説明

ラドン検出器及び該検出器を備える連続検出装置

【課題】本発明は、特にエアロゾルを含む周囲空気内に存在するラドン及びその崩壊生成物の検出器(20)であって、前記ラドン及び前記崩壊生成物によって放出される放射線の作用下で信号を発する何もない区域を有するPN接合を組み込んだシリコンペレット、このシリコンペレットを被覆し、前記検出器を外気で作動させることのできるパッシベーション層(22)、及び、前記パッシベーション層を被覆し、放射性核種の捕集電極を形成する導体層(24)を備えることを特徴とする検出器(20)に関する。本発明は、また、該検出器を備える検出装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラドン検出器及び該検出器を備える検出装置に関する。ラドンは、香りも味も色もない放射性の不活性ガスであり、従って、人間の感覚では検出できない。
【背景技術】
【0002】
ラドンは、主として地球上の全ての岩及び土に遍在するウランの崩壊から生じる天然ガスである。
【0003】
土は、ラドンを放出する。ラドンが崩壊するときは、崩壊生成物ともいう関連生成物、例えば、ポロニウム218及びポロニウム214を生成する。
【0004】
ラドン自体は、急速に吸い込まれ、吐き出され、肺の内部に定着せず、場合によっては僅かな部分が血液中、それに続いて体内を通過することがあるが、ガンの形成の大きな危険性を生じさせることはないので、健康上の危険性はほとんどない。
【0005】
ところが、寿命が短い、寿命が一時間未満の崩壊生成物は、放射線、特にα粒子を放出し、空気中の埃及び粒子、エアロゾル及び/または煙の粒子上に定着する傾向があり、呼吸管壁に堆積して、粘膜に侵入することがある。実際、α粒子がそれらに結合すると、DNAを損傷することがあり、この損傷したDNAの複製によって肺ガンの大きな原因となることがある。
【0006】
ラドンが堆積して、健康に害を及ぼす容積活量に達する家の住人は、長い期間閉じ込められることがあるので、極めて危険である。また、現在建築される住宅はますます断熱化されており、これらの住居の換気及び通風は必ずしも十分ではない。
【0007】
ラドンは、様々な方法で、例えば、床や壁のひび割れによって、壁と床との間の隙間によって、壁に存在する孔によって、住居に侵入することができる。
【0008】
また、住居及び公共施設でラドン及びその崩壊生成物を測定することができ、その率の変化を監視することが極めて重要であることは明らかである。
【0009】
空気中に存在するラドンは、立方メートルあたりのベクレルで表される容積活量によって測定される。従って、公共施設については、公知の法律では、人の健康に許容できる容積活量の限界として400Bq/mが定められている。1000Bq/m以上では、介入が必要である。
【0010】
新しい建造物については、法律では制限率を200Bq/mに定めている。
【0011】
ラドンを測定する装置は公知であるが、検出、監視及び問題を解決するための介入の責務を負うユーザまたは組織の要望にしか応えていない。
【0012】
従って、特許文献1には、α粒子を計算することのできる半導体付検出器を備える装置が記載されている。その発明では、検出器を包囲する空気の湿度の割合を減少させて、その検出器を保護する手段が備えられている。それによって、この装置は、永続するのが困難であり、高価で、個人で使用することは特に難しい。
【0013】
特許文献2には、静電気捕集及びラドン測定装置が記載されている。この装置は中央陰極と陽極を備えており、どちらもジャケット内に配置されている。陽極は、円錐台の形状の壁が延長されたドームの形状であり、それによって、粒子を陰極の方へ集める。
【0014】
陰極は、α放射線を透過させる導電性フィルムによってコーティングされている。
【0015】
特許文献3は、原器を実現するためのラドン222の測定に関するものである。
【0016】
また、エレクレットを有するイオン化チャンバのように核飛跡または静電気放電を検出することができる装置が存在するが、それらの装置は用途が一つである。
【0017】
さらに、ラドン率を連続的に検出及び測定することができる、「Radim 3A」という名称の市販のモニタが存在するが、電極が光線及び光子を避けて、ドーム下で作動する必要があるので、サイズが大きくなる。そのうえ、高価であり、その感度は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第4104523号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第5029248号
【特許文献3】フランス特許第2728691号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、外気で作動することができ、使用が簡単で、あまり場所を取らず、多数の測定を記憶し、その復元を可能にすることができ、原価が個人の要望と両立する検出器を提案することである。
【0020】
添付図面を参照して、本発明による検出器を説明するが、それらの各図面は本発明を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明による検出器の原理の概略図である。
【図2】図2は、検出器に結合された信号処理電子チェーン図であり、それによって、検出装置を実現することができる。
【図3】図3は、一実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明による検出装置10の主な実施態様を概略的に示している。
【0023】
検出装置は、例えば、直径が5〜50cmの絶縁材料製の円盤の形状の支持材12を備えている。その厚さは材料に応じて変えられるが、支持材は剛性でなければならない。
【0024】
この支持材12は、導体電極16を備えており、その電極はエアロゾルの静電気捕集手段の一部である。この電極16は、好ましくは、気相で堆積された層または絶縁材料製の支持材12上に直接堆積した薄膜層までも備えるステンレス鋼、アルミニウム、銅、または、鋼鉄などのコーティングされた金属製の環形である。
【0025】
このリング状の形状によって、先端作用を抑え、完全に対称であることができる。
【0026】
周縁の導体電極16は、記載した実施態様では、高電位にされ、およそ大きさを示すと、10〜2000Vであり、この値は多数のパラメータ、すなわち、幾何学的構造、電極間の距離、測定した濃度範囲に応じて変化するが、それについては後で説明する。
【0027】
絶縁材料製の支持材12の中心に、いわゆる捕集電極であるもう一つの導体電極18があり、それはエアロゾルの静電気捕集手段14の別の部分である。
【0028】
導体捕集電極18は、支持材12に形成された孔内に配置される。
【0029】
この本発明による導体捕集電極18は、およそ5〜100μmの何もない区域を有するシリコン上に組み込まれたPN接合を備える検出器20を組み込んでおり、この電極の面積は4〜100mmである。
【0030】
この区域の厚さは、求められる検出に応じて変化する。
【0031】
検出器20を組み込んだシリコンペレットは、場合によってはシリカのパッシベーション層22によって、及び、いわゆる導体電極18を構成する導体層24によって被覆されている。
【0032】
この導体層24は、記載した実施態様では、厚さ0.05〜5μmの炭素層を備えており、その上に厚さ0.05〜5μmのアルミニウム層が備えられている。
【0033】
検出器20を組み込んだ電極18は、好ましくは、その表面が絶縁支持材12の平面内に位置するように配置されている。
【0034】
導体捕集電極18は、低電位にされており、それによって、特にエアロゾルによって運搬される放射性核種を捕集する。
【0035】
これが、検出器20によって捕集されるこれらの放射性元素によって放出される放射線である。
【0036】
電極18は、相乗的に検出器を確実に保護することが分かる。
【0037】
この検出器20及びそれを内蔵する装置から出る信号は、核放射線の作用下で、電子チェーン26によって処理される。
【0038】
例として、概略的に図2に示したこのチェーンは、少なくとも、下記の要素、すなわち、プリアンプ28及びプリアンプの出力インパルスを、回路及び/またはそのインパルスが向かうシステムに適合するように形成する段30を含む。
【0039】
このチェーンは組み込まれることができ、もちろん、図示したものは単に例にすぎない。
【0040】
また、信号とバックノイズ、特に回路によって生成する電子ノイズとの識別を向上させるための差動増幅器を作成することができる。
【0041】
γ相互作用及び/またはβ放射線によって生成する寄生信号を排除するためのディスクリミネータ32を含むこともある。
【0042】
また、図3に図示したように、検出器を包囲する、孔のある周縁ジャケット34を備えて、分析されるガスの容積を限定することができる。
【0043】
この場合、導体であり、電極16との接触によって高電位にされるのは周縁ジャケット34であり、ジャケット34の容積は、およその大きさで、0.1〜50lの範囲で変化することができる。
【0044】
堆積された層のようなパッシベーション層及び導体層は、エアロゾルに関係する、求める電荷の捕集を可能にしながら、シリコン内に形成されたPN接合の保護を確実にするので、本発明による検出器は、外気及び光線で作動できるという利点を示す
【0045】
本発明による検出器の場合、遊離した電荷があり、したがって、エアロゾルに結合していないので、感度の増大さえも確かめられるが、しかし、それらの電荷は、それにもかかわらず導体層24によって捕集され、放出する放射線を回収することができる。
【0046】
この場合、外部電極によって、検出容積を大きくすることができる。
【0047】
本発明による改良された一実施態様によると、導体層24は、その空気との界面にざらつきを示す。
【0048】
したがって、一部の捕集面を増加させるが、特に、極めて大きく捕集を増大させるのを助ける多数の先端作用を生じさせる。
【0049】
これらのざらつきは、必要ならば、マスクを使用して、アルミニウムなどの捕集電極18の金属の気相堆積時に形成することができる。
【0050】
これらのざらつきの厚さは、1μm未満でなければならない。
【0051】
検出装置をコンパクトにするために、本発明は、全体をこの用途に特有の集積回路の形態、ASICに実現して、集積化を提供する。
【0052】
補足として、増幅され、成形された電荷インパルスは、アナログ/デジタル変換後処理されて、センサによって検出された放射線のエネルギースペクトルを設定することができる。
【0053】
また、集積回路に、必要に応じて、インパルスの上りカウンタ、ディスクリミネータを加えることができる。
【0054】
小型化され、最適化された一実施態様によると、検出器はUSB(Universal Serial Bus)型のキーに関連される。この場合、キーは記憶化を確実にし、視覚化及び/または通訳ソフトウェアに向けて、検出器から出たデータの接続及び変換手段を備える。
【符号の説明】
【0055】
12 支持材
14 静電気捕集手段
16 周縁導体電極
18 中央導体捕集電極
20 検出器
22 パッシベーション層
24 導体層
26 信号処理電子チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にエアロゾルを含む周囲空気内に存在するラドン及びその崩壊生成物の検出器(20)であって、
−前記ラドン及び前記崩壊生成物によって放出される放射線の作用下で信号を発する何もない区域を有するPN接合を組み込んだシリコンペレット、
−このシリコンペレットを被覆し、前記検出器を外気で作動させることのできるパッシベーション層(22)、及び、
−前記パッシベーション層を被覆し、放射性核種の捕集電極を形成する導体層(24)を
備えることを特徴とする検出器。
【請求項2】
前記導体層(24)は、その空気との界面にざらつきを示すことを特徴とする請求項1に記載のラドン及びその崩壊生成物の検出器(20)。
【請求項3】
前記導体層(24)は、厚さ0.05〜5μmの炭素層であり、その上に厚さ0.05〜5μmのアルミニウム層が載っており、パッシベーション層はシリカ層であり、その面積は4〜100mmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のラドン及びその崩壊生成物の検出器(20)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の検出器(20)を備える、 特にエアロゾルを含む周囲空気内に存在するラドン及びその崩壊生成物の検出装置であって、この装置は、
−絶縁材料製支持材(12)、
−周縁導体電極(16)及び前記検出器(20)の導体層(24)である中央導体捕集電極(18)を備えるエアロゾルの静電気捕集手段(14)、
−該検出器から出力された信号の処理電子チェーン(26)を、
備えることを特徴とする検出装置。
【請求項5】
前記絶縁支持材(12)は円盤であり、周縁導体電極(16)は導電材料製の環形であり、検出器(20)を組み込んだ導体捕集電極(18)はこの絶縁支持材(12)に形成された孔内に配置されることを特徴とする請求項4に記載のラドン及びその崩壊生成物の検出装置。
【請求項6】
前記検出器(20)を組み込んだ電極(18)は、その表面が前記絶縁支持材(12)の平面内に位置するように配置されることを特徴とする請求項4または5に記載の検出装置。
【請求項7】
周縁の導体で、孔があり、検出器(20)を囲み、周縁導体電極(16)と接触しているジャケット(34)を備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載のラドン及びその崩壊生成物の検出装置。
【請求項8】
前記処理電子チェーン(26)は、プリアンプ(28)及びそのプリアンプの出力インパルスを、そのインパルス用の回路及び/またはシステムに適合するように形成する段(30)を特徴とする請求項4〜7のいずれか一つに記載のラドン及びその崩壊生成物の検出装置。
【請求項9】
信号及びバックノイズ間の識別を向上させるための差動アンプを備えることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一つに記載のラドン及びその崩壊生成物の検出装置。
【請求項10】
γ相互作用及び/またはβ放射線によって生成する寄生信号を排除するためのディスクリミネータ(32)を含むことを特徴とする請求項4〜9のいずれか一つに記載のラドン及びその崩壊生成物の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−509409(P2011−509409A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541830(P2010−541830)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050029
【国際公開番号】WO2009/092945
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510182113)
【Fターム(参考)】