説明

ランサー

【課題】使用者が患者から血液を採取し、使用済みのランセットをそれに触れることなく廃棄することのできるランサー装置。
【解決手段】この装置は、患者へのスタイレットの突き刺し深さを選択するための調節可能な先端と、ヨーク型ラッチと板ばねを使用してランセットを排出する引き金機構を有する。このランサーは、ランセットが移動する時に振動を減らす減衰手段も具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランセットを通じて患者から血液のサンプルを吸引して採取するためのランサーに関する。更に詳しくは、本発明はこの装置を作動させるためのラッチ引き金機構を有するランサーに関する。このランサーは、ランセット・ストッパを前後に移動させて患者の皮膚に対するランセットの突き刺し深さを設定するための調節可能な先端を有する。更に、このランサーは、ランセットを操作しなくてもランサーからランセットを自動的に解放する排出機構を具えている。更に、このランサーは、ランセットの振動を減少させるための緩衝部材等の減衰機構を具えて、患者の快適性を増している。このランセットは、更に心出し機構を具え、ランセットが発射される時に、軸方向に垂直な好ましくないランセットの動きを減少させている。
【背景技術】
【0002】
弾道弾型のランサーは、患者の皮膚に小さな傷を付けて血液サンプルを得るために、医療分野で広く使用されている装置である。このようなランサーの一つは、中空のランサー本体と、スタイレットとして知られている鋭い針を有するランセットを具えている。このランセットは、ランサー本体の内部のプランジャに使用者によって装着される。このプランジャはランサー本体内を軸方向(前後)に動くことができる。プランジャは、このプランジャが使用者によって引き戻されると、即ち「発射態勢になる (armed)」と圧縮されるコイルばねに取り囲まれている。プランジャは、これに力を及ぼす圧縮ばねを有する引き金によって所定の位置に保持されている。この状態のランサーは発射態勢 (armed state)にあると云われる。発射態勢のランサーは使用者に握られて、その底部が患者の皮膚に押し付けられる。引き金を作動することによって使用者がプランジャを解放すると、ばねは圧縮を解かれてプランジャとこれに取付けられたランセットをランサーの底に向かって駆動する。前進するランセットがランサーの底のストッパに当たると、それのスタイレットはストッパの開口を通じて突出し、患者の皮膚を迅速に突き破って、そこから一滴の血液を取り出すことができる。この一滴の血液は糖尿病患者の血糖検査等のテストに使用される。しかし、このランサーは、患者及びその他の使用者、例えば以下に述べる理由によって患者からサンプルを得るためにランサーを使用する医療関係者の要望に完全には一致しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プランジャを発射態勢に維持するために、前述の従来型ランサーは、プランジャの下端に一体的に取付けられた爪状の引き金を用いている。プランジャが発射態勢になると、爪状の引き金はランサー本体の開口内に受け入れられ、これによってばねによって負荷されたプランジャを所定位置に保持する。ランサー本体の開口の上には小さなボタンが位置決めされ、使用者が引き金を作動させ、即ち爪の先端を受け入れ開口から押して外してランサー本体内に戻すことを可能にしている。しかし、この爪状又は戻り止め式引き金は比較的小さい力で作動可能であり、その結果、ランセットが偶然に発射され、患者或いは使用者の皮膚を突き破ることがある。したがって、充分な意図した圧力が加えられた場合にのみ作動し、事故による発射の可能性の少ない改善された引き金機構が望まれている。
【0004】
この爪状引き金はプランジャと一体化されているので、プランジャに付勢力を付与する。しかし、この付勢力はプランジャに加えられるばねの力の方向ではなく、プランジャの作用に悪影響を及ぼし、それを運動の軸方向の経路から偏らせる。これは、スタイレットを突き刺す際に患者に与える快適性を減少させる。したがって、改善された引き金機構によって、プランジャに非軸方向の運動を与えることを少なくして更に直線的な経路を可能にし、患者の快適性を増大することも望まれている。
【0005】
患者の皮膚へのスタイレットの突き刺し深さは、患者の快適性におけるもう一つの重要な考慮事項であると共に、患者から得られる血液の量を決める主要なファクターである。(別の主要なファクターはスタイレットのゲージである。)一般に、スタイレットの突き刺し深さが深くなると、血液の量が増し、患者の不快感も増大する。しかし、患者の年齢、性別、以前にどの程度突き刺されたか等のファクターによって、皮膚の厚さは変わるので、必要な突き刺し深さは患者毎に異なるであろう。ランサーの設計によって突き刺し深さが特定の患者に対して浅過ぎて設定された場合には、スタイレットは患者の皮膚をうまく突き刺すことができず、必要量の血液を抽出するのに突き刺しを繰り返したり、小さいゲージ(大きな径)のスタイレットを必要としたりして、時間及び/又はランセットが無駄になり、いずれの場合にも患者の不快感は増大する。一方、ランサーが特定の患者に対してスタイレットが過剰に深く突き刺さるように設計されている場合には、その患者は不必要な不快感を余儀なくされ、しかも回復に長い時間を要する。
【0006】
従来型の或るランサーはスタイレットの突き刺し深さが調節可能に構成され、プランジャの移動距離を精密に制御してスタイレットの所望の突き刺し深さが得られるようになっている。しかし、この精密なプランジャ制御を得るには、多くの厳しい許容限界と高価な構成部品を持つ複雑な駆動機構が必要であり、これを組み立てるのは時間のかかる労働集約的な作業である。
【0007】
他の従来型のランサーは不正確なプランジャの動きしか可能にしないが、その代わりに患者その他の使用者が自分自身でスタイレットの所望の突き刺し深さを設定できるキャップ(或いは先端)アセンブリを具えている。このキャップ・アセンブリの底部がランセットの動きを止めて、スタイレットはキャップの底に設けられた開口を通過して皮膚を突き刺す。例えば、一つのタイプのランサーは交換可能なキャップを受け入れるように設計されている。各キャップは、その底部に環状ストッパ部分を有し、ランセットを停止させる。このランセット・ストッパは、スタイレットを通過させる開口を取り囲んでいる。キャップ・アセンブリの底は、それぞれ異なる厚さとなるように作られている。厚い底はスタイレットの突き刺し深さを浅くし、薄い底はスタイレットの突き刺し深さを深くする。使用者は、交換可能な一組のキャップの中の一つを載せることによって、所望の突き刺し深さを選ぶ。しかし、この調節技術は、厚さの異なる多くのキャップ・アセンブリを製造し、ストックし、購入することが必要である。
【0008】
他のタイプの突き刺し深さ調節アセンブリは、ランセット・ストッパをアセンブリ自体の内部に設けることによって作動するものである。このアセンブリの底(末端)部分は、ランセット・ストッパ内の開口に対応する開口を有し、スタイレットはランセットと底の両方の開口を通過するように構成されている。このタイプの調節可能なキャップにおいては、キャップの底部が前後に移動してランセット・ストッパとキャップの底部との間に大小の空間を提供し、スタイレットの突き刺し深さを増加したり減少させたりしている。
【0009】
このような突き刺し深さ調節アセンブリの一つは、三つのエレメントを具えている。第一のものはその近接端がランサーに連結されているキャップエレメントである。このキャップエレメントの末端にランセット・ストッパと開口が設けられ、これを通じてスタイレットが移動する。このアセンブリは、二次的にその底部を形成するカバーエレメントを具えている。このカバーエレメントも開口を具え、これはキャップエレメントの開口と対応し、これを通じてスタイレットが移動する。このアセンブリは、キャップとカバーエレメントとの間に設けられこれに係合する第三の調節エレメントを有する。この調節エレメントは、その外側に凹んだ部分を有してカバーエレメントに係合し、それによって調節エレメントは係合するとカバーエレメントと共に回転する。調節エレメント/カバーエレメントのサブアセンブリは、ねじ山による取付け手段を介してキャップエレメントに係合し、調節エレメント/カバーエレメントのサブアセンブリを、キャップエレメントに対してあたかもねじのように回転させ、この動きはキャップエレメントのランセット・ストッパに対するカバーエレメントの底部の軸方向の動きに変換される。これよって、スタイレットの突き刺し深さが変わる。しかし、この装置は三つの別個のエレメントの製造と組立を必要とする。更に、底部カバーエレメントが動いて深さを変えているので、ランサーの全長が調節の設定によって変化し、ランサーの保管と使い方が容易ではない。更に、装置に組み付ける際に先端部が回転するので、深さの設定が狂うことがある。
【0010】
別の従来型の突き刺し深さ調節キャップも三つのエレメントを使用している。即ち、ランセット・ストッパを有する内側スリーブと、第1の螺旋状傾斜カム面を有する中間リングと、底部開口と第2の螺旋状傾斜カム面を有する外側スリーブである。このアセンブリは同じようにランサーに接続される。この組合せアセンブリのカム表面は、内側スリーブのカムに係合する。外側スリーブが回転すると、カムは外側スリーブを動かしてランサーから遠ざけ、ランセット・ストッパと外側スリーブの底部との距離を増大させ、これによって突き刺し深さが減少する。しかし、このアセンブリは前述のものと同じ問題を抱えている。
【0011】
前述のすべての突き刺し深さの調節可能なアセンブリは、皮膚の突き刺し量を調整して、或る範囲で容易に調節が可能ではあるが、キャップを取り外して交換する場合に、再セットのエラーを少なくできる装置が望まれている。
【0012】
従来型のランサーの操作の別の態様では、ランセットが患者から血液を採取するのに使用された後、それが血液で汚染され、したがってそのスタイレットに刺された他人の誰もが健康に対する潜在的な危険に曝される。排出能力を有する従来型のランサーは、オペレーターが保持する制御部材を使用している。不幸なことに、完全に分離する前にオペレーターがこの制御部材から指を外すと、ランセットが不意に排出されることがある。これを防ぐ試みとして、一つの従来型の排出機構は制御部材を保持して排出させる保留用の凹部を利用している。この解決策は、不意の排出の可能性がなお存在しているので、最適なものとは言えない。他の公知の排出機構は厄介で複雑な操作を要し、この操作を視力障害或いは身体障害を有する糖尿病患者が行なうのは難しく、針で刺される事故の可能性が増大する。これら公知のランセット排出機構に伴う問題点を解決するには、使用者が知っている又は慣れている動きを用いた、汚染されたランセットを患者や他の使用者によって容易に且つ自動的に排出できるランサーが望まれている。
【0013】
従来型のランサーの別の態様では、ばねで付勢されたプランジャ/ランセットのアセンブリは発射の際に振動を発生する。特に、圧縮されたばねが解放されると、プランジャ/ランセットのアセンブリに力を及ぼしてこれを加速する。このランサー・システムにおいては、プランジャを加速する主たるばねに起因して、ランセットがそのストッパ部材から跳ね返った後にプランジャが軸方向に振動する傾向がある。これらの振動はランセットの最適な進行を阻害し、患者の快適感を減少させる。なぜならば患者は皮膚を突き刺される際に僅かな振動でも感じとることができるからである。したがって、これらの振動を減衰させる機構及び軸方向の動きを摩擦で減衰させる機構を有するランサーを提供し、これによって患者の快適感を増すことが望ましい。
【0014】
プランジャの半径方向の動きを減少させて、ランセットのスタイレットが患者の皮膚に突き刺さる時に、スタイレットによって加えられる半径方向の力を減少させる機構を具えたランサーを提供することも望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、装置の安全性を改善し、患者の快適性を増大させる特長を有する改良されたランサーを提供するものである。このランサーは、使用者が慎重に必要な力を加えた場合に作動してランサーを発射する引き金機構を具えている。ランセットの迅速な解放と後退によって、改善されたランサーの作用が行なわれる。このランサーは、使用者が多くの突き刺し深さの設定値からスタイレットの所望の突き刺し深さを選択することが可能な調節可能な先端部分を具えている。この特長によって、使用者又は患者が適正な再現性の良い突き刺しを容易に行なうことができる。このランサーは、使用済みのランセットを使用者や患者がこれに触れることなく、解放する排出機構も具えている。このランサーは振動減少・減衰機構を具え、患者の快適性を増大する。これらの特長は従来型のランサー装置より優れた改善を提供する。
【0016】
一実施例は、ランサーを前進させるための装置に関する。この装置は、基端部分と、末端部分と、該末端部分に設けられたオリフィスとを有する本体アセンブリを具えている。前記本体アセンブリにはガイド部材が設けられ、ランセットを案内する。前記本体アセンブリにはラッチが設けられ、前記ガイド部材に係合している。このラッチは、ガイド部材が後退する時にガイド部材に係合するために少なくとも一つのノッチを有する。作動すると、ラッチはガイド部材をノッチから外し、ランセットを本体アセンブリの末端部分のオリフィスの方に前進させる。
【0017】
この動作は、ラッチのノッチの傾斜面を移動するタングによって円滑に行なわれる。
【0018】
別の実施例は、外側部材と内側部材を有するランサーに取付け可能な調節アセンブリに関する。外側部材は末端部分と基端部分とを有し、末端部分は外面と内面とオリフィスとを有し、このオリフィスからランセットの一部が突出する。内側部材は外面と内面を有し、外側部材が回転すると内側部材が本体アセンブリに対して動くように、外側部材に対して位置決めされている。内側部材のこの動きは軸方向(前後)に起こり、内側部材の外面と外側部材の内面との間の距離を調節する。
【0019】
更に別の実施例はランセットを前進させる装置に関する。この装置は、基端部分と末端部分とオリフィスとを有する本体アセンブリを具えている。ランセットを案内するために、本体アセンブリにはガイド部材が設けられている。本体アセンブリには、ガイド部材がラッチ作用位置を越えて後方に動いた時にランセットの後退を阻止して、ランセットをガイド部材から外して、次にガイド部材を後方に位置決めするための排出機構が設けられている。このガイド部材の後方位置決めは、ノーズ部分の取り外しによって円滑に行なわれる。
【0020】
更に他の実施例は、ランセットを作動させるための装置に関する。この装置は、装置に設けられたランセットをガイドする手段を具えている。この装置は、ガイド手段を作動させる手段も具えており、この作動手段は少なくとも一つのノッチを有する。この作動手段は、ガイド手段が後退する時にガイド手段に係合し、作動時にこれを作動手段から解放する。
【0021】
更に他の実施例は、ランセットを前進させるための装置に関する。本体アセンブリは、基端部分と、末端部分と、末端部分に設けられたオリフィスとを具えている。本体セクションには、ランセットを案内するガイド部材が設けられている。ガイド部材を作動させるラッチが本体アセンブリに設けられている。ガイド部材の振動を少なくするためにガイド部材には振動を減衰させる手段が設けられている。
【0022】
更に他の実施例は、ヨーク型ラッチを有するランサーに関し、このヨーク型ラッチは、作動すると装置の軸に実質的に直交する方向に移動する。
【0023】
更に他の実施例は、基端部分と末端部分とを有し、本体アセンブリとガイド部材とキャップ部分とを具えた装置からランセットを排出する方法に関し、この方法は
ガイド部材にランセットを装填し、
ガイド部材を末端方向に第1位置まで後退させ、
ガイド部材を作動してランセットを前進させ、
ガイド部材を基端方向に、前記第1位置を基端方向に更に越えた第2位置まで後退させ、
ランセットをガイド部材から引き離すのに充分な末端方向の力をランセットに加える各ステップからなる。
【0024】
更に、ランセットが装填された後に本体部分にキャップ部分が取付けられ、ガイド部材を後退させる前に取り外される。
【0025】
更に他の実施例は、使用者がランセットを装填又は外そうとしている時に、装置が偶然に発射態勢になることを防ぐための保持機構を有するランサー装置に関する。この装置は、前進するランセットを案内するために本体アセンブリに設けられたガイド部材を具えている。このハウジング・アセンブリにはラッチが設けられ、このラッチはガイド部材が後退した時にこれに係合する少なくとも一つのノッチを有する。ラッチが作動すると、ガイド部材はノッチから外れて、ランセットを本体アセンブリの末端部分のオリフィスの方に前進させる。この装置の長手方向軸に平行に設けられた保持機構が、ランセットの一部に当接し、ランセットの軸方向の運動を阻止する。こうして、発射後にラッチの一部が、ガイド部材が基端方向に後退することを阻止する。
【0026】
更に他の実施例は、ランセットを前進させる装置に関する。この装置は、基端部分と末端部分と該末端部分に設けられたオリフィスとを有する本体アセンブリを有する。前進するランセットを案内するために、本体アセンブリにガイド部材が設けられている。この装置は、ガイド部材がランセットを前進させている間、ガイド部材の半径方向の不安定性を少なくする手段も具えている。
【0027】
更に他の実施例は、ベース部材と31ゲージ或いはそれより小さいゲージ(即ち32、33等の高い値のゲージ)の外径を有するスタイレットとを具えたランセットに関する。
【0028】
更に他の実施例は、ランサー本体アセンブリに取付け可能な調節装置に関する。この装置は外側部材を具え、この部材は、末端面、末端面を貫通するオリフィス、外側部材の内面に設けられた複数のスロットを有し、前記各スロットはそれぞれ別個の軸方向深さを有している。内側部材は、末端面、末端面を貫通するオリフィス、内側部材の外面から突出した一つ或いは複数の突起を有する。この突起は、外側部材の内面の前記スロットの一つに挿入可能であり、内側部材の末端面と外側部材の末端面との間の距離を確立する。内側部材の周囲には付勢手段が設けられ、外側部材を内側部材の方に付勢するのに用いられている。
【0029】
更に他の実施例は、複数のスロットを有する内部部材と、選ばれたスロットに挿入するための少なくとも一つの突起を有する内部部材とを有する調節装置に関する。
【0030】
更に他の実施例は、基端部分と末端部分と該末端部分に設けられたオリフィスとを具えた本体アセンブリを有する、ランセットを前進させるための装置に関する。前進するランセットを案内するために、本体アセンブリにガイド部材が設けられている。ガイド部材が後退した時にガイド部材に係合し、ラッチに充分な力が加わってラッチを変形させた時にガイド部材を外すために、ハウジング・アセンブリにラッチが設けられている。この力によってガイド部材はラッチを通過することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ランサー装置の斜視図を示す図である。
【図2】このランサー装置の構成部品の分解図を示す図である。
【図3】調節機構の第1実施例の分解図を示す図である。
【図4】調節機構の第1実施例の分解図を示す図である。
【図5】調節機構の第1実施例の分解図を示す図である。
【図6】調節機構の第1実施例の分解図を示す図である。
【図7】調節機構の第1実施例の分解図を示す図である。
【図8】調節機構の第1実施例の分解図を示す図である。
【図9】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図10】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図11】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図12】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図13】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図14】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図15】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図16】この調節機構の第1実施例を示す図である。
【図17】調節機構の第1実施例の断面図を示す図である。
【図18】調節機構の第1実施例の断面図を示す図である。
【図19】調節機構の第2実施例の断面図を示す図である。
【図20】調節機構の第3実施例の分解図を示す図である。
【図21】調節機構の第3実施例の一部破断図を示す図である。
【図22】調節機構の第3実施例の断面図を示す図である。
【図23】調節機構の第3実施例の一部破断図を示す図である。
【図24】調節機構の第4実施例を示す図である。
【図25】調節機構の第4実施例を示す図である。
【図26】調節機構の第5実施例を示す図である。
【図27】調節機構の第5実施例を示す図である。
【図28】調節機構の第5実施例を示す図である。
【図29】調節機構の第6実施例を示す図である。
【図30】調節機構の第6実施例を示す図である。
【図31】調節機構の第7実施例の分解図を示す図である。
【図32】調節機構の第8実施例の分解図を示す図である。
【図33】ランサー装置の引き金機構に関連する支持部材の斜視図を示す図である。
【図34】ランサー装置の引き金機構に関連する支持部材の斜視図を示す図である。
【図35】ランサー装置のヨーク型ラッチの斜視図を示す図である。
【図36】図ランサー装置のヨーク型ラッチの斜視図を示す図である。
【図37】ランサー装置のボタンの斜視図を示す図である。
【図38】ランサー装置と共に使用される保持部材の斜視図を示す図である。
【図39】待機位置にあるランサー装置の破断図を示す図である。
【図40】発射態勢にあるランサー装置の破断図を示す図である。
【図41】発射態勢にあって端部ノブが突き出しているランサー装置の破断図を示す図である。
【図42】排出機構を具えたランサー装置の分解図を示す図である。
【図43】排出機構を具えたランサー装置の破断図を示す図である。
【図44】発射態勢にある排出機構を具えたランサー装置の破断図を示す図である。
【図45】排出機構を具えたランサーの断面図を示す図である。
【図46】スリーブ部材の斜視図を示す図である。
【図47】振動減衰機構を有するプランジャの斜視図を示す図である。
【図48】振動減衰部材を示す図である。
【図49】図49はランセットの半径方向の動きを減少させる機構を示す図である。
【図50】楕円形断面のランサー装置の分解図を示す図である。
【図51】楕円形断面のランサー装置を示す図である。
【図52】楕円形断面のランサー装置を示す図である。
【図53】楕円形断面のランサー装置の分解図を示す図である。
【図54】楕円形断面のランサー装置の調節部分の一部破断図を示す図である。
【図55】楕円形断面のランサー装置のプランジャとラッチを示す図である。
【図56】スタイレットの斜視図を示す図である。
【図57】スタイレットの斜視図を示す図である。
【図58】スタイレットの斜視図を示す図である。
【図59】スタイレットの斜視図を示す図である。
【図60】シールドを具えたスタイレットの斜視図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ランサー装置は、少量の血液を吸引できるように皮膚を突き破って患者から血液サンプルを採取するのに使用される。例えば、弾道弾型のランサー装置は、狭いゲージのランセットと共に使用されて、低容量血糖モニターに使用するために毛細血管の血液の一滴を採取するように構成されている。このような血糖モニターの一つは、約2.5μlの毛細血管血液を必要とする。
【0033】
図1はこのランサー装置10の斜視図を示す。この装置10は、末端部分228と基端部分230を有する本体アセンブリ(ここでは本体部分とも称する)136を有する。先端キャップ(ノーズキャップ或いはノーズ部分とも称する)104が、本体アセンブリ136に末端部分228で連結されている。ノーズ部分104はその末端に患者の肉体に押し付けるための表面168を有している。ノーズ部分104には、ランセット用スタイレット(図1には示されていない)をランセット装置10から突出させることを可能にするノーズ・オリフィス184が形成されている。スタイレット・ストッパ(図1には示されていない)の位置を示す指標マーク(図1には示されていない)がノーズ部分のノッチ即ち窓112を通じて目視可能である。このノッチ112は、これを覆う半透明なレンズ115を有することが望ましい。このレンズ115は装置の設定値マークを拡大し、ノッチ112を通してこれを目視できるようにしている。この設定値は使用者によって調節され、マークは調節カラー106の一部に印されており、スタイレットの突き刺し深さを使用者に示す指標を提供する。調節カラー106はノーズ部分104の周囲で回転可能になっており、所望の突き刺し深さを設定する。使用者は、調節カラー106を回して設定値を変更し、所望の設定値を得ることができる。これは、調節カラー106の外面に適宜に突出した多数の溝である、エレメント114で示されている隆起部即ち連続刻み部を摘んで行なわれる。別の例では、このエレメント114は、視力障害を持つ使用者によって所望の設定が行なえるように点字マークを具えている。
【0034】
望ましくはボタンであるレリーズ部材138が、ランセット装置10の引き金機構(完全な引き金機構は図3に示されている)の一部をなしている。この引き金機構は、レリーズ部材138が押されない場合には、レリーズ部材138の実質的な部分が本体アセンブリ136の外面の上に突出するように構成されている。ここでは端部ノブとも称しているノブキャップ122が、本体アセンブリ136の基端部分230に設置されている。この端部ノブ122は装置10を発射態勢にするのに使用される。
【0035】
図2はこのランサー装置10の分解図を示す。本体アセンブリ136は、本体アセンブリ136の末端228に設けられた本体オリフィス214とボタン・オリフィス216とを具えた中空の実質的に円筒状の部材であることが望ましい。本体オリフィス214は、ランセット(図示しない)をノーズ部分104の方向に押すためのプランジャ146用の通路を提供する。本体オリフィス214は、ねじ山付き先端部116用の取付け箇所も提供する。ボタン・オリフィスは、本体アセンブリ136へのレリーズ部材(ここではボタンとも称される)138の取付け箇所を提供する。ボタン138は引き金機構172を作動させるのに使用される。本体アセンブリ136は、ランサー装置10の種々の機構を収容している。これらの機構には、スタイレットの突き刺し深さを選択する調節機構108、発射前にランサーを発射態勢にする即ちこれに荷重をかける発射準備機構 (arming mechanism) 166、ランセットを作動させる引き金機構、ランセットをガイドしてスタイレット(図2には示されていない)がランセット装置10から突出するようにする支持機構、使用されたランセットを適宜な廃棄物用容器内に排出する排出機構(図2には図示されていない)が含まれている。
【0036】
各機構の構成部品について以下に述べるが、各機構のこれらの構成部品は例示として述べるものであって、各機構は該機構に関して説明する構成部品のすべてを必ずしも必要とはしない。実際、当業者ならば明らかなように、これらの機構は説明されたすべての構成部品よりも少ない部品でも作動可能であり、且つ別の部品に取り替えることもできる。
【0037】
調節機構108によって、使用者は患者の皮下にスタイレットを突き刺す所望の深さを選択することができる。ランサー装置10を使用する場合には、必要な血液サンプルを採取するのに充分な深さに突き刺すことが望まれる。多くの場合、患者への突き刺し深さは、約0.015インチ(0.38mm)と0.140インチ(3.6mm)の間、好ましくは0.024インチ(0.61mm)と0.105インチ(2.7mm)の間の範囲になければならない。種々の皮膚の厚さと状態に適合するように、ランセット装置10は調節機構108を有する。この調節機構108は、ノーズ部分104、ランセット・ストッパ102、調節カラー106及びねじ山付き先端部116を有することが好ましい。
【0038】
ノーズ部分104は、該ノーズ部分104の基端に形成された空洞内に実質的に嵌合関係にランセット・ストッパ102を受け入れるのに適した直径を持ったロケットの頭部のような形状をしている。このノーズ部分104は患者の皮膚と対面接触する末端面168と、スタイレットを突出させるための開口となるノーズ・オリフィス184とを有する。ノッチ112がこのノーズ部分104に形成され、調節カラー106上のマークを見せている。
【0039】
ランセット・ストッパ102は、ノーズ部分104に挿入可能な寸法を有するロケットの頭部型の部材であることが好ましい。このランセット・ストッパ102は、U字状の二つの凹み又はノッチ(図2には一つのノッチ266だけが示されている)と一つのオリフィス246とを有する。ランセット・ストッパ102はノーズ部分104内に設置され、作動の際にランセットがランセット・ストッパに当接し、スタイレットがノーズ部分104の末端面を越えて所定の長さだけ突出するようになっている。ランセット・ストッパ102は244aと244bとして示された一つ以上の突起を有し(二つの突起のみが示されているが、二つより多くても少なくてもよく、設計に応じて実質的に任意の数を受け入れ可能である)、これらは放射状に外向きに突出して例えば調節カラー106のカム面又はねじ山付き表面107と相互作用を行い、又、突起244aと244bは、例えばねじ山付き先端部116のスロットである開口165の中で半径方向の回転を拘束されている。(一つの開口が示されているが、装置10の設計に応じて任意の数であってもよい。)これによって、ランセット・ストッパ102は軸方向(即ち前後)に移動し、これによってランセット・ストッパ102はノーズ部分104に位置決めされる。
【0040】
ランセット・ストッパ102はノーズ先端104と連携して使用され、スタイレットの突き刺し深さを調節する。ランセット・ストッパ102は末端面222を有する。ノーズ部分104の内面に対するこの末端面222の位置が、スタイレットがノーズのオリフィス184から突出する長さを決める。ランセット・ストッパ102は調節カラー106の半径方向の回転によって動かされる。ランセット・ストッパ102は使用者が選択可能な六つの深さの設定値を有し、これらには特定のスタイレットの突き刺し深さに対応して1から6までの符号が付けられている。(深さの設定値の数は設計上の事項であり、本発明の理解のためには重要なものではない。)ランセットの末端面222がノーズのオリフィス184から離れれば離れるほど、オリフィス184からのスタイレットの突出は少なくなり、患者の皮下への突き刺さりも浅くなる。
【0041】
調節カラー106はねじ山等の内側ねじ山付き表面107或いはカム面を有し、ノーズ部分104の周囲での調節カラー106の回転を可能にしている。ランセット・ストッパの突起244aと244bは表面107の範囲内でカラー106の一部に係合しているので、ランセット・ストッパ102はカラー106を介して動かされる。ランセット・ストッパ102は、突起244aと244bがねじ山付き先端部116の開口165と固定関係にあることによって、カラー106と共に回転することが防がれる。カラー106の半径方向の回転によってねじ山付き表面107が回転し、それによってランセット・ストッパ102の一部にカム作用を及ぼす。ランセット・ストッパ102は、突起244aと224bがねじ山付き先端部116の対応する開口165に可動的に相互固定され、或いはスライド可能に係合することによって、軸回りの回転を拘束される。ノーズ部分104又はねじ山付き先端部材116とカラー106との間に半径方向に設けられた戻り止め機構(図11に示されている)により、離散的な間隔での調節が維持される。
【0042】
調節カラー106は、ノーズ部分104の内部のランセット・ストッパ102の位置を示すマーク113を末端部分に具えている。こうして、使用者或いは患者は、必要に応じて毎回の使用に先立って調節機構を特定の突き刺し深さに設定することが可能である。
【0043】
使用者或いは患者がノーズ部分104内に選択した深さにランセット・ストッパ102を容易に設定できるように、調節カラー106は、溝、隆起部、その他のマークを具えている。連続的なこぶ付き表面が、こぶ付き部分にマークを有することが好ましい。
【0044】
ねじ山付き先端部材116は、オプションのスリーブ部材186を介して調節カラー106と本体アセンブリ136との間を連結する。内部にランセット・ストッパ102を設置されたノーズ部分104は、本体アセンブリ136に連結された前記オプション・スリーブ186を介してねじ山付き先端部材116に取付けられる。好ましくは、ねじ山付き先端部材116は、本体オリフィス214に取付けられるか或いはそれに当接している。 別の例では、ねじ山付き先端部材116がスリーブ186に取付けられ、或いはカラー106がスリーブ186に取付けられる。ねじ山付き先端部材116は、ノーズ部分104と一体化された部品として製造されてもよい。
【0045】
別の例では、ねじ山付き先端部材116は本体アセンブリ136と一体化されていてもよい。
【0046】
調節機構の種々の実施例を図3〜図32を参照して説明する。
【0047】
最初に、調節機構108の分解斜視図を示す図3に戻ると、ノーズ部分(図2にエレメント104として示されている)とねじ山付き先端部材(図2にエレメント116として示されている)が、単一のノーズ部品としてエレメント1104で示されている。このノーズ部分1104は、ノッチ112と、開口165と、細長い部分256とを有する。ノッチ112は現在の突き刺し深さの指標のみを露出させている。しかし、設定値に直接的感覚を与える溝、隆起部、連続的なこぶ等の指標が設けられているので、使用者は他の設定値を知ることができる。細長い部分256は、カップリング258の突起466aと466bに係合するためのノッチ或いは溝266aと266bを具えている。
【0048】
開口とも呼ばれるスロット165が突起244aに係合し、突起244aの実質的な半径方向の動きを防止している。(突起244bと係合する別のスロットを設けてもよいが、一つのスロット/突起同士の係合でランセット・ストッパ102はうまく制御されるであろう。)カラー106が回転すると、このスロット165と突起244aとの係合により、ランセット・ストッパ102は主として軸方向にだけ動くことが可能となる。突起244aがスロット165に係合すると、ランセット・ストッパ102の半径方向の回転が防がれる。突起244aは、それが開口165の中で軸方向に動けるように位置決めされ、カラー106が回転するにつれてランセット・ストッパ102を前後に動かす。インジケータ114を具えた調節カラー106が細長い部分256の外側に装着されている。調節カラー106をこの単一のノーズピース1104に保持するのに、カップリング258が使用されている。このノーズピース1104のカム面は、本体アセンブリ(図3には図示されていない)への接続機構を提供する。
【0049】
ノーズピース1104上のピン状突起468は、カラー106の内面上の凹み又はカム面(図4に戻り止めエレメント470として示されている)に係合して、カラー106とノーズピース1104との間の関係を調整し、ノーズピース1104が軸方向に動かないようにして、カラーがノーズピース1104に対してのみ回転できるようにしている。これによって、調節機構108の全長が変化することが避けられる。
【0050】
図4と図5は、調節可能な先端機構108の断面図と分解図を示す。図4と図5に見られるように、ねじ山或いはカム面107を用いてランセット・ストッパ102がノーズピース1104内で軸方向に動くので、調節機構の設定によって装置の全長が変わることはない。したがって、突き刺し長さが変わっても、ノーズピース1104が突出したり引っ込んだりすることはない。また、ランサーを使用する場合或いは先端を外して再び取付ける場合に、突き刺し深さが偶然に変わることはない。図3を参照して、カラー106、細長い部分256、こぶ付き部分114、カップリング258及び突起244aと244bについて述べた。
【0051】
図6〜図8は調節機構108の一実施例を示し、ここではノッチ112を具えたノーズ部分104が、カラー106、ねじ山付き先端部材116、ランセット・ストッパ102に係合している。カラー106は、ピン状突起468と相互作用を行なう戻り止め表面470を有する。(任意の適宜な数の戻り止めスロットが設けられているが、これらは総合的にエレメント470として示されている。)突起244aはスロット165内に位置決めされ、これによってランセット・ストッパ102は実質的に軸方向の動きのみを許され、実質的にすべての回転は阻止される。ねじ山付き先端部材116は、本体アセンブリとスリーブのいずれかと係合するカム面を有する。(図6〜図8には本体アセンブリもスリーブも示されていない。)図6〜図8は図3〜図6に示された実施例と似ているが、ノーズ部分104がねじ山付き先端部材116とは別のエレメントである点が異なっている。両方の実施例とも、ランセット・ストッパ102の軸方向(前後)運動は許容するが、ランセット・ストッパ102の半径方向の運動は阻止する。
【0052】
図9と図10は単一のノーズピース1104と調節カラー106の斜視図を示す。(図9〜図12は、図3〜図5で説明した実施例に似た単一ノーズピースの実施例に関するものである。)図9に示されているように、ノーズピース1104は、ノッチ112がカラー106の一部分を露出させるように調節カラー106に係合する。この部分は、溝114を用いてカラー106を回転することによって変えられる。
【0053】
図10は調節アセンブリ108の斜視図を示す。ノーズピース1104、ランセット・ストッパ102、カラー106の間の関係が示されている。
【0054】
図11は長手方向軸に沿う断面図を示す。図11に示されているように、ランセット・ストッパの突起244aと244bは調節カラー106と係合している。ねじ山付き面或いはカム面107は、ノーズピース1104内でのランセット・ストッパ102の軸方向の動きを可能にする。ランセット・ストッパの末端面222は、ランセット・ストッパのオリフィス246がノーズのオリフィス184と一致するようにノーズピースの末端面168から離れている。これによって、ランセット・ストッパ102の設定に基づいてスタイレットの一部がノーズピース1104から所定の距離だけ突出することが可能となる。ノッチ112によって、使用者或いは患者はカラー106上の設定値を見ることができる。
【0055】
図12は半径方向軸に沿う断面図を示す。ノーズのオリフィス184、ランセット・ストッパ102、カラー106及び溝114の関係が示されている。
【0056】
図13〜図16は、ノーズ部分104とねじ山付き先端部材116が別のエレメントである実施例を示す。(これは、図6〜図8に関して上述した実施例に似たものであ。)
図13と図15は、ノッチ112とカラー106とを具えたノーズ部分104の斜視図である。図13と図15はカバー115も示し、これは設定値マークを拡大するためのレンズである。
【0057】
図14と図16は、それぞれ図11と図12と似たものであるが、図11と図12に1104として示されているノーズピースが、詳しくは図14と図16に104と106で示されている二つのピースである点が異なっている。図14は、ノーズ部分104に挿入されたランセット・ストッパ102と、カラー106に係合した突起244aと244bを示している。ピン状突起468とカバー155も示されている。
【0058】
図16は、ノーズのオリフィス184、ランセット・ストッパ102、ノーズ部分104、ねじ山付き先端部材116及びカラー106の間の関係を示している。
【0059】
図17と図18は、調節アセンブリ108の第1実施例を示す。図17はランサー装置の本体アセンブリ136に取付けられた調節アセンブリ108を示す。この調節アセンブリ108は二つの部分を有している。これらは外側部材と内側部材である。外側部材は、ノーズ部分104と調節部材106として示されている。図18はエレメント1106としての外側部材を示し、これはねじ山付き先端部材116に対して移動しないようになっている。
【0060】
図17に示されているように、外側部材104、106は、オリフィス184に向かう末端部分と、本体アセンブリ136に向かう基端部分とを有する。表面168aは外側部材104、106の外面であり、表面168bは内面である。
【0061】
ここではランセット・ストッパとも称される内側部材102は、外側末端面222aと内側末端面222bとを有する。内側部材102は、オリフィス246と突起或いはポスト244aおよび244bを有する。これらの突起244aと244bは、それぞれスロット165aと165bに相互に係合して、調節部材106のカム作用によって内側部材102が移動する際に、内側部材102がノーズ部分104に対して回転しないようにしている。この移動は前後運動であって、実質的に内側部材102の回転は含まない。したがって、調節部材106が回転すると、面107は内側部材102を軸方向に動かし、内側部材の末端外面222aと外側部材104の内面168bとの間の距離が決まる。外側部材104は軸方向には動かない。前進するランセットは内側部材の末端の内面222bに出会う。内側部材102と外側部材104の末端部分同士の間の間隙が大きいほど、突き刺し深さが浅くなる。同様に、内側部材102の末端の外面と外側部材104の内面168bとが近いほど、突き刺し深さは深くなる。
【0062】
図18は、外側部材が単一の部材1106である調節機構108を示す。ノーズピース1106が回転するとスロット165との相互作用によって、ねじ山付き先端部116に取付けられた部材474がノーズ部材1106のスロット476に係合して、本体アセンブリ(図示しない)又は該本体アセンブリに取付けられたねじ山付き先端部材116に対するノーズ部材1106の直線運動を防止する。ノーズピース1106の回転運動は、突起478に対する面107のカム作用によって内側部材102を軸方向に動かす。内側部材102の突起478は内側部材102の実質的な回転を防ぐ。突起478はスロット165に「乗り入れ」、これによって、軸方向(前後)の運動が可能になると共に、ランセット・ストッパ102の回転が拘束される。面168a、168b、222a、222bも示されている。
【0063】
図19は調節機構の第2実施例1108を示す。この実施例もランサー装置に取付けられている。内側部材102は突起244aと244bを有する。スロット680aと680bは、それぞれ、本体取付け部材616上のポスト678aと678bに係合する。外側部材104が回転すると、内側部材102は本体取付け部材616に対して直線運動し、部材674と676を介して外側部材104と本体取付け部材616とが相互固定されるので、外側部材104を回転させる。これらの部材674、676は外側部材104と本体取付け部材616を軸方向には動かないように拘束するが、両者の間の回転は許容する。外側部材104は、本体アセンブリ(図示しない)から軸方向に遠ざかるようには動かない。突起244cは面107と相互作用して内側部材102を軸方向(前後)に動かし、それによって内側部材102の末端外面222aと外側部材104の内面168bとの間の距離を決める。前述のように、この距離によって、オリフィス246とオリフィス184から突き出すスタイレットの長さが決まる。
【0064】
図20と図21は調節機構の第3実施例を示す。この調節機構308はランサー装置に取り付けられる。部材328は調節機構の一部品であり、或いはこの調節機構が取付けられる本体アセンブリの末端部分であってもよい。この実施例では、使用者は外側部材304を先端側に引っ張ってこれを回転させ、外側部材304をストッパ面332から離す。(複数のストッパ面が全体として符号332で示されている。)この実施例を作動させるには、使用者はノーズ304を引っ張って、全体として符号331で示されているスロットの中の一つから突起349を解放し、304と328との相対回転を可能にする。相対回転が生じている間は、面322と面368との間の移動は起こらない。外側部材304が本体アセンブリ328から引き離されると、ストッパ面332は先端方向に移動し、突起349がこれに連携するスロット331から外れ、調節領域380内でスロット331の上方に浮くことができる。ノーズ部分304を先端方向に引っ張ることによって、突起349がスロット331から外れ、回転が可能になる。回転している間は、実質的に移動は起こらない。各スロット331は、スタイレットが突出する長さを決めるように、面368からそれぞれ独特の距離だけ離れている。
【0065】
使用者は、外側部材304を回転させることによってスロットを選び、全体としてエレメント331で示されている複数のスロットの中の新しい一つのスロットを突起349と一致させ、ばね327が外側部材304を本体アセンブリ328の方に付勢するにつれて、新しいストッパ面332bに係合させる。
【0066】
突起349が特定のスロット331に係合すると、外側部材304は本体アセンブリ328に対して回転できなくなる。したがって、使用者は、引っ張って、回転させて、戻して調節アセンブリ308をセットするだけでよい。
【0067】
外側部材304は、内側末端面368a、外側末端面368b、オリフィス384を有する。複数のスロット(全体としてエレメント331として、詳しくは331bと331cとして示されている)が部材304の内部に設けられている。各スロット331は別々の軸方向深さを有し、突起とも呼ばれているピン349と係合して、内側部材302と外側部材304との間の関係、特に内側部材の末端外面322bと外側部材の内面368aとの間の関係を確立する。エレメント329が付勢ばね327のための表面を提供し、これに対抗して作動する。このばね327は、外側部材304をその基端の近くで本体アセンブリ328の方に付勢する。これによって、外側部材304が本体アセンブリ328に取付けられる。
【0068】
ばね部材327は内側部材302に対して外側部材304を付勢し、選ばれたスロット331に入るようにピン349を付勢することによって、調節アセンブリ308を所定位置にロックすることができる。エレメント306は、付勢ばね327を係止するために内側部材302に設けられた隆起部である。
【0069】
図22と図23は、それぞれ、調節アセンブリ308の第3実施例の断面図と一部破断図を示す。図22と図23は、本体アセンブリ328、ばね327、外側部材304、内側部材302、突起349、表面322a、322bの関係を示す。
【0070】
図24と図25は、それぞれ、調節アセンブリ408の第4実施例の分解斜視図と断面図を示す。この実施例は、内部カム面333を有するカラー部材335を使用して、内側部材302と外側部材304を本体アセンブリ328に取付けている。
【0071】
図24と図25に示されているように、外側部材304の内面は複数のスロット331a〜331d(ここでdは外側部材の寸法に適合する任意の数である)を有する。内側部材302の外面に設けられた突起349は、選ばれたスロット331a〜331dに実質的に係合関係で対面する。使用者或いは患者は、突起349がスロット331a〜331dの内面に当接するように、外側部材304を引っ張って回転させることによって、所望の突き刺し深さを選ぶ。内側部材302は所定位置に保持され、表面322bは表面368aに対して固定される。
【0072】
本体アセンブリ328をランサー装置に取付けるために、本体アセンブリ328にカム面341が設けられている。或いは、本体アセンブリ328がランサー装置の末端部分であってもよい。このカム面341は、内側部材302の基端部分を本体アセンブリ328に取付けるのにも使用される。
【0073】
ばね327に係合して外側部材304を内側部材302の方に付勢する面を、隆起部374が提供する。
【0074】
この実施例の別の構成は、ノーズ部分308の内部に設けられた突起と内側部材102に設けられたスロットとを具えている。これは、引っ張り・ねじりを利用した前述の実施例と同じ目的を果たすものである。主たる差異は、突起とスロットの位置が反対になっている点である。
【0075】
図26、図27および図28は調節機構608の第5の実施例を示している。
【0076】
図26〜図28は突起312を有するノーズ部分304を示す。第1環状リング部材350、ばね327、第2環状リング部材345、内側部材302および本体アセンブリ328も示されている。
【0077】
第1環状リング部材350は、ノッチ356、358を有し、この第1環状リング部材350はばね327を保持するのに使用される。第2環状リング部材345は延長領域360と、一つ以上のノッチ(符号354で示されている)と、表面352を具えている。第1環状リング部材350とばね327と第2環状リング部材345は、ノーズ部分304の内面の選ばれたスロット(任意の適宜な数のスロットが可能であるが、図27に331a〜331eとして示されているスロット)に突起349が当接するように、内側部材302を外側部材304に対して固定的な関係に維持するための接続手段を提供する。突起312は、ノッチ354に係合することによってリング345をノーズ304内に固定する。
【0078】
図29と図30は調節アセンブリ708の第6実施例を示す。本体アセンブリ部材328は内側部材302の表面366に係合するための内面362を有し、それによって内側部材302を本体アセンブリ328に固定する。リング部材345は一つ以上の延長表面360(二つの表面360aと360bが示されているが、任意の適宜な数を用いることができる)を有する。延長表面360aと360bは外側部材304の開口364に相互固定される。ばね327は隆起部306に当接し、リング345内に挿入されて内側部材302を外側部材304の方に付勢する。内側部材302の突起349は選ばれたスロット331(図30に示されている)に係合し、内側部材302と外側部材304の間の関係を確立する。
【0079】
図31は、調節アセンブリ808の第7実施例を示す。この実施例は第6実施例と似ているが、本体アセンブリ328の表面362に係合・固定するために内側部材302がカム面又はねじ山366を有している点が異なっている。図29と図30に関して述べた類似のエレメントについては、図31での説明を省略する。
【0080】
図32は、調節アセンブリ908の第9実施例を示す。この実施例は第6実施例と似ているが、部材345の表面372に係合・固定するために外側部材304がカム面又はねじ山370を有している点が異なっている。図29、図30、図31に関して述べた類似のエレメントについては、図32での説明を省略する。
【0081】
再び図2を参照するに、潜在エネルギーの高まった状態に支持機構175を位置決めすることによって、発射前にランサーを発射態勢にする、即ちこれに荷重をかけるための発射準備機構166が使用されている。この発射準備機構166は、内側ノブ124、復帰用ばね126、ノブキャップ122を具えている。この発射準備機構は、排出機構に関しても後述するスリーブ部分186を具えていることが望ましい。
【0082】
このスリーブ部分186は、本体アセンブリ136の内部に設置された中空の実質的に円筒状構造体であって、本体アセンブリ136内の対応する戻り止め手段に係合するスリーブ186の外面に設けられたエレメント252として示されている一つ以上の突起によって、本体アセンブリ136に取付けられている。突起252は片持ち梁部材であり、スリーブ186の設計に適合した任意の数を使用することができる。
【0083】
内側ノブ124は円筒状の中空部材であり、発射態勢にする際にノブキャップ122の回転を防止すると共に、ノブキャップ122が突出したときにノブキャップ122の動きを少なくするために、外面に半径方向のリブ134を有する。内側ノブ124の軸方向のリブ134は内側ノブ124の回転を防止する。内側ノブ124上の突起564は、内側ノブ124をノブキャップ122に取付けるのに使用される。復帰用ばね126は内側ノブ124の内部に設置され、ランサー装置10が発射された後に支持機構175を後退させるのに使用される。これは、発射された後にスタイレットが突出位置に留まらないようにする安全手段である。患者の皮膚を突き刺した後にスタイレットは速やかに後退するので、患者の快適性も増す。ノブキャップ122は内側ノブ124に取付けられる。内側ノブ124と復帰用ばね126は、本体部分136の内部に設置される。内側ノブ124の内部には支持機構175の基端が入っている。
【0084】
支持機構175は、支持構造(ここでは支持部材、ガイド部材或いはプランジャ等とも称される)146、引き金手段132、ばねリテーナ128を具えている。プランジャ146の末端には、スタイレットを有するランセットが装着されている。このプランジャ(ガイド部材)146は、スプライン169、タング176、276(任意の適宜な数のタングを使用できるが、ここでは二つのみについて詳細に述べる)、緩衝部材154、ディスク部材449a、449c(他のディスク部材についてもここで述べる)及び戻り止め144aと144bを有する。
【0085】
プランジャ146は末端部分を比較的頑丈にすることができるポリマー材料で作られた細長い部材であり、プランジャは、この末端部分にランセットの基端部分を保持するような寸法を有する受け入れ部(図2には示されていない)を持つことによって、ランセットに嵌合関係を以て係合する。スプライン169は、装置10を発射態勢にする直線的運動を円滑にする。
【0086】
タング176、276はプランジャから外向きに突出した突起である。(二つ以上或いはそれ以下のタングをプランジャ146に設けることができるが、図には二つだけが描かれている。)これらのタング176、276はくさび型をなし、ヨーク型ラッチ139に係合して、装置10が発射態勢になってから発射される前までプランジャ146を定位置に保持する。
【0087】
引き金手段132は、スプライン169の周囲に設けられた圧縮可能なコイルばねであるが、この機能を果たすのに、任意の適宜な材料が使用可能である。引き金手段132は、ノブキャップ122が後退すると圧縮される。圧縮された状態では、引き金手段132はより高い潜在エネルギーを有する。
【0088】
緩衝機構は一つ以上の突起或いは緩衝部材154(設計に応じて実質的に任意の数の緩衝部材が可能であるが、ここでは一つだけの緩衝部材が述べられている)であり、この緩衝部材は、例えば、プランジャ146に設けられた半径方向に外向きに付勢された片持ち梁である。プランジャ146が作動すると、緩衝部材154は、スリーブ部分186或いはスリーブ部分186が無い場合には本体部分136の内面に接触して、プランジャ146に摩擦力と緩衝手段を提供する。この緩衝機構は、スタイレットが突き刺さる際又はその直後にプランジャが動く際に、患者が感じる振動を少なくする。
【0089】
組み立てられる場合、戻り止め144aと144bはスリット212を通じてばねリテーナ128に押し込まれ、拡がってプランジャ146と復帰用スプリング126を所望の位置に維持し、発射態勢への準備とプランジャの後退を可能にする。好適実施例においては、プランジャ146とばねリテーナ128は一つの部品である。
【0090】
引き金機構172は、スタイレットの所望の部分がノーズ・オリフィス184を通じて飛び出すように、ランサー装置10を発射するのに使用される。引き金機構172は、ヨーク型ラッチ139と付勢手段142とボタン138とを具えている。
【0091】
ヨーク型ラッチ139はU字型又はC字型をした頑丈な部材であるが、プランジャ146のタング176、276との実質的な係合を形成し且つ本体アセンブリ136に設置できさえすれば、任意の適宜な形状でも受け入れ可能である。ヨーク型ラッチ139は、タング176と276の位置を制御するようにタング176、276に係合するための窓(図2には示されていない)を有する。ランサー装置10が荷重された状態になると、ヨーク型ラッチ139は、プランジャ146が高い潜在エネルギー状態(即ち引き金スタイレット132が圧縮された状態)に維持されるように、タング176と276に係合する。
【0092】
付勢手段142はプランジャ146とヨーク型ラッチ139との間に設置され、ラッチ139を半径方向に外向きに付勢する。これが作動すると、付勢手段142が打ち負かされてヨーク型ラッチ139を解放し、それによってタング176と276はヨーク型ラッチ139を通過可能となり、プランジャ146はランセットをノーズ部分104に向かって末端方向に押す。付勢手段142は、板ばね、コイルばね、フォームラバーの立方体等の圧縮可能な材料、片持ち梁、捩じりばね又はプラスチック部材等である。図2に板ばね142として示されている付勢手段は、ボタン138によって作動する。このボタン138は片持ち梁部分192と空洞部分194とを有する。
【0093】
解放部材即ちボタン138は、ヨーク型ラッチ139に接触して板ばねとして示されている付勢手段142を押し返す底面262を有する。突起238がこのボタン138を本体アセンブリ136の中に保持する。ボタン138は、本体アセンブリ136のボタン・オリフィス216を通じて取付けられている。プランジャ146は引き金作用によって如何なる方向にも付勢されないので、この構成によって、プランジャ146の直線運動が可能になる。プランジャの経路が直線的なほど、振動と半径方向の運動が少なくなり、患者の感じる苦痛が減る。
【0094】
図33と図34は、ヨーク型ラッチ139とプランジャ部材146の分解斜視図を示す。プランジャ部材146は、ランセットと実質的に対応関係に係合する大きさの受け入れ部254を有する。図33はスリーブを外した図を示し、図34はスリーブ186を取付けた図を示す。図33と図34に示されているように、ヨーク型ラッチ139は基端面218と末端面220とを有し、付勢手段142の上に跨がっている。ヨーク型ラッチ139は、ヨーク型ラッチ窓(ここではノッチとも呼ばれている)152、153と、ヨーク型ラッチ末端傾斜面182、183(傾斜面183は図33に示され、傾斜面182は図34に示されている)とを具えている。ヨーク型ラッチ139のこれらの部分は、プランジャ146による運動を円滑にする。
【0095】
図33は、プランジャ146の両側に設けられたタング176と276を示す。当業者であれば、実質的にくさび型の突起であるタングの数と場所は設計に応じて選択し得る事項であることは自明であろう。タング176は作用ラインに垂直な末端面178を有し、これはプランジャ部材146が「発射態勢」位置に後退したときに、ヨーク型ラッチの基端面218に当接して保持される。タング176は傾斜面180を形成するように角度が付けられ、これはヨーク型ラッチ139の末端面220から末端面218にまで達する対応する傾斜面183に作用を及ぼす。発射態勢にある場合、タング面178はヨーク型ラッチ139の基端面218に係合する。プランジャのタング傾斜面180がヨーク型ラッチの末端面220に係合するように、プランジャ146を基端方向に引っ張ることにより、ヨーク型ラッチ139は傾斜面180によって下向きに移動する。ヨーク型ラッチ139が下降するにつれて、タング176と276はヨーク型ラッチの窓(即ちノッチ)152、153を通って移動する。タング176、276が窓152、153を通過すると、ヨーク型ラッチ139は、付勢手段142による圧力のために上方に跳ね上がって固定位置を占める。ヨーク型ラッチ139の固定位置はプランジャ146の動きを阻止する。
【0096】
プランジャ146は図33に示すように非円形断面を有する。プランジャ146は比較的頑丈で柱状変形に対して抵抗を有し、ランセットが前進する際にランセットの支持とガイドを提供する。
【0097】
装置を発射態勢にするために、ノブキャップ(図2にエレメント122として示されている)が引かれる。典型的には楔形状を有しているプランジャ146のタング176,276は、142として示されている付勢手段の付勢力に抗してラッチ139を半径方向内方に変位させる。そうすると、タングは窓152を通過可能になり、窓を通過する際にラッチ139は固定位置に押しやられる。しかし、引き金用ばね(図2にエレメント132として示されている)の付勢力に抗してプランジャ146には基端方向の力が働いているので、この基端方向の動きはタング176、276がヨーク型ラッチ139を完全に通過するまで続く。タング176、276がラッチの基端側に位置決めされると、板ばね142の付勢力によってヨーク型ラッチ139は半径方向に外向きに押しやられて、「発射態勢」位置を占める。続いてタング176、276はヨーク139を僅かに通過し、プランジャ146の位置に起因して停止する。プランジャ146は解放され、次に引き金用ばねの付勢力によって末端方向に動いて距離を戻し、ヨーク型ラッチ139の基端面218に接して固定位置を占める。
【0098】
この装置を発射するには、板ばね142として示されている付勢手段に抗してヨーク型ラッチ139を付勢している解放部材(図2にはボタン138として示されている)を押して、プランジャ146のタング176、276がヨーク型ラッチ139の窓152、153を通過可能にする。プランジャ146は引き金用ばね(図2にエレメント132として示されている)によって付勢されているので、これは迅速に行なわれる。この構成ではプランジャ146は引き金作用によってどの方向にも力を受けないので、プランジャ146は直線運動を行なうことが可能になる。プランジャの経路が真っ直ぐなほど、振動と半径方向の動きが少なくなる。
【0099】
タング176、276が窓152、153を通過して軸方向に動いた後、ヨーク型ラッチ139はその待機位置に戻る。
【0100】
プランジャ146は一つ以上の突起449(これらの突起は図33には449aと449cとして示されているが、ここではディスク状部材449a〜449dとして記載され、任意の適宜な数の突起を使用可能である)も有し、これはプランジャ146の周囲に一つ以上の環状リングを形成している。このリングは非円形であることが好ましく、装置の内面に係合している。これらの部材449は緩衝部材154a、154b及び/又はタング176、276と連携して使用され、プランジャ146/ランセットを推進させる際に、プランジャ146の心出しをする機能を有する。
【0101】
図34は、ラッチ139、プランジャ146及びスリーブ部分186の分解図を示す。図34は、スリーブ部分186のねじ山付き部分109とスリーブ186の溝付き部分190も示している。このねじ山付き部分109は調節カラー又はねじ山付き先端部材に接続され、調節機構をスリーブ186に接続している。板ばね142がスリーブ186に係合して、ヨーク型ラッチ139に圧力を及ぼしている。スリーブ186のスロット付き領域454によって、プランジャ146がヨーク型ラッチ139へアクセスすることが可能になる。図33に関して述べたエレメントについては、図34では述べない。
【0102】
図35と図36はヨーク型ラッチ139の斜視図を示す。図35に示されているように、ヨーク型ラッチ139は実質的にU字型又はC字型をなし、支持部材がヨーク型ラッチ139の内面264とノッチ152、153を通るように構成されている。しかし、ヨーク型ラッチ139は図36に示されているように、タングに係合するノッチを具えた部材であればよい。
【0103】
図35に示すように、ヨーク型ラッチ139は窓152、153と傾斜面182、183を有する。窓152と153は、プランジャ部材をヨーク型ラッチ139を通過して基端側218までスライドさせ、領域138aに働く圧力によって付勢手段(図16には示されていない)に打ち克って動かされるまで、これを固定位置に保持する。ヨーク型ラッチ139は、その開口端に設けられたクランプ部分224、226をも有し、スリーブのスロット付き領域を介してヨーク型ラッチをスリーブに対して所定位置に確保する。(スリーブのスロット付き領域は図34にはエレメント454として示されている。)
図36はヨーク型ラッチ139bを示し、これは図35に示されたヨーク型ラッチ139の一変形である。ヨーク型ラッチ139bはU字型或いはC字型ではないが、一つのノッチ152、一つの傾斜面183、一つのクランプ機構226によってラッチ機能を果たす。圧力aを及ぼす領域138aも、図35の類似の領域の約半分である。
【0104】
図37は、片持ち梁部分192と空洞194を有するボタン138を示す。片持ち梁部分192は、本体アセンブリとの連携関係を実質的に円滑化する。空洞194は本体アセンブリに相互固定される。ボタン・オリフィスに挿入されると、ボタンのタング238(ボタン138は二つのタングを持つことが好ましいが、図37には一つだけが示されている)は本体アセンブリに実質的に嵌合する(本体アセンブリとボタン・オリフィスは図2に示されている)。ボタン・タング238は、ボタン138が本体アセンブリから外れないようにしている。ボタン138は、ヨーク型ラッチの近くに表面262を有する。当業者ならば自明のように、ボタンをヨーク型ラッチの上に設けてもよい。ボタンは必須の手段ではなく、使用者は、ヨーク型ラッチ(図16に138aとして示されている)の一部を直接に押すことによってこの装置を作動させることもできる。ボタン138が必要な力で押されると、ボタン138の一部262はヨーク型ラッチに当接して、付勢手段に打ち克つ。
【0105】
図38はばねリテーナ128を示す。このリテーナ128は、プランジャ部材(図38にはプランジャは示されていない)との円滑な嵌合ができるようにオリフィス212を具えている。このオリフィス212は、プランジャの外径に対応した内面を有する。リテーナ128は、ここに示されているプランジャ部材と実質的に連携関係を形成するために、非円形の内面を有する。リテーナ128の内面は、プランジャと相互に連携する任意の形状を有する。表面208は、一つ以上のオリフィス210a〜210dを有する基端面である。
【0106】
リテーナ128は、プランジャの基端に係合する傾斜面213a〜213dを有し、プランジャの戻り止めは傾斜面213a〜213dに引っ掛かって係止される。これらの表面は、リテーナ128がプランジャをリテーナ128に対して維持することを容易にし、リテーナ128が後退する時にリテーナ128がプランジャを後退させることを可能にする。リテーナ128が戻りばねによって後退させられると、リテーナ128はプランジャも後退させる。(四つの傾斜面が示されているが、このリテーナ128と同じ構成の任意の数の傾斜面を使用することができる。)
図39は、発射態勢になる前の待機段階にあるランサー装置10の破断図を示す。図39に示されているように、ランセット188は鋭いスタイレット部分203を有し、該部分は装置10の内部にあり、装置10が発射即ち作動させられるとオリフィス184から突出するように維持されている。この発射態勢前の位置では、引き金用ばね132は実質的に圧縮されていないので、開放位置(即ち比較的低い潜在エネルギーの状態)にある。復帰用ばね126も完全には圧縮されていない。タング176と276はヨーク型ラッチ139の末端側に位置している。内側ノブ124は非突出位置にある。付勢手段(図39には示されていない)はヨーク型ラッチ139を付勢している。
【0107】
末端面168、調節機構108及びカラー106は前に述べた通りであり、ここでは説明しない。
【0108】
図40は、発射態勢位置にあるランサー装置10の長手方向軸に沿う断面図である。図40を参照して既に説明した類似のエレメントについての説明は省略する。図39に示された図と同じく、鋭い端部203を具えたランセット188が、スタイレット203がオリフィス184から突き出さないように設置されている。引き金用ばね132は既に圧縮され、即ち端部ノブ122が基端方向に後退して潜在エネルギーが増大した状態となっている。タング176はラッチ139の基端側に位置決めされている。ノブキャップ122は突出していない。
【0109】
図41は、ノブキャップ122が突出して内側ノブ124の一部を露出させた状態の発射態勢位置にあるランサー装置10の切断図を示す。この位置では、タング176はヨーク型ラッチ139の基端側に位置している。プランジャ146は既にノブキャップ122によって後退させられているので、引き金用ばね132は圧縮されている。
【0110】
この発射態勢位置では、ノブキャップ122は復帰用ばね126(即ちコイルばね)によって本体アセンブリ136の基端まで戻る。
【0111】
ランサー装置10を作動させるには、ラッチ139を付勢手段に打ち克つ或いはこれを圧縮するのに必要な力で押して、ヨーク型ラッチ139を固定位置まで移動させる必要がある。
【0112】
ボタン138が必要な強さの圧力で慎重に押されると、板ばね等の付勢手段はこれに打ち負かされてヨーク型ラッチ139を動かし、タング176をヨーク型ラッチ139を通過させ、プランジャ146によってランセット188を末端方向に押す。スタイレット203はノーズ・オリフィス184から突出する。
【0113】
スタイレット203がノーズ・オリフィス184から突出した後、ランセット188はランセット・ストッパ102に衝突し、復帰用ばね126はスタイレット203をランサー装置10に引き戻す。
【0114】
ランサー188は、ステンレススチール製のスタイレット203を具えている。
【0115】
ノーズ部分104、カラー106、スプライン169は他の図面に関連して説明したので、ここでは説明を省略する。
【0116】
図42は、排出手段を有する装置10の一実施例の分解図である。ランサー装置10から使用済みのランセット188を排出するのに排出機構が使用されている。この排出機構は、排出部材(ここでは排出ブレードとも呼ばれる)159、スリーブ186(既に図2に示されている)、排出ばね174を具えている。この排出機構は装置10の他の構成部品と連携して作動する。
【0117】
排出部材即ち排出ブレード159(ここで「排出部材」と「排出ブレード」は同じ意味で使用されている)はポリマー材料で作られた頑丈な細長い部材であり、末端部分234と基端部分236を具えている。排出ブレード159は本体アセンブリ136の基端部分に装着され、ブレード159が本体アセンブリ136の内面に固定されるように保持プラグ128に取付けられている。このブレード159は、本体アセンブリ136と一体化されている。排出部材159は、ランセット188に係合する末端部分234を有する。排出ブレード159の一部は本体部分136のスリーブ186内にも入っており、或いは、排出ブレード159はスリーブ186無しで本体部分136に設けられている。
【0118】
スリーブ186は排出ブレード159の支持体として使用され、本体部分136とノーズ・キャップとの間を接続している。スリーブ186は、突起252a、252bとして示されている一つ以上の突起或いはカム面を有し、これは端部ノブ122が後退してノーズ部分が本体アセンブリ136から離れると動く、二つの片持ち梁である。
【0119】
スリーブ186の基端は、プランジャ146をスリーブ186の内部で動かすことができる。図示のように、スリーブ186は、プランジャ146とスリーブ186の内面との間の間隙が最小となるように、実質的に嵌合関係となる内面形状を有する。この形状は非円形であるが、任意の形状でも受け入れ可能である。
【0120】
排出ばね174は、ブレード159の基端236と末端部分234との間に設置された圧縮可能なコイルばねである。スリーブ186は本体アセンブリ136に取付けられているが、拘束された軸方向の運動は可能である。スリーブ186を末端方向に付勢するのに、排出ばね174が使用されている。プランジャ146が基端の方に動くと、スリーブ186は排出ばね174の付勢力に抗して基端方向に移動する。ブレードの末端部分234はランセット188に接触し、ランセットが本体アセンブリ136内に後退することを防ぎ、これによってランセット188はプランジャ受け254から離れる。離れたランセット188は保持されず、本体オリフィス214を通じて排出される。
【0121】
これが働くと、排出機構は使用済みのランセットを、使用者や患者がこれに触れることなく装置から取り外すことを可能にする。
【0122】
排出機構について次に説明する。ラッチ139を解放してスタイレットが発射され、復帰用ばね126によって本体アセンブリ136の中に後退した後、ノーズキャップ及び/又は調節機構全体が取り外される。本体アセンブリはもはやスリーブ186に連結されておらず、ノーズキャップは本体アセンブリ136に力を及ぼさないので、ノーズキャップが外されると、ノブキャップ122は更に後退することができる。
【0123】
ノーズキャップを外した状態で、発射態勢にするのと同様のやり方で使用者又は患者は端部ノブ122を第1位置まで引っ張ると、ノブキャップ122は、発射態勢にするプロセスの場合よりも更に基端方向に後退することができる。先ず復帰用ばね126が圧縮される。ノブキャップ122が更に後退して、第1位置よりも更に基端に近い第2位置に達すると、リテーナ128とプランジャ146は後退し、引き金用ばね132として示されている引き金手段を圧縮する。次に、スリーブ186が基端に向かってに軸方向に後退し、排出ばね174を圧縮する。排出ばね174は付勢されてスリーブ186を末端側の前方位置に維持する。プランジャ146とスリーブ186の基端方向への動きによって、ランセット188は排出ブレード159に接触する。排出ブレード159に接触したランセット188は更に後退することを阻止され、したがってランセット188はプランジャ146から外される。使用者が本体アセンブリ136の末端部分を適宜な廃棄物容器に向けると、ランセット188は本体オリフィス214を通ってランサー装置10から落下する。
【0124】
このようにして、排出機構は、使用済みのランセット188を使用者がこれに触れることなく、そして補助的な制御部材を使わずに廃棄することができる。
【0125】
別の実施例では、スリーブ186は内面上に設けられた突起477を有し、この突起はランセット188の後退を阻止し、これによってランセット188をプランジャ146から外す。
【0126】
ボタン138、内側ノブ124、ボタン・オリフィス216については既に述べた。
【0127】
図43と図44は、排出機構を有するランサー装置10の破断図である。図43と図44に示された実施例は、前述のヨーク型ラッチの機能を有するワイヤラッチ139aを示す。このワイヤラッチ139aは環状の楕円形リングであり、プランジャ146を保持するのに使用される。プランジャ146のタング176がワイヤラッチ139aの基端側を通過すると(例えばプランジャ146の後退時に)、ワイヤラッチ139aはタング176と係合してプランジャ146を発射態勢位置に維持する。ワイヤラッチ139aを変位させるのに充分な力を加えると、タング176はワイヤラッチ139aを通過し、ワイヤラッチ139aとプランジャ146は末端方向に前進可能となる。
【0128】
この装置10は種々の操作状態で説明することができる。これらは、発射態勢前の状態、撃鉄を上げた(cocked) 状態、発射態勢の状態、作動状態、排出状態を含んでいる。
【0129】
発射態勢前の状態即ち普通の状態では、引き金用ばね132、排出用ばね174、復帰用ばね126は実質的に圧縮されていない。
【0130】
撃鉄を上げた状態では、引き金用ばね132と復帰用ばね126が実質的に圧縮されているが、排出用ばね174は実質的に圧縮されていない。端部ノブ122は基端から突出している。
【0131】
発射態勢状態では、引き金用ばね132は実質的に圧縮され、復帰用ばね126と排出用ばね174は実質的に圧縮されていない。端部ノブ122は本体アセンブリ136に当接している。
【0132】
作動状態では、復帰用ばね126は実質的に圧縮されているが、引き金用ばね132も排出用ばね132も圧縮されていない。
【0133】
排出状態では、引き金用ばね132、復帰用ばね126、排出用ばね174はいずれも実質的に圧縮されている。端部ノブ122は、撃鉄を上げた状態の突出位置の基端である第2位置まで後退する。ノーズキャップが外されて、ノーズキャップが本体部分136に取付けられているときよりも端部ノブが更に後退可能であることによって、この第2位置が得られる。
【0134】
図43に示されているように、この装置10は作動状態にある。引き金用ばね132と排出用ばね174は完全には圧縮されていない。図44に示されているように、この装置は発射態勢の前の状態にあり、ここでは引き金用ばね132は圧縮され、排出用ばね174は僅かに圧縮されて末端方向の付勢力を提供している。復帰用ばね126は圧縮されていない。図43と図44に関しては、前述したエレメントは説明されていない。
【0135】
図45は、排出状態にあってランセット188を排出しているランサー装置10の断面図を示す。引き金用ばね132、復帰用ばね126及び排出用ばね174は圧縮されている。内側ノブ124を後退させるノブキャップ122を介して基端方向の力を作用させることによってプランジャ146が後退する際に、ブレード159はランセット188が後退しないように防いでいる。
【0136】
戻り止め144aと144b及び本体アセンブリ136については、既に前に述べた。
【0137】
図46はスリーブ186の斜視図を示す。図46に示されているように、スリーブ186はねじ山付き先端部材(図示しない)に接続するためのねじ山付き部分109を有する。部分252aは、スリーブ186から半径方向に外側に張り出した部材であって、スリーブ186を本体アセンブリの内部の制御された位置に保持するのに使用される。(ここで述べられているようにスリーブ186が排出機構と連携して使用される場合、スリーブは軸方向に制御されて動く。スリーブが排出機構無し使用されると、スリーブは固定位置に留まる。)図46においては、スリーブ186の基端部分は保持プラグ128のオリフィスに似たオリフィス373を有し、したがってプランジャはスリーブ186の内部を軸方向に動くことができる。オリフィス373の寸法は、スリーブ186内でのプランジャの半径方向の動きが最小となるような大きさになっている。これによって制御が容易となり、プランジャの運動経路が改善され、望ましくない半径方向の動きが少なくなる。戻り止め190によって、スリーブ186は本体部分に確実に位置決めされる。プランジャはスリーブ186の内部に位置しているので、ラッチがプランジャにアクセスできるようにスロット付き領域454が設けられている。
【0138】
図47と図48は、この装置の振動減衰機構を示す。図47は緩衝部材154aと154bを有するプランジャ146の斜視図である。緩衝部材154a、154b(ここには二つだけが示されているが、任意の数の緩衝部材が可能である)はプランジャ部材146から延びる片持ち梁式の突起である。別の例では、緩衝部材154は基端タングの上に直接装着されてもよく、このタングはタング176に似たものであるが、プランジャ146にタング176よりも基端側に位置している。この基端タングはタング456aとして図示されている。
【0139】
この振動減衰機構は、装置を発射態勢にする時、装置が作動する時、及び発射後にランセットが後退する時に安定性を与える。
【0140】
プランジャ146にはディスク面449a〜449dも設けられている。これらの面はプランジャ146のための心出し手段を提供する。別の例では、これらの面はペッグ状の突起であり、本体アセンブリかスリーブの内面に設けられたこれに対応するレール或いはチャンネルに係合するように構成されている。
【0141】
面449aと449bの基端側に突起458が形成され、これは基端方向へのプランジャ146の動きを制限するための隆起した部材である。この隆起部材458はプランジャ146が基端方向に後退する時に、スリーブ又は本体に係合してプランジャ146が更に後退することを阻止する、積極的なストッパとして作用する。この装置が排出状態にある場合、隆起部材458は基端方向へのスリーブの動きを円滑にする。
【0142】
図48は緩衝部材154aと154bの詳細図を示す。この緩衝部材154aと154bはプランジャ146同じ材料で作られ、僅かに膨らんでプランジャ146が内蔵されている構造体、即ちスリーブ或いは本体アセンブリの内面と相互に作用し合うように設けられている。この相互作用によって、プランジャが作動しそして後退する時に、プランジャ146の振動が少なくなる。タング176と276も示されている。
【0143】
図49は本発明の心出し手段を示す。図49は、スリーブ部材186を具えた本体アセンブリ136の断面図を示しているが、この手段はスリーブ部材186の有無に係わらず使用される。内面には一つ以上の面562a〜562dが設けられ、これらはプランジャ部材146の一部と相互に作用し合うように構成されている。図49には四つの隆起面562a〜562dが示されているが、構造体の構成に応じて任意の数でよい。
【0144】
面562a〜562dは、プランジャ146とスリーブ186又は本体136の内面との間の特定の接触ポイントを提供する。これらの面562a〜562dは、一つ以上のチャンネル、一つ以上のペッグ、一つ以上のレール等である。
【0145】
プランジャ部材146はディスク、緩衝部材、片持ち梁、ペッグ等の一つ以上の突起449a〜449dを有し、これらは本体アセンブリ或いはスリーブ部材の内面と相互に作用し合う。この相互作用によって、プランジャ146が前進する際にプランジャの心出しが円滑に行なわれる。プランジャ146はほぼ0.333インチ(8.5mm)の外径を有し、本体136或いはスリーブの特殊面と本体或いはスリーブ内のプランジャとの間の最小許容間隙を好ましくは0.008インチ(0.2mm)未満とすることができる。これによって、プランジャ146と本体アセンブリ136或いはスリーブ186の内面との間に円滑な嵌合が得られ、プランジャ146を本体136又はスリーブ186の内部で主として軸方向に動かすことができる。タング176と276も示されている。
【0146】
ランサーについては上に述べた通りである。すべての機構を連携して作動させてこの装置を使用する方法を、図1〜図49に図示した構成部品を参照して、次に説明する。
【0147】
ランセット・ストッパ102の付いたノーズ部分104とカラー106が、スリーブ186又は本体アセンブリ136から取り外される。未使用のランセット188がプランジャ146の受け入れ部254に挿入される。ノーズ部分104とカラー106が本体セクション136に取付けられる。カラー106は、充分な血液を引き出すための所望の設定値まで回される。この設定値は1〜6の数字から選ばれる。ノブキャップ122を後ろに引っ張って、復帰用ばね126と引き金用ばね132とを実質的に圧縮し、プランジャ146を高い潜在エネルギー状態にすることによって、装置10は発射態勢になる。次にノブキャップ122が解放されてそのスタート位置に復帰し、復帰用ばね126は実質的に非圧縮状態となる。
【0148】
患者の所望の領域に圧力面168bを押し付け、必要な力でボタン138を押すことによって装置を作動させ、付勢手段142を圧縮する。圧縮されると、付勢手段はラッチ139を動かして、タング176、276をラッチ139を通って末端方向に通過させる。プランジャ146に担持されたランセット188は、引き金用ばね132の力によってランセット・ストッパ102に向かって加速される。スタイレット203は患者の皮膚を突き刺すのに充分なエネルギーを以てノーズ・オリフィス184から突出し、ランセット188はランセット・ストッパ102に止められる。復帰用ばね126はランセット188を介してスタイレット203を装置10の内部に後退させる。所望量の血液が得られた後、ノーズ部分104は本体セクション136から外される。次に、ノブキャップ122が、発射態勢にする時と同じやり方で第1位置まで後退させられる。復帰用ばね126が圧縮される。更に後退することによって引き金用ばね132が圧縮され、また更に後退することによって排出用ばね174が圧縮され、その間ずっとプランジャ146に力が加えられていて、プランジャ146を後退させる。この時点で、排出ブレード159はランセット188に接触し、ランセット188がプランジャ146と共に後退することを防止し、ランセット188をプランジャ146から解放する。
【0149】
図50〜図54は、ランサー装置の別の実施例を示し、これは楕円形断面を有する。図50はランサー20の分解図を示す。このランサー20は、端部ノブ522に接続された楕円形の外側本体セクション536有する。端部ノブ522は装置20を発射態勢即ち撃鉄を起こした状態にするのに使用され、楕円形本体536に適合する大きさになっている。本体セクション536はオリフィス516を有し、その中に引き金又はボタン538等の解放手段が入っている。本体536の内部には、プランジャ或いはシャフト546が設けられている。先端アセンブリ508は、内側部材502と、外側調節部材504と、ノーズ部分506を具えている。この実施例では、先端アセンブリ508は本体アセンブリ536から取り外すことができる。調節部材504は、ノーズ部分506での直線運動を制約されている。ランセット・ストッパとも云われている内側部材502は、調節部材504に螺合する完全なねじ山形状を有する。使用者は半径方向に調節部材504を回転させ、調節部材504とランセット・ストッパ502との間の相対距離を変える。スロット509aと509bがポスト(図54には593aと593bとして示されている)と相互作用を行なって、ストッパ502の半径方向の動きを防止し、ねじ山の形によるカム運動によってストッパ502を軸方向のみに移動させる。これについては図6を参照して既に述べた。
【0150】
この楕円形断面を有する実施例20は、ポストを用いてストッパ502とノーズ部分506との間の相対回転を無くしている。
【0151】
発射態勢になると、ヨーク型ラッチ539は、プランジャ546の一つ以上のタング(一つのタング576が示されている)をヨーク型ラッチの窓553の中に保持する。ヨーク型ラッチ539はスリーブ586に取り付けられている。ヨーク型ラッチ539の例えば開口であるヨーク型ラッチ539上の装着ポイント598aと598bは、それぞれスリーブ586のポスト504aと504bに嵌合している。これらの装着ポイント598aと598bは、ヨーク型ラッチ539が作動する際の回動軸を形成している。付勢手段542に打ち克ってヨーク型ラッチ539を解放することによって、ヨーク型ラッチが作動する。これによってヨーク型ラッチ539は装置20の軸に直交して移動し、プランジャ546上のタング576がヨーク型ラッチ539の窓553を通過可能にする。作動の後、ヨーク型ラッチ539上の基端フィンガー579aと579b(以後579と称する)は、内側ノブ524の末端フィンガー581aと581b(以後581と称する)に当接し、ヨーク型ラッチ539がプランジャ546のタング576に係合することを防ぐ。端部ノブ522を基端方向に後退させることによって、この装置は発射態勢となる。なぜならば、これによって内側ノブ524の末端フィンガー581がヨーク型ラッチの基端フィンガー579から外れ、ヨーク型ラッチ539がプランジャ546のタング576に係合可能になるからである。これは、ヨーク型ラッチ539を回動軸を中心に回動させて、タング576に係合可能な位置まで移動させることによって達成される。引き金用ばね523と復帰用ばね526は、前述したように、それぞれ引き金機能と復帰機能を果たす。リテーナ528はプランジャ546の後退を円滑化する。ポストを支えるために部材505aと505bが設けられている。フィンガー581aと581bを整列させるために部材525が設けられている。
【0152】
図51と図52は発射後の装置20を示す。(図52は装置20の一部破断図である。)ヨーク型ラッチ上の基端フィンガー579aは内側ノブの末端フィンガー581aに当接する。この係合によって、装置20の末端部分に働く圧力によって、荷重のかかる位置にプランジャが後退することが防がれる。これによって、装置20が偶然に発射態勢即ち負荷状態になる可能性が減少し、ランセットの取付け・取り外しが容易になる。本体アセンブリ536、端部ノブ522、ボタン・オリフィス516、調節部材504及びノーズ506については、既に説明した。
【0153】
図53は組み立てられた装置20の破断図である。本体アセンブリ536、ランセット・ストッパ502、調節部材504、ノーズ部分506及び端部ノブ522の関係が示されている。既に説明したエレメントについての説明はここでは省略する。
【0154】
図54は、ランセット・ストッパ502の回転を阻止するポスト593aを具えた先端アセンブリ508の破断図を示す。調節部材504は、調節部材504の軸方向運動を阻止する戻り止め583aと583bを有する。支持部材505aも示されている。
【0155】
図55は、上記の装置20として述べられた装置に使用されるラッチ539とプランジャ546を示す。ラッチ539は、このラッチをプランジャ546の運動の軸に直交して動かすことができる装着ポイント598aを有する。ラッチ539が作動すると、プランジャのタング576は窓553を通過し、プランジャ546が末端方向に移動することを可能にする。基端フィンガー(図示しない)に当接するフィンガー579aと579bが用いられ、ラッチ539が作動した時にプランジャ546の後退を阻止する。プランジャが基端(即ちエレメント522として既に示されている端部ノブ)から後退すると、末端フィンガー579aと579bは基端フィンガーを解放する。これは安全手段であり、装置のランセットが不用意に負荷されないようにしている。
【0156】
図56〜図58は、31ゲージ以下の外径(即ちより大きなゲージ番号)を有するスタイレット203を示す。測定に必要な血液の量が少なければ少ないほど、採取場所から採取される血液も少なくてすむ。小さいゲージのスタイレットは、その直径が小さいので少ない量の採取が可能である。直径が小さければ突き刺すのに要する力も小さくなり、患者の傷の少なくてすみ、したがって患者の快適性が増す。31ゲージより高いゲージ(即ち小さな外径)のスタイレットは、テスト用に2.5マイクロリットルの血液量を目的としている。
【0157】
31ゲージのスタイレット203はステンレス製であり、約1×10-2インチ(0.25mm)±4×10-4インチ(0.1mm)の外径を有する。図56に角209として示されている一次角は、約7〜11°、好ましくは約9°である。この一次角209は面210を形成する。211で示されている二次角は約14〜18°、好ましくは約16°であり、面212を形成する。この二次角はスタイレットを装置の軸を中心に一次角だけ回転させて形成された複合角である。例えば、この実施例では、スタイレット203は9°回転させられ、面212を形成するのに16°の角度が二次角として使用された。
【0158】
(31ゲージのスタイレットに関して述べたのと類似の幾何学的形状を有する)32ゲージのスタイレットは、約9×10-3インチ(0.23mm)±4×10-4インチ(0.1mm)の外径を有する。
【0159】
33ゲージのスタイレットは、約8×10-3インチ(0.2mm)±4×10-4インチ(0.1mm)の外径を有する。
【0160】
32ゲージと33ゲージのスタイレットは、31ゲージのスタイレットについて述べたのと似た一次角と二次角を以て作製される。
【0161】
図59は、研がれた面212を有する31ゲージのスタイレット203の形状を示す。この形状はこれより小さいゲージを持つランセットにも当てはまる。これらのスタイレットの形状は小さい突き刺し力しか必要としない。
【0162】
図60は、ランセット188に装着された31ゲージより小さいゲージの外径を有するスタイレット203を示す。ランセット188の一部189に係合することによってこのスタイレット203をカバーするのに、シールド部材207が用いられている。スタイレット203の長さは約0.115インチ(2.9mm)〜0.163インチ(4.1mm)の範囲にある。
【0163】
このスタイレット203は約17°〜35°の範囲の回転角を有する。スタイレット203は、スタイレットによって作られた傷口からの血の流れを改善するように潤滑されている。
【0164】
当業者であれば、本発明のその他の変形や修正は自明であろう。本発明は次に述べる特許請求の範囲を除いてこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0165】
10,20 ランサー
102 ランセット・ストッパ
104、506 ノーズ部分
106 (調節)カラー
108、508 先端アセンブリ
122,522 ノブキャップ(端部キャップ)
124、524 内側ノブ
126,526 復帰用ばね
128,528 リテーナ
132,523 引き金用ばね
136,536 本体アセンブリ(本体セクション)
138、538 ボタン(レリーズ部材)
142,542 付勢手段
146,546 プランジャ
159 排出ブレード
174 排出用ばね
176,276 タング
184 ノーズ・オリフィス
188 ランセット
203 スタイレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランサーの本体アセンブリに取付け可能な調節アセンブリであって、
末端部分と基端部分とを有し、該末端部分が外面と内面とオリフィスとを有している外側部材と、
末端部分と基端部分とを有し、該末端部分が内面と外面とを有している内側部材とを具え、
前記外側部材が回転せしめられると前記内側部材が前記本体アセンブリに対して移動し、内側部材の外面と外側部材の内面との間の距離を調節するように、前記内側部材が前記外側部材に対して位置決めされることを特徴とする調節アセンブリ。
【請求項2】
前記外側部材は、ランサーの本体アセンブリに対して実質的に軸方向に移動することを阻止されていることを特徴とする請求項1に記載の調節アセンブリ。
【請求項3】
前記外側部材は、前記ランサーの本体アセンブリに対して回転する調節部材を具えていることを特徴とする請求項2に記載の調節アセンブリ。
【請求項4】
更に、深さ設定値を露出させる開口を具えていることを特徴とする請求項1に記載の調節アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【公開番号】特開2011−25067(P2011−25067A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238589(P2010−238589)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【分割の表示】特願2000−236203(P2000−236203)の分割
【原出願日】平成12年8月3日(2000.8.3)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】