説明

ランフラットタイヤ

【課題】通常走行時及びランフラット走行時の乗り心地性を確保しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利なランフラットタイヤを提供すること。
【解決手段】サイドウォール部14の内部に補強ゴム層24が配置されたランフラットタイヤ10である。補強ゴム層24の端部24Aは縦主溝30のタイヤ径方向内側に位置している。縦主溝30のタイヤ径方向内側でカーカス22とベルト層26との間にスチールベルト層50が設けられている。縦主溝30の幅をW1とし、スチールベルト層50の幅をW2としたときに1.0W1≦W2≦4.0W1の関係式を満たしている。スチールベルト層50のスチールコード5002がタイヤ周方向に対してなす角度をα°としたときに35°≦α°≦90°の関係式を満たしている。縦主溝30のタイヤ径方向内側に位置する補強ゴム層24の端部24Aの厚さTは0.5mm以上2.0mm以下に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランフラットタイヤに関し、さらに詳細には、通常走行時(空気圧が適切に充填されている状態での走行時)における乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時(タイヤ内の空気が抜けた状態での走行時)におけるバックリングを抑制する上で有利なランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ランフラットタイヤは、パンク等でタイヤ内の空気が抜けても所定の速度で所定の距離走行できるタイヤであり、ランフラットタイヤを車両に装着すると、パンク時に使用する予備タイヤを車両に搭載する必要がなくなる。
このようなことから、近年、車両全体の軽量化の観点から、また、広い居住空間、広いラゲッジスペースを確保する観点からランフラットタイヤが注目されている。
ランフラットタイヤとして、サイドウォール部に断面が三日月状の補強ゴム層を設けたサイド補強タイプのものが多い。
【0003】
サイド補強タイプのランフラットタイヤでは、ランフラット走行時、車両の負荷荷重を各サイドウォール部の補強ゴム層で支えることから、トレッド部の中央部が路面から浮き上がるバックリングが発生し易く、バックリングが発生すると、ランフラット走行時における乗り心地性が著しく低下する。
このバックリングを抑制するものとして、トレッド部の内部でベルト層のタイヤ径方向の外側に、レイヤー層を設けたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−137377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、バックリングについて鋭意研究し、その結果、バックリングは、トレッド部の肉厚が薄い箇所である縦主溝を起点として生じ易く、また、バックリング時は、トレッド部のタイヤ径方向の最も内側の箇所が最も伸長することに着目した。
このような観点からすると、ベルト層のタイヤ径方向外側にレイヤー層を設けた従来技術では、バックリングを効果的に抑制する上で不利となる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利なランフラットタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明は、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至るカーカス層と、前記トレッド部の内部で前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、前記トレッド部のトレッド面に設けられタイヤ周方向に延在する縦主溝と、前記サイドウォール部の内部で前記カーカス層のタイヤ軸方向内側に配置された断面三日月状の補強ゴム層とを備えるランフラットタイヤであって、前記補強ゴム層のタイヤ径方向外側の端部は前記縦主溝のタイヤ径方向内側に位置し、前記縦主溝のタイヤ径方向内側で前記カーカス層と前記ベルト層との間に、複数のスチールコードとそれらを覆うトッピングゴムからなりタイヤ周方向に延在するスチールベルト層が設けられ、前記縦主溝の幅をW1とし、前記スチールベルト層のタイヤ軸方向に沿った幅をW2としたときに1.0W1≦W2≦4.0W1の関係式を満たし、前記スチールコードがタイヤ周方向に対してなす角度をα°としたときに35°≦α°≦90°の関係式を満たし、前記縦主溝のタイヤ径方向内側に位置する前記補強ゴム層の厚さは0.5mm以上2.0mm以下に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、縦主溝のタイヤ径方向内側に、所定の厚みを持たせた補強ゴム層の端部を配置すると共に、伸長剛性の大きいスチールベルト層を配置した。
そのため、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となり、ランフラット走行時における乗り心地性を向上する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ランフラットタイヤの半部断面図である。
【図2】スチールベルト層を点線で示したトレッドパターンの展開図である。
【図3】外側縦主溝部分の拡大断面図である。
【図4】スチールベルト層の断面図である。
【図5】スチールベルト層のスチールコードの傾斜角を示す平面図である。
【図6】スチールベルト層を点線で示したトレッドパターンの展開図である。
【図7】スチールベルト層を点線で示したトレッドパターンの展開図である。
【図8】従来例、比較例、実施例の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、ランフラットタイヤ10はサイド補強タイプであり、ランフラット性能を有する空気入りラジアルタイヤである。
ランフラットタイヤ10はトレッド部12と、トレッド部12の両側からタイヤ径方向内側に延びるサイドウォール部14と、各サイドウォール部14のタイヤ径方向内側の端部に位置するビード部16とを備えている。
各ビード部16にはビードコア18が設けられ、ビードコア18の半径方向外側にタイヤ径方向外側に先細り状に延びるビードフィラー20が設けられている。
カーカス22は、トレッド部12、両側のサイドウォール部14を通って両端のビードコア18に架け渡され、カーカス22の両端は、ビードコア18およびビードフィラー20を挟むように、ビードコア18で折り返されている。
ランフラット走行時に、車両の負荷荷重を支える断面三日月状の補強ゴム層24は、各サイドウォール部14の内部でカーカス22のタイヤ軸方向内側に設けられている。
トレッド部12の内部には、カーカス22のタイヤ径方向外側に4枚のベルトプライからなるベルト層26が設けられている。
なお、図1において符号28はインナーライナーを示している。
【0010】
図2に示すように、トレッド部12が路面と接地するトレッド面12Aには、タイヤ赤道CL上の任意の点を中心として点対称なトレッドパターンが形成されている。
図2において、符号TWはタイヤ接地幅を示している。
ここで、タイヤ接地幅TWとは、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤのトレッド面12Aが路面と接地する領域であるタイヤ接地域のタイヤ軸方向の最大幅である。なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0011】
トレッド面12Aにはタイヤ軸方向に間隔をおいてタイヤ周方向に延在する4つの縦主溝30が設けられている。
4つの縦主溝30のうちの2つは、タイヤ赤道CLの両側に位置する内側縦主溝30Aであり、残りの2つは、それら内側縦主溝30Aのタイヤ軸方向外側に位置する外側縦主溝30Bである。
ここで縦主溝30とは、溝幅が4.0〜12.0mmで、溝深さが8.0〜9.5mmの周方向溝である。
また、内側縦主溝30Aと外側縦主溝30Bとの間に、タイヤ周方向に延在する幅の狭い縦溝32が設けられている。
そして、両側の内側縦主溝30Aの間にタイヤ周方向に延在するセンターリブ34が形成され、内側縦主溝30Aと縦溝32との間にタイヤ周方向に延在する幅の狭いリブ36が形成されている。
また、縦溝32と外側縦主溝30Bとの間に、ラグ溝38で区画されたブロックがタイヤ周方向に並べられた内側ブロック列40が形成され、外側縦主溝30Bのタイヤ軸方向の外側に、ラグ溝42で区画されたブロックがタイヤ周方向に並べられた外側ブロック列44が形成されている。
【0012】
図1〜図3に示すように、各外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側でカーカス22とベルト層26との間にタイヤ周方向に延在するスチールベルト層50が設けられている。
スチールベルト層50は、図4に示すように、複数のスチールコード5002とそれらを覆うトッピングゴム5004とで構成されている。スチールベルト層50は、ベルト層26を構成するベルトプライと同様なものが採用可能であり、例えば、直径が0.3〜1mmのスチールコード5002が1〜1.6mmのピッチで並べられて構成されている。
図3に示すように、外側縦主溝30Bの幅をW1とし、スチールベルト層50のタイヤ軸方向に沿った幅W2としたときに、1.0W1≦W2≦4.0W1の関係式を満たしている。
また、図5に示すように、スチールコード5002がタイヤ周方向に対してなす角度をα°としたときに、35°≦α°≦90°の関係式を満たしている。
【0013】
図1および図3に示すように、各補強ゴム層24のタイヤ径方向外側の端部24Aは、2つの外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側にそれぞれ位置している。
各補強ゴム層24のタイヤ径方向外側の端部24Aは、タイヤ赤道CLに近づくにつれて次第に厚さが小さくなる先細り状に形成され、図3に示すように、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に位置する補強ゴム層24の端部24Aの厚さTは、最も薄いところで0.5mm以上2.0mm以下に形成されている。
【0014】
本実施の形態によれば次の効果が奏される。
バックリングは縦主溝30を起点として生じ易く、また、バックリング時は、トレッド部12のタイヤ径方向の最も内側の箇所が最も伸長する。
本実施の形態では、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に、所定の厚みを持たせた補強ゴム層24の端部24Aを配置すると共に、伸長剛性の大きいスチールベルト層50を配置した。
そのため、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となる。
この場合、スチールベルト層50のみを設けた構成では、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側が伸張しにくくなり、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となるものの通常走行時の乗り心地性の低下を抑制できず、補強ゴム層24の端部24Aを配置したのみの構成では、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制できるもののランフラット走行時におけるバックリングを抑制する効果が少ない。
【0015】
より詳細に説明すると、スチールベルト層50は伸長剛性を有しているため、スチールベルト層50を外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に配置すると、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側は伸張しにくくなるが、スチールベルト層50の幅W2が外側縦主溝30Bの幅W1よりも小さいと、伸長剛性が足りずバックリングを抑制する効果が少なくなる。また、スチールベルト層50の幅W2が外側縦主溝30Bの幅W1の4倍よりも大きくなると、ランフラットタイヤ10のタイヤ径方向のばね剛性が大きくなり、通常走行時の乗り心地性が著しく低下する。
本実施の形態では、1.0W1≦W2≦4.0W1の関係式を満たしているので、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となる。
また、スチールコード5002がタイヤ周方向に対してなす角度をα°が35°よりも小さいと、タイヤ軸方向の伸長剛性が足りず、バックリングを抑制する効果が少なくなるため、角度α°は、35°≦α°≦90°の関係式を満たしていることが必要である。
さらに外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24の端部24Aを配置し、補強ゴム層24の端部24Aの厚さTを0.5mm以上2.0mm以下に形成したので、タイヤ径方向のばね剛性の上昇を抑えつつ、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側の伸長剛性を高めることができ、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となる。
この場合、補強ゴム層24の端部24Aの厚さTが0.5mmに満たないと、伸長剛性が足りずバックリングを抑制する効果が少なく、2.0mmを超えると、タイヤ径方向のばね剛性に影響を及ぼし、通常走行時の乗り心地性が低下する。
【0016】
また、図3に示すように、スチールベルト層50のタイヤ軸方向に沿った幅方向の両端は、外側縦主溝30Bの幅方向両端のエッジ部においてトレッド面12Aからタイヤ径方向内側にそれぞれ法線L1、L2を下した際にそれら法線L1、L2で挟まれる範囲の外側にそれぞれ位置していると、バックリングを抑制する上でより有利となる。このようにスチールベルト層50を配置すると、バックリングの起点となる縦主溝30のタイヤ径方向内側の箇所から、伸長剛性の強度に差異がある境界部分がタイヤ軸方向に確実にずらされるためである。
【0017】
なお、本実施の形態では、トレッドショルダー領域(タイヤ接地幅の外端からタイヤ接地幅の30%の範囲の領域)に設けられた両側の縦主溝30のタイヤ径方向内側にスチールベルト層50をそれぞれ配置した場合について説明したが、何れか一方の外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側にスチールベルト層50を配置しても、あるいは、内側縦主溝30A、外側縦主溝30Bのうちの何れか一つの縦主溝30のタイヤ径方向内側にスチールベルト層50を配置しても、本発明の要件を満たす限り通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となることは無論のことである。
また、図6に示すように、全ての縦主溝30のタイヤ径方向内側にスチールベルト層50を配置しても本発明の要件を満たす限り通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となる。
さらに、本発明は、点対称なトレッドパターンに限定されず従来公知の様々なトレッドパターンを有するランフラットタイヤ10に適用可能である。例えば、図7に示すように、非対称トレッドパターンを有するランフラットタイヤ10のトレッドショルダー領域の縦主溝30のタイヤ径方向内側にスチールベルト層50をそれぞれ配置しても、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しつつ、ランフラット走行時におけるバックリングを抑制する上で有利となる。
【実施例】
【0018】
次に、実施例について説明する。
図8は従来例、比較例、実施例の試験結果を示す説明図である。
図1〜図3の構造を有するタイヤサイズ245/45R17のランフラットタイヤを図8に示す仕様に基づいて試作した。
この場合、外側縦主溝30Bの溝幅は8.0mmで、溝深さが8.5mmであった。
また、スチールベルト層50は、直径が1mmのスチールコード5002が1.35mmのピッチで並べられているものを用いた。
[乗り心地性]
従来例、比較例、実施例のランフラットタイヤ10をETRTO規定の「Measuring Rim」に装着し、タイヤ内部にETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」を充填し、排気量2000ccでFR駆動方式の車両の4輪に組み付け、実車乗心地性能フィーリングを弊社テストパネラーが評価した。
評価は弊社テストパネラーによる官能評価であり、従来例を100とした指数により比較した。この指数が大きいほど通常走行時の乗心地性能フィーリングに優れていることを意味している。
[接地面積変化率]
従来例、比較例、実施例のランフラットタイヤ10をETRTO規定の「Measuring Rim」に装着し、タイヤ内部にETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」を充填し、タイヤにETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」を負荷した際の接地面積を、「通常時接地面積」として測定した。
また、タイヤ内部を0kPaとし、タイヤにETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」を負荷した際の接地面積を、「ランフラット時接地面積」として測定した。
そして、「ランフラット時接地面積」/「通常時接地面積」の比をそれぞれ算出し、従来例を100とした指数で「接地面積変化率」として表示し、この値は大きいほど接地面積変化率が少なく、バックリングが抑制されていることを意味している。
なお、接地面積の測定は、タイヤ接地面に朱肉等のペイントを塗布し、タイヤを地面に配置した転写用の紙に負荷させる。この方法で得た接地面図より、接地しているブロックおよびリブをプラニメータで測定することで行なった。
[総合評価]
乗り心地性の評価の指数と接地面積変化率の評価の指数とを加えた値であり、この値によりタイヤの性能を総合的に評価した。
【0019】
比較例1では、スチールベルト層50を設けているものの、外側縦主溝30Bの幅に対するスチールベルト層50の幅の比が1よりも小さく、タイヤ周方向に対するスチールコード5002の角度が35°よりも小さく、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24が位置していない。そのため、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しているものの、接地面積変化率の向上が従来例に比べて小さく、バックリングを抑制する効果が小さい。
比較例2では、スチールベルト層50を設け、タイヤ周方向に対するスチールコード5002の角度を65°としているものの、外側縦主溝30B幅に対するスチールベルト層50の幅の比が1よりも小さく、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24が位置していない。そのため、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しており、比較例1よりも接地面積変化率が向上しているが、依然としてバックリングを抑制する効果が小さい。
比較例3では、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24を位置させ、その厚さを0.3mmとしているが、スチールベルト層50を設けていない。そのため、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しているののの、接地面積変化率の向上が従来例に比べて小さく、バックリングを抑制する効果が小さい。
比較例4では、スチールベルト層50を設けていないものの、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24を位置させ、その厚さを2mmとしている。そのため、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制しており、比較例3よりもバックリングを抑制する効果が大きくなっているが、スチールベルト層50を設けていないため、依然として接地面積変化率の向上が小さく、バックリングを抑制する効果が小さい。
比較例5では、スチールベルト層50を設けていないものの、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24を位置させ、その厚さを2.5mmとしている。そのため、比較例4よりも接地面積変化率が向上し、バックリングを抑制する効果が比較例4よりも大きくなっているが、通常走行時の乗り心地性が低下している。
比較例6では、スチールベルト層50を設け、タイヤ周方向に対するスチールコード5002の角度を45°としているので、接地面積変化率が向上し、バックリングを抑制する効果が大きくなっているが、外側縦主溝30Bの幅に対するスチールベルト層50の幅の比が4よりも大きく、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24が位置していないため、通常走行時の乗り心地性が低下している。
【0020】
実施例1〜8によれば、通常走行時の乗り心地性の低下を抑制している。
また、接地面積変化率が向上し、バックリングを抑制する効果が大きい。
また、実施例2〜8では、従来例および比較例に比べて総合評価が上回っている。
【0021】
また、実施例1〜8によれば、外側縦主溝30Bの幅に対するスチールベルト層50の幅の比を大きくしていくと、バックリングを抑制する効果が大きくなることが明らかである。また、外側縦主溝30Bの幅に対するスチールベルト層50の幅の比が3あるいは4となると、比が1や2の場合に比べて通常走行時の乗り心地性が低下することが分かる。
【0022】
また、実施例2と実施例3とを比べた場合、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24の厚さを大きくした実施例3の方がバックリングを抑制する効果が大きいことが分かる。
同様に、実施例4と実施例5とを比べた場合、外側縦主溝30Bのタイヤ径方向内側に補強ゴム層24の厚さを大きくした実施例5の方がバックリングを抑制する効果が大きいことが分かる。
【0023】
また、実施例2と実施例4を比べた場合、タイヤ周方向に対するスチールコード5002の角度が大きい実施例4の方がバックリングを抑制する効果が大きいことが分かる。
同様に、実施例3と実施例5を比べた場合、タイヤ周方向に対するスチールコード5002の角度が大きい実施例5の方がバックリングを抑制する効果が大きいことが分かる。
【符号の説明】
【0024】
10……ランフラットタイヤ、12……トレッド部、14……サイドウォール部、16……ビード部、22……カーカス、24……補強ゴム層、24A……補強ゴム層のタイヤ径方向外側の端部、26……ベルト層、30……縦主溝、30A……内側縦主溝、30B……外側縦主溝、50……スチールベルト層、5002……スチールコード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至るカーカス層と、前記トレッド部の内部で前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、前記トレッド部のトレッド面に設けられタイヤ周方向に延在する縦主溝と、前記サイドウォール部の内部で前記カーカス層のタイヤ軸方向内側に配置された断面三日月状の補強ゴム層とを備えるランフラットタイヤであって、
前記補強ゴム層のタイヤ径方向外側の端部は前記縦主溝のタイヤ径方向内側に位置し、
前記縦主溝のタイヤ径方向内側で前記カーカス層と前記ベルト層との間に、複数のスチールコードとそれらを覆うトッピングゴムからなりタイヤ周方向に延在するスチールベルト層が設けられ、
前記縦主溝の幅をW1とし、前記スチールベルト層のタイヤ軸方向に沿った幅をW2としたときに1.0W1≦W2≦4.0W1の関係式を満たし、
前記スチールコードがタイヤ周方向に対してなす角度をα°としたときに35°≦α°≦90°の関係式を満たし、
前記縦主溝のタイヤ径方向内側に位置する前記補強ゴム層の厚さは0.5mm以上2.0mm以下に形成されている、
ことを特徴とするランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記縦主溝は、前記トレッド面にタイヤ軸方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記補強ゴム層のタイヤ径方向外側の端部は、前記複数の縦主溝のうちタイヤ軸方向の外側に位置する外側縦主溝のタイヤ径方向内側に位置しており、
前記スチールベルト層は、前記外側縦主溝のタイヤ径方向内側で前記カーカス層と前記ベルト層との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記スチールベルト層のタイヤ軸方向に沿った幅方向の両端は、前記縦主溝の幅方向両端のエッジ部において前記トレッド面からタイヤ径方向内側にそれぞれ法線を下した際にそれら法線で挟まれる範囲の外側にそれぞれ位置している、
ことを特徴とする請求項1または2記載のランフラットタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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