説明

ラベル帳票

【課題】屋外や高多湿環境下での使用に適したラベル帳票を提供すること。
【解決手段】感熱記録紙20の裏面に強粘着部32と弱粘着部33が連接されたラベル片30を貼付したラベル帳票10において、ラベル片30について紙厚が60〜120μmの耐水紙に弱粘着剤層35として再剥離粘着剤を塗布するとともに、波長900nmの光反射率を60%以上とし、かつ弱粘着部33の粘着力をJIS Z 0237準拠の180度剥離法で測定した150〜650gf/25mmに設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタで印刷可能なラベル帳票に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば放置車両確認標章のように、ハンディターミナル型のサーマルプリンタで印字ができ、しかも印字した後に対象物に貼り付けることができるラベル帳票が求められている。このようなラベル帳票の一例として特許文献1に開示された発明がある。
【0003】
特許文献1のラベル帳票は、感熱記録紙の裏面に部分的に剥離剤を塗布し、そこにラベル片を貼付したものである。ところが、このラベル帳票はラベル片に通常の紙を用いているため、例えば放置車両確認標章としてフロントガラスに貼り付けた後、雨天時等に雨水で濡れると簡単に剥がれてしまったり、剥離した後にガラスに糊残りしたりするという問題があった。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3112047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、サーマルプリンタで印刷可能なラベル帳票において、主に耐水性等の耐環境性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、感熱記録紙の裏面の一部にラベル片が貼付されたラベル帳票であって、上記感熱記録紙に対して上記ラベル片の弱粘着剤層上に塗布された強粘着剤層により剥離不能に接着された強粘着部と、上記感熱記録紙の裏面に塗布された剥離剤層に対して上記ラベル片の弱粘着剤層により剥離可能に接着された弱粘着部とを備え、上記強粘着部と上記弱粘着部との境界で上記ラベル片が折り返し可能に構成されているとともに、上記ラベル片は、紙厚が60〜120μmの耐水紙に上記弱粘着剤層として再剥離粘着剤が塗布されているとともに、波長900nmの光反射率が60%以上であり、かつ上記弱粘着部の粘着力がJIS Z 0237準拠の180度剥離法で測定した150〜650gf/25mmに設定されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成からなるラベル帳票において、感熱記録紙の耐水性を向上させるためには、上記感熱記録紙の表面に撥水性インキを塗布したオーバーコート層が設けられ、そのサイズ度がJIS P 8122準拠のステキヒト法で測定した60.0秒以上に設定されていることが好ましい。
【0008】
上記構成からなるラベル帳票において、ラベル片の粘着剤のはみ出しを防止するためには、上記強粘着部の周縁に上記強粘着剤が塗布されていない領域が設けられていることが好ましい。また、上記ラベル片の幅が上記感熱記録紙の幅よりも小さく設定され、上記ラベル片が上記感熱記録紙からはみ出さないように貼付されているとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ラベル片は耐水紙からなるラベル基材で構成されているとともに、適度な粘着力に設定された弱粘着剤層によって被着体に貼り付けられるので、悪天候等でも被着体から剥がれることがなく、剥離後に糊残りも起こらない。したがって、耐環境性に優れ、放置車両確認標章のような屋外や高多湿環境下での使用に適したラベル帳票を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明に係るラベル帳票の全体構成を示す図、図2は同ラベル帳票の断面図、図3は同ラベル帳票の部分拡大図、図4は同ラベル帳票の使用方法を示す説明図である。
【0012】
はじめに、ラベル帳票の構成を図1〜3に基づき説明する。
【0013】
《全体構成》
図1に示すように、このラベル帳票10は、長尺状の感熱記録紙20と単片状のラベル片30とから構成されており、ハンディターミナル型のサーマルプリンタにセットできるようにロール状に巻き取られた形態を有している。感熱記録紙20にはその長手方向に等間隔でカットミシン加工を施した切り取りミシン目11,11,…が形成されており、各切り取りミシン目11を介して複数のラベル帳票10,10,…が分離可能に連接されている。それぞれのラベル帳票10には、感熱記録紙20の裏面の一部に単片状のラベル片30が1枚ずつ貼付されている。
【0014】
《感熱記録紙の構成》
図2に示すように、感熱記録紙20は、用紙21の表面全体に感熱記録層22を塗布したものである。感熱記録層22はロイコ染料からなる発色剤23と、酸性物質からなる顕色剤24と、両者の化学反応を促進させる増感剤25と、これらの成分を均一に分散して用紙21に固着させる保持剤26とにより構成されている。
【0015】
感熱記録紙20の用紙裏面にはシリコーン系成分を含む剥離剤を部分的に塗布した剥離剤層27が設けられている。また、感熱記録紙20の感熱記録層表面にはシリコーン系成分を含む撥水性インキを塗布したオーバーコート層28が設けられており、撥水性インキの盛量を適量に調節することで、そのサイズ度がJIS P 8122準拠のステキヒト法で測定した60.0秒以上に設定され、所定の耐水性が付与されている。撥水性インキとしては、シリコーン成分を含有したUV硬化型インキや、メジウム(体質顔料のみをビヒクルに分散した無色インキ)またはニス(体質顔料を含まない透明性の無色インキ)にシリコーンを所定量添加したものを使用することができる。なお、サイズ度を上記の値に設定した根拠は後述する実施例の検証結果に基づいている。
【0016】
《ラベル片の構成》
図1に示すように、ラベル片30は、感熱記録紙20の用紙裏面に設けられた剥離剤層27と対応する位置に貼り合わされている。ラベル片30の幅方向にはハーフカットミシン加工またはプレスミシン加工を施した折りミシン目31が形成されており、この折りミシン目31を介して粘着力の異なる2つの領域(強粘着部32と弱粘着部33)に区画されている。両粘着部の配置関係は、ラベル帳票10をサーマルプリンタにセットしたときに図中矢印で示す搬送方向の前方側が強粘着部32となり、後方側が弱粘着部33となるように設定されている。
【0017】
図2に示すように、ラベル片30は、ラベル基材34として連量が四六判55〜70kgで紙厚t1が60〜120μmの耐水紙を使用し、その裏面全体に弱粘着剤層35を塗布し、弱粘着剤層35の上に部分的に強粘着剤層36を塗布したものである。これにより、弱粘着部33はラベル基材34と弱粘着剤層35の2層構造に、強粘着部32はラベル基材34と弱粘着剤層35と強粘着剤層36の3層構造になっている。
【0018】
本実施形態において、弱粘着剤層35を構成する粘着剤としてはアクリル酸エステル共重合体からなる再剥離粘着糊が使用されており、強粘着剤層36を構成する粘着剤としては酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合水性エマルジョン(混合物)からなる強接着粘着糊が使用されている。粘着剤はこれ以外のものを使用してもよいが、弱粘着剤層35の粘着力は被着体から剥がしても糊残りしない程度、強粘着剤層36の粘着力は紙破壊する程度に設定されるものとする。
【0019】
感熱記録紙20とラベル片30は、弱粘着部33においては剥離剤層27と弱粘着剤層35とが接する境界面で剥離可能に接着されており、強粘着部32においては用紙21と強粘着剤層36とが接する境界面で剥離不能に完全接着されている。
【0020】
図3に示すように、ラベル片30の幅は感熱記録紙20の幅よりも小さく設定され、感熱記録紙20の幅方向両端に幅W1が約5mm以下の余白部12を設けることにより、ラベル片30が感熱記録紙20からはみ出さないように貼付されている。また、ラベル片30の弱粘着部33を感熱記録紙20から確実に剥がせるようにするために剥離剤層27はラベル片30の幅よりも若干広めに塗布されており、強粘着剤のはみ出しを防止するために強粘着部32の周縁には幅W2が約3mm以下の強粘着剤を塗布しない部分(強粘着剤無塗布部)37が設けられている。
【0021】
さらに詳しくは、ラベル片30は波長900nmにおける光反射率が60%以上となるように設定されている。これは、ラベル片30による読み取りエラーを防ぎ、サーマルプリンタに内蔵されたセンサがラベル片30に所定間隔で印刷されたタイミングマーク38(図1参照)を確実に読み取れるようにするためである。また、弱粘着部33の粘着力は、JIS Z 0237準拠の180度剥離法で測定した150〜650gf/25mmに設定されている。なお、弱粘着部33の粘着力をこの範囲内に設定した根拠は後述する実施例の検証結果に基づいている。
【0022】
次に、ラベル帳票の使用方法を図4に基づき説明する。
【0023】
図4は本発明に係るラベル帳票を放置車両確認標章に適用した例を示すものである。ただし、以下に説明する例は本発明の用途の一例に過ぎず、本発明のラベル帳票は屋外や高多湿環境下で被着体に貼付して使用するものであればこれ以外の用途にも好適である。
【0024】
まず、図4(a)に示すように、この放置車両確認標章10にあっては感熱記録紙20の感熱記録層表面が印刷面になっており、印刷面にはオフセット印刷やその他の方式の印刷によって“放置車両確認標章”、“駐車違反”、“速やかに移動してください”等の文字表記、駐車違反を表わすマーク、車両番号記入欄、違反状況記入欄などがあらかじめ印刷されている。
【0025】
そして、警察官や駐車監視員は巡回中に違法駐車した車両を発見すると、携帯しているハンディターミナル型のサーマルプリンタを使用して放置車両確認標章10に所定事項を印字する。より具体的には、図示したように感熱記録層22からなる車両番号記入欄に車両ナンバーをサーマル印字するとともに、違反状況記入欄に駐車日時、場所、態様などの情報をサーマル印字する。このとき、ラベル片30はプリンタ搬送方向の前方側にある強粘着部32によって感熱記録紙20に完全接着されているので、印字の最中に感熱記録紙20から脱落することを防止できるとともに、ラベル片30が剥がれて紙詰まりを引き起こすことがなく良好な印字適性が維持される。
【0026】
次に、図4(b)に示すように、切り取りミシン目11を切断して放置車両確認標章10を一枚切り離し、これを裏返してラベル片30の一部を剥離する。ここで、ラベル片30は弱粘着部33の部分では剥離可能に接着されていて感熱記録紙20から簡単に剥がれるが、強粘着部32の部分では完全接着されていて感熱記録紙20から剥がれない。したがって、使用時においても感熱記録紙20からの脱落が防止され、剥がした後にラベル片30がゴミになることもない。
【0027】
続いて、ラベル片30の折りミシン目31を谷折りし、弱粘着部33を感熱記録紙20の上に折り返す。そして、図4(c)に示すように、放置車両確認標章10を違反車両のフロントガラス50に貼付する。このとき、ラベル片30の弱粘着部33には弱粘着剤層35が露出しているので、その粘着力によって貼り付けることができる。
【0028】
放置車両確認標章10をフロントガラス50に貼り付けた状態において、感熱記録紙20の表面には撥水性インキにより上記サイズ度に設定されたオーバーコート層28が設けられており、雨天時に放置車両確認標章10が雨水で濡れてもオーバーコート層28が水分をはじくようになっている。このため、感熱記録層22の発色状態に影響を及ぼすことがなく、サーマルプリンタで印字した情報の視認性を良好に維持できる。また、フロントガラス50に接したラベル片30は耐水紙からなるラベル基材34で構成されているうえに、適度な粘着力に調節された弱粘着剤層35によって貼り付けられているので、放置車両確認標章10を剥がすときにも糊残りすることなく、きれいに剥がし取ることができる。したがって、本発明によれば、悪天候でも剥がれず、剥離後に糊残りしない放置車両確認標章10が得られる。
【0029】
最後に、本発明の実施例を説明する。
【0030】
《感熱記録紙の耐水性》
感熱記録紙の表面に撥水性インキを塗布したオーバーコート層について耐水性を検証した。その検証方法は、まず感熱記録紙の原紙表面とオーバーコート層の印刷表面にそれぞれ水滴を一滴ずつ垂らし、顕微鏡写真を撮影した後その画像から接触角を測定した。接触角の測定にはθ/2法を用いた。θ/2法とは、図5に示すように、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の固体表面に対する角度(θ1)から接触角(θ)を求める方法である。液滴の輪郭を球とした場合に、幾何の定理より、θ=2θ1の関係が成り立つ。
【0031】
使用した感熱記録紙と撥水性インキは次のものである。
◎感熱記録紙…ハンディターミナル用サーマルプリンタで印字し、屋外や高多湿環境下で使用可能な性能を保有するサーマル紙
◎撥水性インキ…シリコーン成分を含有するUV硬化型インキ
【0032】
図6に示すように、(a)試料1(感熱記録紙の原紙表面)の接触角は38°、(b)試料2(オーバーコート層の印刷表面、撥水性インキの盛量少)の接触角は55°、(c)試料3(オーバーコート層の印刷表面、撥水性インキの盛量適)の接触角は68°であった。次いで、試料1〜3について、サイズ度試験方法(JIS P 8122準拠のステキヒト法)によってサイズ度を測定し、耐水性を評価した。その評価結果を下記の表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表1の結果を考察すると、感熱記録紙の耐水性についてはサイズ度が少なくとも60.0秒以上であることが好ましい。
【0035】
《ラベル片の耐環境性》
ラベル片について、ラベル基材と粘着剤の種類を変更し、ラベル基材の耐水性と粘着剤の耐環境性(糊残りしないかどうか)を評価した。その評価結果を下記の表2に示す。検証項目のうちA〜Eは耐環境性に関する項目、Fは印字するプリンタの要求品質に関する項目、Gはラベル使用者からの要求品質に関する項目である。また、粘着力はJIS Z 0237準拠の180度剥離法で測定した値を示している。
【0036】
【表2】

【0037】
上記表2の結果を考察すると、ラベル片の耐環境性については、ラベル基材は連量が四六判55〜70kgで紙厚が60〜120μm(好ましくは70μm)の耐水紙が好適であり、粘着剤は再剥離粘着糊でその粘着力が150〜650gf/25mmの範囲内にあることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るラベル帳票の全体構成を示す図であり、(a)は表側から見た平面図、(b)は裏側から見た平面図である。
【図2】図1のラベル帳票のII−II線断面図である。
【図3】図1のラベル帳票におけるラベル片付近の拡大図である。
【図4】図1のラベル帳票の使用方法を示す説明図である。
【図5】接触角の測定方法を示す説明図である。
【図6】感熱記録紙の表面とオーバーコート層の印刷表面に垂らした液滴の接触角を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ラベル帳票
11 切り取りミシン目
12 余白部
20 感熱記録紙
21 用紙
22 感熱記録層
23 発色剤
24 顕色剤
25 増感剤
26 保持剤
27 剥離剤層
28 オーバーコート層
30 ラベル片
31 折りミシン目
32 強粘着部
33 弱粘着部
34 ラベル基材
35 弱粘着剤層
36 強粘着剤層
37 強粘着剤無塗布部
38 タイミングマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱記録紙の裏面の一部にラベル片が貼付されたラベル帳票であって、
上記感熱記録紙に対して上記ラベル片の弱粘着剤層上に塗布された強粘着剤層により剥離不能に接着された強粘着部と、上記感熱記録紙の裏面に塗布された剥離剤層に対して上記ラベル片の弱粘着剤層により剥離可能に接着された弱粘着部とを備え、上記強粘着部と上記弱粘着部との境界で上記ラベル片が折り返し可能に構成されているとともに、
上記ラベル片は、紙厚が60〜120μmの耐水紙に上記弱粘着剤層として再剥離粘着剤が塗布されているとともに、波長900nmの光反射率が60%以上であり、かつ上記弱粘着部の粘着力がJIS Z 0237準拠の180度剥離法で測定した150〜650gf/25mmに設定されている
ことを特徴とするラベル帳票。
【請求項2】
上記感熱記録紙の表面に撥水性インキを塗布したオーバーコート層が設けられ、そのサイズ度がJIS P 8122準拠のステキヒト法で測定した60.0秒以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のラベル帳票。
【請求項3】
上記強粘着部の周縁に上記強粘着剤が塗布されていない領域が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のラベル帳票。
【請求項4】
上記ラベル片の幅が上記感熱記録紙の幅よりも小さく設定され、上記ラベル片が上記感熱記録紙からはみ出さないように貼付されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のラベル帳票。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−36833(P2009−36833A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198995(P2007−198995)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】