説明

ラジカル重合性組成物、硬化物及びプラスチックレンズ

【課題】塗工に適した低粘度を有し、かつ、その硬化物が高屈折率を示し、プラスチックフィルム基材に対して高い付着性を発現し、高温高湿条件下であっても高い付着性を維持するラジカル重合性組成物、該組成物を硬化させてなる硬化物及びプラスチックレンズを提供すること。
【解決手段】フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)と、分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)と、ラジカル重合開始剤(Y)とを必須の成分として含有し、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)が、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレートと、パラフェニルベンジル(メタ)アクリレートとを、これらのモル比[〔オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕/〔パラフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕]が55/45〜10/90の範囲となるように含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジカル重合性組成物、該組成物を硬化させて得られる硬化物及び、該組成物を硬化させて得られるプラスチックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プリズムレンズ等各種のプラスチックレンズは、金型に樹脂材料を流し込んだ上に透明プラスチック基材を重ね、加熱又は活性エネルギー線の照射により樹脂材料を硬化させる方法などにより製造される。従って、プラスチックレンズの製造に用いられる樹脂材料には、硬化物の屈折率が高いことや透明度に優れることなどの光学特性はもとより、樹脂材料が金型の細部にまで行渡り、型を忠実に再現できるよう無溶剤であっても低粘度であることや、透明プラスチック基材との付着性に優れることなどの性能も要求されている。
【0003】
プラスチックレンズ用途に用いられる樹脂材料の中でも、フルオレン骨格を有する化合物は、高屈折率を示す硬化物が得られることから注目されてきたが、反面、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチックフィルム基材に対する付着性が悪いため、他の化合物と混合して用いる必要があった。
【0004】
フルオレン骨格を有する化合物を用いてポリエチレンテレフタレートフィルムへの付着性を向上させた技術としては、例えば、フルオレン骨格を有するジアクリレート化合物と、オルトフェニルフェノキシエチルアクリレートとを含有するプラスチックレンズ用樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このような樹脂組成物を用いてなるプラスチックレンズは、製造直後の基材付着性は良好であるものの、経時的に基材付着性が低下してしまうものであり、保存安定性に劣るものであった。特に、船便での輸送時など、高温高湿環境下で保存された場合には、その付着性の低下は著しく、基材からの浮きや剥がれが生じてしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−94987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明が解決する課題は、塗工に適した低粘度を有し、かつ、その硬化物が高屈折率を示し、プラスチックフィルム基材に対して高い付着性を発現し、高温高湿条件下であっても高い付着性を維持するラジカル重合性組成物、該組成物を硬化させてなる硬化物及びプラスチックレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)と、分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)と、ラジカル重合開始剤(Y)とを必須の成分として含有することを特徴とするラジカル重合性組成物が、無溶剤系であっても塗工に適した低い粘度を有し、かつ、その硬化物が高屈折率を示し、プラスチックフィルム基材に対して長期に渡り高い付着性を発現し、高温高湿条件下であっても高い付着性を維持することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)と、分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)と、ラジカル重合開始剤(Y)とを必須の成分として含有し、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)が、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレートと、パラフェニルベンジル(メタ)アクリレートとを、これらのモル比[〔オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕/〔パラフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕]が55/45〜10/90の範囲となるように含有することを特徴とするラジカル重合性組成物に関する。
【0009】
本発明は、更に、前記ラジカル重合性組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。
【0010】
本発明は、更に、前記ラジカル重合性組成物からなるプラスチックレンズに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無溶剤であっても塗工に適した低い粘度を有し、かつ、その硬化物が高屈折率を示し、プラスチックフィルム基材に対して長期に渡り高い付着性を発現し、高温高湿条件下であっても高い付着性を維持するラジカル重合性組成物、該組成物を硬化させてなる硬化物及びプラスチックレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は製造例1で得られたオルトフェニルベンジルアクリレートのH−NMRスペクトルである。
【図2】図2は製造例2で得られたメタフェニルベンジルアクリレートのH−NMRである。
【図3】図3は製造例3で得られたパラフェニルベンジルアクリレートのH−NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のラジカル重合組成物は、フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)を必須の成分として含有することにより、その硬化物が高い屈折率を示すものとなる。
【0014】
前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)は、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート、メタフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びパラフェニルベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明のフェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)は、これらの化合物をそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。このうち、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びメタフェニルベンジル(メタ)アクリレートは、25℃での液体の屈折率が1.57以上であり、かつ、粘度が30mPa・s以下であり、比較的高屈折率でありながら、低粘度を示す点で好ましい。また、パラフェニルベンジルアクリレートは、常温で固体であるが、40℃での液体の屈折率が1.59以上と非常に高い値を示す点で好ましい。
【0015】
中でも、組成物の低粘度性と、硬化物の高屈折率性とを高いレベルで兼備できることから、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート、メタフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びパラフェニルベンジル(メタ)アクリレートを併用することが好ましい。その際の配合比は、低粘度でありながら、硬化物における屈折率の高いラジカル重合性組成物が得られることから、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びメタフェニルベンジル(メタ)アクリレートと、パラフェニルベンジル(メタ)アクリレートとのモル比[{〔オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕+〔メタフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕}/〔パラフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕]が55/45〜10/90の範囲となるように用いることが好ましい。
【0016】
更に、これらの中でも、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート及びパラフェニルベンジル(メタ)アクリレートは、より製造が簡便であるため、これらを併用することが好ましい。その際の配合比は、低粘度でありながら、硬化物における屈折率の高いラジカル重合性組成物が得られることから、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレートと、パラフェニルベンジル(メタ)アクリレートとのモル比[〔オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕/〔パラフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕]が、55/45〜10/90の範囲であることが好ましい。
【0017】
前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)の製造方法は、例えば、ビフェニルメタノールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法や、クロロメチルビフェニル、ブロモメチルビフェニルのようなハロゲン化メチルビフェニルと、(メタ)アクリル酸のカリウム、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩とを反応させる方法などが挙げられる。
【0018】
本発明のラジカル重合性組成物は、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)に加え、分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)を含有することにより、プラスチックフィルム基材に対して長期に渡り高い付着性を発現し、高温高湿条件下であっても高い付着性を維持する塗膜が得られることから好ましい。
【0019】
前記エポキシ(メタ)アクリレート(X)は、その分子構造中に芳香環骨格を有することにより、屈折率の高い化合物となる。該エポキシ(メタ)アクリレート(X)の具体的な屈折率は、25℃条件下での屈折率が1.50以上であることが好ましい。
【0020】
前記エポキシ(メタ)アクリレート(X)は、例えば、分子構造中に芳香環骨格及びエポキシ基を有する化合物(x1)に、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(x2)を付加反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
前記分子構造中に芳香環骨格及びエポキシ基を有する化合物(x1)は、例えば、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、1,4−ベンゼンジメタノール、3,3’−ビフェニルジオール、4,4’−ビフェニルジオール、ビフェニル−3,3’−ジメタノール、ビフェニル−4,4’−ジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、ナフタレン−2,6−ジメタノール、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール等の芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル;
【0022】
前記芳香族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル;
【0023】
前記芳香族ポリオールと、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル:
【0024】
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の脂肪族ジカルボン酸と、前記芳香族ポリオールとを反応させて得られる芳香環含有ポリエステルポリオールのポリグリシジルエーテル;
【0025】
フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びその無水物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族ポリオール等の脂肪族ポリオールとを反応させて得られる芳香環含有ポリエステルポリオールのポリグリシジルエーテル;
【0026】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;
【0027】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0028】
これらの中でも、より高い屈折率を示し、かつ、高温高湿条件下であっても、プラスチックフィルム基材に対し高い付着性を示す硬化塗膜が得られる点で、前記ビスフェノール型のエポキシ樹脂又は前記ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、より高屈折率かつ高硬度の塗膜が得られることから、エポキシ当量が160〜1,000g/eqの範囲であるものが好ましく、165〜600g/eqの範囲であるものがより好ましい。
【0029】
前記(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(x2)は、例えば、(メタ)アクリル酸;β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2ーアクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2ーアクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸及びこれらのラクトン変性物等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸;マレイン酸;無水コハク酸や無水マレイン酸等の無水酸をペンタエリスリトールトリアクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートモノマーと反応させて得られるカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0030】
これらの中でも、硬化塗膜における表面硬度がより高いラジカル重合性組成物が得られることから、(メタ)アクリル酸が好ましく、更に、硬化性に優れるラジカル重合性組成物が得られることから、アクリル酸がより好ましい。
【0031】
前記エポキシ(メタ)アクリレート(X)を製造する方法は、例えば、分子構造中に芳香環骨格及びエポキシ基を有する化合物(x1)と、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を有する単量体(x2)とを、前記化合物(x1)が有するエポキシ基と、前記(x2)が有するカルボキシル基とのモル比[(Ep)/(COOH)]が、1/1〜1.05/1の範囲となる割合で用い、100〜120℃の温度範囲で、必要に応じてトリフェニルホスフィン等のエステル化触媒をもちいて反応させる方法が挙げられる。
【0032】
このようにして得られる前記エポキシ(メタ)アクリレート(X)は、より低粘度の組成物が得られ、プラスチックフィルム基材に対して長期に渡り高い付着性を発現し、かつ、高温高湿条件下であっても高い基材付着性を示す硬化塗膜が得られる点で、重量平均分子量(Mw)が350〜5,000の範囲であることが好ましく、500〜4,000の範囲であることがより好ましい。
【0033】
尚、本発明において、重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0034】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0035】
本発明のラジカル重合性組成物は、無溶剤系でありながら塗工に適した低粘度を有し、更に、その硬化物が高屈折率を示し、プラスチックフィルム基材に対して長期に渡り高い付着性を発現し、かつ、高温高湿条件下であっても高い基材付着性を示す硬化塗膜が得られる点で、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)100質量部に対し、前記エポキシ(メタ)アクリレート(X)を50〜100質量部の範囲で含有することが好ましく、55〜85質量部の範囲で含有することがより好ましい。
【0036】
本発明のラジカル重合性組成物は、更にラジカル重合開始剤(Y)を含有する。該ラジカル重合開始剤は、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。
【0037】
これらラジカル重合開始剤の市販品は、例えば、「イルガキュア−184」、「イルガキュア−149」、「イルガキュア−261」、「イルガキュア−369」、「イルガキュア−500」、「イルガキュア−651」、「イルガキュア−754」、「イルガキュア−784」、「イルガキュア−819」、「イルガキュア−907」、「イルガキュア−1116」、「イルガキュア−1664」、「イルガキュア−1700」、「イルガキュア−1800」、「イルガキュア−1850」、「イルガキュア−2959」、「イルガキュア−4043」、「ダロキュア−1173」(チバスペシャルティーケミカルズ社製)、「ルシリンTPO」(ビーエーエスエフ社製)、「カヤキュア−DETX」、「カヤキュア−MBP」、「カヤキュア−DMBI」、「カヤキュア−EPA」、「カヤキュア−OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア−10」、「バイキュア−55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア−PDO」、「クオンタキュア−ITX」、「クオンタキュア−EPD」(ワードブレンキンソップ社製)等が挙げられる。
【0038】
前記ラジカル重合開始剤は、十分な硬化性を発現するために、本願発明のラジカル重合性組成物100質量部に対し、0.05〜20質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
【0039】
本発明のラジカル重合性組成物を光重合にて硬化させる場合には、前記ラジカル重合開始剤に併せて種々の光増感剤を添加しても良い。前記光増感剤は、例えば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物またはニトリル類もしくはその他の含窒素化合物等が挙げられ、これらは単独で使用しても二種類以上を併用しても良い。これら光増感剤を添加する場合の添加量は、本願発明のラジカル重合性組成物100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましい。
【0040】
本発明のラジカル重合性組成物は、高屈折率、低粘度であり、更に靱性にも優れるものとなることから、ラジカル重合性組成物の不揮発分100質量部中における前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)の質量が40〜75質量部の範囲であることが好ましく、45〜70質量部の範囲であることが特に好ましい。
【0041】
本発明のラジカル重合性組成物は、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)、前記分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)及び前記ラジカル重合開始剤(Y)に加え、更に、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリレート化合物(Z)を併用しても良い。
【0042】
前記(メタ)アクリレート化合物(Z)は、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ノニルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;
【0043】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;
【0044】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性したジペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0045】
中でも、より屈折率の高いラジカル重合性組成物が得られることから、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0046】
本願発明のラジカル重合性組成物が前記(メタ)アクリレート化合物(Z)を含有する場合、硬化物における屈折率が高く、かつ、低粘度の組成物が得られることから、ラジカル重合性組成物の不揮発分100質量部中における前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)の質量が40〜75質量部の範囲となるように用いることが好ましく、45〜70質量部の範囲となるように用いることがより好ましい。
【0047】
本発明のラジカル重合性組成物は、必要に応じてその他各種の添加剤を含有しても良い。各種の添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤等が挙げられる。これら添加剤を添加する場合の添加量は、添加剤の効果を十分発揮し、また紫外線硬化を阻害しない範囲で、本発明のラジカル重合性組成物100質量部に対し、0.01〜40質量部の範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明のラジカル重合性組成物の粘度は、高速塗工条件下であっても該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が金型の細部にまで欠点なく行渡るものとなる点で、6,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0049】
本発明のラジカル重合性組成物の硬化は、活性エネルギー線を照射する方法と、加熱する方法のどちらであってもよい。
【0050】
活性エネルギー線の照射によって硬化させる場合、該活性エネルギー線は、例えば、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、コックロフトワルトン型加速器、バンデグラフ型電子加速器、共振変圧器型加速器、絶縁コア変圧器型、ダイナミトロン型、リニアフィラメント型および高周波型などの電子線発生装置を用いて本発明の硬化性組成物を硬化させることができる。また、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯等の水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハイトランプ等により照射し、硬化させることができる。この際の紫外線の露光量は0.1〜1000mJ/cmの範囲であることが好ましい。
【0051】
一方、加熱によって硬化させる場合、60〜250℃の温度領域に加熱することによって硬化させることができる。
【0052】
本発明の本発明のラジカル重合性組成物の硬化物は、高屈折率を示し、プラスチックフィルム基材への付着性にも優れるものである。このような特徴を生かし、例えば、眼鏡レンズ、デジタルカメラ用レンズ、フレネルレンズ、及びプリズムレンズ等のプラスチックレンズ、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、光ファイバー、光導波路、ホログラム、プリズムレンズ、LED封止材料、太陽光電池用コーティング材等の各種光学材料に好適に使用することができ、これらのなかでも特に、液晶基板用プリズムレンズ等のプラスチックレンズ用に適している。
【0053】
前記液晶基板用プリズムレンズとは、シート状成形体の片面に微細なプリズム形状部を複数有するものであって、通常、液晶表示素子の背面(光源側)に、該素子側にプリズム面が向くように配設され、更に、その背面に導光シートが配設されるように用いられるシート状レンズ、或いは前記プリズムレンズがこの導光シートの機能を兼ねているシート状レンズである。
【0054】
ここで該プリズムレンズのプリズム部の形状は、プリズム頂角の角度θが70〜110°の範囲であることが、集光性に優れ輝度が向上する点から好ましく、特に75〜100°の範囲、中でも80〜95°の範囲であることが特に好ましい。
【0055】
また、プリズムのピッチは、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下の範囲であることが、画面のモアレ模様の発生防止や、画面の精細度がより向上する点から好ましい。また、プリズムの凹凸の高さは、プリズム頂角の角度θとプリズムのピッチの値によって決定されるが、好ましくは50μm以下の範囲であることが好ましい。さらに、プリズムレンズのシート厚さは、強度面からは厚い方が好ましいが、光学的には光の吸収を抑えるため薄い方が好ましく、これらのバランスの点から50μm〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明のラジカル重合性組成物を用いて前記プリズムレンズを製造する方法は、例えば、該組成物をプリズムパターンが形成された金型あるいは樹脂型等の成形型に塗布し、組成物の表面を平滑化した後に透明基材を重ね合わせ、該透明基材側から活性エネルギー線を照射し、硬化させる方法が挙げられる。
【0057】
ここで用いる透明基材は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂からなるプラスチック基材や、ガラス等が挙げられる。本願発明のラジカル重合性組成物を用いた場合には、これらいずれの基材を用いた場合にも、高い付着性を発現することができる。
【0058】
本発明のラジカル重合性組成物を前期プリズムレンズ用途等の光学材料に用いる場合には、その硬化物の屈折率は1.5500以上であることが好ましく、1.5700以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0060】
尚、本発明では、重量平均分子量(Mw)を下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0061】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0062】
本発明で粘度は、E型回転粘度計(東機産業株式会社製「RE80U」)を使用し、25℃条件下で測定した。
【0063】
本発明で屈折率は、アッべ屈折率計(アタゴ社製「NAR−3T」)を用いて測定した。温度条件は通常25℃とし、25℃で固体のものに関しては、適当な温度を設定して測定した。
【0064】
本発明では、水素原子のNMRを日本電子株式会社製のNMR「GSX270」を用い、300MHz、重クロロホルム溶媒の条件下で測定した。
【0065】
本発明では、ガスクロマトグラフによるマススペクトルを、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)(島津社製「GC−2010」、カラム:島津社製「Zebron ZB−5」)を用い、Heキャリアガス、流量1.47mL/min、カラムオーブン50度、気化室300度、昇温50度から300度(25度/min)の条件下で測定した。
【0066】
本発明では、高速液体クロマトグラフ(LC)分析を、高速液体クロマトグラフ(Waters社製「2695」、カラム:Chemical Evaluation and Research Institute製「L−Column2 ODS」)を用い、検出UV240nm、温度40度、流速1mL/min、アセトニトリル/水=70/30〜100/0の条件下で行った。
【0067】
本発明では、ガスクロマトグラム(GC)分析を、ガスクロマトグラフ(Agilent社製「6850Series」、カラム:Agilent社製「Agilent DB−1」)を用い、Heキャリアガス、流速1mL/min、注入温度300度、検出温度300度、昇温50度から325度(25度/min)の条件下で行った。
【0068】
製造例1
オルトフェニルベンジルアクリレートの合成
攪拌機、温度計、冷却管、塩化カルシウム管を具備した200mL3つ口フラスコに、オルトフェニルベンジルアルコール20.0g、脱水トルエン100.0g、トリエチルアミン13.2g、メトキノン7.8mgを仕込み、氷浴で10℃以下に冷却した。ここに、アクリル酸クロライド11.8gを30分間かけて滴下し、室温に戻し2時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、5%NaOH水溶液、食塩水で洗浄後、溶媒留去することにより、橙色液体を得た。これをシリカゲルカラムで精製し、20.44gのオルトフェニルベンジルアクリレートを得た。得られたオルトフェニルベンジルアクリレートは常温で無色透明の液体であり、25℃における屈折率は1.5776、粘度は27mPa・sであった。H−NMRでの測定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,300MHz): 7.53−7.49 (m, 1H of Ph), 7.48−7.28 (m, 8H of Ph), 6.41−6.34 (q, 1H of CH=CH), 6.34−6.07 (q, 1H of CH=CH), 5.82−5.77 (q, 1H of CH=CH), 5.13 (s, 2H of CH−Ph).
【0069】
製造例2
メタフェニルベンジルアクリレートの合成
攪拌機、温度計、冷却管を具備した200mL4つ口フラスコに、3−(ブロモメチル)ビフェニル20.0g、脱水ジメチルホルムアミド39.3g、無水炭酸カリウム13.4g、メトキノン6.2mgを仕込み、室温でアクリル酸を添加した。炭酸ガスの発泡が収まった後、反応温度90℃に加熱し2時間反応を行った。室温に冷却後水120mLで希釈し、トルエン100gで抽出を行い、水洗を行った。得られた粗反応物をシリカゲルカラムで精製し、16.1gのメタフェニルベンジルアクリレートを得た。得られたメタフェニルベンジルアクリレートは常温で無色透明の液体であり、25℃における屈折率は1.5888、粘度は24mPa・sであった。H−NMRでの測定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,300MHz): 7.60−7.32 (m, 9H of Ph), 6.50−6.42 (q, 1H of CH=CH), 6.22−6.12 (q, 1H of CH=CH), 5.87−5.82 (q, 1H of CH=CH), 5.26 (s, 2H of CH−Ph).
【0070】
製造例3
パラフェニルベンジルアクリレートの合成
合成例1のオルトフェニルベンジルアルコールをパラフェニルベンジルアルコールに代え、同様の手順で、22.4gのパラフェニルベンジルアクリレートを得た。得られたパラフェニルベンジルアクリレートは常温で固形であり、融点は32℃、40℃における屈折率は1.5920であった。H−NMRでの測定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,300MHz): 7.62−7.32 (m, 9H of Ph), 6.50−6.43 (q, 1H of CH=CH), 6.23−6.12 (q, 1H of CH=CH), 5.88−5.84 (q, 1H of CH=CH), 5.27 (s, 2H of CH−Ph).
【0071】
製造例4
エポキシ(メタ)アクリレート(X−1)の製造
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1055」、エポキシ当量478g/eq)487.6質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン1.68質量部、メトキシハイドロキノン0.28質量部を加えた後、アクリル酸72.1質量部、トリフェニルホスフィン2.8質量部を添加し、空気を吹き込みながら110℃で12時間エステル化反応を行ない、目的とするエポキシ(メタ)アクリレート(X−1)を得た。該エポキシアクリレート(X−1)の酸価は0.1mgKOH/g、エポキシ当量は13,500g/eq、屈折率は1.585、重量平均分子量(Mw)は2,500であった。
【0072】
製造例5
エポキシ(メタ)アクリレート(X−2)の製造
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロンN−695」エポキシ当量216g/eq)220.3質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン0.88質量部、メトキシハイドロキノン0.15質量部を加えた後、アクリル酸72.1質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部を添加し、空気を吹き込みながら110℃で12時間エステル化反応を行ない、目的とするエポキシアクリレート(X−2)を得た。該エポキシ(メタ)アクリレート(X−2)の酸価は0.1mgKOH/g、エポキシ当量は11,200g/eq、屈折率は1.574、重量平均分子量(Mw)は3,800であった。
【0073】
製造例6
エポキシ(メタ)アクリレート(X−3)の製造
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン830」エポキシ当量172g/eq)175.4質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン0.74質量部、メトキシハイドロキノン0.12質量部を加えた後、アクリル酸72.1質量部、トリフェニルフォスフィン1.2質量部を添加し、空気を吹き込みながら110℃で12時間エステル化反応を行ない、目的とするエポキシ(メタ)アクリレート(X−3)を得た。該エポキシ(メタ)アクリレート(X−3)の酸価は0.1mgKOH/g、エポキシ当量は12,800g/eq、屈折率が1.562、重量平均分子量(Mw)が680であった。
【0074】
実施例1
・ラジカル重合性組成物の配合
製造例1で得たオルトフェニルベンジルアクリレートを18質量部、製造例3で得たパラフェニルベンジルアクリレートを82質量部、製造例4で得たウレタン(メタ)アクリレート(X−1)を60質量部及び光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ製「イルガキュア184」)を6質量部配合し、ラジカル重合性組成物を得た。
【0075】
・硬化フィルムの製造
上記配合により得たラジカル重合性組成物をクロムメッキ処理金属板上に塗布し、該組成物層の上から表面未処理の透明PETフィルムを重ね、該組成物層が厚さ50μmとなるように調整した。高圧水銀灯により、500mJ/cmの紫外線を透明基材側から照射して硬化させ、積層体を得た。該積層体の金属板及び透明基材からラジカル重合性組成物の硬化層を剥離し、硬化フィルムを得た。
【0076】
・基材付き硬化フィルム
上記基材を表面易接着処理済みの透明PETフィルムに変えた以外は、硬化フィルムの製造と同様の手順で積層体を得、該積層体から金属板のみを剥離し、基材付き硬化フィルムを得た。
【0077】
・評価
上記で得たラジカル重合性組成物、硬化フィルム及び基材付き硬化フィルムについて、以下に記載する種々の評価を行った。
【0078】
評価1:屈折率の測定
上記実施例1で作成した硬化フィルムを、1−ブロモナフタレンをもちいてアッベ屈折率計(アタゴ社製「NAR−3T」)のプリズムに密着させ、25℃条件下での屈折率を測定した。
【0079】
評価2:初期付着性
上記実施例1で作成した基材付き硬化フィルムの基材と硬化物層との付着性を、JIS K5400に準拠して測定した。升目が全て残存する時を◎、(95〜99)/100の升目が残存する時を○、(80〜94)/100の升目が残存する時を△とし、それ以下の時を×とした。
【0080】
評価3:沸水付着性(基材付着性評価の促進試験)
上記実施例1で作成した基材付き硬化フィルムを95℃以上の沸水に4時間浸漬させ、室温に取り出して2時間後放置した。沸水処理後の基材付き硬化フィルムについて、基材と硬化物層との付着性を、JIS K5400に準拠して測定した。升目が全て残存する時を◎、(95〜99)/100の升目が残存する時を○、(80〜94)/100の升目が残存する時を△とし、それ以下の時を×とした。
【0081】
実施例2〜6
表1、2に示す配合とした以外は実施例1と同様にしてラジカル重合性組成物、硬化フィルム及び基材付き硬化フィルムを得、各種評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
比較例1及び2
表2に示す配合とした以外は実施例1と同様にしてラジカル重合性組成物、硬化フィルム及び基材付き硬化フィルムを得、各種評価を行った。評価結果を表2に示す。尚、比較例2で得られた樹脂組成物は、非常に高粘度であり、粘度及び液屈折率の測定できなかった。また、塗工不能であったため、各種塗膜の評価も不可であった。
【0084】
【表2】

【0085】
表2の脚注
フルオレン(9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン):新中村工業株式会社製「A−BPEF」
OPPEA(オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート):MIWON社製「ミラマーM1142」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)と、分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)と、ラジカル重合開始剤(Y)とを必須の成分として含有し、前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)が、オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレートと、パラフェニルベンジル(メタ)アクリレートとを、これらのモル比[〔オルトフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕/〔パラフェニルベンジル(メタ)アクリレート〕]が55/45〜10/90の範囲となるように含有することを特徴とするラジカル重合性組成物。
【請求項2】
前記フェニルベンジル(メタ)アクリレート(A)100質量部に対し、分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)を、50〜100質量部の範囲で含有する請求項1記載のラジカル重合性組成物。
【請求項3】
分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)が、分子構造中にビス(フェニレン)アルカン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートである請求項1記載のラジカル重合性組成物。
【請求項4】
前記分子構造中に芳香環を有するエポキシ(メタ)アクリレート(X)の重量平均分子量(Mw)が350〜5,000の範囲である請求項1記載のラジカル重合性組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一つに記載のラジカル重合性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一つに記載のラジカル重合性組成物を硬化させてなるプラスチックレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18982(P2013−18982A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178179(P2012−178179)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2012−533166(P2012−533166)の分割
【原出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】