説明

ラベル紙

【課題】基材と透明樹脂フィルムとの接着性に優れ、色調変化が少なく、耐水性、耐熱性、耐候性にも優れ、コスト競争力のあるラベル紙を提供する。
【解決手段】透明樹脂フィルムと、基材とを有し、透明樹脂フィルムと基材との間に接着剤層を設けた積層構造を有するラベル紙であって、透明樹脂フィルムはヒートシール性を有し、あらかじめコロナ処理が施されており、また、接着剤層はウレタンアクリレート樹脂と、単官能特殊アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含有する接着剤を塗布することにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラベル紙に関し、特に試薬瓶や、食品の包装容器等に貼付して、内容物識別表示用ラベルや商品表示用ラベル等に用いられるラベル紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試薬瓶の内容物を識別したり、商品の内容を表示したりするために、試薬瓶や食品の包装容器等にラベル紙が貼付されている。このようなラベル紙は、接着剤付きのフィルム(PPまたはPET等)を印刷機上で基材と貼合させて形成されている。
【0003】
このように接着剤が塗工されたフィルムを、オーバーラミネート用シートとして用いる方法においては、接着面をゴミや埃から保護するために接着面に剥離紙が貼られており、これを剥がしながら印刷物と貼り合わせていく工程を採る必要があり、また、剥離後の剥離紙を巻き取る巻取り機が必要であったため、製造設備が大きくなるという問題があった。さらに、剥離後の剥離紙が大量のゴミとなるため省資源の観点からも好ましくなく、また製造コストも高くなるという問題があった。さらにまた、粘着加工工程が必要であるため、生産効率上、使用することができるフィルムの種類が少なくなり、光沢感やホログラム模様、ガスバリア性等を有する高機能フィルムを用いたラベル紙の要望に応えにくいという問題もあった。
【0004】
なお、基材の表面に、ニス引き装置を用いて、光沢性を発現するニスを塗工する方法も提案されているが、フィルムを貼合する方法と比べると、光沢感や、表面保護性が著しく劣ることが分かっている。
【0005】
また、例えば特許文献1に示されるように、フィルムと基材とを紫外線硬化型接着剤で貼合する方法も提案されている。このような方法は、上述した接着剤を塗工したフィルムを用いる場合に比べ剥離紙が不要となるので剥離紙が大量のゴミとなるという問題点は解決することができる。しかしながら、このような方法は、使用可能な紫外線硬化型接着剤の種類が限定されてしまうとともに、ラベル紙に印刷を施す印刷ユニットと同じものを使って接着剤が塗布されるため、塗布できる接着剤の量が少なく制限されてしまう。この結果、接着強度が低かったり、耐候性が低く、ラベル紙が経時劣化してしまい、これにより、フィルムが基材から剥がれてしまったり、ラベル紙が黄変化してしまうという問題があった。さらに、既存の紫外線硬化型接着剤は、接着剤自体が黄味を帯びているため、ラベル紙が、製品化時点で黄色味を呈しているだけでなく、経時による黄変化の問題は深刻であった。
【0006】
さらにまた、近年、食品等の包装容器(プラスチック容器)の側面にラベル紙を貼り付ける方法として、容器の成形と同時にラベル紙を挿入して、容器とラベル紙とを一体成形するインモールドラベル方式が頻繁に用いられている。
【0007】
このインモールドラベル方式により形成された容器は、接着剤等が使用されていないので、高温高湿の状況下においてもラベル紙が容器から剥離することがない。従って、風呂等の湿気の多い場所で用いるシャンプーやリンス等のプラスチック容器や、洗剤、柔軟化剤等の容器のように水周りで用いられる頻度の多いプラスチック容器等の用途として非常に需要が高い。
【0008】
インモールドラベル方式に用いられるラベル紙は、フィルムに裏面印刷したあと、ドライラミネートでヒートシール層を貼合することで印刷面保護および光沢(マット調の風合い)を付与している。しかしながら、この工程はグラビア印刷の後工程でドライラミネートを施す工程を必要とするため、少なくとも2工程が必要となり、小ロットや納期の対応性が低い問題がある。
【0009】
【特許文献1】特許第1889445号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、基材と透明樹脂フィルムとの接着性に優れ、色調変化が少なく、耐水性、耐熱性、耐候性にも優れ、コスト競争力のあるラベル紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、透明樹脂フィルムと、基材とを有し、該透明樹脂フィルムと該基材との間に接着剤層を設けた積層構造を有するラベル紙であって、前記接着剤層は、ウレタンアクリレート樹脂と、単官能特殊アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含有する接着剤を塗布することにより形成されていることを特徴とするラベル紙を提供することによって達成される。
【0012】
また、本発明の上記目的は、前記接着剤には、UV吸収剤が配合されていることを特徴とするラベル紙を提供することによって、効果的に達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るラベル紙によれば、あらかじめコロナ処理を施した透明樹脂フィルムと、基材との間に、ウレタンアクリレート樹脂と、単官能特殊アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含有する接着剤を塗布して接着剤層を設けたので、透明樹脂フィルムと基材との接着性に優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るラベル紙について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内においてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【0015】
図1に、本発明に係るラベル紙(以下、「本ラベル紙」という。)10の概略断面図で示すように、本ラベル紙10は、基材11と、接着剤層12と、少なくとも接着剤層12と接する面にコロナ処理を行った透明樹脂フィルム13とにより構成されている。
【0016】
基材11としては、パルプを主原料とするもの、例えば上質紙、アート紙、コート紙、片艶紙、含浸紙、板紙など公知の種々のものの中から、使用用途やニーズ等に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いられる。
【0017】
これらの基材11の原料パルプとしては、木材パルプ、あるいは非木材パルプが用いられていれば、特に限定されるものではなく、また1種又は2種以上を適宜選択して用いられていても良い。なお、木材パルプとしては、例えば通常用いられる針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等や、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、BCTMP、メカニカルパルプ(MP)等の機械パルプなどがあげられる。非木材パルプとしては、ケナフ、綿等があげられる。また、脱墨古紙パルプ(DIP)等の古紙パルプも使用できる。
【0018】
また、本ラベル紙10が、インモールド用のラベル紙として用いられる場合には、基材11として、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のヒートシール性を有するものが用いられる。
【0019】
このように本ラベル紙10は、基材11を自由に選定できるため、色調や厚みなどのニーズに対応することが容易になる。
【0020】
透明樹脂フィルム13としては、PP、ポリエチレンテレフタレート(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等公知の種々のものを用いることができるが、透明度が高く、コスト的に有利なことから、特にPP、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。
【0021】
また、本ラベル紙10に用いられる透明樹脂フィルム13は、その少なくとも接着剤層12と接する面にコロナ処理が施されている。これにより、水酸基を増やすことができるので、粘性が向上し、接着剤層12との接着強度が高くなる。従って、基材11と透明樹脂フィルム13との密着性がより向上するため、基材11から透明樹脂フィルム13が剥離することを防止することができる。
【0022】
本ラベル紙10は、基材11の上面に接着剤を塗布することにより接着剤層12が設けられている。
【0023】
接着剤層12を形成する接着剤は、無溶媒の紫外線硬化型樹脂の接着剤である。従って、基材11と透明樹脂フィルム13とを接着剤層12を介して貼り合せた後に、UV照射して乾燥させるので、従来のドライラミネート法と比較すると、熱乾燥工程が不要な分、環境負荷を小さくし、さらに設備も小さくすることができる。
【0024】
なお、接着剤層12を形成する接着剤は、ウレタンアクリレート樹脂と単官能特殊アクリレート樹脂とを合計で100重量部含み、かつウレタンアクリレート樹脂を20〜80重量部と、単官能特殊アクリレート樹脂を20〜80重量部とを配合し、さらに、ウレタンアクリレート樹脂及び単官能特殊アクリレート樹脂の合計配合量の100重量部とは別に、光重合開始剤を0.1〜25重量部とを配合したものが用いられる。
【0025】
すなわち、接着剤の主剤として、ウレタンアクリレート樹脂が20〜80重量部、好適には30〜50重量部配合されている。ウレタンアクリレート樹脂の配合量が80重量部を超えると、接着強度が足りず、基材11と透明樹脂フィルム13とが接着不良となり、基材11から透明樹脂フィルム13が剥がれてしまうという問題が生じる。一方、ウレタンアクリレート樹脂の配合量が20重量部未満であると、接着剤皮膜が柔らかいため、これもまた接着強度が足りなくなる。
【0026】
なお、ウレタンアクリレート樹脂としては、例えばダイマー酸(DUA)とジオールとで合成されたポリエステル骨格を有するウレタンジアクリレート、ポリグリコール骨格でも、末端にヒドロアビエチルアルコールを付加させたウレタンアクリレート等を用いることができる。
【0027】
また、接着剤には、接着助剤として、接着剤に単官能特殊アクリレート樹脂が20〜80重量部、好適には50〜70重量部配合される。配合量が20重量部未満であると、接着強度が足りず、基材11と透明樹脂フィルム13とが接着不良となる。一方、配合量が80重量部を超えると、接着剤皮膜が柔らかくなるため、これもまた接着強度が足りなくなる。なお、この単官能特殊アクリレート樹脂としては、例えばω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ダイマー(n≒1.4)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートが用いられる。
【0028】
さらに、接着剤には、ウレタンアクリレート樹脂及び単官能特殊アクリレート樹脂の合計配合量100重量部とは別に、光重合開始剤が0.1〜20重量部配合されている。配合量が0.1重量部未満であると、光重合の開始が弱いという問題がある。一方、20重量部を超えると、塗膜が黄色くなったり、耐候性が悪化するという問題がある。なお、光重合開始剤としては、例えば2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンや、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系等の種々のものを用いることができる。
【0029】
さらに、接着剤には、UV吸収剤が0.1〜5.0重量部、好適には1.0〜4.0重量部、より好適には1.5〜3.0重量部配合されていても良い。これにより、本ラベル紙10の耐候性をより向上させることができるとともに、経時での黄変化を防止することができ、さらに、印刷スピードの低下に影響しない。UV吸収剤の配合量が0.1重量部未満であると耐候性を向上させることができない。一方、本発明に係るラベル紙10は、UVを照射することにより基材11と透明樹脂フィルム13とを接着剤層12を介して接着させるため、UV吸収剤の配合量が5.0重量部を超えると、UV硬化速度が遅くなってしまい、生産スピードが著しく低下してしまう。
【0030】
なお、UV吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系及び/又はベンゾトリアゾール(BTZ)系を用いることができる。
【0031】
ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系化合物としては、例えば2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルフェニル)−s−トリアジン等を挙げることができる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカル社製の商品名「チヌビン400」(2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの混合物)、「チヌビン411L」(2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルフェニル)−s−トリアジン)、「チヌビン460」(2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)等を挙げることができる。
【0032】
また、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製の商品名「チヌビンPS」)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製の商品名「チヌビン328」)、β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル]−プロピオネート/ポリエチレングリコール300エステル酸、ビスβ−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル]−プロピオネート/ポリエチレングリコール300エステル酸(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製の商品名「チヌビン1130」)等を挙げることができる。
【0033】
またベンゾトリアゾール系化合物としては、クロル基を有するものも挙げられる。このようなクロル基を有するベンゾトリアゾール系化合物としては、具体的には、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製の商品名「チヌビン109」)、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製の商品名「チヌビン326」)、2,4−ジ−t−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製の商品名「チヌビン327」)、ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリゾール−2−イル)−5−(1,1−デメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステル(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製の商品名「チヌビン99−2」)等を挙げることができる。
【0034】
接着剤の中にUV吸収剤を配合すると、耐候試験後の色調変化(ΔE)を1.07以下とすることができる。なお、ここでいうΔEとは、スガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウエザーメータ(SC−750型)を用い、温度60℃、湿度80%の条件下で50時間処理した耐候性試験によって生じた光劣化による色調変化である。すなわち、JIS−Z8729に規定されるCIE L表色系に換算して得られるL*、a*、b*を測定する。耐候試験前の表色系を(L,a,b)とし、耐候試験後の表色系を(L,a,b)とすると、耐候試験前後での色調変化(ΔE)は下記の(式1)で計算される。
【0035】
(式1)
ΔE={(L−L+(a−a+(b−b1/2
なお、ΔEの値が大きいほど、光劣化による黄変化が激しく、耐候性が低いことを示す。
【0036】
従って、本ラベル紙10のようにΔEが1.07以下であると、実用上可能なレベルの黄変化である。すなわち、本ラベル紙10の耐候性が向上し、黄変化が殆どなくなるので、本ラベル紙10を貼付した商品の見栄えの低下を防止することができる。
【0037】
接着剤の塗布量は3〜20g/m、好ましくは5〜15g/m、特に好ましくは7〜10g/mである。これにより、良好な接着力と生産性とを両立させることができる。塗工液の塗布量が3g/m未満であると、基材11と透明樹脂フィルム13との接着力が低く、経時劣化により剥離が生じてしまう場合がある。一方、塗工液の塗布量が20g/mを超えると、UV硬化に時間がかかり、印刷スピードを遅くする必要があり、生産性が低下してしまう。なお、接着剤は、3〜20g/m塗布できるものであれば、公知のいずれの印刷方式を用いることができる。
【0038】
上述したような接着剤を用いて、基材11の上面に接着剤層12を形成し、この接着剤層12を介して基材11と透明樹脂フィルム13とを接着させることにより、透明樹脂フィルム13が基材11から経時劣化で剥がれることがなく、従来のオーバーラミネート法により製造されるものと同等の印刷物とすることができる。
【0039】
以上、本ラベル紙10について、基材11と、接着剤層12と、透明樹脂フィルム13とから構成される場合について述べたが、本ラベル紙は以下のように印刷層14が設けられても良い。
【0040】
すなわち、図2に本ラベル紙10Aの概略断面図で示すように、基材11の上面(基材11と接着剤層12との間)に印刷層14を設けても良い。また図3に本ラベル紙10Bの概略断面図で示すように、基材11の下面に印刷層14を設けてもよく、さらに図4に本ラベル紙10Cの概略断面図で示すように、基材11の上面及び下面に印刷層14を設けてもよい。さらにまた、図5の本ラベル紙10Dの概略断面図で示すように、透明樹脂フィルム13の上面に印刷層14が設けられても良い。なお、図5に示す本ラベル紙10Dは、図4に示すラベル紙10Cの透明樹脂フィルム13の上面に印刷層14を設けた形態であるが、これに限らず図1〜図3に示すラベル紙10,10A,10Bの透明樹脂フィルム13の上面に印刷層14を設けても良いことはいうまでもない。
【0041】
印刷層14を形成する印刷塗料としては、例えばアクリル樹脂,塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体,塩素化ポリプロピレン,ポリエステル樹脂,セルロース系樹脂,ウレタン系樹脂等のビヒクルや、例えばチタン白,亜鉛華,カーボンブラック,鉄黒,弁柄,クロムバーミリオン,カドミウムレッド,群青,コバルトブルー,黄鉛,チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー,インダンスレンブルー,イソインドリノンイエロー,ベンジルジンイエロー,キナクリドンレッド,ポリアゾレッド,ベリレンレッド,アニリンブラック等の有機顔料、アルミニウム,真鍮等の鱗片状箔粉等の真珠光沢(パール)顔料等の着色剤、および各種添加剤からなるもの等の公知の種々のものを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、印刷層14の形成方法も特に限定されるものではないので、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等、公知の種々の印刷方法を使用することができる。
【0043】
本ラベル紙10〜10Dは、一連の製造工程で製造することができる。図6に本ラベル紙10等の好適な製造方法の一例を示す。図示するように、基材供給工程、印刷工程、接着剤塗布工程、及び打抜き工程の各工程を、オンマシンで一連の操作で行うことができる。従って、小ロット及び短納期に対応することが可能となる。すなわち、ラミネート等による別のラインによる工程を必要としない。従って、図6に示すように、オンマシンで一連の工程で基材11と透明樹脂フィルム13との間に接着剤層12を有する本ラベル紙10を製造することができるので、基材11と透明樹脂フィルム13との接着性に優れ、色調変化が少なく、耐水性、耐熱性、耐候性にも優れる本ラベル紙10を、低コストで得ることができる。
【0044】
また、接着剤層12はUV硬化型接着剤により形成されるため、従来のオーバーラミネート法による場合と異なり、剥離紙が不要であるので、剥離紙がゴミとして生じる問題を解決でき、環境負荷を低減することができるとともに、本ラベル紙10の製造コストを低廉化させることができる。
【実施例】
【0045】
本発明に係るラベル紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の重量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎないので、本願発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
【0046】
本発明に係る15種類のラベル紙(これを「実施例1」ないし「実施例15」とする)と、これらの実施例1ないし実施例15と比較検討するために、2種類のラベル紙(これを「比較例1」及び「比較例2」とする)を、表1に示すような構成で作製した。
【0047】
【表1】

(実施例1)
<基材>
基材として、上基材と下基材の2種類の基材を用いた。なお、下基材として、市販のキャストコート紙(東洋紡株式会社製の商品名「コロナPP20μm」)を用い、上基材として、市販のタック紙(エリエールタック印刷株式会社製の商品名「SBG85S」)を用いた。
<透明樹脂フィルム>
透明樹脂フィルムとしては、厚さが20μmで片面にコロナ処理が施された東洋紡株式会社製のPPフィルムを用いた。
<接着剤の調整>
ウレタンアクリレート樹脂として、東亞合成株式会社製の「アロンニックスM−1600」を30重量部、単官能特殊アクリレート樹脂として、東亞合成株式会社製の「アロンニックスM−5700」を70重量部、光重合開始剤として、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製の「ダロキュア1173」を2.0重量部、「イルガキュア2959」を2.0重量部、UV吸収剤として、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製の「チヌビン460」2.0重量部混合して、接着剤を作製した。
<印刷塗料>
印刷塗料(印刷インキ)として、T&K TOKA株式会社製の「UV−161 黒」を用いた。
<ラベル紙の製造>
上基材と下基材を貼合した基材の表面上(上基材の表面上)に、印刷塗料を印刷して印刷層を形成する。印刷層を形成した後、バーニッシュ装置を用いて、印刷層の表面上に接着剤を10g/m塗工して接着剤層を形成し、その接着剤層の表面上に透明樹脂フィルムを設けてラベル紙(実施例1)を得た。なお、版はベタ版で印刷機械は三條5色機を使用し、最終工程にて5×5cm正方形の抜き加工を実施した。
【0048】
(実施例2)
ウレタンアクリレート樹脂を30重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を70重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を3.0重量部、「イルガキュア2959」を1.0重量部、またUV吸収剤を2.0重量部配合した接着剤を用いたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0049】
(実施例3)
ウレタンアクリレート樹脂を50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を1.5重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を10g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0050】
(実施例4)
ウレタンアクリレート樹脂を50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を0.1重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を20g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0051】
(実施例5)
ウレタンアクリレート樹脂を50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を0.1重量部、「イルガキュア2959」を0.1重量部、UV吸収剤を2.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を3g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0052】
(実施例6)
ウレタンアクリレート樹脂を50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を3.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を15g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0053】
(実施例7)
ウレタンアクリレート樹脂を50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を0.1重量部、「イルガキュア2959」を0.1重量部、UV吸収剤を4.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を5g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0054】
(実施例8)
ウレタンアクリレート樹脂を50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を8.0重量部、UV吸収剤を2.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を7g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0055】
(実施例9)
ウレタンアクリレート樹脂を20重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を80重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を5.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を7g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0056】
(実施例10)
ウレタンアクリレート樹脂を80重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を20重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を3.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を7g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0057】
(実施例11)
ウレタン樹脂アクリレートを50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を2.0重量部配合した接着剤を用いたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0058】
(実施例12)
ウレタン樹脂アクリレートを50重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を50重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を8.0重量部、「イルガキュア2959」を7.0重量部、UV吸収剤を2.0重量部配合した接着剤を用いたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0059】
(実施例13)
ウレタン樹脂アクリレートを30重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を70重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を1.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を4g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0060】
(実施例14)
ウレタン樹脂アクリレートを30重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を70重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を8.0重量部、「イルガキュア2959」を8.0重量部、UV吸収剤を2.0重量部配合した接着剤を用いたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0061】
(実施例15)
ウレタン樹脂アクリレートを10重量部、単官能特殊アクリレート樹脂を90重量部、光重合開始剤として「ダロキュア1173」を5.0重量部、UV吸収剤を2.0重量部配合した接着剤を用いたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0062】
(比較例1)
粘着剤層を有するフィルムタック紙として、DIC製「プラスカバーPP20FL−D1」を用い、接着剤を基材に塗布しないで製造したラベル紙。
【0063】
(比較例2)
主剤として、UV硬化型ウレタンアクリレートオリゴマーである日本合成化学株式会社製の「紫光UV−7510B」を100重量部、光重合開始剤として「イルガキュア184」を5.0重量部配合した接着剤を用い、また接着剤の塗布量を4g/mとしたことを除くその他の点は、実施例1と同様にして得たラベル紙。
【0064】
これらの全実施例及び比較例について品質評価、すなわち、接着力、色調、耐水性、耐熱水性、耐候性についての評価、及びコストの調査を行った結果は、表2に示すとおりであった。なお、これらの評価試験はJIS−P8111に準拠して温度23±1℃、湿度50±2%の環境条件の下で行った。
【0065】
表2中の「接着力」とはであり、15mm幅の短冊形にサンプリングした試料の一端を、基材と透明樹脂フィルムとの接着面より一定距離剥がし、その剥がした部分を万能引張試験機の上部つかみ具と下部つかみ具に取り付け、180度方向に速度300mm/分で引張った時の力(g/15mm幅)を接着力とした。なお、その評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
5:基材が破断した。
4:基材は破断はしなかったが、接着力が500g/15mm以上であった。
3:接着力が500g/15mm未満350g/15mm以上であった。
2:接着力が350g/15mm未満250g/15mm以上であった。
1:接着力が250g/15mm未満であった。
【0066】
「色調」とは、透明樹脂フィルムを貼着する前と貼着した後の基材の白色部の色調変化(ΔE)であり、ΔEは上述した式1により算出した。なお、その評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
5:色調変化(ΔE)が0.6以下である。
4:色調変化(ΔE)は0.6を超えるが1.07以下である。
3:色調変化(ΔE)は1.07を超えるが1.15以下である。
2:色調変化(ΔE)は1.15を超えるが1.50以下である。
1:色調変化(ΔE)が1.50を超える。
【0067】
「耐水性」とは、サンプルを25℃の水中に20時間浸漬し、水中より取り出した後、サンプル端部を綿棒で擦り、透明樹脂フィルムの剥がれの有無を目視で確認し評価したものである。なお、評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
5:50回以上擦っても透明樹脂フィルムの剥がれが全くない。
4:50回以上の擦りで透明樹脂フィルムの剥がれが発生するが、実用上問題はない。
3:30〜50回擦っても透明樹脂フィルムの剥がれが全くない。
2:30回〜50回の擦りで透明樹脂フィルムの剥がれが発生するが、実用上問題はない。
1:30回未満の擦りで、透明樹脂フィルムが剥がれ、実用上問題となる。
【0068】
「耐熱水性」とは、サンプルを95℃の熱水に30分間浸漬し、熱水より取り出した後、サンプル端部を綿棒で擦り、透明樹脂フィルムの剥がれの有無を目視で確認し、評価したものである。なお、評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
5:50回以上擦っても透明樹脂フィルムの剥がれが全くない。
4:50回以上の擦りで透明樹脂フィルムの剥がれが発生するが、実用上問題はない。
3:30〜50回擦っても透明樹脂フィルムの剥がれが全くない。
2:30回〜50回の擦りで透明樹脂フィルムの剥がれが発生するが、実用上問題はない。
1:30回未満の擦りで、透明樹脂フィルムが剥がれ、実用上問題となる。
【0069】
「耐候性」とは、得られたサンプルの樹脂基材面をSUS板に貼り付け、スガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウエザーメータ(SC−750型)を用い、60℃、湿度80%の条件下で50時間処理した後の光劣化による色調変化(ΔE)である。ΔEは上述した式1により算出した。なお、評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
5:色調変化(ΔE)が0.6以下である。
4:色調変化(ΔE)は0.6を超えるが1.07以下である。
3:色調変化(ΔE)は1.07を超えるが1.15以下である。
2:色調変化(ΔE)は1.15を超えるが1.50以下である。
1:色調変化(ΔE)が1.50を超える。
【0070】
「コスト」とは現状(比較例1)の製造費用との比較結果であり、その評価基準は下記の3段階とした。
(評価基準)
○:フィルムタック紙を用いたラベル紙より著しく安価である。
△:フィルムタック紙を用いたラベル紙より安価である。
×:フィルムタック紙を用いたラベル紙と同等または高価である。
【0071】
【表2】

表2に示すように、本発明に係るラベル紙、すなわち実施例1〜実施例15、特に実施例1〜12に係るラベル紙であると、品質評価に優れる、すなわち、基材と透明樹脂フィルムとの接着性に優れ、色調変化が少なく、耐水性、耐熱性、耐候性にも優れ、コスト競争力に優れることが分かる。

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るラベル紙の概略断面図である。
【図2】本発明の変更例に係るラベル紙の概略断面図である。
【図3】本発明の他の変更例に係るラベル紙の概略断面図である。
【図4】本発明の他の変更例に係るラベル紙の概略断面図である。
【図5】本発明の他の変更例に係るラベル紙の概略断面図である。
【図6】本発明に係るラベル紙の製造工程の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルムと、基材とを有し、該透明樹脂フィルムと該基材との間に接着剤層を設けた積層構造を有するラベル紙であって、
前記接着剤層は、ウレタンアクリレート樹脂と、単官能特殊アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含有する接着剤を塗布することにより形成されていることを特徴とするラベル紙。
【請求項2】
前記接着剤には、UV吸収剤が配合されていることを特徴とする請求項1に記載のラベル紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−12322(P2009−12322A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177328(P2007−177328)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】