説明

ラック認識装置

【課題】無線タグを利用した新しいラック認識技術を提供する。
【解決手段】複数の検体ラック20には、各々、無線ICタグが設けられている。ICタグリーダ・ライタ16は、アンテナ14を介して、複数の検体ラック20の複数の無線ICタグからラック情報を読み取る。また、ワークエリア12には、各検体ラック20が配置されたことを検出する位置検出センサが設けられている。そして、位置検出センサによって検出された検体ラック20の有無に関する検出結果と、ICタグリーダ・ライタ16によって読み取られた複数の検体ラック20に関するラック情報とに基づいて、ワークエリア12に載せられた各検体ラック20のラック位置とその検体ラック20のラック情報とが対応付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック認識装置に関し、特に、複数の検体ラックからラック情報を読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
検体サンプルを扱う装置として自動分注装置や検体前処理装置などが知られている。検体サンプルは試験管などの容器に収容され、さらに、複数の容器が検体ラックに収容される。検体ラックは、例えば、複数本の容器を一列に並べて保持する。そして、自動分注装置や検体前処理装置などの装置は、搬送機構などを利用して検体ラックを所定の位置に移動させ、検体ラックに並べられた容器内の検体サンプルに対して分注処理や検体前処理を行う。
【0003】
一般に、自動分注装置などは、複数種類の検体サンプルを取り扱う。そのため、分注処理の精度を高めるために、処理の対象となる検体サンプルを正確に見極める必要がある。先に述べたように、検体サンプルは、容器に収容され、さらに容器が検体ラックに並べられる。従って、検体ラックや容器を特定することにより、それに収められた検体サンプルを特定することが可能になる。こうした背景から、複数の検体ラックのうちから特定の検体ラックを認識する技術が注目されている。
【0004】
一方、近年のIC化技術の進歩に伴って、無線ICタグが登場した。無線ICタグは、ICチップとアンテナを備えており、ICチップの内部に記憶されたデータをアンテナ経由で外部に送信することや、ICチップの内部に記憶されたデータをアンテナ経由で外部から書き換えることなどを実現している。
【0005】
無線ICタグは、小型で薄型に形成することができる。そのため、例えば、無線ICタグを食器皿の裏に貼り付けて、あるいは、手荷物のとってにぶら下げて、食器皿や手荷物などを特定するために無線ICタグを利用することなどが可能になる。
【0006】
このように、無線ICタグは、様々な場面への応用が期待されている。そして、先に述べた検体ラックの識別のために、無線ICタグの機能を応用する技術も提案されている。例えば、特許文献1には、ラックに、ラックを識別する識別情報を発信するタグを設ける技術が示されている。そして、複数のラックの各々に設けられたタグから、対応するラックの識別情報を取得して、例えば、ラックが所定の位置に載せられたがどうかなどを判断している。
【0007】
【特許文献1】特開2006−30035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術により、ラックが誤った位置に置かれることや、ラックを交換し忘れることなどを防止することが可能になる。
【0009】
本願の発明者らは、特許文献1に記載された画期的な技術をさらに改良した新しいラック認識技術について、研究と開発を続けてきた。
【0010】
本発明は、このような背景において成されてものであり、その目的は、無線タグを利用した新しいラック認識技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様であるラック認識装置は、各検体ラックごとに無線タグが設けられた複数の検体ラックを載せる作業テーブルと、作業テーブル上に割り当てられた複数のラック位置の各々に設けられ、対応するラック位置に検体ラックが載せられたか否かを検出する複数のラック検出センサと、作業テーブル上に載せられた複数の検体ラックに設けられた複数の無線タグからの無線信号を包括的に受信するアンテナと、アンテナによって受信される無線信号を介して、作業テーブル上の複数の検体ラックに関するラック情報を読み取る読み取りユニットと、を有し、複数のラック検出センサによって検出された作業テーブル上の各ラック位置ごとの検体ラックの有無に関する検出結果と、読み取りユニットによって読み取られた作業テーブル上の複数の検体ラックに関するラック情報と、に基づいて、作業テーブルに載せられた各検体ラックのラック位置とその検体ラックのラック情報とを対応付けることを特徴とする。
【0012】
また、望ましい態様のラック認識装置は、前記複数のラック検出センサによって、作業テーブルに新たに載せられた新検体ラックのラック位置が検出され、前記読み取りユニットによって、新検体ラックが載せられる前の作業テーブル上の検体ラックに関するラック情報と、新検体ラックが載せられた後の作業テーブル上の検体ラックに関するラック情報と、が読み取られ、新検体ラックが載せられる前のラック情報と新検体ラックが載せられた後のラック情報との比較から新検体ラックに関するラック情報が抽出され、新検体ラックのラック情報と新検体ラックのラック位置とが対応付けられることを特徴とする。
【0013】
また、望ましい態様のラック認識装置は、前記アンテナから送信される無線信号を介して、作業テーブル上の複数の検体ラックに設けられた複数の無線タグに対してラック情報を書き込む書き込みユニットを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明した態様により、無線タグを利用した新しいラック認識技術が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1には、本発明に係るラック認識装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成図である。
【0017】
図1に示すラック認識装置10は、例えば、自動分注装置や検体前処理装置と共に利用される。あるいは、自動分注装置や検体前処理装置などの一部機能として利用される。分注処理や検体前処理などの対象となる検体サンプルは、容器(試験管など)に収容され、さらに、検体サンプルを収容した複数の容器が検体ラック20に並べられる。
【0018】
自動分注装置や検体前処理装置などの装置は、搬送機構などを利用して検体ラック20を所定の位置に移動させ、検体ラック20に並べられた容器内の検体サンプルに対して分注処理や検体前処理を行う。
【0019】
分注処理や検体前処理などの処理フローの中のあるステップにおいて、複数の検体ラック20は、ラック認識装置10のワークエリア12上に搬入される。例えば、ワークエリア12上に置かれた状態で、所定の検体ラック20に対して検体サンプルの分注が実行される。もちろん、分注以外の処理が実行されてもよい。
【0020】
図1には、ワークエリア12上に複数の検体ラック20を並べた様子が示されている。各検体ラック20は、図示しない搬送機構などによって、ワークエリア12上に搬入され、また、ワークエリア12上から搬出される。
【0021】
図2は、本実施形態で利用される検体ラック20を説明するための図である。検体ラック20は、複数の容器22を一列に並べて保持している。また、各容器22内には検体サンプルが収容されている。そして、本実施形態において、各検体ラック20には、無線ICタグ30が設けられている。
【0022】
無線ICタグ30は、図示しないICチップとアンテナを含んでおり、ICチップの内部に記憶されたデータをアンテナ経由で外部に送信することや、ICチップの内部に記憶されたデータをアンテナ経由で外部から書き換えることなどを可能としている。
【0023】
無線ICタグ30は、パッシブ型でもアクティブ型でもよい。パッシブ型の場合、無線ICタグ30は、内部に電池を持たず、リーダ・ライタ側からの電波を受け、その電波から得られるエネルギーを利用して動作する。また、アクティブ型の場合、無線ICタグ30は、内部に電池を持っており、その電池によって動作する。
【0024】
本実施形態において、無線ICタグ30は、その無線ICタグ30が設けられた検体ラック20に関するラック情報を記憶している。ラック情報には、例えば、検体ラック20を他のものと区別するためのラック識別データや、検体ラック20に収められた容器22内の検体サンプルに関するデータ(例えば、検体名など)や、検体サンプルに対する処理に関するデータ(例えば、複数の処理段階のうちのどの段階まで終了したのかなど)が含まれる。もちろん、ラック情報としてその他のデータが無線ICタグ30に記憶されてもよい。
【0025】
無線ICタグ30は、検体ラック20を搬送する際に搬送の障害とならないような場所であれば、検体ラック20のどこに設けられてもよい。例えば、検体ラック20の底や、上部や、側面などに設けられてもよい。また、検体ラック20内部に無線ICタグ30が埋め込まれてもよい。図2では、検体ラック20の図の手前側の側面に無線ICタグ30を貼り付けた例を示している。
【0026】
図1に戻り、アンテナ14は、ワークエリア12に載せられた複数の検体ラック20に対して無線信号を送受信する。つまり、アンテナ14は、複数の検体ラック20に設けられた複数の無線ICタグから無線信号を受信し、また、複数の検体ラック20に設けられた複数の無線ICタグへ無線信号を送信する。
【0027】
ICタグリーダ・ライタ16は、アンテナ14によって受信される無線信号を介して、ワークエリア12上の複数の検体ラック20に設けられた複数の無線ICタグからラック情報を読み取る。また、ICタグリーダ・ライタ16は、アンテナ14から送信される無線信号を介して、ワークエリア12上の複数の検体ラック20に設けられた複数の無線ICタグに対してラック情報を書き込む。
【0028】
本実施形態では、複数の無線ICタグからの無線信号をアンテナ14によって包括的に受信し、また、アンテナ14から複数の無線ICタグへ無線信号を送信している。その際、いわゆるアンチコリジョンの技術を利用して、複数の無線ICタグによる混信を防いでいる。
【0029】
つまり、ICタグリーダ・ライタ16が、アンテナ14を介して、質問信号を複数の無線ICタグへ送信すると、一定の規則に従って決められた無線ICタグのみがその質問信号に応答する。その際、他の無線ICタグはスリープ状態となって応答を行わない。そして、一つの無線ICタグに関する通信が終了すると、次の別の無線ICタグが応答する。これを繰り返すことにより、ワークエリア12上に存在する全ての無線ICタグとの通信(無線信号の送受信)が行われる。
【0030】
アンテナ14と無線ICタグとの間でやり取りされる無線信号は、例えば、135kHz帯、13.56MHz帯、950MHz帯、2.45MHz帯などの周波数帯域の信号が利用される。送信と受信を時分割で行うことにより、アンテナ14は、送受共用とすることができる。もちろん、送信と受信とを異なるアンテナで実現してもよい。
【0031】
ICタグリーダ・ライタ16によって読み取られた各無線ICタグのラック情報は、図示しないホストコンピュータに送られる。また、ICタグリーダ・ライタ16は、そのホストコンピュータの指示に基づいて、必要に応じて、各無線ICタグのラック情報を書き換える。
【0032】
このように、本実施形態では、ICタグリーダ・ライタ16によって、複数の検体ラック20に関するラック情報が読み取られ、ホストコンピュータに送られる。さらに、本実施形態では、信号変換ユニット18によって、複数の検体ラック20の位置に関する検出結果が纏められ、ホストコンピュータに送られる。
【0033】
図3は、本実施形態による検体ラックの位置検出を説明するための図である。ワークエリア12上には、複数の検体ラックの各々を配置するための複数のラック搭載位置40が割り当てられている。各ラック搭載位置40上に、一つの検体ラックが配置される。各ラック搭載位置40上には、位置検出センサ42が設けられている。位置検出センサ42は、対応するラック搭載位置40の上に、検体ラックが載せられたか否かを検出する。
【0034】
位置検出センサ42は、例えば、検体ラックと接触することによる通電を検出して検体ラックの有無を判定するタイプのものや、検体ラックが存在する際に検体ラックに投光した光が反射してくることを利用した非接触タイプのものなどを利用することができる。
【0035】
複数の位置検出センサ42から得られる検体ラックの有無に関する検出結果は、信号変換ユニット18に転送される。信号変換ユニット18は、複数の位置検出センサ42の検出結果から、複数のラック搭載位置40のうちのどの位置に検体ラックが存在するのかを把握することができる。そして、複数のラック搭載位置40の各々に検体ラックが存在するのか否かを示す情報が、信号変換ユニット18から図示しないホストコンピュータへ転送される。
【0036】
以上のように、本実施形態では、複数の検体ラックに関するラック情報が読み取られ、また、複数の位置検出センサ42の検出結果から検体ラックが存在する位置を知ることができる。さらに、本実施形態では、以下に説明する手法により、ワークエリア12上の各検体ラックのラック位置とその検体ラックのラック情報とを対応付けている。そこで、次にその手法について説明する。なお、以下の説明において、図1から図3に示した部分(構成)については、図1から図3の符号を利用する。
【0037】
図4は、本実施形態のラック認識装置によるラック情報の読み取り手順を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、検体ラック20をユーザが手動でワークエリア12上に載せていく場合の、ラック情報の読み取り手順を示している。以下、フローチャートに従ってその手順を説明する。
【0038】
まず、ワークエリア12上の任意のラック搭載位置40に手動で検体ラック20を配置する(S402)。そして、検体ラック20を搭載されたラック搭載位置40の位置検出センサ42が検体ラック20の搭載を検出し(S404)、その結果が、信号変換ユニット18を介してホストコンピュータへ送信される(S406)。同時に、位置検知センサ42が検体ラック20を検出したタイミングを示すタイミング信号がホストコンピュータに送信される。ホストコンピュータは、このタイミング信号に基づき、ICタグリーダ・ライタ16にラック情報の読み込みを指示する(S408)。
【0039】
ICタグリーダ・ライタ16は、ホストコンピュータの指示に従い、ワークエリア12の全体からラック情報を読み込む(S410)。検体ラック20がワークエリア12上に1つずつ配置されることを基本とすると、最初の段階では、ワークエリア12上に検体ラック20が1つだけ存在することになる。そのため、この段階で得られたラック情報は、1つしか存在しない検体ラック20のものであることを特定できる。従って、この最初の段階では、次にS428のステップに進み、検体ラック20のラック位置とラック情報の対応付けが行われる。
【0040】
さらに、任意の時間経過後に、ワークエリア12上の任意のラック搭載位置40に手動で次の検体ラック20が配置される(S402)。そして、検体ラック20を搭載されたラック搭載位置40の位置検出センサ42が搭載を検出し(S404)、その結果が、信号変換ユニット18を介してホストコンピュータへ送信される(S406)。
【0041】
さらに、ICタグリーダ・ライタ16にラック情報の読み込みが指示され(S408)、ICタグリーダ・ライタ16が、ワークエリア12の全体からラック情報を読み込む(S410)。この段階では、ワークエリア12上に2つの検体ラック20が配置されているため、2つ分のラック情報が読み込まれる。つまり、1個分の追加情報の読み込みが確認され(S412)、ICタグリーダ・ライタ16が読み込んだ2つのラック情報をホストコンピュータに送信する(S420)。
【0042】
そして、ホストコンピュータは、新しい検体ラックが配置される前のワークエリア12の全体から得られるラック情報と、新しい検体ラックが配置された後のワークエリア12の全体から得られるラック情報とを比較する(S422)。この比較で、新たに増えたラック情報が新たに配置された検体ラック20のものであることがわかる(S424)。
【0043】
また、ホストコンピュータには、位置検出センサ42による検出結果も送信されているため、ホストコンピュータは、新たに読み込んだ(新たに増えた)ラック情報と、そのラック情報が得られたタイミングで検出されたラック搭載位置40とを特定して(S426)、新たな検体ラック20が搭載されたラック搭載位置40とその検体ラックのラック情報とを対応付ける(S428)。
【0044】
複数の検体ラック20が、ワークエリア12上に1つずつ確実に配置される場合には、S402からS428までの各処理を検体ラック20が増設されるごとに繰り返すことにより、各検体ラック20のラック搭載位置40とその検体ラック20のラック情報が対応付けられる。
【0045】
ところが、例えば、S404のステップで、複数の検体ラック20(1番目と2番目の検体ラック20)が搭載されてしまう場合も考えられる。この場合、S410のステップで、複数の追加情報(複数の検体ラック20に関するラック情報)が読み込まれて、S412での判断を経由して、複数のラック情報の読み込みが確認され、複数のラック情報が読み込まれたことをオペレータに知らせる。知らせる手段としては、例えば、アラームランプ点灯やブザーなどのアラーム音発生等の手段を用い、確実に知らせるようにする(S414)。
【0046】
アラームを認識したオペレータは、ほぼ同時刻に架設した検体ラック20のなかで、後から架設した(2番目に設置した)検体ラック20をワークエリア12から一旦取り外し(S416)、最初に架設した(1番目に設置した)検体ラック20のラック情報を再度読み込ませる指示をICタグリーダ・ライタ16に与え(S418)、S404以降のステップがさらに実行される。
【0047】
S416のステップで、後から架設した検体ラック20が取り除かれて、最初に架設した検体ラック20のみが残されていれば、S404以降のステップが再実行された際に、S412での判断を経由して、S420以降のステップが実行される。そして、S428のステップで、1番目に設置した検体ラック20に関して、検体ラック20が搭載されたラック搭載位置40とその検体ラックのラック情報とが対応付けられる。
【0048】
なお、S428のステップでラック位置とラック情報の対応付けが完了した際に、対応付けが完了した旨をランプ等によりユーザへ知らせるようにしてもよい。そして、ユーザは、ランプ等による完了報告を確認してから、次の検体ラック20をワークエリア12に架設する。
【0049】
検体ラック20がワークエリア12に配置される度に、図4に示すフローチャートが繰り返し実行されることにより、ワークエリア12上に配置される全ての検体ラック20について、各検体ラック20のラック位置とラック情報が対応付けられる。
【0050】
ちなみに、検体ラック20がワークエリア12から引き抜かれた場合にも、図4に示すフローチャートを応用して、引き抜かれた検体ラック20のラック位置とラック情報とを対応付けることができる。例えば、S422のステップで、検体ラックが引き抜かれる前のワークエリア12の全体から得られるラック情報と、検体ラックが引き抜かれた後のワークエリア12の全体から得られるラック情報とを比較する。これにより、検体ラック20が引き抜かれたことにより欠落したラック情報が、引き抜かれた検体ラック20のものであることがわかる。また、位置検出センサ42によって引き抜かれた検体ラック20のラック搭載位置40もわかるため、引き抜かれた検体ラック20のラック位置とラック情報を対応付けることが可能になる。
【0051】
次に、検体ラック20が装置の搬送機構などによってワークエリア12に載せられる場合のラック情報の読み取り手順について説明する。
【0052】
図5は、検体ラック20が装置によってワークエリア12上に載せられる場合の、ラック情報の読み取り手順を示すフローチャートである。以下、フローチャートに従ってその手順を説明する。
【0053】
まず、ワークエリア12上の任意のラック搭載位置40に搬送機構などによって検体ラック20が配置される(S502)。そして、検体ラック20が搭載されたラック搭載位置40の位置検出センサ42が検体ラック20の搭載を検出し(S504)、その結果が、信号変換ユニット18を介してホストコンピュータへ送信される(S506)。同時に、位置検知センサ42が検体ラック20を検出したタイミングを示すタイミング信号がホストコンピュータに送信される。ホストコンピュータは、このタイミング信号に基づき、ICタグリーダ・ライタ16にラック情報の読み込みを指示する(S508)。
【0054】
ICタグリーダ・ライタ16は、ホストコンピュータの指示に従い、ワークエリア12の全体からラック情報を読み込む(S510)。検体ラック20をワークエリア12上に1つずつ配置するように搬送機構が制御されると、最初の段階では、ワークエリア12上に検体ラック20が1つだけ存在することになる。そのため、この段階で得られたラック情報は、1つしか存在しない検体ラック20のものであることを特定できる。従って、この最初の段階では、次にS520のステップに進み、検体ラック20のラック位置とラック情報の対応付けが行われる。
【0055】
さらに、任意の時間経過後に、ワークエリア12上の任意のラック搭載位置40に搬送機構によって次の検体ラック20が配置される(S502)。そして、検体ラック20を搭載されたラック搭載位置40の位置検出センサ42が搭載を検出し(S504)、その結果が、信号変換ユニット18を介してホストコンピュータへ送信される(S506)。
【0056】
さらに、ICタグリーダ・ライタ16にラック情報の読み込みが指示され(S508)、ICタグリーダ・ライタ16が、ワークエリア12の全体からラック情報を読み込み(S510)、ICタグリーダ・ライタ16が読み込んだ2つのラック情報をホストコンピュータに送信する(S512)。
【0057】
そして、ホストコンピュータは、新しい検体ラックが配置される前のワークエリア12の全体から得られるラック情報と、新しい検体ラックが配置された後のワークエリア12の全体から得られるラック情報とを比較する(S514)。この比較で、新たに増えたラック情報が新たに配置された検体ラック20のものであることがわかる(S516)。
【0058】
また、ホストコンピュータには、位置検出センサ42による検出結果も送信されているため、ホストコンピュータは、新たに読み込んだ(新たに増えた)ラック情報と、そのラック情報が得られたタイミングで検出されたラック搭載位置40とを特定して(S518)、新たな検体ラック20が搭載されたラック搭載位置40とその検体ラックのラック情報とを対応付ける(S520)。
【0059】
検体ラック20が搬送機構によって搬送される本例の場合には、S520でラック位置とラック情報との対応付けが完了したことを確認してから、搬送機構によって、次の検体ラック20をワークエリア12に配置する制御パターンを実現することができる。つまり、手動の場合のように、複数の検体ラック20を同時にワークエリア12へ配置するといった、不規則な配置動作を回避することができる。
【0060】
検体ラック20がワークエリア12に配置される度に、図5に示すフローチャートが繰り返し実行されることにより、ワークエリア12上に配置される全ての検体ラック20について、各検体ラック20のラック位置とラック情報が対応付けられる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、例えば、以下に示すような効果を奏する。
【0062】
上記実施形態により、自動分注装置や検体前処理装置のワークエリア(分注テーブル)上に架設された複数の検体ラックについて、分注テーブル上のどの位置にどんなラック情報を持った検体ラックが架設されているかを常にチェックすることが可能となる。これにより、例えば、分注処理や検体前処理などの処理フローの過程において、必要な時に、検体ラック内の検体サンプルに関する情報を取得することができ、さらに正確な分注処理や検体前処理が可能になる。
【0063】
また、上記実施形態では、一つのアンテナが複数の無線ICタグからの無線信号を受信している。なお、上記実施形態では、各検体ラックごとに位置検出センサを設けているが、位置検出センサは比較的簡易な構成であり、低価格で小型のものを利用することができる。そのため、本実施形態では、各検体ラックごとにアンテナを設ける場合に比べて、装置の低価格化や小規模化が可能になる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態やその効果は、本発明を説明するうえでの単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るラック認識装置の全体構成図である。
【図2】本実施形態で利用される検体ラック20を説明するための図である。
【図3】本実施形態による検体ラックの位置検出を説明するための図である。
【図4】検体ラックが手動で搬送される場合のラック情報の読み取り手順を示すフローチャートである。
【図5】検体ラックが装置によって搬送される場合のラック情報の読み取り手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10 ラック認識装置、14 アンテナ、16 ICタグリーダ・ライタ、20 検体ラック、30 無線ICタグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各検体ラックごとに無線タグが設けられた複数の検体ラックを載せる作業テーブルと、
作業テーブル上に割り当てられた複数のラック位置の各々に設けられ、対応するラック位置に検体ラックが載せられたか否かを検出する複数のラック検出センサと、
作業テーブル上に載せられた複数の検体ラックに設けられた複数の無線タグからの無線信号を包括的に受信するアンテナと、
アンテナによって受信される無線信号を介して、作業テーブル上の複数の検体ラックに関するラック情報を読み取る読み取りユニットと、
を有し、
複数のラック検出センサによって検出された作業テーブル上の各ラック位置ごとの検体ラックの有無に関する検出結果と、読み取りユニットによって読み取られた作業テーブル上の複数の検体ラックに関するラック情報と、に基づいて、作業テーブルに載せられた各検体ラックのラック位置とその検体ラックのラック情報とを対応付ける、
ことを特徴とするラック認識装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラック認識装置において、
前記複数のラック検出センサによって、作業テーブルに新たに載せられた新検体ラックのラック位置が検出され、
前記読み取りユニットによって、新検体ラックが載せられる前の作業テーブル上の検体ラックに関するラック情報と、新検体ラックが載せられた後の作業テーブル上の検体ラックに関するラック情報と、が読み取られ、
新検体ラックが載せられる前のラック情報と新検体ラックが載せられた後のラック情報との比較から新検体ラックに関するラック情報が抽出され、新検体ラックのラック情報と新検体ラックのラック位置とが対応付けられる、
ことを特徴とするラック認識装置。
【請求項3】
請求項2に記載のラック認識装置において、
前記アンテナから送信される無線信号を介して、作業テーブル上の複数の検体ラックに設けられた複数の無線タグに対してラック情報を書き込む書き込みユニットを有する、
ことを特徴とするラック認識装置。


【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−327834(P2007−327834A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158848(P2006−158848)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】