時間が短くなったり、使用前の主剤がゲル化しやすいという不具合があった。
したがって、施工時の作業効率を充分に考慮したうえで、各種原料の経日安定性を保持するとともに、施工時の表面硬化性を改善することが求められていた。
【特許文献1】特開2002−80545号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、オープンモールド成形(空気接触)における表面乾燥性に優れるとともに、各原料の貯蔵安定性に優れ、しかも作業効率を改善できる硬化工法を可能とするラジカル硬化性樹脂用硬化剤及びこれを用いたラジカル硬化性樹脂の硬化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ラジカル硬化性樹脂の硬化について種々検討したところ、ラジカル硬化性樹脂、及び、必要に応じて硬化促進剤を用い、そして、有機過酸化物とN−ヒドロキシイミド化合物の混合したものを硬化剤として用いることにより、(1)ハンドレイアップ成形に代表されるFRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)や刷毛塗り、スプレーコートに代表される塗膜等のオ−プンモ−ルド成形等においてラジカル硬化性樹脂に優れた表面乾燥性を付与することができるとともに、(2)施工時に使用される各原料がゲル化や固化しない等の貯蔵安定性を確保し、且つ、貯蔵した原料を用いて施工するときのゲル化時間が変わらず作業することが可能となり、しかも(3)施工時における添加剤の種類を低減でき、作業効率を向上することが可能となることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、このようなラジカル硬化性樹脂用硬化剤とラジカル硬化性樹脂とを混合して硬化させる硬化方法が、ラジカル硬化性樹脂の施工をより効率的に行う方法として有用であることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明はラジカル硬化性樹脂と混合して用いられる硬化剤であって、上記硬化剤は、有機過酸化物とN−ヒドロキシイミド化合物とを必須とする混合物であるラジカル硬化性樹脂用硬化剤である。
本発明はまた、上記ラジカル硬化性樹脂用硬化剤とラジカル硬化性樹脂とを混合して硬化させるラジカル硬化性樹脂の硬化方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
上記硬化剤は、有機過酸化物とN−ヒドロキシイミド化合物とを必須とする混合物である。
上記有機過酸化物としては、ラジカル硬化性樹脂の硬化に通常用いられるものであればよく、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらの過酸化物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの有機過酸化物は溶剤を含んだ形態のものでもよい。例えば、溶媒としては、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ベンゼン、キシレン、トルエン等の有機溶媒や水等が挙げられる。また、これら溶媒の含有量は特に限定されるものではないが、90質量%以下が好ましい。
【0009】
上記N−ヒドロキシイミド化合物としては、例えば、下記一般式(1);
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Zは、炭素数2〜8の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基を表し、その水素の一部又は全部が、ハロゲン、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基で置換されていてもよいものである。)で表される化合物であることが好適である。
なお、上記一般式(1)において、Zにおける不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基;ジシクロペンテニル、シクロヘキセニル基、ノルボルニル基等の脂環式不飽和炭素基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の芳香族系の置換基等が挙げられる。
【0012】
上記一般式(1)で表されるN−ヒドロキシイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシ−4−メチルフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシ−1,2−ジカルボキシイミド−4−カルボキシルベンゼン、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシ−1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、N−ヒドロキシイタコンイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ヒドロキシテトラヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシ−メチルテトラヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシコハク酸イミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、入手の容易さ、効果の安定性、使用し易さ等の観点から、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシコハクイミドを用いることが好ましい。
【0013】
上記N−ヒドロキシイミド化合物は、有機過酸化物1質量部に対して、0.001質量部以上、1質量部以下(0.001〜1質量部)であることが好ましい。0.001質量部未満であると、ラジカル硬化性樹脂に充分な表面乾燥性を付与できないおそれがあり、1質量部を超えると、硬化が速くなりすぎて、成形作業上実用的なものとはならないおそれがある。下限値としてより好ましくは、0.01質量部であり、更に好ましくは、0.03質量部である。一方、上限値としてより好ましくは、0.5質量部であり、更に好ましくは、0.3質量部である。また、範囲としては、0.01〜0.5質量部であることがより好ましい。更に好ましくは、0.03〜0.3質量部である。
【0014】
本発明の硬化剤は、ラジカル硬化性樹脂と混合して用いられるものであり、通常では施工現場において混合されることになる。本発明においては、必要に応じて各種添加剤を併用することができ、硬化促進剤を必須とすることが好ましい。硬化促進剤を用いる場合の使用形態としては、例えば、(1)ラジカル硬化性樹脂と硬化剤と硬化促進剤とを、硬化性樹脂の施工する前に混合する形態、(2)予め硬化性樹脂と硬化促進剤等とを混合して主剤を調製し、施工する前に主剤と硬化剤とを混合する形態等が挙げられる。
このようにラジカル硬化性樹脂用硬化剤とラジカル硬化性樹脂とを混合して硬化させるラジカル硬化性樹脂の硬化方法もまた、本発明の一つである。また、このような硬化方法により得られる硬化物も、本発明の好ましい実施形態の一つである。
【0015】
上記ラジカル硬化性樹脂用硬化剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上とすることが好ましく、また、20質量部以下とすることが好ましい。0.1質量部未満であると、ラジカル硬化性樹脂を充分に硬化させることができないおそれがあり、20質量部を超えても、用いる量に比べてその作用効果を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、0.2質量部以上であり、また、15質量部以下である。
【0016】
上記硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等の金属石鹸類;コバルトアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等の金属キレート化合物;ジメチルアニリン、N,N’−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシ)−4−メチルアニリン等のアミン化合物;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアセトアミド等のβ−ジケトン、β−ケトエステル、β−ケトアミド類等の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、金属石鹸類及びアミン化合物が好ましい。すなわち、金属石鹸及び/又はアミン化合物を使用するラジカル硬化性樹脂の硬化方法もまた、本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記硬化促進剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上、10質量部以下とすることが好ましく、0.05質量部以上、5質量部以下とすることがより好ましい。
【0017】
本発明はまた、ラジカル硬化性樹脂の成形方法(成形工法)としても好適に使用することができ、このような成形方法としては、例えば、FRPを成形する場合は、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、フィラメントワインディング法、レジンインジェクション法、引き抜き成形法、SMC成形法(Sheet Molding Compounds Method)、BMC成形法(Bulk Molding Compound Method)、レジントランスファ成形法、レジンコンクリートやモルタルを成形する場合は、遠心成形法、注型法等が挙げられる。中でも、ハンドレイアップ法に代表されるFRPのオ−プンモ−ルド成形法が好適である。上記成形方法により得られる成形体もまた、本発明の好ましい実施形態の一つである。
【0018】
本発明において、ラジカル硬化性樹脂の被膜(塗膜)を形成することも可能であり、このような被膜の形成方法としては、例えば、該樹脂を基材に塗布した後硬化させることにより皮膜を形成する方法や、また、マット状の繊維強化材を用いる場合には、該樹脂をハンドレイアップ等により繊維強化材を含浸させて被覆材とし、硬化させることにより皮膜を形成する方法等が挙げられる。
上記基材としては、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材等が挙げられる。また、これらの基材は、ラジカル硬化性樹脂が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。
【0019】
またラジカル硬化性樹脂を基材に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、スピンコート、バーコート、フローコート、静電塗装、ダイコート、フイルムラミネート、ゲルコート等による方法等が挙げられる。
なお、ラジカル硬化性樹脂から形成される塗膜の膜厚としては、用いられる用途により適宜設定すればよい。
【0020】
以下にラジカル硬化性樹脂について説明する。
上記ラジカル硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート樹脂等を用いることが好ましく、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記ラジカル硬化性樹脂は、架橋性重合体(オリゴマー)とラジカル重合性単量体とを含有するものが好適であり、架橋性重合体としては、ポリエーテル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が好ましい。これらの架橋性重合体としては、重量平均分子量が300〜50000であることが好ましい。より好ましくは、350〜30000である。
【0021】
上記架橋性重合体において、不飽和ポリエステルは、不飽和二塩基酸及び/又はその酸無水物と必要に応じて飽和多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコール成分とを縮合反応して得ることができる。また、本来、水酸基あるいはカルボキシル基で構成される不飽和ポリエステルの末端基が、ジシクロペンタジエニルフマレート等の一塩基酸、ヒドロキシジシクロペンタジエン、2エチル−ヘキサノール等の一価のアルコールあるいは、ジシクロペンタジエン等を用いて変性された形でもよい。
上記酸成分において、不飽和二塩基酸及び/又はその酸無水物としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸等が好適である。また飽和多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、コハク酸、アジピン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、ナディック酸、ダイマー酸、トリマー酸、アゼライン酸、セバシン酸等が好適である。
【0022】
上記多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドの付加物等の2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールプロピレン等の3価アルコールが好適である。
上記酸成分とアルコール成分との反応モル比としては、酸成分:アルコール成分とした場合に、10:8〜10:12であることが好ましい。
【0023】
上記架橋性重合体において、ビニルエステルは、エポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸との反応物に重合性単量体を混合して得ることができる。また、このようにして得られた、ビニルエステルの有する水酸基に、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸のような多塩基無水酸、あるいはイソシアネート化合物やジケテンを反応させて得られるような形態でもよい。
上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が好適である。
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA系樹脂、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂、ビスフェノールF系樹脂、水素化ビスフェノールA系の脂肪族系のエポキシ樹脂等が好適である。また、ビスフェノールA系樹脂やビスフェノールF系樹脂としては、ビスフェノールA及び/又はビスフェノールFと脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物とを反応させて得られる反応生成物であることが好ましい。
【0024】
上記脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物は、脂肪族2官能アルコールのジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のものであり、エポキシ当量が300以下であることが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が好適である。
【0025】
上記架橋性重合体において、ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸類と、多価アルコールと、多塩基酸とによるエステル化反応により得られる架橋性重合体(オリゴマー)であることが好適である。
上記(メタ)アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハライド等の水酸基とエステル結合を生成しうる(メタ)アクリル酸及びその誘導体であることが好ましい。
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、トリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)付加物等が挙げられる。
上記多塩基酸としては、例えば、上述したα,β−不飽和二塩基酸及びその無水物、飽和二塩基酸及びその無水物等が挙げられる。
【0026】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートにおいて、(メタ)アクリル酸類と、多価アルコールと、多塩基酸とをエステル化反応させる方法としては特に限定されず、反応温度や触媒等も特に限定されるものではない。
【0027】
上記架橋性重合体において、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、更に必要に応じてポリオールとをウレタン化反応させることにより得られる架橋性重合体(オリゴマー)であることが好適である。
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の1種又は2種以上が好適である。
【0028】
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類や、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類等の1種又は2種以上が好適である。
【0029】
上記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等の1種又は2種以上が好適であり、数平均分子量が200〜3000であるものが好ましい。より好ましくは、数平均分子量が400〜2000のものである。なお、ポリエーテルポリオールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドの他に、ビスフェノールAやビスフェノールFにアルキレンオキサイドを付加させたポリオールも使用することができる。また、ポリエステルポリオールとは、二塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合体、又は、ポリカプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合体である。
【0030】
上記ウレタン(メタ)アクリレートにおいて、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、更に必要に応じてポリオールとをウレタン化反応させるためには、水酸基とイソシアネート基との当量比がほぼ1となるように使用量を調整し、40〜140℃の範囲で加熱することが好ましい。ウレタン化反応を促進させるためには、通常用いられるウレタン化触媒を使用することができ、3級アミン類、ジブチル錫ジラウレート、塩化錫等の錫化合物類を用いることが好適である。
【0031】
上記架橋性重合体において、ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、2価以上のアルコールを含むアルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られるエステル化物であることが好適である。
上記アルコール類は、1価のアルコールを含んでいてもよく、2価以上のアルコール及び1価のアルコールを併用することが好適である。
またエステル化物としては、2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、及び、1価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を含むものであることが好ましい。また、アルコール類としては、ベンゼン環を有するアルコール及び/又はそのアルキレンオキシド付加物であることが好ましい。
【0032】
上記ラジカル硬化性樹脂において、ラジカル重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の1官能アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等の分子内に環状構造を有する1官能(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等を用いることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、常温にて臭気を発する重合性単量体、例えばスチレン、ビニルトルエン、メチルメタクリレートのような沸点200℃以下の重合性単量体は、現場施工時における作業環境を考慮した場合、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対し、1〜30質量部にすることが好ましい。
【0033】
上記ラジカル硬化性樹脂において、架橋性重合体及びラジカル重合性単量体の質量比としては、架橋性重合体/重合性単量体が、(20〜90)/(80〜10)であることが好ましい。重合性単量体の質量比が80質量%を超えると、得られる樹脂の耐薬品性及び靭性が充分なものとならないおそれがあり、10質量%未満であると、硬化物の表面性を充分に向上することができず、また、粘度が大きいために作業性に優れたものとはならないおそれがある。
【0034】
本発明においては、更に、パラフィンを含んでラジカル硬化性樹脂組成物を構成することが好ましい。パラフィンとは、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックスであり、原油中に存在し、常温において固体又は半固体の炭化水素の混合物である。
上記パラフィンワックスとしては、例えば、パラフィンワックス150(商品名、日本精蝋社製、融点66℃)、パラフィンワックス140(商品名、日本精蝋社製、融点61℃)、パラフィンワックス130(商品名、日本精蝋社製、融点55℃)、パラフィンワックス115(日本精蝋社製、融点47℃)等が挙げられる。また、マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、Hi−Mic−2065(商品名、日本精蝋社製、融点75℃)、Hi−Mic−2045(商品名、日本精蝋社製、融点64℃)等が挙げられる。これらのパラフィンは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0035】
上記パラフィンをラジカル硬化性樹脂に使用する場合には、パラフィンワックスの分散剤を併用することが好ましい。パラフィンワックスの分散剤としては、例えば、水酸基、カルボキシル基及びエステル結合部位から選択される少なくとも1種の構造を有するワックスであることが好ましい。具体的には、例えば、ドデカン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸オクタデシル等の、炭素数12以上の脂肪酸及びその誘導体;ノニポール160(商品名、三洋化成工業社製)、エマルミン200(商品名、三洋化成工業社製)等のアルキルフェノールや、高級アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したアルコール類;NPS−9125、NPS−9210、NPS−6010、HAD−5080、NSP−8070、OX−020T、OX−1949(商品名、何れも日本精蝋社製)等のパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスから酸化反応等で誘導される変性ワックス;ダイヤモンドワックス(商品名、新日本理化社製)等の動植物油脂の誘導体;セラマー67(商品名、東洋ペトロライロ社製)、セラマー1608(商品名、東洋ペトロライロ社製)等の、カルボキシル基含有単量体とオレフィンとの重合体等が挙げられる。これらパラフィンワックスの分散剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0036】
上記パラフィンワックスの分散剤に対するパラフィンの使用比率は、用いるラジカル硬化性樹脂の種類や分子量、組成に応じて適宜設定すればよいが、質量比(パラフィンの質量/パラフィンワックスの分散剤の質量)が500〜1の範囲内であることが好ましい。この範囲よりパラフィンワックスの分散剤の比率が大きいと、乾燥性が充分なものとはならないおそれがあり、この範囲よりパラフィンワックスの分散剤の比率が小さいと、硬化物における積層樹脂層の被接着性が優れたものとはならないおそれがあることから、上記の範囲を逸脱すると、乾燥性及び上記積層樹脂層の被接着性をともに充分に満足し得るラジカル硬化性樹脂を得ることができないおそれがある。より好ましくは、300〜2の範囲内であり、更に好ましくは、200〜2の範囲内である。このような範囲に設定することにより、乾燥性及び硬化物における積層樹脂層の被接着性を更に向上させることが可能となる。
【0037】
上記ワックス類の使用量、すなわち上記パラフィンとパラフィンワックスの分散剤との合計量としては、ラジカル硬化性樹脂やパラフィン類の種類や組成等に応じて適宜設定することが好ましく、硬化時に上記ラジカル硬化性樹脂の硬化表面上にワックス薄膜(被膜)を形成することができるように設定すればよいが、例えば、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対して、0.005〜2質量部用いることが好ましい。0.005質量部未満であると、得られるラジカル硬化性樹脂の乾燥性が充分とはならないおそれがあり、2質量部を超えると、得られるラジカル硬化性樹脂を硬化してなる硬化物の強度物性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、乾操性及び得られるラジカル硬化性樹脂を硬化してなる硬化物の強度物性の観点から、0.02〜0.6質量部である。
【0038】
上記ラジカル硬化性樹脂組成物としてはまた、必要に応じて、重合禁止剤、不活性粉体、揺変性付与剤、充填剤、乾燥性向上剤、増粘剤、着色剤、繊維強化材、BYK−354のようなレベリング剤、BYK−A515、A525、A555のような脱泡剤等の添加剤(材)や骨材等を1種又は2種以上含んでいてもよい。更に、粘度調整のため、溶剤、希釈剤を混合してもよい。これらの使用量としては、ラジカル硬化性樹脂の用途等に応じて適宜設定することが好ましい。
また、末端基としてフマル酸(マレイン酸)やフタル酸(オルソ、イソ、テレ)の半エステル構造に起因するカルボキシル基を有しないラジカル硬化性樹脂、例えば、ビニルエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートと、メチルエチルケトンパーオキシドを含む硬化剤を用いて施工する場合は、有機酸を樹脂組成物に含ませることも好ましい。
【0039】
上記有機酸としては、解離定数pKaが3.8以下である1価有機酸、又は、一段目の解離定数pKa1が3.8以下であり、且つ二段目の解離定数pKa2が10.5以上である多価有機酸を用いることが適当である。一段目の解離定数pKa1(1価有機酸の場合、解離段数が1であるため、単に「解離定数pKa」ともいう。)としては、3.5以下であることが好ましい。より好ましくは、3.0以下である。なお、解離定数pKaとは、25℃における酸解離定数pKaである。
【0040】
上記有機酸としてはまた、数平均分子量が500以下のものであることが好ましい。より好ましくは、400以下である。
上記有機酸としては更に、カルボキシル基を有するものであることが好ましく、このような有機酸としては、カルボキシル基を有し、更に、該カルボキシル基が二重結合上の炭素原子に結合した形態であることがより好ましい。
上記有機酸の含有量としては、上記金属石鹸100質量部に対して、60質量部以上、500質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、80質量部以上、300質量部以下であり、更に好ましくは、90質量部以上、200質量部以下である。
【0041】
上記有機酸において、解離定数pKaが3.8以下である1価有機酸としては、例えば、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノエチル、フタル酸モノブチル、イソフタル酸モノエチル、2メタクリロイル−オキシ−エチルマレート、2−フランカルボン酸、2−ニトロ安息香酸、2−ブロム安息香酸、2−シアノ安息香酸等の1種又は2種以上を用いることが好適である。また、一段目の解離定数pKa1が3.8以下であり、且つ二段目の解離定数pKa2が10.5以上である多価有機酸としては、例えば、サリチル酸を用いることが好適である。
なお、上記1価有機酸として、プロピオン酸、トランス−桂皮酸、アクリル酸、メタクリル酸又はo−メチル安息香酸を用いたり、上記多価有機酸として、コハク酸、フマル酸、イソフタル酸又はアントラニル酸を用いたりする場合には、上述した好適なものと併用することが好ましい。
【0042】
上記重合禁止剤(安定剤)としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン類;カテコール、t−ブチルカテコール等のカテコール類;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール、クレゾール等のフェノール類;フェノチアジン、フェルダジル、α,α−ジフェニル−β−ピクリルヒドラジル(DPPH)、4−ヒドロキシ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が好適である。また、例えば不飽和ポリエステル樹脂においては、ハイドロキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、クレゾールt−ブチルハイドロキノンやフェルダジル、DPPH等の安定ラジカルを用いることが好ましい。
上記不活性粉体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂硬化物、ゴム、木材等の粉体及び/又は粉砕物等が挙げられる。
上記揺変性付与剤としては、無水微粉末シリカ、アスベスト、クレー等が挙げられる。充填剤としては、水酸化アルミ、タルク、珪砂、炭酸カルシウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
【0043】
上記充填剤としては、水酸化アルミニウム(ATH)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ガラスパウダー、ミルドファイバー、クリストバライト、マイカ、シリカ、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、ガラス粉末等の無機充填剤;有機充填剤等が挙げられる。
上記乾燥性向上剤としては、乾性油、アリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコール及び無水マレイン酸の付加重合体等等のアリルオキシ基を有する不飽和又は飽和ポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
上記増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;イソシアネート類;オキサゾリン類等が挙げられる。
【0044】
上記着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
上記繊維強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機繊維等が挙げられる。繊維強化材の形状としては、マット状、チョップ状、ロービング状等が挙げられる。
上記溶剤、希釈剤としては、公知のものが使用でき、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル等が挙げられる。また、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等の重合性不飽和基を有する単量体を希釈剤として用いてもよい。臭気の面から、常圧での沸点が150℃以上のものが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明のラジカル硬化性樹脂用硬化剤は、上述のような構成であるので、オープンモールド成形(空気接触)における表面乾燥性に優れるとともに、各原料の貯蔵安定性に優れ、しかも作業効率を改善できる硬化工法を可能とするものであることから、より効率的にラジカル硬化性樹脂を施工することができることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0047】
1.ラジカル硬化性樹脂の製造
<製造例1>
温度計、冷却管、攪拌機、及び、ガス導入管を備えたフラスコに、無水マレイン酸147g、イソフタル酸581g、ジエチレングリコール265g、および、プロピレングリコール190gを仕込んだ。次いで、窒素ガスを吹き込み、生成する縮合水を取り除きながら、200℃で10時間加熱することにより、酸価20mgKOH/gの不飽和ポリエステル樹脂を得た。続いて、この不飽和ポリエステル樹脂700g、スチレン300g、及び、メトキシフェノール0.2gを混合して、25℃での粘度が600mPa・s(600センチポイズ)の不飽和ポリエステル樹脂(ラジカル硬化性樹脂Aとする)を得た。
【0048】
<製造例2>
温度計、ガス導入管、攪拌機、及び、冷却管を備えたフラスコに、メタクリル酸215g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量454)1135g、トリエチルアミン6.8g、及び、ハイドロキノン0.3gを仕込んだ。次いで、酸素濃度7容量%に調節した空気と窒素の混合ガスを吹き込みながら、110℃で8時間加熱することにより、酸価7.0mgKOH/gのビニルエステル樹脂を得た。続いて、このビニルエステル樹脂1350gにスチレン900gを混合して、25℃の粘度が300mPa・s(300センチポイズ)のビニルエステル樹脂(ラジカル硬化性樹脂Bとする)を得た。
【0049】
<製造例3>
温度計、ガス導入管、攪拌機、及び、冷却管を備えたフラスコに、メタクリル酸430g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187)935g、トリエチルアミン3.0g、及び、ハイドロキノン0.3gを仕込んだ。次いで、酸素濃度7容量%に調節した空気と窒素の混合ガスを吹き込みながら、110℃で10時間加熱することにより、酸価6.0mgKOH/gのビニルエステル樹脂を得た。続いて、このビニルエステル樹脂700gにメタクリル酸メトキシエトキシエチル300gを混合して、25℃の粘度が200mPa・s(200センチポイズ)のビニルエステル樹脂(ラジカル硬化性樹脂Cとする)を得た。
【0050】
<製造例4>
温度計、ガス導入管、攪拌機、冷却管、及び、滴下ロートを備えたフラスコに、メタクリル酸フェノキシエチル456g、2,4−トルエンジイソシアネート348g、ベンゾキノン0.2g、及び、ジブチル錫ジラウレート0.2gを仕込み、酸素濃度7容量%に調節した空気と窒素の混合ガスを吹き込みながら60℃に加熱した。次いで、反応系内の温度を60℃に保持しながら、プロピレングリコール76gを2時間かけて滴下し、続いて、メタクリル酸ヒドロキシエチル260gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、反応系内の温度を80℃に上げて2時間加熱することにより25℃の粘度が900mPa・s(900センチポイズ)のウレタンメタクリレート樹脂(ラジカル硬化性樹脂Dとする)を得た。
【0051】
<製造例5>
温度計、ガス導入管、攪拌機、冷却管、及び、滴下ロートを備えたフラスコに、ジエチレングリコール636g、無水フタル酸444g、メタクリル酸516g、ハイドロキノン0.5g及びパラトルエンスルホン酸一水和物26gを仕込み、酸素濃度7容量%に調節した空気と窒素の混合ガスを吹き込みながら100℃に加熱した。次いで、反応系内の温度を100℃に保持しながら、生成する縮合水を取り除き、縮合水が154gとなるまで6時間エステル化反応を行った。その後、反応溶液を40℃まで冷却し、ジエチレングリコールジメタクリレート359gを投入、混合することにより25℃での粘度が150mPa・s(150センチポイズ)のポリエステルメタクリレート樹脂(ラジカル硬化性樹脂Eとする)を得た。
【0052】
<製造例6>
(第一工程)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−8Uグリコール(商品名、ビスフェノールA8EO付加物、日本乳化剤社製)580g、フェノキシエタノール414g、メタクリル酸516g、シクロヘキサン100g、パラトルエンスルホン酸1水和物8g、2−メチルハイドロキノン0.25g、フェノチアジン0.4gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に到達してから、8時間後に流出した縮合水が81g(理論出水量の91%)となった。
その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)で3時間シクロヘキサンを留去した。この時の反応混合物の酸価は36mgKOH/gであった。
(第二工程)
次いで、この反応物にフェノチアジン0.25g、2−メチルハイドロキノン0.1g、N,N,N−トリエチルベンゼンアンモニウムクロライド8g、フェニルグリシジルエーテル150gを加え、再度115℃に昇温し、空気を吹き込みながら反応を行った。
115℃に昇温してから、4時間後に反応混合物の酸価が4.5mgKOH/gとなり、粘度が75mPa・sのポリエーテルメタクリレート樹脂(ラジカル硬化性樹脂Fとする)を得た。
【0053】
<製造例7>
(第一工程)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−8Uグリコール(商品名、ビスフェノールA8EO付加物、日本乳化剤社製)580g、フェノキシエタノール414g、メタクリル酸516g、シクロヘキサン100g、パラトルエンスルホン酸1水和物8g、2−メチルハイドロキノン0.25g、フェノチアジン0.4gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。
120℃に到達してから、8時間後に流出した縮合水が81g(理論出水量の91%)となった。その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)で3時間シクロヘキサンを留去した。この時の反応混合物の酸価は36mgKOH/gであった。
(第二工程)
次いで、この反応物にフェノチアジン0.25g、2−メチルハイドロキノン0.1g、トリエチルアミン10g、エポライト100E(商品名、共栄社化学製のジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量152)154gを加え、再度115℃に昇温し、空気を吹き込みながら反応を行った。
115℃に昇温してから、3時間後に反応混合物の酸価が4.5mgKOH/gとなり、粘度が95mPa・sのポリエーテルメタクリレート樹脂(ラジカル硬化性樹脂Gとする)を得た。
【0054】
2.樹脂組成物の調製
表1に記載した配合で、撹拌混合し、樹脂組成物A−1〜G−5を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
3.硬化調整剤の調製
表2に記載した配合で、撹拌混合し、硬化調整剤T−0〜T−5を得た。
【0057】
【表2】

【0058】
4.硬化剤の調製
表3に記載した配合で、撹拌混合し、硬化剤K−1及びK−2を得た。
表1〜3に関して、N−ヒドロキシコハク酸イミド溶液とは、N−ヒドロキシコハク酸イミドの20質量%のメタノール溶液である。
【0059】
【表3】

【0060】
5.原料の貯蔵安定性
それぞれ調製した樹脂組成物A−1〜G−5及び硬化調整剤T−0〜T−5を100mlのガラス瓶に90g入れて、密栓し、40℃の恒温チャンバーに静置・保管した。
保管後、1週間、2週間、4週間及び8週間後に取り出し、各原料の状態を目視評価した。結果を表4〜7に示す。
表4、6及び7に関して、「評価できず」とは、40℃2週間の保管で、原料がゲル化したり、固化したため、測定できなかったことを示す。
【0061】
6.施工性(表面乾燥性)
樹脂組成物、硬化調整剤(2液型の場合は除く)、及び、硬化剤を表4〜7に示すとおり配合した。この混合液を23℃〜25℃雰囲気下にて、ガラス基板上に15g塗布し、その上に10cm×10cmのガラスマット1ply(♯450、5g)を配し、含浸ローラーを使って積層した。
硬化剤を混合してから、5時間後の積層物の表面状態を指触にて下記のように評価した。
(表面乾燥性の評価)
〇;ベタツキがほとんどない
△;ベタツキがあり、指に液状物が付着する
×;表面が液状である
結果を表4〜7に示す。
【0062】
7.経時変化(1)
樹脂組成物、硬化調整剤(2液型の場合は除く)、及び硬化剤を表4〜7に示すとおり配合した。この混合液を貯蔵安定試験と同様に処理し、処理後及び2週間経過後の常温ゲルタイムを、JIS K6901に準じて測定し、常温硬化特性を評価した。
結果を表4〜7に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
8.硬化剤の安定性
表8の参考例2〜4に示す。
【0068】
9.経時変化(2)
樹脂組成物、硬化調整剤及び硬化剤を表8に示すとおり配合した。この混合液の調整後及び23℃の恒温状態で4週間放置後について、常温ゲルタイムを、JIS K6901に準じて測定した。
表8に示す割合で配合した混合液の表面乾燥性を、上記に示す評価方法に準じて行った。
結果を表8に示す。
【0069】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル硬化性樹脂と混合して用いられる硬化剤であって、
該硬化剤は、有機過酸化物とN−ヒドロキシイミド化合物とを必須とする混合物である
ことを特徴とするラジカル硬化性樹脂用硬化剤。
【請求項2】
前記N−ヒドロキシイミド化合物は、有機過酸化物1質量部に対して、0.001質量部以上、1質量部以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のラジカル硬化性樹脂用硬化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のラジカル硬化性樹脂用硬化剤とラジカル硬化性樹脂とを混合して硬化させることを特徴とするラジカル硬化性樹脂の硬化方法。
【請求項4】
前記ラジカル硬化性樹脂の硬化方法は、金属石鹸及び/又はアミン化合物を使用することを特徴とする請求項3に記載のラジカル硬化性樹脂の硬化方法。

【公開番号】特開2006−22155(P2006−22155A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199569(P2004−199569)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(503090980)ジャパンコンポジット株式会社 (38)
【Fターム(参考)】