説明

ラミネート装置用ダイヤフラムの硬度計および硬度の測定方法

【課題】 本発明は、ラミネート装置にて使用されるダイヤフラムの硬度を正確に測定する硬度計およびその硬度計を使用した硬度の測定方法を提供するとを目的としている。
【解決手段】 ラミネート装置のダイヤフラムの硬度を測定する硬度計を、硬度測定部、硬度測定部を押し付ける押付け部と押付量を計測する押付量計測部とを備え構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板上に太陽電池モジュール等の被加工物を配置し、熱板により加熱した被加工物を熱板と押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用される押圧部材としてのダイヤフラムの硬度を測定する硬度計およびその硬度計を使用した硬度の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池モジュールを製造する場合、ラミネート装置が使用されている(特許文献1)。ラミネート装置は、下方向に向けて膨張自在なダイヤフラムを有する上ケースと、熱板を有する下ケースとを有している。太陽電池モジュールをラミネートする際、まず、構成部材を重ね合わせた太陽電池モジュールを、上ケースと下ケースとで形成される空間に搬送する。次に、ラミネート装置は、上ケースと下ケースとで形成される空間を真空状態にし、熱板上に太陽電池モジュールを配置した後、構成部材を加熱した状態で、上ケースの内部に大気圧を導入する。このようにすることで、太陽電池モジュールは、ダイヤフラムと熱板とで挟圧されて、ラミネートされ、太陽電池モジュールの各構成部材が溶融された充填材により接着され封止される。
【0003】
このようなラミネート装置用のダイヤフラムは、上記のような状態で使用されるので、その寿命は短いばかりか、その交換時期を判断することは難しい。さらにダイヤフラムの交換時期を判断する方法は、これまで提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−31739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ラミネート装置に使用されるダイヤフラムについて説明する。ラミネート装置は、下方向に向けて膨張自在なダイヤフラムを有する上ケースと、熱板を有する下ケースとを有している。この上ケースと下ケースとが開放された状態で太陽電池モジュール素材が積層された状態で下ケースの熱板上に搬送される。その後上ケースと下ケースが上下に重ねられ閉塞された空間が形成される。その空間は、ダイヤフラムにより上チャンバと下チャンバにより分割されている。下ケース内の熱板は、すでに加熱されている。したがって、太陽電池モジュールの構成部材である透明基体であるカバーガラスや充填材は加熱され、充填材は溶融開始する。上チャンバと下チャンバの真空引きを行い、一定の真空度に到達した後、上チャンバに大気を導入する。これにより上ケースのダイヤフラムが下方に膨張し太陽電池モジュールの構成部材は、熱板とダイヤフラムの間で挟圧され、ラミネート加工される。
【0006】
このダイヤフラムは、ラミネート加工中に太陽電池モジュールの構成部材である充填材が溶融する過程で発生する有機過酸化物等を含むガスに曝される。そのガスがダイヤフラムの内部に侵入し過架橋の状態になる。またダイヤフラムは、ラミネート加工中、太陽電池モジュールの構成部材を熱板との間で挟圧する際に、太陽電池モジュールの端部で屈曲する。このためにダイヤフラムは、多数回使用により屈曲部等から亀裂発生して破断する。破断しないまでも、亀裂発生すると真空引きが不完全で挟圧が不足して製品の加工不良を招く。また、突然破断するとその交換は、大変な作業であり、太陽電池の生産効率の低下を招く。したがって太陽電池の生産を円滑に行うために、ダイヤフラムの交換時期を予測することは重要である。
ダイヤフラムの交換時期を予測する一手段として使用中のダイヤフラムの硬度をショアA硬度計(又はJISA硬度計)で測定する方法がある。この方法によるとダイヤフラムに先端が尖った測定子を押し付けるので、これによりダイヤフラムに傷が発生し、ダイヤフラムの寿命を短くすることになる。
一般的に硬度計によりゴムの硬度を測定する場合、ゴムに対して硬度計を押しすぎると、本来より高い硬度を示し正常な値を示さない。
また、一般的に硬度計は被測定物を下にして上から押し付ける形態で使用される。ダイヤフラムの硬度をダイヤフラムがラミネート装置に装着されたままの状態で測定しようとした場合、被測定物であるダイヤフラムが硬度計より上方に位置しているので、下方から押し付ける形態で硬度を測定することになる。これは硬度の一般的な測定形態と異なる。
【0007】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、ラミネート装置にて使用されるダイヤフラムの硬度を正確に測定する硬度計およびその硬度計を使用した硬度の測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明の硬度計は、ダイヤフラムにより仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記ダイヤフラムとで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用されるダイヤフラムの硬度を測定するゴム硬度計であって、被測定物である前記ダイヤフラムに接触する測定子を有する硬度測定部と、被測定物である前記ダイヤフラムに硬度測定部を押付ける押付け部と、被測定物である前記ダイヤフラムに対する硬度測定部の測定子の押付量を計測する押付量計測部とを備え、前記ダイヤフラムを前記ラミネート装置に取り付けた状態で、ダイヤフラムの硬度を測定することを特徴としている。
【0009】
第2発明の硬度計は、第1発明において、さらに被測定物である前記ダイヤフラムに押し付けるための取手部を備えたことを特徴としている。
【0010】
第3発明の硬度計は、第2発明において、さらに前記取手部と前記押付け部との間に首振部を備えたことを特徴としている。
【0011】
第4発明の硬度計は、第1発明から第3発明において、被測定物である前記ダイヤフラムに接触する前記硬度測定部の測定子の先端部の形状が半径0.5mmから1.5mmの球面であることを特徴としている。
【0012】
第5発明の硬度測定方法は、被測定物である前記ダイヤフラムの前記硬度計による測定硬度とショアA硬度(又はJISA硬度)の関係を予め測定する工程と、前記硬度計を使用し被測定物である前記ダイヤフラムの硬度を測定する工程とを有し、前記硬度計による硬度測定結果とショアA硬度(又はJISA硬度)の関係に基づき前記ダイヤフラムのショアA硬度(又はJISA硬度)を測定することを特徴とするダイヤフラムの硬度の測定方法。
【発明の効果】
【0013】
第1発明の硬度計によれば、ラミネート装置にて使用するダイヤフラムの使用後の硬度を、ラミネート装置に取り付けた状態で、硬度計をダイヤフラムの測定面に対して垂直にセットして測定することができる。さらに第1発明の硬度計は、押付量を計測する押付量計測部を備えているので、被測定物であるダイヤフラムに硬度計の硬度測定部の測定子がダイヤフラムに押付けすぎないような状態で硬度を測定することができる。
【0014】
第2発明の硬度計によれば、作業者が取手部にて本発明の硬度計を持ってラミネート装置に取り付けられた状態のダイヤフラムの硬度をより容易に測定することができる。
【0015】
第3発明の硬度計によれば、硬度計には首振部を有しているので、取手部にて作業者が硬度計を持ってラミネート装置に取り付けられた状態のダイヤフラムの硬度を測定する際にダイヤフラムの測定面に対して多少斜め方向から押しつけても首振り部の作用により押付け部をダイヤフラムの測定面に完全に接触させることがでる。したがってより正確にダイヤフラムの硬度を測定することができる。
【0016】
第4発明の硬度計によれば、硬度測定部の測定子の先端部の形状が半径0.5mmから1.5mmの球面であるので、測定子が被測定物である前記ダイヤフラムに接触する際に傷や亀裂の発生することを防止することができる。
【0017】
第5発明の硬度の測定方法は、被測定物である前記ダイヤフラムの前記硬度計による測定硬度とショアA硬度(又はJISA硬度)の関係を予め把握し、前記硬度計を使用し被測定物である前記ダイヤフラムの硬度を測定し、前記ダイヤフラムについて予め把握した前記硬度計による硬度測定結果とショアA硬度(又はJISA硬度)の関係に基づき、前記ダイヤフラムのショアA硬度(又はJISA硬度)を測定する。これにより硬度計の測定子が被測定物である前記ダイヤフラムに接触する際に傷や亀裂の発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】被加工物としての太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【図2】ラミネート装置の全体の構成を示す図である。
【図3】ラミネート装置のラミネート部の側断面図である。
【図4】ラミネート装置のラミネート加工時におけるラミネート部の側断面図である。
【図5】本発明の実施例1の硬度計の構成を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例1の硬度計の使用方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例2の硬度計の構成を説明するための図である。
【図8】本発明の実施例2の硬度計の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本実施形態に係るラミネート装置に使用されるダイヤフラムの硬度計について説明する。
ここでは、まず、ラミネート装置でラミネートされる被加工物10について説明する。
【0020】
図1は、被加工物10として結晶系セルを使用した太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、図示のように、透明なカバーガラス11と裏面材12との間に、充填材13、14を介してストリング15を挟み込んだ構成を有する。裏面材12にはポリエチレン樹脂等の材料が使用される。また、充填材13、14にはEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が使用される。ストリング15は、電極16、17の間に結晶系セルとしての太陽電池セル18をリード線19を介して接続した構成である。
【0021】
また、被加工物10としては、上述した太陽電池モジュールだけではなく、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池モジュールを対象とすることもできる。この薄膜式太陽電池モジュールの代表的な構造例では、透明なカバーガラスに、予め、透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。このような薄膜式太陽電池モジュールは、カバーガラスを下向きに配置し、カバーガラス上の発電素子の上に充填材を被せる。更に、充填材の上に裏面材を被せた構造になっている。このような状態で真空加熱ラミネートすることにより薄膜式太陽電池モジュールの構成部材が接着される。すなわち、薄膜式太陽電池モジュールは、上述した太陽電池モジュールの結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけである。薄膜式太陽電池モジュールの基本的な封止構造は上述した太陽電池モジュールと同じである。
【0022】
図2は、本実施形態に係るラミネート装置100の全体の構成を示す図である。ラミネート装置100は、上ケース110と、下ケース120と、被加工物10を搬送するための搬送ベルト130とを有する。搬送ベルト130は、被加工物10を上ケース110と下ケース120との間に搬送する。ラミネート装置100には、ラミネート前の被加工物10をラミネート装置100に搬送するための搬入コンベア200が設けられている。また、ラミネート装置100には、ラミネート後の被加工物10をラミネート装置100から搬出するための搬出コンベア300が設けられている。搬入コンベア200と搬出コンベア300とは、連設されている。被加工物10は、搬入コンベア200から搬送ベルト130に受け渡され、搬送ベルト130から搬出コンベア300に受け渡される。
【0023】
ラミネート装置100には、シリンダ及びピストンロッド等で構成される図示しない昇降装置が設けられている。昇降装置は、上ケース110を水平状態に維持したまま下ケース120に対して昇降させることができる。昇降装置が上ケース110を下降させることで、上ケース110と下ケース120との内部空間を密閉させることができる。
【0024】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100のラミネート部101の構成についてより具体的に説明する。図3は、ラミネート装置100において被加工物10をラミネートするラミネート部101の側断面図である。図4は、ラミネート加工時におけるラミネート部101の側断面図である。
【0025】
上ケース110には、下方向に開口された空間が形成されている。この空間には、空間を水平に仕切るようにダイヤフラム112が設けられている。ダイヤフラム112は、シリコーン系のゴム等の耐熱性のあるゴムにより成形されている。後述するように、ダイヤフラム112は、被加工物10を押圧する押圧部材として機能し、ラミネートを行う。上ケース110内には、ダイヤフラム112によって仕切られた空間(上チャンバ113)が形成される。
【0026】
また、上ケース110の上面には、上チャンバ113と連通する吸排気口114が設けられている。上チャンバ113では、吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空引きして真空状態にしたり、上チャンバ113内に大気を導入したりすることができる。
【0027】
下ケース120には、上方向に開口された空間(下チャンバ121)が形成されている。この空間には、熱板122(パネル状のヒータ)が設けられている。熱板122は、下ケース120の底面に立設された支持部材によって、水平状態を保つように支持されている。この場合に、熱板122は、その表面が下チャンバ121の開口面とほぼ同一高さになるように支持される。
【0028】
また、下ケース120の下面には、下チャンバ121と連通する吸排気口123が設けられている。下チャンバ121では、吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空引きして真空状態にしたり、下チャンバ121内に大気を導入したりすることができる。
【0029】
上ケース110と下ケース120との間であって、熱板122の上方には、搬送ベルト130が移動自在に設けられている。搬送ベルト130は、図2の搬入コンベア200からラミネート前の被加工物10を受け取ってラミネート部101の中央位置、すなわち熱板122の中央部に正確に搬送する。また、搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を図2の搬出コンベア300に受け渡す。
【0030】
また、上ケース110と下ケース120との間であって、搬送ベルト130の上方には、図示しないが剥離シートを設ける場合もある。剥離シートは、被加工物10の充填材13、14(図1参照)が溶融したときに、充填材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。
【0031】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100によるラミネート工程についてより具体的に説明する。まず、図3に示すように、搬送ベルト130は、被加工物10をラミネート部101の中央位置に搬送する。なお、このとき、下チャンバ121や熱板122に配設された上下動可能な図示しない保持ピン等を上昇させることで、被加工物10を熱板122上から離間した位置に保持しておいてもよい。
【0032】
次に、昇降装置は、上ケース110を下降させる。上ケース110を下降させることにより、図4に示すように、上ケース110と下ケース120との内部空間は、密閉される。すなわち、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保つことができる。
【0033】
次に、ラミネート装置100は、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内の真空引きを行う。同様に、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内の真空引きを行う(真空工程)。下チャンバ121の真空引きにより、被加工物10内に含まれている気泡は、被加工物10外に送出される。なお、上下動可能な図示しない保持ピンにより被加工物10を、熱板122上から離間した位置に保持していた場合は、真空工程の略後半から、保持ピンを下降して被加工物10を熱板122上に載置する。
被加工物10は、温度制御装置などにより温度制御して加熱された熱板122によって加熱されるので、被加工物10の内部に含まれる充填材13、14も加熱される。
【0034】
次に、ラミネート装置100は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じることで、ダイヤフラム112が膨張する。従って、ダイヤフラム112は、図4に示すように下方に押し出される(加圧工程)。被加工物10は、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板122とで挟圧され、加熱により溶融された充填材13、14によって各構成部材が接着される。
【0035】
このとき、充填材13、14がカバーガラス11と裏面材12との間からはみ出てしまうことがあるものの、はみ出した充填材13、14は剥離シートに付着する。このように剥離シートを介在させることにより、はみ出した充填材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。従って、剥離シートは、ダイヤフラム112から次にラミネートする被加工物10に充填材13、14が付着するのを防止する。また、はみ出した充填材13、14が、搬送ベルト130上に付着した場合は、付着した充填材13、14は、図示しないクリーニング機構により除去される。
【0036】
このようにラミネート工程が終了した後、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置は、上ケース110を上昇させる。上ケース110を上昇させることにより、図3に示すように、搬送ベルト130を移動させることができるようになる。搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を搬出コンベア300に受け渡す。
【0037】
ラミネート加工は、上記のように行われるが、その過程で充填材(EVA)が溶融し有機過酸化物を含んだガスが発生する。このガスは、ダイヤフラム112の表面は剥離シートにより覆われている場合でも、周囲の隙間からダイヤフラムと剥離シートの間の空間に侵入しダイヤフラムの内部に吸収されてしまう。その結果ダイヤフラムの表面は過架橋の状態になり、ダイヤフラムの破断の原因になる。
【0038】
またラミネート加工中の図4に示しようにダイヤフラムは、太陽電池モジュール10の端部にて屈曲する。使用回数を重ねるにつれて屈曲部Kも過架橋になってくるので、脆くなり破断しやすくなる。
【0039】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100に使用されるダイヤフラム112の硬度を測定する硬度計200について説明する。
【実施例1】
【0040】
本発明の実施例1の硬度計200の構成を図5により説明する。図5(a)は、硬度計の側面図であり、図5(b)は硬度計の正面図である。本発明の硬度計は、硬度測定部210、押付け部220、押付量計測部230を含んで構成されている。以下各部について説明する。
【0041】
硬度測定部210は、公知のO型硬度計等を使用することができる。押付け部220は、硬度測定部の取付板221と押付量計測部の取付けブロック222から構成されている。取付板221には、硬度測定部210が取付けさている。取付板221の面積(長さ及び幅寸法)は、ダイヤフラムの硬度を測定する際に硬度計を安定した姿勢で測定できる程度あれば良い。取付板221は、ダイヤフラムの硬度を測定する際にダイヤフラムの測定面に接触する部分である。また取付板221からは、硬度測定部210の測定子211が突出している。取付板の一方の端に取付けブロック222が設けられている。取付けブロック222には、押付量計測部230が取付けされている。押付量計測部230は、ダイヤルゲージ231を取付けブロック233を介して取付けブロック222に取り付けして構成されている。232は、ダイヤルゲージの触針である。
【0042】
本実施例1の硬度計の使用方法について図6により説明する。ダイヤフラムの硬度を測定する際は、ラミネート装置の上ケース110と下ケース120が開放された状態で行う。この状態では、ダイヤフラム112は下方に垂れ下がっている。この状態では測定はできないので、一度真空引きをしてダイヤフラムを上ケースの裏板部118に吸着させる。裏板部に吸着されたダイヤフラムに図6に示すように本実施例の硬度計をセットする。好ましくは裏板部118のフレーム部分等の支持体部がある部分で測定する。作業者は、硬度測定部210を持ちラミネート装置のダイヤフラムに押付け部の取付板221を押し当てる。この際、測定子211が規定量よりも深押しをしないように、押付け部220の取付ブロック222にブロック233を介して設けられた押付量計測部230により確認する。ダイヤルゲージ231の触針232の先端は、取付板221の接触面Sよりも距離Dに相当する量だけ下方に位置させている。この距離Dは、硬度計の取付板221をダイヤフラムに押し当て、ダイヤルゲージの触針が距離Dだけ押し戻された時が測定子211が規定量押付けされるように設定する。この時の硬度測定部210の目盛りを読み取る。
【0043】
本実施例の硬度計を使用することによりダイヤフラムの硬度を、硬度計の測定子211をダイヤフラムに深押しすることなく、正確に硬度の測定を行うことができる。
【実施例2】
【0044】
本発明の硬度計200の実施例2について図7により説明する。図7(a)は、硬度計の側面図であり、図7(b)は硬度計の正面図である。本実施例の硬度計は、実施例1の構成の硬度計に取手部240と首振部250を追加した構成としている。取手部240は、取手241、取付板242および支柱243から構成されている。支柱243は、取付板242の両端に設けられている。首振部250は、両側の支柱243と押付け部220の両側の取付けブロック222の間に設けられている。首振部は、スプリング251、ロッド252および調整用ナット253により構成されている。
【0045】
押付け部220の取付けブロック222には、ザクリ孔H1と貫通孔H2が設けられている。支柱243の取付板242の取付け側と反対側の端面にロッド252が取り付けられている。ロッド252の先端にはネジ部が設けられている。ロッドの直径は貫通孔H2の直径よりも細く隙間を有している。支柱243の端面と取付けブロック222の端面との間にスプリング251をその内側にロッド252を通して設けられている。スプリングの圧縮量は、ロッドのネジ部に調整ナット253をねじ込むことなどにより調整することができる。
【0046】
本実施例2の硬度計の使用方法について図8により説明する。硬度測定の方法は、実施例1の硬度計と同様である。実施例1では、作業者が硬度測定部を持ってダイヤフラムにその取付板221を押付けていた。本実施例2の硬度計は、実施例1の硬度計に対して取手部240と首振部250が追加で設けられている。したがって図8に示すようにラミネート装置の側面に作業者が立ち装置内部のダイヤフラムの硬度を測定する際に、装置内部のダイヤフラムの硬度の測定をする場合でも首振り部により、取手部でダイヤフラムに対して多少斜め方法から押し付けても問題なく硬度の測定をすることができる。
【実施例3】
【0047】
つぎに本発明の硬度計を用いてラミネート装置にて使用されているダイヤフラムの交換時期を判断する運用方法について説明する。
通常ゴム硬度を測定するために使用されるショアA型硬度計(又はJISA硬度計)の測定子の先端は微小面積の平坦部を有しているものの尖り形状をしている。このような硬度計を使用した測定では、多数回ラミネート処理したことにより過架橋状態になっているダイヤフラムに硬度計の測定子が接触する際に傷や亀裂が発生しないように正確な測定を行うことが難しく、そのためダイヤフラムの交換時期を判断することが困難になる。
そこで本発明の硬度計は、その硬度測定部として、その測定子の先端に大きなRの球面形状を有した硬度計を使用することができる。その測定子の先端部の形状が半径0.5mmから1.5mmの球面とすることができる。好ましくは、その測定子の先端部の形状は、半径0.8mmから1.5mmの球面である。
硬度計の測定子の先端部の球面の半径が0.5mm未満になると硬度測定によりダイヤフラムに傷が付きその後のダイヤフラムの使用により破断や亀裂が発生する虞がある。また硬度計の測定子の先端部の球面の半径が1.5mmを越えると、硬度測定に際して押付け力が必要になり正確な硬度測定ができなくなる虞がある。
このためラミネート装置にて使用するダイヤフラムについてショアA硬度(又はJISA硬度)と本発明の硬度計により測定した硬度の関係を予め測定し校正表や換算式を準備する。実際ラミネート装置にて使用されているダイヤフラムの交換時期を判断するために、ダイヤフラムのゴム硬度を測定する場合は、本発明の硬度計により硬度を測定する。この測定結果を前記の校正表や換算式によりショアA硬度(又はJISA硬度)を求める。このショアA硬度(又はJISA硬度)の数値がダイヤフラム使用前のショアA硬度(又はJISA硬度)の数値からの増加が規定値以上、例えば50%増になった時を交換時期が到来したと判断する。
このような交換時期の判断方法により、ダイヤフラムに破断の原因となる傷や亀裂を付与することなく硬度を測定してその交換時期を予測することができる。
【0048】
本発明の硬度計を使用し測定した結果について実施例3(1)および実施例3(2)について説明する。
【0049】
[実施例3(1)]
実施例3(1)は、図2のラミネート装置100にシリコーン製のダイヤフラムを取り付けてラミネート加工した。ラミネート加工を一定回数行った後、ダイヤフラムから硬度測定用のサンプルを切り出し、一般的な硬度計にて測定した硬度(サンプル測定硬度)が50の場合の例で、サンプルを切り出す前のダイヤフラムの硬度をサンプルを切り出す同一場所にて本発明の実施例2の硬度計で、その測定子の先端部の半径が1.19mmの球面である硬度計にて硬度を測定した。両者の硬度測定結果を比較した。また本発明の実施例2の硬度計でダイヤフラムの硬度を測定する場合にダイヤフラムに付与される傷や跡の状態も確認した。
[実施例3(2)]
実施例3(2)は、以下以外は全て実施例3(1)と同じとした。ラミネート加工を一定回数行った後、ダイヤフラムから硬度測定用のサンプルを切り出し、一般的な硬度計にて測定した硬度(サンプル測定硬度)は70であった。また硬度計は、その測定子の先端部の形状を半径1.19mmの球面とした。
【比較例】
【0050】
比較例1から比較例4について説明する。
[比較例1]
比較例1は、実施例3(I)と同様、ラミネート装置100にシリコーン製のダイヤフラムを取り付けてラミネート加工した。ラミネート加工を一定回数行った後、ダイヤフラムから硬度測定用のサンプルを切り出し、一般的な硬度計にて測定した硬度(サンプル測定硬度)が50の場合の例で、サンプルを切り出す前のダイヤフラムの硬度をサンプルを切り出す同一場所にて比較例硬度計にて測定した。比較例硬度計は、その測定子の先端部が直径0.79mmの平坦部を有しその端部に角部を有する硬度計とした。両者の硬度を比較した。この比較例硬度計による測定硬度を実測定値とした。比較例1の実測定値は45であった。また比較例1の硬度計でダイヤフラムの硬度を測定する場合にダイヤフラムに付与される傷の状態も確認した。
[比較例2]
比較例2は、以下以外は全て比較例1と同じとした。比較例硬度計は、比較例1と同様な硬度計を使用したが、比較例硬度計による実測定値は、比較例1と異なり55であった。
[比較例3]
比較例3は、以下以外は全て比較例1と同じとした。ラミネート加工を一定回数行った後、ダイヤフラムから硬度測定用のサンプルを切り出し、一般的な硬度計にて測定した硬度(サンプル測定硬度)を40とした。
[比較例4]
比較例4は、以下以外は全て比較例1と同じとした。ラミネート加工を一定回数行った後、ダイヤフラムから硬度測定用のサンプルを切り出し、一般的な硬度計にて測定した硬度(サンプル測定硬度)を70とした。また比較例硬度計として、その測定子の先端部の形状は、半径0.1mmの球面とした。
【0051】
実施例3および比較例の結果をまとめて表1に示す。表1について説明する。
1)表中における「実測定値(x)」は、ラミネート加工を一定回数行った後、ラミネート装置に取り付けされた状態で測定したダイヤフラムの測定硬度である。実施例3では実施例2の硬度計にて、比較例においては比較例硬度計にて測定している。
2)表中における「サンプル測定硬度」は、ラミネート加工を一定回数行った後、ダイヤフラムから硬度測定用のサンプルを切り出し、一般的な硬度計にて測定した硬度の測定値である。
3)表中における「ダイヤフラム換算硬度(y)」は、換算式によりダイヤフラムのショアA硬度(又はJISA硬度)に換算した結果である。換算式は、実施例3において実施例3(1)および実施例3(2)以外の種々の実測定値(x)とサンプル測定硬度の関係から換算式を作成する。
4)表中において※1の換算硬度は、実施例3において予め作成した換算式の例(y=1.25x−27.5)により換算した換算硬度である。
5)表中において※2は、比較例1〜3は、ショアA硬度計(又はJISA硬度計)にての測定であるため、換算不能であることを示している。
6)表中において※3は、比較例4の硬度計により硬度測定した結果ダイヤフラムに裂けが付与されるので硬度の換算はしていないことを示している。
7)表中における「傷の状況」は、3段階で評価したものである。「1」は硬度計針により裂けが生じたことを示し、「2」は、裂けの起点となる硬度計針の跡が深くついていることを示し、「3」は硬度計針の跡はあるがほぼ平滑な状態であることを示している。
【表1】

【0052】
表1により実施例3(1)および実施例3(2)では、本実施例(本発明)の硬度計を使用している。実施例3(1)および実施例3(2)のとおり本発明の硬度計で測定した結果、実測定値(x)は、62、78となった。この結果を本発明の換算式の例(y=1.25x−27.5)により換算した各々のダイヤフラム換算硬度(y)は50と70になりサンプル測定硬度とダイヤフラ換算硬度は一致している。また硬度測定によりダイヤフラムに付与される傷は皆無である。
表1により、比較例1と比較例2では、硬度計の先端の測定子の形状は同一であり、さらにサンプル測定硬度が同一であるにもかかわらず実測定値が大きく異なっている。また比較例1から比較例3の実測定値(x)とサンプル測定硬度との数値から換算式を作成することは困難であることが分かる。比較例の硬度計では、実施例3で使用した硬度計のような押付け部、押付量計測部や首振部が無いので、同じ箇所を複数回測定した場合に測定硬度のバラツキが発生する。また比較例1から比較例3では、硬度測定によりダイヤフラムに傷が付与されるのでダイヤフラムの硬度測定を行うことによりダイヤフラムの寿命が短くなる。さらに比較例4では、硬度測定により硬度計針によりダイヤフラムに裂けが生じている。
以上より本発明のダイヤフラム用の硬度計および硬度測定方法は、有用であることを示している。
【符号の説明】
【0053】
10 被加工物(太陽電池モジュール)
11 カバーガラス
13、14 充填材
100 ラミネート装置
101 ラミネート部
110 上ケース
112 ダイヤフラム
113 上チャンバ
120 下ケース
121 下チャンバ
122 熱板
200 硬度計
210 硬度測定部
220 押付け部
230 押付量計測部
240 取手部
250 首振部
D 押付量
H1 サグリ孔
H2 貫通孔
K 屈曲部
S 接触面












【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラムにより仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記ダイヤフラムとで挟圧してラミネートするラミネート装置に使用されるダイヤフラムの硬度を測定するゴム硬度計であって、
被測定物である前記ダイヤフラムに接触する測定子を有する硬度測定部と、
被測定物である前記ダイヤフラムに硬度測定部を押付ける押付け部と、
被測定物である前記ダイヤフラムに対する硬度測定部の測定子の押付量を計測する押付量計測部と
を備え、
前記ダイヤフラムを前記ラミネート装置に取り付けた状態で、ダイヤフラムの硬度を測定することを特徴とする硬度計。
【請求項2】
前記硬度計は、さらに被測定物である前記ダイヤフラムに押し付けるための取手部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の硬度計。
【請求項3】
前記硬度計は、さらに前記取手部と前記押付け部との間に首振部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の硬度計。
【請求項4】
前記硬度計は、被測定物である前記ダイヤフラムに接触する前記硬度測定部の測定子の先端部の形状が半径0.5mmから1.5mmの球面であることを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載の硬度計。
【請求項5】
被測定物である前記ダイヤフラムの前記硬度計による測定硬度とショアA硬度(又はJISA硬度)の関係を予め測定する工程と、
前記硬度計を使用し被測定物である前記ダイヤフラムの硬度を測定する工程と
を有し、
前記硬度計による測定硬度とショアA硬度(又はJISA硬度)の関係に基づき前記ダイヤフラムのショアA硬度(又はJISA硬度)を測定することを特徴とするダイヤフラムの硬度の測定方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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