説明

ランチプレート

【課題】 深さが異なる複数の調理区画を備え、多種多様な調理の盛付けに広く適合することができるランチプレートを提供する。
【解決手段】 ランチプレート50の側面壁5Dの高さを使用上の手前側F1に向かって漸減するように形成することによって、人間工学的な観点からの使い良さを確保するとともに、その側面壁5Dと底面5Aによって形成されるランチプレート50の内部容量を底面5Aを稜線状に隆起させて形成する複数本の仕切りリブ5Cによって深さが異なる複数の調理区画D1,D2…に区分する。深い調理区画には、和え物や煮物等の深めの器に適する調理を盛付け、浅い調理区画には、オムレツやオムライス、パスタ等の浅めの器に適する調理を盛り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を仕切りリブによって複数の調理区画に区分した1枚の盆型の食器であって、複数種類の調理を互いに混ざり合うことなく盛り付けることができるランチプレートの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の食器類を上手に扱うことができない幼児用、または、多数人分の食事を扱うために食器類の数を制限する必要がある、例えば、介護施設や病院、学校等、その他、1枚の食器に多種類の調理を盛り付けることが慣例である、例えば、バイキング形式の調理においては、内部を仕切りリブによって複数の調理区画に区分したランチプレートが利用されている。
【0003】
上記のようなランチプレートは、食事作法との関係で賛否両論があるものの、現実の必要性に基づいて古くから実用化されている(下記、特許文献1ないし5参照)。
【0004】
ランチプレートは、一見、盆に類似するが、盆と異なり食器類を載せて運搬するのではなく、調理を直接盛り付けることに特徴がある。このため、ランチプレートの内部は、複数種類の調理を混ざり合うことなく盛り付けることができるように、仕切りによって複数の調理区画に区分されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 実開昭47−20587号公報
【特許文献2】 実開昭60−146469号公報
【特許文献3】 特開昭61−18070号公報
【特許文献4】 実開平5−82368号公報
【特許文献5】 特開平10−117911号公報
【0006】
上記特許文献に示されるように、ランチプレートの外形やサイズ、各調理区画の形状に関しては、ランチプレートの用途やランチプレートに盛り付けられる調理類に応じて様々な形態が採用されてきたといえる。しかし、ランチプレートには、多種多様なランチプレートを通じて次のような共通の問題点が見られる。
【0007】
ランチプレートは、その使用時において各調理区画には異なる調理が盛り付けられることとなるにも拘わらず、各調理区画の深さが同一であり、しかも、極めて浅いという点である。このため、ランチプレートを利用することができる調理品目が制限されたり、適切な量の盛付けができない等の不便をきたしている。例えば、汁気が多く崩れ易い煮物等は、調理姿を維持し、また、汁気が周囲に広がらないように狭い調理区画に盛り付けることが適切であるが、狭い調理区画であってその深さが浅い場合には、必要量を盛り付けることができないという問題が生じるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のランチプレートにおける問題点は、ランチプレートの側面壁を高く形成し、全ての調理区画を深く形成することによって簡単に解決することができるように思われる。しかし、このランチプレートの側面壁を高くするという対応策を採用した場合には、新たに、次のような問題が提出される。
【0009】
調理区画に収納すべき調理には、例えば、箸につまみ難い、深い調理区画に入れられていると違和感が伴う等の理由によって、浅く広げて盛り付けることが適当な調理があり、全ての調理区画が深い場合には、このような調理に対応することができないこととなる。このような調理としては、例えば、飯やパン類、パスタ類がある。
【0010】
また、ランチプレートは、通常の飯椀や汁椀と異なり、器を手にとって食事をすることがなく、水平なテーブル上に置いたままの状態で食事をするのが一般的である。このためランチプレートの側面壁が高いと、利用者の手前側の側面壁が障害となって食事をし難いとともに、調理が深い窪みに落ち込んでいる盛付け態様となり、視覚的にも折角の調理をおいしく見せることができないという問題が生じる。
【0011】
すなわち、従来のランチプレートが浅く形成されているのは、上記のような理由による。ところで近年、台所用品を含み、人が直接に操作する工具類や用品類のデザインが大きく変化している。これは、人間工学的な考え方が身近な物品にも取り入れられるようになったことに基づく。
【0012】
本発明は、従来のランチプレートの問題点について人間工学的な観点からの改善策を提案するものである。具体的に本発明は、1枚のランチプレートに、箸やスプーンナイフやフォーク等の操作性を阻害することなく深さが異なる複数の調理区画を形成可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための手段として本発明は、次のような構成を採用する。
【0014】
(解決手段1)
本発明のランチプレートは、底面と側面壁とによって形成される内部容量を底面を稜線状に隆起させて形成する複数本の仕切りリブによって複数の調理区画に区分し、各調理区画に異なる調理を盛り付け可能としてなるランチプレートにおいて、側面壁の高さを使用上の手前側に向かって漸減するように形成し、底面と側面壁とによって形成される内部容量が複数本の仕切りリブによって深さが異なる複数の調理区画に区分されていることを特徴とする。
【0015】
上記解決手段1について説明する。本発明のランチプレートは、底面と側面壁と、底面を稜線状に隆起させて形成する複数本の仕切りリブとからなる。ランチプレートの内部容量は、側面壁と底面によって決定され、仕切りリブは、内部容量を複数の調理区画に区分する機能を負担する。
【0016】
本発明のランチプレートにおける側面壁は、使用上の手前側、つまり、水平なテーブル面に置かれた状態において食事をする者の側に向かって高さが漸減するように形成されている。ここで、側面壁の高さとは、側面壁の傾斜にかかわらずテーブル面から側面壁の上端縁までの垂直距離であるものとし、側面壁の上端縁にフランジが形成されているものについては、フランジの厚みを一様に考慮しないものとしても、一様に考慮するものとしてもよい。
【0017】
側面壁の高さが使用者側に向かって浅く形成されている結果、反対側の側面壁を十分に高く形成しても、手前側の側面壁がナイフやフォーク、箸を操作する際の障害となるような不都合は生じない。また、側面壁と底面とによって形成されるランチプレートの内部容量は、仕切りリブによって任意個数の調理区画に区分することができる。したがって、側面壁が高い奥側に深い調理区画を、側面壁が低い手前側に浅い調理区画を形成することが可能となり、調理の種類や態様に対する適合性を格段に向上させることができる。
【0018】
(解決手段2)
本発明のランチプレートは、底面と側面壁とによって形成される内部容量を底面を稜線状に隆起させて形成する複数本の仕切りリブによって複数の調理区画に区分し、各調理区画に異なる調理を盛り付け可能としてなるランチプレートにおいて、側面壁の高さを使用上の手前側に向かって漸減するように形成するとともに、底面と側面壁とによって形成される内部容量が複数本の仕切りリブのうちの1本の仕切りリブによって使用上の手前側と残余部分とに大きく区分され、区分された手前側の調理区画が主食用に割り当てられていることを特徴とする。
【0019】
上記解決手段2について説明する。解決手段2に示すランチプレートは、実質的に解決手段1におけるものと同じであるが、仕切りリブの配置と、仕切りリブによって区分される調理区画の用途が具体的に特定の調理用の区画として限定されている点が異なっている。
【0020】
上記仕切りリブの配置上の限定は、複数の仕切りリブの1本が、ランチプレートの内部容量を使用上の手前側と残余部分とに大きく区分するように配置されることである。つまり、仕切りリブは、ランチプレートを利用する者の左右方向に向けて形成されることになる。また、この仕切りリブによって区分された調理区画の用途に関する限定は、手前側の調理区画が主食用に割り当てられていることである。なお、残余の調理区画は、そのまま利用してもよく、さらに別の仕切りリブによって複数の調理区画に区分して利用してもよい。また、主食の種類は不問である。
【0021】
上記構成は、主食が液状であることは稀有であって、通常は飯かパンであり、また、主食と惣菜を組み合わせて食事をする際には、主食に対する箸等の操作頻度が最も高くなることから、利用者の手前位置の浅い調理区画が主食用に最も適切であるという趣旨である。また、惣菜を主食上に載せて食べるような場合には、主食が手前に位置することが特に有利に機能することとなる。
【0022】
(解決手段3)
本発明のランチプレートは、解決手段1または解決手段2に記載の発明を基本発明として、仕切りリブによって円形に区画されたスープカップを安定に置くためのカップ区画兼用の調理区画を備えることを特徴とする。
【0023】
上記解決手段3は、ランチプレートを一層便利にするための構成を示している。本発明のランチプレートは、操作性を害することなく深い調理区画を形成することができるので、ランチプレートに直接スープや味噌汁を収容するための調理区画を設けることもできるのであるが、ランチプレート自体は、テーブル上に置いたままであるから、例え、深い調理区画を設けたとしても、独立のスープカップを備える方が便利である。しかし、独立のスープカップは、位置ずれや転倒するおそれがあることから、底の部分を落し込むようにしてランチプレート上に置くことが望ましい。円形に区画されたカップ区画は、このための区画である。ただし、他の調理との組み合わせの関係でスープカップを使用しない場合には、調理を収納するための調理区画に兼用することができる。なお、カップ区画におけるスープカップは、例示であり、いうまでもなく汁椀や湯飲みを置く区画として利用することができる。
【0024】
(解決手段4)
本発明のランチプレートは、上記解決手段1ないし解決手段3のいずれかに記載の発明を基本発明として、ランチプレートが電子レンジ対応の樹脂材料を使用し、全体外形が電子レンジに収納可能なサイズの円形または略円形に形成されていることを特徴とする。
【0025】
上記解決手段4は、ランチプレートに盛り付けられた調理を他の容器に移し替えることなくランチプレートごと電子レンジに入れて調理の再加熱や仕上げ加熱をすることができるようにするための構成を示している。このため、ランチプレートの素材には、電子レンジ対応の樹脂材料が使用されるとともに、ランチプレートとして必要な全体面積を確保しながら電子レンジに収納することができるように、ランチプレートの外形が円形または略円形に形成されているのである。
【発明の効果】
【0026】
本発明のランチプレートは、水平なテーブル上においた物を扱う際の人間工学的視点から、ランチプレートの側面壁の高さを使用上の手前側に向かって漸減する考え方を採り入れることにより、食事に必要なナイフやフォーク、箸等の操作性を害することなく1枚のランチプレートに深さが異なる複数の調理区画を形成することができるので、多種多様な調理の盛付けに広く適合することができる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明のランチプレートの実施の形態を示す平面図である。
【図2】 図1のX矢視側面図である。
【図3】 上記実施の形態におけるランチプレートの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を引用しながら本発明のランチプレートの実施の形態例を説明する。
【0030】
ランチプレート50は、底面5Aと側面壁5Dと、底面5Aを稜線状に隆起させて形成する複数本の仕切りリブ5C…と、側面壁5Dの上端縁に水平方向の帯状に形成される持ち手兼用のフランジ5Fとからなり、これらの構成部分は、電子レンジ対応の合成樹脂材料から射出成形によって一体成形される(図1)。
【0031】
使用される樹脂材料は、電子レンジ調理に耐える耐熱性を有する食器用の樹脂材料であれば、特に限定されない。本実施の形態においては、ABS樹脂とPET樹脂との混合材料が使用される。この混合材料の場合、電子レンジ対応とするためには、混合成分であるPET樹脂を射出成形の際、または、その後の塗装乾燥の際の熱処理によって結晶化させることが必要である。
【0032】
ランチプレート50の平面形状は円形または略円形に設定されている。ランチプレート50全体の内部容量は底面5Aと側面壁5Dとによって区画される容量である。したがって、この内部容量は、概ね、ランチプレート50の直径と深さによって決定される。また、ランチプレート50の深さは、概ね、側面壁5Dの傾斜にかかわらず、その高さHによって決定することとなる(図1,図2)。
【0033】
本実施の形態におけるランチプレート50の直径は、一般家庭の電子レンジに収納できるサイズに設定され、ランチプレート50の内部容量は、設定された直径において側面壁5Dの高さHを調節することによって確保されている。この際、側面壁5Dの高さHは、ランチプレート50全体について同一の高さではなく、ランチプレート50を使用する際の手前側F1に向かって高さHが漸減して浅くなるようにデザインされている。この結果、相対的にランチプレート50の奥側F2が深くなっている。
【0034】
ランチプレート50手前側F1の側面壁5Dの高さHと、奥側F2の側面壁5Dの高さHとは、略1:2の比率に設定され、このように手前側F1が浅く奥側F2が深いランチプレート50の内部容量は、2本の仕切りリブ5C,5Cによって3つの調理区画D1,D2,D3に区分されている。各仕切りリブ5Cは、底面5Aを稜線状に隆起させることによって形成される。
【0035】
ランチプレート50の内部容量は、具体的に、使用上の左右方向に向けて形成する仕切りリブ5Cによって、手前側F1の浅い主食用の調理区画D1と奥側F2の残余部分とに大きく区分され、奥側F2の残余部分は、さらに、前後方向の仕切りリブ5Cによって惣菜用の調理区画D2と、円形のカップ区画兼用の調理区画D3に区分されている。なお、このカップ区画兼用の調理区画D3は、底面5Aを上げ底とし、頻繁なカップの持ち置きに便利なように配慮されている。
【0036】
このようなランチプレート50は、例えば、手前側F1の浅い調理区画D1に浅い器に適する調理としてのオムライスM1を盛付け、奥側F2の深い調理区画D2に深い器に適する調理としてのシチューM2を盛付け、カップ区画兼用の調理区画D3に浅い器に適する調理としてのデザートM3またはスープカップ60に収容した調理を盛り付けることができる(図3)。
【0037】
勿論のことではあるが、カレーライスの場合には、ライスとカレールーとを前記のように調理区画D1、D2に区別して盛りつけ、また、和食の場合では、調理区画D1に主食(米飯)を盛りつけ、調理区画D2に副食物(煮物など)、調理区画D3には生物(刺身あるいは漬け物や野菜サラダ)を区別して置くことができる。
【0038】
すなわち調理の種類に応じた深さの調理区画D1,D2,D3を選択することができることが特徴である。また、ランチプレート50を水平なテーブル上に置いた際には、ランチプレート50の手前側F1が低くなっていることにより各調理区画D1,D2,D3に盛り付けられた調理の見栄えがよく、しかも、箸、ナイフやフォーク等の食事用具が使い易いことも特徴である。したがって、簡単な会食には好都合である。
【0039】
なお、上記実施の形態に示すランチプレート50の外形や仕切りリブ5C,5Cの配置は例示であり、これらは、ランチプレート50が使用される施設等の給食環境に応じて適宜に決定することができる。また、ランチプレート50を成形するための樹脂材料についても、電子レンジ加熱する必要がない場合には、一般食器用の樹脂材料を広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
50 ランチプレート
F1 手前側
F2 奥側
5A 底面
5C 仕切りリブ
5D 側面壁
H 側面壁の高さ
D1 調理区画
D2 調理区画
D3 カップ区画兼用の調理区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側面壁とによって形成される内部容量を底面を稜線状に隆起させて形成する複数本の仕切りリブによって複数の調理区画に区分し、各調理区画に異なる調理を盛り付け可能としてなるランチプレートにおいて、
前記側面壁の高さを使用上の手前側に向かって漸減するように形成し、前記内部容量が前記複数本の仕切りリブによって深さが異なる複数の調理区画に区分されていること、を特徴とする
ランチプレート。
【請求項2】
底面と側面壁とによって形成される内部容量を底面を稜線状に隆起させて形成する複数本の仕切りリブによって複数の調理区画に区分し、各調理区画に異なる調理を盛り付け可能としてなるランチプレートにおいて、
前記側面壁の高さを使用上の手前側に向かって漸減するように形成するとともに、前記内部容量が前記複数本の仕切りリブのうちの1本の仕切りリブによって使用上の手前側と残余部分とに大きく区分され、区分された手前側の調理区画が主食用に割り当てられていること、を特徴とする
ランチプレート。
【請求項3】
前記仕切りリブによって円形に区画されたスープカップを安定に置くためのカップ区画兼用の調理区画を備えること、を特徴とする
請求項1または請求項2に記載のランチプレート。
【請求項4】
電子レンジ対応の樹脂材料を使用し、全体外形が電子レンジに収納可能なサイズの円形または略円形に形成されていること、を特徴とする
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のランチプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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