説明

ランプ、発光装置及びプロジェクタ

【課題】耐久性を向上させやすくすることができるランプ、発光装置及びプロジェクタを提供する。
【解決手段】ランプ23は、マイクロ波の照射を受けて光を発する物質が封入された発光部35と、発光部35の外側に設けられるコイル41a及び41bとを有し、発光部35に対するコイル41a及び41bのそれぞれの位置が、温度に応じて変化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ、発光装置及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波の電磁界で発光する放電灯に金属線からなる放電始動補助体を設けて、金属線の端部で発生する電磁界の集中によって放電灯内の電磁界強度を高めるようにした光源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭57−55057号公報(第2頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された光源装置では、金属線の端部で発生する電磁界の集中を利用している。しかしながら、金属線の端部で発生する電磁界の集中には限界があるため、この特許文献1に記載された光源装置では、電磁界の集中を一層高めることが困難であり、放電灯の輝度を向上させることが困難であるという課題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、特願2006−323112において、コイル部を有するランプ及び発光装置を提案している。コイル部を有するランプや発光装置では、マイクロ波の電界成分がコイル部によって集められるため、集められた電界成分をランプの発光部に集中させやすくすることができる。コイル部は、コイル部の材質、断面積、巻き数などの設定の変更が容易であるため、集中させる電界成分の密度を変化させやすい。従って、コイル部を有するランプや発光装置では、発光部における電界の強度を高めやすくすることができ、輝度を向上させやすくすることができる。
【0006】
ここで、コイル部によって集められる電界成分は、コイル部から遠ざかるほど密度が低くなる。従って、コイル部によって集められた電界成分を、電界成分の密度が高い状態で効率よくランプの発光部に集中させるには、コイル部をランプの発光部に近づけることが望ましい。一方で、ランプの発光部は、発光にともなって熱を発する。このため、コイル部は、ランプの点灯及び消灯により、反復して熱を受けることになり、劣化が促進されやすくなることが考えられる。つまり、コイル部を有するランプや発光装置では、耐久性を向上させることが困難であるという未解決の課題がある。
【0007】
本発明は、この未解決の課題に着目してなされたものであり、耐久性を向上させやすくすることができるランプ、発光装置及びプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のランプは、マイクロ波の照射を受けて光を発する物質が封入された発光部と、前記発光部の外側に設けられるコイル部とを有し、前記発光部に対する前記コイル部の位置が、温度に応じて変化することを特徴とする。
【0009】
このランプでは、照射されるマイクロ波の電界成分がコイル部によって集められるため、集められた電界成分を発光部に集中させやすくすることができる。コイル部は、コイル部の材質、断面積、巻き数などの設定の変更が容易であるため、集中させる電界成分の密度を変化させやすい。従って、このランプでは、発光部における電界の強度を高めやすくすることができ、輝度を向上させやすくすることが可能となる。
【0010】
また、この構成によれば、発光部に対するコイル部の位置が温度に応じて変化するので、例えば温度が高くなったときに、コイル部を発光部から遠ざけることが可能となる。コイル部が発光部から遠ざかれば、コイル部は、発光部からの熱を受けにくくなる。従って、コイル部の温度上昇量を低減することができ、コイル部の劣化の促進を軽減することができる。その結果、ランプの耐久性を向上させやすくすることが可能となる。
【0011】
上記のランプでは、前記温度に応じて前記コイル部が変形することによって、前記位置が変化してもよい。
【0012】
この構成によれば、発光部に対するコイル部の位置を変化させるための駆動源や駆動機構などを必要とせず、ランプを簡易な構成とすることができる。
【0013】
上記のランプでは、前記コイル部が形状記憶合金で構成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、温度に応じてコイル部が変形し、発光部に対するコイル部の位置を変化させることが可能となる。
【0015】
上記のランプでは、前記形状記憶合金は、二方向性を有していてもよい。ここで、二方向性とは、温度が所定温度よりも低いときの形状と、温度が所定温度よりも高いときの形状との2つの形態を示す性質をいう。
【0016】
この構成によれば、例えば、温度が所定温度よりも高くなったときに、コイル部が発光部から遠ざかるようにコイル部を変形させ、温度が所定温度よりも低くなったときに、コイル部が発光部に近づくようにコイル部を復元させることができる。これにより、発光部が発光して温度が上昇した場合には、コイル部をランプから遠ざけることができ、発光が停止して温度が下がった場合には、コイル部が発光部に近接した状態を復元することが可能となる。
【0017】
上記のランプでは、前記コイル部の内側に嵌入され、前記コイル部を前記内側で支持する支持部を有していてもよい。
【0018】
この構成によれば、コイル部の内側の領域を利用してコイル部を支持することができ、ランプの小型化が図られる。
【0019】
上記のランプでは、前記発光部は、前記マイクロ波及び前記光を透過可能な材料で構成された封入部内に前記物質が封入された構成を有し、前記支持部は、前記封入部から前記封入部の外側に向かって延びるように形成されていてもよい。
【0020】
このランプでは、コイル部の内側の領域と発光部とが、平面視で重なりやすくなるため、電界成分を発光部に一層集中させやすくすることが可能となる。また、支持部が封入部から延びるように形成されているため、コイル部と発光部とを近接させやすくすることができ、電界成分を効率よく発光部に集中させやすくすることが可能となる。
【0021】
上記のランプでは、前記支持部は、前記封入部を挟んで対峙するそれぞれの位置に形成されており、前記コイル部は、一方の前記支持部から前記封入部をまたいで他方の前記支持部にわたって、それぞれの前記支持部に巻かれていてもよい。
【0022】
このランプでは、封入部を挟んで対峙する各支持部に封入部をまたいでコイル部が巻かれているため、コイル部の内側に発光部が位置することになる。従って、電界成分を一層効率よく発光部に集中させやすくすることが可能となる。
【0023】
本発明の発光装置は、上記のランプと、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置とを有することを特徴とする。
【0024】
この発光装置は、発光部における電界の強度を高めやすく、且つ耐久性を向上させやすいランプと、マイクロ波発生装置とを備えている。このため、この発光装置では、高い輝度でランプを発光させやすくすることができるとともに、発光装置の耐久性を向上させやすくすることができる。
【0025】
本発明の発光装置は、マイクロ波の照射を受けて光を発する物質が封入されたランプを保持するランプ保持部と、前記ランプが前記ランプ保持部に保持された状態で前記ランプの外側に位置するコイル部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置とを有し、前記ランプに対する前記コイル部の位置が、温度に応じて変化することを特徴とする。
【0026】
この発光装置では、マイクロ波発生装置からのマイクロ波の電界成分がコイル部によって集められるため、集められた電界成分をランプに集中させやすくすることができる。コイル部は、コイル部の材質、断面積、巻き数などの設定の変更が容易であるため、集中させる電界成分の密度を変化させやすい。従って、この発光装置では、ランプにおける電界の強度を高めやすくすることができ、ランプの輝度を向上させやすくすることが可能となる。
【0027】
また、この構成によれば、ランプに対するコイル部の位置が温度に応じて変化するので、例えば温度が高くなったときに、コイル部をランプから遠ざけることが可能となる。コイル部がランプから遠ざかれば、コイル部は、ランプからの熱を受けにくくなる。従って、コイル部の温度上昇量を低減することができ、コイル部の劣化の促進を軽減することができる。その結果、発光装置の耐久性を向上させやすくすることが可能となる。
【0028】
上記の発光装置では、前記温度に応じて前記コイル部が変形することによって、前記位置が変化してもよい。
【0029】
この構成によれば、ランプに対するコイル部の位置を変化させるための駆動源や駆動機構などを必要とせず、発光装置を簡易な構成とすることができる。
【0030】
上記の発光装置では、前記コイル部が形状記憶合金で構成されていてもよい。
【0031】
この構成によれば、温度に応じてコイル部が変形し、ランプに対するコイル部の位置を変化させることが可能となる。
【0032】
上記の発光装置では、前記形状記憶合金は、二方向性を有していてもよい。ここで、二方向性とは、温度が所定温度よりも低いときの形状と、温度が所定温度よりも高いときの形状との2つの形態を示す性質をいう。
【0033】
この構成によれば、例えば、温度が所定温度よりも高くなったときに、コイル部がランプから遠ざかるようにコイル部を変形させ、温度が所定温度よりも低くなったときに、コイル部がランプに近づくようにコイル部を復元させることができる。これにより、ランプが点灯した状態で温度が上昇した場合には、コイル部がランプから遠ざかり、ランプが消灯して温度が下がった場合には、コイル部がランプに近接した状態になる。つまり、この構成によれば、コイル部が発光部に近接した状態でランプを点灯させることができ、ランプが点灯して温度が上昇した場合には、コイル部をランプから遠ざけることが可能となる。
【0034】
上記の発光装置では、前記コイル部の内側に嵌入され、前記コイル部を前記内側で支持する支持部を有していてもよい。
【0035】
この構成によれば、コイル部の内側の領域を利用してコイル部を支持することができ、発光装置の小型化が図られる。
【0036】
本発明のプロジェクタは、マイクロ波の照射を受けて光を発する物質が封入されたランプを保持するランプ保持部と、前記ランプが前記ランプ保持部に保持された状態で前記ランプの外側に位置するように設けられ、前記ランプに対する位置が温度に応じて変化するコイル部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、前記ランプからの前記光を画像データに応じて変調して光学像を形成する光変調部と、前記光変調部によって形成された前記光学像を投写する投写部とを有することを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、マイクロ波発生装置からのマイクロ波の電界成分がコイル部によって集められるため、集められた電界成分をランプに集中させやすくすることができる。コイル部は、コイル部の材質、断面積、巻き数などの設定の変更が容易であるため、集中させる電界成分の密度を変化させやすい。従って、この発光装置では、ランプにおける電界の強度を高めやすくすることができ、ランプの輝度を向上させやすくすることが可能となる。従って、このプロジェクタでは、投写部を介して投写される光学像の明るさを向上させやすくすることができる。
【0038】
また、この構成によれば、ランプに対するコイル部の位置が温度に応じて変化するので、例えば温度が高くなったときに、コイル部をランプから遠ざけることが可能となる。コイル部がランプから遠ざかれば、コイル部は、ランプからの熱を受けにくくなる。従って、コイル部の温度上昇量を低減することができ、コイル部の劣化の促進を軽減することができる。その結果、プロジェクタの耐久性を向上させやすくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施形態におけるプロジェクタ1は、ブロック図である図1に示すように、光学系3と、制御回路5と、電源部7とを備えている。このプロジェクタ1は、外部から入力される画像信号に応じた画像を、光学系3を介してスクリーンSなどに投写するものである。なお、プロジェクタ1では、外部電源9からの交流電力が電源部7によって直流電力に変換され、直流電力が電源部7から光学系3や制御回路5などに供給される。
【0040】
光学系3は、図2に示すように、光源装置11と、照明光学系13と、光変調部15と、色合成光学系17と、投写部19とを備えている。また、光源装置11は、マイクロ波発生部21とランプ23とを有している。ここで、マイクロ波とは、一般的に周波数が3GHz〜30GHzの電磁波を指すが、本明細書では、UHF帯からSHF帯に相当する300MHz〜30GHzの帯域の電磁波を指す。
【0041】
マイクロ波発生部21は、マイクロ波を放射する。ランプ23は、マイクロ波発生部21からマイクロ波の照射を受けて発光する。照明光学系13は、光源装置11から射出された光束の照度を均一化し、均一化された光束を、ダイクロイックミラーや反射ミラーなどを介して赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色の光に分離する。
【0042】
光変調部15は、R、G及びBの各色の光に対応して設けられる各色一対の偏光板の間に液晶パネルを配置した構成を有し、照明光学系13で分離された各色の光束を画像データに応じて変調して光学像を形成する。色合成光学系17は、光変調部15で変調された各色の光学像を、クロスダイクロイックプリズムなどを介して合成し、カラー画像を形成する。投写部19は、色合成光学系17で各色の光学像が合成されて形成されたカラー画像を、レンズなどを介してスクリーンSに投写する。
【0043】
光源装置11は、図3に示すように、上述したマイクロ波発生部21及びランプ23の他に、リフレクタ31と、反射器32と、ケース33とを備えている。なお、図3では、構成をわかりやすく示すため、リフレクタ31と反射器32とケース33とを概略の断面図で図示した。
【0044】
ここで、ランプ23及びリフレクタ31の構成について説明する。
ランプ23は、構成を説明する図である図4(a)に示すように、マイクロ波の照射を受けて発光する発光部35と、支持腕39a及び39bと、2つのコイル41a及び41bと、被保持部43とを有している。
【0045】
発光部35は、例えば石英ガラスなどで形成された封入部37内に、マイクロ波の照射を受けて発光する物質が封入された構成を有している。なお、図4では、発光部35の構成をわかりやすく示すため、発光部35を断面図で図示した。
封入部37内に封入される物質としては、例えば、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガス、水銀、金属ハロゲン化合物などが採用され得る。
【0046】
支持腕39a及び39bは、例えば石英ガラスなどで封入部37と一体的に形成されており、それぞれ封入部37から封入部37の外側に向かって延びている。これらの支持腕39a及び39bは、封入部37を挟んで互いに対峙する位置に形成されている。
被保持部43は、支持腕39aが延びる方向に沿って、支持腕39aの端部に形成されている。この被保持部43は、リフレクタ31の後述する保持部に保持される部位である。
【0047】
2つのコイル41a及び41bは、コイル41aが支持腕39aに、コイル41bが支持腕39bに、コイル41a及び41bの各内側で支持されている。つまり、コイル41a及び41bは、それぞれの内側が各支持腕39a及び39bに嵌入された状態となっている。コイル41a及び41bは、導電性を有する線材が各支持腕39a及び39bに巻かれた構成を有し、それぞれ、発光部35から遠い側の端部42a及び44aが、各支持腕39a及び39bの外周面に固定されている。また、各コイル41a及び41bにおいて、発光部35に近い側の端部42b及び44bのそれぞれは、各支持腕39a及び39bの外周面に固定されておらず、変位が規制されていない。
【0048】
これらのコイル41a及び41bは、それぞれ、二方向性を有する形状記憶合金で構成されている。各コイル41a及び41bは、熱を受けて温度が所定温度よりも高い状態になると、高温側での状態を示す図である図4(b)に示すように、端部42b及び44bのそれぞれが発光部35から遠ざかるように変形する。これにより、各コイル41a及び41bは、発光部35と各コイル41a及び41bとの間の間隔が広がるように、発光部35に対する位置が変化する。
【0049】
また、各コイル41a及び41bは、温度が低下して所定温度よりも低い状態になると、図4(b)に示す状態から図4(a)に示す状態に形状が復元して、発光部35に近接した状態になる。つまり、各コイル41a及び41bは、発光部35と各コイル41a及び41bとの間の間隔が狭まるように、発光部35に対する位置が変化する。なお、形状記憶合金としては、例えば、Ti−Ni系合金、Ti−Ni−Cu系合金、Cu−Al系合金、Cu−Zn−Al系合金などが採用され得る。
【0050】
リフレクタ31は、例えば石英ガラスで形成され、図5に示すように、内面側に、放物面形状の曲面を有する光束反射面45が形成されている。光束反射面45は、マイクロ波を透過し、光束を反射する誘電体多層膜により構成されている。光束反射面45の放物面形状の頂部には、光束反射面45とは反対側、すなわちリフレクタ31の外側に、マイクロ波発生部21に結合される部位である結合部47が形成されている。結合部47の光束反射面45側には、図4(a)に示すランプ23の被保持部43が嵌入されて、ランプ23を保持する保持部49が形成されている。
【0051】
上記の構成を有するリフレクタ31は、図3に示すように、ランプ23を保持した状態で、結合部47がマイクロ波発生部21に固定されている。光束反射面45の放物面形状は、リフレクタ31の内側に位置する発光部35に焦点が合うように形成されている。これにより、マイクロ波25の照射を受けた発光部35からの光束51aは、光束反射面45で反射して、光軸Lに略平行な光束51bとなる。なお、この図3では、構成をわかりやすく示すため、コイル41a及び41bを省略して図示した。
【0052】
反射器32は、導電性材料である金属材料で形成され、図3に示すように、球面形状の曲面を有するマイクロ波反射面53を有している。そして、反射器32には、マイクロ波25の1/4波長以下の口径を有する孔部54が複数形成されている(図示は簡略化している)。また、マイクロ波反射面53の球面形状は、ランプ23の発光部35に焦点が合うように構成されている。このマイクロ波反射面53はマイクロ波25を反射させる。また、複数の孔部54は、リフレクタ31の光束反射面45で反射した光束51bを通過させる。
【0053】
ケース33は、導電性材料でメッシュ状に形成されており、図3に示すように、マイクロ波発生部21と、リフレクタ31と、ランプ23とを覆っている。このケース33は、マイクロ波25を遮蔽している。ケース33において、反射器32に相対する面側には、略円形状の孔部55が形成されており、孔部55の縁辺は、反射器32の開放端部外面と同様の曲面を有する内面となるように形成されている。
【0054】
ケース33は、孔部55に反射器32の開放端部が係合されて、反射器32が固定される。従って、光源装置11は、反射器32がケース33から突出した状態となる。反射器32は、ケース33とともに、マイクロ波発生部21と、リフレクタ31と、ランプ23とを覆って、マイクロ波25を遮蔽している。
【0055】
マイクロ波発生部21は、図6に示すように、固体高周波発振部61と、導波部63とを備えている。固体高周波発振部61は、ダイヤモンドSAW(Surface Acoustic Wave)発振器65と、電源67と、増幅器69とを備えている。導波部63は、アンテナ71と、安全器としてのアイソレータ73とを備えている。ダイヤモンドSAW発振器65は、移相回路75と、ダイヤモンドSAW共振子77と、増幅器79と、電力分配器81と、バッファ回路83とを備えている。
【0056】
電源67は、駆動信号に基づいて、ダイヤモンドSAW発振器65と、増幅器69とに電力を供給する。ダイヤモンドSAW発振器65は、増幅器69の前段に接続されており、2.45GHz帯の高周波信号を生成するとともに、生成した高周波信号を増幅器69に出力する。増幅器69は、入力された高周波信号を増幅してから、導波部63に出力する。このとき、高周波信号は、増幅器69において、ランプ23の封入部37内に封入された物質を励起させ、発光部35を発光させることができる出力レベルに増幅される。
【0057】
導波部63に入力された高周波信号は、アンテナ71を介してマイクロ波25として放射される。本実施形態では、アンテナ71は、パッチアンテナとして構成されており、単一指向性を有するマイクロ波25を放射する平面アンテナとなっている。このアンテナ71により、マイクロ波25は、略平面波として放射される。そして、放射されたマイクロ波25を受けて、ランプ23の封入部37内に封入されている物質が励起され、発光部35から光が放射される。これにより、ランプ23が点灯した状態となる。
【0058】
アイソレータ73は、固体高周波発振部61とアンテナ71との間に設けられており、反射器32、ランプ23、ケース33などからの反射波が固体高周波発振部61に戻ることを阻止し、増幅器69などの故障を防止している。
【0059】
ダイヤモンドSAW発振器65は、移相回路75、ダイヤモンドSAW共振子77、増幅器79及び電力分配器81が構成するループ回路85に、バッファ回路83を接続した構成を有している。バッファ回路83は、電力分配器81の一方の出力側に接続されている。移相回路75は、電源67から制御電圧が入力され、ループ回路85の位相を可変させるものである。これら各ブロックは、一定の特性インピーダンス、具体的には50Ωに全て整合接続されている。なお、ダイヤモンドSAW共振子77は、増幅器79が飽和状態となる入力電圧が供給されるように、増幅器79の入力側に接続されている。
【0060】
これにより、ダイヤモンドSAW共振子77を用いてGHz帯での高周波信号をダイレクト発振させることが可能となる。また、整合を保ったまま増幅器79の出力パワーを電力分配器81からバッファ回路83を介して外部に出力することができる。
【0061】
また、この回路構成により、ダイヤモンドSAW共振子77に印加する電力を最小限として連続発振状態を継続することが可能となる。また、移相回路75により、高周波信号に周波数変調をかけることが可能となり、ランプ23に対して、マイクロ波25の周波数を可変したり、調整したりすることが可能になる。なお、固体高周波発振部61に適用される発振器としては、ダイヤモンドSAW共振子77を用いたダイヤモンドSAW発振器65に限定されず、誘電体共振子やLC共振子などを用いた発振器であってもよい。
【0062】
制御回路5は、図7に示すように、制御部91と、光源駆動部93と、画像処理部95と、信号変換部97と、液晶パネル駆動部99とを備えている。制御部91は、例えば、マイクロコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)103と、記憶部105とを備えている。
【0063】
CPU103は、記憶部105に格納されている制御プログラムに従って、プロジェクタ1の動作を統括制御する。記憶部105は、フラッシュメモリ等のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を含んだ構成を有している。ROMは、CPU103が実行する制御プログラムなどが格納されている。RAMは、CPU103によって実行される制御プログラムを一時的に展開したり、各種設定値等を一時的に格納したりする。
【0064】
光源駆動部93は、制御部91からの指示に基づいて、マイクロ波発生部21への駆動信号の出力を制御することにより、ランプ23の点灯及び消灯を行う。
画像処理部95は、信号変換部97、液晶パネル駆動部99に接続されており、制御部91からの指示に基づいて、信号変換部97に入力された画像信号に対する各種処理や、光変調部15での画像形成の制御を行う。
【0065】
信号変換部97は、外部から供給される画像信号を、画像処理部95が処理可能な形式の画像データに変換してから画像処理部95に出力する。画像処理部95は、信号変換部97から入力された画像データを、この画像データに種々の処理を施してから、液晶パネル駆動部99に出力する。なお、画像処理部95が画像データに施す処理としては、各種の画質調整や、メニュー、メッセージ等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)画像を合成する処理などが挙げられる。また、各種の画質調整としては、解像度変換、輝度調整、コントラスト調整、シャープネス調整などが挙げられる。
【0066】
液晶パネル駆動部99は、入力された画像データに応じて、光変調部15を構成する図示しない各液晶パネルの駆動を制御する。光変調部15は、各液晶パネルの駆動が液晶パネル駆動部99によって制御されることにより、R、G及びBの各色の光を画像データに応じて変調して光学像を形成する。光変調部15で形成された光学像は、色合成光学系17でカラー画像に合成されてから、投写部19を介してスクリーンSに投写される。
【0067】
なお、本実施形態において、光源装置11が発光装置に対応し、マイクロ波発生部21がマイクロ波発生装置に対応し、支持腕39a及び39bが支持部に対応し、コイル41a及び41bのそれぞれがコイル部に対応し、保持部49がランプ保持部に対応している。
【0068】
本実施形態のプロジェクタ1では、発光部35の外側に設けられるコイル41a及び41bを備えたランプ23を光源として使用することができる。このランプ23では、マイクロ波発生部21から照射されるマイクロ波25の電界成分を、コイル41a及び41bで発光部35に集中させやすくすることができる。また、コイル41a及び41bは、材質、断面積、巻き数などの設定の変更が容易である。このため、ランプ23では、発光部35に集中させる電界成分の密度を容易に高めることができ、輝度を向上させやすくすることができる。従って、プロジェクタ1では、投写部19を介して投写される光学像の明るさを向上させやすくすることが可能となる。
【0069】
ここで、光学像の投写に際して、ランプ23は、熱を発することがある。これは、ランプ23の発光部35が、マイクロ波25の照射を受けて光を放射するときに、熱の放射もともなうことがあるためである。このような場合に、コイル41a及び41bは、発光部35からの熱を受けて温度が上昇する。そして、各コイル41a及び41bは、温度の上昇に応じて、前述した図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態に変化して、発光部35と各コイル41a及び41bとの間の間隔が広がる。
【0070】
つまり、各コイル41a及び41bは、温度の上昇に応じて、熱源である発光部35から遠ざかるように発光部35に対する位置が変化する。このように、各コイル41a及び41bは、温度に応じて熱源から遠ざかるように位置が変化するため、温度上昇が緩和される。従って、ランプ23では、各コイル41a及び41bの劣化の促進が軽減され、耐久性を向上させやすくすることが可能となる。
【0071】
また、ランプ23では、各コイル41a及び41bが、二方向性を有する形状記憶合金で構成されている。このため、ランプ23が消灯して各コイル41a及び41bの温度が低下していけば、各コイル41a及び41bは、温度低下に応じて発光部35に近づく方向に位置が復元していく。つまり、再びランプ23を点灯する際には、各コイル41a及び41bが発光部35に近接した状態を復元することができる。これにより、発光部35が発光を開始する際に、電界成分を効果的に発光部35に集中させることができ、速やかに発光部35を発光させることが可能となる。
【0072】
また、ランプ23は、発光部35が支持腕39a及び被保持部43を介してリフレクタ31に保持される構成を有している。また、ランプ23には、発光部35を挟んで支持腕39aに対峙する位置に支持腕39bが形成されている。そして、コイル41aが支持腕39aにコイル41aの内側で支持され、コイル41bが支持腕39bにコイル41bの内側で支持されている。このランプ23では、コイル41a及び41bのそれぞれの内側の領域を利用してコイル41a及び41bが支持される構成を有しているため、ランプ23が大型化してしまうことを避けやすくすることができる。
【0073】
また、このランプ23では、コイル41a及び41bのそれぞれの内側の領域と発光部35とが、平面視で、すなわち支持腕39a及び39bが延びる方向から見て重なっているため、電界成分を発光部35に一層集中させやすくすることが可能となる。また、各支持腕39a及び39bが封入部37に対して、封入部37から外側に向かって延びるように一体的に形成されている。このため、コイル41a及び41bと発光部35とを近接させやすくすることができ、電界成分を効率よく発光部35に集中させやすくすることが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では、発光部35に対する各コイル41a及び41bの位置を変化させるのに、形状記憶合金の形状記憶効果を利用している。各コイル41a及び41bの位置を変化させる方法は、これに限定されず、温度センサで温度を検出した結果に基づいて、各コイル41a及び41bに動力を伝達して位置を変化させるようにしてもよい。しかしながら、形状記憶合金の形状記憶効果を利用することは、センサ、動力源、動力伝達機構などを省略でき、ランプ23を簡易な構成とすることができる点で好ましい。
【0075】
また、本実施形態では、コイル41a及び41bを、それぞれの巻き方向が互いに逆になる逆相巻きに構成したが、巻き方向は、ランプ23の第2の構成例を示す図である図8に示すように、互いに同じ方向である同相巻きでもよい。また、コイル41a及び41bの個数は、2つに限定されず、1つ以上の任意の個数とすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、ランプ23が2つのコイル41a及び41bを備える構成としたが、これに限定されず、ランプ23の第3の構成例を示す図である図9(a)に示すように、ランプ23が1つのコイル111を備える構成としてもよい。この場合、コイル111は、支持腕39aから発光部35をまたいで支持腕39bにわたって、各支持腕39a及び39bに巻かれている。つまり、発光部35は、コイル111の内側に位置していることになる。従って、電界成分を一層効率よく発光部35に集中させやすくすることが可能となる。なお、この構成では、コイル111は、温度が所定温度よりも高い状態になると、高温側での状態を示す図である図9(b)に示すように、各支持腕39a及び39bに巻かれている部位が、それぞれ発光部35から遠ざかるように変形する。
【0077】
また、本実施形態では、図4(a)に示すように、各コイル41a及び41bを各支持腕39a及び39bに、各端部42b及び44bが発光部35にかからないように巻いてランプ23を構成した。しかし、ランプ23は、これに限定されず、ランプ23の第4の構成例を示す図である図10(a)に示すように、各端部42b及び44bが発光部35にかかるように巻いた構成としてもよい。この構成によれば、発光部35が2つのコイル41a及び41bのそれぞれに内包されるため、電界成分を一層効率よく発光部35に集中させやすくすることが可能となる。
【0078】
なお、図10(a)に示すランプ23の構成では、各コイル41a及び41bは、温度が所定温度よりも高い状態になると、高温側での状態を示す図である図10(b)に示すように、各端部42b及び44bが、各支持腕39a及び39bの延びる方向に沿って発光部35から遠ざかるように変形する。従って、この構成では、ランプ23が点灯すると、発光部35の外側が各コイル41a及び41bから開放されるため、光の利用効率を高めやすくすることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態では、ランプ23が支持腕39a及び39bでコイル41a及び41bを支持するようにしたが、これに限定されず、リフレクタ31がコイル41a及び41bを支持する構成としてもよい。この場合、光源装置11は、図11に示すように、リフレクタ31の光束反射面45にリフレクタ31の内側に向かって延びる支持腕115a及び115bを形成して、これらの支持腕115a及び115bにコイル41a及び41bを嵌入した構成が採用され得る。これにより、ランプ23の支持腕39bを省略することができるとともに、ランプ23からコイル41a及び41bを省略することができるため、ランプ23のコストを低減することが可能となる。
【0080】
なお、この場合、支持腕115a及び115bを誘電体で磁性を有する材料から形成することが、各コイル41a及び41bの短絡を抑制しつつ、電界成分を一層効率よく集中させることができる点で好ましい。絶縁性が高く磁性を有する材料としては、例えば、マンガン亜鉛(MnZn)系フェライトが挙げられる。
【0081】
なお、本実施形態では、外部に設置されるスクリーンSに対して投写を行うフロントタイプのプロジェクタ1に光源装置11を適用した場合を例に説明したが、光源装置11の適用はこれに限定されない。光源装置11は、例えば、プロジェクタに内蔵されているスクリーンに対して投写を行うリアタイプのプロジェクタにも適用され得る。
【0082】
また、光源装置11の適用は、プロジェクタ1のみならず、他の光学機器の光源や、航空、船舶、車両などの照明機器や、屋内照明機器などにも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態におけるプロジェクタの主要構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるプロジェクタの光学系の主要構成を示すブロック図。
【図3】本発明の実施形態におけるプロジェクタの光源装置の構成を説明する図。
【図4】本発明の実施形態におけるプロジェクタのランプの構成を説明する図。
【図5】本発明の実施形態におけるプロジェクタのリフレクタを説明する断面図。
【図6】本発明の実施形態におけるプロジェクタのマイクロ波発生部の主要構成を示すブロック図。
【図7】本発明の実施形態におけるプロジェクタの制御回路の主要構成を示すブロック図。
【図8】本発明の実施形態におけるプロジェクタのランプの第2の構成例を説明する図。
【図9】本発明の実施形態におけるプロジェクタのランプの第3の構成例を説明する図。
【図10】本発明の実施形態におけるプロジェクタのランプの第4の構成例を説明する図。
【図11】本発明の実施形態におけるプロジェクタの光源装置の他の構成例を説明する図。
【符号の説明】
【0084】
1…プロジェクタ、11…光源装置、15…光変調部、19…投写部、21…マイクロ波発生部、23…ランプ、25…マイクロ波、35…発光部、37…封入部、39a,39b…支持腕、41a,41b…コイル、49…保持部、111…コイル、115a,115b…支持腕。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波の照射を受けて光を発する物質が封入された発光部と、前記発光部の外側に設けられるコイル部とを有し、
前記発光部に対する前記コイル部の位置が、温度に応じて変化することを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記温度に応じて前記コイル部が変形することによって、前記位置が変化することを特徴とする請求項1に記載のランプ。
【請求項3】
前記コイル部は、形状記憶合金で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のランプ。
【請求項4】
前記形状記憶合金は、二方向性を有していることを特徴とする請求項3に記載のランプ。
【請求項5】
前記コイル部の内側に嵌入され、前記コイル部を前記内側で支持する支持部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のランプ。
【請求項6】
前記発光部は、前記マイクロ波及び前記光を透過可能な材料で構成された封入部内に前記物質が封入された構成を有し、
前記支持部は、前記封入部から前記封入部の外側に向かって延びるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のランプ。
【請求項7】
前記支持部は、前記封入部を挟んで対峙するそれぞれの位置に形成されており、
前記コイル部は、一方の前記支持部から前記封入部をまたいで他方の前記支持部にわたって、それぞれの前記支持部に巻かれていることを特徴とする請求項6に記載のランプ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のランプと、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置とを有することを特徴とする発光装置。
【請求項9】
マイクロ波の照射を受けて光を発する物質が封入されたランプを保持するランプ保持部と、前記ランプが前記ランプ保持部に保持された状態で前記ランプの外側に位置するコイル部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置とを有し、
前記ランプに対する前記コイル部の位置が、温度に応じて変化することを特徴とする発光装置。
【請求項10】
前記温度に応じて前記コイル部が変形することによって、前記位置が変化することを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記コイル部は、形状記憶合金で構成されていることを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記形状記憶合金は、二方向性を有していることを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記コイル部の内側に嵌入され、前記コイル部を前記内側で支持する支持部を有することを特徴とする請求項9乃至12のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
マイクロ波の照射を受けて光を発する物質が封入されたランプを保持するランプ保持部と、前記ランプが前記ランプ保持部に保持された状態で前記ランプの外側に位置するように設けられ、前記ランプに対する位置が温度に応じて変化するコイル部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、前記ランプからの前記光を画像データに応じて変調して光学像を形成する光変調部と、前記光変調部によって形成された前記光学像を投写する投写部とを有することを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−152935(P2008−152935A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336673(P2006−336673)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】