説明

ラミネート電池及びその製造方法

【課題】偏平形状の電極体を収納可能なカップ部を形成したラミネート外装体に、偏平形状の電極体を収納し減圧状態で封止したラミネート電池において、ラミネート外装体のカップ部の底面に皺が発生するのを抑えて、長期サイクル特性を良好にする。
【解決手段】ラミネート電池1は、ラミネート外装体2a,2bの中に、偏平形状の積層電極体10及び非水電解液が収納されて構成されている。ラミネート外装体2aには、積層電極体10を収納するカップ部20が形成され、カップ部20の底面21は、積層電極体10の主面10aに沿って伸び、積層電極体10の両側面10bよりも外方に延出されて、折り返されてカップ部20の側面23c,23dにつながっている。そして折り返し部分における頂部の角度が40°〜85°の範囲内に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用機器、ロボット、電気自動車などの電源に使用されるラミネート電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池をはじめとする非水電解質二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、PDAといった携帯用機器の電源などに使用されている。
リチウムイオン電池における電極体の形態としては、正極板及び負極板を、セパレータを介して巻回した渦巻状の電極体と、方形状の電極を複数積層した積層式とがある。外装体としては、カップ成形したラミネートフィルムからなるラミネート外装体が用いられている。
【0003】
このようなラミネート電池は、特許文献1に開示されるように、カップ成形したラミネート外装体に、偏平形状の電極体と非水電解質を収納して、減圧状態でラミネート外装体を溶着して封止することによって作製されている。
このようなラミネート電池において、ロボット、電気自動車などを駆動する駆動電源などの用途に、大きなサイズのものも生産されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2005−203140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、大型のラミネート電池を開発するなか、大型の電極体を収納可能なカップ部(例えば、縦横の長さがそれぞれ90mm以上、深さが5mm以上)をラミネート外装体に形成する場合、ラミネート外装体において極部的に厚みが薄い領域が生じたり、クラックが生じないようにするためには、ラミネート外装体のカップ部の底面がたるむようにラミネート外装体を成形することが好ましいことを見出した。しかしながら、カップ部の底面がたるんだラミネート外装体を用いた場合、電極体と非水電解質を収納して、減圧状態(大気圧未満の圧力)で封止すると、ラミネート外装体のカップ部の底面に皺が発生しやすいという課題が生じた。
【0006】
このようにカップ部の底面に皺が発生したラミネート電池は、電極体にかかる構成圧が不均一となり、長期サイクル特性も低下する。
本発明は上記課題を考慮してなされたものであって、偏平形状の電極体を収納可能なカップ部を形成したラミネート外装体に、偏平形状の電極体を収納し減圧状態で封止したラミネート電池において、ラミネート外装体のカップ部の底面に皺が発生するのを抑えて、長期サイクル特性を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明にかかるラミネート電池は、ラミネート外装体におけるカップ部の底面を、電極体の側面よりも外方に延出すると共に、延出端から折り返してカップ部の側面につなげ、折り返し部分における頂部の角度を40°以上85°以下の範囲内に設定した。
また、本発明にかかるラミネート電池の製造方法は、上記のラミネート電池を製造する方法において、ラミネートシートを成形して偏平形状の電極体を収納可能なカップ部を形成する成形工程と、成形工程で成形したラミネート成形体の内部に、偏平形状の電極体を収納する収納工程と、ラミネート成形体のカップ部の開口部をラミネートシートでカバーして、減圧状態(大気圧未満)で封止する封止工程とを設け、成形工程で形成するカップ部の底面の少なくとも一辺に沿った方向の長さを、収納工程で収納する電極体の長さよりも長く設定することとした。
【0008】
上記封止工程では、カップ部の底面を、押圧部材で電極体に押圧しながら封止することが好ましい。
成形工程で形成するカップ部の側面の高さを、収納工程で収納する電極体の厚みよりも小さく設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明にかかるラミネート電池、並びに本発明にかかるラミネート電池の製造方法により製造されたラミネート電池においては、ラミネート外装体は減圧状態で封止されているので、大気圧によって、カップ部における底面及び側面に対して、電極体の上面及び側面に密着させる方向に押圧力が働く。
ここで、上記のように、ラミネート外装体におけるカップ部の底面を、電極体の側面よりも外方に延出すると共に、延出端から折り返してカップ部の側面につなげ、折り返し部分における頂部の角度を40°以上85°以下に規定しているので、カップ部における底面と側面との境界に沿って、境界の近傍領域に側面から外方に突出する突出部が形成され、カップ部の側面において、突出部の裾部分は凹んで皺が形成される。
【0010】
そして、カップ部がこのような形状に成形されるときには、封止前にカップ部の底面にたるみが存在していても、封止後にはそのたるんだ部分が側面に引っ張り込まれてたるみが吸収されるので、側面には皺が形成されても、底面には皺が形成されにくい。
また、折り返し部分の頂部の角度が小さすぎると、頂部に大きな負荷がかかってクラックが発生しやすくなるが、本発明では折り返し部分における頂部の角度が40°以上に設定されているので、折り返し部分の頂部にかかる負荷も小さく抑えられる。
【0011】
従って、ラミネート電池を長期間使用しても、ラミネート外装体にクラックが発生しにくい。
上記発明は、偏平形状の電極体が、正極板と負極板とがセパレータを介して複数積層された積層式電極体である場合に特に有効である。また、偏平形状の電極体を収納可能なカップ部が、縦の長さ及び横の長さが共に90mm以上であり、深さが5mm以上である場合にも特に有効である。
【0012】
上記封止工程において、カップ部の底面を、押圧部材で電極体に押圧しながら封止すれば、さらに底面に皺が発生しにくくなる。
また、成形工程で形成するカップ部の側面の高さを、収納工程で収納する電極体の厚みよりも小さく設定することが、封止後のラミネート外装体の形状を上記のような形状とする上で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ラミネート電池1の外観を示す図である。
【図2】積層電極体10の構成を示す斜視図である。
【図3】積層電極体10の構成を示す分解図である。
【図4】ラミネート外装体2aの外観斜視図である。
【図5】ラミネート電池1の封止前の断面形状を示す図である。
【図6】ラミネート電池1を図1のA線で切断した断面図である。
【図7】ラミネート外装体を減圧封止する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態として、リチウムイオン電池を例にとって説明するが、本発明は、下記に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施できる。
<ラミネート電池1の構造>
図1は、ラミネート電池1の外観を示す図である。
【0015】
ラミネート電池1は、ラミネート外装体2a,2bの中に、偏平形状の積層電極体10及び非水電解液が収納されて構成されている。
ラミネート外装体2a,2bは、アルミニウム箔の両面に樹脂層が積層されたラミネートシートで形成されている。
一方のラミネート外装体2aには、積層電極体10を収納するカップ部20が形成され、他方のラミネート外装体2bは、カップ部が形成されず平坦である。
【0016】
そして、カップ部20に積層電極体10及び非水電解液が収納された状態で、2枚のラミネート外装体2a,2bの外縁部分が溶着されて封止され、内部は大気圧よりも低い減圧状態となっている。
ラミネート外装体2a,2bにおける外周部(封止部分)の一辺(横辺)を貫通するように、アルミニウム板から成る正極集電端子16と、銅板からなる負極集電端子17が突出している。正極集電端子16とラミネート外装体2a,2bの間、負極集電端子17とラミネート外装体2a,2bの間のそれぞれに熱溶着性の樹脂フィルムを配置し、各部材間の密着性を向上されることが好ましい。
【0017】
なお、2枚のラミネート外装体2a,2bを用いる代わりに、カップ部を形成した1枚のラミネートフィルムを折り返してラミネート外装体を構成しても良い。
図2は積層電極体10の外観斜視図、図3は積層電極体10の分解図である。
積層電極体10は、偏平形状であって、セパレータ13を介して正極板11と負極板12とが複数積層されて構成されている。積層電極体10において正極集電タブ及び負極集電タブを除いた部分は、略立方体形状であり、平面視が方形状となっている。
【0018】
正極板11は、方形状のアルミニウム箔から成る正極用導電性芯体の両面もしくは片面に、正極活物質、結着剤、及び導電剤が混合された混合物からなる正極活物質層が設けられた構造である。
正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、或いはこれらの複合体等が挙げられる。
【0019】
正極板11の上辺から、上記正極用導電性芯体と一体形成されると共に上記正極活物質層が設けられていない正極集電タブ14が突出している。
負極板12は、方形状の銅箔から成る負極用導電性芯体の両面もしくは片面に、負極活物質と、結着剤とが混合された混合物からなる負極活物質層が設けられた構造である。
負極活物質としては天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。
【0020】
負極板12の上辺から、負極用導電性芯体と一体形成された負極集電タブ14が突出している。
セパレータ13は、ポリエチレン(PE)あるいはポリプロピレン(PP)製の微多孔膜である。
正極集電タブ14は、重ねられた状態で正極集電端子16の片面に溶着され、負極集電タブ15は、重ねられた状態で負極集電端子17の片面に溶着されている。
【0021】
正極集電端子16はアルミニウム板、負極集電端子17は銅板で形成するが、これらをニッケル板で形成しても良い。
非水電解液は、非水溶媒に支持電解質が溶解している溶液であって、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、γーブチルラクトン(GBL)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)等のカーボネート系を組み合わせた溶媒が挙げられる。
【0022】
支持塩としては、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF32等が挙げられる。なお、非水電解液の代わりにポリマー電解質を用いる場合も、実施可能である。
図2に示すように、積層電極体10の外周部においては、積層電極体10を積層方向に跨いでテープ19が貼着されている。
<ラミネート外装体2aの特徴>
ラミネート外装体2aにおいて、カップ部20の底面21は、長方形状であって4つの辺22a,22b,22c,22dを有している。
【0023】
図6は、ラミネート電池1を、横辺22a,22bに沿った線(図1のA線)で切断した断面を示す図であり、図5は、ラミネート電池1の封止前の断面形状を示す図である。
これらの図面を参照しながら、まず横方向について説明をする。
図6に示すように、カップ部20の底面21は、積層電極体10の主面10aに沿って伸び、積層電極体10の両側面10bよりも外方に延出されると共に、延出端から折り返されてカップ部20の側面23c,23dにつながっている。そして折り返し部分における頂部の角度が40°〜85°の範囲内に設定されている。
【0024】
言い換えると、底面21と側面23c,23dとの境界領域が、積層電極体10の側面10bから外方に突出し、突出部24c,24dの頂部の角度Θが40°以上85°以下の範囲内となっている。
ここで、実際には、上記折り返し部(突出部)の頂部はある程度丸みを帯びているので、電極側面から延出されて、折り返されている部分の断面を直線で近似(すなわち突出部を三角形で近似)して、その頂部の角度を、折り返し部(突出部)の頂部の角度とする。
【0025】
また、縦方向の断面形状も図5,6と同様であって、カップ部20の底面21は、積層電極体10の主面10aに沿って側面10bよりも外方に延出されると共に、延出端から折り返されてカップ部20の側面23a,23bにつながっており、底面21と側面23a,23bとの境界に沿って突出部24a,24bが形成されている。そして、折り返し部分(突出部24a,24b)における頂部の角度Θが40°〜85°の範囲内である。
【0026】
<ラミネート電池1による効果>
ラミネート電池1は、ラミネ−ト外装体2aが上記の特徴を有することにより、以下に説明するように底面21には皺が発生しにくくなっている。
まず、横方向について説明すると、上記のラミネート電池1において、ラミネート外装体2a,2bは減圧状態で封止されているので、図6に示すように、カップ部20における底面21及び側面23c,23dに対して、積層電極体10の主面10a及び側面10bに密着させる方向に押圧力P1が働いている。
【0027】
ここで、ラミネート外装体2aにおけるカップ部20の底面21が、積層電極体10の側面10bよりも外方に延出されて延出端から折り返され、カップ部20における底面21と側面23cとの境界に沿って、境界の近傍領域に側面から外方に突出する突出部24c,24dが形成され、突出部24c,24dの頂部の角度Θが85°以下となっているので、カップ部20の側面23c,23dは、突出部24c,24dの裾部分Qが凹んで、皺が形成されている。
【0028】
詳しくは下記の製法で説明するが、封止前には、図5に示すように、カップ部20の底面21にたるみが存在し、その分底面21の実長が余分になっていたものが、減圧封止後にカップ部20が上記の形状に変形して、封止後には側面23c,23dに引っ張り込まれ、余分な長さ分が吸収されるので、底面21に皺は形成されにくい。
一方、突出部24c,24dの頂部の角度Θが小さいと、頂部に大きな負荷がかかってクラックが発生しやすくなるが、突出部24c,24dにおける頂部の角度Θが40°以上に設定されているので、頂部にかかる負荷は小さく抑えられる。
【0029】
また、縦方向についても、断面形状は図5,6と同様となるので、縦方向においても横方向と同様に、底面21に皺が形成されにくい効果が得られる。
このように、ラミネート電池1は、減圧封止後において、底面21に縦横両方向に皺が生じにくいので、積層電極体10の主面10a全体に均一的に圧力がかかる。よって、積層電極体10全体において電池反応が均一的に行われ、サイクル特性や出力特性に優れたラミネート電池が実現できる。
【0030】
特に、カップ部20のサイズが、縦幅e及び横幅d1が共に90mm以上であり、深さfが5mm以上である場合には、一般的には封止後に皺が発生しやすいが、ラミネート電池1においては上記のように皺の発生が抑えられるので、得られる効果が大きい。
なお、ラミネート電池1では、縦横両方向にカップ部20の底面21が延出され突出部24a,24b及び突出部24c,24dが形成され、底面21における縦横両方向に対して皺が発生しにくくなっているが、縦方向及び横方向のいずれか一方に底面21が延出されて突出部が形成されていれば、縦方向あるいは横方向に対して底面21における皺の発生を抑える効果が得られる。
【0031】
<ラミネート電池1の製法>
ラミネート電池1の作製方法について実施例を示す。
〔正極板11の作製〕
正極活物質としてのLiCoO2を90重量部、導電剤としてのカーボンブラックを5重量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5重量部と、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を適量混合して正極スラリーを調製する。
【0032】
このスラリーを、アルミニウム箔(厚さ:15μm)から成る正極用導電性芯体の両面に塗布する。その後、乾燥し、圧延ローラで厚み0.1mmまで圧縮した後、正極用導電性芯体を所定の形状に切断することによって、正極集電タブ14付きの正極板11を作製する。
正極板11のサイズは、横85mm、縦85mであり、正極集電タブ14のサイズは、幅が30mm、高さが20mmである。
〔負極板12の作製〕
負極活物質としての黒鉛粉末が95質量%と、結着剤(カルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエン)が5質量%と、水とを混合してスラリーを調製する。
【0033】
その後、このスラリーを、負極用導電性芯体としての銅箔(厚み:10μm)の両面にドクターブレード法で塗布する。その後、溶剤を乾燥し、ローラで厚み0.08mmになるまで圧縮した後、所定の形状に切断することによって負極板12を作製する。
負極板12のサイズは、横90mm、縦90mmであり、負極集電タブ14のサイズは幅が30mm、高さが20mmである。
【0034】
[積層電極体10の作製]
正極板11をポリプロピレン製のセパレータ13で挟み、正極集電タブ14が突出する辺以外の3辺を熱溶着して、正極板11を袋詰めにする。袋詰め正極板11を35枚、負極板12を36枚、交互に積層して積層電極体10を作製する。
セパレータ13のサイズは、横90mm、縦94mmであって、その厚さは30μmである。
【0035】
積層電極体10の外面をテープ19で固定する。
積層電極体10の厚みは8.5mmであった。
積層電極体10から突出した複数枚の正極集電タブ14と正極集電端子16とを超音波溶接で溶着すると共に、積層電極体10から突出した複数枚の負極集電タブ15と負極集電端子17とを超音波溶接で溶着する。正極集電端子16はアルミ板、負極集電端子17は銅板であり、各端子の厚みは0.4mmである。
【0036】
[ラミネート外装体の成形]
ラミネートシートを成型することによって、図4に示すようにカップ部20を成形して、ラミネート外装体2aを作製する。
カップ部20のサイズは横幅d1=91mm、縦幅e=96mm、深さ(側面の高さ)f=8mmである。
【0037】
ただし、カップ部20の底面21は延伸されてたるみが生じており、底面21の横幅方向の長さd2は93mmであり、縦幅方向の長さe=98mmであった。
[ラミネート外装体への電極体及び電解液の封入]
ラミネート外装体2aのカップ部20に積層電極体10を収納して、ラミネート外装体2bでカップ部20の開口をカバーする。
【0038】
図5に示すように、カップ部20の横幅d1(91mm)は、積層電極体10の横幅a(90mm)よりも大きく設定され、また、カップ部20の深さf(8mm)は、積層電極体10の厚みc(8.5mm)よりも小さく設定されている。
ラミネート外装体2a,2bにおける外周部の4辺の中、端子16,17が通過する1辺を除いて、残りの3辺を熱溶着で封止する。
【0039】
この熱溶着工程では、図5において白抜き矢印Fで示すように、外周部を加圧・加熱して熱溶着する。
上記のようにカップ部20の深さfが積層電極体10の厚みcよりも小さいので、この熱溶着工程でカップ部20が引っ張られ、底面21は、張力Tを受けてたるみが少なくなる。
【0040】
なお、上記カップ部20の深さfが電極体の厚みcと同等以上であると、底面21のたるみが残り易くなる。また、頂部の角度Θが40°より小さくなり易くなる。そして、カップ部20の深さfを小さく設定するほど、この熱溶着工程でカップ部20を引っ張って底面21のたるみを少なくすることができるが、深さfが小さすぎると、張力が大きくなり過ぎ、頂部の角度Θも85°より大きくなり易くなる。
従って、(d1−a)/2−(c−f)の値が0〜1mmの範囲内となるように、カップ部20の深さfを設定することが好ましい。
【0041】
なお、d1,a,c,fが上記数値の場合、(d1−a)/2−(c−f)は0である。
ラミネート外装体2a,2bにおける外周部の未封止の1辺から非水電解液を注入し、その1辺を熱溶着で封止する。
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを体積比で30:70の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1M(モル/リットル)の濃度で溶解した溶液を使用する。
【0042】
ラミネート外装体の内部を、真空度90%(0.01MPa)に減圧した状態で、ラミネート外装体における未溶着の1辺を溶着して封止すると、ラミネート電池1が出来上がる。
この減圧封止工程において、底面21は大気圧P1によって積層電極体10の主面10aに密着するように押圧され、カップ部20の側面23a〜23dは、大気圧P1によって積層電極体10の側面10bに密着するように押圧されて、突出部24a〜24dが形成されるとともに裾部分Qが凹んだ形状となる。
【0043】
図7は、ラミネート外装体を減圧封止する方法の一例を示す図である。
SUS板をカップ部20の底面21にあててボルトで締め付けることによってSUS板に押圧力P2を加え、SUS板で底面21を全体的に押圧する。
このように押圧部材(SUS板)で底面21を押圧しながら、減圧封止することによって、底面21にSUS板から押圧力P2をかけながら、側面23a〜23dに大気圧P1がかかるので、カップ部20の底面21における皺の発生をより確実に防止すると共に、突出部24a〜24dの形状も整った形状に形成することができる。
【0044】
<変形例など>
上記ラミネート電池1においては、一方のラミネート外装体2aにカップ部20が形成され、ラミネート外装体2bにはカップ部が形成されていないが、ラミネート外装体2aとラミネート外装体2bの両方にカップ部を形成する場合も、そのカップ部の形状を、上述したカップ部20のような形状とすることによって、同様の効果が得られる。この場合、成型時における両カップ部の深さの合計を、積層電極体の厚みよりも小さく設定することが好ましい。
【0045】
上記ラミネート電池1のように、電極体として積層電極体を用いたものでは、特に、カップ部の底面の皺を低減する効果が大きいと考えられるが、偏平な渦巻電極体を用いたラミネート電池においても同様に実施することができ、カップ部の底面の皺を低減する効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、携帯用機器の電源、ロボット、電気自動車の動力電源やバックアップ電源などに用いるラミネート電池に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ラミネート電池
2a,2b ラミネート外装体
10 積層電極体
11 正極板
12 負極板
13 セパレータ
14 正極集電タブ
15 負極集電タブ
20 カップ部
21 底面
23a〜23d 側面
24a〜24d 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平形状の電極体を収納可能なカップ部を形成したラミネート外装体に、偏平形状の電極体が収納され減圧状態で封止されたラミネート電池において、
前記ラミネート外装体は、
前記カップ部の底面が、前記電極体の主面に沿って側面よりも外方に延出されると共に、延出端から折り返されて前記カップ部の側面につながり、
前記折り返し部分における頂部の角度が40°以上85°以下であることを特徴とするラミネート電池。
【請求項2】
前記偏平形状の電極体は、
正極板と負極板とがセパレータを介して複数積層された積層式電極体であることを特徴とする請求項1記載のラミネート電池。
【請求項3】
前記偏平形状の電極体を収納可能なカップ部は、
縦の長さ及び横の長さが共に90mm以上であり、深さが5mm以上であることを特徴とする請求項1記載のラミネート電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のラミネート電池を製造する方法であって、
ラミネートシートを成形して偏平形状の電極体を収納可能なカップ部を形成する成形工程と、
前記成形工程で成形したラミネート成形体の内部に、偏平形状の電極体を収納する収納工程と、
前記ラミネート成形体のカップ部の開口部をラミネートシートでカバーして、
減圧状態で封止する封止工程とを備え、
前記成形工程で形成するカップ部の底面は、その少なくとも一辺に沿った方向の長さが、
前記収納工程で収納する電極体の長さよりも長いことを特徴とするラミネート電池の製造方法。
【請求項5】
前記封止工程では、
前記カップ部の底面を、押圧部材で前記電極体に押圧しながら封止することを特徴とする請求項4記載のラミネート電池の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程で形成するカップ部の側面の高さが、
前記収納工程で収納する電極体の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項4又は5記載のラミネート電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−77447(P2013−77447A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216634(P2011−216634)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】