説明

ラジカル重合によってポリマーを連続的に製造するための方法及び装置

本発明は、ラジカル重合によってポリマーを連続的に製造する方法に関し、本方法では、少なくとも3種の材料が、1個以上の混合器内で、微細構造を使用して混合され、そして次に少なくとも1つの反応領域で重合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3種の供給材料が微細構造を有する1個以上の混合器内で混合され、そして少なくとも1つの反応領域で重合される、ラジカル重合によってポリマーを連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(WO99/54362)には、ポリマーを連続的に製造する方法が記載されており、該方法では、少なくとも2種の反応物質が導かれ、そしてマイクロミキサーによって結合(混合)され、相互に混合され、そして管型反応器(tublar reactor)内で重合される。この場合、出発材料は、マイクロミキサーに挿入した後に、必要とされる反応温度に達する範囲に予備過熱される。この手順には、モル質量分布が2モードで、高分子量部分を有し、反応システムを閉塞させるか又は覆ってしまうようなポリマーの形成を回避することが意図されている。この手順は、エネルギーを大量に消費するばかりでなく、定義されていない(不明瞭な)、事前の変換が混合器内に生じることが予想される。更に、酸性基を含むモノマーの場合、及び低分子量(モル質量)生成物を製造するのに必要とされる高い反応温度では、腐食の問題が大きくなる。更に、予備加熱しているので、供給が短時間でも停止すると、又は流れが減少すると重合が行われ、従って、マイクロミキサーに閉塞が生じてしまう。
【0003】
特許文献2(WO03/037501)には、オレフィン性不飽和モノマーを(共)重合する方法が開示されている。該方法では、2種の液体流の状態の少なくとも2種の出発材料が、これらが反応容器に挿入される前に(相互にからみあうマイクロチャンネルを有する)混合器内で混合される。使用されるチャンネル(流路)の寸法(断面が10〜100μmの範囲)のために、この工程の混合器及び/又は反応器に被覆(coverage)又は閉塞が生じる危険性が存在する。微細構造を有する装置は、洗浄工程を許容することが極めて難しいので、このことに問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO99/54362
【特許文献2】WO03/037501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、従来技術から知られている不利な点が回避される、ラジカル重合(free-radical polymerization)を連続的に製造する方法を提供することにある。この方法は、特に、規定された、非常に狭いモル質量分布を有するポリマー溶液の製造を可能にするべきであり、及び該方法は、エネルギー効率が良好であり、すなわち予備加熱を不必要とし、マイクロミキサー及び/又は反応器に閉塞が生じる危険性を含まないものであるべきで、及び/又は酸性基を含むモノマーを使用する場合には、腐食の問題が可能な限り回避されるべきである。極端に高価な特定の材料は、特に使用するべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明に従いラジカル重合によってポリマーを連続的に製造する方法であって、以下の工程:
(a)それぞれが、1種以上の以下の成分:
ラジカル重合可能なモノマー
調整剤として作用する溶媒、及びこれとは異なる調整剤から選ばれる調整剤、及び
開始剤、
を、開始剤を含む流れは調整剤を含まないという条件で、含む少なくとも2種の液体流を供給する工程、
(b)微細構造を有する混合器を使用して、前記少なくとも2種の液体流を混合し、反応混合物を得る工程、
(c)工程(b)で得られた反応混合物を、少なくとも1つの反応領域でラジカル重合させる工程、
を含む、ラジカル重合によってポリマーを連続的に製造する方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明にかかる装置例を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、「液体流」は、流れそのものを表し、そして流れの個々の成分の状態(物質状態)を意味しない。換言すれば、工程(a)、(b)及び(c)の与えられた圧力と温度条件下で、成分の一つが液体状態ではない場合、これは溶媒中に溶解した状態で存在して良い。本発明において、液体流は、与えられた圧力と温度条件下で、液体状態で存在する物質、及び溶融物又は液体溶媒中に溶解した状態で存在する固体の何れも意味すると理解される。
【0009】
適切な実施の形態では、以下の流れが工程(a)に供給される:
(1)少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含む少なくとも1種の液体流、
(2)少なくとも1種の開始剤を含む少なくとも1種の液体流、
(3)少なくとも1種の調整剤を含む少なくとも1種の液体流。
【0010】
後者の形態の場合でも、開始剤を含む流れは、調整剤を含まない(及び従って、調整剤として活性な溶媒も含まない)という条件が適用される。
【0011】
適切な実施の形態では、工程(c)におけるラジカル重合は、少なくとも1つの微細構造化された反応領域で行なわれる。
【0012】
特に好ましい実施の形態では、液体流は、次の重合の反応温度未満で混合される。より特定的には、液体流は、予備加熱を行うことなく混合される。従って、環境温度(23℃)又はより低い温度、例えば10℃〜30℃の範囲で混合を行うことが好ましい。より好ましくは、反応温度未満の温度、例えば、反応温度よりも、少なくとも10℃、少なくとも15℃、又は少なくとも20℃低い温度で行われる。反応温度は、反応領域で重合が行われる温度として定義される。これが温度インターバルの場合、反応領域で確立された最低温度を意味する。これにより、混合操作の間、反応混合物の早期の開始を回避することが可能になり、そして規定された反応開始と、次の重合における規定された滞留時間が得られる。更に、この方法は、制御不可能な反応に起因するポリマー形成を回避し、そして混合装置と装置の閉塞を回避する。
【0013】
第1の好ましい実施の形態では、液体流が、微細構造を有する混合器内で、1段階で混合される。
【0014】
他の好ましい実施の形態では、液体流が1段階を超える段階で混合され、そして、(流れ方向に見て)1つ以上の反応領域の入口の前の、少なくとも最後の混合器が微細構造を有する混合器である。
【0015】
更なる好ましい実施の形態では、少なくとも1つの反応領域で、熱伝達係数と体積特定伝熱面積(volume-specific heat transfer area)の積が、12500WmKを超え、好ましくは50000WmKを超え、より好ましくは200000WmKを超え、及び特に800000WmKを超える。
【0016】
重合は、1段階で行うことができ、又、2段階、又は2段階を超える段階、すなわち2、3、4,5段階又はこれを超える段階で行うことができる。
【0017】
適切な実施の形態では、多段階重合の場合、少なくとも1つの追加的な流れ(例えば、1、2、3、4又は5つの流れ)が、少なくとも2段階の重合段階で加えられる。これは、モノマー含有流、開始剤含有流、溶媒含有流、調整剤含有流、これらの混合物、及び/又は他の流であって良い。
【0018】
適切な実施の形態では、追加的な流れ(複数の場合を含む)が、微細構造を有する混合器によって混合される。同様に好ましい実施の形態では、少なくとも1個の(混合機能を有する)反応器が、追加的な流れ(複数の場合を含む)を混合するために、及び更なる反応のために使用される。
【0019】
更なる適切な実施の形態では、反応排出物は、後処理に処理される。これは、後重合(postpolymerization)、臭気除去、中和、これらとは異なる添加、及びこれらの組合せから選ばれる。
【0020】
他の適切な実施の形態では、少なくとも1種の添加剤が反応排出物に添加される。特定の実施の形態では、微細構造を有する混合器を使用して、少なくとも1種の添加剤と反応排出物を混合することにより、後処理が行われる。
【0021】
溶液重合(solution polymerization)、又はバルク重合(bulk polymerization)として、ラジカル重合を行うことが好ましい。溶液重合が特に好ましい。
【0022】
特に適切な実施の形態では、重合は、モノマーとして、モノエチレン性不飽和のカルボン酸又はスルホン酸、又はモノエチレン性不飽和のカルボン酸又はスルホン酸を含むモノマー混合物が使用される。
【0023】
本発明は、更に、
−液体出発材料のための、少なくとも2個の貯留容器、
−少なくとも2個の貯留容器からの液体流のそれぞれのための供給部、
−液体流が供給され、及び反応混合物を得るために供給された液体流が混合される、順次連結された1個以上の混合器、
−少なくとも1つの微細構造を有する反応領域、及び
−1個以上の追加−及び/又は混合装置が任意に設けられた、排出装置、
を含み、流れ方向に見て、1つ以上の反応領域の入口の前の、少なくとも最後の混合器には、微細構造が設けられている、ことを特徴とする連続的にポリマーを製造するための装置、を提供する。
【0024】
この替わりの実施の形態では、装置は、
−液体出発材料のための、少なくとも3個の貯留容器
−少なくとも3個の貯留容器からの液体流のそれぞれのための供給部、
−液体流が供給され、及び反応混合物を得るために供給された液体流が混合される、順次連結された1個以上の混合器、
−少なくとも1つの反応領域、及び
−1個以上の追加−及び/又は混合装置が任意に設けられた、排出装置、
を含み、そして、流れ方向に見て、1つ以上の反応領域の入口の前の、少なくとも最後の混合器には、微細構造が設けられている。
【0025】
装置の適切な実施の形態では、少なくとも1つの、微細構化された反応領域が使用される。
【0026】
他の適切な実施の形態では、装置は2つの反応領域を含む。
【0027】
同様に適切な実施の形態では、装置は液体モノマー流のための、少なくとも1つの更なる供給部(該供給部は、反応領域の下流側に設けられており、そして流れ方向に見て、少なくとも1つの更なる反応領域が続いている)を有する。
【0028】
本装置の更に適切な形態では、供給される更なる液体流と、(供給部が下流側に結合されている)反応領域からの排出物が、微細構造を有する混合器に導入され、該混合器内で混合される。
【0029】
更に本発明は、本発明の装置を、フリーラジカル重合によってポリマーを連続的に製造(調製)するために使用する方法を提供する。
【0030】
本発明の方法によって得られたポリマー、又は本発明の装置内で得られたポリマーを、顔料の分散剤として、洗浄−又は浄化剤化合物の成分として、水処理に、又は鉱物油の抽出(石油採掘)の添加剤として使用する方法は、同様に本発明の対象の一部を構成する。
【0031】
モノマー
本発明に従う方法では、少なくとも1種の、フリーラジカル的に重合可能なα、β−エチレン性不飽和モノマーが重合のために使用される。適切なモノマーは、モノエチレン性不飽和のカルボン酸、スルホン酸、及びホスホン酸、α,β−エチレン性不飽和のモノ−及びジカルボン酸とC−C20−アルカノールのエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールとC−C30−モノカルボン酸とのエステル、エチオレン性不飽和のニトリル、ハロゲン化ビニル、ビニリデンハライド、α,β−エチレン性不飽和のモノ−及びジカルボン酸とC−C30−アルカンジオールのエステル、α,β−エチレン性不飽和のモノ−及びジカルボン酸と(第1級又は第2級アミノ基を有する)C−C30−アミノアルコールのアミド、α,β−エチレン性不飽和のモノカルボン酸とN−アルキル、及びこれらのN,N−ジアルキル誘導体の第1級アミド、N−ビニルラクタム、開鎖N−ビニルアミド化合物、アリルアルコールとC−C30−モノカルボン酸のエステル、α,β−エチレン性不飽和のモノ−及びジカルボン酸とアミノアルコールのエステル、α,β−エチレン性不飽和のモノ−及びジカルボン酸と(少なくとも1つの第1級又は第2級のアミノ基を有する)ジアミンのアミド、N,N−ジアリルアミン、N,N−ジアリル−N−アルキルアミン、ビニル−及びアリル置換された窒素ヘテロ環、ビニルエーテル、C−C−モノオレフィン、共役二重結合を少なくとも2個有する非芳香族炭化水素、ポリエーテル(メト)アクリレート、ウレア基を有するモノマー、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0032】
適切なエチレン性不飽和のカルボン酸、スルホン酸、及びホスホン酸、又はこれらの誘導体は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸フマール酸、4〜10個、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和のジカルボン酸のモノエステル、例えばモノメチルマーレート、スルフォプロピルアクリレート、スルフォプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びアリルホスホン酸である。酸性基を含むモノマーを、遊離酸の状態、又は部分的又は完全に中和された状態で、重合するために使用することができる。中和するための適切な塩基は、例えばKOH、NaOH、アンモニア等である。特に好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸、及び塩及びこれらの混合物である。
【0033】
α,β−エチェレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸とC−C20−アルカノールの適切なエステルは、メチル(メト)アクリレート、メチルエタクリレート、エチル(メト)アクリレート、エチルエタクリレート、n−プロピル(メト)アクリレート、イソプロピル(メト)アクリレート、n−ブチル(メト)アクリレート、sec−ブチル(メト)アクリレート、tert−ブチル(メト)アクリレート、tert−ブチルエタクリレート、n−ヘキシル(メト)アクリレート、n−ヘプチル(メト)アクリレート、n−オクチル(メト)アクリレート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メト)アクリレート、エチルヘキシル(メト)アクリレート、n−ノニル(メト)アクリレート、n−デシル(メト)アクリレート、n−ウンデシシル(メト)アクリレート、トリデシル(メト)アクリレート、ミリスチル(メト)アクリレート、ペンタデシル(メト)アクリレート、パルミチル(メト)アクリレート、ヘプタデシル(メト)アクリレート、ノナデシル(メト)アクリレート、アラキニル(メト)アクリレート、ベヘニル(メト)アクリレート、リグノセリル(メト)アクリレート、セロチニル(メト)アクリレート、メリシニル(メト)アクリレート、パルミトレオニル(メト)アクリレート、オレイル(メト)アクリレート、リノイル(メト)アクリレート、リオレニル(メト)アクリレート、ステアリル(メト)アクリレート、ラウリル(メト)アクリレート、及びこれらの混合物である。
【0034】
好ましいビニル芳香族化合物は、スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−(n−ブチル)スチレン、4−(n−ブチル)スチレン、4−(n−デシル)スチレンであり、及び特に好ましくは、スチレンである。
【0035】
ビニルアルコールとC−C30−モノカルボン酸の適切なエステルは、例えば、ビニルフォルメート、ビニルアセテート、ビニルプロピネート、ビニルブチレート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピネート、ビニルベルサテート、及びこれらの混合物である。
【0036】
適切なエチレン性不飽和ニトリルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びこれらの混合物である。
【0037】
適切なハロゲン化ビニルおよびハロゲ化ビニリデンは、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンフルオリド、及びこれらの混合物である。
【0038】
α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸と、C−C30−アルカンジオールの適切なエステルは、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルエタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルアクリレート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルメタクリレート等である。
【0039】
α,β−エチレン性不飽和モノマルボン酸とN−アルキル及びこれらのN,N−ジアルキル誘導体の適切な第1級アミンは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メト)アクリルアミド、N−エチル(メト)アクリルアミド、N−プロピル(メト)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メト)アクリルアミド、N−(tert−ブチル)(メト)アクリルアミド、N−(n−オクチル)(メト)アクリルアミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)(メト)アクリルアミド、N−エチルヘキシル(メト)アクリルアミド、N−(n−ノニル)(メト)アクリルアミド、N−(n−デシル)(メト)アクリルアミド、N−(n−ウンデシル)(メト)アクリルアミド、N−トリデシル(メト)アクリルアミド、N−ミルスチル(メト)アクリルアミド、N−ペンタデシル(メト)アクリルアミド、N−パルメチル(メト)(メト)アクリルアミド、N−ヘプタデシル(メト)アクリルアミド、N−ノナデシル(メト)アクリルアミド、N−アラキニル(メト)アクリルアミド、N−ベヘニル(メト)アクリルアミド、N−リグノセリル(メト)アクリルアミド、N−セロチニル(メト)アクリルアミド、N−メリシニル(メト)アクリルアミド、N−パルミトレオニル(メト)アクリルアミド、N−オレイル(メト)アクリルアミド、N−リノイル(メト)アクリルアミド、N−リノレニル(メト)アクリルアミド、N−ステアリル(メト)アクリルアミド、N−ラウリル(メト)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メト)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メト)アクリルアミド、モルホリニル(メト)アクリルアミドである。
【0040】
適切なN−ビニルラクタム及びこれらの誘導体は、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム等である。
【0041】
適切な開鎖N−ビニルアラミド化合物は、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアラミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、及びN−ビニルブチルアミドである。
【0042】
α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸とアミノアルコールの適切なエステルは、N,N−ジメチルアミノメチル(メト)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メト)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メト)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メト)アクリレート、及びN,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メト)アクリレートである。
【0043】
α,β−エチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸と、少なくとも1つの第1級アミノ又は第2級アミノ基を含むジアミンの適切なアミドは、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メトアクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メトアクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メトアクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]メトアクリルアミド等である。
【0044】
適切なモノマーは、又、N,N−ジアリルアミン及びN,N−ジアリル−N−アルキルアミン及びこれらの酸添加塩、及び四級化生成物である。ここで、アルキルは、C−C24−アルキルが好ましい。好ましいものは、N,N−ジアリル−N−メチルアミン及びN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム化合物、例えばクロリド及びブロミドである。
【0045】
適切なモノマーMは、又、ビニル及びアリル−置換の窒素ヘテロ環、例えば、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、ビニル−及びアリル−置換の芳香族化合物、例えば、2−及び4−ビニルピリジン、2−及び4−アリルピリジン、及びこれらの塩である。
【0046】
適切なC−C−モノオレフィン及び共役二重結合を少なくとも2個有する非芳香族炭化水素は、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等である。
【0047】
上述したモノマーは、個々に、一つのモノマークラス内での混合物の状態で、異なるクラスの混合物の状態で使用することができる。
【0048】
特定の実施の形態では、本発明に従う方法は、アクリル酸ホモ−及びコポリマーを製造(調製)することに適用される。
【0049】
適切なアクリル酸コポリマーは、好ましくは、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、これらのモノ−及びジエステル、及び無水物;α,β−エチレン性不飽和モノ−又はジカルボン酸とC−C20−アルカノールのエステル;(メト)アクリレート、ビニルアルコールとC−C30−モノカルボン酸のエステル;ビニル置換した窒素ヘテロ環、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを有する。
【0050】
特定の実施の形態では、コモノマーは、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール及びこれらの混合物から選ばれる。
【0051】
更なる特定の実施の形態では、本発明に従う方法は、ビニルピロリドンホモ−及びコポリマーを製造するのに適用される。
【0052】
分岐剤(branching agent)
本発明のポリマー分散物の製造では、上述したモノマーに加え、少なくとも1種の架橋剤を使用できる。本発明に従えば、これらの架橋剤は、該架橋剤が単に枝分かれをもたらすように、低い濃度で使用される。本発明において、従ってこれらは分岐剤と称される。これにより、ポリマー分散物のレオロジー的(流動学的)な特性を改質(変性)することができる。架橋機能を有するモノマーは、少なくとも2つの重合可能なエチレン性不飽和非共役二重結合を分子内に有する化合物である。
【0053】
適切な分岐剤は、例えば、アクリルエステル、メタクリルエステル、アリルエーテル又は少なくとも二価のアルコールのビニルエーテルである。もとのアルコールのOH基は、完全に、又は部分的にエーテル化、又はエステル化されていても良い;しかしながら、分岐剤は、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含む。
【0054】
もとのアルコール(parent alcohol)の例は、二価アルコール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、but−2−ene−1,4−ジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,5−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールモノエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロピル)フェニル]プロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、3−チアペンタン−1,5−ジオール、及びポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラヒドロフラン(それぞれの分子量が200〜10000)である。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのホモポリマーとは別に、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマー、又は組み込まれたエチレンオキシド及びプロピレンオキシド基を含むコポリマーを使用することも可能である。2個以上のOH基を有するもとのアルコールの例は、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリチリトール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、シアヌル酸、ソルビタン、糖、例えばサッカロース、グルコース、マンノースである。多価アルコールは、(対応するエトキシレート又はプロポキシレートの状態の)エチレンオキシド、又はプロピレンオキシドとの反応の後に使用することも可能である。多価アルコールは、最初に、エピクロロヒドリンとの反応によって、対応するグリシジルエーテルに変換することもできる。
【0055】
更なる適切な分岐剤は、ビニルエステル又はモノヒドリックの不飽和アルコール(類)とエチレン性不飽和C−C−カルボン酸(類)、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマール酸のエステルである。このようなアルコールの例は、アリルアルコール、1−ブテン−3−オル、5−ヘキセン−1−オル、1−オクテン−3−オル、9−デセン−1−オル、ジシクロペンタニルアルコール、10−ウンデセン−1−オル、シンナミルアルコール、シトロネルオール、クロチルアルコール、又はcis−9−オクタデセン−1−オルである。しかしながら、モノヒドリックの不飽和アルコールを多塩基カルボン酸、例えば、マロン酸、酒石酸、トリメリット酸、フタル酸、テレフタル酸、クエン酸、又はコハク酸でエステル化することも可能である。
【0056】
更なる適切な分岐剤は、不飽和カルボン酸と、上述した多価アルコールのエステル、例えば、オレイン酸、桂皮酸、又は10−ウンデセン酸のエステルである。
【0057】
適切な分岐剤は、又、直鎖状の、又は分岐した、線状の、又は環状の、脂肪族、又は芳香族の炭化水素(該炭化水素は、脂肪族炭化水素に接合(conjugate)してはならない、少なくとも2個の二重結合を有する)、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、トリビニルシクロヘキセン、又はポリブタジエン(分子量が200〜20000のもの)である。
【0058】
同様に、分岐剤として適切なものは、アクリルアミド、メタクリルアミド、及び少なくとも2官能性アミンのN−アリルアミンである。このようなアミンは、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ドデカンジアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、又はイソホロンジアミンである。同様に適切なものは、アリルアミン及び不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、又は上述の少なくとも2塩基のカルボン酸から形成されるアミドである。
【0059】
更に、トリアリルアミン及びトリアリルモノアルキルアンモニウム塩、例えばトリアリルメチルアンモニウムクロリド又はメチルサルフェートが分岐剤として適切である。
【0060】
同様に適切なものは、ウレア誘導体、少なくとも2官能性のアミド、シアヌレート、又はウレタンのN−ビニル化合物、例えば、ウレア、エチレンウレア、プロピレンウレア又はテトラアミドのもの、例えば、N,N’−ジビニルエチレンウレア又はN,N’−ジビニルプロピレンウレアである。
【0061】
更に適切な分岐剤は、ジビニルジオキサン、テトラアリルシラン又はテトラビニルシランである。上述した化合物の混合物を使用することも可能である。
【0062】
調整剤
ラジカル重合は、少なくとも1種の調整剤の存在下に行われる。調整剤は、重合に使用されるモノマーの合計量に対して、好ましくは0.05〜25質量%、及びより好ましくは0.1〜10質量%の量で使用される。
【0063】
使用される調整剤が、使用されるモノマーのための溶媒として同時に作用する場合、調整剤は、重合に使用されるモノマーの合計量に対して、70質量%以下の量で使用される。原則として、溶媒として使用される調整剤を、より多くの量で使用することも可能である。しかしながら、重合に使用されるモノマーの合計量に対して、70質量%を超える量で調整剤を使用することは、経済的でない。
【0064】
調整剤(重合調整剤)は、通常、高い伝達係数(transfer constants)を有する化合物を意味する。調整剤は、連鎖移動反応を加速し、そして従って、全体の反応速度に影響を及ぼすことなく、得られるポリマーの重合の程度を低下させる。調整剤について、1種以上の連鎖移動反応をもたらすことができる分子内の官能基の数に従い、単、二、又は多官能性調整剤の間で区別することができる。適切な調整剤は、例えば、K.C.Berger and G.Brandrup in J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,3rd ed.,John Wiley&Sons,New York.1989,p.II/81−II/141に詳細に記載されている。
【0065】
適切な調整剤は、例えば、アルデキド、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドである。
【0066】
更に、使用する調整剤は、ギ酸、これらの塩又はエステル、例えば、ギ酸アンモニウム、2,5−ジフェニル−1−ヘキセン、ヒドロキシアンモニウムサルフェート、及びヒドロキシアンモニウムフォスフェイトであっても良い。
【0067】
更なる適切な調整剤は、ハロゲン化合物、例えば、ハロゲン化アルキル、例えば、テトラクロロメタン、クロロホルム、ブロモトリクロロメタン、ブロモホルム、アリルブロミド、及びベンジル化合物、例えばベンジルクロリド又はベンジルブロミドである。
【0068】
調整剤として適切であり、そして溶媒としても作用する化合物は、単−及び多官能性アルコールである。例えば、これらは、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、C12〜C14の高級アルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、及びこれらに類似するものから個々に、又は組合せて、及びアルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びこれらに類似するもの;ヒドロキノンジエチルオールエーテル;エチレングリコール誘導体、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びこれらに類似するもの;脂肪族多価アルコール、例えば、ソルビトール、シクロヘキサンジオール、キシレイレンジオール、及びこれらに類似するもの;グリセロール、及び脂肪酸グリセリルエステルから成るこれらの単−又は2置換の誘導体、例えば、モノアセチン、モノラウリン、モノオレイン、モノパルミチン、モノステアリン及びこれらに類似するもの、及びグリセリルモノマー、例えば、チミルアルコール、グリセリルモノメチルエーテル、ブチルアルコール、及びこれらに類似するもの;トリメチロールプロパン、及びこれらの単−又は2置換の誘導体;ペンタエリチリトール及びこれらの誘導体、例えば、ペンタエリチリトールジオレート、及びペンタエリチリトールジステアレート;脂肪酸−ソルビタンエステル;モノサッカリドから成るサッカリド、例えば、エリチリトール、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルドース、グルコース、マノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、アピオース、ラムノース、プシコース、ソルボース、トガロース、リブロース、キシルロース、及びこれらに類似するもの、ジサッカリド、例えば、サッカロース、リアルロース、ラクトース、及びこれらに類似するものから個々に、又は組合せて選ばれても良い。
【0069】
付加重合反応性を有しないこれらのアルコールは、得られるポリマーの用途に従って選ばれる。例えば、ポリマーが、熱可塑性処方物又は熱可塑性ポリマーのための原料として使用される場合、好ましくは、単官能性アルコールが使用され、及びポリマーが、反応性樹脂又は熱硬化性のポリマーのための原料として使用される場合、多価アルコールを使用することが好ましい。更に、重合反応の過程で粘度が低い場合、反応系の均質性が高くなる。従って、重合活性を有しないアルコールは、低分子量であることが好ましい。例えば、分子量は、400以下であり、より好ましくは200未満である。
【0070】
更に適切な調整剤は、アリル化合物、例えば、アリルアルコール、官能化アリルアルコール、例えば、アリルエトキシレート、アルキルアリルエーテル又はグリセリルモノアリルエーテルである。
【0071】
調整剤以外の溶媒が使用される場合、使用する調整剤は、好ましくは、硫黄を結合状態で含む化合物である。しかしながら、硫黄含有調整剤は、本発明に従い使用されるモノマーと予備混合することができない。
【0072】
このタイプの化合物は、例えば、無機亜硫酸水素塩、ジスルフィット、及び亜ジチオン酸塩、又は有機硫化物、ジスルフィッド、ポリスルフィッド、スルホオキシド、及びスルホンである。これらは、ジ−n−ブチルスルフィッド、ジ−n−オクチルスルフィッド、ジフェニルスルフィッド、チオジグリコール、エチルチオエタノール、ジイソプロピルジスルフィッド、ジ−n−ブチルジスルフィッド、ジ−n−ヘキシルジスルフィッド、ジアセチルジスルフィッド、ジエタノールスルフィッド、ジ−t−ブチルトリスルフィッド、ジメチルスルホオキシド、ジアルキルスルフィッド、ジアルキルジスルフィッド、及び/又はジアリールスルフィッドである。
【0073】
適切な重合調整剤は、又、チオール(SH基の状態で硫黄を有する化合物、メルカプタンとも称される)でもある。好ましい調整剤は、単−、2−、及び多官能性のメルカプタン、メルカプトアルコール、及び/又はメルカプトカルボン酸である。これらの化合物の例は、アリルチオグリコレート、エチルチオグリコレート、システイン、2−メルカプトエタノール、1,3−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、1,4−メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオグリセロール、チオ酢酸、チオウレア、及びアルキルメルカプタン、例えばn−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、又はn−ドデシルメルカプタンである。
【0074】
2個の硫黄原子を結合状態で含む2官能性調整剤の例は、2官能性チオール、例えば、ジメルカプトプロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、ジメルカプトコハク酸、ジメルカプト−1−プロパノール、ジメルカプトエタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトペンタン、ジメルカプトヘキサン、エチレングリコールビス(チオグリコレート)及びブタンジオールビス(チオグリコレート)である。多官能性の調整剤の例は、2個を超える硫黄原始を結合状態で含む化合物である。これらの例は、3官能性及び/又は4官能性のメルカプタンである。
【0075】
より好ましくは、調整剤が溶媒として同時に使用される場合、アルコール及びハロゲン化アルキルが調整剤として使用さえる。
【0076】
上述した調整剤は、個々に、又は互いに組合せて使用することができる。
【0077】
調整剤は、その状態で、又は溶媒に溶解させて使用することができる。通常、調整剤は、これをより正確に計量可能にするために、適切な溶媒に溶解させて使用される。適切な溶媒は、後述する重合のために記載されたものである。
【0078】
開始剤(initiator)
有用な開始剤系は、原則として、エチレン性不飽和モノマーのラジカル重合のために公知である全ての開始剤である。これらは、通常、無機、又は有機ペルオキシド、アゾ開始剤、又はいわゆる酸化還元開始剤系である。開始剤の量は、重合するモノマーの合計量に対して、通常、0.1〜20質量%、特に0.2〜10質量%、及び更に特に0.5〜7質量%である。これらは、特に、重合温度で、適切な半減期(half-life)を有する熱開始剤である。
【0079】
適切な重合防止剤の例を以下に記載する:
−ペルオキシド化合物:これらは、例えば、有機ペルオキシド、及びヒドロペルオキシド、例えばアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシドブチレート、カプロイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−アセテート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシオクトエート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド;無機ペルオキシド、例えば、水素ペルオキシド、ペルオキソジスルフィックアシッド、及びこれらの塩、例えば、アンモニウム、ナトリウム、及びカリウムペルオキソサルフェート;
−アゾ化合物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN),2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオアミジン)、N−(3−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)プロピル)2−[1−(3−ヒドロキシ−1,1−ビス−(ヒドロキシメチル)プロピルカルバモイル)−1−メチルエチルアゾ]−2−メチルプロピオンアミド、及びN−(1−エチル−3−ヒドロキシプロピル)−2−[1−(1−エチル−3−ヒドロキシプロピルカルバモイル)−1−メチル−エチルアゾ]−2−メチルプロピオンアミド;2,2’−アゾビス(2−シアノ−2−ブタン)、ジメチル−2,2’−アゾビスジメチルイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルバニトリル)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1)−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ジドロキシエチル]プロピオンマミド、2,2’アゾビス[2−メチル−N−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)アンヒドレート、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、
−酸化還元開始剤:これは、酸化剤、例えば、ペルオキソジサルフリックアシッド、水素ペルオキシド、又は有機ペルオキシド、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシド、及び還元剤を含む開始剤系を意味すると理解される。還元剤として、これらは好ましくは、特にナトリウム水素サルファイト、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート、及びアセトンへの水素サルファイトアダクトから選ばれる硫黄化合物を含むことが好ましい。更なる好ましい還元剤は、窒素、及びリン化合物、例えば、ホスホラスアシッド、次亜リン酸塩、及びホスフィン酸塩、ジ−tert−ブチル次亜硝酸塩、及びジクミル次亜硝酸塩、及びヒドラジン、及びヒドラジンヒドレート、及びアスコルビン酸である。更に、酸化還元開始剤系は、少量の酸化還元金属塩、例えば鉄塩、バナジウム塩、銅塩、クロム塩、又はマンガン塩、例えばアスコルビン酸/鉄(II)スルフェート/ナトリウムペルオキソジサルフェート酸化還元開始剤系を含んでも良い。
【0080】
上述した開始剤は、如何なる組合せででも使用することができる。
【0081】
開始剤は、その状態で、又は溶媒に溶解させて使用することができる。適切な溶媒に溶解した開始剤を使用することが好ましい。適切な溶媒は、以下に重合のために記載されたものである。
【0082】
溶媒及び調整溶媒、又は調整剤として作用する溶媒
ポリマーは、水性媒体中で、有機溶媒中で、又は溶媒混合物中で、ラジカル溶液重合(free-radical solution polymerization)によって製造することができる。有機溶媒の例は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及びイソプロパノール、両性の非プロトン性の溶媒、例えば、N−アルキルラクタム、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン、及びジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジアルキルアミド、及び芳香族、脂肪族、及び脂環式炭化水素、例えば、アルキル芳香族化合物、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、又はキシレン(これらはハロゲン化されても良い)、及びこれらの混合物である。好ましい溶媒は、水、イソプロパノール、メタノール、トルエン、DMF及びNMP、及びこれらの混合物である。
【0083】
好ましい実施の形態では、反応は、水性重合媒体中で行われる。水生重合媒体は、水及び水と1種以上の有機、水混和性溶媒との混合物と理解される。有機、水混和性溶媒の割合は、水と有機溶媒の合計量に対して、代表例では、50体積%以下、特に20体積%以下、更に特に10体積%以下である。水混和性有機溶媒の例は、C−C−アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、環式エーテル、例えば、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン、及びアルキレンカーボネート、例えばエチレンカーボネート(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)及びプロピレンカーボネート(2−オキソ−1,3−ジオキサラン)である。好ましい水性重合媒体は、水である。
【0084】
好ましい実施の形態では、重合は、好ましくは、30℃〜180℃の範囲の温度、特に40℃〜150℃の範囲の温度、及びより好ましくは60℃〜110℃の範囲の温度で行われる。
【0085】
更なる好ましい実施の形態では、反応は、有機/水性重合媒体中で行われる。有機/水性重合媒体は、水と1種以上の有機、水混和性溶媒との混合物であると理解される。有機、水混和性溶媒の割合は、水と有機溶媒の合計量に対して、代表例では50体積%を超え、及び特に70体積%を超える。
【0086】
この好ましい実施の形態では、重合は、好ましくは50℃〜200℃の温度範囲、より好ましくは70℃〜180℃の温度範囲、及び特に90℃〜150℃の温度範囲で行われる。
【0087】
重合は、代表例では、大気圧下に行われ、しかし重合は、減圧下、昇圧下に行われることも可能である。適切な範囲は、0.5〜50バール、及び好ましくは、1〜25バールである。圧力範囲の下限は、通常、適切な操作又は反応温度における、特定の沸点によって定義される。
【0088】
重合のための反応領域の滞留時間は、好ましくは、5秒〜30分、より好ましくは10秒〜15分、及び特に1分〜10分の間である。
【0089】
反応混合物は、後処理に処する(処理する)ことができ、後処理は、例えば、後重合(postpolymerization)、脱臭、中和、異なる添加(additization)、及びこれらの組合せから選ばれる。この後の工程は、非連続的に、又は連続的に行うことができる。後重合、脱臭、中和、異なる添加を連続的に行うことが好ましい。
【0090】
残存するモノマー含有量が低い、極めて純粋なポリマーを得るために、重合(主要重合)の次に、後重合工程を行うことができる。後重合は、主要重合と同じ開始剤系、又は他の開始剤系の存在下に行うことができる。後重合を、主要重合に対して、少なくとも同一の温度で行うことが好ましく、より高い温度で行うことがより好ましい。
【0091】
本発明の更なる実施の形態では、少なくとも1種の添加剤が、反応排出物に加えられる。この添加剤は、例えば、混合器内で、反応排出物と混合される。添加剤は、個々の添加剤であっても、又は添加剤の混合物であっても良い。
【0092】
後処理のための、特に好ましい実施の形態では、少なくとも1種の添加剤が、微細構造を有する混合器を使用して、反応排出物と混合される。それぞれの添加剤は、この用途のための通常の如何なる添加剤であっても良く、又は、各場合において、この用途のために通常の添加剤の混合物であっても良い。これらは、例えば、pH調節物質、還元剤、及び漂白剤、例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸のアルカリ金属塩(例えば、BASF AktiengesellschaftからのRongallit(登録商標)C)、錯化剤、脱臭剤、フレイバリング、着臭剤、殺菌剤、防腐剤、及び粘度改質剤を含む。
【0093】
得られたアクリル酸のホモポリマーは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィー、水性媒体中のGPC(Size Exclusion Chromatography,SEC)に従う数平均分子量(M)が、1000〜20000ダルトンの範囲、好ましくは、1000〜10000ダルトンの範囲、及びより好ましくは、1000〜8000ダルトンの範囲で、質量平均モル質量(M)の数平均モル質量に対する割合は、多分散性D(=M/M)として定義して、2.5未満であり、好ましくは2.0未満である。
【0094】
アクリル酸と、例えば、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルホルムアルデヒド、又はビニルイミダゾールの、得られたコポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー、水性媒体中のGPC(Size Exclusion Chromatography,SEC)に従う数平均分子量(M)が、1000〜100000ダルトンの範囲、好ましくは、3000〜60000ダルトンの範囲で、質量平均モル質量(M)の数平均モル質量に対する割合は、多分散性D(=M/M)として定義して、10未満であり、好ましくは5未満である。
【0095】
有機溶媒がポリマーの製造に使用された場合、この技術分野の当業者にとって公知の方法、例えば減圧下の蒸留、又は蒸発によって除去することができる。
【0096】
得られた液体ポリマー組成物は、種々の乾燥法、例えばスプレー乾燥、流動スプレー乾燥、ローラー乾燥、又は冷凍乾燥によって粉に変換することができる。スプレー乾燥を使用することが好ましい。このように得られた乾燥ポリマー粉は、適切な溶媒に溶解させることによって、再度ポリマー溶液に変換されることが有利である。水性媒体に対して非溶解性のポリマーは、通常、(再)分散によって、水性分散物に変換できる。粉のコポリマー(共重合体)は、保管性が良好で、そして輸送が単純であり、そして通常、微生物が繁殖する傾向が低いという有利性を有している。
【0097】
連続的にポリマーを製造するための、本発明に従う装置は、
−液体出発材料のための、少なくとも3個の貯留容器(該出発材料は、少なくとも1種のモノマーを含む出発材料、少なくとも1種の開始剤を含む出発材料、及び重合調整剤を含む少なくとも1種の開始材料を含む材料を含む)、
−少なくとも3個の貯留容器からの液体流のそれぞれのための(一つの)供給部、
−液体流が供給され、及び反応混合物を得るために供給された液体流が混合される、順次連結された1個以上の混合器(ここで、流れ方向に見て、1つ以上の反応領域の入口の前の、少なくとも最後の混合器には、微細構造が設けられている、)、
−少なくとも1つの反応領域、及び
−1個以上の追加−及び/又は混合装置が任意に設けられた、排出装置、
を含む。
【0098】
本発明は、更に、本発明の装置を、ラジカル重合(free-radical polymerization)によってポリマーを連続的に製造するために使用する方法を提供する。
【0099】
適切な混合器は、従来技術から公知である。これらは、上述した条件に合致する限り、原則として、微細構造を有している、又は微細構造を有していない混合器であって良い。本発明において「通常の」混合器とも称される、微細構造を有していない混合器の適切なものは、液体を連続的に混合するのに適切で、及びこの技術分野の当業者にとって充分に公知である全ての混合器である。これらは、工程技術の要求に従って選択される。
【0100】
通常の混合器は、混合についての領域の特徴的な寸法において、微細構造を有している混合器とは異なる。本発明において、流れ装置(flow device)(例えば混合器)の特徴的寸法は、流れ方向に対して直角方向に最も小さいな寸法を意味すると理解される。マイクロミキサーの特徴的寸法は、通常の混合器のものよりも、相当に小さく(例えば、少なくとも10のファクター、又は少なくとも100のファクター、又は少なくとも1000のファクター小さい)、そして代表例では、マイクロメーター〜ミリメーターの範囲である。
【0101】
通常の混合器は、特徴的寸法が、混合についての領域で、10mmを超え、これに対して、微細構造を有する混合器は、最大で10mmである。本発明に従い使用される、微細構造を有する混合器の特徴的寸法は、好ましくは1μm〜10000μmの範囲、より好ましくは10μm〜5000μmの範囲、及び特に25μm〜4000μmの範囲である。ここで、最適の特徴的寸法は、混合の質と混合装置が閉塞する傾向に対する要求から生じる。微細構造を有する混合器は、マイクロミキサーとも称される。
【0102】
微細構造を有していない混合器の適切なものの例は、通常の動的混合器(dynamic mixer)、例えば、混合ポンプ及び流れが連続的な攪拌タンク、及びパイプラインに導入された混合装置、例えばバッフルプレート、オリフィスプレート、ジェットミキサー、T及びYピース、及び静的混合器(static mixer)である。
【0103】
適切なマイクロミキサーの例は:
I 静的混合器
1.層流拡散混合器
a)「カオス的層流」混合器、例えばT混合器、Y混合器又はサイクロン混合器、
b)多層流混合器又はインターデジタル混合器
2.対流のクロスミキシング(例えば、成形された混合チャンネル又は二次構造を有するチャンネル)を有する層流拡散混合器(laminar diffusion mixer)
3.分離−再結合混合器、例えばキャタピラー混合器
II 動的混合器、例えば混合ポンプ
III これらの組合せ;
これらは、当然、特徴的寸法の上述した条件を満たすものである。
【0104】
適切な実施の形態では、少なくとも1つの混合チャンネルを有する微細構造を有する混合器が使用される。微細構造中での混合は、層流(laminar)、層流−カオス又は乱流方式で行うことができる。
【0105】
本発明に従う、好ましいマイクロミキサーを以下に詳細に説明する。
【0106】
層流拡散混合器内では、マイクロ構造へ、多数の微視的な(厚さが10〜2000μm、特に20〜1000μm、及び更に特に40〜500μmの範囲の)小さな薄い流れの層へと扇動された流体の副流(substream)が、専ら(主要な流れ方向に対して直角方向の)分子拡散によって混合される。混合器は、専ら(混合器内の滞留時間の、個々の流れの層(flow lamellae)間の拡散時間に対する割合である)フーリエ数Fo=τ/τによって設計することができる。拡散時間Tは、
【0107】
【数1】

【0108】
(但し、
sが、流れの層の厚さの半分[m]
Dが、拡散係数[m/sec]
である)である。
【0109】
この割合は、混合器の出口で、流れの非常に良好な分子混合を得るために、1よりも大きく、好ましくは2よりも大きく、より好ましくは3よりも大きく、特に4よりも大きくなるように選ばれる。
【0110】
層流拡散混合器は、単純なT又はY混合器として構成することができ、又はいわゆる多数層混合器(multilamination mixer)として構成することができる。T又はY混合器の場合、2つ(又は他に、2つを超える)混合されるべき副流が、T−又はY−形状の配置構成を通って、個々のチャンネルに供給される。ここで、横方向の拡散路SDiffにとって重要なことは、チャンネル幅δである。100μm〜1mmの代表的なチャンネル幅は、液体のための通常の混合時間を数秒〜数分にする。本方法のように、液体が混合される場合、追加的に、例えば流れ−誘発横断混合(flow-induced transverse mixung)によって、混合操作を促進することが有利である。
【0111】
多層混合器、又はインターデジタル混合打器の場合、混合されるべき副流は、分配器内で、非常に多くの微細流スレッドに分配され、そして分配器の出口で、(層が交互して)混合領域に供給される。液体について、数秒間の範囲の混合時間が、通常の多層混合器を使用して達成される。ある用途(例えば、第1の反応の場合)の場合、これは不十分であるので、幾何学的又は流体力学的な手段によって、流れの層を再度集中させることによって、基礎原理が更に発展される。幾何学的な集中は、混合領域内のくびれ(constriction)によって達成される。流体力学的な集中は、主要流に向かって直角に流れ、従って流れの層を押し付ける、2つの側流(sidestream)によって達成される。上述した集中は、流れの層の横方向の寸法を達成されるべき数ミクロンにすることができ、従って、液体であっても10ミリ秒内に混合することができる。
【0112】
使用される、対流(convective)のクロスミキシングを有する層流拡散混合器は、構造化壁を有するマイクロミキサーであっても良い。構造化壁を有するマイクロ混合器の場合、二次構造(溝又は突起)が、チャンネル壁に配置される。これらは、好ましくは、主要な流れに対して、特定の角度(例えば約30°〜90°)で配置される。慣性力が支配的な条件の場合、結果として二次渦が形成され、これが混合工程をサポートする。
【0113】
更なる適切な実施の形態では、使用される微細構造を有する混合器は、分離−再結合混合器(split-recombine mixer)である。分解−再結合混合器は、流れの分離と結合の繰り返しから構成される(特徴的)段階を有している。未混合の液体流の2つの領域(通常これは、2つの同様な規模の層から出発するべきである)が、それぞれ1段階で相互に別々に取り出され、それぞれが2つの新しい領域に分けられ、そして再度結合される。4つの全部の領域が、相互に交互して配置され、オリジナルのジオメトリーが、再度構成される。これらの各段階では、層(lamella)の数は、段階ごとに二倍になり、そして層厚さと拡散路は半分になる。
【0114】
適切な分離−再結合混合器は、IMMからのキャタピラーミキサー及びBTS−Ehrfeldからのキャタピラーミキサーである。
【0115】
適切な動的混合器の例は、例えば、マイクロ−ミキシングポンプである。
【0116】
適切な静的マイクロミキサーの例は、特に以下の拡散混合器である:
−「カオス的−層」混合器、例えば、毛細管の直径が非常に小さく、混合個所で、100μm〜1500μmの範囲、及び好ましくは100μm〜800μmの範囲のT又はYピース、及びサイクロン混合器;
−多層混合器、例えばLH2及びLH25スプリットプレート混合器、又はEhrfeldからのより大きいタイプ、及びIMMからのインターデジタル混合器SIMM and Starlam(登録商標);
−付加された伸長流(expanded flow)を有する多層原理に従うマイクロミキサー、例えば、IMMからのSuper Focus Interdigital SFIMIM微細構造混合器。
【0117】
一実施の形態では、本発明の装置は、2つの反応領域を有する。
【0118】
好ましい一実施の形態では、本発明の装置は、反応領域の進路、又は反応領域の下流に配置された、液体流のための、少なくとも1個の更なる供給部を有する。
【0119】
より好ましくは、本発明の装置は、反応領域の下流に設けられ、そして流れ方向に、少なくとも1つの他の反応領域が続く、(液体モノマー流のための)少なくとも1つの更なる供給部を有する。
【0120】
この替わりに、又は追加的に、重合のための開始剤を含む更なる流れを、下流側反応領域に供給することも可能である。
【0121】
より特定的には、本発明の装置は、流れ方向に見て、最後の反応領域の下流側に設けられた、液体添加剤のための、少なくとも1個の更なる供給部を有する。
【0122】
より特定的には、供給された更なる液体流と(下流側に供給部が続く)反応領域からの排出物が、微細構造を有する混合器内に導入され、そしてその内部で混合される。
【0123】
本発明において、反応領域は、液体流の方向に見て、重合が進行する反応器の区域を意味すると理解される。反応領域は、反応器の一部に配置されても良く、反応器内の全体に配置されても良く、又は2個以上の反応器内に設けられても良い。好ましい実施の形態では、各反応領域が、個別の反応器内に設けられる。
【0124】
特に好ましくは、重合のために、少なくとも1つの微細構造化された反応領域を有する、少なくとも1個の反応器が使用される。微細構造化された反応領域を有する反応器は、以降、微細構造を有する反応器、微細構造化された反応器又はマイクロ反応器と称される。微細構造化された反応器は、流れ方向に横切る方向の熱的な均一性を確実にするのに適している。同時に、それぞれの微小体積要素が、原則として、特定の流れの断面において実質的に同じ温度を有する。流れの断面領域内での許容し得る温度差は、所望の生成物の特性に依存する。ある流れの断面内での最大の温度差は、好ましくは40℃未満、より好ましくは20℃未満、更により好ましくは10℃未満、及び特に5℃未満である。
【0125】
通常の反応器、及びマイクロ反応器は、その特徴的寸法及び特にその反応領域の特徴的寸法で異なる。本発明において、装置、例えば反応器の特徴的寸法は、流れ方向に対して直角方向に最も小さいな寸法を意味すると理解される。マイクロ反応器の反応領域の特徴的寸法は、通常の混合器のものよりも、相当に小さく(例えば、少なくとも10のファクター、又は少なくとも100のファクター、又は少なくとも1000のファクター小さい)、そして代表例では、数百ナノメーター〜数十ミリメーターの範囲である。これは、しばしば1μm〜30mmの範囲である。通常の反応器と比較して、従ってマイクロ反応器は、進行する熱と物質移動工程についての挙動(特異性)が大きく異なる。表面積の反応器体積に対する割合がより大きい結果、例えば、非常に良好な熱供給と除去が可能になる。このことは、吸熱性、又は発熱性の反応を実質的に等温的に行うことができる理由でもある。
【0126】
通常の反応器は、特徴的寸法が>30mmで、これに対してマイクロ反応器は≦30mmである。通常、微細構造を有する反応器の反応領域の特徴的寸法は、最大で30mm、例えば0.1〜30mm、又は好ましくは0.2〜30mm、又はより好ましくは0.4〜30mmであり;好ましくは最大で20mm、例えば0.1〜20mm、好ましくは0.2〜20mm、又はより好ましくは0.4〜20mmであり;より好ましくは最大で15mm、例えば0.1〜15mm、又は好ましくは0.2〜15mm、又はより好ましくは0.4〜15mmであり;更により好ましくは最大で10mm、例えば0.1〜10mm、又は好ましくは0.2〜10mm、又はより好ましくは0.4〜10mmであり;更により好ましくは最大で8mm、例えば0.1〜8mm、又は好ましくは0.2〜8mm、又はより好ましくは0.4〜8mmであり;特に、最大で6mm、例えば0.1〜6mm、又は好ましくは0.2〜6mm、又はより好ましくは0.4〜6mmであり;更に特に、最大で4mm、例えば0.1〜4mm、又は好ましくは0.2〜4mm、又はより好ましくは0.4〜4mmであり、及び更に特に0.4〜3mmである。
【0127】
本発明に従って使用するためのマイクロ反応器は、好ましくは、温度制御性管型反応器、管束熱交換器、プレート熱交換器、及び内部構造を有する温度制御性管型反応器から選ばれる。特徴的寸法として、これらは管、又は毛細管の直径を、好ましくは0.1mm〜25mmの範囲、より好ましくは0.5mm〜6mmの範囲、更に好ましくは0.7〜4mmの範囲、及び特に0.8mm〜3mmの範囲に有し、層高さ又はチャンネル幅が、好ましくは0.2mm〜10mm、より好ましくは0.2mm〜6mm、及び特に0.2〜4mmの範囲である。本発明に従い使用するための、内部構造を有する管型反応器は、管の径が、5mm〜500mmの範囲、好ましくは8mm〜200mmの範囲、及びより好ましくは10mm〜100mmの範囲である。この替わりに、本発明に従い、混合構造がはめ込まれた平坦なチャンネルに相等する板状装置(plate apparatus)を使用することも可能である。これらは、高さが1mm〜20mmの範囲、及び幅が10mm〜1000mmの範囲、及び特に10mm〜500mmの範囲である。任意に、管型反応器は、温度制御チャンネルが形成された混合要素(例えば、Fluitec,SwitzerlandからのCSE−XR(登録商標)type)を含んでも良い。
【0128】
ここで、最適な特徴的寸法は、反応の許容される非等温性、許容し得る最大の圧力降下、及び反応器が閉塞する傾向に対する要求から設定される。
【0129】
特に好ましいマイクロ反応器は:
−毛細管(capillary)、毛細管の束から成る管型反応器で、管の断面が0.1〜25mm、好ましくは0.5〜6mm、より好ましくは0.7〜4mmで、任意に追加的な混合内部構造を有するもの(温度制御媒体が管又は毛細管の周囲を流れていても良い);
−管型反応器であって、熱媒体が毛細管/管に導入され、及びその温度が制御される生成物が、管の回りに導入され、そして内部構造(混合要素、例えばFluitec,SwitzerlandからのCSE−SX(登録商標)type)によって均一化されるもの;
−プレート反応器であって、プレート熱交換器のように、絶縁された平行なチャンネル、チャンネルのネットワーク又は(流が途絶える内部(個所)のない)領域、生成物と熱媒体を平行に、又は(熱媒体そうと生成物層が交互する)層構造に導き、反応の間化学的及び熱的な均一性が確保されるプレートで構成されたもの;
−「平坦な」チャンネル構造を有する反応器であって、高さにおいてのみ「マイクロ寸法」を有し、そして実質的に可能な限り広く、その典型的なクシ型の内部構造が流れのプロフィールの形成を防止し、そして滞留時間の分布が狭くされる(このことは規定の反応と滞留時間にとって重要である)、反応器、
である。
【0130】
本発明の好ましい実施の形態では、栓流(plug flow)の滞留時間特性を有する少なくとも1個の反応器が使用される。管型反応器内に栓流が存在する場合、反応混合物の状態(例えば、温度、組成、等)は、流れ方向に変動して良く、しかし流れの方向に対して直角な個々の断面では、反応混合物の状態が同一である。管に入る全ての体積要素は、従って反応器内で同一の滞留時間を有する。例えて説明すれば、液体流は、あたかも管を通って容易にスライドする栓の並びであるかのように、管を流れる。更に、流れ方向に対して直角方向への物質移動が強められた結果、交差混合(cross mixing)が、流れの方向に対して直角方向の濃度交配を補償することができる。
【0131】
通常の層が、微細構造を有する装置を流れるにも拘らず、逆混合(backmixing)を防止することができ、そして滞留時間の狭い分布が(理想的な流管の場合と類似して)達成可能になる。
【0132】
ボーデンスタイン数は、無次元パラメーターであり、そして対流(convection flow)の分散流(dispersion flow)に対する割合を記載するものである(例えば、M.Baerns,H.Hofmann,A.Renken,Chemishe Reaktionstechnik[Chemical Reaction Technology],Lehrbuch der Technischen Chemie[Textbook of Industrial Chemistry],volume 1,2nd edition,p332ff)。従って、これは、系内の逆混合(バックミキシング)を特徴付ける。
【0133】
【数2】

【0134】
但し、
uが、流速[ms−1
Lが、反応器の長さ[m]
axが、軸方向分散の係数[m−1
【0135】
0のボーデンスタイン数は、理想的な連続攪拌槽内の完全な逆混合を意味する。これに対して、無限に大きいボーデンスタイン数は、理想的な流管を通る連続的な流れの場合のように、逆混合が完全に無いことを意味する。
【0136】
毛細管反応器(capillary reactor)では、物質パラメーターと流れ状態の関数として、長さの直径に対する割合を調整することにより、所望の逆混合挙動(特性)が形成される。基礎をなす計算方法が、この技術分野の当業者にとって公知である(例えば、M.Baers,H.Hofmann,A.Renken:Chemische Reaktionstechnik,Lehrbuch der Technischen Chemie,Volume1,2nd edition,p.339ff )。逆混合を非常に少なくする場合、上述したボーデンスタイン数は、好ましくは10を超え、より好ましくは20を超え、及び特に50を超える。100を超えるボデンスタイン数では、毛細管反応器は、実質的に栓流特性を有する。
【0137】
本発明に従い使用するための混合器と反応器のための有利な材料は、低温領域で耐腐食性のオーステナイト系のステンレス鋼、例えばそれぞれV4A及びV2Aとして公知の1.4541又は1.4571、及びUSタイプSS316及びSS317Tiであることがわかった。より高い温度と腐食条件下では、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン:耐高温熱可組成材料)が、同様に適切である。しかしながら、より強い耐腐食性Hastelloy(登録商標)タイプ、ガラス又はセラミックを、材料及び/又は対応する被覆物、例えばTiM、Ni−PTFE、Ni−PFA又はこれらに類似するものを、本発明に従い使用される混合器及び反応器のために使用することもできる。
【0138】
熱伝達の高い係数、及び表面積の反応体積に対する高い割合のために、熱伝達は、反応媒体中の温度の温度制御媒体の温度に対する偏差が40℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、及び特に5℃未満になるように選ばれる。従って、反応は、実質的に等温的に、及び従って、規定され、制御された条件下で進行することができる。このことを達成するために、重合反応の発熱性及び特徴的な反応時間に従い、熱交換面積の反応体積に対する割合は、250m/mを超える、好ましくは500m/mを超える、より好ましくは1000m/mを超える、及び特に2000m/mを超えるように選ばれるべきである。同時に、反応媒体の側の熱伝達の係数は、50W/mKを超え、好ましくは100W/mKを超え、より好ましくは200W/mKを超え、及び特に400W/mKを超える。
【0139】
体積特定熱伝達面積と熱伝達係数の積を決定するために、以下の関係式を使用することができる:
【0140】
【数3】

【0141】
但し、
αが、熱伝達係数の係数[W/mK]であり、
A/Vが、体積特定熱伝達面積[m/m]であり、
ΔHが、反応エンタルピー[J/kg]であり、
ΔTが、反応媒体中の許容し得る最大の温度偏差[K]であり、
ρが、反応混合物中のモノマーの部分濃度(partial density)[kg/m]であり、及び
Δtが、特徴的反応時間[s]である。
【0142】
反応領域についての、これによる熱伝達係数と体積特定熱伝達面積の積は、好ましくは12500WmKを超え、より好ましくは50000WmKを超え、更により好ましくは200000WmKを超え、及び特に800000WmKを超える。
【0143】
本発明の装置は、図1を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。この目的のために、図1において、以下の符号が使用される。
1 貯留容器
2 フィルター(任意)
3 任意に微細構造を有する混合器
4 貯留器
5 フィルター(任意)
6 貯留容器
7 フィルター(任意)
8 微細構造を有する混合器
9 温度制御可能な微細構造化された反応器
10 任意に微細構造を有し、及び温度制御可能な、混合器
11 任意に微細構造を有し、及び温度制御可能な、反応器
12 攪拌装置を有し温度制御可能な、排出容器
【0144】
本装置は、出発混合物を含む2個の貯留容器1、及び更なる出発材料のための更なる貯留容器6を含む。貯留容器1と4は、それぞれ第1の混合器3に、運搬装置及びフィルター2及び5(それぞれ任意)を介して連結されている。混合器3は、任意に微細構造(microstructure)を有していても良い。第1の混合器3の下流側には、第2の混合器8が続いている。貯留容器6が、同様に第2の混合器8に、運搬装置を有する供給部とフィルター7(任意)を介して連結されている。混合器3及び8は、任意に連結され、(微細構造が設けられた)一つの混合単位を形成していても良い。微細構造化された混合器8には、その下流側に、温度制御可能な反応器9(反応器9には、微細構造を有する反応領域が設けられている)が続いている。反応器9には、その下流側に第3の混合器10が続いており、第3の混合器10には、反応器11が続いていても良い。混合器10と反応器11の反応領域の両方は、温度制御可能で、そして任意に微細構造を有していて良い。装置の出口端には、温度制御可能な排出容器12が存在する。排出容器12には、更なる供給部、攪拌装置、及び出口が設けられている。
【0145】
本発明に従う方法も、同様に、図1に従って説明することができる(該説明は、本発明を限定するものではない)。この目的のために、流れについて、以下の符号が追加的に使用される。
A モノマー溶媒混合物
B 開始剤−溶媒混合物
C 調整剤
D 反応混合物
E 添加剤及び/又は更なる開始剤溶液
F 更なる添加剤
G 生成物
【0146】
モノマー−溶媒混合物Aは、通常の計量及び調整装置を使用して、貯留容器1からフィルター2(任意)を通って混合器3に供給される。混合物3は、任意に微細構造を有する混合器として構成されていても良い。同様に、開始剤−溶媒混合物Bは、通常の計量及び調整装置を使用して、及びフィルター5(任意)を通って、貯留容器4から混合器3に供給される。混合器3内では、2つの液体流が反応温度で混合される。
【0147】
混合器3から得られた混合物(A+B)は、混合器8に導入される。調整剤Cが、同様に、貯留器6から、通常の計量及び調整装置を使用して、及びフィルター7(任意)を通って、混合器8に導入される。混合器8は、微細構造を有する混合器として構成されている。2つの流れが、反応温度で混合器8内で混合され、反応混合物Dが得られる。
【0148】
この2つの混合操作は、この替わりに、1つの混合装置(3+8)内で一緒に行うこともできる。
【0149】
混合器3及び8、又は混合装置(3+8)の下流側には、微細構造化された反応器9(反応器9の温度は制御可能であり、そして実質的に一定の温度で、すなわち実質的に等温的に操作される)が続いている。
【0150】
任意に、添加剤、更なる開始剤溶液、等(E)を加えるために、第3の温度制御可能な混合器10を、反応器9の下流に連結することもできる。混合器10は、任意に、微細構造を有する混合器として構成されても良い。
【0151】
同様に、更なる温度制御可能な反応器11を、第3の混合器10の下流側に連結することもできる。この反応器11は、同様に、任意に微細構造化された反応器として構成されていても良い。
【0152】
次に、生成物は、(任意に攪拌装置が設けられた)温度制御可能な排出容器12内を通される。ここで、更なる添加剤、等(F)を計量導入することもできる。これは、排出容器から、生成物Gとして取り出すことができる。
【0153】
本発明に従う方法によって、又は本発明の装置を使用して得られるポリマーは、洗浄組成物、食器洗い器の洗剤、工業的洗剤に使用するのに、顔料の分散に、水処理に、及びオイル分野の化学製品として有利であり、適切である。
【0154】
本発明に従う方法によって、又は本発明の装置を使用して得られるポリマーは、顔料の分散剤としても適切である。この目的のために、無機顔料、例えばカルシウムカーボネイト、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を使用することが好ましい。粉末カルシウムカーボネイト(GCC)が特に好ましい。この目的は、上述した顔料の水性懸濁物(いわゆる顔料スラリー)を製造することである。顔料、特に無機顔料を分散するために、アニオン性のポリマーを分散剤として使用することが好ましい。これらは、特に、ポリアクリル酸及びこれらの塩に基づくポリマーを含む。
【0155】
本発明の方法に従い、又は本発明の装置を使用して得られるポリマーは、固体含有量が少なくとも70%のカルシウムカーボネイトスラリーを製造(調製)するのに特に適切である。これらのカルシウムカーボネイトスラリー内では、好ましくは95%の粒子が、2μm未満の粒径を有し、及び75%の粒子が1μm未満の粒径を有する。本発明の方法に従い、又は本発明の装置を使用して得られるポリマーを分散財として使用する結果、分散、及び/又は粉化工程が、特にエネルギー的に効率的に行なわれ、そして顔料の均一な径分布を達成することができる。更に、粉化時間を短くすることができ、そして得られた懸濁物(懸濁液)は粘度が低い。適切な分散剤を使用する結果、顔料スラリーは、長期間にわたって安定に維持され、すなわち、粘度の時間に伴う上昇が極めて低い。
【0156】
本発明の長所
モノマー、開始剤、及び調整剤が、(これらを反応領域に一緒に供給するために)1つの初期チャージ(初期投入)に混合された場合、この混合物は、室温であっても保管が安定的でなく、反応を開始する。このような反応混合物は反応領域に直ちに輸送される。この替わりに、適切な高い分解温度を有するモノマーと開始剤を、環境温度で所定の期間、一緒に保存し、そして調整剤を、反応を開始させる直前にのみ混合することもできる。これとは対象的に、開始剤と調製剤は、通常、事前混合(予備混合)することができない。この理由は、これらは所定の環境下に、酸化還元対(redox pair)を形成し、そして早期に分解する(遊離基形成)傾向を有し、重合の所望の活性を不活性にまで低下させるからである。
【0157】
有利なことに、本発明に従う方法では、比較的低い温度で、連続的なラジカル重合(フリーラジカル重合)を行うことができる。
【0158】
本発明の、反応物質の冷間状態(cold-state)での混合は、従来技術に対して、混合と反応の開始が、互いに完全に分離されるという有利性を有している。従って、規定に従う反応の開始と(温度制御された、すなわち、本発明に従い等温的に行われる)反応の進行の組合せが可能になり、これにより、より狭いモル質量分布が得られる。
【0159】
追加的に、本発明に従う方法は、比較的低い温度で、及び比較的短い滞留時間で重合を行うことを可能にする。
【0160】
モノマーをより良好に完了させるために、更なる開始剤、更なる開始剤を計量導入するか、又は塩基を加えて酸を(部分的に)中和することが有利であることがわかった。通常、中和は、反応を加速することができる。
【0161】
本発明に従い得られるポリマーは、(半)非連続的なモードで製造されたポリマーよりも、狭いモル質量分布M/Mを有している。
【0162】
低温度の結果、影響され易い(sensitive)微細構造と材料が腐食される危険性が極めて低くなる。
【0163】
出発材料の混合が実質的に環境の温度で行なわれるので、本方法は、追加的に、エネルギー的に極めて効率的である。
【0164】
特定のコポリマーを製造する場合、本方法は、得られる共重合パラメーターの反応性比に従い、均一であるか、又は反応の過程にわたって変化するポリマー組成をもたらす。これは、適切な成分を更に制御して計量導入することによって少なくとも部分的に補償することができる。
【0165】
以下に実施例を使用して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0166】
実施例
方法実施例1:
マイクロミキサーを使用し、アクリル酸水溶液(50質量%)をナトリウムペルサルフェート水溶液(2質量%)と、室温で均一に混合し、そして次に第2のマイクロミキサーを使用し、2−メルカプトエタノル(10質量%)と均一に混合した。各場合において、得られた反応溶液をポンプ輸送し、予備過加熱された反応毛細管に通した。反応毛細管の温度は、一定の流速の油槽内で、制御されており、反応毛細管は、表1に示す、異なる温度、材料、直径、及び長さを有していた(全て、Bischoffからのlaboratory HPLC pumsを使用して供給)。
【0167】
実施例4では、これらからの出発で、7質量%のナトリウムペルサルフェイト水溶液、及び50質量%の2−メルカプトエタノール水溶液が使用された。
【0168】
実施例5では、これらからの出発で、3質量%の2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド水溶液(例えば、Wako Specialty Chemicals,JPからのVA044 nameで入手可能)、及び20質量%の2−メルカプトエタノール水溶液が使用された。
【0169】
【表1】

2):モノマーに対する質量%
*):長方形の断面
【0170】
本発明に従う手順での方法実施例1によって製造された、実施例1〜5のポリアクリル酸の分析データを表2に示す。
【0171】
【表2】

【0172】
方法実施例2:
アクリル酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の水溶液(35:15質量%)をマイクロミキサーに連続的に供給し、そしてナトリウムペルサルフェイト水溶液(4質量%)と均一に混合し、そして次に室温で、ナトリウム次亜リン酸塩(10質量%)と、第2のマイクロミキサー内で混合した。得られた反応溶液を、規定された流速で、連続的にポンプ輸送し、反応毛細管に通した。反応毛細管の温度は、一定の流速の油槽内で、制御されており、反応毛細管は、表3に示す、異なる温度、材料、直径、及び長さを有していた。
【0173】
【表3】

1)x+yは次のことを意味する:第1の毛細管で、内径がxmm又は長さがxmであり、そして直接的に連結された第2の毛細管で、内径がymm、又は長さがymである。
2):モノマーに対する質量%
【0174】
本発明に従う方法実施例2によって製造された実施例1と2のコポリマーの分析データを表4に示す。
【0175】
【表4】

【0176】
使用例:
カルシウムカーボネイトの粉化
この目的は、水中のカルシウムカーボネイトの高度に濃縮された(粒径が最小であり、長期に亘って最小の粘度を有する)スラリーを製造することにある。
【0177】
使用した装置:
Dispermat AE(VMA Getzmannから)、DMS 70 double grinding disk、酸化ジルコニウムビーズ、温度制御可能なジャケット付容器(容量1リットル)、直径が約1mmのガラスビーズ;
粒径は、Horiba LA 920で測定;
粘度は、Brookfield DS viscometerで測定
【0178】
粉化の手順:
300gのカルシウムカーボネイト粉(平均粒径10μm)を、711gのガラスビーズと混合し、(乾燥)そして粉化ディスク(grinding disk)を有するジャケット付容器(二重壁容器)に導入した。次に、試験対象のポリマーの水溶液(約45ml)を加え、そして低速で均一に混合した。ポリマー(固体)の濃度が、カルシウムカーボネイト(固体)に対して1.0質量%になるように、ポリマーの量を計算した。材料が均一になった場合、速度を4000rpmに増し、そして粉化を110分間行った。この時間の間、良好な混合と自由流れを確保するために、約100mlの水を段階的に加える必要があった。試験の間、粉化材料の摩擦による加熱を低減するために、冷却水を5℃で、ジャケット付容器を流した。粉化(grinding)が終了した後、780マイクロメーターフィルターファブリックを使用して、ガラスビーズを除去し、そして形成されたスラリーを集めた。試験対象のスラリーを、(水を加えることにより、又は水を蒸発させることにより)73.0%の均一な固体含有量に調節した。濃度が設定された後、サンプルを一晩保管し、平衡にした。次の日、これらを、Ultraturrax stirrer(12000rpm)を使用して、1分間攪拌した。これが、粘度測定の開始点である。直後に、1時間後に、24時間後に、及び1週間後に、スラリーの粘度を測定した。粒径を、光散乱を使用して測定した。
【0179】
標準ポリマー1及び2は、アクリル酸のホモポリマーであり、そして通常の、半非連続工程(semibatchwise process)で製造した。
【0180】
試験した全てのポリマーは、ナトリウム塩の水溶液として、完全に中和した状態(pH=8)であった。
【0181】
【表5】

【0182】
【表6】

【0183】
実施例は、本発明のポリマーが使用された場合、最も小さい粒径と最も低い粘度が達成されることを示している。
【符号の説明】
【0184】
1 貯留容器
2 フィルター(任意)
3 任意に微細構造を有する混合器
4 貯留器
5 フィルター(任意)
6 貯留容器
7 フィルター(任意)
8 微細構造を有する混合器
9 温度制御可能な微細構造化された反応器
10 任意に微細構造を有し、及び温度制御可能な、混合器
11 任意に微細構造を有し、及び温度制御可能な、反応器
12 攪拌装置を有し温度制御可能な、排出容器
A モノマー溶媒混合物
B 開始剤−溶媒混合物
C 調整剤
D 反応混合物
E 添加剤及び/又は更なる開始剤溶液
F 更なる添加剤
G 生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合によってポリマーを連続的に製造する方法であって、以下の工程:
(a)それぞれが、1種以上の以下の成分:
ラジカル重合可能なモノマー
調整剤として作用する溶媒、及びこれとは異なる調整剤から選ばれる調整剤、及び
開始剤、
を、開始剤を含む流れは調整剤を含まないという条件で含む、少なくとも2種の液体流を供給する工程、
(b)微細構造を有する混合器を少なくとも1個使用して、前記少なくとも2種の液体流を混合し、反応混合物を得る工程、
(c)工程(b)で得られた反応混合物を、少なくとも1つの反応領域でラジカル重合させる工程、
を含む、ラジカル重合によってポリマーを連続的に製造する方法。
【請求項2】
工程(a)に、以下の流れ
(1)少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含む少なくとも1種の液体流、
(2)少なくとも1種の開始剤を含む少なくとも1種の液体流、
(3)少なくとも1種の調整剤を含む少なくとも1種の液体流、
が供給されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)のラジカル重合が、少なくとも1つの、微細構造化された反応領域を使用して行われることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
工程(b)で、液体流が、次の重合の反応温度よりも少なくとも10℃低い温度で混合されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)で、液体流が、微細構造を有する混合器内で、1段階で混合されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)で、液体流が、1段階以上の段階で混合され、流れ方向に見て、1つ以上の反応領域に入る前の、少なくとも最後の混合器が、微細構造を有する混合器であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの反応領域で、熱伝達係数と体積特定伝熱面積の積が、12500WmKを超え、好ましくは50000WmKを超え、より好ましくは200000WmKを超え、及び特に800000WmKを超えることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)での重合が、1段階で行われることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)での重合が、2段階以上の工程で行われることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの追加的な流れが、少なくとも2段階の重合段階の間に供給されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
追加的な1つ以上の流れが、微細構造を有する混合器を使用して混合されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
混合機能を有する少なくとも1個の反応器が、追加的な1つ以上の流れを混合するために、及び更なる反応のために使用されることを特徴とする請求項10又は11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
反応排出物が後重合、臭気除去、中和、これらとは異なる添加剤の添加処理、及びこれらの組合せから選ばれる後処理に処理さることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の添加剤が反応排出物に加えられることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
後処理が、少なくとも1種の添加剤と反応排出物を、微細構造を有する混合器を使用して混合することによって行われることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
反応混合物が、ラジカル溶液−又はバルク重合されることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
重合が、モノマーとしてモノエチレン性不飽和のカルボン酸又はスルホン酸を使用して、又は少なくとも1種のモノエチレン性不飽和のカルボン酸又はスルホン酸を含むモノマー混合物を使用して行なわれることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
−液体出発材料のための、少なくとも2個の貯留容器、
−少なくとも2個の貯留容器からの液体流のそれぞれのための供給部、
−液体流が供給され、及び反応混合物を得るために供給された液体流が混合される、順次連結された1個以上の混合器、
−少なくとも1つの微細構造化された反応領域、及び
−1個以上の追加−及び/又は混合装置が任意に設けられた、排出装置、
を含み、流れ方向に見て、1つ以上の反応領域の入口の前の、少なくとも最後の混合器には、微細構造が設けられている、ことを特徴とする連続的にポリマーを製造するための装置。
【請求項19】
−液体出発材料のための、少なくとも3個の貯留容器
−少なくとも3個の貯留容器からの液体流のそれぞれのための供給部、
−液体流が供給され、及び反応混合物を得るために供給された液体流が混合される、順次連結された1個以上の混合器、
−少なくとも1つの反応領域、及び
−1個以上の追加−及び/又は混合装置が任意に設けられた、排出装置、
を含み、流れ方向に見て、1つ以上の反応領域の入口の前の、少なくとも最後の混合器には、微細構造が設けられていることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つの、微細構造化された反応領域が使用されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
2つの反応領域を含む請求項18〜20の何れか1項に記載の装置。
【請求項22】
反応領域の経路又は反応領域の下流側に設けられた、液体流のための、少なくとも1個の更なる供給部を有することを特徴とする請求項18〜21の何れか1項に記載の装置。
【請求項23】
反応領域の下流側に設けられた、液体モノマー流のための、少なくとも1個の更なる供給部を有し、及び流れの方向に、少なくとも1つの更なる反応領域が、前記更なる供給部から続いていることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
流れ方向に見て、最後の反応領域の下流側に設けられた、液体添加剤流のための、少なくとも1個の更なる供給部を有することを特徴とする請求項22又は23の何れかに記載の装置。
【請求項25】
供給された更なる液体流と、供給部が接続された反応領域からの排出物が、微細構造を有する混合器に供給され、そして該混合器内で混合されることを特徴とする請求項23又は24の何れかに記載の装置。
【請求項26】
ラジカル重合によって、ポリマーを連続的に製造するために、請求項18〜25の何れか1項に記載の装置を使用する方法。
【請求項27】
請求項1〜17の何れか1項に記載の方法によって得られたポリマー、又は請求項18〜25の何れか1項に記載の装置内で得られたポリマーを、顔料の分散剤として、洗浄−又は浄化剤化合物の成分として、水処理に、又は鉱物油のプロダクションの添加剤として使用する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−519990(P2011−519990A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506730(P2011−506730)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055296
【国際公開番号】WO2009/133186
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】