説明

ラミニンコーティングを有する移植可能な医療装置、及び使用方法

本発明は、移植可能な医療装置の表面のラミニン含有コーティングに関する。当該コーティングは、最小の線維性反応を有するコートされた表面によって血管形成を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本非仮出願は、2005年2月23日に出願された整理番号第60/655,576号の仮出願、「Surface Modification of Tubular Structures Supporting Differential Cellular Activity:Surface Modification of Polymers to Promote Neovascularizat」の利益を主張する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、移植可能な医療装置による血管形成反応を促進するための方法に関する。ある態様において、当該移植可能な医療装置は、ラミニン含有コーティングを有する。他の態様において、本発明は、安定的に脱気された(denucleated、以下「脱気」とする。)多孔質部分を有する移植可能な医療品に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
昨今まで、移植可能な医療装置技術における進歩の主な焦点は、装置の構造特性を変化させ体内におけるその機能を改良することであった。しかしながら、移植された部位での移植された装置の機能は、移植の結果生じる組織応答に関連して装置の適合性を改良することにより、著しく促進され得ることが明確に認識されている。理想的には、改良された適合性は、移植された装置の表面が傷によりさらされた自然組織に擬態し、治癒過程の結果として正常組織の形成のための環境を提供することを可能とするだろう。
【0004】
不活性で毒性がないにもかかわらず、様々なプラスチック及び金属の如き装置に関連する移植された生体材料は、炎症、線維症、感染、及び血栓症の如き異物反応をしばしば誘発する。過度の場合、これらの反応のいくつかは、装置を生体内で失敗させ得る。中程度な細胞炎症反応は、移植後、一般的に見られ、白血球、活性化マクロファージ、及び異物巨細胞が移植された装置の表面に集められる。炎症反応は一般的なものであって通常の治癒過程の要素である一方、移植された装置の表面上に実質的な線維性マトリクスの形成がしばしば同時に起こる。過度の線維症、及び線維性マトリクスカプセル化は一般的に所望されない、というのはこのカプセル化は移植された装置を周囲組織から単離するからであり、それ故、当該装置の血管形成を妨げることとなる。
【0005】
一般に見られる新たな血管形成は、組織治癒過程の1つの要素でもある。血管新成反応は、前から存在する血管からの新たな血管の形成をいう。血管性反応は、単細胞からの新たな血管のデノボ形成をいう。新たな血管の形成は、一般的によくわかっていない複雑な過程であるが、血管形成領域への内皮細胞の補充に関することは明らかである。
【0006】
移植表面によって血管新生反応、及び新たな血管形成を促進することは、周囲組織環境における移植物の同化を改良すると考えられる。当該移植物の特性を変更することにより血管新生反応を改良することは、周囲組織との適切な栄養素及び老廃物交換を可能とし得る新たな血管形成を促進することによるその長期機能に寄与し得る。改良された血管新生反応は、他の方法においても有益である。例えば、血管移植片の場合、移植片の隙間の厚みを通過する血管貫通の増大(新血管形成)が当該血管の開通性を改良し得る。増大された血管貫通は、内腔内皮化のための自己内皮細胞源を提供し得、その結果、非血栓形成血液/組織の接合部を形成する。
【0007】
増大された血管新生反応を導く生体適合性における改良は、客観的に評価され得る。例えば、血管新生反応は、移植期間後の移植物表面による微細血管密度を顕微鏡的に測定することにより定量され得る。新たな微細血管成長の程度を測定することに加えて、組織学を実行し、移植物の表面によって形成された微細血管型の型を測定し得る。この点に関して、血管の増殖、及び血管の複雑性の両方は、治癒反応において重要な要因となり得、そして当該装置の表面へ下記の改良、及び移植期間を評価し得る。
【0008】
さらに、生体適合性における改良は、当該装置が制御された炎症、及び最小の線維形成反応を引き出すことを観察することによっても測定され得る。
【0009】
生体適合性の改良は、これらの反応が表面改良の他の型に見られる反応と異なり又はその反応の大きさ未満であること示すことによっても測定され得る。
【0010】
このことから、体内における損傷組織の自然治癒を模倣し、及び移植された装置を正常組織に統合する形での装置の改良は、移植された装置の機能性及び機能寿命を著しく改良する手段として認識される。かかる改良は、理想的には、最小の又は全くない線維形成カプセル化をもたらし、そして移植表面による微小血管発達における増大をもたらす。様々な天然及び合成材料を有するプラスチック又は金属の移植可能な医療装置の表面の改良は、移植可能な装置の生体適合性を改良しようとする手段として本分野における一般的に知られている。
【0011】
移植可能な医療装置の生体適合性を改良するための1つのアプローチは、移植物が周囲組織からの内皮細胞の転移を促進するように改良することを含む。かかる改良は、当該装置の表面による新たな血管の形成を強化すると考えられる。改良された生体適合性を有する表面を提供する試みは、移植可能なプラスチック装置の表面上で細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を付着させることに関する。新たな血管の形成及び持続性を促進できるように、当該タンパク質の安定的形成が望まれる。
【0012】
反応基を有するECMタンパク質の改良が、コーティングの安定性を改良する手段として示される。例えば、光反応基で誘導体化され、並びにポリウレタン(PU)、及び拡張されたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)血管移植片上に固定化されたフィブロネクチン(FN)及びコラーゲンIVは、移植物表面への内皮細胞の生体外付着及び成長を強化する。
【0013】
さらに、ある細胞外マトリクス・タンパク質を有する装置表面の改良は内皮細胞の付着を促進するが、この付着は血管新生を促進するためのコートされた表面の能力と相関しない。さらに、かかるコートされた装置は、かなりの炎症、及び線維形成反応をも促進し得る。
【発明の開示】
【0014】
概略
本発明は、通常、生体内で装置の機能を改良するコーティングを有する移植可能な医療装置に関する。本発明は、被験者内においてこれらのコートされた医療装置を使用する方法にも関する。特に、本発明のコーティングは、当該コートされた表面によって血管形成を促進することによる装置の改良された機能を提供する。
【0015】
本発明の一態様に関する実験的研究において、医療用移植物の表面上におけるラミニン・ポリペプチドの固定化が、当該装置のコートされた表面による血管増殖の形成を著しく増大したことがわかっている。特に、ラミニン−5を含むコーティングは、ラミニン−5コーティングを有する多孔質ePTFEを通過する微細血管の形成により例示されるように、当該コートされた表面によって血管の形成を引き起こすことが示された。とりわけ、これらの微細血管の形成は、当該装置の表面上に厚い血管のない線維性カプセルの形成なしで、及び制御された炎症反応の存在下で生じた。
【0016】
これらの発見に基づいた追加研究は、ラミニン−1又はラミニン−5の如きラミニンとコラーゲンの如き他の接着因子との組合せが、これらの材料でコートされた表面によって、優れた細胞付着性及び新たな血管増殖をも促進することを明らかとした。
【0017】
移植可能な医療装置と共に使用されるとき、本発明のコーティングは、体の自然創傷治癒反応をより厳密に模倣する創傷治癒反応を促進する。このことは、観察される制御された炎症反応、最小の線維形成反応、及び移植装置のコートされた表面に関する密な微細血管網の形成により示唆される。
【0018】
この発見は、移植可能な医療装置の製造、及び使用の重要な改良を提供する。最小の線維形成反応と制御された炎症反応との組合せにおいて、当該移植物のラミニンベースのコーティングを使用して見られる血管の実質的形成は、特に長期間に渡って、当該移植装置の機能を改良するためのパラメーターを定める。本発明のコーティングは、他のコーティングにおけるこれらの反応の組合せ(すなわち、新たな血管の増殖、最小の炎症及び線維形成反応)がこれまで達成されなかったような、先行技術の接着因子コーティングを超える改良を提供する。
【0019】
ある態様において、本発明は、移植可能な医療装置の表面によって血管の形成を生じさせる方法を提供する。当該方法は、医療装置の移植による線維形成反応を最小化することが望まれるときにも使用され得る。当該方法は、被験者にコーティングを有する医療装置を移植するステップを含む。
【0020】
ある態様において、コーティングは、移植された医療装置の表面によって血管の形成を生じさせるのに十分量で存在するラミニン−5、その活性部分、又はその結合メンバーを含む。本発明の他の態様は、移植された医療装置の表面によって血管の形成を生じさせるのに少なくとも十分な期間、被験者内に当該医療装置を維持することを含む。
【0021】
ある態様において、当該方法は、ラミニン−5、その活性部分又はその結合メンバーを含むコーティングを使用して実施され、ここで当該コーティングは、ラミニン−5、その活性部分又はその結合メンバーを、1μm/mL又はそれ超の濃度で含むコーティング組成物を処理するステップを含む方法により形成される。
【0022】
さらなる研究は、ラミニンと他の接着因子がコートされた装置の表面によって血管の著しい形成を引き起こし、かつ線維形成反応を最小化することも明らかとした。それ故、本発明は、コーティングを有する医療装置を被験者に移植するステップを含む方法も提供する、ここで、当該コーティングは、ラミニン、その活性部分又はその結合メンバーを含む第1成分、及び接着因子、その活性部分又はその結合メンバーを含む第2成分を含む。
【0023】
ある好ましいコーティングは、ラミニン−5、その活性部分又はその結合メンバー、及びコラーゲン、その活性部分又はその結合メンバーを含む。ある態様において、ラミニン−5の活性部分は、ラミニン−5のアルファ3(α3)鎖、当該鎖(α3)のLG3モジュール、又は当該LG3モジュールの活性ペプチドドメイン(例えば、PPFLMLLKGSTR、及びNSFMALYLSKGR)である。
【0024】
他の好ましいコーティングは、ラミニン−1又はその活性部分又はその結合メンバー、及びコラーゲン又はその活性部分又はその結合メンバーを含む。好ましいコラーゲンは、コラーゲンI、及びコラーゲンIVの群から選択される。
【0025】
一般的に、コートされた装置は、当該コートされた表面によって血管を形成するのに少なくとも十分な期間、被験者内に維持される。例えば、移植後4週間、移植物のコートされた表面に関して微細血管の密度は、100血管(血管)/cm超だった。さらに、この期間後、線維性カプセルの最小の形成が観察された。本発明のコーティングは、1ヶ月又はそれ超の期間体内に存在するものの如き、長期の移植可能な装置に特に適している。
【0026】
ある態様において、移植するステップは、被験者における血管内の配置に医療装置をデリバリーすることにより実施される。例えば、血管内にデリバリーされた当該装置は、移植片、ステント、ステント−移植片の組合せ、内部移植片、シャントから選択され得る。
【0027】
好ましくは、移植可能な医療装置は、多孔質部分を含む。例えば、当該多孔質部分は、ラミニンベースのコーティングにより促進されるような血管の内部成長又は貫通成長を許容するのに十分な大きさの孔を含み得る。本発明のある態様において、多孔質部分は、線維織物構造、及び/又は非線維織物構造に形成されたポリマー材料を含む天然又は合成材料から形成され得る。ある態様において、当該多孔質構造は、ePTFEを含む。
【0028】
円筒形状の血管内移植片により例示されるように、ラミニンベースのコーティングは、当該移植片のいずれかに関する表面の厚い細胞線維性カプセルの形成なしで、当該移植片の離れた内腔表面から内腔表面への新たな血管成長を促進され得る。この点において、当該ラミニンベースのコーティングは、著しく血管新生され、かつ栄養素及び老廃物の如き生物学的要素を交換できる多孔質移植片部分を含む組織様構造の形成を促進し、全体として当該移植片を周囲組織と一体化する。
【0029】
本発明のある態様において、ラミニン−5を含むコーティングは、移植可能な医療装置の表面をラミニン−5の豊富な細胞浸出液と接触させるステップを含む方法により、当該移植可能な医療装置の表面上に形成される。他のポリペプチド共同因子と共に、ラミニン−5は、コーティングを形成するために装置の表面上に付着され得る。例えば、多孔質部分を有する装置にラミニン含有コーティングを提供する際に、細胞浸出液の如き組成物は、ラミニン、及びいずれかの添加成分を強引に通すように当該装置を通じて多孔質部分に流され得、その結果、当該多孔質部分の表面にラミニンを付着させる。当該方法は、(a)多孔質部分を有する装置を提供し、(b)加圧下、多孔質部分を通じてラミニンを含む組成物を流すステップを含み、ここでラミニンは当該多孔質部分上に付着される。当該表面上のラミニンの付着は、吸着により生じ得る。
【0030】
血管内移植片のコートされた部分によって血管形成を促進するための本発明のコーティングの使用は有利な点を与えるので、本発明は、多孔質部分を含む血管内装置の貫壁性内皮化の方法も提供する。当該方法は、移植可能な装置の多孔質部分への微細血管の成長を引き起こすのに十分であり、及び当該微細血管を介して当該装置の内腔表面に内皮細胞を提供するのに十分である期間、被験者内にラミニンベースのコーティングを含む装置を維持するステップを含み得る。
【0031】
促進されたコーティングが、ラミニンを含むポリペプチド、その活性部分又はその結合メンバーと、1若しくは複数の他の接着因子、その活性部分又はその結合メンバーとを、1若しくは複数の追加のコーティング成分と共に、組合せることにより形成されることも発見した。当該1又は複数の追加成分は、ポリマー成分、第1反応基、及び第2反応基を含み得る。当該第1反応基は、装置表面へのポリマー成分の架橋、及び当該ポリマー成分の結合を可能とし、そして当該第2反応基は、ラミニンと接着因子との結合を可能とする。好ましくは、当該ポリマー成分は、ペンダント第1反応基、及びペンダント第2反応基を含む。
【0032】
ある態様において、当該第1反応基は、光反応基を含む。当該第2反応基は、ラミニン、及び接着因子と個別に反応する。例えば、第2反応基は、ラミニン残基を有するアミン、及びポリマーへの接着因子と、個別に結合するアミン反応基となり得る。
【0033】
コーティングは、複数のポリペプチドベースの成分(例えば、ラミニン、及び接着因子)を有するコーティングの形成のための明らかな有利性を提供する。当該コーティングは容易に形成され、そしてラミニン、及び他の接着因子の化学修飾を必要としない。例えば、当該コーティングを形成するための方法において、当該コーティング方法の1ステップとして、ポリマー成分は、当該装置の表面上に配置され、そしてポリマーベースの層を形成するために処理される、ここで、当該第1反応基は、当該装置の表面にポリマーを共有的に結合し、及び/又は当該第1反応基は、当該ポリマーと共有的に架橋され、当該装置の表面上にコートされた層を形成する。続くステップは、当該ポリマー層上でラミニン、及び接着因子を含む組成物を処理することを含み得る、ここで、当該ラミニン、及び当該接着因子は、第2反応基を介して、当該ポリマー成分と個別に結合する。この点に関して、処理(プロセシング)ステップは最小化される。このことは、コーティング手順に関して、効果的に改良し、そしてコストを低減する。さらに、ラミニン、及び他の接着因子は、当該装置表面上に安定的に与えられる。
【0034】
それ故、他の態様において、本発明は、装置の表面によって血管形成を生じさせ得るコーティングを有する移植可能な医療装置も提供する。当該コーティングは、ラミニン、その活性部分又はその結合メンバー、及び接着因子、その活性部分又はその結合メンバーを含み、当該コーティングは、ポリマー成分、当該ポリマー成分を架橋するように反応する第1基、並びに当該ポリマー成分にラミニン及び接着因子を個別に結合するよう反応する第2基をさらに含む。
【0035】
ある態様において、コーティングは、ラミニン−5又はその活性部分、及びコラーゲン、好ましくはコラーゲンI又はその活性部分を含み、ここで当該ラミニン−5、及びコラーゲンは、第2基を介して当該ポリマー成分に個別に結合し、そして当該ポリマー成分は、第1基を介して架橋される。他の態様において、コーティングは、ラミニン−1、及びコラーゲンIを含む。
【0036】
ポリマー成分を使用してラミニンベースのコーティングを製造することにおいて、当該ポリマーベースの層、それ自体が、多孔質部分を有する移植可能な装置に関して使用されるときに明らかな有利点を提供することが、有利に発見された。例えば、ペンダント第1反応基、及びペンダント第2反応基を含むポリマーを使用して提供されるように、当該ポリマーベースの層は、移植可能な装置の処理及び使用の間、多孔質部分を安定して脱気されたままの状態にできることが発見された。脱気は、ePTFEの如きある多孔質材量のすき間に閉じ込められた気泡を除去する過程である。脱気されたePTFE移植片は、ePTFE周囲及びその中で血管発達を増大することに加えて、未処理ePTFEと以前から関連する線維性カプセルを低減することが示される(Boswell,C.A. and Williams,S.K.,ら、J.Biomater.Sci Polymer Edn.,10:319−329)。しかしながら、ePTFEは、その後の処理又は手作業の間に、容易に再入気(renucleated、以下「再入気」とする。)し得る。
【0037】
したがって、他の態様において、本発明は、合成ポリマーを含むコーティングを有する安定的に脱気された多孔質部分を含む移植可能な医療装置を提供する。安定的に脱気された多孔質を含む移植可能な医療装置は、(a)多孔質を脱気し、そして(b)当該多孔質の表面上に合成ポリマーを含む層を形成するステップを含む方法により形成され得る。当該安定的に脱気された医療装置は、合成ポリマーを含む層だけと共に被験者内に移植され得、あるいは、1又は複数の更なる因子は、当該合成ポリマーを含む層と結合し得る。例えば、ラミニンベース組成物のいずれかは、本明細書に記載されるように当該合成ポリマーと結合し得る。
【0038】
ある態様において、ポリマーは、光反応基の如き反応基を含む合成ポリマーである。当該合成ポリマーは、好ましくは、親水性でもある。例示的な合成ポリマーは、ビニルポリマーであり、例えば、アクリルアミドポリマーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
詳細説明
以下に記載される本発明の態様は、以下の詳細説明において開示される正確な形式に本発明を厳密に限定する意図はない。正しくは、当業者が本発明の本質及び実施を正しく認識し理解できるように、態様が選択され、そして記載される。本明細書中に記載された全ての刊行物及び特許は、参照により本明細書中に援用する。
【0040】
本明細書中に記載される刊行物、及び特許は、開示のためだけに提供される。本明細書中に引用される刊行物、及び/又は特許を含むいずれかの刊行物、及び/又は特許に先行する権利を発明者が付与されないことの承認として解釈されるべきものは、本明細書中にはない。
【0041】
ある態様において、本発明は、コートされた移植片の表面によって血管形成を増大することを含むラミニンベースのコーティングの能力に関する発見に基づく。特に、ラミニン−5を含む調整された細胞培地は、バイオリアクター系(実施例1を参照のこと)においてePTFEの表面上に分泌タンパク質を付着させるために使用された。改良されたePTFE基質を、血管反応(血管新生、及び新血管形成を含む)、細胞粘着、炎症反応、及び線維性カプセル形成(実施例2〜4を参照のこと)について試験した。
【0042】
コラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン、ラミニン−1、及びラミニン−5に対する抗体を使用する免疫ブロッティングは、フィブロネクチン、及びラミニン−1の両方が、調節された培地の表面からePTFE上に付着されるタンパク質として、ラミニン−5に加えて同定されたことを明らかにした。この群のタンパク質が見られる一方、内皮細胞の優れた細胞粘着及びePTFEの血管新生、並びに移植片の線維性カプセル化もまた見られた。ラミニン−5の選択的減損、及びラミニン−5減損調節培地でのePTFEのコーティングは、内皮細胞の細胞粘着、及びePTFEの血管新生における著しい低減、並びに炎症反応における中程度の低減を示した。
【0043】
これらの発見に基づいて、精製されたラミニン−5を、ePTFE上に付着させた。精製されたラミニンでのコーティングは、(調節培地由来のコーティングを使用して観察された細胞粘着より少ないけれども)優れた内皮の細胞粘着を示し、一方、当該精製されたラミニン−5コーティングを有するePTFEの新血管形成は、調節培地由来のコーティングと比較して驚くほど促進された。さらに、当該精製されたラミニン−5でコートされたePTFEは、最小の組織被膜厚み、及び中程度の炎症反応を示した。
【0044】
これらの発見に基づいて、続くコーティングを提供し、当該コートされた表面に関して、細胞接着、及び新生血管産生の反応についてのラミニンのみ又は他の接着因子との組合せの寄与について調べた。さらに、コーティングを、共役成分を使用しても製造し、ポリペプチドベースの接着因子を含むコーティングの形成を改良した。第1、及び第2反応基を含むポリマー成分を使用して、コーティング方法、及びコーティング特性を改良した。当該コーティングを形成する方法において、このポリマーベースのコーティング成分は安定的に脱気された多孔質部分を有する移植可能な医療装置の形成を可能とさせることが有利なことに発見された。
【0045】
特に、好ましいコーティングは、ラミニンとコラーゲンの組合せを含むことが見出された。例示的組合せは、ラミニン−5とコラーゲンI、並びにラミニン−1とコラーゲンIを含む。
【0046】
本発明のコーティング、装置、及び方法は、装置のコートされた表面によって、血管形成を促進するために使用され得る。ある態様において、血管形成は、多孔質表面によって生ずる。新たな血管の形成は、血管新生(前から存在する血管からの新たな血管の発達)又は新たな血管形成(移植片の多孔質部分内の血管の形成)の反応により示される。多くの態様において、もし症状がコートされた表面付近におけるこれらの新たな血管の形成に適しているならば、移植可能な医療装置は新たな血管により分布され得る複雑な形態を有するだろう、例えば、本発明のラミニンベースのコーティングにより促進されるだろう。血管形成化された移植片が自然組織により緊密に似ているので、血管形成は当該移植片の周辺組織に従って機能することを可能とさせ得る。
【0047】
本発明に従って、移植可能な医療装置のコートされたものによって、血管の形成を引き起こすラミニンベースのコーティングが記載される。当該移植可能な医療装置は、病気の予防又は病状の治療のために哺乳類に導入される装置となり得る。
【0048】
移植可能な医療装置は、血管インプラント及び移植片に限定されること無く、移植片、外科的装置;合成人工器官;ステント、人工器官内部、ステント移植片、及び血管内ステントの組合せを含む血管人工器官;小径移植片、腹部大動脈瘤移植片;創傷被覆材及び創傷管理装置;止血障壁;メッシュ及びヘルニア・プラグ;子宮出血パッチ、心房中隔欠損症(ASD)パッチ、卵円孔開存症(PFO)パッチ、心室中隔欠損症(VSD)パッチ、心膜パッチ、心外膜パッチ、及び他のジェネリック心臓パッチを含むパッチ;ASD、PFO、及びVSD閉塞;経皮閉塞装置、僧帽弁修復装置;心臓弁、静脈弁、大動脈フィルター;静脈フィルター;左心耳フィルター;バルブ環状形成装置、カテーテル;神経動脈瘤(neuroanuerysm)パッチ;中心静脈アクセスカテーテル、血管アクセスカテーテル、膿瘍ドレナージカテーテル、薬剤注入カテーテル、非経口的栄養補給カテーテル、静脈内カテーテル(例えば抗血栓剤で処理されたもの)、脳卒中治療カテーテル、血圧及びステント移植片カテーテル;吻合装置及び吻合閉塞;動脈瘤除外装置;グルコースセンサーを含むバイオセンサー;受胎調節装置;乳房移植、唇移植、あご及びほお移植を含む美容的インプラント;心臓センサー;感染調節装置;膜;組織骨格;小腸粘膜下組織(SIS)マトリクスを含む組織関連材料;膿脊髄液(CSF)短絡術、緑内障ドレイン短絡術を含むシャント;歯科用品及び歯科インプラント;耳排水管、鼓膜切開口管の如き耳装置;眼科用装置;排水管カフ、移植された薬剤注入管カフ、カテーテルカフ、裁縫カフを含む装置のカフ及びカフ部分;脊髄及び神経に関する装置;神経再生導管;神経に関するカテーテル;神経パッチ;整形外科の関節インプラント、骨修復/増大装置、軟骨修復装置の如き整形外科用装置;泌尿器インプラント、膀胱スリングを含む膀胱装置、腎臓に関する装置及び血液透析装置、人工肛門袋接着装置の如き泌尿器に関する装置及び尿道に関する装置;二排水法製品を含む。
【0049】
コートされた表面によって血管の形成を生じるラミニン含有コーティングを有する医療装置は、複数の「部分」(例えば、当該装置を形成するために統合され得る医療装置の一部)を有する装置を組み立てることによっても製造され得る、ここで、少なくとも1つの当該部分はコーティングを有する。当該医療装置の部分の全て又は一部は、ラミニン含有コーティングを有し得る。この点に関して、本発明は、ラミニン含有コーティングを有する医療装置の一部(例えば完全に組み立てられた装置ではない)も企図する。
【0050】
移植可能な医療装置は、いずれかの好適な材料から形成され得る。当該医療装置が形成され得る材料の一般的クラスは、天然ポリマー、合成ポリマー、金属、及びセラミックを含む。材料のこれらの一般的クラスのいずれかの組合せが、当該移植可能な医療装置の形成のために使用され得る。
【0051】
当該移植可能な医療装置に使用され得る金属は、プラチナ、金又はタングステン、そして、レニウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、チタニウム、ニッケル、並びにステンレス・スチール、チタニウム/ニッケル、ニチノール合金、コバルト・クロム合金、非鉄合金、及びプラチナ/イリジウム合金の如きこれらの金属の合金の如き他の材料を含む。ある例示的な合金は、MP35である。移植可能な金属装置の表面は、ラミニン含有コーティングの形成を促進するために処理され得る。例えば、金属を含む移植可能な医療装置は、1又は複数の基本層を含み、例えば、Parylene(登録商標)層又はヒドロキシ−又はクロロ−シランの如きシラン含有層である。
【0052】
当該移植可能な医療装置は、付加重合又は縮合重合によりもたらされる、オリゴマー、ホモポリマー、及びコポリマーを含む合成ポリマーから形成され得る。好適な付加ポリマーの例は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、メタクリルアミド、及びアクリルアミドからポリマー化されたものの如きアクリル;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、及びビニリデンジフルオリドの如きビニルを非制限的に含む。
【0053】
例示的な縮合ポリマーは、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキメチレンアジパミド、及びポリヘキサメチレンドデカネジアミド(dodecanediamide)の如きナイロン、並びにポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリジメチルシロキサン、及びポリエーテルケトンを非制限的に含む。
【0054】
本発明のある態様において、医療装置は、塩素化、及び/又はフッ素化ポリマーの如きハロゲン化ポリマーを含む。例えば、ラミニン含有コーティングは、ペルフルオロ化ポリマーの如きペルハロゲン化ポリマーを含む移植可能な医療装置の表面上に形成され得る。
【0055】
基質材料として使用され得るペルハロゲン化ポリマーの例示は、Teflon(登録商標)及びNeoflon(登録商標)の如きペルフルオロアルコキシ(PFA)ポリマー;ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのポリマーの如きフッ素化エチレンポリマー(FEP);ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE);及びePTFEを含む。
【0056】
他のフッ素ポリマーは、本分野において知られており、様々な参照文献に記載されている、例えば、W.Woebcken,Saechtling International Plastics Handbook for the Technologist,Engineer and User,第3版(Hanser Publishers,1995)234−240頁である。
【0057】
本発明の他の態様において、移植可能な医療装置は多孔質部分を含み、そしてラミニン含有コーティングは当該多孔質部分の表面上に形成される。当該多孔質部分は、類似する又は異なる生体材料の1つ又は組合せから構成され得る。当該多孔質部分の微細孔は、好ましくは、当該多孔質構造内の血管形成を可能とする物理的な次元のものである。例えば、好適な平均微細孔の大きさは、2μm又はそれ超となり得、好ましくは、約4μm〜約150μmの範囲内である。
【0058】
多くの場合において、当該移植可能な医療装置の多孔質部分は、線維を含み又は線維様品質を有する。もし当該多孔質部分が線維を含むならば、それはいずれかの好適な直径のものとなり得、ナノメートル径からミリメートル径の範囲の線維である。異なる大きさの線維の組合せも、多孔質部分に存在し得る。多孔質部分は、織られた又は織られていない材料から形成され得る。
【0059】
多孔質表面は、織物から形成され得、そしてそれは織られた材料、編み材料、及び編み上げ材料を含む。例示的な織物材料は、本分野において知られるいずれかの好適な織目を使用して形成され得る織られた材料である。
【0060】
多孔質表面は、移植片、鞘、カバー、パッチ、スリーブ、ラップ、ケーシングなどのものとなり得る。これらの装置の型は、医療装置自体として機能し得、又は医療装置の他の部分に結合して使用される。
【0061】
当該多孔質部分は、その物理的特性を改良するための補強材料を、場合により、含み得る。例えば、補強材料は、移植片の長さを改良し得、それ故その開通性を改良する。
【0062】
本発明のある例示的態様において、ラミニン含有コーティングは、多孔質PTFE物質上に形成される。PTFEの使用は、移植可能な医療装置の分野においてよく知られている。PTFE管は、血管の置換又は修復において、血管移植片として通常使用される。ePTFE管は、多数の極めて小さな線維と連結した小さな節からなる微小孔構造を有する。当該線維にかかる節の表面と表面との間の空間(すなわち微細孔)は、ノード間距離(IND)として定義される。大きなINDを有する移植片は、当該移植片が本質的により多孔質であるので、組織の内方成長、及び内皮化を促進する。ePTFE血管移植片の多孔率は、管の微小孔構造のINDを制御することにより制御され得る。
【0063】
単層又は多層のePTFE移植片は、新血管形成コーティングの基質として使用され得る。移植可能な人工器官として有用な多層ePTFE管状構造の例は、米国特許第4816338号、及び同第5001276号に示される。
【0064】
ラミニン含有コーティングは、ベロア織り目加工の外装を含むものの如き、織り目加工又は滑らかな内部を有する他の多孔質移植片上にも形成され得る。編まれた織物製品から構築される移植片は、本分野においてよく知られ、多くの文献中に記載され、例えば米国特許第4047252号、同第5178630号、同第5282848号、及び同第5800514号である。
【0065】
多孔質部分を有するものは、ステント−移植片の組合せ物も含む。
【0066】
さらなる例について、ラミニン含有コーティングを含み得る他のものは、排液線又は緑内障シャントとも呼ばれる房水排出装置である。これらの装置は、緑内障を患う患者に一般的に関連する過度の目の内圧(眼圧;IOP)を軽減するために使用される。排液線は、目の側面の組織内に配置され、細い管を介して目の前方の内側部分と連結される。当該管は、目からの過度の流動体の排出を可能とし、それ故、IOPを低減する。
【0067】
ePTFEの如き多孔質部分を含む房水排出装置は、本明細書中に記載されるラミニン含有コーティングと共に提供され得る。当該ラミニン含有コーティングは、ePTFEにおける血管の形成を増大し、コートされていない装置に一般的に関連する線維性カプセルの形成を低減し得る。
【0068】
移植可能な医療装置は、薬剤溶出又は薬剤放出ともなり得る。ラミニン、及び他の任意のポリペプチド成分は一般的に当該装置の表面に結合される一方、当該装置は、当該装置の一部から薬剤を放出することも可能である。当該装置の薬剤溶出又は薬剤放出は、ラミニンベースのコーティングを含む当該装置の同じ部分又は異なる部分にあり得る。
【0069】
ある場合において、装置の表面に結合しない他のポリペプチドの如き親水性薬剤は、ラミニンを含むコートされた層に存在し得る。これらの場合において、当該親水性薬剤は当該コーティングから放出され得、一方、ラミニンは当該表面に結合され残る。
【0070】
他の場合において、装置は薬剤を有するコートされた層を含む、ここで当該薬剤は、当該コートされた層から溶出可能又は放出可能である。好ましい態様において、このコートされた層はポリマー層である。例えば、薬剤が溶出又は放出されるコートされた層は、ラミニンを共有的に結合するポリマーを含み得る。例えば、薬剤は、ラミニンをポリマーに共有的に結合する基を有するポリマーを含むコートされた層に存在し得、及び当該コート層から放出可能である。
【0071】
薬剤は、疎水性ポリマーを含むコート層にも存在し得る。例えば、当該薬剤は、ポリブチルメタクリレート(pBMA)の如きポリ{アルキル(メタ)アクリレート}を含むコート層に存在し得る。当該層は、ポリ(エチレンビニルアセテート)(pEVA)の如き他のポリマーも含み得る(米国特許第6214901号を参照のこと)。他の薬剤溶出ポリマー層{例えば、米国特許第6669980号に記載されるポリ(スチレン−イソブチレン−スチレン);及び米国特許出願公開第2005/0220843号、及び同第2005/0244459号}が使用され得る。
【0072】
一般的に、移植可能な医療装置の表面上に形成されるラミニン含有コーティングは、ラミニン又はその活性部分を含む。当該ラミニンタンパク質ファミリーは、基底膜に自然に見出される多ドメイン糖タンパク質を含む。ラミニンは、カルボキシ末端でコイルドコイル構造に連結し、ジスルフィド結合により安定化されたヘテロ三量体分子を形成する3つの非同定鎖のヘテロ三量体:1つのα、β、及びγ鎖である。各ラミニン鎖は、異なる遺伝子によりコードされる多ドメインタンパク質である。各鎖のいくつかのイソ型は記載されている。異なるアルファ、ベータ、及びガンマ鎖のイソ型は、異なるヘテロ三量体ラミニンイソ型を生じさせるために混合する。
【0073】
本発明のある態様において、移植可能な医療装置上のコーティングは、ラミニン−5又はその活性部分を含む。ラミニン−5は、アルファ3、及びベータ2鎖に加えてガンマ2鎖(ラミニンα3β3γ2鎖)からなる。それは最初460kDの分子として合成され、ECMに分泌された後、より小さな型に特異的なタンパク質分解的開裂を被る。当該サイズ減少は、α3及びγ2サブユニットを、190〜200から160kDに、及び155から105kDに、各々プロセシングする結果である。ラミニン−5は、基礎をなす基底膜に上皮細胞を連結するアンカーフィラメントの不可分な一部である。
【0074】
コーティングは、ラミニン−5の1又は複数の鎖、当該鎖の内の1つの一部又はそれらの混合となり得るラミニン−5の活性部分を含み得、ここで当該活性部分は、移植片のコートされた表面によって血管の形成を生じさせ得る。ある態様において、ラミニンα3鎖又はその一部は、移植可能な医療装置上のコーティングに含まれる。当該ラミニンα3鎖の一部は、球状構造を有し、Gドメインといわれ、そして、それ自体、LGリピートといわれる5つの縦列反復配列からなる。LG3モジュールといわれる、当該Gドメイン内のモジュールの内の1つは、細胞粘着、拡散、及び転移を含む重要なLn−5活性を複製することを示している{Shang,M.ら(2001)J.Biol.Chem.276:33045−33053}。ヒトLG3モジュールの配列は、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター)番号A55347として入手可能である。
【0075】
ある態様において、コーティングは、ラミニンα3鎖のLG3配列を有するポリペプチドを含む。
【0076】
PPFLMLLKGSTR、及びNSFMALYLSKGR配列の如き当該Gドメイン内の他のより短いペプチドは、当該コーティングにおいても使用され得る。
【0077】
ラミニン−5の一部を使用することの1つの有利点は、より高い密度のラミニン−5活性が表面上に提供され得ることである。あるいは、より小ないポリペプチドが、医療装置上のコーティングによって、所望の血管反応を提供するために必要とされ得る。
【0078】
ラミニン−5は、HaCaT(自然に不死化したヒト・ケラチノサイト;Boukamp,P.ら(1988)J.Cell Biol 106:761−771)、及びHT−1080(ヒト線維肉腫;ATCC,CCL−121)を含む様々な細胞系から入手され得る。ラミニン−5に対するポリクローナル抗体は、例えばAbcam(#ab14509;Cambridge,MA)から商業的に入手可能であり:ラミニン−5鎖に対するモノクローナル抗体は、例えばChemicon(マウス抗ラミニン−5γ2副鎖MAb;Temecula,CA)及びTransduction Laboratories(マウス抗ラミニン−5β3副鎖MAb;Lexington,KY)から入手可能であり、又は、ラミニン−5配列に基づき製造され得る{例えば、ペプチドCKANDITDEVLDGLNPIQTDに対してBethyl Laboratories,Inc.(Montgomery,TX)により製造されるようなラビット抗ラミニン−5 a3副鎖ポリクローナル(RB−71)(実施例を参照のこと)}。
【0079】
完全な核酸及びタンパク質配列は、ヒト・ラミニン−5のα3、β3、及びγ2鎖に使用可能である。この情報及び技術が本分野において当業者に使用可能であることを前提として、所望のラミニン−5部分は、免疫性精製、組換え蛋白質製品の如き技術を使用して入手され得る。
【0080】
ラミニン−5活性を有するコーティングは、ラミニン−5に特異的に結合する成分又はその一部(「結合メンバー」として本明細書中に記載される)を含むコーティングを提供することによっても製造され得る。ラミニン−5、及びその一部に対する抗体は、商業的に入手可能であり、及び本明細書中に記載される。当該コーティングは、コーティング中のラミニン−5をラミニン−5に対する抗体に代えること、又はコーティングをラミニン−5に対する抗体で補完することにより製造され得る。
【0081】
ラミニン−5、その一部、又はその結合メンバーは、コートされた表面によって血管の形成を生ずるのに十分な量において、移植可能な医療装置の表面上をコートされ得る。ある態様において、ラミニン−5又はその一部は、当該ラミニン−5の濃度がコーティング組成物中約1μm/mL又はそれ超であるように表面上にコートされる。
【0082】
本発明の他の態様において、ラミニン−5又はその一部は、コーティング内に主要ポリペプチドとして存在する。すなわち、ラミニン−5又はその一部は、コーティング内に存在するポリペプチドの総量の50%超で存在する。
【0083】
1又は複数の他の接着因子成分は、場合により、当該コーティング中に含まれる。ラミニン−5又はその活性部分を含むコーティングは、細胞粘着に関与する他の因子も含み得る。例えば、コーティングは、ラミニン−5、及びインテグリンファミリーのタンパク質メンバーと結合する因子の群より選択された他の成分を含み得る。ある態様において、当該他の成分は、コラーゲン、ラミニン−1、ビトロネクチン、エンタクチン、テネイシン、トロンボスポンジン、及びICAM、プロテオグリカン、エラスチン、ヒアルロン酸、並びにその活性部分からなる群より選択される。ある態様において、フィブロネクチン又はフィブリノゲンが含まれ得る。
【0084】
ある態様において、コーティングは、ラミニン−5又はその活性部分とコラーゲン又はその活性部分との組合わせを含む。例えば、当該コーティングは、ラミニン−5とコラーゲンI、及びコラーゲンIVから選択されるコラーゲンとの組合せを含み得る。ある例示的な組合せは、ラミニン−5とコラーゲンIとの組合せを含む。実施の一態様において、ラミニン−5又はその活性ドメインは、コーティング内に存在するポリペプチドの総量の50〜99%の範囲の量において当該コーティング内に存在し、コラーゲンIは、コーティング内に存在するポリペプチドの総量の1〜49%の範囲の量において当該コーティング内に存在する。
【0085】
本発明の他の態様において、コーティングは、細胞粘着に関与する他の因子との組合せにおいて、ラミニン−1の如きラミニン又はその活性ドメインを含む。例えば、当該コーティングは、ラミニン−1又はその活性ドメイン、及び本明細書中に記載されるようなインテグリンファミリーのタンパク質メンバーと結合する因子の群より選択される他の成分を含み得る。例えば、当該コーティングは、ラミニン−1と、コラーゲン、ラミニン−5、ビトロネクチン、エンタクチン、テネイシン、トロンボスポンジン、及びICAM(細胞内接着分子)、並びにその活性部分から選択される因子との組合せを含み得る。
【0086】
ある態様において、コーティングは、ラミニンと、特異的結合メンバー又は接着に関与する細胞表面抗原に対する抗体とを含み得る。例えば、当該コーティングは、ラミニンと、MadCAM又はL−セレクチンの如きCD34に対する抗体又はCD34の結合メンバーを含み得る。抗CD34モノクローナル抗体は、ヒト末梢血由来の内皮前駆細胞を結合し得る。これらの前駆細胞は、内皮細胞に分化することができる{Asaharaら(1997)Science 275:964−967}。CD34に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、アメリカンタイプ組織コレクション(Rockville,Md)から入手され得る。
【0087】
ラミニンベースのコーティングは、1又は複数の方法により形成され得る。ある態様において、ラミニン−5又はラミニン−1の如きラミニン、あるいはそのドメイン、及び追加成分は、当該医療装置の表面上に付着、及び吸着により固定化される。通常、ポリペプチド成分の吸着は、当該ポリペプチドの一部と基質の表面との間の非共有疎水性相互作用により生ずると考えられる。ポリペプチドの吸着のために、移植可能な医療装置は、一般的に、疎水性表面を有する。当該疎水性表面は、ePTFEの如きハロゲン化熱可塑性物質の如き装置の材料自体により提供され、あるいは、当該装置の表面は、疎水性表面を提供するように改良され得る。
【0088】
1又は複数のポリペプチド成分は、好適な方法を使用して吸着により表面上に固定化され得る。もし複数の成分が固定化されたならば、処理方法は、当該成分の両方が同時に固定化されるように実施され得る。例えば、ラミニンとコラーゲンとの混合物が製造され、そして当該装置の表面上に付着される。成分濃度、コーティング時間、コーティング温度、コーティングpH、溶液のイオン強度、コーティング溶液中における追加試薬の存在(例えば洗剤)は、本分野において知られたパラメーターに基づいて選択され得、当該装置の表面上に好適なラミニンベースのコーティングを提供する。
【0089】
接着によるラミニンを固定化する1つの方法を例証するために、ePTFE移植片のコーティングが記載される。空気は、アルコールでの処理によりePTFEのすき間から除去され、脱気された移植片に低減された表面張力を与える。例えば、脱気は、高アルコール濃度を有する溶液(例えば100%)からはじめて脱イオン化水溶液にまで当該アルコール濃度を低減する連続浸水により実施され得る。あるいは、脱気は、水溶液からはじめてアルコール溶液に変化させ実施され得る。次いで、当該移植片を、コーティング過程に先立ち、PBS中(例えば、カチオン除去リン酸緩衝生理食塩水)に置くことができる。
【0090】
コーティング手順について、ラミニンを含むコーティング組成物を、ePTFEの表面と接触するように置く。実施のある態様において、例えば、管状ePTFE基質の場合、ラミニン組成物は、所定の時間、管状部分にポンプで通され得る。実施の一態様において、当該コーティング組成物を、約1時間〜約12時間の範囲の期間、当該基質と接触するように置く。
【0091】
ラミニンは、コートされた表面によって血管の形成を生じ得るコーティングを提供するための量において当該組成物中に存在し得る。例えば、ラミニン−5は、約1μg/mL又はそれ超の濃度で当該組成物中に存在し得る。
【0092】
当該組成物は、ラミニン−5の如き純粋なラミニン、又はラミニンが当該組成物中に豊富であるような源から入手されたラミニンを含み得る。
【0093】
基質上に付着するラミニンの量は、SDSの如き洗剤を使用して、当該付着されたタンパク質を除去し、次いで免疫ブロッティングを使用するタンパク質定量を実施することにより測定され得る。
【0094】
本発明の他の態様において、コーティング組成物の1又は複数の成分は、コーティング成分を介して装置の表面上に固定化される。他の態様において、当該コーティング成分は、当該装置の表面上のコーティングの成分(例えば、ラミニン、及び他の任意の成分)の安定性を改良するために使用され得る。
【0095】
一般的に、当該コーティングのポリペプチド成分(ラミニン又はラミニンと他のポリペプチド因子との組合せ)は、2つの異なる配合の内の1つ又はそれら2つの組合せにより固定化され得る。他の態様において、コーティング成分は連結成分であり得る。コーティング成分の結合性を改良するための1つの配合について、ポリペプチド成分は、連結成分を介して互いに結合する。この配合において、成分は、互いに架橋され、装置の表面上に分子の連結されたネットワークを形成する。例えば、複数個のラミニン分子は、連結成分を介して架橋され、ラミニン分子のコートされた層を形成する。例えば、コラーゲン、ラミニン−1、ビトロネクチン、エンタクチン、テネイシン、トロンボスポンジン、ICAM、その活性ドメインから選択された第2成分の如き他の成分は、ラミニンと架橋され得る。
【0096】
装置の表面上に付着した成分の架橋は、コーティング組成物のポリペプチド成分を連結成分と反応させることにより生じ得る、ここで当該装置の表面は、一般的に、当該連結成分と反応しない。例えば、連結成分は温度又は光のエネルギーにより活性可能な基であり、得られた活性種は、コーティング組成物の成分と反応するが、装置表面とは反応せず、当該連結成分は、コーティング成分(例えばラミニン)の一部と反応し、共有結合されたポリペプチドのネットワークを形成する。コーティング組成物と接触する表面は、一般的に、連結成分とは反応せず、当該連結成分は、ある態様において、疎水性であり、抽出可能な水素の少ない源である。例えば、表面はePTFEの如きフッ素化ポリマー含有表面となり得る。
【0097】
本発明の態様において、連結成分は光反応基を含む。光反応基は、広範に定義すると、特異的に供給された外部光エネルギーに反応し、得られた標的への共有結合を伴って活性種の産生を受ける基である。光反応基は、貯蔵条件下で変化されないが活性下で他の分子と共有結合を形成する共有結合を保持する分子における原子の基である。当該光反応基は、フリーラジカル、ナイトレン、カルベン、及び外部電磁又は運動(温度)エネルギーの吸収で活性化された状態のケトンの如き活性種を産生する。光反応基は、電磁スペクトルの様々な部分に応答するよう選択され得、紫外線、スペクトルの可視部又は赤外線に応答する光反応基が好まれる。本明細書中に記載されるものを含む光反応基は、本分野においてよく知られる。本発明は、本明細書中に記載されるように、本発明のコーティングの形成のためにいずれかの好適な光反応基の使用を企図する。
【0098】
光反応基は、フリーラジカル、そして特にナイトレン、カルベン、及び電磁エネルギーの吸収で活性化された状態のケトンの如き活性種を産生し得る。光反応基は、電磁スペクトルの様々な部分に応答するように選択され得る。紫外線、及び当該スペクトルの可視部に応答するものが典型的には使用される。
【0099】
アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、及びアントロン様ヘテロ環(例えば、位置10において窒素、酸素又は硫黄を有するようなアントロンの複素環類似体)又はその置換された誘導体(例えば、環置換のもの)の如き、光反応性アリールケトンが、使用され得る。例示的なアリールケトンは、アクリドン、キサントン、及びチオキサントン、並びにその環置換誘導体を含むアントロンの複素環誘導体を含む。いくつかの光反応基は、約360nm超の励起エネルギーを有するチオキサントン、及びその誘導体を含む。
【0100】
アリールケトンの如きこれらの型の光反応基は、本明細書中に記載される活性化/非活性化/再活性化サイクルを容易に受けることができる。ベンゾフェノンは、特に好まれる潜在的反応成分である、というのは、三重項状態への項間交差を受ける励起された一重項状態の初期形成で光化学励起可能だからである。励起された三重項状態は、水素原子の引き抜きにより(例えば支持基質から)炭素−水素結合に差し込まれ得、それ故、ラジカル対を形成する。その後のラジカル対の崩壊は、新たな炭素−炭素結合の形成を導く。もし反応結合(例えば、炭素−水素)が結合に使用できない場合には、ベンゾフェノン基の紫外線光誘導励起は可逆的であり、分子は、エネルギー源の除去基づき、基底状態のエネルギー値に戻る。ベンゾフェノン、及びアセトフェノンの如き光活性化可能なアリールケトンは、これらの基は水中において複数の再活性化に供されるので、特に重要なものであり、そしてそれ故、増大されたコーティング有効性を提供する。
【0101】
アジドは、光反応基の他のクラスを構成し、そしてフェニルアジド及び4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジドの如きアリールアジド(C)、ベンゾイルアジド及びp−メチルベンゾイルアジドの如きアシルアジド(−CO−N)、エチルアジドホルマート及びフェニルアジドフォルマートの如きアジドホルマート(−O−CO−N)、ベンゼンスルホニルアジドの如きスルホニルアジド(−SO−N)、並びにジフェニルホスホリルアジド及びジエチルホスホリルアジドの如きホスホリルアジド[(RO)PON]を含む。
【0102】
ジアゾ化合物は、光反応基の他のクラスを構成し、ジアゾメタン及びジフェニルジアゾメタンの如きジアゾアルカン(−CHN)、ジアゾアセトフェノン及び1−トリフルオロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノンの如きジアゾケトン(−CO−CHN)、t−ブチルジアゾアセテート及びフェニルジアゾアセテートの如きジアゾアセテート(−O−CO−CHN)、並びにt−ブチル・アルファ・ジアゾアセタトアセテートの如きベータ−ケト−アルファ−ジアゾアセタトアセテート(−CO−CNCO−O−)を含む。
【0103】
他の光反応基は、3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリンの如きジアジリン(−CHN)、並びにケテン及びジフェニルケテンの如きケテン(CH=C=O)を含む。
【0104】
コーティングがポリペプチド成分の架橋された層を含む際に関して、当該コーティングは、光反応基を含むラミニン(すなわち、光−ラミニン)を提供することにより形成され得る。これらの態様において、光−ラミニンは、活性化され、他の光−ラミニンを含むコーティング成分における他の成分と架橋する。
【0105】
あるいは、コーティングは、当該コーティング組成物の成分を光反応性架橋剤であるカップリング成分と混合することにより形成される。当該光反応活性可能な架橋剤は、非イオン又はイオンとなり得る。当該光反応活性可能な架橋剤は、適切な光化学作用を有するエネルギー源にさらされたとき化学的に反応し得る、少なくとも2つの潜在性光反応基を含み得る。
【0106】
例えば、ラミニンコーティングは、式 XRを有する非イオン性光反応可能な架橋剤を使用して形成され得る、ここでXは化学的骨格であり、及びR、R、R、及びRは潜在性光反応基を含むラジカルである。例示的な非イオン架橋剤は、例えば、米国特許第5,414,075、及び同第5,637,460(Swanら“Restrained Multifunctional Reagent for Surface Modification”)に記載される。
【0107】
イオン光活性可能な架橋剤は、ラミニンコーティングを形成するためにも使用され得る。いくつかのイオン光活性可能な架橋剤は、式 X−Y−Xを有する化合物であり、ここで、Yは少なくとも1つの酸性基、塩基性基、又は酸性基若しくは塩基性基の塩を含むラジカルである。X及びXは、各々、独立して、潜在性光反応基を含むラジカルである。例えば、式Iの化合物は、スルホン酸又はスルホン酸基を含むラジカルYを有し得、X及びXはアリールケトンの如き光反応基を含み得る。かかる化合物は、4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸又は塩、2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸又は塩、2,5−ビス(4−ベンゾイルメチレンオキシ)ベンゼン−1−スルホン酸又は塩、N,N−ビス[2−(4−ベンゾイルベンジルオキシ)エチル]−2−アミノエタンスルホン酸又は塩などを含む。米国特許第6,278,018号を参照のこと。当該塩の対イオンは、例えば、アンモニウム、あるいはナトリウム、カリウム又はリチウムの如きアルカリ金属となり得る。
【0108】
コーティングのポリペプチド成分の関連性を改良するための好ましい配列について、当該ポリペプチド成分(ラミニンを含む)は、1又は複数の追加のコーティング成分と一緒に使用して装置の表面上に固定化される。当該1又は複数の追加の成分は、ポリマー成分、第1反応基、及び第2反応基を含み得る。
【0109】
実施のある態様において、第1反応基は、ポリマー成分の架橋がコートされた層を形成することを可能とする。例えば、当該第1反応基は、他のポリマー成分と反応し結合するために活性化され得、移植可能な医療装置の表面上の層としてポリマー成分のネットワークを形成する。ポリマー成分のかかる架橋されたネットワークは、第1反応基及び当該装置の表面の反応性がほとんど又は全くないときに、形成され得る。ある場合において、第1反応基は、ポリマー組成物由来のペンダントである。好ましくは、当該第1反応基は、本明細書中に記載される光反応基を含む。
【0110】
あるいは、移植可能な医療装置の表面上に層として形成されたポリマー成分のネットワークは、本明細書中に記載されるような、光反応基を含む架橋剤の如き、架橋剤とポリマー成分とを混合することにより形成される。
【0111】
ある態様において、ポリマー成分は、光反応基の如き第1反応基と装置の表面との反応により当該装置の表面に連結される。この場合において、当該ポリマー成分は、当該装置の表面と共有的に結合され得る。
【0112】
第2反応基は、ラミニン及び他の場合には他の接着因子の結合を可能とする。当該第2反応基は、ラミニン、及び当該接着因子と、別々に、反応する。例えば、第2反応基は、N−オキシスクシンイミド(NOS)基の如きアミン−反応基となり得る。他のアミン−反応基は、アルデヒド、イソチオシアネート、ブロモアセチル、クロロアセチル、ヨードアセチル、無水物、イソシアネート、及びマレイミド基を含む。
【0113】
第2反応基は、ポリマー成分由来のペンダントともなり得る。好ましくは、当該ポリマー成分は、ペンダント第1反応基、及びペンダント第2反応基を含む。ペンダント第1及び第2反応基を有するポリマー成分の使用は、特異的なプロセシング及び機能的有用性を提供する。例えば、これらのペンダント基を有するポリマー成分は、当該装置の表面上に配置され、第1反応基を活性化しコートされた層を形成するように処理され得る。その後、ラミニンは、第2反応基と反応するように当該表面上に配置され得、当該表面上にラミニンを効果的に固定化する。
【0114】
ラミニン、及びコラーゲンの組合せの如き、ラミニン、及び他の接着因子が表面上に固定化されるとき、この配置は特に有用である。処理する前に、これらのポリペプチド成分(ラミニンを含む)が、所望の比率又は濃度で混合され、次いで、ポリマー成分上で第2反応基と処理される。各ポリペプチド成分は、各々、当該第2反応基と反応し、当該ポリペプチドとポリマー成分とを結合する。この点に関して、プロセシング過程は最小化される。これらは、効果を改良し、そしてコーティング手順に関してコストを低減する。
【0115】
好ましい態様において、ポリマー(コーティング成分)は、親水性ポリマーを含む。ラミニン含有コーティングを形成するために使用される親水性ポリマーは、合成ポリマー、天然ポリマー又は天然ポリマーの誘導体であり得る。例示的な天然親水性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、これらのポリマーの誘導体、並びに類似の天然親水性ポリマー及びその誘導体を含む。
【0116】
他の好ましい態様において、ポリマーは親水性、かつ合成のものである。合成親水性ポリマーは、アクリルモノマー、ビニルモノマー、エーテルモノマー、あるいは1又は複数のこれらの型のモノマーの組合せを含む、いずれかの好適なモノマーから製造され得る。アクリルモノマーは、例えば、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びにそれらのいずれかの誘導体、及び又は混合物を含む。ビニルモノマーは、例えば、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、及びこれらの内のいずれかの誘導体を含む。エーテルモノマーは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及びこれらのいずれかの誘導体を含む。これらのモノマーから形成され得るポリマーの例示は、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(HEMA)を含む。例示的な親水性コポリマーは、例えば、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、及びビニルピロリドン/(メト)アクリルアミドコポリマーを含む。ホモポリマー、及び/又はコポリマーの混合物が、使用され得る。
【0117】
実施の例示的態様において、親水性ポリマーは、(メト)アクリルアミドコポリマーであり、例えば、(メト)アクリルアミド及び(メト)アクリルアミド誘導体である。
【0118】
ポリマーベースのコーティング成分の使用は、特異的なプロセシング、移植可能な装置のコーティングの製造に関する機能的、及び経済的な有利点を提供する。例えば、コーティングを形成するための方法において、コーティング過程における1ステップとして、ポリマーコーティング成分は、装置の表面上で処理され得、そしてポリマーベースの層を形成するために処理される、ここで第1反応基は当該装置の表面上にポリマーを共有的に結合するために活性化され、及び/又は第1反応基は、コートされた層を形成するためにポリマーを共有的に架橋する。続くステップは、当該ポリマー層上の1又は複数のポリペプチド成分(ラミニン又はラミニンの混合物、及び他のポリペプチド因子)を含む組成物を処理することを含む、ここで当該第1及び第2成分は、第2反応基を介して、当該ポリマーに結合される。
【0119】
ポリマーコーティング成分を使用したコーティングの製造過程に関して、ラミニンを処理する前のコートされた層を形成するためのポリマー成分の使用は、さらなるプロセシング、及び機能的有利性をもたらすことを見出した。
【0120】
ePTFE移植片へのコーティングを提供する際に、微細孔から気泡を除去する過程に関して、当該ePTFEの微細孔を脱気するために複数のステップを実施した。一般的に、脱気は、ePTFEを主としてアルコールベースの溶液で処理すること、その後PBSの如き主として水溶液に移すことにより実施され得る。この過程は、移植片の移植後に、体液、及び組織成分により接触され得る表面積を増大するとして、一般的に有用であり、ePTFEの周辺、及びその中に低減された線維性被膜形成、及び増大された血管発達をもたらす(Boswell,CA.及びWilliams,S.Kら J.Biomater.Sci Polymer Edn.,10:319−329)。
【0121】
しかしながら、ePTFEは、容易に再入気され得(気泡は当該多孔質部分の中に再導入され得る)ので、その後のプロセシング又は処理の間、水溶液を置換させる。一般的に、ePTFE移植片の再入気は、材料の外観における変化として観察され得る。他の技術を、相対的な脱気又は再入気を測定するために使用し得る。再入気は移植片の効果を低減し得る。
【0122】
当該コーティング過程の間のポリマー材料のベース層を提供するステップの後、ePTFEが「安定的に脱気化」のままでいられることを発見した。安定的に脱気された多孔質部分(例えば、安定的に脱気されたePTFE移植片)において、当該多孔質内に気泡を再導入することは困難である。すなわち、当該水溶液は、小空洞部分により容易には置換されない。
【0123】
安定して脱気された多孔質部分を有する移植可能な医療装置は、特異的なプロセシング、及び機能的有利点を提供し得る。例えば、安定して脱気された多孔質部分を有する移植可能な医療装置は、それ以外には装置の多孔質部分を再入気してしまうであろう取り扱いステップに供され得る。この点に関して、特異的な保存又は取り扱い過程の如き、多孔質装置を脱気されたままに保つために使用され得るプロセシング過程は必要とされないかもしれない。
【0124】
安定的に脱気された多孔質部分を有する移植可能な医療装置は、その後、所望の組成物でコートされ得る。当該組成物は、本明細書中に記載されるいずれかのラミニン含有組成物となり得る。あるいは、他の型の生体分子は、本明細書中に記載されるような安定した脱気部分上に関してコートされ得る。
【0125】
本発明は、以下の非制限的な実施例に関して、さらに記載されるだろう。
【0126】
試験、及び分析
ウェスタンブロット
バイオリアクター系における調整された培地フローの4つの時点でのePTFE上のラミニン−5の付着、並びに抗体BM165(University of Arizona; Dr. Stuart K. Williams)の免疫親和性カラムに通過前、及び通過後の調整された培地サンプルをウェスタンブロット分析により評価した。ePTFEに付着されたタンパク質を、37℃で24時間、LaemmliSDSサンプルバッファー及び10%の2−β−メルカプトエタノールの500μLに浸した間、当該ePTFEサンプルを穏やかにかき混ぜることにより回収した。調節された培地サンプルを取扱説明書に従って、Centricon YM30(Centricon Centrifugal Filter Devices,Millipore Co.,Bedford,MA)を使用して濃縮した。タンパク質濃度をMicro BCAキット(Pierce,Rockford,IL)を使用して測定した。
【0127】
7%のドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、バイオリアクターの改良由来の各タンパク質サンプル20μl、及び調節された培地サンプルについての20μgタンパク質と等しい体積を使用して実施した。次いで、当該ゲルを、ポリフッ化ビニリデン膜(PVDF)Immobilon−P(Millipore Corp.,Bedford,MA)に移した。ブロットをPonceau Sで染色し、そして必要なときには、分析用に個々のストリップに切断した。
【0128】
タンパク質を、以下の特異的抗体を使用して検出し;(1)ラビット抗コラーゲンIポリクローナル(COL1.1;abcam,UK)1:7500、(2)マウス抗コラーゲンIVモノクローナル(カタログ番号#MAB1910;Chemicon,Temecula,CA)1:10,000、(3)マウス抗フィブロネクチン・モノクローナル(クローンFN−15;Sigma,St.Louis,MO)1:10,000、(4)ラビット抗ラミニン−1ポリクローナル(製品番号#L−9393;Sigma,St.Louis,MO)1:7500、(5)マウス抗ラミニン−5 β3副鎖モノクローナル(クローン17;Transduction Laboratories,Lexington,KY)1:1500、(6)マウス抗ラミニン−5 γ2副鎖モノクローナル(カタログ番号#MAB19562;Chemicon,Temecula,CA)1:5000、(7)Champliaudら{Champliaud,M.F.らHuman amnion contains a novel laminin variant,laminin7,which like laminin6,covalently associates with laminin5 to promote stable epithelial−stromal attachment.J Cell Biol 132,1189−1198(1996)}により最初に特定されたペプチド配列CKANDITDEVLDGLNPIQTDに対するラビット抗ラミニン−5 α3副鎖ポリクローナル(RB−71,Bethyl Laboratories,Inc.による特別注文)1:5000、そして使用説明書(Pierce,Rockford,IL)に従ってSuperSignal(登録商標)物質を使用して観察した。
【0129】
ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼに結合する2つの2次抗体、ラット抗マウスIgG(クローンLO−MG1−2;Serotec,Raleigh,NC) 1:5000、及びゴート抗ラビットIgG(製品番号#A9169;Sigma,St.Louis,MO) 1:5000を使用した。標準タンパク質は、ヒトコラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン、EHSラミニン−1(全てBecton Dickinson,San Jose,CAから)、及び精製されたラミニン−5からなる。
【0130】
ePTFEへの細胞粘着
ヒト微細血管の内皮細胞(HMVEC)の融合性単層を、37℃、20分間、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において5mMのエチレンジアミン4酢酸(EDTA)で処理することにより、接着研究のために準備した。細胞浮遊液を、0.1%のウシ血清アルブミン、2mMのL−グルタミン、及び5mMのHEPES緩衝液を含有する無血清培地(M199)に回収した。当該細胞を、Williams,S.Kら(Williams,S.K.,Schneider,T.,Kapelan,B.&Jarrell,B.E.Formation of a Functional Endothelium on Vascular Grafts.J Electron Microsc Tech 19,439−451(1991))より細かな変更を伴ってすでに記載されたように、2×10細胞数/cmの密度で敷いた。手短に、細胞を各PTFE管の内腔表面上に圧力をかけて敷き、37℃及び5%COでインキュベーター内にしながら、1時間、付着を可能とした。このインキュベーション期間後、ePTFEサンプルを回収し、そしてホルマリン固定液内に置いた。
【0131】
ePTFEへのHMVEC接着の定量化
接着細胞を、UV光の下で蛍光を発するDNA挿入剤、ビスベンズイミド(BBI)で標識した。各サンプルを、UVフィルターを使用する10×対物の下で落射蛍光を使用して視覚化した。5つの視野を無作為に選択し、イメージをコンピューターベースの形態計測系(Metamorph Imaging Systems Software;Universal Imaging Corporation,West Chester,PA)に取り込み、そして細胞密度をそれに基づき計算した。
【0132】
走査電子顕微鏡法
サンプルを、脱水、臨界点乾燥により走査電子顕微鏡の評価をスキャニングするために準備し、そして金標的を使用してコーティングをスパッタした。当該サンプルを評価し、そしてJEOL820走査電子顕微鏡(JEOL USA,Peabody,MA)を使用して、顕微鏡写真を得た。
【0133】
移植片設計検討
全動物実験をアリゾナ大学IACUCにより認可されたプロトコールで、及び{National Institutes of Health Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animals (#85−23 Rev.1985)に従い、実施した。実験をマウスの皮下組織に限定した。外科手術を、Salzmann,D.Lら{Salzmann,D.L.,Kleinert,L.B.,Berman,S.S.&Williams,S.K.The effects of porosity on endothelialization of ePTFE implanted in subcutaneous and adipose tissue.J.Biomed Mater Res 34,463−476(1997)}により以前に記載されたように実施した。
【0134】
線維性カプセル化評価
移植片周辺に発達する組織カプセルの評価を移植片の第1シリーズ(HCMシリーズ)に関して実施した。20×対物レンズ及びSony catseyeカメラを使用して、各々、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色区域からポリマーの各内腔又は反管腔側面で、5つの無作為のイメージを捕捉した。これらのイメージを、ePTFE面積(内腔又は反管腔)に関連する位置、並びにカプセル組織型(線維性又は細胞内被膜)をベースに分類した。コンピューターベースの形態計測システム(Metamorph Imaging Systems Software;Universal Imaging Corporation,West Chester,PA)を使用して、当該カプセルの厚さの3回の測定を各イメージから取り、合わせて1サンプルあたり15回の測定(1サンプルあたり5つのイメージ、1イメージあたり3回の測定)を行った。値を、μm±s.e.m(標準誤差)において平均厚みとして表現した。
【0135】
血管密度
血管密度を、40×水浸対物レンズの下で見られるGriffonia simplicifolia−1(GS−I)(ビオチニル化レクチン−GS−1;1:250;Vector Laboratories,Burlingame,Ca)で染色された部分を使用して評価した。横断面及び縦断面の血管プロフィールの数を、1つの高倍率視野(HPF)(HPF=54×54μm)あたりでカウントした。陽性血管の判断基準は、(1)陽性GS−I反応、(2)識別可能内腔、(3)指定されたHPF領域内に位置することである。これらのHPFを、移植片の円の全外曲線に沿って、組織における10視野と個別に選択されたePTFEにおける10視野で、組織−ポリマー接合部において、無作為に選択した。血管密度は、各群について1mm±s.e.m(標準誤差)あたりの血管数の平均として示される。
【0136】
40×水浸対物レンズで見られるF4/80で染色された区分を使用して、炎症反応を評価した。54×54μmの高倍率視野を使用して、10の視野を、移植片の円の全外曲線に沿って、組織−ポリマー接合部で、組織内において無作為に選択した。HPF内のF4/80陽性染色細胞をカウントした。各移植片グループについての炎症反応を、F4/80陽性細胞数/mm±s.e.mの平均数として示した。
【0137】
組織学、及び免疫組織化学
固定された組織サンプルを脱水し、パラフィンに埋め込み、6μmで区分化し、そして組織学的及び免疫学的評価を実施した。一般的な組織学的構造を、ヘマトキシリン及びエオシン染色で測定した。血管系を、レクチン、GS−Iを使用して特定した。サンプルを、活性化したマクロファージの存在下、F4/80 160kDの糖タンパク質抗原に対する抗体(ビオチン−モノクローナル、1:100 Serotec,Inc.,Raleigh,NC)を使用して、免疫細胞化学的に評価した。ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンキット(Dako Inc.,Carpinteria,Ca)を使用し、評価のための結合を検出し、そしてサンプルを、視覚化のために3,3’ジアミノベンジジン(DAB)基質と反応させた。メチルグリーン染色を使用して、両免疫組織化学的な技術に続いて、バックグラウンド核を測定した。
【実施例】
【0138】
実施例1
生体外−細胞培養
HaCaT及びII−4細胞系{Dr.Norbert Fusenig(German Cancer Research Center)を培地中に維持した(高グルコース、10%のウシ胎仔血清、2mMのL−グルタミン、及び5mMのHEPES緩衝液を有するダルベッコ変法イーグル培地)}。70%コンフルエンスの細胞を、pH7.4のジカチオンフリーのリン酸緩衝生理食塩水(DCF−PBS)でリンスし、そして血清フリーの培地に48時間置き、その後、調節培地を回収した。回収された調節培地を750gで5分間、遠心分離し、残がいを除去し、その後コーティング手順に供した。
【0139】
ヒト微細血管内皮細胞(HMVEC)を、Williamsら{Williams,S.K.,Wang,T.F.,Castrillo,R.&Jarrell,B.E.Liposuction−derived Human fat used for vascular graft sodding contains endothelial and not mesothelial cells as the major cell type. J Vase Surg 19,916−923(1994)}に以前に記載されたように、ヒト脂肪吸引脂肪から単離した。細胞を培地{Medium199、10%のウシ胎仔血清、60μg/mlの粗内皮細胞成長因子(ECGS)、2mMのL−グルタミン、及び5mMのHEPES緩衝液}に維持し、そしてパッセージ2〜パッセージ5に使用した。
【0140】
調節培地からラミニン−5の精製/除去
ラミニン−5の精製を、僅かな変更を伴ったChampliaudら{Champliaud,M.F.ら、Human amnion contains a novel laminin variant,laminin7,which like laminin6,covalently associates with laminin5 to promote stable epithelial−stromal attachment.J Cell Biol 132,1189−1198(1996)}の手順に従って実施した。簡単に、この方法との違いは、ラミニン−5の源を含む;ラミニン−5を、ヒト羊膜からよりもむしろHaCaT細胞の細胞培養上清から入手した。さらに、ラミニン−5のα3鎖で標的とされるモノクローナル抗ラミニン抗体BM165と複合されるセファロースカラムを使用する免疫親和性クロマトグラフィーを、使用した。
【0141】
調節培地からのラミニン−5の除去(HaCaT調節培地−Ln5を作成するためのもの)を接着実験と同じ日に実施した。セファロースビーズを、モノクローナル抗ラミニンα3鎖抗体BM165と複合させた。カラムを、300μlの合成ビーズを使用して作成した。調節培地を、計2回カラムに通した。当該ビーズを、通過の間に、1Mの酢酸を使用して再生させ、当該酸を除去するためにリン酸緩衝生理食塩水フリーのダルベッコの陽イオン(DCF−PBS)でリンスした。カラムにかける前と後の(プレカラム、ポストカラム)サンプルを、ウェスタンブロット分析、及びラミニン−5除去の立証のために回収した。
【0142】
表面改良
調節培地でのePTFE(4mm直径の管状移植片材料、IMPRA,Inc.,Tempe,AZ)の改良の作成において、100%で始まり10%ずつ20分間隔で脱イオン水に低減する連続エタノール浸水を使用して、空気を当該材料のすき間から除去した。この過程は脱気といわれ、空気の除去、及び低減された表面張力を伴う移植片の作成をもたらす。脱気後、ePTFEをDCF−PBSに1時間置き、その後、バイオリアクター手順を実施した。
【0143】
コーティング手順のために、遠位末端のキャップを有する管状ePTFEを、2005年2月23日に出願された米国特許第仮出願US60/655,576に記載されるようなバイオリアクターに設置した。おおよそ、55mlのHaCaT調節培地(HCM)を、15ml/分で、各々1、3、6又は12時間、管状ePTFEにポンプで通した。1時間の流入計画を、HCM、及びHCM・マイナス・ラミニン−5(HCM−Ln5)のために使用した。DCF−PBS、及び精製ラミニン−5の改良をも評価した。脱気後、DCF−PBS群をDCF−PBSに一晩浸し、そして純ラミニン−5群(1μg/cm)をコートし、4℃で一晩DCF−PBS/ラミニン−5溶液に保ち、その後細胞内接着実験を実施した。さらに、サンプルをEDTAで処理し、カルシウムがePTFE上のラミニン−5付着に必要とされるかどうか測定した。タンパク質回収の前に、穏やかな撹拌と共に改良後24時間、サンプルを4mMのEDTAの槽内に置いた。
【0144】
ウェスタンブロット分析
図1aにおいて、HCMのePTFE流入後から回収されたタンパク質においてラミニン−5のベータ3鎖を同定し、ePTFEの表面上のラミニン−5の付着を確認した。レーンを、流入継続時間(1、3、6又は12時間)により分類した。図1bにおいて、ePTFE上にHCMにより付着されたタンパク質において、多型細胞外マトリクス・タンパク質を同定した。標準タンパク質は、コラーゲンI(CI)、コラーゲンIV(CIV)、フィブロネクチン(FN)、ラミニン1(ラミニン1)、及びHaCaT細胞ライセート(Ln5)からなる。FN、Ln1、及びLn5(β3鎖)が、HCM付着タンパク質に観察された。図1cにおいて、ラミニン−5をHCMからうまく除去した。ラミニン−5の3つの鎖の各々、α3、β3、及びγ2をプローブした。γ2を完全に除去した一方、α3及びβ3鎖の最少量が残った。
【0145】
ePTFEへの細胞粘着
ヒト微細血管内皮細胞(HMVEC)の融合性単層を、20分間37℃で、DMEMにおける5mMのEDTAで処理することにより、接着試験のために作成した。細胞浮遊液を、0.1%のBSA、2mMのL−グルタミン、及び5mMのHEPES緩衝液を含む血清フリーの培地(M199)中に収集した。Williams,S.Kら{Williams,S.K.,Schneider,t.,Kapelan,B.&Jarrell,B.E.Formation of a Functional Endothelium on Vascular Graft.J Electron Microsc Tech 19,439−451(1991)}にわずかな変化を伴って記載されたように、当該細胞を2×10細胞個/cmの密度で敷いた。簡単に、細胞に圧力をかけて各ePTFEの内腔表面上に敷き、37℃、5%COのインキュベーター内で回転させる間、1時間、付着可能な状態とした。このインキュベーション期間の後、ePTFEサンプルを収集し、ホルマリン固定液中に置いた。
【0146】
ePTFEへのHMVEC接着の定量化
図2aの棒グラフは、改良されたePTFEへのHMVEC接着を定量化した結果を示す。値は、HPFあたりの平均細胞数として示した。HCMと純ラミニン−5改良の両方は、非改良ePTFEと比較した接着における増大をもたらした。図2b〜2fは、ヒト微細血管内皮細胞(HMVEC)で敷かれたePTFE管の内腔表面の走査電子顕微鏡写真である。EPTFE改良は、非改良、HaCaT調節培地(HCM)、HCMマイナス・ラミニン−5、純ラミニン−5、及びDCF−PBS改良ePTFEを含む。バーは100μmと等しい。HMVECは、DCF−PBS及び非改良サンプル上で丸みを帯びており、一方、調節培地及びラミニン−5改良表面上においては拡散している。走査電子顕微鏡写真は、図2aの棒グラフに見られる結果を視覚的に反映する。
【0147】
走査電子顕微鏡法
図3aにおいて、棒グラフは、マウス皮下組織に移植された改良、及び非改良ePTFEによる血管新生、及び新生血管反応を定量化した結果を示す。値は、1mmあたりの血管の平均数を示した。HCM−Ln5、及びDCF−PBS群は、血管新生評価について活性を示し、新血管形成は、HCM群について示された。図3b〜3fは、マウス皮下組織からePTFE移植片の横断面に関するGS−1陽性血管の光学マイクロ写真であり、当該移植片は、非改良のもの、あるいはHCMでコートされたもの、ラミニン−5減損HCMでコートされたもの、純ラミニン−5でコートされたもの又はDCS−PBSでコートされたものであって、図3aの結果に対応する。
【0148】
移植片設計検討
各手順について、動物を400mg/kgのアベルチン(avertin)(登録商標)腹腔内投与で麻酔して、外科手術した。ePTFEディスク(4mmパンチ生検を使用して4mm直径管状移植片材料から作成されたパンチ)を、動物1匹あたり計2つのサンプルで、無秩序な順番で右後方及び左後方臀部皮下組織に移植した(n=4/群)。サンプルを5週間の移植継続時間後除去し、そして、Histochoice(登録商標)定着剤(Amresco,Solon,OH)中に置いた。サンプルは、1動物あたり計4つのサンプルについて無秩序な順番で移植される(n=4/群)、HaCaT調節培地(HCM)、HCMマイナス・ラミニン−5、ラミニン−5、DCF−PBSで改良されたePTFE、及び非改良のePTFEからなる。改良後、計15匹の雄129−SVJマウスにePTFEディスクを皮下的に移植した。
【0149】
線維性カプセル化の評価
移植片周辺に発達する組織カプセルの評価を、移植片の第1群(HCM群)に関して実施した。20×対物レンズ及びSony catseyeカメラを用いて、各々H&E染色部分からのポリマーの内腔又は反管腔側面で、5つの無秩序なイメージをキャプチャーした。コンピューターベースの形態計測系を用いて、これらのイメージを、ePTFEディスク(内腔又は反管腔)との相対的位置、並びにカプセル組織の型(線維性カプセルか、又は細胞性カプセル)に基づいて分類した。ラミニン5が、測定可能な反管腔、内腔、及び細胞効果を産生した。
【0150】
【表1】

【0151】
炎症反応
図4は、改良及び非改良ePTFEに関して、F4/80陽性細胞(活性化されたマクロファージ及び単球)の炎症反応のグラフである。F4/80陽性細胞はマウス皮下組織に移植したePTFEに関する。値を1mmあたりの細胞平均数として示す。当該改良におけるラミニン−5の存在と炎症細胞反応の程度との間に傾向は観察されなかった。
【0152】
組織学、及び免疫組織化学
図5a〜5bは、マウス皮下組織からのePTFE移植片を含有する、ヘマトキシリン、及びエオシンで染色された組織横断面の光学マイクロ写真であり、当該移植装置は、非改良のもの、あるいはHCM、ラミニン−5減損HCM、純ラミニン−5又はDCF−PBSでコートされたものである、バーは25μmと等量である。増大した細胞反応が、HCM改良サンプルに関して見られ、ここで、ラミニン−5改良サンプルは薄い部分を有し、相対的に、無細胞カプセルがその周辺に形成される。
【0153】
実施例2
二成分タンパク質コーティング方法
アミン反応基、及び光反応基を含むヘテロ二機能性ポリアクリルアミド試薬(HBPR、米国特許第5858653号の実施例9に記載されるように作成した)を使用して、細胞外マトリクス・タンパク質をePTFE血管移植片上に固定した(4mm直線状、CR.Bard,Impra Corporation,Tempe,AZ)。マトリクス・タンパク質を、以下の源から入手した:ウシ・コラーゲン−I(Kensey Nash)、ヒト コラーゲン−IV(BD Biosciences)、ヒト フィブロネクチン(BD Biosciences)、マウス ラミニン−I(BD Biosciences)、及びヒト ラミニン−V(アリゾナ大学)。当該移植片、及び試薬の全取り扱いの間、無菌技術を使用した。移植片を、3.2cm長に切断した。Femaleルアーフィッティング(Small Parts,Inc.)を、外科縫合で当該移植片の各末端に固定した。移植片を、20分間イソプロピルアルコール(IPA)に浸すことにより脱気(当該移植片のすき間から閉じ込められた空気を除去する)し、次いで、pH7.4の脱気されたダルベッコ陽イオンフリーのリン酸緩衝生理食塩水(DCF−PBS)の中に当該移植片を置いた。移植片をDCF−PBSから取り除き、余分なPBSの滴をきり、そして当該移植片を、HBPRの溶液(50%のIPA/水における10mg/ml)に置いた。
【0154】
30分後、当該移植片をHBPR溶液から取り除き、乾燥させ(〜1.5時間)、そして、3分間、水銀アーク・フラッドランプ(320〜340nmで強く放射する)で照射した。当該移植片を上記のように再度脱気した。pH9.0、0.1Mの炭酸塩/重炭酸塩(CBC)緩衝液において、マトリクス・タンパク質を、2つの異なるタンパク質を含有する単一の溶液から当該移植片にアプライした(表1を参照のこと)。当該移植片の遠位末端をキャップし、そして当該タンパク質溶液12mlを、シリンジ及び4−ウェイ male slip stopcock(Cole−Parmer)を使用して、当該移植片に断行した。当該HBCR−改良移植片を、4℃で一晩、当該タンパク質と反応に供した。次いで、当該移植片をDCF−PBSで簡単にリンスし、そして、タンパク質含量及び生物活性(生体外細胞粘着)について評価した。
【0155】
【表2】

【0156】
免疫蛍光染色法
コーティングにおける当該タンパク質の存在を確かめるために、免疫蛍光染色法を使用した。以下の抗体を使用した:ラビット抗コラーゲン−I(Rockland, Inc)、マウス抗ヒト・コラーゲン−IV(Chemicon)、ラビット抗マウス・ラミニン−I(Sigma)、マウス抗ヒト・ラミニン−V(Transduction Laboratories)、ラビット抗ヒト・フィブロネクチン(Sigma)、ゴート抗ラビットTexas Red(Rockland, Inc.)、抗マウスAlexa Fluor350(Molecular Probes)、及びゴート抗マウスCy3(Jackson Laboratories)。移植片のサンプルを切断し、12×75mmのプラスチック試験チューブに置いた。次いで、サンプルを、オービタルシェ−カー(orbital shaker)上で、室温、20分間、0.05%のTween−20を含有するトリス緩衝生理食塩水(TBS)中に1.5%(w/v)のBSAの2mlでブロックした。
【0157】
次いで、サンプルを、オービタルシェ−カー上で、室温、1時間、DCF−PBS中、0.4mlの一次抗体と共にインキュベートした。次いで、全移植片を、オービタルシェ−カー上で振とうしながら、2mlのDCF−PBSで3回、各15分間、洗浄した。サンプルをオービタルシェ−カー上で、室温、1時間、DCF−PBS中、0.4mlの2次抗体と共にインキュベートした。次いで、サンプルを、前記のようにDCF−PBSで再度洗浄した。内腔の移植片を、20×対物レンズを使用して蛍光顕微鏡でイメージ化した。全デジタルイメージパラメータ(コントラスト、明るさなど)を、HBPR対照に標準化した。
【0158】
免疫蛍光染色結果
HBPRでの免疫蛍光染色は、コラーゲン−Iとラミニン−Iの両方が当該二成分系タンパク質でコートされた移植片上に検出されたことを示す。他の染色試験において、コラーゲン−Iとラミニン−Vが検出された。似たような結果が、他のニ成分系タンパク質コーティングについて見られる(表3)。
【0159】
【表3】

【0160】
細胞粘着試験
移植片を急性細胞粘着について試験して、各タンパク質コーティングの生物活性を評価した。ウシ大動脈内皮細胞(BAEC)を解離し、そして、1×10細胞個/ml(10又はそれ未満のパッセージ)培地中に再懸濁した。開いた遠位末端を伴った当該試験移植片の近位末端に栓を付けた。シリンジを使用して、陽性液体メニスカスを遠位末端で見るまで、0.75mlの十分に混合した細胞懸濁液を当該栓の中にすぐにデリバリーした。当該栓を閉め、そして当該遠位末端をキャップした。次いで、37℃、及び5%COで30分間インキュベーター内に、移植片を置いた。当該移植片をインキュベーターから除き、そして、ルアーフィッティングを、近位及び遠位末端の両方から切断した。はさみで縦割りし、当該移植片を開いた。移植片の末端をかん子で保持し、当該移植片を約5秒間、DCF−PBS内で洗浄した。移植片を、4℃、一晩、脱イオン水中8%のパラホルムアルデヒド中に固定した。次いで、移植片を、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI,Sigma−Aldrich,Milwaukee,WI)で染色し、そして蛍光顕微鏡でイメージをキャプチャーした。20×対物レンズの8つの視野まで、各移植片についてキャプチャーした。細胞カウントを測定し、平均化した。
【0161】
細胞粘着の結果
5つの二成分タンパク質コーティングの内の4つが、HBPRのみと比較して、細胞粘着を5〜11倍に促進した(図6)。HBPR LM1/FNは、細胞粘着を増大しなかった(図7)。
【0162】
実施例3
ラット移植片
試薬及びタンパク質コーティングでコートされたePTFEディスクによる創傷治癒、及び炎症を、生体内試験により評価した。ePTFEディスク{4mm直径、4mmの直線状の大きさ、C.R.Bard,Impra Corporation,Tempe,AZ.A 光学活性化可能なコポリマー(HBPR)}を、米国特許番号5,858,653号の実施例9に記載されるように製造した。以下のサンプルを評価した:非コートePTFE、HBPRのみ、HBPRコラーゲン−I、HBPRラミニン−I、HBPRラミニン−V、HBPRコラーゲン−I/ラミニン−I、及びHBPRコラーゲン−I/ラミニン−V、光コラーゲンI、及び光ラミニン1。ラミニン及びコラーゲンのサンプルを、実施例2に記載された源から入手した。光コラーゲン1と光ラミニン1を、米国特許第5,744,515号の実施例1に記載の方法により製造した、ただし、コラーゲン1又はラミニン1を置換し、この実施例のために特別に作成した。HBPR及びタンパク質サンプルのコーティング手順は、コラーゲンI/ラミニンVサンプルを10/5.0μg/mlで作成したことを除いて、実施例2に記載される。4週間の終わりに、動物を麻酔して、ディスクを摘出し、Histochoice固定液に置いた。材料の採取後、ペントバルビタールの過剰投与(100mg/kg)を使用して当該動物を安楽死させた。当該ディスクを区分化し、スライド上に置き、そしてH&Eで染色し、そしてGS−1で免疫組織化学的に染色した。当該ePTFEディスクを外植し、組織学のために加工した。各ディスクを、当該ePTFE移植片材の移植片周辺の血管新生、及び新血管形成について分析した。
【0163】
多孔質材料(この場合はePTFE)の新血管形成を最も効果的に支持する処理は、HBPRコラーゲン−I/ラミニン−I−V及び光ラミニン1である。光コラーゲン1及びHBPRコラーゲン−Iは、表面の血管新生を支持するが、幅広い新血管形成を支持しない。コートされないePTFEは、最小の血管新生、及び最小の新血管形成を示す。HBPRラミニン−Vは、対照よりも多いが、フォトラミニン1よりも少ない新血管形成を示す。
【0164】
実施例4
HBPR/タンパク質改良(HBPR COLI/LM5、など)冠状動脈ステント(3×8mm)を、ニュージーランドホワイトラビットの腸骨動脈における治癒反応について評価する。当該ステントをバルーンカテーテル(3×15mm)に圧着し、そしてエチレンオキシド滅菌した。次いで、当該ステントをニュージーランドホワイトラビットに配置する、ここで当該配置は、1つの腸骨動脈における試験ステント、及び対立する動脈における地金ステント対照である。当該ステントを7、28、及び90日で外植し、そして光学顕微鏡、及び走査電子顕微鏡により評価する。当該外植されたステントを縦方向に二等分に切断し、そして組織学のために加工する。
【0165】
一方の半分のステントにおいて、近位及び遠位血管のパラフィン部からステント/血管接合部まで、ありきたりの病理組織学的試験を実施し、プラスチックは中間のステント/血管領域からの包埋部分である。適切な染色であるヘマトキシリン及びエオシン(H&E)、末孫トリクロム、並びにエラスチカ・ワンギーソン又は同等物を実施した。特に重要なことは、内皮化、新生内膜の厚さ、炎症、部分内膜狭窄、血管内膜のフィブリン濃度である。内在化、及び血栓症の程度を立証するために、各ステントの残った半分を、走査電子顕微鏡のために加工する。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1a】図1aは、HCMのePTFEポストフローから収集されたタンパク質において同定されるようなラミニン−5のベータ3鎖の同定を示すウェスタンブロット分析であり、ePTFEの表面上のラミニン−5の付着を示す。
【図1b】図1bは、ePTFE上のHCM付着タンパク質におけるコラーゲンI、コラーゲンIV、フィブロネクチン、ラミニン−1、及びラミニン−5の存在について探索されたウェスタンブロット分析である。フィブロネクチン、ラミニン−1、及びラミニン−5は、HCM付着タンパク質において観察された。
【図1c】図1cは、ラミニン−5付着前(プレ)及び付着後(ポスト)のカラムにおけるラミニン−5の3つの鎖(α3、β3、及びγ2鎖)の存在のウェスタンブロット分析である。
【図2】図2aは、非改良又はHCM、ラミニン−5減損HCM、純ラミニン−5又はDCS−PBSでコートされたePTFEに接着しているHPF(高倍率視野)あたりのHMVECの数のグラフであり、図2b−fに対応する。図2b〜fは、非改良又はHCM、ラミニン−5除去HCM、純ラミニン−5又はDCS−PBSでコートされたePTFEのePTFE管の管腔表面の電子顕微鏡写真である。当該ePTFE非改良又はコートされた管を、接着を測定するためにHMVECで敷いた。図2b〜2fは図2aの結果と対応する。
【図3a】図3aは、マウス皮下組織由来のePTFE移植片の皮下血管新生のグラフであり、当該移植片は、1mmあたりの血管の数により測定されるように、非改良であり又はHCM、ラミニン−5除去HCM、純ラミニン−5又はDCS−PBSでコートされ、図3b〜fに対応する。
【図3b】図3bは、マウス皮下組織由来のePTFE移植片の断面に関するGS−1陽性血管の光学マイクロ写真であり、当該移植片は、非改良であり、図3aの結果に対応する。
【図3c】図3cは、マウス皮下組織由来のePTFE移植片の断面に関するGS−1陽性血管の光学マイクロ写真であり、当該移植片は、HCMでコートされ、図3aの結果に対応する。
【図3d】図3dは、マウス皮下組織由来のePTFE移植片の断面に関するGS−1陽性血管の光学マイクロ写真であり、当該移植片は、ラミニン−5減損HCMでコートされ、図3aの結果に対応する。
【図3e】図3eは、マウス皮下組織由来のePTFE移植片の断面に関するGS−1陽性血管の光学マイクロ写真であり、当該移植片は、純ラミニン−5でコートされ、図3aの結果に対応する。
【図3f】図3fは、マウス皮下組織由来のePTFE移植片の断面に関するGS−1陽性血管の光学マイクロ写真であり、当該移植片は、DCS−PBSでコートされ、図3aの結果に対応する。
【図4】図4は、マウス皮下組織由来のePTFE移植片の炎症反応のグラフであり、1mmあたりの移植片に関するF4/80陽性細胞(活性化されたマクロファージ、及び単球)の数により測定されるように、当該移植片は、非改良であり又はHCM、ラミニン−5除去HCM、純ラミニン−5又はDCS−PBSでコートされ、図3aの結果に対応する。
【図5】図5a〜図5eは、マウス皮下組織由来のePTFE移植片を含むヘマトキシリン及びエオシンで染色された組織断面の光学マイクロ写真であり、当該移植片は、非改良であり又はHCM、ラミニン−5除去HCM、純ラミニン−5又はDCS−PBSでコートされる。
【図6】図6は、5つの二成分タンパク質コーティングと試薬の組合せの結果の棒グラフである。
【図7】図7は、試薬のみ、及び1つの二成分タンパク質コーティングと試薬との組合せの結果の棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な医療装置の表面のコーティングによって血管形成を生ずるための方法であって、以下のステップ:
被験者に前記医療装置を移植し、ここでコーティングが、ラミニン−5、その活性部分又はその結合メンバーを含む;
前記コートされた表面によって血管形成を生ずるのに十分な期間、前記被験者内の前記医療装置を維持する、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記移植ステップが、前記被験者の血管内配置に前記医療装置をデリバリーすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記維持ステップが、移植可能な医療装置上の厚さにおいて100mm未満の無細胞線維性カプセルの形成をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記維持ステップが、移植可能な医療装置上の厚さにおいて75mm未満の無細胞線維性カプセルの形成をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
移植可能な医療装置の表面のコーティングによって血管形成を生ずるための方法であって、以下のステップ:
被験者に前記医療装置を移植し、ここでコーティングが、以下の、
ラミニン、その活性部分又はその結合メンバー、及び
コラーゲン、その活性部分又はその結合メンバー、
を含む;
前記コートされた表面によって血管形成を生ずるのに十分な期間、前記被験者内の前記医療装置を維持する、
を含む、上記方法。
【請求項6】
ラミニンを含む第1成分、その活性部分又はその結合メンバー;及び
接着因子を含む第2成分、その活性部分又はその結合メンバー、
を含むコーティングを有する移植可能な医療装置であって、前記コーティングが、ポリマー成分、当該ポリマー成分を含む層を形成するように反応させられる第1基、及び当該ポリマー成分に前記第1及び第2成分を各々結合するように反応させられる第2基をさらに含む、上記医療装置。
【請求項7】
前記第1成分が、500kDa未満の分子量を有するラミニンを含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項8】
前記第1成分が、ラミニン−5を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項9】
前記第1成分が、ラミニン−5のα3鎖を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項10】
前記第1成分が、ラミニン−5のα3鎖のLG3配列を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項11】
前記第1成分が、PPFLMLLKGSTR、LAIKNDNLVYVY、DVISLYNFKHIY、TLFLAHGRLVFM、LVFMFNVGHKKL、及びNSFMALYLSKGRから選択されるラミニン・ポリペプチド配列を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項12】
前記第1成分が、プロテイナーゼで修飾されたラミニン−5を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項13】
前記第1成分が、メタロプロテイナーゼで修飾されたラミニン−5を含む、請求項12に記載の移植可能な医療装置。
【請求項14】
前記第1成分が、ラミニン−1を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項15】
前記第2成分が、コラーゲン、その活性部分又はその結合メンバーを含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項16】
前記第2成分が、コラーゲンI、その活性部分又はその結合メンバーを含む、請求項15に記載の移植可能な医療装置。
【請求項17】
多孔質部分を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項18】
前記多孔質部分が、移植片、鞘、又は被覆物に付随する、請求項17に記載の移植可能な医療装置。
【請求項19】
前記多孔質部分が、合成疎水性ポリマー材料を含む、請求項17に記載の移植可能な医療装置。
【請求項20】
前記多孔質部分が、ePTFEを含む、請求項19に記載の移植可能な医療装置。
【請求項21】
前記ポリマー成分が、合成ポリマーを含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項22】
前記合成ポリマーが、アクリルアミドポリマーである、請求項21に記載の移植可能な医療装置。
【請求項23】
前記第1基が、光反応基を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項24】
前記第2基が、アミン反応基を含む、請求項6に記載の移植可能な医療装置。
【請求項25】
安定的に脱気された(denucleated)多孔質部分を含む、移植可能な医療装置。
【請求項26】
前記多孔質分が、合成ポリマーを含むコートされた層を含む、請求項25に記載の移植可能な医療装置。
【請求項27】
前記合成ポリマーが、ペンダント光反応基を含む、請求項26に記載の移植可能な医療装置。
【請求項28】
安定的に脱気された(denucleated)多孔質部分を含む移植可能な医療装置の製造方法であって、以下のステップ:
前記多孔質部分を脱気(denucleating)し;そして
前記多孔質部分の表面上にコートされた層を形成する、ここで当該コートされた層は合成ポリマーを含む、
を含む、上記製造方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−531125(P2008−531125A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557130(P2007−557130)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/006294
【国際公開番号】WO2006/091675
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】