説明

ラパマイシン42−エステルボロネートからラパマイシン42−エステルを調製するためのスケーラブルな方法

本発明は、ラパマイシン42-エステルボロネートをジオールと反応させ、再結晶およびジオールを用いた処理により粗ラパマイシン42-エステルを精製することによってラパマイシン42-エステルを調製するためのスケーラブルな方法を提供する。また、アセトンおよびラパマイシンの混入物を含む母液からラパマイシン42-エステルボロネートを単離および精製する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
ラパマイシン42-エステルは、ストレプトミセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)によって自然に生成されるラパマイシン、すなわち大環状トリエン抗生物質の誘導体である。ラパマイシンは、その抗腫瘍効果および免疫抑制効果に基づき、有用であることが一連の出願において発見されている。そのような使用には、移植片拒絶反応、移植片対宿主拒絶反応、全身性エリテマトーデスを含む自己免疫疾患、肺炎症および眼炎症を含む炎症性疾患、成人T細胞白血病/リンパ腫、固形腫瘍、真菌感染症、ならびに平滑筋細胞増殖および血管手術後の内膜肥厚を含む過剰増殖性血管障害の予防、阻害または治療が含まれる。これらやその他の病気を治療するために、3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)を有するラパマイシン42-エステル等のラパマイシン42-エステル類を含むラパマイシンおよびラパマイシン誘導体の研究が続けられている。
【0002】
CCI-779を含むラパマイシン42-エステル類の調製および使用は、米国特許第5,362,718号明細書に記載されている。CCI-779の位置選択的合成は、米国特許第6,277,983号明細書に記載されている。米国特許出願公開第2005-0033046号明細書(および米国特許出願番号第10/903,062号)には、ボロネートの化学反応に基づいたCCI-779の位置選択的合成が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ラパマイシン42-エステルを精製するためのスケーラブルな方法を含めた、ラパマイシン42-エステルを調製するための更に効率的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、ラパマイシン42-エステルボロネートから、3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)を有するラパマイシン42-エステルを含めたラパマイシン42-エステルを調製および精製するためのスケーラブルな(スケール拡張可能な)方法を提供する。
【0005】
ラパマイシン42-エステルボロネートのジオールを用いたトランスホウ素化(transboronation)を通じた粗ラパマイシン42-エステルの調製は、溶媒系において行われ、ここで、結晶性生成物が得られる。1つの実施形態において、粗ラパマイシン42-エステルは、望ましくない副産物を減少させるためのジオールを用いた更なる処理によって精製され、続いて再結晶化される。別の実施形態においては、トランスホウ素化によって生成された粗ラパマイシン42-エステルが、はじめに再結晶化され、次に、ラパマイシン42-エステルのスラリーがジオールで処理されて、精製ラパマイシン42-エステルが生成される。
【0006】
有利な点としては、本発明の方法では、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として使用せずに済む(THFは製造中に完全に除去できないので、油性で粘着性の固体となり、ラパマイシン42-エステルの単離を困難にする)。また、本発明は、ラパマイシン42-エステル精製中のジオールのアセトン溶液の使用に関連した単離の問題を解決する(この際、特にスケールアップ中、残留溶媒が、所望のやり方での結晶化を妨げ、安定性および処理上の問題を引き起こす)。
【0007】
先行技術に照らした本発明のその他の局面および利点は、以下の発明の詳細な説明からすぐに明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ラパマイシン42-エステルボロネートをジオールと反応させ、得られた粗ラパマイシン42-エステルを再結晶化により、スラリーをジオールにより精製して最終的なラパマイシン42-エステルを調製するためのスケーラブルな方法を提供する。1つの実施形態において、粗ラパマイシン42-エステルは、はじめに溶媒内でジオールを用いて処理されて固体のラパマイシン42-エステルを形成し、次に、再結晶化されて精製ラパマイシン42-エステルを形成する。別の実施形態において、粗ラパマイシン42-エステルは、はじめに再結晶化されてラパマイシン42-エステルのスラリーを形成し、次にジオールで処理されて精製ラパマイシン42-エステルを形成する。
【0009】
用語「ラパマイシン42-エステル」は、ラパマイシンの42位におけるヒドロキシ基のエステル類;これらラパマイシン42-エステルのエーテル類、アミド類、カーボネート類、カルバメート類、スルホネート類、オキシム類、ヒドラゾン類およびヒドロキシアミン類(ここで、核における官能基は、例えば還元または酸化により修飾されている);多様なデスメチルラパマイシン等のラパマイシンの代謝物;および開環ラパマイシン(米国特許第5,252,579号明細書に記載されたセコラパマイシン等)を含む。また、用語「ラパマイシン42-エステル」は、ラパマイシン42-エステルの薬学的に受容可能な塩を含む。ラパマイシン42-エステルは、酸性または塩基性の部分を含有することによってそのような塩を形成することができる。本明細書において、薬学的に受容可能な塩は、塩化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素、硫黄、クエン酸、マレイン酸、酢酸、乳酸、ニコチン酸、コハク酸、シュウ酸、リン酸、マロン酸、サリチル酸、フェニル酢酸、ステアリン酸、ピリジン、アンモニウム、ピペラジン、ジエチルアミン、ニコチンアミド、ギ酸、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、桂皮酸、メチルアミノ、メタンスルホン酸、ピクリン酸、酒石酸、トリエチルアミノ、ジメチルアミノ、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含むが、これらに限定はされない。更なる薬学的に受容可能な塩は、当業者にとって周知のものである。
【0010】
多様なラパマイシン42-エステルが、以下の特許に記載されている:アルキルエステル類(米国特許第4,316,885号)、アミノアルキルエステル類(米国特許第4,650,803号)、フッ素化エステル類(米国特許第5,100,883号)、アミドエステル類(米国特許第5,118,677号)、カルバメートエステル類(米国特許第5,118,678号)、シリルエーテル類(米国特許第5,120,842号)、アミノエステル類(米国特許第5,130,307号)、アセタール類(米国特許第5,51,413号)、アミノジエステル類(米国特許第5,162,333号)、スルホン酸/硫酸エステル類(米国特許第5,177,203号)、エステル類(米国特許第5,221,670号)、アルコキシエステル類(米国特許第5,233,036号)、O-アリール/-アルキル/-アルケニル/-アルキニルエーテル類(米国特許第5,258,389号)、炭酸エステル類(米国特許第5,260,300号)、アリールカルボニル/アルコキシカルボニルカルバメート類(米国特許第5,262,423号)、カルバメート類(米国特許第5,302,584号)、ヒドロキシエステル類(米国特許第5,362,718号)、ヒンダードエステル類(米国特許第5,385,908号)、複素環エステル類(米国特許第5,385,909号)、gem-二置換エステル類(米国特許第5,385,910号)、アミノアルカン酸エステル類(米国特許第5,389,639号)、ホスホリルカルバメートエステル類(米国特許第5,391,730号)、カルバメートエステル類(米国特許第5,411,967号)、カルバメートエステル類(米国特許第5,434,260号)、アミジノカルバメートエステル類(米国特許第5,463,048号)、カルバメートエステル類(米国特許第5,480,988号)、カルバメートエステル類(米国特許第5,480,989号)、カルバメートエステル類(米国特許第5,489,680号)、ヒンダードN-オキシドエステル類(米国特許第5,491,231号)、ビオチンエステル類(米国特許第5,504,091号)、O-アルキルエーテル類(米国特許第5,665,772号)、およびラパマイシンのPEGエステル類(米国特許第5,780,462号)。1つの実施形態において、42-ヘミスクシナート、42-ヘミグルタレートおよび42-ヘミアジペート等のジカルボン酸を有するラパマイシン42-エステルが選択される。
【0011】
1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルは以下の核構造を有する:
【化3】

【0012】
1つの実施形態において、R1は-C=O.CR7R7'R7"であり、ここで:
R7、R7'およびR7"は、独立して、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、-(CR12R13)fOR10、-CF3、-Fまたは-CO2R10であり;
R10は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフェニルメチル、ベンジル、2〜7個の炭素原子を有するアルコキシメチル、クロロエチルまたはテトラヒドロピラニルであり;
R12およびR13は、それぞれ独立して水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフルオロメチルまたは-Fであり;
f=0〜6である。
【0013】
本明細書の化合物は、1つ以上の不斉中心を含有でき、したがって、光学異性体およびジアステレオマーを生じさせ得る。化合物は、光学異性体およびジアステレオマー;ラセミ酸の、分解された鏡像異性的に純粋なR/S立体異性体;その他のR/S立体異性体の混合物;およびそれらの薬学的に受容可能な塩を含み得る。
【0014】
本明細書において、用語「アルキル」とは、直鎖および分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基のことを言う。1つの実施形態において、アルキル基は1〜約8個の炭素原子を有する(すなわちC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7またはC8)。別の実施形態において、アルキル基は1〜約6個の炭素原子を有する(すなわちC1、C2、C3、C4、C5またはC6)。更なる実施形態において、アルキル基は1〜約4個の炭素原子を有する(すなわちC1、C2、C3またはC4)。
【0015】
本明細書において、用語「アルケニル」とは、1個以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基のことを言う。1つの実施形態において、アルケニル基は3〜約8個の炭素原子を含有する(すなわちC3、C4、C5、C6、C7またはC8)。別の実施形態において、アルケニル基は1個または2個の炭素−炭素二重結合および3〜約6個の炭素原子を有する(すなわちC3、C4、C5またはC6)。
【0016】
本明細書において、用語「アルキニル」基とは、1個以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基のことを言う。1つの実施形態において、アルキニル基は3〜約8個の炭素原子を有する(すなわちC3、C4、C5、C6、C7またはC8)。別の実施形態において、アルキニル基は1個または2個の炭素−炭素三重結合および3〜約6個の炭素原子を含有する(すなわちC3、C4、C5またはC6)。
【0017】
本明細書において、用語「アルコキシ」とは、O(アルキル)基であって、結合点が酸素原子を通じてのものであり、アルキル基が上述のように置換され得るもののことを言う。
【0018】
1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルは、3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)を有するラパマイシン42-エステル(米国特許第5,362,718号)、および42-O-(2-ヒドロキシ)エチルラパマイシン(米国特許第5,665,772号)である。その立体化学の観点から描くと、CCI-779は以下の構造によって特徴づけられる:
【化4】

【0019】
1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルボロネートからラパマイシン42-エステルを調製するための発明の方法は、少なくとも82%、少なくとも85%、または少なくとも89%の収率(強度に対して補正されている)と、少なくとも95%または少なくとも98%の強度と、4%未満、2%未満、または好ましくは1%未満の全不純物とを提供する。本明細書において、これらの収率は、強度に対して以下のように補正される:収率(%)=[実際の重量×強度(%)]/[理論上の重量×100%]。
【0020】
別の実施形態において、ラパマイシン42-エステルは、3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)を有するラパマイシン42-エステルである。1つの実施形態において、全不純物は、0.1%未満のフェニルボロン酸、および好ましくは、0.05%未満のフェニルボロン酸を含有する。
【0021】
本発明の方法は、スケーラブルであるので、20kgを超える量の精製ラパマイシン42-エステル(すなわち上述のように全不純物を除く)を提供し得る。しかし、本発明はそのように限定されない。20kg、1kg、200g、8g、5g、またはそれより少ない量を得る際にも、本方法は有用である。
【0022】
本発明によれば、粗ラパマイシン42-エステルは、ラパマイシン42-エステルボロネートから調製される。1つの実施形態において、使用されるラパマイシン42-エステルボロネートは、以下の式で表されるものである。
【化5】

式中、Rは-O-C=O.CR7R8R9であり、ここで:
R7は、独立して水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、-(CR12R13)fOR10、-CF3、-Fおよび-CO2R10から成る群から選択され;
R10は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフェニルメチル、ベンジル、2〜7個の炭素原子を有するアルコキシメチル、クロロエチルまたはテトラヒドロピラニルであり;
R8およびR9は、共にXを形成し;
Xは、2-フェニル-ジオキソボリナンであり;
R12およびR13は、それぞれ独立して水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフルオロメチルまたは-Fであり;
f=0〜6である。
【0023】
本明細書において、2-フェニル-ジオキソボリナンは、任意に1個、2個または3個の基で置換され得、それらは独立して水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、-(CR12R13)fOR10、-CF3、-Fおよび-CO2R10から成る群から選択される。1つの実施形態において、置換基は1個、2個または3個のメチル基である。2-フェニル-ジオキソボリナンのフェニル基も任意に置換され得る。
【0024】
用語「置換アリール」は、ハロゲン、CN、OH、NO2、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、C1-C3ペルフルオロアルキル、C1-C3ペルフルオロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリール、ヘテロアリール等から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されているアリール基(例えばフェニル)のことを言う。望ましくは、置換アリール(例えばフェニル)基は、1〜約4個の置換基で置換されている。1つの実施形態において、置換基はハロゲンである。別の実施形態において、置換基は低級アルキルである。
【0025】
1つの実施形態において、2-フェニル-ジオキソボリナンは、2-フェニル-4,6,6-トリメチル-1,3,2-ジオキソボリナン、2-フェニル-1,3,2-ジオキサボリナン-5-イル、および2-フェニル-1,3,2-ジオキサボリナン-4-イルから成る群から選択され、ここで、フェニルは、上述のように任意に置換される。
【0026】
更なる実施形態において、ラパマイシン42-エステルボロネートは、3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)を有するラパマイシン42-エステルのボロネートである。
【0027】
ラパマイシン42-エステルボロネートは、前述の方法を用いる本発明の方法において使用するために調製することができる。例えば、CCI-779ボロネートを調製するための適切な方法の1つが、米国特許出願公開第2005-0033046号明細書(および米国特許出願番号第10/903,062号)に記載されており、以下の図式Iに示される。
【化6】

【0028】
当業者は、類似の手法を用い、別の31-トリメチルシリルエーテル、42-エステルボロネートを容易に利用して所望の42-エステルボロネートを調製することができる。典型的には、31-トリメチルシリルエーテル基が除去される。その後で、以下に示すように、得られた42-エステルボロネートをアセトンスラリーによって精製してCCI-779ボロネートを調製することができる。
【化7】

【0029】
この情報を与えられれば、当業者は、その他のラパマイシン42-エステルボロネートを容易に調製することができる。
【0030】
ラパマイシン42-エステルボロネート中間体を通じてラパマイシン42-エステルを調製する方法は、製造工程からクロマトグラフィーを完全に排除する手段である。ラパマイシン42-エステルボロネートは、約80〜85%の転換を伴うラパマイシンから調製される。しかし、単離収率は、アセトンスラリーによる精製後には有意に低くなる。予備実験においては、転換された材料のうちの約1/2が典型的に単離された。
【0031】
1つの実施形態において、本発明は、粗ラパマイシン42-エステルボロネートを単離するための改善された方法、およびラパマイシン42-エステルの調製に用いるためのラパマイシン42-エステルボロネートを精製するための改善された方法を提供する。しかし、この母液から粗ラパマイシン42-エステルボロネートを単離する方法は、2005年2月10日に公開された米国特許出願公開第2005/0033046号明細書に記載された製造工程と関連した使用に特に良く適合する。
【0032】
簡単に言えば、このスケーラブルな工程は、ラパマイシン42-エステルボロネートを産出する反応において有機溶媒が使用される方法を示す。このような溶媒は、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、THF、t-ブチルメチルエーテルおよび塩化メチレンを含み得る。しかし、濃縮物を形成するために、アセトンがしばしば使用される。しかし、ある実施形態においては、加水分解は、単相の水性酸/有機溶媒系を用いて行うことができる。したがって、選択された有機溶媒(例えばアセトン)は、希無機酸(例えば硫酸、塩酸またはリン酸等)と混合される。適切な希無機酸の濃度の範囲は、約0.1N〜約3N、約0.2N〜約2N、または約0.5Nである。望ましくは、この工程はpH 5〜6で行われる。任意で、適切な緩衝液(例えば酢酸ナトリウム)、あるいは重炭酸ナトリウムおよび/または酢酸が混合物に加えられて、pHが所望の範囲に調節または維持される。しかし、その他のラパマイシン42-エステルボロネートを生成する方法を使用しても良い。
【0033】
ラパマイシン42-エステルボロネートを単離する方法は、粗ラパマイシン42-エステルボロネートの、その生成のために使用される母液からの効率的な分離を可能にする。このような母液は、典型的に、ラパマイシン42-エステルボロネートおよび混入物(1つ以上の溶媒およびラパマイシン等)を含有し、最も多い単独の混入物は、典型的にはラパマイシンである。
【0034】
上述のように、本発明の方法は、上述のアセトンスラリー後の使用に特に適している。しかし、1つの局面においては、反応器は適切な溶媒で洗浄され、母液と混合される。任意で、母液は、第1アセトンスラリーから、または第1および第2アセトンスラリーの混合物から、または第1、第2および第3アセトンスラリーの混合物から得ることができる。母液は、更に任意で、洗浄工程で得られた液と混合されても良い。典型的には、反応の洗浄は、エーテル、例えばジエチルエーテル、トリメチルエーテル(例えばトリ-ブチルメチルエーテル)等を用いて行われる。
【0035】
粗ラパマイシン42-エステルボロネートは、母液を濃縮してろ過することにより母液から単離される。1つの実施形態において、母液は、ろ過前にスラリーになるまで濃縮される。典型的には、その結果収率は高まるが、生成物の品質は低くなる(例えば約70〜80% w/wのラパマイシン42-エステルボロネートに対し、約15〜20% w/wまたはそれ未満の混入ラパマイシン)。このスラリーは、図式IIの工程における母液と比較して、乾燥によって約15〜30%の範囲で減量する場合がある。別の実施形態において、母液は、濃厚スラリーになるまで濃縮され、ろ過前にエーテル(例えばジエチルエーテル)を用いて希釈される。典型的には、得られた濃厚スラリーは、図式IIの工程が利用される第1または第2アセトンスラリー由来の母液と比較して、乾燥によって約30〜約40%の範囲で減量する(LOD)。この方法を使用すると、濃縮度のより低いスラリーを使用した場合と比較して、より品質の高い生成物が得られる(例えば約12〜15% w/wまたはそれ未満のラパマイシン)。更に別の実施形態において、母液は発泡体になるまで濃縮され(すなわち、濃厚スラリーまで濃縮して得られる湿塊よりも低い水分含量)、次にエーテルで処理される。この実施形態は、高品質の生成物を提供する(例えば、約12% w/w未満、好ましくは11% w/w未満、最も好ましくは10% w/w未満のラパマイシン)。
【0036】
別の局面において、本発明は、単離された粗ラパマイシン42-エステルボロネートからのラパマイシン42-エステルボロネートの精製を提供する。望ましくは、精製は、単離された粗ラパマイシン42-エステルボロネートにおける混入物を少なくとも約10倍減少させる。1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルボロネートは、1wt%未満のラパマイシン、好ましくは約0.8wt%またはそれ未満のラパマイシンを含有するように精製される。別の実施形態において、精製されたラパマイシン42-エステルは、約0.7wt%またはそれ未満のラパマイシンを含有する。
【0037】
1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルボロネート、ラパマイシンおよびその他可能性のある混入物(例えば少なくとも1つの溶媒)を含む粗ラパマイシン42-エステルボロネートを精製する方法は、粗ラパマイシン42-エステルボロネートおよび適切な溶媒を含む混合物の加熱を伴う。溶媒は、典型的には、重量でラパマイシン42-エステルボロネートを超える量が加えられる。例えば、溶媒は、ラパマイシン42-エステルボロネートの重量の約2、3、または4倍の量が加えられて良い。典型的には、混合物は加熱還流され、少なくとも約1時間保持される。温度および保持時間の長さは、多様な要因(例えば選択される溶媒、所望の保持時間の長さ等)によって異なって良い。1つの実施形態において、選択される溶媒はアセトンであり、加熱温度は約55〜62℃である。しかし、溶媒としてその他のケトン類が選択されても良い(例えばメチルエチルケトン)。更にその他の溶媒には、エーテル(例えばエーテル、ジエチルエーテル、トリブチルメチルエーテル(TBME)、トリエチルエーテル等)、アセトニトリル、それらの混合物(例えばアセトン/エーテル(割合が1:1〜1:2))が含まれ得る。
【0038】
混合および加熱後、混合物は冷却され、少なくとも約6時間攪拌される。典型的には、混合物は時間をかけて室温まで冷却させておく。しかし、適切な方法を用いてより迅速に冷却しても良い。
【0039】
混合物は濃縮されてスラリーを形成する。溶媒(例えばアセトン)の少なくとも約1/3から少なくとも約1/2を除去後、エーテルを混合物に加えるが、この量は典型的にはおおよそ除去された溶媒の量である(例えば、ラパマイシン42-エステルボロネートの重量の約1倍から約1.5〜2倍)。しかし、それより多量または少量の溶媒を加えても良い。溶媒の除去には、従来の方法を用いることができる(例えば、加熱による、または加熱をしない、真空下での蒸留)。1つの望ましい実施形態において、エーテルはジエチルエーテルである。しかし、その他の適切なエーテル類が、本明細書に記載のものから容易に選択でき、それらは当業者に周知のものである。得られたスラリーは、次にろ過されて、精製ラパマイシン42-エステルボロネートが回収される。
【0040】
最初の一連の濃縮/スラリー、結晶化およびろ過の工程により、ラパマイシン42-エステルボロネートの純度が改善される。しかし、所望の純度を有する生成物、例えば約1%未満のラパマイシンを有する生成物を得るためには、単離手順(例えば蒸留/スラリー、結晶化およびろ過)および/または精製手順(例えば還流、濃縮、結晶化およびろ過)を1回または2回繰り返す必要があるかも知れない。1つの実施形態において、溶媒との混合を繰り返す前に、約5%未満、好ましくは約3%未満、または約1%またはそれ未満の乾燥減量を得るまで生成物をろ過する。任意で、第1回の精製を行った容器を酢酸エチルで洗浄することができ、得られた液は本明細書に記載の単離および/または精製方法に用いられる。
【0041】
得られた精製ラパマイシン42-エステルボロネートは、本明細書に記載されるように、ラパマイシン42-エステルの調製に使用することができる。
【0042】
(ラパマイシン42-エステルの調製)
ラパマイシン42-エステルボロネートは、適切な溶媒中のジオールを利用して粗ラパマイシン42-エステルに転換される(すなわちトランスホウ素化)。本明細書におけるトランスホウ素化は、既出のラパマイシン42-エステルボロネートの式によって包含されるすべてのラパマイシン42-エステルボロネート化合物について達成され得る。当業者であれば、利用されるラパマイシン42-エステルボロネートに基づき、溶媒混合物中のラパマイシン42-エステルボロネートの濃度、ジオールとラパマイシン42-エステルボロネートの割合、溶媒の組成、反応温度、および所望の反応時間、または本明細書に記載のその他の変数を容易に変えることができるであろう。
【0043】
1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルボロネートは、溶媒混合物中約10〜30wt%、約15〜30wt%、約20〜30wt%、または約25〜30wt%の割合で提供される。更なる実施形態において、ラパマイシン42-エステルボロネートは、約30wt%の割合で提供される。これより高い濃度のラパマイシン42-エステルボロネート、例えば40wt%のものは好ましくない。なぜならば、粘着性の固体が沈殿する恐れがあり、これが反応器の壁に付着して収率を減少させるかも知れないからである。当業者であれば、溶媒の組成、反応温度、および所望の反応時間に基づいて好ましい割合を選択することができるであろう。
【0044】
ジオールは、ジオールとラパマイシン42-エステルボロネートのモル比が約2:1〜約10:1となるように反応混合物内において提供される。1つの実施形態において、ジオールとラパマイシン42-エステルボロネートのモル比は少なくとも5:1である。更なる実施形態において、ジオールとラパマイシン42-エステルボロネートのモル比は約5:1である。その他の実施形態において、ジオールとラパマイシン42-エステルボロネートのモル比は約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、またはその中で任意に増加したもの(例えば5.1:1または8.5:1)である。一般的に、ジオールの量を増やすと反応の完了が促進される。当業者であれば、溶媒混合物中のラパマイシン42-エステルボロネートの濃度、溶媒の組成、反応温度、および所望の反応時間に基づいて好ましい割合を選択できるであろう。
【0045】
多様な1,2-ジオール類、1,3-ジオール類、1,4-ジオール類および1,5-ジオール類が、このトランスホウ素化を達成するために使用され得る。2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のアルキル置換ジオール類が好ましい。別の実施形態において、ジエタノールアミンまたは固体に支持されたポリスチレンジエタノールアミン(PS-DEAM)が利用され得る。カルボン酸試薬(シュウ酸、マロン酸、酒石酸、フタル酸、サリチル酸等)を使用しても、トランスホウ素化を達成することができる。
【0046】
1つの実施形態において、溶媒混合物は、エーテルとヘプタン類の混合物で構成される。更なる実施形態において、エーテルはジエチルエーテルである。しかし、本発明はそのように限定されない。1つの実施形態において、溶媒混合物は、エーテルおよび単一のヘプタンを含有する。その他の実施形態において、溶媒混合物は、エーテルおよびヘプタン類の混合物を含有する。更にその他の実施形態において、ヘプタン類の代わりに、トルエン、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、エチルエーテル、iPr2O、ヘキサン類、シクロヘキサン類、ジオキサン、またはこれらの溶媒を含む混合物等の溶媒を使用しても良い。本明細書において、ヘプタン類の使用について言及している場合、これらの溶媒またはその混合物の使用も意図されている。
【0047】
本明細書において、用語「ヘプタン類」は、ヘプタンおよびその異性体を包含する。また、この用語は、主にC7異性体で構成され、残る構成物質が主にC8異性体であるヘプタン調製物(例えばEXXSOL(登録商標)ヘプタン溶液(Exxon Mobil Chemical社製))をも包含する。しかし、本発明はそのように限定されない。本発明において有用なその他のヘプタン調製物(市販されている調製物を含む)も当業者に周知であろうし、本発明に包含される。
【0048】
ヘプタン類は、反応条件に基づいて当業者によって選択され得る。更に、エーテルとヘプタン類の割合も調整され得る。エーテルとヘプタン類の重量比は、約1:1〜約3:1または約1:1〜約2:1の範囲であって良い。エーテルのヘプタン類に対する割合の増加は反応の完了を促進するが、割合増加(例えば4:1)の結果、粘着性の固体が沈殿するので、好ましくない。1つの実施形態において、エーテルとヘプタン類の重量比は、約2:1である。しかし、当業者であれば、ジオールとラパマイシン42-エステルボロネートの割合、溶媒混合物中のラパマイシン42-エステルボロネートの濃度、溶媒の組成、反応温度および所望の反応時間に基づいて、好ましい割合を選択できるであろう。
【0049】
反応は、約20℃〜約40℃、約25℃〜約40℃、約30℃〜約40℃、または約35℃〜約40℃の温度範囲において実施され得、温度を高めると、一般的に反応の完了が促進される。1つの実施形態において、温度は約30℃〜約40℃である。更なる実施形態において、温度は約34℃〜約35℃である。しかし、当業者であれば、ジオールとラパマイシン42-エステルボロネートの割合、溶媒混合物中のラパマイシン42-エステルボロネートの濃度、溶媒の組成および所望の反応時間に基づいて、好ましい温度を選択できるであろう。
【0050】
反応の完了は、当業者に周知の従来の方法によってモニターされ得る。好ましい条件下で、反応は3〜4時間以内に効率的に完了され得る。反応の完了後、生成された粗ラパマイシン42-エステルは約20〜25℃まで冷却され、粘着性の、またはゴム状の固体の形成を避けるために攪拌される。1つの実施形態において、反応混合物は約18時間攪拌される。別の実施形態において、反応混合物は約38時間攪拌される。低下した温度で反応混合物を攪拌後、無極性炭素系溶媒またはその混合物を加えることにより、粗ラパマイシン42-エステルを沈殿させる。1つの実施形態において、無極性炭素系溶媒はヘキサン、ペンタン、ヘプタンおよびそれらの混合物であり得る。更なる実施形態において、無極性炭素系溶媒はヘプタン類である。1つの実施形態において、無極性炭素系溶媒とエーテルの重量比は約3:1である。1つの実施形態において、結果として沈殿した粗ラパマイシン42-エステルはろ過され、ヘプタン類で洗浄される。
【0051】
(ラパマイシン42-エステルの精製)
沈殿後、粗ラパマイシン42-エステルは、再結晶および不純物(例えばフェニルボロン酸)とジオールとの反応を伴う複数の工程による方法によって精製される。これらの工程の順序は、本発明において限定されない。言い換えれば、1つの実施形態において、粗ラパマイシン42-エステルは、はじめにジオールを用いて処理され、個体のラパマイシン42-エステルが再結晶化される。別の実施形態において、粗ラパマイシン42-エステルは、はじめに再結晶化され、次にラパマイシン42-エステルのスラリーがジオールを用いて処理される。
【0052】
本明細書に記載の精製の工程は、既出のラパマイシン42-エステルの式によって包含されるすべてのラパマイシン42-エステル化合物について達成され得る。当業者であれば、利用されるラパマイシン42-エステルボロネートに基づき、溶媒中のラパマイシン42-エステルの濃度、ジオールと粗ラパマイシン42-エステルの割合、溶媒の組成、反応温度、所望の反応時間、または本明細書に記載のその他の変数を容易に変えることができるであろう。
【0053】
ラパマイシン42-エステルボロネートから大量(例えば2kgを超える)に調製された粗ラパマイシン42-エステル中の残留フェニルボロン酸の量は、約1.8〜2.9%である。先に述べた再結晶により精製する方法は、量を約半分に減らすだけである。本発明の精製方法の有利な点は、フェニルボロン酸の総量を0.1%未満、ある実施形態においては0.05%未満まで減少させることである。
【0054】
(ジオール/再結晶による粗ラパマイシン42-エステルの精製)
ジオールを用いた処理による精製が再結晶化前に行われる実施形態において、トランスホウ素化により生成された粗ラパマイシン42-エステルのスラリーは、はじめに残留溶媒を乾燥させる。
【0055】
粗ラパマイシン42-エステルは、溶媒中ジオールを用いて処理される。1つの実施形態において、溶媒はエーテルである。更なる実施形態において、溶媒はジエチルエーテルである。1つの実施形態において、ジオールは2-メチル-2,4-ペンタンジオールである。ジオールとラパマイシン42-エステルのモル比は、約2:1〜約10:1の範囲であって良い。1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルとジオールのモル比は約5:1である。反応は約20〜25℃で行われる。それより高い温度(例えば34℃)は、粘着性の固体の形成につながり得るので好ましくない。
【0056】
反応の完了(例えばフェニルボロン酸の消失)は、当業者に周知の従来の方法によってモニターされ得る。好ましい条件下、反応は約5時間以内に効率的に完了され得る。更なる実施形態において、反応は、フェニルボロン酸の含量を更に減らすために繰り返され得る。反応の完了後、部分精製ラパマイシン42-エステルを乾燥させて固体のラパマイシン42-エステルを生成させる。
【0057】
固体の部分精製ラパマイシン42-エステルを、極性溶媒に溶解させる。1つの実施形態において、溶媒はアセトンである。別の実施形態において、溶媒は酢酸エチルである。しかし、溶媒と粗ラパマイシン42-エステルの適切な割合と同様、その他の極性溶媒が当業者によって選択され得る。1つの実施形態において、溶媒と粗ラパマイシン42-エステルの割合(重量比)は約5:1〜約8:1である。1つの実施形態において、溶媒はアセトンであり、アセトンと粗ラパマイシン42-エステルの割合(重量比)は約5:1である。ラパマイシン42-エステルの溶解後、不溶性の不純物をろ過で取り除き、ろ液を濃縮して発泡体を形成する。
【0058】
次に発泡体をエーテルに溶解させ、しばらく後に、精製ラパマイシン42-エステルを晶出する。1つの実施形態において、エーテルはジエチルエーテルである。しかし、ラパマイシン42-エステルを沈殿させるためにその他のエーテル類を使用しても良い。1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルとエーテルの割合は、約1:4〜約1:3である。更なる実施形態において、ラパマイシン42-エステルは、エーテル中約29wt%〜約37wt%、または約29wt%〜約30wt%である。
【0059】
エーテルの再結晶化後、エーテル中の得られたラパマイシン42-エステルのスラリーを、ヘプタン類を用いて更に処理しても良い。1つの実施形態において、ヘプタン類とエーテルの重量比は約3:1である。別の実施形態において、ヘプタンによる処理およびろ過による精製ラパマイシン42-エステルの単離後、乾燥前に、ラパマイシン42-エステルをエーテルおよびヘプタン類の溶液で洗浄する。更なる実施形態において、洗浄液におけるエーテルとヘプタン類の体積比は1:2である。洗浄後、得られた生成物を乾燥させ、精製ラパマイシン42-エステルを生成させる。
【0060】
(再結晶化/ジオール反応による粗ラパマイシン42-エステルの精製)
別の実施形態において、トランスホウ素化により得られた粗ラパマイシン42-エステルは、始めに再結晶化させる。典型的には、粗ラパマイシン42-エステルをろ過し、吸引により乾燥する。次に、粗ラパマイシン42-エステルを極性溶媒(例えばアセトンや酢酸エチル)に溶解させ、不溶性の不純物を全てろ過し、ろ液を発泡体になるまで乾燥させ、得られた発泡体を極性溶媒(例えばエーテル)に溶解させる。しばらく後に現れる沈殿物は、再結晶化された部分精製ラパマイシン42-エステルを含有する。
【0061】
溶媒中ジオールの溶液を部分精製ラパマイシン42-エステルと混合させ、スラリーを形成する。1つの実施形態において、溶媒はエーテルである。更なる実施形態において、溶媒はジエチルエーテルである。1つの実施形態において、部分精製ラパマイシン42-エステルは溶媒中約10wt%〜約30wt%、または溶媒中約20wt%〜約30wt%である。更なる実施形態において、部分精製ラパマイシン42-エステルは溶媒中約30wt%である。
【0062】
1つの実施形態において、ジオールは2-メチル-2,4-ペンタンジオールである。ジオールとラパマイシン42-エステルのモル比は約2:1〜約10:1である。1つの実施形態において、ラパマイシン42-エステルとジオールのモル比は約5:1である。反応は約20〜25℃で行われる。それより高い温度(例えば34℃)は、粘着性の固体の形成につながり得るので好ましくない。
【0063】
反応の完了(例えばフェニルボロン酸の消失)は、当業者に周知の従来の方法によってモニターされ得る。好ましい条件下、反応は約5時間以内に効率的に完了され得る。更なる実施形態において、反応は、フェニルボロン酸の含量を更に減らすために繰り返され得る。
【0064】
反応の完了後、ヘプタン類を混合物に加え、得られた懸濁液をろ過によって単離し、乾燥させて結晶性の精製ラパマイシン42-エステルを生成させる。
【0065】
1つの実施形態において、本発明に従って生成されたCCI-779は、「精製された結晶性CCI-779の調製方法」(Deshmukhら、米国特許出願番号第60/748,006号(2005年12月7日出願;米国特許商標局における優先出願並びにそれに対応する米国出願および国際出願の出願日と同日))に従って更に精製しても良く、その明細書および請求項は、引用することにより本明細書の一部をなす。本発明に従って生成されたCCI-779の結晶化度は、「示差走査熱量測定を用いてCCI-779の結晶化度を測定する方法」(Deshmukhら、米国特許出願番号第60/748,005号(2005年12月7日出願;優先出願並びにそれに対応する米国出願および国際出願の出願日と同日))に従って測定することができ、その明細書および請求項は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0066】
実施例
以下の実施例は例示のみを目的としている。
実施例1〜6は、以下の図式に例示されるようなスケーラブルな工程由来の母液から粗CCI-779ボロネートを単離する方法を例示する。
【実施例1】
【0067】
(粗CCI-779ボロネートの母液からの回収)
粗CCI-779ボロネートの母液からの単離が、はじめに、表1にまとめられた異なる手順を用いた、図式1および2に示された製造工程由来の第1バッチの部分的に回収された材料を使用して評価された。
【0068】
【表1】

【0069】
エントリーIに示されるように、粗CCI-779ボロネートは、第2および第3アセトンスラリー由来の母液の混合物を濃縮し、続いてろ過することにより得られるスラリーをろ過することにより単離することができる。これらの母液は、主に溶媒、CCI-779ボロネートおよびラパマイシンから成る。回収率は、95±5%の範囲である。単離されたCCI-779ボロネートは、約8%のラパマイシンを含有した。第1アセトンスラリー由来の母液がはるかに多くの不純物を含有していたので、3つの異なる手順を試験した。
【0070】
エントリーIIは、濃厚スラリーになるまで母液を濃縮し、続いてろ過して得られた結果を示す。回収率は75±5%の範囲であったが、ろ過の速度は非常に遅かった。約18%のラパマイシンを含有する粗CCI-779ボロネートが得られた。
【0071】
第2の手順(エントリーIII)は、はじめに母液を発泡体になるまで濃縮し、ジエチルエーテルで処理してスラリーを生成させ、続いてろ過する工程を伴った。ろ過によって粗CCI-779ボロネートが単離され、収率は55±5%、ラパマイシンの含量は13%であった。
【0072】
エントリーIVでは、代わりに、母液を濃厚スラリーになるまで濃縮した。ジエチルエーテルで希釈後、粗CCI-779ボロネートをろ過した。回収率は35±5%の範囲、ラパマイシンの含量は11%であった。
【実施例2】
【0073】
(母液から回収された粗CCI-ボロネートの精製)
表2は、母液から回収された粗CCI-779ボロネートの精製についての調査結果をまとめたものである。図式1の製造手順に続く2回のアセトンスラリーを経た後、ラパマイシンの含量が8.0%から0.93%まで減少した。
【0074】
実験手順1においては、母液を特定の温度で1時間加熱し、室温で最低6時間攪拌してからろ過した。
【0075】
実験手順2Aにおいては、母液を特定の温度で1時間加熱し、1時間かけて室温まで冷却し、その後、室温で最低6時間攪拌した。この工程を更に2回繰り返してから、得られたスラリーをろ過した。
【0076】
実験手順2Bにおいては、特定の溶媒で処理した母液を特定の温度で1時間加熱し、1時間かけて室温まで冷却し、その後、室温で30分攪拌した。この工程を更に2回繰り返してから、得られたスラリーをろ過した。
【0077】
実験手順3においては、母液を特定の溶媒と共に特定の温度で6時間加熱し、室温で最低6時間攪拌してからろ過した。
【0078】
実験手順4においては、母液を特定の溶媒と共に室温で24時間攪拌してからろ過した。
【0079】
【表2】

【0080】
ラパマイシンの含量は、還流時間および/または混合時間を増加させても有意に減少しなかった。粗CCI-779ボロネートを精製するために、その他の溶媒も使用することができるが、アセトンほど効率的ではない。エーテルは、粗CCI-779ボロネートからの他の不純物の除去を助けることができるが、ラパマイシンの除去目的では効率的な溶媒ではない。アセトン/エーテルの混合物は、適度な回収率を伴いつつ、ラパマイシンの含量とその他の不純物の両方を減少させることができるであろう。粗CCI-779ボロネート中8%近くのラパマイシンの含量は、2回または3回のスラリーによって0.8%またはそれ以下まで減少させることができるであろう(明細書=0.8%)。
【実施例3】
【0081】
(母液からの粗CCI-779ボロネートの単離)
母液を濃縮し、回収した。次に反応器を酢酸エチルで洗浄した。溶媒を除去後、酢酸エチルによるすすぎで得られた材料を、濃縮した母液と組み合わせた。
【0082】
組み合わせた混合物を、エーテルで処理する前に、濃厚スラリーになるまで更に濃縮した(LOD=第1および第2アセトンスラリーの母液由来の材料について、それぞれ32%および48%)。次に、粗CCI-779ボロネートをろ過によって単離した。
【0083】
【表3】

【実施例4】
【0084】
(母液からの粗CCI-779ボロネートの精製)
CCI-779ボロネートを回収するための工程を設計し、製造バッチの精製中に第1および第2アセトンスラリーから生成された母液の全量を使用して試験を行った。粗CCI-779の単離は、表4にまとめたように、母液を濃厚スラリーになるまで濃縮し、次にジエチルエーテルで処理することにより行った。
【0085】
ラパマイシンの含量が8.6%である2kgを超える粗CCI-779ボロネートが、第1アセトンスラリーから生成された母液から単離された(エントリーI)。第2アセトンスラリーの母液から、約900gの粗CCI-779ボロネートが得られ、ラパマイシンの含量はずっと低かった(3.5%、エントリーII)。アセトン中の粗CCI-779ボロネートのスラリーを、はじめに製造手順同様に加熱還流するように変更を加えた製造手順を使用して、粗CCI-779ボロネートを精製した。室温まで冷却後、スラリーに使用したアセトンの半分の量をジエチルエーテルに置き換えた。得られたスラリーを、しばらくの間室温で攪拌してからろ過した。
【0086】
以下の表に示すように、第1スラリーの母液由来の粗CCI-779ボロネートでは、2回のそのようなスラリー後、精製CCI-779ボロネートが収率59%で得られ、ラパマイシンの含量は0.8%(明細書の範囲内)であった(エントリーI)。第2スラリーの母液由来の粗CCI-779ボロネートの回収率はより高かった(70%、ラパマイシン%=0.7、エントリーII)。合計で2kg近くの精製CCI-779ボロネートが回収できるであろう[2243/1239×722g(第1スラリーの母液由来)+622g(第2スラリーの母液由来)=1929g]。
【0087】
【表4】

【実施例5】
【0088】
(回収されたCCI-779ボロネートのCCI-779への転換)
回収されたCCI-779ボロネート(第1スラリーの母液由来)を、本明細書に記載の方法を使用して、CCI-779に更に転換した。表5に示すように、単離されたCCI-779の収率、品質共、別のソース由来のCCI-779ボロネートを使用した場合のものに匹敵するものであった。「Total Im.」は、全不純物を意味する。「LSI」は、最大量の単一不純物を意味する。
【0089】
【表5】

【実施例6】
【0090】
(母液からのCCI-779ボロネートの単離および精製)
A. 実験A
CCI-779ボロネート製造工程の第1アセトンスラリー由来の濃縮母液(8.0Kg)および酢酸エチルのすすぎ液(5.5Kg)を利用した。真空下、酢酸エチルのすすぎ液から溶媒を除去し、537gの濃縮物を得た。この濃縮物を、750mLのアセトンを使用して、機械的攪拌器、温度計および蒸留装置を備えた12Lの複数口丸底フラスコに移した。次に、濃縮母液の約半分をフラスコに加えた。これを、真空下(28"Hg)、ポット温度20〜25℃で、濃厚スラリーが得られるまで蒸留した。残りの濃縮母液を加え、再び濃厚スラリーになるまで蒸留した(約5L)。このようにして得られた混合物に対し、4.0Kgのジエチルエーテルを加えた。その結果得られた黄色のスラリーを20〜25℃で4時間攪拌し、次にろ過して2243gの粗CCI-779ボロネートを得た。LODは3.84%(75℃/30"Hg、2時間)、ラパマイシンの含量は8.6%(HPLC面積%)であった。
【0091】
機械的攪拌器、温度計および蒸留装置を備えた12Lの複数口丸底フラスコに、1239gの粗CCI-779ボロネートおよび1859gのアセトンを充填した。体積を記録し、別途1859gのアセトンを加えた。混合物を加熱還流し(56〜59℃)、1時間保持した。スラリーを2〜3時間かけて20〜25℃まで冷却し、次に真空下(27"Hg)、ポット温度20〜25℃で、記録した体積になるまで蒸留した。1872gのジエチルエーテルを加え、20〜25℃で最低6時間攪拌し、次にろ過してラパマイシンの含量が2.1%である865gの粗CCI-779ボロネートを得た。機械的攪拌器、温度計および蒸留装置を備えた別の12Lの複数口丸底フラスコに、粗CCI-779ボロネート全量および1275gのアセトンを充填した。体積を記録後、別途1275gのアセトンを加えた。56〜59℃で1時間、混合物を攪拌しながら加熱し、2〜3時間かけて20〜25℃まで冷却し、次に真空下(27"Hg)、ポット温度20〜25℃で、記録した体積になるまで蒸留した。1275gのジエチルエーテルを加え、最低6時間攪拌してからろ過した。真空下(>28"Hg)、40℃で5時間乾燥させた後、ラパマイシンの含量が0.8%(HPLC面積%)である727gの精製CCI-779ボロネート(LOD=0.86)が得られた。
【0092】
B. 実験B
製造バッチの第1アセトンスラリー由来の母液(221.3Kg)を、濃厚スラリーが得られるまで真空下(42〜46torr)、ポット温度-5〜25℃で蒸留した(約25L)。このようにして得られた混合物に対し、22.1Kgのジエチルエーテルを加えた。得られた黄色のスラリーを19〜25℃で4時間攪拌してからろ過し、10.1kgの粗CCI-779ボロネートを得た。この湿ったケークを、製造バッチの第2アセトンスラリー由来の母液(107.4Kg)と組み合わせ、濃厚スラリーが得られるまで真空下(22〜45torr)、ポット温度-1〜-9℃で蒸留した。このようにして得られた混合物に対し、32.9Kgのジエチルエーテルを加えた。得られた黄色のスラリーを19〜25℃で4時間攪拌してからろ過した。エーテルを用いて2回洗浄し(各洗浄につき20kg)、LODが0.82%(40℃/30"Hg、2時間)である10.0kgのCCI-779ボロネートを得た。
【0093】
粗CCI-779ボロネート(300g)およびアセトン(900g)をフラスコに充填した。混合物を加熱還流し(55〜61℃)、1時間保持した。混合物を2〜3時間かけて20〜25℃まで冷却し、次に真空下(23〜26"Hg)、10〜18℃を超えないポット温度で蒸留してアセトンを除去した(最終体積940〜960mL)。ジエチルエーテル(450g)を加え、18〜25℃で18時間攪拌し、次にろ過して粗CCI-779ボロネートを得た(225g、LOD=0.95%)。ろ過した粗CCI-779ボロネート(224g)およびアセトン(676g)をフラスコに充填した。混合物を加熱還流し(55〜61℃)、1時間保持した。混合物を2〜3時間かけて19〜25℃まで冷却し、次に真空下(18〜20"Hg)、18〜20℃のポット温度で蒸留してアセトンを除去した(最終体積620mL)。ジエチルエーテル(338g)を加え、18〜25℃で18時間攪拌してからろ過した。エーテルを用いて3回洗浄し(各250mL)、収率63%のCCI-779ボロネートを得た(LOD=0.57%、強度=85.9%、全不純物=1.8%、LSI=0.50、ラパマイシン=0.95%)。
【0094】
実施例7〜9は、図式IIIに示すようなCCI-779ボロネートから精製CCI-779を調製するための本発明の方法の1つの実施形態を例示する。
【化8】

【実施例7】
【0095】
(精製CCI-779の調製)
A. 粗CCI-779の調製
機械的攪拌器、温度計、500mLの均圧追加漏斗、および窒素ヘッドを有する還流冷却器を備えた3Lの複数口丸底フラスコに、199g(0.178モル)のCCI-779ボロネート、371gのジエチルエーテル中105gの2-メチル-2,4-ペンタンジオールの溶液(0.891モル)、および185gのヘプタン類を加えた。混合物を、窒素下で攪拌しながら33〜37℃まで加熱し、12時間保持した。HPLCは、3.0%未満または1.5%未満という明細書を下回る、反応混合物における開始時のCCI-779ボロネート(<3%)およびフェニルボロン酸の消費を示した。反応混合物を20分かけて20〜25℃まで冷却し、追加漏斗経由で1時間かけて928gのヘプタン類を加え、次に20〜25℃で1時間攪拌した。得られた混合物を、ブフナー漏斗を用いてろ過した。ろ過した固体を2回、それぞれ500mLのヘプタン類を用いて洗浄した。実質的にろ液が回収されなくなるまで吸引により乾燥した後、174gの粗CCI-779を単離した[強度=93.8%、全不純物=1.36%、ラパマイシン=0.40%(HPLC);エーテル=0.15%、ヘプタン=0.26%(GC)]。
【0096】
B. 粗CCI-779の精製
得られた粗CCI-779を2Lのフラスコに移し、1Lのアセトンを加えて濁った溶液を得た。微細なガラスフリット(4〜5.5μm)を有するガラス製のブフナー漏斗を経由して、溶液を透明なものにした。次に、機械的攪拌器、温度計および真空蒸留装置を備えた5Lの複数口フラスコに、透明なろ液を充填した。2Lのフラスコおよびブフナー漏斗を、400mLのアセトンで洗浄した。アセトン洗浄液を5Lのフラスコに加えた。減圧下、20〜30℃でアセトンを除去後、得られた発泡体を、20〜25℃で420gのジエチルエーテルに溶解させて透明な溶液を形成した。20分後に、固体が沈殿し始めた。0.45μmのシリンジフィルターを通してろ過しておいた52gのジエチルエーテル中105.3gの2-メチル-2,4-ペンタンジオールの溶液を、5Lのフラスコに充填した。混合物を20〜25℃で1時間攪拌した。HPLCの分析は、フェニルボロン酸の量が0.05%未満であることを示した。反応混合物に対し、1272gのヘプタン類を、2時間かけて追加漏斗を通して加えた。20〜25℃で1時間攪拌後、ブフナー漏斗を用いて混合物をろ過した。回収した固体を、3回、それぞれ500mLのエーテル/ヘプタン類(1/2、v/v)で洗浄し、液が滴らなくなるまで吸引を維持した。この湿ったケークを、真空オーブン内で、真空下50℃で21時間乾燥させ、156g(89%、強度に対して補正されている)の精製CCI-779(CZ-7781-24-2)を白色の結晶として得た[強度=98.4%、全不純物=0.98%、ラパマイシン=0.36%、PhB(OH)2<0.05%(HPLC);エーテル=0.21%、ヘプタン類=0.037 %、2-メチル-2,4-ペンタンジオール=0.096%、2-メチル-2,4-ペンタンジオールボロネート=検出されず(GC)]。
【0097】
【表6】

【実施例8】
【0098】
(精製CCI-779の調製)
基本的に実施例1に記載の方法を使用しつつ、CCI-779ボロネートの濃度、CCI-779を調製する経路、および反応時間をいろいろ変えて、いくつかの早期パイロットスタディを行った。
【0099】
先に記載した表において、工程コード1は以下の通りである:2/1(wt/wt)のエーテル/ヘプタン類中の27%(wt%)のCCI-779ボロネートを34〜5℃で6〜12時間、次にヘプタン類追加、ろ過。アセトン/エーテルで結晶化を行い、続いて2-メチル-2,4-ペンタンジオールで処理することにより精製を行った。工程コード2は以下の通りである:2/1(wt/wt)のエーテル/ヘプタン類中の17%(wt%)のCCI-779ボロネートを34〜5℃で15〜24時間、次にヘプタン類追加、ろ過。アセトン/エーテルで結晶化を行い、続いて2-メチル-2,4-ペンタンジオールで処理することにより精製を行った。
【実施例9】
【0100】
(精製CCI-779の調製、別経路)
エーテルとヘプタン類の混合物(2:1、Wt/Wt)中5倍当量の2-メチル-2,4-ペンタンジオールを用い、34℃で6時間、基本的に上述の通りに、CCI-779ボロネートから粗CCI-779を調製した。ろ過により粗CCI-779を単離した。粗CCI-779をエーテル中に懸濁し、5倍当量の2-メチル-2,4-ペンタンジオールで処理してからヘプタン類を加え、ろ過し、乾燥させた。次に、乾燥させた部分精製CCI-779をアセトン中に溶解させ、溶液を透明なものにし、アセトンを除去した。これに続き、結晶化した生成物にエーテルを加え、エーテルスラリーにヘプタン類を加え、スラリーをろ過して乾燥させた。得られたCCI-779は、収率が73%、強度が93.5%、全不純物が4%未満(すなわち3.59%)であり、有意な点として、PhB(OH)2が0.007であった。
【0101】
本明細書において識別された文献はすべて、引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書に記載された特定の実施形態における条件および手法に関する軽微な変更は、本発明から逸脱することなく様々に行えることを、当業者であれば認識するであろう。そのような軽微な変更および変形は、本明細書に記載された発明の範囲内であり、請求項によって定義する通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)溶媒混合物中でラパマイシン42-エステルボロネートをジオールと反応させて粗ラパマイシン42-エステルを提供する工程;および
(b)再結晶およびジオールを用いた処理により粗ラパマイシン42-エステルを精製する工程
を含む、ラパマイシン42-エステルの調製方法。
【請求項2】
工程(b)が、粗ラパマイシン42-エステルを溶媒内でジオールを用いて処理して固体のラパマイシン42-エステルを形成し、前記固体を再結晶させて精製ラパマイシン42-エステルを形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)が、粗ラパマイシン42-エステルを再結晶させてスラリーを形成し、ジオールを用いて処理して精製ラパマイシン42-エステルを形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)におけるラパマイシン42-エステルボロネートが、前記溶媒混合物中約10〜30重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(a)におけるラパマイシン42-エステルボロネートが、前記溶媒混合物中約30重量%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)におけるジオールとラパマイシン42-エステルボロネートとのモル比が約5:1〜約10:1である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(a)におけるジオールとラパマイシン42-エステルボロネートとのモル比が約5:1である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)におけるジオールが2-メチル-2,4-ペンタンジオールである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(a)における前記溶媒混合物が、ジエチルエーテルおよびヘプタンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程(a)における前記溶媒混合物が、ジエチルエーテルおよびヘプタン類の混合物を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ジエチルエーテルとヘプタン類との重量比が約1:1〜約2:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)における反応が約30〜40℃で行われる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程(a)における粗ラパマイシン42-エステルが約20〜25℃まで冷却される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)における粗ラパマイシン42-エステルを、1つ以上の無極性炭素系溶媒を加えることにより沈殿させる、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の無極性炭素系溶媒が、ヘキサン、ペンタンおよびヘプタンから成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒がヘプタン類の混合物である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)におけるヘプタン類と前記溶媒混合物との重量比が約3:1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)における前記再結晶が、
(I)粗ラパマイシン42-エステルを極性溶媒に溶解させる工程;および
(II)得られた懸濁液をろ過し、粗ラパマイシン42-エステルのろ液を濃縮して発泡体を作り出す工程
を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記極性溶媒がアセトンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記極性溶媒が酢酸エチルである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
アセトンと粗ラパマイシン42-エステルとの割合が約5:1である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
工程(II)の発泡体をエーテルに溶解させる工程を更に含む、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記エーテルがジエチルエーテルである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ラパマイシン42-エステルとエーテルとの割合が約1:4〜約1:3である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
ヘプタン類を加える工程を更に含む、請求項22〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ヘプタン類とエーテルとの重量比が3:1である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
形成された懸濁液をろ過し、沈殿させた粗ラパマイシン42-エステルをエーテルおよび1つ以上のヘプタン類を用いて洗浄する工程を更に含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
エーテルとヘプタン類との体積比が1:2である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
単離させたラパマイシン42-エステルを乾燥させる工程を更に含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
工程(b)における前記ジオールを用いた処理が、
(I)粗ラパマイシン42-エステルを溶媒に混合する工程;および
(II)前記粗ラパマイシン42-エステルをジオールと反応させる工程
を含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
工程(I)における前記溶媒がジエチルエーテルである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程(I)におけるラパマイシン42-エステルが、溶媒中約30重量%である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
工程(II)におけるジオールが2-メチル-2,4-ペンタンジオールである、請求項30〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
工程(II)におけるジオールとラパマイシン42-エステルとのモル比が約5:1である、請求項30〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
工程(II)における前記反応が20〜25℃で行われる、請求項30〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
工程(a)の粗ラパマイシン42-エステルが、はじめに残留溶媒を乾燥させたものである、請求項30〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
請求項1〜36のいずれかに記載の方法であって、ラパマイシン42-エステルボロネートが以下の式:
【化1】

(式中、Rは-O-C=O.CR7R8R9であり、ここで:
R7は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、-(CR12R13)fOR10、-CF3、-Fまたは-CO2R10であり;
R10は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフェニルメチル、ベンジル、2〜7個の炭素原子を有するアルコキシメチル、クロロエチルまたはテトラヒドロピラニルであり;
R8およびR9は、共にXを形成し;
Xは、2-フェニル-ジオキソボリナンまたは2-(置換)フェニル-(置換)ジオキソボリナンであり;
R12およびR13は、それぞれ独立して水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフルオロメチルまたは-Fであり;
f=0〜6である。)
で表されるものである、前記方法。
【請求項38】
前記2-フェニル-ジオキソボリナンが、2-フェニル-4,6,6-トリメチル-1,3,2-ジオキソボリナン、2-フェニル-1,3,2-ジオキサボリナン-5-イル、2-フェニル-1,3,2-ジオキサボリナン-4-イルから成る群から選択され、ここで、前記フェニルが任意に置換され得る、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ラパマイシン42-エステルボロネートがCCI-779ボロネートである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれかの方法によって調製された、精製ラパマイシン42-エステル。
【請求項41】
請求項39の方法によって調製された3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)を有する精製ラパマイシン42-エステル。
【請求項42】
少なくとも96%の純度を有する3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)を有する精製ラパマイシン42-エステル。
【請求項43】
1%に満たない任意の単一不純物を含有する、請求項42に記載の精製化合物。
【請求項44】
0.05%に満たないフェニルボロン酸を含有する、請求項42または43に記載の精製化合物。
【請求項45】
母液をスラリーになるまで濃縮する工程と、
得られた濃縮母液をろ過し、粗ラパマイシン42-エステルボロネートを単離する工程と
を含む、ラパマイシン42-エステルボロネート、ラパマイシンおよび1つ以上の溶媒を含む母液から粗ラパマイシン42-エステルボロネートを単離する方法。
【請求項46】
前記1つ以上の溶媒が、アセトン、酢酸エチルおよび水のうちの1つ以上から成る群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
アセトンを含む母液を発泡体になるまで濃縮し、ろ過前に該発泡体をジエチルエーテルで処理する工程を更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
アセトンを含む溶媒で第2スラリーを処理し、ろ過前に混合物を濃縮して第3スラリーを形成する工程を更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
母液をスラリーになるまで濃縮し、ろ過前にスラリーをジエチルエーテルで希釈する工程を更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
ラパマイシン42-エステルボロネート、ラパマイシンおよび1つ以上の溶媒を含む粗ラパマイシン42-エステルボロネートを精製する方法であって、
(a)粗ラパマイシン42-エステルボロネートおよび溶媒を含む混合物を少なくとも約1時間加熱する工程;
(b)冷却後、(a)の混合物を少なくとも約6時間攪拌する工程;
(c) ラパマイシン42-エステルボロネート混合物を濃縮して濃縮スラリーを形成する工程;
(d)濃縮スラリーを適切なエーテルで処理する工程;
(e)ラパマイシン42-エステルボロネートを精製する工程;
(f)任意で工程(a)〜(e)を繰り返す工程;
を含む、前記方法。
【請求項51】
(a)の混合物を室温まで冷却させておく、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
工程(a)〜(e)が少なくとも1回繰り返される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
工程(a)〜(e)が計3回行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
工程(a)〜(e)の繰り返し後、回収されたラパマイシン42-エステルボロネートが1重量%に満たないラパマイシンを含有する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
(c)の濃縮スラリーが、溶媒の少なくとも約半分を除去することによって形成される、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
適切なエーテルを用いて洗浄することによって、工程(e)で単離されたラパマイシン42-エステルボロネートを精製する工程を更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
工程(a)における溶媒が、アセトン、メタノール、アセトニトリル、メチルエチルケトン、TBME、エーテルおよびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
工程(a)における溶媒がアセトンである、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
加熱の工程が約55〜約60℃の温度範囲で行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
前記適切なエーテルがジエチルエーテルである、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
ラパマイシン42-エステルボロネートが、前記適切なエーテルを用いた処理後に形成された結晶化生成物のろ過によって回収される、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
請求項50に記載の方法であって、ラパマイシン42-エステルボロネートが以下の式:
【化2】

(式中、Rは-O-C=O.CR7R8R9であり、ここで:
R7は独立して、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、-(CR12R13)fOR10、-CF3、-Fまたは-CO2R10から成る群から選択され;
R10は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフェニルメチル、ベンジル、2〜7個の炭素原子を有するアルコキシメチル、クロロエチルまたはテトラヒドロピラニルであり;
R8およびR9は、共にXを形成し;
Xは2-フェニル-ジオキソボリナンであり;
R12およびR13は、それぞれ独立して水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、2〜7個の炭素原子を有するアルキニル、トリフルオロメチルまたは-Fであり;
f=0〜6である。)
で表されるものである、前記方法。
【請求項63】
3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピオン酸(CCI-779)ボロネートを有するラパマイシン42-エステルを、CCI-779および少なくとも1つの溶媒を含む母液から精製する方法であって、
(a)母液から得られた粗CCI-779およびアセトンを含む溶媒を含む混合物を加熱還流する工程;
(b)工程(a)の混合物を室温まで冷却させておく工程;
(c)冷却した混合物を少なくとも約6時間攪拌する工程;
(d)少なくとも約半分の溶媒を除去して濃縮CCI-779ボロネートスラリーを形成する工程;
(e)濃縮スラリーをジエチルエーテルで処理する工程;
(f)CCI-779ボロネートを回収する工程;
(g)工程(a)〜(f)を少なくとも1回繰り返す工程;
を含む、前記方法。
【請求項64】
前記溶媒が真空下で除去される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記単離されたCCI-779ボロネートがろ過によって回収される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
ラパマイシン含有量が1%w/wに満たない、請求項63に記載の方法によって調製されたCCI-779ボロネート。
【請求項67】
前記ラパマイシン含有量が0.8%w/wである、請求項66に記載のCCI-779ボロネート。
【請求項68】
前記ラパマイシン含有量が0.7%w/wである、請求項66に記載のCCI-779ボロネート。

【公表番号】特表2009−518412(P2009−518412A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544446(P2008−544446)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/046434
【国際公開番号】WO2007/067560
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】