説明

ラック実装型ファンユニット

【課題】一般的な一体型と同等サイズの1Uに収めながら、交換時と故障時のリスクを低減するためにファン数を増やすとともに、電子部品の配置も分離構造とし、モジュール化することで拡張性を向上させたラック実装型ファンユニットを提供する。
【解決手段】フレーム筐体に複数個のファン内蔵筐体が横方向に並べて取り付けられたラック実装型ファンユニットにおいて、前記複数個のファン内蔵筐体の側面を同時に押圧し前記フレーム筐体に固定する押圧部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のファンが取り付けられたラック実装型ファンユニットに関し、詳しくはメンテナンスの容易化と小型化および拡張性を向上させたラック実装型ファンユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に通信機器、情報機器等の電子装置は高度情報化時代に入り、これらの精密機器の構成は年々高密度化が進でいる。これに対応し、機器内部の熱密度が高まり、その結果、内部温度の上昇を抑える冷却技術が必須となってきている。
【0003】
従来は機器内部の温度差による空気の流れ(自然対流)を用いて自然空冷を行ってきたが、機器内部の熱密度が高まり、空冷処理が間に合わず、ファンモ−タを用いた強制空冷の時代に入っている。
しかし、ファンモ−タの寿命は短く、電子機器に使用する場合は、交換が容易なファンモ−タをユニット化して使用するのが通例である。
【0004】
図8,図9は従来使用されている分離型ファンモ−タユニットの斜視図を示すもので、図8は仕切り部1aで仕切られた長方形状のフレーム筐体1に矩形状のファン内蔵筐体(以下、ファン筐体という)2を2台収納した状態を示している。
【0005】
図9は図8に示すフレーム筐体1から2台あるファン筐体2のうちの一台を手前側に引き出した状態を示すもので、ファン筐体2に形成されたレール係合部材4がガイドレール3に沿って矢印Y方向に移動するように構成されている。なお、ファン筐体2の上面と裏面には空気が通過する給・排気用開口部であるフィンガーガード5が形成されている。
【0006】
なお、図では省略するがファン筐体2の先端(奥部)にはコネクタがあり、フレーム筐体1の奥側にはファン筐体2のコネクタ接続するコネクタが配置されている。そして図8のように、ファン筐体2をフレーム筐体1のガイドレール3に沿って実装するとコネクタ同士が装着されファンが駆動するようになっている。
【0007】
図10は図9に示すファン筐体2を一体フレーム6に複数台(図では4個)ねじや固定具で取り付けて一体構造としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−7891号公報
【特許文献2】特開平10−178291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のラック実装型ユニットには次のようなメリットとデメリットがある。
A.分離型のメリット、
正面方向からの作業のみでファン筐体2の交換ができるため、ファン筐体2の交換が容易にできる
実装状態で一台のみの交換ができ、交換中は交換対象以外のファン筐体2は駆動し続けるためファンユニットの冷却能力の低下を最小限に抑えられる
【0010】
B,分離型のデメリット、
ガイドレール機構(3,4)や筐体2を固定するための機構(ファンの振動などを考慮すると相応の固定方法が必要)がファン毎の筐体に必要になるため、ファンユニットの構造が複雑化する。そのためファン一個の占有するスペースが広くなり、フレーム筐体1内に収めるには数を減少させるか、ファンユニットを大型化するといった対処が必要になる。
【0011】
図9では、ファン筐体を2個入れるために大型化し、ファンユニットを2Uサイズとしている。なお、2UサイズとはJISやEIAによって規格化された19インチ幅のラックに収納され、高さが2Uサイズと言われる約89mmの平たい形状の制御装置本体の筐体をいう。
【0012】
C.一体型のメリット、
形状がシンプルなため、分離型と比べ、ファン一個の占めるスペースが小さくなり、小型化できる。図11ではファン筐体2を4つ実装できると共に1Uサイズに収めることができる。
【0013】
D.一体型のデメリット、
ファン筐体2の交換時は、ファンユニットごと取り外すかファン筐体を上下方向に取り外す必要があり、作業量が増え広い作業スペースが必要になる。
ファンユニットごと交換してしまうと交換時は、電子機器を冷却することができない。その結果、デバイスの故障や寿命短縮といった危険がある。
【0014】
分離型と一体型を比較すると、
交換作業などのメンテナンスなどは分離構造が有利であるが、ファン筐体2の実装効率が悪い。一方、一体型は分離型よりもファン筐体の実装効率は良いがファン筐体交換の作業性に難があるといった差がある。これらは一長一短であることから両者ともに様々な場所で使用されている。
【0015】
問題点1.分離構造時のファン筐体2の実装数の減少によるリスクの発生、
図9,10の構造はファン筐体を2つしか実装できないため、片側のファン筐体の交換時または故障時、冷却対象の電子機器が19インチ幅全域の場合、すべての機器を冷却するのは難しいというリスクがある。
【0016】
問題点2.機能の拡張性について、
両者ともに、ファンユニットの基板(図示省略)交換は容易ではない。
分離構造は、基板にコネクタ(図示省略)を直指ししているため、ファンユニット奥の決まった位置に基板を置く必要がある、それに加えガイドレール3などが邪魔をして交換ができない。
【0017】
一体構造はファンと同様の交換作業が必要になり同様のリスクが発生する。そのためファンユニットにFUSEや動作確認用のLEDといった機能をもたすメリットよりも交換作業による工数(コスト)発生のデメリットが勝るため、電子機器を実装することは難しく、機能の拡張が難しいといった問題がある。
【0018】
従って本発明は、図9,10に示す従来技術の分離構造を改良して、一般的な一体型と同等サイズの1Uに収めながら、交換時と故障時のリスクを低減するためにファン数を増やすとともに、電子部品の配置も分離構造とし、モジュール化することで拡張性を向上させたラック実装型ファンユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載のラック実装型ファンユニットにおいては、
フレーム筐体に複数個のファン内蔵筐体が横方向に並べて取り付けられたラック実装型ファンユニットにおいて、前記複数個のファン内蔵筐体の側面を同時に押圧し前記フレーム筐体に固定する押圧部材を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項2においては、請求項1に記載のラック実装型ファンユニットにおいて、
前記押圧部材と前記フレーム筐体を係止する蝶番及び係止ねじを設けたことを特徴とする。
【0021】
請求項3においては、請求項1又は2に記載のラック実装型ファンユニットにおいて、
前記押圧部材とファン内蔵筐体の間に弾性体を介在させたことを特徴とする。
【0022】
請求項4においては、請求項1乃至3に記載のラック実装型ファンユニットにおいて、
前記フレーム筐体に対して前記ファン内蔵筐体の左右上下方向への動きを規制する係合部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1,2によれば、複数個のファン内蔵筐体の側面を同時に押圧し前記フレーム筐体に固定する押圧部材を設け、押圧部材とフレーム筐体を係止する蝶番及び係止ねじを設けたので、ファン内蔵筐体の取り付け取り外しが容易になり、ファン内蔵筐体一台の交換に際しては他のファン内蔵筐の冷却能力は維持することができる。
【0024】
請求項3によれば、押圧部材とファン内蔵筐体の間に弾性体を介在させたので、ほぼ同じ力でファン内蔵筐体を押圧することができる。
【0025】
請求項4によれば、ファン内蔵筐体とフレーム筐体の左右上下方向への動きを規制する係合部材を設けたので、ファン内蔵筐体のがたつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のラック実装型ファンユニットの斜視図である。
【図2】フレーム筐体とファン内蔵筐体の奥部の係止状態を示す斜視図である。
【図3】フレーム筐体とファン内蔵筐体の底部の係止状態を示す斜視図である。
【図4】フレーム筐体とカバー筐体の係止状態を示す断面図である。
【図5】フレーム筐体とファン内蔵筐体及びカバー筐体の固定状態を示す斜視図である。
【図6】他の実施例を示す斜視図である。
【図7】他の実施例を示す斜視図である。
【図8】従来のラック実装型ファンユニットの斜視図である。
【図9】図8のファン内蔵筐体を引き出した状態を示す斜視図である。
【図10】ファン内蔵筐体を一体フレームに複数台取り付けて一体構造とした従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1(a,b)は本発明のラック実装型ファンユニットの斜視図である。
図1(a,b)において、31はファン内蔵筐体32を4台収納したフレーム筐体で、このフレーム筐体はフレーム係止孔31aを介してラック(図示省略)に固定される。ファン内蔵筐体32は上下に空気通過孔としての給排気用の開口部32cと、先端にアタッチメント部(図示省略)を有しており、内蔵されたファン(図示省略)をファン係止ねじ32bを使用して固定する。
【0028】
31bはフレーム筐体31の奥側の上方に形成された突起挿入孔であり、この突起挿入孔31bにファン内蔵筐体32の後方に突出して形成された平板状突起32aが挿入される。フレーム筐体31の前面底部と押圧部材として機能するカバー筐体10の底部は所定の距離を隔てて(図では2箇所)配置された蝶番9により回動自在に接続されている。
【0029】
8はカバー筐体10をフレーム筐体31側に回動させて係止ねじ11で固定したときにファン筐体32とカバー筐体10を均一な状態で押圧する弾性部材である。図1aはカバー筐体10を開いた状態、図1(b)はカバー筐体を回動させて4台のファン筐体32を同時に固定した状態を示す斜視図である。
【0030】
図2はフレーム筐体31にファン内蔵筐体32を固定するときの動作説明図である。図2aは挿入前の状態、図2bは挿入後の状態を示している。矢印P方向からフレーム筐体31の奥部の上方に形成された突起挿入孔31bにファン内蔵筐体32に形成された平板状突起32aを挿入する。この挿入により矢印イで示す横方向の動きと矢印ロで示す縦方向の動きを規制することができる。
【0031】
図3(a〜d)はフレーム筐体31の前部に形成された係合爪12aとファン筐体32の底部前方に形成された係合片12bを係合させてファン筐体32の動きを規制する状態を示す説明図である。図3(a)はファン筐体32をフレーム筐体31から矢印ヌで示す位置まで手前側に引き出した状態を示し、図3(b)はファン筐体32を矢印ルの位置まで挿入し係合片12bを係合爪12aに係合させた状態を示している。
【0032】
図3(c)は係合片12bと係合爪12aが係合している状態を示し、矢印ヘで示す方向と矢印トで示す方向が固定されていることを示している。図3(d)は2台のファン筐体32を隣り合わせて挿入しファン筐体32同士を図示しない固定金具を用いて矢印チ方向の動きを規制した状態を示している。
【0033】
図4はフレーム筐体31に蝶番9で接続されたカバー筐体10を矢印リ方向に回動させて係止ねじ11によりフレーム筐体31に固定した状態を示す断面図である。係止ねじ11で締め付けることにより弾性体8がフレーム筐体31に押し付けられ、複数のファン筐体をほぼ同じ力で押圧することができる。
【0034】
図5はフレーム筐体31に対するファン筐体32の固定箇所を示すもので、突起挿入孔31bに平板状突起32aを挿入したことにより矢印イ及びロ方向の動きが規制され、フレーム筐体31に形成した係合爪12aにファン筐体に形成した係合片12bを係合させたことにより矢印ヘ及びト方向の動きが規制され、カバー筐体10を係止ねじ11により締め付けて弾性体8でファン筐体32に押し付けることにより矢印チ方向の動きを規制した状態を示している。
【0035】
図6は他の実施例を示すもので、この例ではフレーム筐体33としてファン筐体34を横方向に2列に搭載できる程度に大きなものとし、前列のファン筐体34の前部に突起挿入孔34bを設けている。そしてこの突起挿入孔34bにファン筐体34に形成した平板状突起34aを挿入したものである。
【0036】
このように2列に並べて図3に示す係合爪12aと係合片12bを固定した状態で、弾性部材8とカバー筐体10により2列に搭載したファン筐体34をフレーム筐体33に固定する。このような構成によればファン筐体34を多数搭載することができ冷却能力を向上させることができる。
【0037】
図7は他の実施例を示すものでこの例では、フレーム筐体31とファン筐体32の間にスライド機構としてのレール13a,13bを用意し、ファン筐体32を引き抜けるようにしたものである。その場合、レール13aと13bの間に球を挟むことでスライド機構を持たせている。即ち、レール13aをフレーム筐体31に固定し、13bのレールを治具を介してカバー筐体10に止めることによりスライド機構を実現したものである。
【0038】
なお、蝶番による回転機構かレールによるスライド機構かの選択は、19インチラックに実装されている他の機器やキャビネット内のスペースに合わせて選択すればよく、ファン筐体32の交換時にカバー筐体10の筐体内の電気配線の作業ができるように止めておくことのできる機構があれば良い。
【0039】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0040】
1,31,33 フレーム筐体
1a 仕切り部
2,32,34 ファン内蔵筐体(ファン筐体)
3 ガイドレール
4 レール係合部材
5 フィンガーガード(給・排気用開口部)
6 一体フレーム
7,32b ファン係止ねじ
8 弾性部材
9 蝶番
10 押圧部材(カバー筐体)
11 係止ねじ
12 係合部材
31 フレーム筐体
31a フレーム係止孔
32a,34a 平板状突起
34b 突起挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム筐体に複数個のファン内蔵筐体が横方向に並べて取り付けられたラック実装型ファンユニットにおいて、前記複数個のファン内蔵筐体の側面を同時に押圧し前記フレーム筐体に固定する押圧部材を設けたことを特徴とするラック実装型ファンユニット。
【請求項2】
前記押圧部材と前記フレーム筐体を係止する蝶番及び係止ねじを設けたことを特徴とする請求項1に記載のラック実装型ファンユニット。
【請求項3】
前記押圧部材とファン内蔵筐体の間に弾性体を介在させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のラック実装型ファンユニット。
【請求項4】
前記フレーム筐体に対して前記ファン内蔵筐体の左右上下方向への動きを規制する係合部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至3に記載のラック実装型ファンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−89614(P2012−89614A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233727(P2010−233727)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】