説明

ラミネート外装蓄電デバイス

【課題】外装体の内部に発生したガスを、特定の部位から確実に排出することができ、しかも、デバイス全体の小型化が可能なラミネート外装蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】互いに重ね合わせた外装フィルムが、外周縁部に形成された接合部で相互に接合された外装体と、外装体内部の収容部に収容された蓄電デバイス要素および電解液と、外装体内で蓄電デバイス要素の集電体に電気的に接続された、接合部における少なくとも一辺から外部に突出する端子部材とを具えてなり、外装体には、端子部材が設けられた接合部の一辺と収容部との間に、端子部材における集電体との接続部が配置される非接合部位が形成され、非接合部位が形成された領域には、互いに重ね合わせた外装フィルムの一部分が相互に接合されてなるシール部および当該シール部内に形成された少なくとも一方の外装フィルムを貫通する孔口部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート外装蓄電デバイスに関し、更に詳しくは、電池やキャパシタ(コンデンサ)などの蓄電デバイス要素が、2枚の外装フィルムよりなる外装体によって収容されてなるラミネート外装蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、正極板と負極板とがセパレータを介して巻回または交互に積層されて構成された電池要素などの蓄電デバイス要素を、電解液と共に2枚の外装フィルムよりなる外装体内に収容してなるラミネート外装蓄電デバイス(電池やキャパシタ)が、携帯機器や電気自動車等の電源として使用されている。
【0003】
かかるラミネート外装蓄電デバイスにおいては、過充電されたり、高温にさらされたりすることにより、電解液が電気分解または加熱分解されることに起因して、外装体の内部に可燃性ガス等のガスが発生し、これにより、外装体の内部圧力が上昇することがある。 而して、このような問題を解決するため、外装体における2枚の外装フィルムの接合部の一部分に接合力の弱い部分(以下、「弱接合部分」ともいう。)を形成し、内部のガス圧が上昇した場合に、この弱接合部分をガス抜き用の安全弁として機能させる構成の安全機構や、内部圧力が所定の値以上に上昇したときに自動的に開口して、可燃性ガスなどを外部に排気する安全弁を有する安全機構などが設けられたラミネート外装蓄電デバイスが提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献5参照)。
【0004】
図9に、外装体における接合部位に弱接合部分が形成されてなる安全機構が設けられたラミネート外装蓄電デバイスの一例における構成を分解して示す。このラミネート外装蓄電デバイス50の外装体は、上部外装フィルム51Aと下部外装フィルム51Bとが重ね合わされた状態で、それぞれの外周縁部がその全周にわたって熱シールされて接合部52が形成されることにより、内部に蓄電デバイス要素を収容する収容部が形成されてなるものであり、外装体の収容部内には、薄型の蓄電デバイス要素(例えば、電池要素やキャパシタ要素)55が有機電解液と共に収容されている。
このラミネート外装蓄電デバイス50には、接合部52の一部分に、弱接合部分53が設けられており、この弱接合部分53が安全弁として作用することによって外装体内において多量のガスが発生した場合にも、そのガスを弱接合部分53から放出させて圧力開放を行うことにより、外装体が破裂することが防止される。具体的には、弱接合部分53は、接合部52における他の部分よりシール強度が低くなっており、外装体における蓄電デバイス要素(電池要素やキャパシタ要素)が収容された収容部の内部圧力が所定の値に達すると、弱接合部分53が優先的に剥離して排気口が形成されるものである。
また、この図の例においては、外装体は長方形の輪郭形状を有しており、短辺側の2辺の各々から、蓄電デバイス要素(電池要素やキャパシタ要素)55を構成する複数の正極板の各々に電気的に接続された共通の正極リード部材である正極用電源タブ56、および複数の負極板の各々に電気的に接続された共通の負極リード部材である負極用電源タブ57が引き出されている。
【0005】
このような構成のラミネート外装蓄電デバイスにおいては、安全機構を構成する弱接合部分には、収容用空間の内部圧力が所定の値に達したときに確実に剥離して排気口が形成され、かつ、通常の使用状態においては、確実に密閉されて十分な信頼性が確保される程度のシール強度が要求される。然るに、製造上の観点から、このようなシール強度を有する弱接合部分を確実に形成することは容易ではない。
【0006】
また、ラミネート外装蓄電デバイスの安全機構としては、接合部が形成された領域の少なくとも一箇所に、非接合部位が蓄電デバイス要素が収容される収容部に連続しかつ収容部に対して入り江状に設けられることにより、圧力集中部が形成され、この非接合部位が形成された領域に、外装フィルムの剥離によって内部と外部とを連通させる圧力開放部が形成されてなるものが提案されている(特許文献6参照)。
しかしながら、このような安全機構においては、外装体を構成する外装フィルムに非接合部位を形成する部分を設けることが必要となるため、デバイスの小型化を図ることが困難となる、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3554155号公報
【特許文献2】特開平05−013061号公報
【特許文献3】特開平11−086823号公報
【特許文献4】特開2006−236605号公報
【特許文献5】特開2007−157678号公報
【特許文献6】特許第3859645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、ラミネート外装蓄電デバイスの外装体の内部に発生したガスを、特定の部位から確実に排出することができ、しかも、デバイス全体の小型化が可能なラミネート外装蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のラミネート外装蓄電デバイスは、互いに重ね合わせた外装フィルムが、それぞれの外周縁部に形成された接合部において相互に気密に接合されてなる外装体と、当該外装体の内部に形成された収容部に収容された蓄電デバイス要素および電解液と、前記外装体の内部において前記蓄電デバイス要素の集電体に電気的に接続され、前記接合部における少なくとも一辺から外部に突出するよう設けられた端子部材とを具えてなるラミネート外装蓄電デバイスであって、
前記外装体には、前記端子部材が設けられた接合部の一辺と前記収容部との間に、前記端子部材における前記集電体との接続部が配置される非接合部位が形成され、この非接合部位が形成された領域における前記接続部の近傍には、互いに重ね合わせた前記外装フィルムの一部分が相互に接合されてなるシール部および当該シール部に形成された少なくとも一方の外装フィルムを貫通する孔口部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のラミネート外装蓄電デバイスにおいては、外装体における非接合部位が形成された領域には、複数のシール部および孔口部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のラミネートフィルム外装蓄電デバイスにおいては、外装体には、端子部材が設けられた接合部の一辺と蓄電デバイス要素が収容される収容部との間に非接合部位が形成されており、当該非接合部位は収容部と連通しているため、当該収容部内にガスが発生した場合には、非接合部位内に進入する。而して、非接合部位が形成された領域における端子部材の接続部の近傍には、互いに重ね合わせた外装フィルムの一部分が相互に接合されてなるシール部および当該シール部に形成された少なくとも一方の外装フィルムを貫通する孔口部が形成されているため、ガスの発生によって非接合部位内が膨張することにより、シール部には接合部より集中的に応力が作用する。そのため、シール部は接合部よりも優先的に剥離する結果、シール部に形成された孔口部から外装体内のガスが外部に排出される。
また、外装体の非接続部位は、蓄電デバイス要素の集電体に接続される端子部材の接続部を配置するために必然的に形成されるものであり、このような非接合部位にシール部および孔口部を形成することにより、シール部および孔口部を形成するための特別な領域を外装体に確保することが不要となる。
従って、本発明のラミネート外装蓄電デバイスによれば、ラミネート外装蓄電デバイスの外装体の内部に発生したガスを、特定の部位から確実に排出することができ、しかも、デバイス全体の小型化を図ることができる。さらに、外装体に特別な領域を設けることが不要となることから、外装体の内部の気密性を保持しやすいため、液漏れ等が生じることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のラミネート外装蓄電デバイスの一例を示す説明用平面図である。
【図2】図1のラミネート外装蓄電デバイスにおける安全機構を示す説明図である。
【図3】図2に示す安全機構のA−Aを切断して示す説明用断面図である。
【図4】図2に示す安全機構のB−Bを切断して示す説明用断面図である。
【図5】外装体の内部の構成を示す説明用断面図である。
【図6】本発明のラミネート外装蓄電デバイスの他の例を示す説明用平面図である。
【図7】比較例1に係るラミネート外装蓄電デバイスを示す説明用平面図である。
【図8】比較例2に係るラミネート外装蓄電デバイスを示す説明用平面図である。
【図9】従来の安全機構が設けられたラミネート外装蓄電デバイスの一例の構成を示説明用分解図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のラミネート外装蓄電デバイスの一例を示す説明用平面図であり、図2は、図1のラミネート外装蓄電デバイスにおける安全機構を示す説明図、図3は、図2に示す安全機構のA−Aを切断して示す説明用断面図、図4は、図2に示す安全機構のB−Bを切断して示す説明用断面図、図5は、外装体の内部の構成を示す説明用断面図である。
このラミネート外装蓄電デバイス10においては、外装体20は、それぞれ熱融着性を有する長方形の上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bが、互いに重ね合わせた状態で、それぞれの外周縁部の全周にわたって形成された接合部22において相互に気密に接合されて構成されている。外装体20の内部には、蓄電デバイス要素が収容される収容部23が形成され、当該収容部23内には、蓄電デバイス要素11が有機電解液と共に収容されている。図示の例では、上部外装フィルム21Aにおける収容部23を形成する部分には、絞り加工が施されている。
外装体20の接合部22における一辺(図1において左辺)22aには、その一端が外装体20の内部において蓄電デバイス要素11の正極集電体12aに電気的に接続され、その他端が接合部22の一辺22aから外部に突出する正極用端子部材14が設けられている。一方、外装体20の接合部22における一辺に対向する他辺(図1において右辺)22bには、その一端が外装体20の内部において蓄電デバイス要素11の負極集電体13aに電気的に接続され、その他端が接合部22の他辺22bから外部に突出する負極用端子部材15が設けられている。
【0014】
また、外装体20においては、正極用端子部材14が設けられた接合部22の一辺22aと収容部23との間に、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bが接合されていない非接合部位24aが形成され、この非接合部位24aに、正極用端子部材14における正極集電体12aとの接続部14aが配置されている。一方、負極用端子部材15が設けられた接合部22の他辺22bと収容部23との間には、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bが接合されていない非接合部位24bが形成され、この非接合部位24bに、負極用端子部材15における負極集電体13aとの接続部15aが配置されている。
そして、このラミネート外装蓄電デバイス10においては、外装体20の非接合部位24a,24bが形成された各領域には、安全機構として、正極用端子部材14の接続部14aまたは負極用端子部材15の接続部15aに隣接する位置に、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの一部分が相互に接合されてなる円環状のシール部25と、このシール部25の中央位置に形成された、上部外装フィルム21Aを貫通する孔口部26とからなる複数(図示の例では合計で4つ)の安全弁27が形成されている。
本発明において、安全弁27は、少なくとも一つ形成されていればよく、図示の例のように、複数の安全弁27が形成されていてもよい。
【0015】
外装体20を構成する上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bとしては、例えば内側からポリプロピレン(以下、「PP」という。)層、アルミニウム層およびナイロン層などがこの順で積層されてなるものを好適に用いることができる。
上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bとして、例えばPP層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなるものを用いる場合には、その厚みは、通常、50〜300μmである。
【0016】
上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの縦横の寸法は、収容部23に収容される蓄電デハイス要素11の寸法に応じて適宜選択されるが、例えば縦方向の寸法が40〜200mm、横方向の寸法が60〜300mmである。
また、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの接合部22の接合幅は、例えば2〜15mmである。
また、非接合部位24a,24bの幅は、例えば3〜12mmである。
【0017】
安全弁27における孔口部26の直径は、0.5〜8mmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜6.0mmである。
また、安全弁27におけるシール部25の接合幅は、0.2〜3mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2mmである。この接合幅が過小である場合には、ガス排出を行う内部圧力のバラツキが生じ、或いは、密閉状態を確保することが困難となることがあり、信頼性が低下するため、好ましくない。一方、この接合幅が過大である場合には、当該シール部25が剥離する前に、接合部22が剥離しやすくなるため、好ましくない。尚、孔口部26の位置は、シール部25内であれば特に限定されないが、好ましくはシール部25の中央位置である。
【0018】
ラミネート外装蓄電デバイス10を構成する蓄電デバイス要素11は、図4に示すように、セパレータSを介して、それぞれ正極集電体12a上に正極層12が形成されてなる複数の正極板と、それぞれ負極集電体13a上に負極層13が形成されてなる複数の負極板とが交互に積層されて構成された電極積層体11aを有し、この電極積層体11aの上面には、リチウムイオンの供給源であるリチウム金属(リチウム極層)18が配置され、このリチウム金属18上には、リチウム極集電体18aが積層されている。また、19は、リチウム極取り出し部材である。
複数の正極板の各々における正極集電体12aには、それぞれ取り出し部16が形成され、これらの取り出し部16は、外装体20の非接合部位24a内において互いに溶接されて正極用端子部材14の接続部14aに電気的に接続されている。一方、複数の負極板の各々における負極集電体13aには、それぞれ取り出し部17が形成され、外装体20の非接合部位24b内において互いに溶接されて負極用端子部材15の接続部15aに電気的に接続されている。
【0019】
蓄電デバイス要素11を構成する正極層12としては、電極材料を、必要に応じて導電材(例えば、活性炭、カーボンブラック等)およびバインダー等を加えて成形したものが用いられる。正極層12を構成する電極材料としては、リチウムを可逆的に担持可能であれば、特に限定されないが、例えば、LiCoO2 、LiNiO2 、LiFeO2 等の一般式:Lix y z (但し、Mは金属原子を示し、x、yおよびzは整数である。)で表される金属酸化物等の正極活物質、活性炭などが挙げられる。
また、蓄電デバイス要素11を構成する負極層13としては、電極材料をバインダーで成形したものが用いられる。負極層13の電極材料としては、リチウムを可逆的に担持できるものであれば特に限定されないが、例えばグラファイト、種々の炭素材料、ポリアセン系物質、錫酸化物、珪素酸化合物等の粉末状、粒状の負極活物質などが挙げられる。
【0020】
また、電解液としては、適宜の有機溶媒中に電解質が溶解されてなるものを用いることが好ましい。有機溶媒の具体例としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、ジメトキシエタン等の非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、リチウムイオンを生成しうるものが用いられ、その具体例としては、LiI、LiCIO4 、LiAsF4 、LiBF4 、LiPF6 などが挙げられる。
【0021】
このようなラミネート外装蓄電デバイス10は、例えば以下のようにして製造することができる。
下部外装フィルム21B上における収容部23となる位置に、正極用端子部材14および負極用端子部材15が接続された蓄電デバイス要素11を配置すると共に、非接合部位24a,24bとなる位置に、当該非接合部位24a,24bの平面形状に適合する形状のヒートブロックを配置し、その後、蓄電デバイス要素11上に、孔口部26を有する上部外装フィルム21Aを重ね合わせ、上部外装フィルムおよび下部外装フィルムの外周縁部における3辺を熱融着する。
そして、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの間に電解液を注入した後、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの外周縁部における未融着の1辺を熱融着することにより、外装体20を形成することにより、ラミネート外装蓄電デバイス10が得られる。
【0022】
上記のラミネートフィルム外装蓄電デバイス10においては、正極用端子部材14が設けられた接合部22の一辺22aと蓄電デハイス要素11が収容される収容部23との間、および負極用端子部材15が設けられた接合部22の一辺22bと収容部23との間に、それぞれ非接合部位24a,24bが形成されており、これらの非接合部位24a,24bは収容部23と連通しているため、当該収容部23内にガスが発生した場合には、非接合部位24a,24b内に進入する。而して、非接合部位24a,24bが形成された領域における正極用端子部材14および負極用端子部材15の各々の接続部14a,15aの近傍には、安全弁27が形成されているため、ガスの発生によって非接合部位24a,24b内が膨張することにより、安全弁27におけるシール部25には接合部22より集中的に応力が作用する。そのため、シール部25は接合部22よりも優先的に剥離する結果、シール部25に形成された孔口部26から外装体20内のガスが外部に排出される。
また、外装体20の非接続部位24a,24bは、蓄電デバイス要素11の正極集電体12aに接続される正極用端子部材14の接続部14a、または負極集電体13aに接続される負極用端子部材15の接続部15aを配置するために必然的に形成されるものであり、このような非接合部位24a,24bに安全弁27を形成することにより、当該安全弁27を形成するための特別な領域を外装体に確保することが不要となる。
従って、本発明のラミネート外装蓄電デバイスによれば、ラミネート外装蓄電デバイスの外装体の内部に発生したガスを、特定の部位から確実に排出することができ、しかも、デバイス全体の小型化を図ることができる。さらに、外装体20に特別な領域を設けることが不要となることから、外装体20の内部の気密性を保持しやすいため、液漏れ等が生じることが抑制される。
【0023】
このような構成を有する本発明のラミネートフィルム外装蓄電デバイスは、リチウムイオンキャパシタなどの有機電解質キャパシタであるものの他、有機電解質電池であるものにも適用することができるが、有機電解質キャパシタが、有機電解質電池に比べ充電容量が小さいが瞬時に充電、放電できる構成を有するものであることから、ガス圧変化が大きくなる可能性があるため、特に、ラミネートフィルム外装蓄電デバイスが有機電解質キャパシタよりなるものである場合に有効である。
【0024】
以上、本発明のラミネート外装蓄電デバイスについて、その実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、図6に示すように、外装体20の接合部22における一辺22aに、正極用端子部材14および負極用端子部材15の両方が、当該接合部22の一辺22aから外部に突出するよう設けられていてもよい。また、図示の例では、シール部25および孔口部26よりなる安全弁27は、正極用端子部材14の接続部14aと負極用端子部材15の接続部15aとの間に形成されているが、正極用端子部材14の接続部14aおよび/または負極用端子部材15の接続部15aと、接合部22と、収容部23に囲まれた領域内に安全弁27が形成されていてもよい。また、このような構成においても、安全弁27は少なくとも1つ形成されていればよく、複数の安全弁27が形成されていてもよい。
また、孔口部は、下部外装フィルムのみを貫通するよう形成されていても、上部外装フィルムおよび下部外装フィルムの両方を貫通するよう形成されていてもよい。
また、安全弁におけるシール部および孔口部の輪郭形状は、円形に限られず、多角形、楕円形、その他の適宜の形状とすることができる。
また、上部外装フィルムまたは下部外装フィルムの非接合部位の内面に、非熱融着性シートが設けられていてもよい。かかる非熱融着性シートの材質としては、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイドまたはセルロースなどを利用することができる。また、非熱融着性シートは、粘着剤層によって上部外装フィルムおよび下部外装フィルムのいずれか一方に固定されていることが、より好ましい。
このような非熱融着性シートを設ける構成によれば、加熱または高温環境下で使用したときに、上部外装フィルムおよび下部外装フィルムの非接合部位が互いに融着したり、或いは外装フィルムの一部が溶解して非接合部位が互いに接着したりすることを防止することができ、これにより、安全弁が正常に機能させることができる。
【実施例】
【0025】
〈実施例1〉
(1)正極板の作製:
幅200mm、厚み15μmの帯状のアルミニウム箔に、パンチング方式により、開口面積0.79mm2 の円形の複数の貫通孔を千鳥状に配列されるよう形成することにより、開口率42%の集電体前駆体を作製した。この集電体前駆体の一部分に、導電塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅130mm、塗工速度8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を20μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、集電体前駆体の表裏面に導電層を形成した。
次いで、集電体前駆体の表裏面に形成された導電層上に、正極塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工速度8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を150μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、導電層上に正極層を形成した。
このようにして得られた、集電体前駆体の一部分に導電層および正極層が積層されてなる材料を、導電層および正極層が積層されてなる部分(以下、正極板について「塗工部」ともいう。)が98mm×128mm、いずれの層も形成されてない部分(以下、正極板について「未塗工部」ともいう。)が98mm×15mmとなるように、98mm×143mmの大きさに切断することにより、正極板を作製した。
【0026】
(2)負極板の作製:
幅200mm、厚み10μmの帯状の銅箔に、パンチング方式により、開口面積0.79mm2 の円形の複数の貫通孔を千鳥状に配列されるよう形成することにより、開口率42%の集電体前駆体を得た。この集電体前駆体の一部分に、負極塗料を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅130mm、塗工速度8m/minの塗工条件により、両面合わせた塗布厚みの目標値を80μmに設定して両面塗工した後、200℃で24時間の条件で減圧乾燥させることにより、集電体前駆体の表裏面に負極層を形成した。
このようにして得られた、集電体前駆体の一部分に負極層が形成されてなる材料を、負極層が形成されてなる部分(以下、負極板について「塗工部」という。)が100mm×128mm、負極層が形成されてない部分(以下、負極板について「未塗工部」という。)が100mm×15mmになるように、100×143mmの大きさに切断することにより、負極板を作製した。
【0027】
(3)リチウムイオンキャパシタ要素の作製:
先ず、正極板10枚、負極板11枚、厚みが50μmのセパレータ22枚を用意し、正極板と負極板とを、それぞれの塗工部は重なるが、それぞれの未塗工部は反対側になり重ならないよう、セパレータ、負極板、セパレータ、正極板の順で積重し、積重体の4辺をテープにより固定することにより、電極積層ユニットを作製した。
次いで、厚み260μmのリチウム箔を用意し、電極積層体ユニットを構成する各負極活物質1g当り550mAh/gになるようにしてリチウム箔を切断し、この切断したリチウム箔を、厚さ40μmのステンレス網に圧着することにより,リチウムイオン供給部材を作製し、このリチウムイオン供給部材を電極積層ユニットの上側に負極と対向するよう配置した。
そして、作製した電極積層ユニットの10枚の正極板の各々の未塗工部に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した、幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製の正極用端子部材の接続部を重ねて超音波溶接した。一方、電極積層ユニットの11枚の負極板の各々の未塗工部およびリチウムイオン供給部材の各々に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した、幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmの銅製の負極用端子部材の接続部を重ねて抵抗溶接した。以上のようにして、リチウムイオンキャパシタ要素を作製した。
【0028】
(4)圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタの作製:
図1に示す構成に従い、以下のようにして圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタを作製した。
PP層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×180mm(横幅)×0.15mm(厚み)で、収容部となる中央部分に、105mm(縦幅)×138mm(横幅)の絞り加工が施された上部外装フィルム(接合部となる外周縁部の幅が10mm,非接合部位となる部分の幅が11mm)と、PP層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×180mm(横幅)×0.15mm(厚み)の下部外装フィルムとを作製し、上部外装フィルムにおける非接合部位となる部分の各々において、正極用端子部材の接続部が配置される部分の両側の位置、および負極用端子部材の接続部が配置される部分の両側の位置に、形成すべきシール部に対応する位置に直径4mmの貫通孔が形成された非熱融着性シートを粘着材層を介して固定すると共に、上部外装フィルムにおける非接合部位となる部分の各々において、非熱融着性シートの貫通孔が位置する箇所に、直径が2mmの孔口部を合計で4つ形成した。そして、非接続部位が形成される一辺に垂直な辺の中央位置に、直径1mmの試験用のガス流入口を形成した。
次いで、下部外装フィルム上における収容部となる位置に、リチウムイオンキャパシタ要素を配置すると共に、当該リチウムイオンキャパシタ要素に取り付けられた正極用端子部材および負極用端子部材の各々が、上部外装フィルムの一辺およびこれに対向する他辺から外方に突出するよう配置し、このリチウムイオンキャパシタ要素に、上部外装フィルムを重ね合わせ、上部外装フィルムおよび下部外装フィルムの外周縁部における3辺(ガス流入口が形成された辺を除く3辺)を熱融着することにより、当該3辺に収容部を取り囲む幅10mmの接合部を形成すると共に、非接合部位の各々にシール部および孔口部よりなる安全弁を合計で4つ形成した。
次いで、管状のガス注入口が形成されたステンレス板と通常のステンレス板とによって、上下外装フィルムの外周縁部における未融着の一辺を挟持して固定した。この際、ステンレス板を、そのガス注入口が上部外装フィルムに形成されたガス流入口に重なるよう配置した。
以上のようにして、圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタを合計で3個作製した。
【0029】
(5)高温高湿試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタの作製:
図1に示す構成に従い、以下のようにして高温高湿試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタを作製した。
PP層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×180mm(横幅)×0.15mm(厚み)で、収容部となる中央部分に、105mm(縦幅)×138mm(横幅)の絞り加工が施された上部外装フィルム(接合部となる外周縁部の幅が10mm,非接合部位となる部分の幅が11mm)と、PP層、アルミニウム層およびナイロン層が積層されてなり、寸法が125mm(縦幅)×160mm(横幅)×0.15mm(厚み)の下部外装フィルムとを作製し、上部外装フィルムにおける非接合部位となる部分の各々において、正極用端子部材の接続部が配置される部分の両側の位置、および負極用端子部材の接続部が配置される部分の両側の位置に、直径が2mmの孔口部を合計で4つ形成した。そして、上部外装フィルムにおける非接合部位となる部分に、形成すべきシール部に対応する位置に直径4mmの貫通孔が形成された非熱融着性シートを粘着材層を介して固定した。
次いで、下部外装フィルム上における収容部となる位置に、リチウムイオンキャパシタ要素を配置すると共に、当該リチウムイオンキャパシタ要素に取り付けられた正極用端子部材および負極用端子部材の各々が、上部外装フィルムの一辺およびこれに対向する他辺から外方に突出するよう配置し、このリチウムイオンキャパシタ要素に、上部外装フィルムを重ね合わせ、上部外装フィルムおよび下部外装フィルムの外周縁部における3辺(正極用端子部材および負極用端子部材が突出する2辺を含む)を熱融着することにより、当該3辺に収容部を取り囲む幅10mmの接合部を形成すると共に、非接合部位の各々にシール部および孔口部よりなる安全弁を合計で4つ形成した。そして、収容部内に電解液を注入した後、未融着の1辺を熱融着することにより、当該1辺に幅10mmの接合部を形成した。 以上のようにして、高温高湿試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタを合計で3個作製した。
【0030】
(6)圧力試験:
3個の圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタの各々を、10mmの間隔で離間して配置された2枚のアクリル板の間に配置し、ガス注入口から内部に窒素ガスを注入し、注入された窒素ガスが外部に排出された時点の内部圧力[ MPa] を測定して調べた。
その結果、3個全ての圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタにおいて、シール部が剥離して孔口部から窒素ガスが排出された。ガス排出時の内部圧力を下記表1に示す。
【0031】
(7)高温高湿試験:
3個の高温高湿試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタの各々について、初期時(高温高湿試験を行う前)の充放電試験を行って初期の静電容量を測定した。次いで、これらのキャパシタを、ナガノサインエス株式会社製恒温恒湿槽「LH43−13P」に投入し、温度60℃、相対湿度90%、放置時間1000時間の条件で高温高湿試験を行い、高温高湿試験後のキャパシタの各々について、充放電試験を行って静電容量を測定した。そして、初期の静電容量に対する高温高湿試験後の静電容量の割合(以下、「容量維持率」という。)[%] を算出した。その結果を下記表1に示す。
【0032】
〈実施例2〉
下部外装フィルムに孔口部を形成したこと以外は、実施例1と同様にして圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタおよび高温高湿試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタをそれぞれ3個作製し、これらについて圧力試験および高温高湿試験を行った。
圧力試験の結果、3個全ての圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタにおいて、シール部が剥離して孔口部から窒素ガスが排出された。ガス排出時の内部圧力を下記表1に示す。
また、高温高湿試験の結果を下記表1に示す。
【0033】
〈比較例1〉
図7に示すように、上部外装フィルムおよび下部外装フィルムの各々の外周縁部に、その一辺が収容部(23)に連通し、その他の辺が接合部(22)に包囲された入り江状の非接合部位(24c)を形成し、正極用端子部材(14)および負極用端子部材(15)の接続部(14a,15a)が配置される非接合部位(24a,24b)の代わりに入り江状の非接合部位(24c)に、安全弁(27)を形成したこと以外は、実施例1と同様にして圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタおよび高温高湿試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタをそれぞれ3個作製し、これらについて圧力試験および高温高湿試験を行った。ここで、非接合部位(24c)における収容部(23)に連通する一辺の寸法は11mm、接合部22における非接合部位(24c)を設けることによって形成された狭窄部分22cの幅は3mmである。
圧力試験の結果、3個全ての圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタにおいて、シール部が剥離して孔口部から窒素ガスが排出された。ガス排出時の内部圧力を下記表1に示す。
また、高温高湿試験の結果を下記表1に示す。
【0034】
〈比較例2〉
図8に示すように、上部外装フィルムおよび下部外装フィルムの各々の外周縁部に、その一辺が収容部(23)に連通し、その他の辺が接合部(22)に包囲された入り江状の非接合部位(24c)を形成し、正極用端子部材(14)および負極用端子部材(15)の接続部(14a,15a)が配置される非接合部位(24a,24b)の代わりに入り江状の非接合部位(24c)に、安全弁(27)を形成したこと以外は、実施例1と同様にして圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタおよび高温高湿試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタをそれぞれ3個作製し、これらについて圧力試験および高温高湿試験を行った。ここで、非接合部位(24c)における収容部(23)に連通する一辺の寸法は11mm、この一辺に対向する他辺には、入り江状の非接合部位に対応して突出部分22dが形成されており、この突出部分22dの幅は10mmである。
圧力試験の結果、3個全ての圧力試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタにおいて、シール部が剥離して孔口部から窒素ガスが排出された。ガス排出時の内部圧力を下記表1に示す。
また、高温高湿試験の結果を下記表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜2に係る試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタによれば、0.8MPaという比較的低い内部圧力で安全弁におけるシール部が剥離して窒素ガスが排出された。そして、高温高湿試験においては、全てのキャパシタについて高い容量維持率が得られることが確認された。
これに対して、比較例1〜2に係る試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタにおいては、いずれもシール部が剥離して窒素ガスが排出されたものの、以下のような問題があった。
比較例1においては、内部圧力は0.8MPaであったが、高温高湿試験後における容量維持率が低くキャパシタとしての機能が劣化した。
また、比較例2においては、高温高湿試験後においても高い容量維持率は得られたが、ガス排出時の内部圧力が1.2MPaであったため、ガス排出までに相当な時間を要し、収容部の電解液の液漏れ等が発生するおそれがあることが確認された。また、接合部に突出部分を形成することが必要なことから、デバイス全体の小型化が困難であった。
【符号の説明】
【0037】
10 ラミネート外装蓄電デバイス
11 蓄電デバイス要素
11a 電極積層体
12 正極層
12a 正極集電体
13 負極層
13a 負極集電体
14 正極用端子部材
14a 接続部
15 負極用端子部材
15a 接続部
16,17 取り出し部
18 リチウム金属(リチウム極層)
18a リチウム極集電体
19 リチウム極取り出し部材
20 外装体
21A 上部外装フィルム
21B 下部外装フィルム
22 接合部
22a 接合部の一辺
22b 接合部の他辺
22c 狭窄部分
22d 突出部分
23 収容部
24a,24b,24c 非接合部位
25 シール部
26 孔口部
27 安全弁
50 ラミネート外装蓄電デバイス
51A 上部外装フィルム
51B 下部外装フィルム
52 接合部
53 弱接合部分
55 蓄電デバイス要素
56 正極用電源タブ
57 負極用電源タブ
S セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わせた外装フィルムが、それぞれの外周縁部に形成された接合部において相互に気密に接合されてなる外装体と、当該外装体の内部に形成された収容部に収容された蓄電デバイス要素および電解液と、前記外装体の内部において前記蓄電デバイス要素の集電体に電気的に接続され、前記接合部における少なくとも一辺から外部に突出するよう設けられた端子部材とを具えてなるラミネート外装蓄電デバイスであって、
前記外装体には、前記端子部材が設けられた接合部の一辺と前記収容部との間に、前記端子部材における前記集電体との接続部が配置される非接合部位が形成され、この非接合部位が形成された領域における前記接続部の近傍には、互いに重ね合わせた前記外装フィルムの一部分が相互に接合されてなるシール部および当該シール部に形成された少なくとも一方の外装フィルムを貫通する孔口部が形成されていることを特徴とするラミネート外装蓄電デバイス。
【請求項2】
外装体における非接合部位が形成された領域には、複数のシール部および孔口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のラミネート外装蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238860(P2010−238860A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84324(P2009−84324)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】